(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959336
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ポートベルト装置
(51)【国際特許分類】
F02B 25/26 20060101AFI20211021BHJP
F02F 1/22 20060101ALI20211021BHJP
F02B 25/02 20060101ALI20211021BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
F02B25/26
F02F1/22 A
F02B25/02
F02F1/22 D
F02M35/10 101D
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-527956(P2019-527956)
(86)(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公表番号】特表2019-528403(P2019-528403A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】EP2017069525
(87)【国際公開番号】WO2018024771
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】1613509.7
(32)【優先日】2016年8月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519042375
【氏名又は名称】コックス パワートレイン リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ユアン フリーマン
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−246879(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102733947(CN,A)
【文献】
特開平06−159067(JP,A)
【文献】
実開昭63−115529(JP,U)
【文献】
特開昭54−147321(JP,A)
【文献】
特開平03−050325(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0030654(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第03821617(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 25/26
F02F 1/22
F02B 25/02
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する一対のシリンダを含む2サイクル内燃機関における使用のためのポートベルト装置であって、この装置が、
第1の環状導管を形成し、前記第1の環状導管によって画定される第1のガス流路を有する第1の中空環状部であって、前記第1の環状導管は、第1のポートからの前記第1のガス流路に沿った周方向距離が増すにつれて半径方向において先細りしており、前記第1の環状導管の内壁が第2のポートを有する、第1の中空環状部と、
第2の環状導管を形成し、前記第2の環状導管によって画定される第2のガス流路を有する第2の中空環状部であって、前記第2の環状導管は、第3のポートからの前記第2のガス流路に沿った周方向距離が増すにつれて半径方向において先細りしており、前記第2の環状導管の内壁が第4のポートを有する、第2の中空環状部と、を具備する、装置において、
前記第1の中空環状部及び前記第2の中空環状部は、それらの各周上に位置する接合点において共に接合されており、
前記接合点における前記第1の環状導管の断面積は、前記接合点から最も遠い、第1の中空環状部の周上の点における前記第1の環状導管の断面積よりも小さい、ことを特徴とするポートベルト装置。
【請求項2】
前記接合点における前記第2の環状導管の断面積が、前記接合点から最も遠い、前記第2の中空環状部の周上の点における前記第2の環状導管の断面積よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のポートベルト装置。
【請求項3】
前記第1の中空環状部を通過する第1のシリンダと、
前記第2の中空環状部を通過する第2のシリンダと、を更に具備する、ポートベルト装置において、
前記第1の環状導管は、前記第1の中空環状部の外壁の内面と前記第1のシリンダの外壁とにより形成されており、前記第2の環状導管は、第2の中空環状部の外壁の内面と前記第2のシリンダの外壁とにより形成される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポートベルト装置。
【請求項4】
前記第2のポートは、前記第1の環状導管を形成する、前記第1のシリンダの前記外壁の一部に配置されており、前記第4のポートは、前記第2の環状導管を形成する、前記第2のシリンダの前記外壁の一部に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載のポートベルト装置。
【請求項5】
前記第2のポートは、前記第1の中空環状部の内壁に配置されており、前記第4のポートは、前記第2の中空環状部の内壁に配置される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポートベルト装置。
【請求項6】
前記第2のポートは、前記第1のシリンダの外壁内の穴を介して、前記第1の環状導管と前記第1のシリンダとの間において流体連通を提供するように配置されており、前記第4のポートは、前記第2のシリンダの外壁内の穴を介して、前記第2の環状導管と前記第2のシリンダとの間において流体連通を提供するように配置される、ことを特徴とする請求項5に記載のポートベルト装置。
【請求項7】
前記第1の中空環状部及び前記第2の中空環状部は、共通の外壁を共有する、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポートベルト装置。
【請求項8】
前記第1のポート及び前記第3のポートは、前記第1の環状導管及び前記第2の環状導管のための入口ポートであり、
前記第2のポート及び前記第4のポートは、そこを通りガスが前記環状導管から前記シリンダ内に流れることができる、シリンダ入口ポートであり、
前記第1のガス流路は、前記第1の環状導管において、前記第1のポートと前記第2のポートとの間において形成されており、
前記第2のガス流路は、前記第2の環状導管において、前記第3のポートと前記第4のポートとの間において形成される、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポートベルト装置。
【請求項9】
前記第1のポート及び前記第3のポートは、ガス源からガスを供給するように構成される、単一の主入口と流体連通する、ことを特徴とする請求項8に記載のポートベルト装置。
【請求項10】
前記主入口から流れるガスを、前記第1の環状導管に向かう第1の流れと前記第2の環状導管に向かう第2の流れとに分離するように構成された、隔壁又は分離壁を更に具備する、ことを特徴とする請求項9に記載のポートベルト装置。
【請求項11】
前記第1の中空環状部は、各々が前記第1の環状導管と前記第1のシリンダとの間において流体連通を提供する、周方向に分配された複数のシリンダ入口ポートを具備しており、前記第2の中空環状部は、各々が前記第2の環状導管と前記第2のシリンダとの間において流体連通を提供する、周方向に分配された複数のシリンダ入口ポートを具備する、ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のポートベルト装置。
【請求項12】
前記第1のポート及び前記第3のポートは、前記第1の環状導管及び前記第2の環状導管からの出口ポートであり、
前記第2のポート及び前記第4のポートは、シリンダ排気ポートであり、
前記第1のガス流路は、第1の環状導管において、前記第2のポートと前記第1のポートとの間において形成されており、
前記第2のガス流路は、前記第2の環状導管において、前記第4のポートと前記第3のポートとの間において形成される、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポートベルト装置。
【請求項13】
前記第1のポート及び前記第3のポートと流体連通する、排気出口を更に具備する、ことを特徴とする請求項12に記載のポートベルト装置。
【請求項14】
前記第1の中空環状部は、各々が前記第1の環状導管と前記第1のシリンダとの間において流体連通を提供する、周方向に分配された複数のシリンダ排気ポートを具備しており、前記第2の中空環状部は、各々が前記第2の環状導管と前記第2のシリンダとの間において流体連通を提供する、周方向に分配された複数のシリンダ排気ポートを具備する、ことを特徴とする請求項12又は13に記載のポートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2サイクル内燃機関、特には、隣接する一対のシリンダを具備する2サイクル内燃機関において使用するためのポートベルト及びポートベルト装置に関する。本発明はまた、ポートベルト装置を含むエンジン、及びそれらのエンジンを含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2サイクル内燃機関(火花又は圧縮点火に係わらず)において、給気は一般的に、シリンダ壁の周りで周方向に離間する一連の入口ポート(口)を介して各シリンダ内に導入される。排気ガス(即ち、燃焼生成物)が、シリンダ壁の周りで周方向に離間していて且つ入口ポートからシリンダ壁に沿って長手方向に離間した、同様の一連の排気ポートを介してシリンダから吐出されることもまた通常である。入口ポートに(一般的には加圧された)給気を供給するために、入口ポートに隣接するシリンダの周りで伸張する、環状導管を形成する、ポートベルト(出入口帯)を使用して、給気が入口ポートを介してシリンダ壁の周囲からシリンダに流入可能なシリンダ壁の周囲の周りで、単一の入口から給気を分配することが知られている。同様に、ポートベルトは、シリンダから排気ポートを介して吐出された排気ガスを受容して更にこれらのガスを単一の出口へ導くように使用可能である。
【0003】
図1Aは、2つの実質的に同一のポートベルト2Aと2Bを具備する、既知の二重式ポートベルト装置1の一例を示す。ポートベルト2Aと2Bは実質的に同一であるので、以下の説明は、第1のポートベルト2Aのみに向けられる。各ポートベルト2Aと2Bにおける同等の特徴は、同じ参照番号を有しており、その際、第1のポートベルト2Aにおける特徴は、「A」で指定されており、第2のポートベルト2Bにおける特徴は、「B」で指定される。
【0004】
ポートベルト2Aは、中空環状部3Aを具備しており、中空環状部3Aの内壁5Aは、シリンダ4Aを囲む。中空環状部3Aは、外半径R1を有しており、シリンダ4Aは、半径R2を有する。入口ポート8Aは、中空環状部3Aの一方の側に設けられており、入口ポート8Aを介して(例えば過給機、ターボチャージャ、クランクケース圧縮又はこれらの組み合わせからの)給気が、中空環状部3A内に形成された、環状導管に流入してもよい。使用時に、給気は、流路Fに沿って環状導管の周りを流れる。給気はその後、環状導管から、シリンダ4Aの内壁5A /外壁の周りで周方向に離間する、ポート(図示せず)を介してシリンダ4Aへ通過する。
【0005】
図1Aに示されるポートベルト装置1において、シリンダ4A、4Bの間隔は、少なくとも2R1でなければならず、そのことは、エンジンの呼吸性能と全パッケージ寸法との間の妥協を必要とする。更に、空気流をシリンダの周りで分配することは、
図1の設計の様な従来のポートベルト設計に関しては困難であり、この困難は、非常に動的な入口条件では更に悪化する。これは一般的に、エンジンの呼吸を抑制可能である、追加の調整板を、シリンダの内側に具備することにより克服される。
【発明の概要】
【0006】
最も一般的には、本発明の第1の形態は、一対のシリンダ間の間隔を減少することを可能にするために、少なくとも1つの「渦巻き形状」のポートベルトを有する、2サイクル内燃機関における使用のためのポートベルト装置を提供しており、与えられたパッケージ寸法に対して呼吸効率の改善をもたらす。
【0007】
より具体的には、本発明の第1の形態は、隣接する一対のシリンダを含む2サイクル内燃機関における使用のためのポートベルト装置を提供しており、この装置が、第1の環状導管を形成する第1の中空環状部であって、前記導管は、第1ポートからの周方向距離が増すにつれて半径寸法において先細りしており、第1の環状導管の内壁が第2のポート(又は一連の周方向に離間した第2のポート)を有する、第1の中空環状部と、第2の環状導管を形成する第2の中空環状部であって、前記導管は、第3のポートからの周方向距離が増すにつれて半径寸法において先細りしており、第2の環状導管の内壁が第4のポート(又は一連の周方向に離間した第4のポート)を有する、第2の中空環状部と、を具備しており、そこでは、第1の中空環状部及び第2の中空環状部は、それらの各周上に配置された接合点において共に接合されており、接合点における第1の環状導管の断面積は、接合点から最も遠い第1の中空環状部の周上の点における第1の環状導管の断面積よりも小さい。
【0008】
以下の説明(接合点において接合された、第1の中空環状部と第2の中空環状部とを有する)において、用語「二重式ポートベルト」又は「ポートベルト」は、8の字形又は2つの接合された環状部により形成されたレムニスケート(連珠)形状の構成要素を参照してもよい。第1の中空環状部及び第2の中空環状部の各々は、第1のシリンダ及び第2のシリンダを受容するように構成された中央孔を形成する。「環状の」又は「環状部」という用語は、一般的に、輪形状構造、例えば(決して限定されるわけではないが)円形輪形状、又はドーナツ形構造を参照する。例えば、幾つかの実施の形態において、第1の中空環状部及び/又は第2の中空環状部は、内側シリンダシェル(殻)及び外側シリンダシェルにより形成されてもよく、それぞれのシェルの上縁部及び下縁部は、平面又は曲線であってもよい、環状表面により接合される。中空環状部は、概略楕円形であってもよい。
【0009】
中央平面は、接合点と、中央平面の一方の側に位置する第1の中空環状部と、中央平面のもう一方の側にある第2の中空環状部と、を具備する平面として定義されてもよい。第1の中空環状部及び第2の中空環状部が、共に接合されるが、第1と第2の環状導管、即ち第1の中空環状部及び第2の中空環状部、内に含まれる環状容積は、共に接合されないこともまた留意されるべきである。
【0010】
本出願において使用される「ポート(口)」という用語は、ガスがある構成要素から別の構成要素へ流れることを可能にする、穴を参照してもよい。例えば、ポートは、ポートベルト装置の構成要素壁における穴であってもよいが、それらは、これだけに限定されない。例えば、本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の範囲から逸脱することなく、導管、パイプ、チューブ又はシリンダシェル、の開口端部をポートと参照してもよい。
【0011】
本出願において想定される「環状導管」は、必ずしも両端部において接合する必要はなく、環状導管は、本発明の範囲から逸脱することなく、例えば、中空環状部の円周の大部分の周りで単に伸びてもよい。
【0012】
接合点を、第1の環状導管の断面積が最も小さい、第1の中空環状部の周上の点に配置することにより、第1の中空環状部の中心と第2の中空環状部の中心との間の距離は、最小化されてもよい。従って、第1の中空環状部の中心と第2の中空環状部の中心との間隔は、ポートベルト装置の最大全幅の半分未満であり、この幅は、第1の中空環状部の中心と第2の中空環状部の中心とを結ぶ線の方向において測定される。本発明のポートベルト装置を採用するエンジンにおいて、第1のシリンダ及び第2のシリンダは共に、より接近させることができるので、エンジン全体は、より効率的に収納可能である。
【0013】
シリンダ間の距離を更に減少させるために、接合点における第2の環状導管の断面積が接合点から最も遠い、第2の中空環状部の周上の点における第2の環状導管の断面積よりも小さくてもよい。接合点はその場合、第1の環状導管及び第2の環状導管がそれらの最も狭い場所(即ち最小の断面積を有する)にある、第1の環状導管及び第2の環状導管の各々の領域において又はその付近に位置しており、第1の中空環状部の中心と第2の中空環状部の中心との間の距離を更に減少させる。ポートベルト装置は、上記で定義されたように、中央平面の周りで対称的であることが好ましい。
【0014】
2サイクル内燃機関のシリンダは、お互いに平行であってもよい。平行な一対のシリンダを収容するために、第1の中空環状部及び第2の中空環状部は、同一平面上又は実質的に同一平面上にあることが好ましい。言い換えれば、第1の中空環状部の中心と第2の中空環状部の中心とを接続する線は、第1と第2の中空環状部の両方の軸線に垂直な平面内にあることが好ましい。構成要素の収納を更に改善するために、第1の中空環状部及び第2の中空環状部は、共通の外壁を共有することが好ましい。これとは別に、2サイクル内燃機関のシリンダは、V字形構成において配置されてもよい。この場合において、第1の環状部及び第2の環状部の平面は、該V字形構成に配置された2つのシリンダを収容するために、お互いに対して角度を成すことが好ましい。
【0015】
ポートベルト装置は、お互いに隣接して配置された、エンジンの第1のシリンダと第2のシリンダとを具備してもよい。この場合において、第1の中空環状部及び第2の中空環状部の内壁は、それぞれ第1のシリンダ及び第2のシリンダの外壁により形成されていてもよい。従って、第1と第2の環状導管はそれぞれ、第1の中空環状部及び第2の中空環状部の外壁、ならびに第1と第2のシリンダの壁の外面により形成されてもよい。従って、第1の環状導管の第2のポート及び第2の環状導管の第4のポートは、各環状導管とそのそれぞれのシリンダとの間において流体連通を提供するように、シリンダの外壁における開口部であってもよいことが理解されるであろう。第1の環状導管及び第2の環状導管は、ポートベルトがシリンダと組み合わされる時にのみ形成されるので、第1の中空環状部及び第2の中空環状部が内壁を有さない、これらの実施の形態は、「シェル」実施の形態と参照されてもよい。
【0016】
これとは別に、「フル(完全)導管」実施の形態と参照してもよい、実施の形態において、第1の中空環状部及び第2の中空環状部は両方とも、第2と第4のポートが形成される、内壁を有してもよい。内壁は、第1の中空環状部及び第2の中空環状部の各々の中心に孔を形成する。これらの実施の形態において、第1の環状導管及び第2の環状導管はそれぞれ、ポートベルトがその周りに組み立てられる、シリンダの壁によってではなく、それぞれ第1の中空環状部及び第2の中空環状部の壁により形成される。これらの実施の形態において、第1の中空環状部の第2のポート(単数又は複数)は、第1のシリンダの壁に形成されたポート(より好適には、一連のポート)を介して、第1の環状導管と第1のシリンダとの間において流体連通を提供するように配置されることが好ましい。同様に、第2の中空環状部の第4のポート(単数又は複数)は、第2の環状導管と第2のシリンダとの間において流体連通を提供するように配置されることが好ましい。
【0017】
ポートベルト装置がシリンダ自体を具備するか否かは、ポートベルト装置がシェル又はフル導管の実施の形態のいずれとも明らかに矛盾する場合を除いて、本発明の別の任意選択な特徴にとって重要ではない。
【0018】
本発明の第1の形態によるポートベルト装置は、広義には、2つの異なる方法で使用されてもよく;即ち、吸気ポートベルト装置として、あるいは排気ポートベルト装置としてのいずれかとして使用されてもよい。これらについては、以下で順番に議論する。
【0019】
吸気ポートベルト装置の目的は、内燃機関(エンジン)の過給機からの加圧給気又は過給空気であってもよい、給気を同じエンジン(機関)のシリンダに案内することである。吸気ポートベルト装置において、第1のポート及び第3のポートは、過給機からそれぞれ第1の環状導管及び第2の環状導管へのガスの流れを可能にするように構成された、入口ポートである。同じ実施の形態において、第2のポート(単数又は複数)及び第4のポート(単数又は複数)は、使用時に、第1の環状導管から第1の対応するシリンダへの、及び第2の環状導管から第2の対応するシリンダへの、ガスの流れを可能にするように配置された、シリンダ入口ポートである。従って、ガス流路は、第1の(入口)ポートから第2の(シリンダ入口)ポート(単数又は複数)までの第1の環状導管内、及び第3の(入口)ポートから第4の(シリンダ入口)ポート(単数又は複数)までの第2の環状導管内に形成される。
【0020】
その入口ポートからの周方向距離が増すにつれて(即ち、ガス流路に沿ってより遠くに)、各環状導管の半径方向に先細りする断面は、使用時に、ガスがシリンダ入口ポート(単数又は複数)を介して対応するシリンダ内に導かれることを確保することを支援しており、全ての第2のポート及び第4のポートへのガスの均一な分配を確保する。
【0021】
半径方向に先細りすることと同様に、第1と第2の環状導管はまた、ガス流路に沿った断面積のより大きな減少を達成するように、その入口ポートからの周方向の距離が増すにつれて、第1と第2の環状導管の深さ(即ち、シリンダの軸線に平行な寸法において)において先細りしてもよい。
【0022】
更に吸気ポートベルト装置を参照すると、エンジン設計は、第1のポートと第3のポート(即ち、2つの環状導管への入口)を同じ主入口ポートから供給することにより更に単純化できる。従って、第1のポート及び第3のポートは、単一の主入口と流体連通するように構成されることが好ましい。主入口は、第1と第3のポート(即ち入口ポート)に過給機等のガス源から過給空気を供給するように構成されることが好ましい。主入口は単純に、両方の入口ポートを覆うのに十分な幅を有する、単一の導管の形態であってもよい。環状導管を通る過給空気の流路は、本出願の後半で図面を参照してより詳細に説明される。別の実施の形態において、例えば、収容上の理由から、第1と第2の環状導管は、単一の主入口よりむしろ、2つの別個の入口(即ち、第1のポート及び第3のポートの各々に関連するもの)から供給されてもよい。
【0023】
上述のように単一の主入口を具備する実施の形態において、ポートベルト装置は、主入口から流れるガスを2つの別々の流れに分離するように構成された、隔壁又は分離壁を、第1の環状導管と第2の環状導管との間において具備してもよく、一方は、第1の環状導管内に流れ込み、もう一方は、第2の環状導管内に流れ込む。隔壁又は分離壁は、上記で定義された中央平面に対して平行又は実質的に平行であることが好ましい。隔壁は、第1の中空環状部及び第2の中空環状部の一方又は両方の外壁と一体であることが好ましい。隔壁の幅は、主入口からの距離が増すにつれて、大きくなることが好ましく、両側において凹形状を有することが更により好ましい。好適な実施の形態において、隔壁は、上記で定義したように、中央平面の周りで対称的である。
【0024】
吸気ポートベルト装置において、第2のポート及び第4のポートはそれぞれ、第1の環状導管と第1のシリンダとの間、及び第2の環状導管と第2のシリンダとの間において流体連通を提供する。シリンダ内へのガスの改善された且つより均一な流れのために、第1の中空環状部及び第2の中空環状部の各々は、給気がシリンダ内にそれを通り流れ込む、複数の第2 /第4のポート(以下ではシリンダ入口ポートと呼ぶ)を具備することが好ましい。これらのシリンダ入口ポートは、シリンダ入口ポートのそれぞれの環状導管の内壁の周りで均等に周方向に分布することが好ましい。各シリンダ入口ポートの側壁は、ポートに隣接する環状部の内壁の表面に対して斜めに、即ち換言すれば、その点において環状チャンバ内のガス流路の方向に対して、斜めに配向されることが好ましい。この様にして、ガスが環状導管に沿って流れる際に、ガスは、ある角度においてシリンダ入口ポートを介してシリンダ内に向けられて、それによりガスをシリンダの周りで旋回させるので、従って燃料とガス(それは、過給空気であることが好ましい)の混合を改善することを可能にする。好適な実施の形態において、角度は、正しい旋回を達成するように選択される。もし角度が大き過ぎると、その場合、良好な燃焼を促進するには、シリンダ内の空気の動きが不十分になる。もし角度が小さ過ぎると、その場合、空気の動きが過剰になってもよく、燃料噴霧の過度の崩壊と、制限された流れの効果による過剰な圧送損失の発生と、を引き起こしてもよい。従って、角度は、シリンダ入口ポートの側壁と、シリンダの外壁であってもよい環状導管の内壁との間において20度以上であることが好ましい。更に、この角度はまた、90度以下である。
【0025】
第1の環状導管及び第2の環状導管の最も狭い点は、ガス流路の端部に位置しており、従ってガスは、最も狭い点の地点に最後に到達する。従って、大部分のガスが先行する出口ポートを介してシリンダに既に流入してしまっているので、より少ないガスが、流路のこの地点に達する。従って、断面積の減少の結果として、ガス質量流量が減少する。断面積の減少は、一定の流速及び一定のガス圧力を達成することを支援する(周面摩擦により、一定の流速及び一定のガス圧力において僅かな減少が存在してもよいけれども)。この点における質量流量を補うために、第1の中空環状部は、ポートベルト装置の主入口から、最小の断面積を有する、第1の環状導管の一部における又はその近傍における第1の環状導管の領域にガスを向けるように配置された、補助入口ポートを具備してもよい。この様にして、第1の環状導管の最も狭い部分は、直接的に、即ち第1の環状導管の残りの部分を介する以外に、主入口ポートと流体連通する。これにより、より多量のガスが入射することを可能にし、それに対応してガス流路の遠端部に位置する、1つ又は複数のシリンダ入口ポートを介して流れることを可能にする。対応する補助入口がまた、第2の中空環状部に設けられてもよい。好適な実施の形態において、第1の中空環状部及び第2の中空環状部の各々において複数の補助入口が存在する。これらの補助入口は、補助導管を介して環状導管に流入する空気が、空気流の方向に対して90度以下の角度及び20度以上の角度においてそうなるように、対応する環状導管に斜めに合流するように成形されることが好ましい。角度が小さいほど、2つの急速に流れるガスの流れが合流する時に生じる、乱流のリスクが減少する。補助入口は、上述のように、中央平面の周りで対称的に配置されることが好ましい。
【0026】
上述したように、ポートベルト装置はまた、排気ポートベルト装置として使用されてもよく、排気ポートベルト装置において、ベルトは、シリンダから排気出口に排気ガスを案内するように使用される。これらの実施の形態において、第1と第2と第3と第4のポートは、上述の吸気ポートベルト装置におけるそれらの機能と反対の機能を有する。具体的には、第2のポート及び第4のポートは、それぞれ、第1及び第2のシリンダと第1及び第2の環状導管との間において流体連通を提供する、シリンダ排気ポートである。同じ実施の形態において、第1のポート及び第3のポートは、出口ポートを形成し、出口ポートはそれぞれ、排気ガスを第1の環状導管及び第2の環状導管から排気出口に運ぶように構成される。従って、ガス流路は、第2の(シリンダ排気)ポートから第1の(出口)ポートへの第1の環状導管内において、及び第4の(シリンダ排気)ポートから第3の(出口)ポートへの第2の環状導管内において形成される。出口ポート(即ち第1と第3のポート)に向かって、即ち流路に沿ってより遠くなると、第1の環状導管及び第2の環状導管の幅が拡がる形状は、シリンダを出るガスが導管に沿って流れるのに十分な容積が、環状導管において存在することを確保する。吸気ポートベルト装置と同様に、排気ポートベルト装置においても、第1と第2の環状導管が、それぞれ第1と第3のポートからの周方向距離が増すにつれて、対応する中空環状部の平面に対して実質的に垂直な方向(即ちエンジンシリンダ軸線と平行に)において先細りすることがまた好ましい。
【0027】
エンジンの設計を単純化するために、排気ポートベルト装置は、第1と第3のポートと流体連通する、排気出口を更に具備してもよい。排気出口は、第1と第3のポートの両方を覆うのに十分な幅を有する、導管の形態であってもよい。
【0028】
排気ポートベルト装置において、第2のポート及び第4のポートはそれぞれ、第1の環状導管と第1のシリンダとの間、及び第2の環状導管と第2のシリンダとの間、において流体連通を提供する。シリンダからそれらのそれぞれの導管内へのガスの流れを改善するために、各中空環状部は、それぞれの環状導管の内壁の周りで周方向に均等に分配されてもよい、複数の第2 /第4のポート(即ちシリンダ排気ポート)を具備することが好ましい。各シリンダの排気ポートの側壁は、シリンダ排気ポートを囲む内壁の表面に対して斜めに、即ち換言すれば、その地点におけるガス流路の方向に対して斜めに向けられることが好ましい。従って、角度は、シリンダ排気ポートの側壁と、シリンダの外壁であってもよい環状導管の内壁との間において20度以上であることが好ましい。更に、この角度はまた、90度以下である。この様にして、排気ガスがシリンダから外へ強制排出される(ピストンの運動により、又は掃気によりのいずれか)と、排気ガスは、所望の流路の方向において、即ち出口ポートに向かって、環状導管内へ及びその周りへ向けられる。
【0029】
本発明の形態による吸気ポートベルトは、高級プラスチック、プラスチックマトリックス複合材料、又は金属により製造されてもよい。排気ポートベルトは、金属製又は金属マトリックス複合材料製であってもよい。
【0030】
本発明の第2の形態は、2サイクル内燃機関における使用のためのポートベルトを提供しており、このポートベルトが、環状導管を形成する中空環状部を有しており、環状導管は、第1のポートからの周方向距離が増すにつれて、中空環状部の平面に対して実質的に垂直な方向において(即ち、中空環状部が取り囲むシリンダの長手方向の軸線に平行に)先細りしており、中空環状部の内壁は第2のポートを有する。
【0031】
本発明の第2の形態によるポートベルトは、本発明の第1の形態を参照して上述した、任意選択の特徴のいずれかを具備してもよい。特に、本エンジンの第1の形態に類似した、二重式ポートベルト装置は、接合点における第1のベルトの環状導管の断面積が、接合点から最も遠い、第1のポートベルトの中空環状部の周上の点における第1のポートベルトの環状導管の断面積よりも小さくなるように、第1のポートベルトと第2のポートベルトとを、共に本発明の第2の形態に従って、第1のポートベルトと第2のポートベルトの各周上に位置する接合点において、共に接合することにより提供されてもよいことが留意されるべきである。
【0032】
本発明の第3の形態は、2サイクル内燃機関における使用のためのポートベルトを提供しており、このポートベルトは、入口ポート及び出口ポートを有する、環状導管を形成する中空環状部を有しており、入口ポート及び出口ポートは、環状導管の大部分の周りで周方向にガス流路を形成しており、そこでは、第1の中空環状部の壁は、入口ポートより出口ポートにより近い、その周における点において環状導管内にガスを向けるように構成された、補助入口を更に具備する。
【0033】
本発明の第2の形態と同様に、本発明の第3の形態によるポートベルトは、本発明の第1の形態を参照して説明した任意選択の特徴のいずれかを具備してもよい。二重式ポートベルト装置はまた、本発明の第1の形態においてと同様に、本発明の第3の形態の2つのポートベルトをそれらの各周上における接合点において共に接合することにより提供されてもよい。
【0034】
本発明の第4の形態は、隣接する一対のシリンダを含む、2サイクル内燃機関における使用のためのポートベルト装置を提供しており、この装置は、
第1の環状導管を形成する第1の中空環状部であって、第1の環状導管は、第1ポートからの周方向距離が増すにつれて半径方向において先細りしており、第1の環状導管の内壁は第2のポートを有する、第1の中空環状部と、
第2の環状導管を形成する第2の中空環状部であって、第2の環状導管は、第3のポートから周方向距離が増すにつれて半径方向において先細りしており、第2の環状導管の内壁は第4のポートを有する、第2の中空環状部と、を具備しており、そこでは、第1の中空環状部及び第2の中空環状部は、それらの各周上に配置される接合点において共に接合される。
【0035】
本発明の第5の形態は、第1のシリンダ及び第2のシリンダと、本発明の第1と第2と第3と第4の形態のいずれかの二重式ポートベルト装置と、を具備する2サイクル内燃機関を提供する。その様な内燃機関は、各々が本発明の第1、第2、第3又は第4の形態による関連する二重式ポートベルト装置を有する、複数対のシリンダを具備してもよい。
【0036】
その様な2サイクル内燃機関は、発電機、オンロード(路上用)及びオフロード(非路上用)の車輪付き又は無限軌道式車両、水陸両用車両、軽飛行機及びヘリコプター等の多数の大型機械において使用されてもよい。従って、本発明の第6の形態は、本発明の第5の形態の2サイクル内燃機関を含む、車両を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】
図1Aは、既知の二重式ポートベルト装置の概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態による二重式ポートベルト装置の平面図を示す概略図であり、吸気ポートベルト装置を示す。
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施の形態による二重式ポートベルト装置の平面図を示す概略図であり、排気ポートベルト装置を示す。
【
図2A】
図2Aは、二重式ポートベルト装置が吸気二重式ポートベルト装置として使用される、本発明の実施の形態による二重式ポートベルト装置の囲まれた容積を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、二重式ポートベルト装置が排気二重式ポートベルト装置として使用される、本発明の実施の形態による二重式ポートベルト装置の外観図を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態は、ここで、図面を参照して説明される。
【0039】
本発明の更なる任意選択の特徴は、以下の説明において記述される。
【0040】
図1B及び1Cは、本発明の第1の形態の一実施の形態によるポートベルト装置20を通る断面図である。これら2つの装置は、
図1Bが吸気ポートベルト装置を示しており、
図1Cが排気ポートベルト装置を示すという点において異なる。構造的には、これらは、同じであり、2つの間の唯一の相違は、環状部22A、22Bを通るガスの流れの方向が逆であることである。装置の構造的特徴の説明は、ここでは繰り返されず、
図1B及び1Cにおける同一の参照番号は、同じ特徴を参照する。
【0041】
装置20は、内壁25A、25Bにより形成された、中央開口部24A、24Bを各々が有する、2つの実質的に同一の(即ち鏡像)中空環状部22A、22Bを具備する。2つの中空環状部22A、22Bは、本実施の形態において環状部がそれに沿ってお互いに隣接する、線である接合点Jにおいて接合する。隔壁26は、環状導管を分離する。ポートベルト装置20は、中央平面Mの周りで対称である。中空環状部22A、22Bの両方は、隔壁26により分離される、環状導管を形成しており、各々(中空環状部22A、22B)は、主入口29から供給される、入口28A、28Bを有しており、主入口29は、両方の入口28A、28Bを覆うのに十分な幅を有する導管の形態である。吸気ポートベルトとして使用される実施の形態において、環状部22Aに関する流路Finにより示されるように(
図1Bのみ)、過給空気は、環状導管の周りで主入口29から流れる。環状部22B内の流路は、環状部22Aについて示されたものの鏡像(中央線Mの周りで)であろう。排気ポートベルト装置として使用される実施の形態において、即ち
図1Cにおいて、排気ガスは、内壁25A、25B内のシリンダポート(図示せず)を介して、シリンダから環状導管内へ流れ、出口28A、28Bを介して外へ流れる(出口28A、28Bは、
図1Bにおいて入口として作用する)。
図1Cにおいて、流路は、Foutで表示される。
【0042】
環状導管は、流路Fin沿って先細りする。例えば、右側の中空環状部22Bにおいて、WA> WB> WCである。その結果、環状導管の断面積もまた減少する。従って、2つの中空環状部22A、22Bは、2つの中空環状部22A、22Bが最も狭い領域30A、30Bの近くで接合されることが分かる。そうすることにより、使用時に、2つのシリンダの中心の間隔は、
図1Aに示される従来技術のポートベルト装置1における間隔よりも小さい。間隔2R1'は、ポートベルト装置20の全幅Wの半分未満である。
【0043】
図2A及び2Bは、本発明によるポートベルト装置20の斜視図を示す。留意されるように、
図2A及び2Bに示されるポートベルト装置20は、上述のような「シェル」実施の形態の一例であり、中空環状部22A、22Bは、内壁を有さない。具体的には、2Aは、ポートベルト装置20の内部包囲容積、即ち中空環状部22A、22Bにより形成される、環状導管の形状を示す。
図2Bは、ポートベルト装置20の外観図を示す。
図1Bを参照して説明される特徴は、簡潔にするために、ここでは再度説明しないが、しかし斜視図は、幾つかの追加の特徴を強調する。第1に、過給空気が周方向に均等に分配された状態でシリンダに流入することを確保するように、過給空気が先ず流路Finの周りを一周して流れる必要なしに、過給空気をこの領域30に供給するために、主入口29を環状導管の最も狭い領域30A、30Bに接続する、補助入口32A〜Dが存在する。
図2Aはまた、環状導管が、半径方向と同様に、高さ方向Hにおいても先細りすることを示す。環状導管の最も広い点が、段差31A、31Bにおいて、最も狭い点30A、30Bと流体連通するが、しかし入口28A、28Bは、分岐して導管を回って両方向に流れる(補助入口32A〜Dを介して流入するガスを除いては)よりはむしろ、ガスが流路Finに沿って流れることを確保するように形作られることも分かる。
【0044】
本発明は、上記の例示的な実施の形態と共に説明されてきたが、この開示が与えられた時に、多くの同等の修正例及び変形例が、当業者には明らかであろう。従って、上記の本発明の例示的な実施の形態は、例示的であり、限定的ではないと考えられる。記載された実施の形態に対する様々な変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施されてもよい。