特許第6959345号(P6959345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6959345フェムト秒レーザを使用して眼にフラップを作成するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959345
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】フェムト秒レーザを使用して眼にフラップを作成するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/009 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   A61F9/009
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-540079(P2019-540079)
(86)(22)【出願日】2017年1月28日
(65)【公表番号】特表2020-505148(P2020-505148A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】IB2017050463
(87)【国際公開番号】WO2018138552
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マルティン
(72)【発明者】
【氏名】イェルク グランップ
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510478(JP,A)
【文献】 特表2013−540007(JP,A)
【文献】 特表2010−528758(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0104600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/009
A61F 9/008
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェムト秒レーザを使用して眼にフラップを作成するためのシステムであって、
治療波長を供給するように動作可能なフェムト秒レーザと、
前記フェムト秒レーザの位置を調整するように動作可能な制御装置と、
眼の上のワンピース型患者インタフェースであって、
円形上側部分と、
前記円形上側部分と一体形成された円錐形下側部分と、
前記円錐形下側部分の中の圧平板であって、フェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有し、非治療波長に対して実質的に反射性を有する圧平板コーティングで被覆される圧平板と、
真空コネクタと、
を含むワンピース型患者インタフェースと、
反射非治療波長を検出して、検出された前記反射非治療波長に関するデータを生成するように動作可能な検出装置と、
プロセッサであって、
前記検出装置から、検出された前記反射非治療波長に関するデータを受信し、
前記フェムト秒レーザの治療波長を使用してフラップを作成するための測定値を生成する
ように動作可能なプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記フェムト秒レーザの前記治療波長は900nmより長い近赤外波長であり、前記非治療波長は200〜400nmの範囲内の紫外波長を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記フェムト秒レーザの前記治療波長は900nmより長い近赤外波長であり、前記非治療波長は200〜400nmの範囲内の紫外波長及び400〜700nmの範囲内の可視波長を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記圧平板コーティングは、使用中に患者の眼に面する側である前記圧平板の外側を被覆する、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記圧平板コーティングは生体適合性であり、生物学的に不活性であり、接触したときに眼に刺激を与えず、接触したときに前記眼に残留物を残さない、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧平板コーティングは、使用中に患者の眼に面しない側である前記圧平板の内側を被覆する、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術及び手術器具に関し、より詳しくは、眼科手術用のフェムト秒レーザの1段階式ドッキングのためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科において、眼科手術は眼及び付属的視覚構造に対して行われ、毎年何万人もの人々の視力を保存し、改善している。しかしながら、視覚が眼内の小さい変化によってさえ影響を受けやすく、多くの眼構造が微細で繊細な性質であることを考えると、眼科手術は施行が難しく、軽微又は稀な手術のエラーを減少させたり、外科的技術の精度を少し高めたりしただけでも、術後の患者の視力には非常に大きな差が生じる可能性がある。
【0003】
眼科手術の一種である屈折矯正眼科手術は、様々な視覚異常を矯正するために使用される。1つの一般的なこのような屈折矯正手術はLASIK(laser−assisted in situ keratomileusis:レーザー光線近視手術)と呼ばれ、近視及び遠視、乱視、又はより複雑な屈折異常を矯正するために使用される。その他の眼科手術では、角膜欠損又はその他の問題が補正されるかもしれない。例えば、治療的表層角膜切除術(PTK:phototherapeutic keratectomy)は、病変角膜組織又は角膜不正形状を単独で、又はLASIKとの併用で除去するために使用されてよい。別の一般的な眼科手術は、白内障の除去である。
【0004】
LASIK、PTK、白内障手術及びその他の眼科手術中、矯正のための処置は一般に、眼表面ではなく、眼の内部、例えば角膜基質や水晶体に対して行われる。この実践には、矯正処置の標的を眼の最も有効な部分に絞ることによって、角膜の外側の保護的部分をほとんど無傷に保つことによって、及びその他の理由によって、手術成績を改善する傾向がある。
【0005】
眼の内部には様々な方法でアクセスされてよいが、よく行われるアクセスには、角膜にフラップを作成すること、又はそれ以外に角膜を切開することが含まれる。角膜の切開は、フェムト秒レーザによって行われることが多く、これは集束された超短パルスを生成するものであり、より低速のレーザに伴う周辺組織の付随的損傷やブレード等の機械的な切開器具に伴う合併症を排除する。したがって、フェムト秒レーザは顕微鏡レベルで組織を切開するために使用できる。
【0006】
フェムト秒レーザ眼科手術は典型的に、ドッキング、画像化、分析、及び治療を含む。ドッキングは典型的には2段階式の手順であり、まず吸引リングが眼の上にセットされ、次に、吸引コーンが患者の眼に向かって下降され、吸引リングとドッキングさせられる。吸引リングは、吸引リングが眼の上に正しく位置付けられた後にオンにされる真空吸引によって所定の位置に、眼と接触した状態で保持されることが多い。吸引コーンが吸引リングに正しくドッキングされると、第二の真空源がオンにされて、吸引コーンが所定の位置に、吸引リングと接触した状態で保持されてもよい。ドッキングされた吸引コーンから患者の眼にかかる圧力によって患者の角膜は扁平化し(圧平と呼ばれる)、それが治療位置に保たれる。ドッキング手順のためには、角膜を扁平化しない湾曲コーンも使用されてよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、フェムト秒レーザの1段階式ドッキングのためのワンピース型患者インタフェースを提供し、ワンピース型患者インタフェースは、円形上側部分と、円形上側部分と一体に形成される円錐形下側部分と、円錐形下側部分の中の圧平板と、真空コネクタと、を含む。
【0008】
明らかに排他的でないかぎり相互に組み合わせられてもよい追加的実施形態において、圧平板は、フェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有し、非治療波長に対して実質的に反射性を有する圧平板コーティングを含み、フェムト秒レーザの治療波長は900nmより長い近赤外波長であり、非治療波長は200〜400nmの範囲内の紫外波長を含み、フェムト秒レーザの治療波長は、900nmより長い近赤外波長であり、非治療波長は200〜400nmの範囲内の紫外波長及び400〜700nmの範囲内の可視波長を含み、圧平板コーティングは圧平板の外側を被覆し、圧平板コーティングは生体適合性であり、生物学的に不活性であり、接触したときに眼に刺激を与えず、接触したときに眼に残留物を残さず、圧平板コーティングは圧平板の内側を被覆する。
【0009】
本開示はさらに、フェムト秒レーザの1段階式ドッキングのための方法を提供し、これは、ワンピース型患者インタフェースの真空コネクタに真空源を接続するステップであって、患者インタフェースは円形上側部分と、円形上側部分と一体形成された円錐形下側部分と、円錐形下側部分の中の圧平板と、真空コネクタと、を含むステップと、フェムト秒レーザをワンピース型患者インタフェースに接続するステップと、ワンピース型患者インタフェースを眼の上に位置付けるステップと、真空源を作動させて、患者インタフェースを眼と接触した状態に保持し、眼を圧平するステップと、を含む。
【0010】
明らかに排他的でないかぎり相互に組み合わせられてもよい追加的実施形態において、方法は、追加の真空源を接続せず、又は作動させないステップをさらに含む。
【0011】
本開示はさらに、フェムト秒レーザを使用して眼にフラップを作成するためのシステムを提供し、システムは、治療波長を供給するように動作可能なフェムト秒レーザと、フェムト秒レーザの位置を調整するように動作可能な制御装置と、ワンピース型患者インタフェースと、を含む。ワンピース型患者インタフェースは、円形上側部分と、円形上側部分と一体形成された円錐形下側部分と、円錐形下側部分の中の圧平板であって、フェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有し、非治療波長に対して実質的に反射性を有する圧平板コーティングで被覆される圧平板と、真空コネクタと、を含む。システムは、反射非治療波長を検出して、検出された反射非治療波長に関するデータを生成するように動作可能な検出装置と、検出装置から、検出された反射非治療波長に関するデータを受信し、フェムト秒レーザの治療波長を使用してフラップを作成するための測定値を生成するように動作可能なプロセッサと、をさらに含む。
【0012】
明らかに排他的でないかぎり相互に組み合わせられてもよい追加的実施形態において、フェムト秒レーザの治療波長は900nmより長い近赤外波長であり、非治療波長は200〜400nmの範囲内の紫外波長を含み、フェムト秒レーザの治療波長は、900nmより長い近赤外波長であり、非治療波長は200〜400nmの範囲内の紫外波長及び400〜700nmの範囲内の可視波長を含み、圧平板コーティングは、圧平板の外側を被覆し、圧平板コーティングは生体適合性であり、生物学的に不活性であり、接触したときに眼に刺激を与えず、接触したときに眼に残留物を残さず、圧平板コーティングは圧平板の内側を被覆する。
【0013】
上記の装置は上記の方法に使用されてよく、その逆でもある。それに加えて、本明細書に記載されている何れのシステムも、本明細書に記載されている何れの方法にも使用されてよく、その逆でもある。
【0014】
本発明ならびにその特徴及び利点をさらによく理解するために、ここで、以下の説明を添付の図面と共に参照するが、図は正確な縮尺によらず、図中、同様の番号は同様の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】フェムト秒レーザの1段階式ドッキングのための装置の概略図である。
図2】圧平板コーティングを備える圧平板の概略上面図である。
図3】フェムト秒レーザを使用して眼にフラップを作成するためのシステムの概略図である。
図4】フェムト秒レーザの1段階式ドッキングのための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明の中で、開示されている主題を論じやすくするために、例として詳細事項が示されている。しかしながら、当業者にとっては開示されている実施形態は例示にすぎず、考えうる実施形態のすべてを網羅しているわけではないことが明らかであるはずである。
【0017】
本開示は、眼科手術のためのフェムト秒レーザの1段階式ドッキングの装置と方法を提供する。本明細書において使用されるかぎり、1段階式とは、眼を圧平する前の中心合わせと調整の単独プロセスを指す。ドッキング装置はワンピース型患者インタフェースを含み、これは円形上側部分と、円形上側部分と一体形成された円錐形下側部分と、を有する。円形上側部分はフェムト秒レーザに接続されてもよい。円錐形下側部分は圧平板を有し、これは眼の角膜を圧平する。圧平板は、圧平板コーティングを有していてもよく、これはフェムト秒レーザの眼の角膜にフラップを作成する波長(「治療波長」という)に対して実質的に透過性を有するが、フェムト秒レーザのその他の波長(「非治療波長」という)に対しては実質的に反射性を有する。例えば、「実質的に透過性を有する」とは、コーティングが透過性を有する場合に治療波長での放射の少なくとも90%を通過させることができることを意味し、「実質的に反射性を有する」とは、コーティングが反射性を有する場合に非治療波長での放射の少なくとも80%を反射させることを意味してもよい。圧平板コーティングにより、ワンピース型患者インタフェースの長さの正確な測定が可能となってよく、それは、これによって眼の上に位置付けられているときでも非治療波長を反射させる表面が提供されるからである。方法は、真空源をワンピース型患者インタフェースに接続するステップと、フェムト秒レーザをワンピース型患者インタフェースに接続するステップと、ワンピース型患者インタフェースを眼の上に位置付けるステップと、真空源を作動させて、患者インタフェースを眼と接触した状態に保ち、眼を圧平するステップと、を含む。
【0018】
本開示はまた、フェムト秒レーザを使用して眼にフラップを作成するシステムも提供する。システムは、フェムト秒レーザと、フェムト秒レーザの位置を調整するための制御装置と、ワンピース型患者インタフェースと、反射した非治療波長を検出し、検出された反射非治療波長に関するデータを生成することができる検出装置と、検出装置から、検出された反射非治療波長に関するデータを受信し、フラップを作成するための測定値を生成することのできるプロセッサと、を含む。
【0019】
本開示は、フェムト秒レーザの1段階式ドッキングに関し、これによって、先行技術の2段階式ドッキング手順と異なり、使用者は光学測定値をより容易に取得し、ドッキングをより速く行い、治療をより早く始めることができるかもしれない。1段階式ドッキングでは、図1で説明されるワンピース型患者インタフェースが眼の上で中心合わせされ、整列される。フェムト秒レーザは、ワンピース型患者インタフェースに直接接続され、その後、これは眼の上に位置付けられる。
【0020】
これに対して、2段階式ドッキングは、まず吸引リングを眼の上に適正に位置付けることと、第一の真空源を作動させることと、吸引コーンを下降させて、吸引リング上で中心合わせすることと、第二の真空源を作動させることと、を含む。第一の真空源は、吸引リングを所定の位置に、眼と接触した状態で保持し、第二の真空源は吸引コーンを所定の位置に、吸引リング及び眼と接触した状態で保ち、眼の角膜を圧平することができる。したがって、2段階式ドッキングとは、フェムト秒レーザを治療にとって適当な位置に保つのに必要な、吸引リングのための第一と、吸引コーンのための第二の、2つのステップの中心合わせ及び整列を指す。2段階式ドッキングは、複数の構成部品(吸引リングと吸引コーン)のすべてを相互に関して、及び使用者が選択する中心合わせ軸に関して中心合わせしなければならないため、完了までにより多くの時間を要し、エラーの可能性がより高くなる。さらに、2段階式ドッキング手順には2つの真空源又は真空コネクタが必要であり、それは、吸引リングを、吸引コーンとは独立して、所定の位置に、眼と接触した状態で保たなければならないからである。複数の真空源又は真空コネクタを使用することにより、吸引が一貫しなくなる可能性が高まり、その結果、眼に対して加えられる吸引力が大きすぎるか、眼を圧平し、ドッキング構成部品を所定の位置に保持するための吸引力が小さすぎることになるかもしれない。
【0021】
これに対して、本明細書で開示されるワンピース型患者インタフェースの場合、ワンピース型患者インタフェースは1つの真空源のみを使用して眼と接触した状態に保持されてもよいため、2つの真空源が不要となる。しかしながら、本明細書には1つの真空源のみに関連して説明されているものの、複数の真空源又は真空コネクタをワンピース型患者インタフェースで使用して、それを適正な位置において眼と接触した状態に保持してもよい。これらは1つの真空源又は1つの真空コネクタで動作できるため、1つの真空源又は1つの真空コネクタについて開示されている装置、システム、及び方法は、複数の真空源又は真空コネクタに伴う眼への一貫しない吸引又は器具の故障から生じるエラーを減少させるかもしれない。
【0022】
2段階式ドッキングに関する外科的処置のための測定値を取得するために、使用者は典型的に、吸引コーンを眼の上の、しばしば予備ラッチング位置と呼ばれる箇所に位置付ける。このステップはしばしば、フォーカスチェックと呼ばれる。吸引コーンは眼を圧平するため、使用者はすると、フラップを作成するため、又はその後の何れかの外科的処置を行うために必要な、何れかの測定値を取得するかもしれない。次に、吸引コーンが眼から取り外され、取得された測定値を使用して、フラップを作成するためのフェムト秒レーザがプログラムされてもよい。フラップを作成するために眼にドッキングさせるために、使用者は吸引リングを眼の上で適正に位置付け、第一の真空源をオンにし、吸引コーンを適正に位置付けられた吸引リングに関して中心合わせし、第二の真空源をオンにする。眼が適正にドッキングされると、それは治療位置にある、と言われる。測定値は予備ラッチング位置で取得されるため、使用者は一般に、取得された測定値は治療位置にも依然として当てはまり、それにとって正確であると仮定するが、これは事実ではないかもしれない。このような測定値が取得され、行為は慎重に行われても、使用者によるエラーは依然として蔓延している。
【0023】
これに対して、本明細書に記載されているワンピース型患者インタフェースは、それが測定値取得後も所定の位置にとどまるかもしれないため、及びその設計が改良されるため、測定値の正確さを改善し、治療を改善するかもしれない。
【0024】
ワンピース型患者インタフェースは眼を圧平する圧平板を有し、これはその円錐型下側部分に作られる。この圧平板は圧平板コーティングを有していてもよく、これはフェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有し、フェムト秒レーザの非治療波長に対して実質的に反射性を有する。圧平板コーティングは、フェムト秒レーザビームの反射が非常に低く、正確な測定にとって最適ではないため、有益である。特に、試験が2段階式ドッキングシステムで行われた場合、複屈折が生じ、測定精度に支障をきたす。
【0025】
それゆえ、圧平板コーティングで反射された非治療波長を検出することにより、使用者は、眼がドッキングされ、圧平された状態で、これらの反射非治療波長の検出と分析を介して眼の測定値を取得してもよい。このような測定値は、例えばワンピース型インタフェースを眼から外さずに(測定値が再位置決めが必要であることを示していないかぎり)、フラップの作成に使用されてよい。測定値は予備ラッチング位置で取得する必要がなく、それによって、取得された測定値の精度と的確さが向上するかもしれない。それに加えて、患者はフラップの作成と治療中、できるだけじっとしたままでなければならないため、1段階式ドッキングによりもたらされるかもしれない、ドッキング及び治療時間のどのような短縮も、患者にとって大きな利益となり、意図しない動きに伴うリスクが低下する。一般に、2段階式ドッキングでは、使用者が吸引リングを眼の上に位置付けるために少なくとも数秒かかるかもしれず、吸引コーンをフェムト秒レーザにドッキングするのにさらに5〜30秒かかるかもしれないが、5秒でのドッキングも稀であり、熟練した使用者でなければ実現できないことが多い。それに対して、1段階式ドッキングでは、ある程度経験のある使用者で、いったんフェムト秒レーザに取り付けられたワンピース型患者インタフェースをドッキングさせるのにかかるのはわずか5秒であるかもしれず、熟練使用者であれば、ドッキング時間は半分に短縮されるかもしれない。
【0026】
さらに、2段階式ドッキングにおいては、例えば吸引コーンを手動で、又は制御装置を介してz方向(後でさらに定義する)に下降させすぎると、吸引コーンの機械的変形が発生するかもしれない。このような機械的変形は何れも、フォーカス制御と予備ラッチング位置で取得される測定値に影響を与える。使用者がフェムト秒レーザを直接接続できるようにすることにより、本明細書で開示されているワンピース型患者インタフェースでは、このような不利な機械的変形とそれにより生じる眼測定のエラーのリスクを最小化され、又は排除される。
【0027】
ここで、図1及び図2を参照すると、ワンピース型患者インタフェース100は、円形上側部分105及び円錐形下側部分110と、ワンピース型患者インタフェース100から延びる管状部材であってもよい真空コネクタ125と、を有する。真空コネクタ125は、円錐形下側部分110に、従来の吸引リングに見られるものと同様の方法で接続されてもよい。特に、それは円錐形下側部分110により画定される内部開放領域とつながってもよく、それによって真空が眼に加えられて、ワンピース型患者インタフェース100が眼の上の所定の位置に保持されてもよい。
【0028】
円錐形下側部分110は、圧平板115を有する。圧平板115は、圧平板コーティング120(その上面図は図2に示されている)を有する。圧平板115は例えば、滅菌ガラス圧平板であってもよい。圧平板コーティング120はフェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有するが、フェムト秒レーザの非治療波長に対しては実質的に反射性を有する。圧平板コーティング120は例えば、フェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有するが、非治療波長に対しては実質的に反射性を有する生体適合ポリマであってもよい。
【0029】
圧平板コーティング120は、フェムト秒レーザの治療波長に対して実質的に透過性を有し、非治療波長に対して実質的に反射性を有してもよい。図のように、圧平板コーティング120は圧平板115の外側のみを被覆し、これは使用中、眼と対向する側である。図1及び図2において、圧平板コーティング120は外側の表面を、圧平板の中心付近で円形に部分的にのみ被覆する。他の変形型では、圧平板コーティングは、圧平板の片側又は両側の全体又は何れかの部分を被覆してもよい。圧平板コーティングは、圧平板の何れかの側、例えば圧平板の、使用中に眼と対向する外側、又は圧平板の、使用中に眼と対向しない内側に塗布されてもよい。あるいは、圧平板コーティングは、圧平板の両側(外側及び内側)を被覆してもよい。多くの場合、製造上の問題から、又はそのほうがフェムト秒レーザの光学系との干渉が少ないかもしれないことから、圧平板の外側のみが被覆されてもよい。圧平板は、治療波長に対して実質的に透過性を有するが、非治療波長に対しては実質的に反射性を有するようにカスタム化された標準的コーティングで被覆されてもよい。圧平板コーティングは、使用される圧平板にとって適当な何れの直径であってもよく、例えば圧平板コーティングの直径は12mmであってもよい。
【0030】
圧平板コーティング120又は他の何れの圧平板コーティングも生体適合性であり、生物学的に不活性であってもよく、それによって接触したときに眼を刺激しない。圧平板コーティングはまた、接触後に眼に残留物を残さないものであってもよい。このような圧平板コーティングは、圧平板の外側においてより有利であるかもしれない。
【0031】
一般に、フェムト秒レーザの治療波長は近赤外で900nmより長いか、赤外で1000nmより長いか、多くの場合、約1030nm又は1053nmである。非治療波長は例えば、200〜400nmの範囲内の紫外波長及び400〜700nmの範囲内の可視波長を含む。それゆえ、圧平板コーティングは、例えば900nmより長いか、1000nmより長い赤外波長であるフェムト秒レーザの治療波長に対して透過性を有し、200〜400nmの範囲内の紫外波長及び400〜700nmの範囲内の可視波長である非治療波長に対して反射性を有してもよい。別の例において、圧平板コーティングは、1000nmより長い赤外波長であるフェムト秒レーザの治療波長に対して透過性を有し、200〜400nmの範囲内の紫外波長である非治療波長に対して反射性を有してもよい。
【0032】
圧平板コーティングが特定の波長に対して反射性を有するため、ワンピース型患者インタフェースにより使用者は、ワンピース型患者インタフェースが治療位置にあるときに光学的測定値を取得できてもよい。使用者は反射した非治療波長の検出と分析を介して眼の測定値を取得してもよく、すると、ワンピース型患者インタフェースを取り外して、ドッキングしなおすことなく、眼の治療を開始してよい。
【0033】
図3は、フェムト秒レーザ205を用いて眼にフラップを作成するためのシステム200の概略図である。図のように、システム200はフェムト秒レーザ205を含み、これはフェムト秒レーザのx、y、又はz方向における位置を調整できる制御装置210を有する。x及びy方向は角膜頂点に略垂直な平面内に画定されてもよく、z方向はx及びy方向のそれに略垂直な平面として画定されてもよい。フェムト秒レーザ205はまた、プロセッサ220及びメモリ225に接続される。システム200はまた、ワンピース型患者インタフェース100も含み、これは円形上側部分105及び円錐形下側部分110と、真空コネクタ125と、を有する。円錐形下側部分110は、圧平板コーティング120を持つ圧平板115を有する。図3に示されるように、圧平板115は眼10と接触しており、眼10を圧平している。
【0034】
フェムト秒レーザ205はさらに、検出装置215に接続されていてもよく、これは圧平板コーティング120により反射される非治療波長を検出し、データを生成し、それがプロセッサ220に送信され、処理され、測定値を生成するために使用されてもよく、これはすると、フェムト秒レーザ210を使用して眼10にフラップを作成するために使用されてよい。例えば、検出装置215は非治療波長を感知する標準的なフォトダイオードを含んでいてもよく、又はプロセッサ220に接続されたデジタルカメラであってもよい。
【0035】
検出装置210により生成されるデータとプロセッサ220により生成される測定値は手術平面と比較されて、手術を進めてよいか否かが特定され、ワンピース型患者インタフェース100又はフェムト秒レーザ210が正しく位置付けられているか否かを特定するために評価され、眼10の角膜にフラップを作成するようにフェムト秒レーザ210をプログラムし、又はフェムト秒レーザ210を使用して眼10の角膜にフラップを作成することに関連してそれ以外に使用されてよい。
【0036】
図4は、フェムト秒レーザの1段階式ドッキングのための方法300のフローチャートである。方法は、図1〜3において上述したもののような、本明細書に記載されているドッキング装置及びシステムに関連して使用されてよい。
【0037】
ステップ305で、真空源が、例えば真空源から患者インタフェースの真空コネクタへとチューブを接続することにより、ワンピース型患者インタフェースに接続される。ステップ310で、フェムト秒レーザがワンピース型患者インタフェースに接続される。フェムト秒レーザは、それが眼の角膜にフラップを作成するための位置にあるように接続されてよい。
【0038】
ステップ315で、ワンピース型患者インタフェースが眼の上に位置付けられる。位置付けられたら、ワンピース型患者インタフェースは使用者が選択する中心合わせ軸に関して中心合わせされてもよい。この使用者が選択する中心合わせ軸は、例えば眼の中心、瞳孔の中心、又は患者の視軸であってもよい。患者に応じて、視軸は患者の眼の絶対中心を通らなくてもよい。ステップ320で、真空源が作動させられて、ワンピース型患者インタフェースが眼と接触した状態に保たれ、眼が圧平される。
【0039】
上で開示された主題は、例示的であり、限定的ではないと考えるものとし、付属の特許請求の範囲は本開示の実際の主旨と範囲に含まれる改変、改良、及び他の実施形態のすべてを包含することが意図される。例えば、本開示の変形型は、眼を圧平しない湾曲コーンを使用してもよい。法の下で可能なかぎり最大限に、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲及びその均等物の可能なかぎり最も広い解釈により特定されるものとし、上記の詳細な説明によって制限又は限定されないものとする。
図1
図2
図3
図4