特許第6959424号(P6959424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959424
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20211021BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20211021BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20211021BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20211021BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K7/14
   C08L77/06
   C08L71/12
   C08G69/26
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-195856(P2020-195856)
(22)【出願日】2020年11月26日
(62)【分割の表示】特願2015-142421(P2015-142421)の分割
【原出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2021-28401(P2021-28401A)
(43)【公開日】2021年2月25日
【審査請求日】2020年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-154530(P2014-154530)
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】高野 隆大
(72)【発明者】
【氏名】住野 隆彦
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−114418(JP,A)
【文献】 特開2008−106265(JP,A)
【文献】 特開2014−58603(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/042070(WO,A1)
【文献】 特開平9−221338(JP,A)
【文献】 特開2013−35908(JP,A)
【文献】 特開2008−7753(JP,A)
【文献】 特開2010−84007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00−77/12
C08K 7/00− 7/28
C08L 77/06
C08L 71/00−71/14
C08G 69/00−69/50
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、
溶融したポリアミド樹脂(A)に投入する前の平均繊維長が100〜3000μmのガラス繊維(B)50〜200重量部を含み、前記ガラス繊維(B)は、SiO2を80〜45.0重量%、Al23を0.1〜20重量%およびB23を10〜35重量%含み、かつ、Dガラスから構成され、かつ、チョップドストランドである、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、衝撃改良剤をポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜40重量部の割合で含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、セバシン酸に由来する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項8】
前記成形品が、携帯電子機器部品の筐体である、請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
前記成形品が、アンテナを有する、請求項7または8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。また、上記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリアミド樹脂にガラス繊維を配合して、機械的強度を向上させることが検討されている。また、このような繊維強化ポリアミド樹脂組成物を携帯電子機器の筐体に用いることも検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−084007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、繊維強化ポリアミド樹脂組成物を携帯電子機器部品の筐体に用いる場合、アンテナ特性が問題となる。
本発明はかかる課題を解決することを目的としたものであって、アンテナ特性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。また、上記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、所定の平均繊維長を有し、かつ、所定の組成を満たすガラス繊維を用いることにより、アンテナ特性に優れた繊維強化ポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、平均繊維長が100〜3000μmのガラス繊維(B)50〜200重量部を含み、前記ガラス繊維(B)は、SiO2を80〜45.0重量%、Al23を0.1〜20重量%およびB23を10〜35重量%含む、ポリアミド樹脂組成物。
<2>ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、平均繊維長が100〜3000μmのガラス繊維(B)50〜200重量部を含み、前記ガラス繊維(B)は、SiO2を45〜70重量%、Al23を6〜20重量%、および、B23を10〜35重量%含む、ポリアミド樹脂組成物。
<3>前記ガラス繊維(B)は、さらに、CaOを0〜12重量%、MgOを0.5〜12重量%、および、他の金属酸化物を0〜6重量%含む、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<4>さらに、衝撃改良剤をポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜40重量部の割合で含む、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<5>前記ポリアミド樹脂(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<6>前記ガラス繊維(B)の平均繊維長は、70〜500μmである、<1>〜<5>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<7>前記ガラス繊維(B)がチョップドストランドである、<1>〜<6>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<8>さらに、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む、<1>〜<7>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<9><1>〜<8>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
<10>前記成形品が、携帯電子機器部品の筐体である、<9>に記載の成形品。
<11>前記成形品が、アンテナを有する、<9>または<10>に記載の成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、アンテナ特性に優れた繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供可能になった。また、上記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0008】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、平均繊維長が100〜3000μmのガラス繊維(B)50〜200重量部を含み、前記ガラス繊維(B)は、SiO2を80〜45.0重量%、Al23を0.1〜20重量%およびB23を10〜35重量%含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、アンテナ特性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
さらに、本発明では、所定のガラス繊維を配合しているので、機械的強度にも優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。所定のガラス繊維を配合したことによる機械的強度の向上は、上記ガラス繊維(B)は従来から広く用いられているEガラスなどと比して、比重が小さいため、同じ体積の樹脂組成物中に、従来よりも多い体積のガラス繊維を配合できることが起因していると推測される。
【0009】
<(A)ポリアミド樹脂>
本発明で用いるポリアミド樹脂は特に定めるものでは無く、公知のものを用いることができる。具体的には、特開2010−084007号公報の段落0017〜0027の記載、特開2014−034606号公報の段落0010〜0018の記載、特開2014−058603号公報の段落0013〜0021の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
特に、本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂であって、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂が好ましい。
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、8〜18がより好ましく、6、10が特に好ましい。
ポリアミド樹脂の好ましい重量平均分子量は10,000〜50,000、より好ましくは14,000〜30,000である。
【0010】
ポリアミド樹脂の重縮合の原料であるジアミン化合物としては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、(2,2,4−または2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環式、芳香族のジアミン等が挙げられる。
【0011】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環式、芳香族のジカルボン酸等が挙げられる。
【0012】
ω−アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸が挙げられる。
【0013】
これらの原料から重縮合されてなるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT等が挙げられる。本発明においては、これらポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0014】
<他の樹脂成分>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を含んでいても良い。他の樹脂成分としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ビニル化合物重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種類のみ含んでいても、2種類以上含んでいても良い。本発明では、特に、ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい例として挙げられる。更に好ましいポリフェニレンエーテル樹脂は不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和脂肪族カルボン酸等によって酸変性された樹脂である。その他、クロロホルム中で測定した30℃の極限粘度が0.2〜0.8dl/gであるものが好ましく、0.3〜0.6dl/gであるものがより好ましい。極限粘度を0.2dl/g以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度が向上する傾向にあり、0.8dl/g以下とすることにより、流動性が向上し、成形加工が容易になる傾向にある。
ポリフェニレンエーテル樹脂の詳細は、特開2014−034606号公報の段落0019〜0026の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0015】
<樹脂成分の配合量>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を合計で、70〜30重量%の割合で含み、60〜30重量%の割合で含むことが好ましく、49〜35重量%の割合で含むことがさらに好ましい。
ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の重量比(ポリアミド樹脂/ポリフェニレンエーテル樹脂)は5〜1であることが好ましく、4〜1であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物における、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂以外の樹脂成分の配合量は、ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の合計量の10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、2重量%以下であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。実質的に含まないとは、積極的に配合しないことをいい、不純物等意図せずに含まれてしまうものまでを排除する趣旨ではない。
【0016】
<ガラス繊維>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、平均繊維長が100〜3000μmで、かつ、SiO2を80〜45.0重量%、Al23を0.1〜20重量%およびB23を10〜35重量%含む。好ましくは、平均繊維長が100〜3000μmで、かつ、SiO2を45〜70重量%、Al23を6〜20重量%、および、B23を10〜35重量%含む、ガラス繊維を含む。
本発明で用いるガラス繊維は、さらに、CaOを0〜12重量%、MgOを0〜12重量%、および、他の金属酸化物を0〜6重量%含むことが好ましく、CaOを0〜12重量%、MgOを0.5〜12重量%、および、他の金属酸化物を0〜6重量%含むことが特に好ましい。
【0017】
SiO2はガラスの骨格を形成する成分であり、かつ、ガラスの誘電率および誘電正接を小さくする作用がある。SiO2を80重量%以下とすることにより、ガラス繊維の溶融性が向上し、紡糸時に溶出量が高く、繊維化し易いという点から好ましい。
Al23は、電気特性を悪化させることなくガラスの溶融性および失透性を改善する成分であるが、7〜13重量%が好ましい。
【0018】
23は、誘電率、誘電正接を下げ、かつ高温粘度を下げる役割を有する成分であるが、その含有量が10質量%より少ないと、これらの作用効果が得られ難い。一方、35質量%より多くなると、溶融時や紡糸時における揮発量が増大し、生産性が悪化する。より好ましい範囲は、16〜32重量%であり、さらに好ましい範囲は、18〜30重量%である。
【0019】
MgOは、ガラスの溶融を促進する融剤として働くが、その含有率を12重量%以下とすると、誘電率を効果的に抑制することができ好ましい。ガラスの溶融性を向上させるためには、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。またガラスの誘電率をより効果的に低下させるためには、9質量%以下であることが好ましい。MgOの特に好ましい範囲は、3〜8質量%であり、一層好ましい範囲は、4.2〜8質量%である。
【0020】
CaOは、MgOと同様に融剤としての効果があるが、その含有量が12重量%以下とすると、誘電率をより効果的に低下させることができ好ましい。より好ましい範囲は5重量%以下であり、さらに好ましい範囲は4重量%以下であり、特に好ましい範囲は、1.5重量%以下である。
尚、MgOとCaOの合量が4重量%以上(好ましくは4.5重量%以上)であると、優れた溶融性が得られ、特に好ましい。
本発明で用いるガラス繊維は、他の金属酸化物を含んでいてもよい。他の金属酸化物は、6重量%以下であり、3重量%以下であることが好ましい。下限値としては、0重量%であってもよい。
【0021】
本発明で用いるガラス繊維の平均繊維長は、100〜500μmであることが好ましい。
本発明における平均繊維長は、顕微鏡で写真撮影を行い、その写真画像に対して、画像解析ソフトを用い、1000〜2000本のガラス繊維について測定を行ったものをいう。
【0022】
また、本発明で用いるガラス繊維は、表面処理剤によって表面が処理されていてもよい。
【0023】
本発明で用いるガラス繊維の断面積は、好ましくは2×10-5〜8×10-3mm2、より好ましくは8×10-5〜8×10-3mm2、さらに好ましくは8×10-5〜8×10-4mm2である。
ガラス繊維の断面の形状は、円形であってもよいし、扁平であってもよい。
【0024】
ガラス繊維の詳細は、特開平9−74255号公報の請求項1、2、および、段落0006〜0016に記載のガラス繊維、特開平9−208252号公報の請求項1、2、段落0006〜0020に記載のガラス組成を有するガラス繊維が例示され、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、本発明で用いるガラス繊維として、Dガラス繊維やNEガラス繊維等の表記で市販されているガラス繊維を用いることができる。具体的には、本発明では、市販品のDガラス繊維やNEガラス繊維をチョップドストランド、ミルドファイバーと呼ばれる形態にカットしたものを好ましく用いることができる。すなわち、本発明で用いるガラス繊維は、チョップドストランドおよびミルドファイバーが好ましく、チョップドストランドがさらに好ましい。チョップドストランドは、通常、平均繊維長が100〜3000μm程度のものをいい、ミルドファイバーは、通常、平均繊維長が1〜100μm程度のものをいう。
本発明で用いるガラス繊維の比重は、2.05〜2.48であることが好ましく、2.15〜2.35であることがより好ましい。
【0025】
本発明のポリアミド樹脂組成物中におけるガラス繊維の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、50〜200重量部であり、60〜150重量部がより好ましい。
2種類以上のガラス繊維含む場合は、これらの合計量が上記範囲となる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、上記ガラス繊維以外のガラス繊維や他の強化繊維を含んでいても良い。上記ガラス繊維以外のガラス繊維としては、Eガラスが例示される。また、他の強化繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維や、マイカ、タルク、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、強化繊維の合計量が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、50〜250重量部であることが好ましい。また、強化繊維の40重量%以上が上記所定のガラス繊維であることが好ましい。
【0027】
<衝撃改良剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、衝撃改良剤を含んでいても良い。衝撃改良剤の詳細としては、特開2014−058603号公報の段落0053〜0059の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
本発明のポリアミド樹脂組成物における衝撃改良剤の含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、0.1〜40重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましく、5〜20重量部がさらに好ましい。
【0028】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記の他、離型剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物をペレット化する方法、成形する方法としては、特開2014−034606号公報の段落0034〜0042の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ペレットの状態として好ましく用いられる。さらに、本発明の成形品は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる。本発明の成形品は、アンテナ特性に優れているため、携帯電子機器部品の筐体として特に有益である。
【0031】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0033】
ポリアミド樹脂:
ポリアミドPAMP10:以下の製造例に従って製造した。
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3リットルのフラスコに、セバシン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してセバシン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル% 、メタキシリレンジアミンを70モル% 含有する混合キシリレンジアミ680gを、約2 .5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃ の温度で攪拌し反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、融点215℃ 、結晶化温度が175℃ 、相対粘度(96 % 硫酸溶液中、濃度1g/100ml 、23℃で測定)が2.20であった。
【0034】
ポリアミドPAMP6:以下の製造例に従って製造した。
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置などを装備した容量が3 リットルのフラスコに、アジピン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を1 60℃に昇温してアジピン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル% 、メタキシリレンジアミンを70モル% 含有する混合キシリレンジアミン680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃ に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃ の温度で攪拌し反応を続け、1 時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。得られたポリアミド樹脂は、融点258℃ 、結晶化温度が216℃ 、相対粘度( 96 % 硫酸溶液中、濃度1g/100ml 、23℃ で測定)が2 .0 であった
変性PPE:ユピエース PME−80(三菱エンジニアリングプラスチックス製)
ガラス繊維A:CSG3PA−810S(日東紡績(株)製)、扁平断面を有するEガラス、チョップドストランド。
ガラス繊維B:ECS-03T296GH(日本電気硝子(株)製)、円形断面を有するEガラス、チョップドストランド。
ガラス繊維C:Dガラスをミルドファイバーとなるようにカットした。
ガラス繊維D:ECS(HL)-301TDS(重慶国際複合材料 有限公司(CPIC)製)、円形断面を有するDガラス、チョップドストランド。
衝撃改良剤A・・・クレイトンFG1901GT(クレイトンジャパン製)
【0035】
<コンパウンド>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラス繊維をサイドフィードして樹脂ペレットを作製した。押出機の温度設定は、280℃にて実施した。
【0036】
<ISO引張り試験片の作製>
上記の製造方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、ファナック社製射出成形機(100T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
【0037】
射出速度:ISO引張試験片中央部の断面積から樹脂流速を計算して300mm/sとなるように設定した。約95%充填時にVP切替となるように保圧に切り替えた。保圧はバリの出ない範囲で高めに500kgf/cm2を25秒とした。
【0038】
<曲げ強度>
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)を測定した。
【0039】
<シャルピー衝撃強度>
上述の方法で得られたISO引張試験片(4mm厚)を用い、ISO179−1またはISO179−2に準拠し、23℃の条件で、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0040】
<アンテナ特性>
上述の方法で得られたISO引張試験片(4mm厚)を用い、アンテナ特性を評価した。具体的には、ファナック社製射出成形機(100T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で箱型の成形品を射出成型した。箱型の成形品に同一のアンテナ装置を実装し、電波暗室内で測定用アンテナから3m離し、50Ωの同軸ケーブルを介してネットワークアナライザーを用いたアンテナ利得評価装置に接続し、アンテナ特性を評価した。
A:所望の指向性パターンが得られた。
B:想定された指向性パターンが得られなかった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】