(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
α−メチルスチレンまたはイソプロペニルトルエンから導かれる構造単位とスチレンから導かれる構造単位とを含み、かつ下記(i)〜(iii)を満たす共重合体(C)を含む、粘着付与剤(B)。
(i)前記α−メチルスチレンまたはイソプロペニルトルエンから導かれる構造単位の含有率が30〜70モル%の範囲にある
(ii)JIS K2207に準拠し環球法により測定される軟化点(Tm)が110〜170℃の範囲にある
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量350以下の低分子量体の含有率が1.5質量%未満である
前記ベースポリマー(A)は、ビニル芳香族化合物から導かれる構造単位と共役ジエン化合物から導かれる構造単位とを含む共重合体及び/又はその水添物である、請求項3に記載のホットメルト接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、前述のように、軟化点が比較的高い粘着付与剤において、得られる接着剤組成物の接着力および高温接着性をさらに高めることを課題とした。
【0011】
そして、本発明者らの検討により、粘着付与剤に含まれる樹脂の溶融粘度が、得られるホットメルト接着剤組成物の接着強度に影響しうることが判明した。具体的には、粘着付与剤に含まれる樹脂の溶融粘度が高いほど、得られるホットメルト接着剤組成物の接着強度が高まることが判明した。
本発明者らは、特定の共重合体(C)、特に分子量が350以下の低分子量体の含有率が一定以下に調整された共重合体(C)を含む粘着付与剤を用いることで、粘着付与剤に含まれる樹脂の溶融粘度を(ホットメルト接着剤組成物の塗工時の流動性を顕著に損なわない範囲で)適度に高めることができ、得られるホットメルト接着剤組成物の接着力および高温接着性をさらに高めることを見出した。
なお、粘着付与剤に含まれる樹脂の溶融粘度(ホットメルト接着剤組成物の塗工時の流動性)は、例えば粘着付与剤に含まれる樹脂の重量平均分子量(Mw)を一定以下とすること等によって過剰には高まらないようにすることができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
1.粘着付与剤(B)
粘着付与剤(B)は、共重合体(C)を含む。
【0013】
<共重合体(C)>
粘着付与剤(B)に含まれる共重合体(C)は、α−メチルスチレンまたはイソプロペニルトルエンから導かれる構造単位とスチレンから導かれる構成単位とを含み、かつ下記要件(i)〜(iii)を満たす。
【0014】
[要件(i)]
α−メチルスチレンまたはイソプロペニルトルエンから導かれる構造単位の含有率は、30〜70モル%の範囲にある。当該含有率は、好ましくは35〜65モル%、より好ましくは40〜60モル%の範囲にある。α−メチルスチレンまたはイソプロペニルトルエンから導かれる構成単位の含有率がこの範囲であれば、得られるホットメルト接着剤組成物は、接着強度および高温接着性に優れる。
【0015】
スチレンから導かれる構造単位の含有率は、好ましくは30〜70モル%の範囲であり、より好ましくは35〜65モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。
【0016】
構造単位の含有割合(質量比)は、
13C−NMRスペクトルの解析により測定することができる。測定条件は、後述する実施例と同様としうる。
【0017】
[要件(ii)]
共重合体(C)の軟化点(Tm)(JIS K 2207に規定された環球法により測定される軟化点)は、110〜170℃、好ましくは120〜160℃、より好ましくは130〜150℃である。軟化点がこの範囲であれば、得られるホットメルト接着剤組成物は、接着強度および高温接着性に優れる。
【0018】
軟化点(Tm)は、例えばGPCで測定される重量平均分子量(Mw)、分子量350以下の低分子量体の含有率、モノマーの種類や組成などによって調整することができる。軟化点(Tm)を高くするためには、例えばGPCで測定される重量平均分子量(Mw)を大きくしたり、分子量350以下の低分子量体の含有率を低くしたり、α−メチルスチレンまたはイソプロペニルトルエンから導かれる構造単位の含有率を多くしたりすることが好ましい。
【0019】
[要件(iii)]
共重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量350以下の低分子量体の含有率が1.5質量%未満、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.9質量%未満である。分子量350以下の低分子量体の含有率がこの範囲であれば、共重合体(C)の軟化点に対して、得られるホットメルト接着剤組成物の接着強度および高温接着性に優れる。あるいは、共重合体(C)の溶融粘度に対して、得られるホットメルト接着剤組成物の接着強度および高温接着性に優れる。さらに特有の臭気を有する単量体、二量体および三量体が少ないため、ナプキン、紙おむつ等の衛生材料を使用する際の不快感も低減できる。
【0020】
分子量350以下の低分子量体の含有率は、共重合体(C)についてテトラヒドロフランを溶媒とするGPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法)によりポリスチレン換算にて測定される積分分子量分布曲線において、分子量350以下の曲線とベースラインとの間の領域の面積を積分により算出することによって測定することができる。
【0021】
分子量350以下の低分子量体の含有率は、例えば共重合体(C)の製造工程において濃縮工程(後述の工程2)を行うこと等によって調整することができる。分子量350以下の低分子量体の含有率を少なくするためには、例えば濃縮工程における減圧度を高くすることが好ましい。
【0022】
[要件(iv)]
共重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000〜5000、好ましくは1500〜4000、より好ましくは2000〜3000である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲であれば、ホットメルト接着剤組成物は、塗工時の流動性が高いため扱いやすい。
【0023】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.85以下、さらに好ましくは1.8以下である。分散度(Mw/Mn)が1.9以下であると、得られる粘着付与剤(B)の流動性を高めやすく、それによりホットメルト接着剤組成物の塗工時の流動性も高めやすい。重量平均分子量(Mw)や分散度(Mw/Mn)は、共重合体(C)についてテトラヒドロフランを溶媒とするGPC法によりポリスチレン換算にて測定することができる。分散度(Mw/Mn)は、例えば原料となる共重合体(C’)の重合に用いられる触媒の選定や濃縮条件等によって調整することができる。
【0024】
[要件(v)]
共重合体(C)の200℃における溶融粘度は、好ましくは200〜10000mPa・s、より好ましくは500〜5000mPa・sである。溶融粘度がこの範囲であれば、ホットメルト接着剤組成物は、塗工時の流動性を損なうことなく、高い接着性および高温接着性が得られやすい。溶融粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて200℃、60rpmにて測定することができる。
【0025】
溶融粘度は、例えば共重合体(C)のモノマー組成や低分子量体の含有率などによって調整することができる。溶融粘度を適度に高くするためには、例えば低分子量体の含有率を少なくすることが好ましい。
【0026】
<共重合体(C)の製造方法>
共重合体(C)は、例えば、以下の工程を含む製法により製造することができる。例えば、共重合体(C)の製造方法は、少なくとも原料となる共重合体(C’)を得る工程1と、共重合体(C’)を濃縮して共重合体(C)を得る工程2とを含む。なお、共重合体(C’)が前述の要件(iii)を満たす場合、工程2は省略できる。
【0027】
[工程1:原料となる共重合体(C’)の合成]
工程1は、共重合体(C)の原料となる共重合体(C’)を製造する工程である。共重合体(C’)は、触媒の存在下にモノマーを重合反応させることにより得ることができる。
【0028】
重合に用いられる触媒としては、一般にフリーデルクラフツ触媒として知られているものなどが挙げられ、例えば塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ジクロルモノエチルアルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、三フッ化ホウ素などの各種錯体等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマーの合計に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%である。
【0029】
また、重合反応の際に、反応熱の除去や反応混合物の高粘度化の抑制等のために、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒中で重合反応を行うのが好ましい。好ましい炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素またはこれらの混合物;またはこれらとペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素および/またはシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素との混合物などを挙げることができる。これらの反応溶媒の使用量は、反応混合物中のモノマーの初期濃度が10〜80質量%となるような量であることが好ましい。
【0030】
重合温度は、使用するモノマーや触媒の種類および量などにより適宜選択できるが、通常、−30〜+50℃である。重合時間は、一般には、0.5〜5時間程度であり、通常、1〜2時間で重合はほとんど完結する。重合様式としては、回分式または連続式のいずれの方式を採用することもできる。また、多段重合を行うこともできる。
【0031】
重合終了後は、洗浄して触媒残渣を除去することが好ましい。洗浄液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を溶解したアルカリ水溶液;メタノール等のアルコールなどを用いるのが好ましく、特にメタノールによる洗浄脱灰が好ましい。洗浄終了後は、未反応モノマー、重合溶媒などを減圧留去して、原料としての共重合体(C’)を得ることができる。
【0032】
[工程2:共重合体(C’)から共重合体(C)を得る工程]
工程1で得られた共重合体(C’)が、前述の要件(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量350以下の低分子量体の含有率が、1.5質量%未満である、を満たさない場合に、以下に記載する工程2をさらに経ることによって、要件(iii)を満たす共重合体(C)を得ることができる。
【0033】
具体的には、常圧蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留のような物質毎の蒸気圧の差を利用して濃縮する方法、オープンカラム、フラッシュカラムのようにシリカゲル等の充填剤に対する親和性や分子サイズの差を利用して濃縮する方法が挙げられる。中でも、共重合体(C’)の熱分解抑制や濃縮効率の観点から、減圧蒸留法が好ましい。
【0034】
減圧蒸留法における減圧度の範囲は、共重合体(C)における低分子量体の含有率を前述の範囲としうる程度であればよく、特に限定されないが、好ましくは5〜80Pa、より好ましくは10〜60Paである。また、共重合体(C’)が熱分解することを抑制するため、加熱温度は、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは230℃以下であり、さらに好ましくは210℃以下である。
【0035】
<他の成分>
粘着付与剤(B)は、共重合体(C)のみで構成されてもよいが、必要に応じて共重合体(C)以外の他の成分をさらに含んでもよい。共重合体(C)以外の他の成分として、通常、溶融時の流動性を付与することのできる物質であり、一般的に分子量が数百〜数万であり、かつ軟化点約60〜160℃程度のオリゴマーが用いられる。
【0036】
そのようなオリゴマーの具体例としては、天然ロジン、変性ロジン、ポリテルペン系樹脂、合成石油樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、共重合体(C)以外のスチレン系樹脂、およびイソプレン系樹脂が挙げられる。さらに具体的な例としては、石油、ナフサ等の分解によって得られるC4留分、C5留分、これらの混合物、あるいはこれらに含まれる任意の成分(たとえばC5留分中のイソプレンおよび1,3−ペンタジエンなど)を主原料とする脂肪族系炭化水素樹脂;石油、ナフサ等の分解によって得られるC9留分に含まれるスチレン誘導体やインデン類を主原料とする芳香族系炭化水素樹脂;C4留分およびC5留分に含まれる任意の成分とC9留分に含まれる任意の成分とを共重合した脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂;芳香族系炭化水素樹脂を水素添加した脂環族系炭化水素樹脂;脂肪族、脂環族および芳香族炭化水素樹脂を含む合成テルペン系炭化水素樹脂;テレピン油中のα,β−ピネンを原料とするテルペン系炭化水素樹脂;コールタール系ナフサ中のインデンおよびスチレン類を原料とするクマロンインデン系炭化水素樹脂;低分子量スチレン系樹脂;ロジン系炭化水素樹脂等が挙げられる。あるいは特開2005−194488号公報に開示されているような、テルペン系モノマー、クロマン系モノマー、スチレン系モノマー、あるいはフェノール系モノマーから選ばれる複数種のモノマーを共重合して得られたものであってもよい。
【0037】
粘着付与剤(B)における共重合体(C)の含有量は、通常、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
【0038】
2.ホットメルト接着剤組成物
本発明のホットメルト接着剤組成物は、ベースポリマー(A)と、前述の粘着付与剤(B)とを含む。
【0039】
<ベースポリマー(A)>
本発明のホットメルト接着剤組成物に用いられるベースポリマー(A)は、ホットメルト接着剤に通常使用されるビニル芳香族化合物から導かれる構造単位と共役ジエン化合物から導かれる構造単位とを含む共重合体またはその水添物を用いることができる。
【0040】
ビニル芳香族化合物の例には、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン、アセナフチレンなどが挙げられる。中でも、スチレン、α―メチルスチレンが好ましい。
【0041】
共役ジエン化合物は、炭素数4〜20の共役ジエンであることが好ましく、その例には、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエンなどが挙げられる。中でも、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0042】
ビニル芳香族化合物から導かれる構造単位と共役ジエン化合物から導かれる構造単位とを含む共重合体およびその水添物の例には、スチレン・ブタジエンランダム共重合体、スチレン・イソプレンランダム共重合体、ブタジエン・ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン・ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)、ポリ(α−メチルスチレン)・ポリブタジエン・ポリ(α−メチルスチレン)トリブロック共重合体、およびこれらの水添物、例えば、ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)の水添物(SEBS)、ポリスチレン・ポリイソプレン・ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)の水添物(SEPS)等を挙げることができる。スチレンブロックポリマーは、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体の非水添物が好ましい。これらの重合体や重合体の水添物は市販品として入手することができる。例えば、カリフレックスTR−1101、TR−1107、TR−4113(クレイトン社製)、クレイトンG−6500、G−6521、G−1650、G−1652、G−1657、D−1117、D−1165(クレイトン社製)、ソルプレン、水素化ソルプレン(フィリップス社製)等の商品名で上市されているものを例示することができる。中でも、ビニル芳香族化合物から導かれる構造単位を主体とするブロックと共役ジエン化合物から導かれる構造単位を主体とするブロックとを含むブロック共重合体が好ましく、加工時に粘度上昇を生じにくく、加工性に優れる観点から、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体、スチレン−イソプレン二元ブロック共重合体またはそれらの混合物がより好ましい。
【0043】
ビニル芳香族化合物から導かれる構造単位の含有率は、10〜50モル%であることが好ましい。共役ジエン化合物から導かれる構造単位の含有率は、50〜90モル%であることが好ましい。
【0044】
これらのベースポリマー(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明のホットメルト接着剤組成物において、前述のベースポリマー(A)と粘着付与剤(B)との含有割合は、ベースポリマー(A)100質量部に対して、粘着付与剤(B)10〜300質量部である。中でも、ベースポリマー(A)、粘着付与剤(B)の働きがバランス良く発揮され、さらに、良好な接着性を維持したまま、流動性を損なわれにくくする点で、ベースポリマー(A)100質量部に対して、粘着付与剤(B)50〜250質量部であることが好ましい。
【0046】
<他の成分>
本発明のホットメルト接着剤組成物は、前述のベースポリマー(A)および粘着付与剤(B)以外に、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲において、例えば、各種ワックス、軟化剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤等の他の成分をさらに含んでもよい。
【0047】
ワックスとしては、ホットメルト接着剤において用いられるものを使用でき、具体的には、低分子量ポリエチレンワックスなどの合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;フィシャー・トロプシュワックスが挙げられる。中でも、チーグラー触媒やメタロセン触媒で重合された低分子量ポリエチレンワックスが好ましい。
【0048】
軟化剤としては、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。凝集力を保持する観点から、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルが好ましい。
【0049】
ベースポリマー(A)と粘着付与剤(B)以外の成分の合計含有量は、ホットメルト接着剤組成物に対して例えば10質量%以下でありうる。
【0050】
本発明のホットメルト接着剤組成物の調製は、前述のベースポリマー(A)、粘着付与剤(B)、ならびに必要に応じて、前記各種の成分を、所定の配合割合でブラベンダー等の混合機に供給し、加熱して溶融混合し、これを所望の形状、例えば、粒状、フレーク状、棒状等に成形することによって行うことができる。
【0051】
<用途>
本発明のホットメルト接着剤組成物は、これを加熱溶融して、不織布、クラフト紙、アルミ箔、ポリエステルフィルム等の基材に、通常の方法によって塗布してホットメルト接着剤層を形成し、使用に供することができる。ホットメルト接着剤層の厚みは、用途にもよるが、例えば5〜100μm程度としうる。得られる製品は、各種用途、例えば紙おむつ、ナプキンなどの衛生材料用品、粘着テープ、ラベルなどの事務用品、金属箔テープなどに用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等制限されるものではない。
【0053】
各実施例および比較例における共重合体の物性測定方法は、以下の通りである。測定結果を表1に示す。
【0054】
[構造単位の含有率]
構造単位の含有割合(質量比)は、以下の条件で測定した、
13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
<
13C−NMRの測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII cryo−500型核磁気共鳴装置
測定核:
13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:128回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(4/1(体積比))
試料濃度:60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)
ケミカルシフト基準:δδシグナル29.73ppm
【0055】
[軟化点(Tm)]
JIS K2207に規定された環球法により測定した。
【0056】
[分子量350以下の低分子量体の含有率、Mw、Mw/Mn]
重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒としてGPC法(ポリスチレン換算)により測定した。また、分子量350以下の低分子量体の含有率は、GPC測定で得られた積分分子量分布曲線において、分子量350以下の曲線とベースラインとの間の領域の面積を積分して算出した。
【0057】
[溶融粘度]
ブルックフィールド型粘度計を用いて、回転数60rpm、200℃での溶融粘度を測定した。
【0058】
[揮発分]
実容量10mlのアルミ製カップに粘着付与剤(B)を2.5g入れ、150℃に加熱したエアオーブンに1時間静置前後の質量変化を測定した。
【0059】
[合成例1]スチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)の製造
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、スチレン、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。スチレンとα−メチルスチレンとのモル比は60/40の割合とし、モノマーおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、スチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)を得た。
【0060】
[合成例2]スチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2’)の製造
触媒の供給量を108ミリリットル/時間とした以外は合成例1と同様の方法でスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2’)を得た。
【0061】
[合成例3]スチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3’)の製造
触媒の供給量を83ミリリットル/時間とした以外は合成例1と同様の方法でスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3’)を得た。
【0062】
1.粘着付与剤の調製
[実施例1]
合成例1で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)を、薄膜蒸留機(ワイプレン2−03型、神鋼環境ソリューション社製)の上部に取り付けたガラス製容器に500mlを入れた後、200℃に加熱した。その後、200℃に加熱した本体に、5g/分でスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)を供給し、回転数450rpm、真空度50Paで濃縮し、下部に取り付けたガラス製ナスフラスコで、粘着付与剤としてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1a)を回収した。
【0063】
[実施例2]
合成例1で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)を真空度20Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1b)を得た。
【0064】
[比較例1]
合成例1で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)を濃縮せずにそのまま用いた。
【0065】
[比較例2]
合成例1で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C1’)を真空度100Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(c1)を得た。
【0066】
[実施例3]
合成例2で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2’)を真空度50Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2a)を得た。
【0067】
[実施例4]
合成例2で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2’)を真空度20Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2b)を得た。
【0068】
[比較例3]
合成例2で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2’)を濃縮せずにそのまま用いた。
【0069】
[比較例4]
合成例2で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C2’)を真空度100Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(c2)を得た。
【0070】
[実施例9]
合成例3で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3’)を真空度50Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3a)を得た。
【0071】
[実施例10]
合成例3で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3’)を真空度20Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3b)を得た。
【0072】
[比較例9]
合成例3で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3’)を濃縮せずにそのまま用いた。
【0073】
[比較例10]
合成例3で得られたスチレン・α−メチルスチレン共重合体(C3’)を真空度100Paで濃縮した以外は実施例1と同様にしてスチレン・α−メチルスチレン共重合体(c3)を得た。
【0074】
2.ホットメルト接着剤組成物の作製および評価
[実施例5〜8および11〜12、比較例5〜8および11〜12]
ベースポリマー(A)としてスチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体とスチレン−イソプレン二元ブロック共重合体の混合物(クレイトン製、クレイトンD−1165、スチレンから導かれる構造単位の含有率:30モル%)100質量部に対して、粘着付与剤として表1に示されるスチレン・α−メチルスチレン共重合体を200質量部の割合で配合し、ラボプラストミルを使用して180℃で15分混練し、ホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0075】
得られたホットメルト接着剤組成物の接着性および臭気を、以下の方法で評価した。
【0076】
<接着性>
得られたホットメルト接着剤組成物を、2つのアルミ箔(50μm)に厚さ25μmにそれぞれ塗工し、ホットメルト接着剤層を形成した。次いで、これらのホットメルト接着剤層同士を張り合わせ、上部バー120℃、下部バー120℃、3kg/cm
2、10秒加熱の条件でヒートシールし、さらに25mm幅に切断し、接着試料を作成した。この接着試料を、20℃、50℃、80℃の測定温度下でT型剥離試験に供し、接着強度を測定した(引張速度:300mm/min)。
【0077】
<臭気性>
得られたホットメルト接着剤組成物を試験管に入れて密閉し、150℃、30分間加熱後の臭気を、ニオイセンサーXP−329III型(新コスモス電機製)を用いて測定した。測定値が大きいほど臭気が強いと評価される。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1〜4および9〜10で得られた共重合体は、いずれも軟化点110℃以上であり、耐熱性に優れる。また、実施例1〜4および9〜10で得られた共重合体を含む実施例5〜8および11〜12の接着剤組成物は、比較例1〜4および9〜10で得られた共重合体を含む比較例5〜8および11〜12の接着剤組成物に比べると、共重合体の溶融粘度に対して20℃における剥離強度が高いバランスにある。すなわち、実施例1〜4および9〜10で得られた共重合体を含む実施例5〜8および11〜12の接着剤組成物は、接着強度に優れる。同様に、実施例5〜8および11〜12の接着剤組成物は、共重合体(C)の溶融粘度に対して50℃、80℃における剥離強度が高く、すなわち高温接着性に優れる。また、実施例1〜4および9〜10で得られた共重合体(粘着付与剤)は150℃における揮発分が少なく、それを含む実施例5〜8の接着剤組成物は臭気が少ない点においても優れている。
【0080】
本出願は、2018年4月18日出願の特願2018−080149に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。