(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のダンパ装置を詳細に説明する。ただし、本発明のダンパ装置は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態のダンパ装置1の軸線に沿った断面図を示し、
図2は、本実施形態のダンパ装置1の分解斜視図を示す。この実施形態のダンパ装置1は、便蓋又は便座を低速で回転させるために、便器と便蓋又は便座との間に設けられる。ダンパ装置1は、ケース2と、ケース2に対して回転可能な軸3と、を備える。ケース2と軸3のいずれか一方が便器に取り付けられ、他方が便蓋又は便座に取り付けられる。これによって、便蓋(又は便座)が便器に回転可能に連結される。もちろん、この発明のダンパ装置1は、便蓋又は便座以外の用途にも供することができる。
【0012】
ケース2は、略筒状をなし、その中央部を貫通する嵌合穴2aを有する。ケース2は、その軸方向に、ダンパ収容部2a1と、コイルばね収容部2a2と、を有する。ダンパ収容部2a1とコイルばね収容部2a2との間には、段差が形成される。ケース2の軸方向の一端には、端部壁2bが設けられる。端部壁2bには、貫通する軸3を回転可能に支持する支持穴2b1が形成される。ケース2の軸方向の他端部の内面には、ねじ2cが形成される。
【0013】
軸3は、ケース2の嵌合穴2aに挿入される軸部3aと、ケース2の端部壁2bから突出する連結部3bと、を備える。軸部3aは、その両端に形成されたジャーナル部3a1,3a2が端部壁2bと軸受け部材4とに回転可能に嵌合することにより、ケース2に回転可能に支持されている。ジャーナル部3a2と端部壁2bとの間には、ダンパ室5に充填された流体が漏れるのを防止するOリング等のシール部材6が配置される。ジャーナル部3a2の外面には、シール部材6が嵌められる溝3d(
図2参照)が形成される。軸3の連結部3bは、平行な一対の平坦面を有し、便蓋(又は便座)と便器のいずれか一方に連結される。
【0014】
軸3は、ケース2の嵌合穴2aに一方向(
図1の右方向)に挿入される。軸部3aに形成される段部が端部壁2bに突き当たることによって、端部壁2bから一方向(
図1の右方向)への抜け止めがなされている。また、ケース2に軸3を挿入した後に、ケース2に軸受け部材4及びばね保持部材7を挿入し、蓋部材8をケース2に螺合させることにより、軸3の他方向(
図1の左方向)への抜け止めがなされている。
【0015】
ケース2と軸3との間には、環状のダンパ室5が形成される。ダンパ室5には、粘性流体等が充填される。
【0016】
軸受け部材4は、環状であり、軸3とは別体である。軸受け部材4は、ダンパ室5に流体を充填した後、ケース2と軸3との間に一方向(
図1の右方向)に挿入される。軸受け部材4が軸部3aの段部に突き当たることによって、軸受け部材4の一方向への移動が制限される。軸受け部材4は、ダンパ室5の軸方向の一端を閉じる区画壁5aを形成する。ダンパ室5の軸方向の他端を閉じる区画壁5bは、ケース2の端部壁2bに形成される。なお、ダンパ室5の他端を閉じる区画壁5bを、軸3に形成してもよく、又は軸3とは別体の軸受け部材に形成してもよい。
【0017】
軸受け部材4は、ケース2に対して回転不可能であると共に、ダンパ力を調整できるように、軸方向に移動可能である。軸受け部材4の外面には、円周方向に複数の突起4a(
図2参照)が形成される。ケース2の嵌合穴2aの内面には、この突起4aに嵌まる溝が形成される。ケース2と軸受け部材4との間には、ダンパ室5に充填された流体が漏れるのを防止する環状の固定シール部材11が配置される。軸受け部材4の外面には、固定シール部材11が嵌められる溝4b(
図2参照)が形成される。
【0018】
軸3は、軸受け部材4に対して回転可能である。軸受け部材4と軸3との間には、流体が漏れるのを防止するOリング等の摺動シール部材12が配置される。軸3の外面には、摺動シール部材12が嵌められる溝3c(
図2参照)が形成される。
【0019】
軸3の外面に摺動シール部材12を配置し、摺動シール部材12の外側に軸受け部材4を配置し、軸受け部材4の外面に固定シール部材11を配置するので、軸3が回転するときの摺動抵抗を抑制することができ、安定したダンパ性能を維持できる。
【0020】
軸受け部材4とばね保持部材7との間には、コイルばね9が配置される。コイルばね9は、ケース2に一方向(
図1の右方向)に挿入される。コイルばね9は、巻線部9aと、一端9bと、他端9cと、を備える(
図2参照)。コイルばね9の一端9bは、ケース2側に連結される。この実施形態では、コイルばね9の一端9bは、ばね保持部材7に連結される。ばね保持部材7は、ケース2に対して回転不可能である。ばね保持部材7には、コイルばね9の一端9bが嵌められる穴が形成される。なお、コイルばね9の一端9bをケース2に連結してもよい。
【0021】
コイルばね9の他端9cは、軸3に連結される。軸3には、コイルばね9の他端9cが嵌められる切欠き3e(
図2参照)が形成される。コイルばね9は、その一端9bがケース2側に連結され、その他端9cが軸3側に連結される。コイルばね9は、ケース2に対して軸3にトルクを働かせ、便蓋(又は便座)を開く方向(
図3(b)の矢印Y方向)に付勢する。このため、便蓋(又は便座)を軽く持ち上げることができる。
【0022】
コイルばね9の巻線部9aとダンパ室5との間には、軸受け部材4が配置される。コイルばね9の巻線部9aとダンパ室5とは、軸方向に離れている。少なくともコイルばね9の巻線部9aがダンパ室5と軸方向に離れていればよく、コイルばね9の他端9cをダンパ室5の内側に配置してもよい。コイルばね9の巻線部9aの外径Φ1は、ダンパ室5の内径Φ2(軸3の段部の外径Φ2(
図1参照))よりも大きい。コイルばね9の巻線部9aは、軸3の外側に配置される。
【0023】
本実施形態によれば、コイルばね9の巻線部9aをダンパ室5から軸方向に離すので、ケース2の外径を大きくすることなく、コイルばね9の巻線部9aの外径Φ1を大きくすることができる。このため、コイルばね9の線径を太くすることができ、コイルばね9のトルクを大きくすることができる。また、コイルばね9の巻線部9aとダンパ室5との間に、ダンパ室5の一端を閉じる軸受け部材4を配置するので、ダンパ室5に充填された流体がコイルばね9側に漏れるのを防止できる。
【0024】
ばね保持部材7は、略有底円筒状である。ばね保持部材7は、コイルばね9を囲む筒部7aと、コイルばね9の一端9bが連結される底部7bと、を有する。ばね保持部材7は、ケース2に一方向(
図1の右方向)に挿入される。ばね保持部材7は、ケース2に対して回転不可能であると共に、ダンパ力を調整できるように、軸方向に移動可能である。ばね保持部材7の外面には、円周方向に複数の突起7c(
図2参照)が形成される。この突起7cは、ケース2の嵌合穴2aの内面に形成される溝に嵌まる。
【0025】
符号10は、開閉検知軸である。開閉検知軸10は、軸3に挿入されて、軸3に回転不可能に連結される。開閉検知軸10は、ばね保持部材7を貫通して、ばね保持部材7に回転可能に支持される。ケース2から露出する開閉検知軸10の先端には、図示しないマグネットが取り付けられる。マグネットの磁束を検知することで、便蓋(又は便座)の開閉を検知できる。なお、開閉検知軸10を省略してもよい。
【0026】
蓋部材8は、その外面にケース2の内面のねじ2cに螺合するねじを有する。ケース2の嵌合穴2aに、軸3、軸受け部材4、コイルばね9、開閉検知軸10、及びばね保持部材7を同じ方向に挿入した後、蓋部材8をケース2にねじ込むことにより、これらの部品がケース2から抜け出るのが防止される。ここで、ケース2にこれらの部品を同じ方向に挿入するので、蓋部材8が一つで済み、ダンパ装置1の組み立てが容易である。
【0027】
ばね保持部材7は、蓋部材8と軸受け部材4との間に挟まれる。ケース2を蓋部材8にねじ込むと、蓋部材8がばね保持部材7を介して軸受け部材4を押すので、軸受け部材4の区画壁5aと羽根部15や弁体17(
図3参照)との隙間を調節することにより、ダンパ力を調整することができる。このように、軸3の連結部3bとは反対側で容易にダンパ力の調整ができる。ダンパ力の調整後、ピン13によって蓋部材8とばね保持部材7をケース2に固定する。なお、ピン13を使用せず、蓋部材8を溶着等によりケース2に固定してもよい。
【0028】
図3(a)に示すように、ダンパ室5に臨む軸部3aの外面には、羽根部15が形成されており、ダンパ室5に臨むケース2の内面には、仕切り壁部16が形成される。この羽根部15と仕切り壁部16によって、ダンパ室5の内部が周方向に四分され、2つの第1室S1と2つの第2室S2が形成される。なお、羽根部15と仕切り壁部16を1つずつ形成し、1つの第1室S1と1つの第2室S2を形成してもよい。
【0029】
羽根部15は、断面V字状の一対の突起15a,15bを有する。一方の突起15bには、流体が抵抗なく通過することができる切欠き15b1(
図2参照)が形成される。突起15a,15b間の弁室には、流量制御部としての弁体17が収納される。
図3(a)に示すように、軸3が閉じ方向(図中X方向)へ回転するとき、弁体17は、突起15aとケース2との間の流路を閉じ、第2室S2の流体が左隣の第1室S1へ流れるのを阻止する。第2室S2の流体は、仕切り壁部16と軸部3aとの微小隙間を通って右隣の第1室S1へ流入する。したがって、軸3が閉じ方向に回転するとき、軸3にダンパ力が働き、軸3の閉じ方向の回転速度が抑えられる。また、軸3はコイルばね9によって開き方向に付勢されているので、軸3の閉じ方向の回転速度は、コイルばね9によっても抑えられる。
【0030】
一方、
図3(b)に示すように、軸3が開き方向(図中Y方向)へ回転するとき、弁体17は、突起15aとケース2との間の流路を開き、第1室S1の流体が左隣の第2室S2へ流れるのを許容する。第1室S1の流体が切欠き15b1を通って抵抗なく第2室S2へ流入可能であるので、軸3が抵抗なく開き方向に回転する。軸3が開き方向に回転するときに発生するダンパ力は、軸3が閉じ方向に回転するときに発生するダンパ力よりも小さい。軸3はコイルばね9によって開き方向に付勢されているので、便蓋(又は便座)を軽い力で持ち上げることができる。
(第2の実施形態)
【0031】
図4は、本発明の第2の実施形態のダンパ装置21の断面図を示し、
図5は、ダンパ装置21の分解斜視図を示す。第2の実施形態のダンパ装置21も、ケース2と、軸22と、軸受け部材23と、コイルばね9と、ばね保持部材7と、開閉検知軸10と、蓋部材8と、を備える。ケース2、コイルばね9、ばね保持部材7、開閉検知軸10、及び蓋部材8の構成は、第1の実施形態と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0032】
軸22は、ケース2の嵌合穴2aに挿入される軸部22aと、ケース2の端部壁2bから突出する連結部22bと、を備える。軸部22aの一端は、軸受け部材23に回転不可能に嵌められる。軸部22aの一端には、平行な一対の平坦面22c(
図5参照)が形成される。軸部22aは、軸受け部材23を介してケース2に回転可能に支持される。軸部22aの他端のジャーナル部22dは、ケース2の端部壁2bに回転可能に支持される。ジャーナル部22dと端部壁2bとの間には、ダンパ室25に充填された流体が漏れるのを防止するシール部材6が配置される。
【0033】
軸受け部材23は、ダンパ室25の軸方向の一端を閉じる区画壁25aを形成する。軸受け部材23は、ケース2に対して回転可能である。ケース2と軸受け部材23との間には、ダンパ室25に充填された流体が漏れるのを防止するOリング等の摺動シール部材27が配置される。軸受け部材23の外面には、摺動シール部材27が嵌められる溝23a(
図5参照)が形成される。
【0034】
コイルばね9は、その一端9bがケース2側に連結され、その他端9cが軸22側に接続される。コイルばね9の一端9bは、ばね保持部材7に連結される。コイルばね9の他端9cは、軸受け部材23に連結される。コイルばね9は、ケース2に対して軸22にトルクを働かせ、便蓋(又は便座)を開く方向(
図6(b)の矢印Y方向)に付勢する。
【0035】
コイルばね9の巻線部9aとダンパ室25との間には、軸受け部材23が配置される。コイルばね9の巻線部9aとダンパ室25とは、軸方向に離れている。このため、ケース2の外径を大きくすることなく、コイルばね9の巻線部9aの外径を大きくすることができる。また、コイルばね9の巻線部9aとダンパ室25との間に、ダンパ室25の一端を閉じる軸受け部材23を配置するので、ダンパ室25に充填された流体がコイルばね9側に漏れるのを防止できる。
【0036】
ケース2の嵌合穴2aに、軸22、軸受け部材23、コイルばね9、開閉検知軸10、及びばね保持部材7を同じ方向に挿入した後、ケース2に蓋部材8を螺合させることにより、これらの部品がケース2から抜け出るのが防止される。ここで、ケース2にこれらの部品を同じ方向に挿入するので、蓋部材8が一つで済み、ダンパ装置21の組み立てが容易である。
【0037】
図6(a)に示すように、ダンパ室25に臨む軸部22aの外面には、羽根部29が形成されており、ダンパ室25に臨むケース2の内面には、仕切り壁部16が形成される。この羽根部29と仕切り壁部16によって、ダンパ室25の内部が周方向に四分され、2つの第1室S1と2つの第2室S2が形成される。
【0038】
ダンパ室25の仕切り壁部16には、流量制御部としての断面コ字状の弁体31が装着される。弁体31は、一対の対向壁31a,31bと、一対の対向壁31a,31bを連結する連結壁31cと、を備える(
図5参照)。一方の対向壁31aには、浅い切欠き31a1が形成され、他方の対向壁31bには、深い切欠き31b1が形成される。
図6(a)に示すように、軸22が閉じ方向(図中X方向)に回転するとき、弁体31の対向壁31aが仕切り壁部16に当接し、弁体31の対向壁31bが仕切り壁部16から離間する。このとき、対向壁31aの切欠き31a1が閉じられるので、第2室S2の流体は、切欠き31a1を通って右隣りの第1室S1へ流入することができず、羽根部29の外面とケース2の内面との微小隙間を通って左隣の第1室S1へ流入する。したがって、第2室S2の流体が第1室S1に流れるのに大きな抵抗が発生し、軸22にダンパ力が働く。
【0039】
一方、
図6(b)に示すように、軸22が開き方向(図中Y方向)へ回転するとき、弁体31の対向壁31aが仕切り壁部16から離間し、対向壁31bが仕切り壁部16に当接する。このため、弁体31は、第1室S1の流体が対向壁31bの切欠き31b1と対向壁31aの切欠き31a1を通って左隣の第2室S2へ流れるのを許容する。第1室S1の流体は、切欠き31b1,31a1を通って抵抗なく第2室S2へ流入可能であるので、軸22は抵抗なく開き方向に回転する。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまな実施形態に変更可能である。例えば、上記実施形態では、軸がX方向へ回転するときにだけダンパ力が発生するようにしているが、X,Yいずれの方向へ回転するときにもダンパ力が発生するようにしてもよい。
【0041】
本明細書は、2018年12月27日出願の特願2018−244675に基づく。この内容はすべてここに含めておく。