(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤ電極(14)を支持するワイヤ放電加工機(10)の上ガイド(40)の上側支点(44)の位置および下ガイド(48)の下側支点(58)の位置を示す位置情報(60)を修正する修正装置(12)であって、
前記ワイヤ放電加工機は、計測部位(28a)を有する計測対象物(28)を支持する支持面(22a)を有すると共に、前記支持面の鉛直方向で前記上ガイドと前記下ガイドとの間に配置される支持台(22)を備え、
前記修正装置は、
前記位置情報を記憶する記憶部(66)と、
前記支持面に支持された前記計測対象物の前記計測部位と前記ワイヤ電極とを、前記鉛直方向と直交する相対移動方向で対向させた状態で、前記上ガイドを前記下ガイドよりも前記相対移動方向で前記計測部位に近い位置にすることにより、前記ワイヤ電極を所定の角度(α)で傾斜させる傾斜制御部(72)と、
前記下ガイドと前記計測部位とを前記相対移動方向で所定の距離(Lini)だけ離間させた状態から、前記上ガイドおよび前記下ガイドを前記相対移動方向に沿って相対移動させることにより、前記所定の角度で傾斜した前記ワイヤ電極が前記計測部位に到達するまでの前記上ガイド、前記下ガイドおよび前記ワイヤ電極の前記計測部位に対する相対移動量(u)を計測する計測部(76)と、
前記所定の角度と前記相対移動量とに基づいて前記記憶部の前記位置情報を修正する情報修正部(80)と、
を備える、修正装置。
ワイヤ電極(14)を支持するワイヤ放電加工機(10)の上ガイド(40)の上側支点(44)の位置および下ガイド(48)の下側支点(58)の位置を示す位置情報(60)を修正する修正方法であって、
前記ワイヤ放電加工機は、計測部位(28a)を有する計測対象物(28)を支持する支持面(22a)を有すると共に、前記支持面の鉛直方向で前記上ガイドと前記下ガイドとの間に配置される支持台(22)を備え、
前記修正方法は、
前記位置情報を記憶する記憶ステップと、
前記支持面に支持された前記計測対象物の前記計測部位と前記ワイヤ電極とを、前記鉛直方向と直交する相対移動方向で対向させた状態で、前記上ガイドを前記下ガイドよりも前記相対移動方向で前記計測部位に近い位置にすることにより、前記ワイヤ電極を所定の角度(α)で傾斜させる傾斜制御ステップと、
前記下ガイドと前記計測部位とを前記相対移動方向で所定の距離(Lini)だけ離間させた状態から、前記上ガイドおよび前記下ガイドを前記相対移動方向に沿って相対移動させることにより、前記所定の角度で傾斜した前記ワイヤ電極が前記計測部位に到達するまでの前記上ガイド、前記下ガイドおよび前記ワイヤ電極の前記計測部位に対する相対移動量(u)を計測する計測ステップと、
前記所定の角度と前記相対移動量とに基づいて前記記憶ステップで記憶した前記位置情報を修正する情報修正ステップと、
を含む、修正方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るワイヤ放電加工機、修正装置および修正方法について、好適な実施の形態を掲げ、詳細に説明する。
【0012】
[実施の形態]
図1は、実施の形態のワイヤ放電加工機10の全体構成図である。
【0013】
本実施の形態のワイヤ放電加工機10、修正装置12および修正方法について説明する前に、
図1中の矢印について説明しておく。
図1において、矢印X、Y、およびZの各々により示される3方向は、ワイヤ放電加工機10が有する軸方向であって、互いに直交する方向である。
【0014】
以下、
図1のワイヤ放電加工機10について説明する。ワイヤ放電加工機10は、ワイヤ電極14と加工対象物との間に放電を発生させることにより、該加工対象物に放電加工を施す工作機械である。
【0015】
ワイヤ放電加工機10は、加工機本体16と、支持台駆動機構17と、制御装置18と、ワイヤガイド駆動機構19と、を備える。これらのうち、加工機本体16は、ワイヤ電極14による放電加工を実行する機械である。本実施の形態の加工機本体16は、加工槽20と、支持台22と、供給系統24と、回収系統26と、を備える。
【0016】
加工槽20は、加工液を貯留する槽である。加工液は、誘電性を有する液体であって、それは例えば脱イオン水である。
【0017】
支持台22は、加工槽20内に配置されることで加工液に浸漬される台座であって、XY方向を平面方向とし、Z方向を鉛直方向とする支持面22aを有する(
図7A)。支持台22は、この支持面22aにより、物体を加工液中で支持する。
【0018】
支持台22の支持面22aに支持される物体は、放電加工の実行の際においては加工対象物であるが、本実施の形態においては支持面22a上においてX方向またはY方向に突出する計測部位28aを有する計測対象物(治具)28である(
図7A)。
【0019】
図2は、支持台22と、支持台駆動機構17と、制御装置18と、の接続構成図である。
【0020】
支持台22は、支持台駆動機構17に接続される。支持台駆動機構17は、支持台22がXYZの各方向に沿って加工槽20内を移動することを可能にする機構である。そのような支持台駆動機構17は、例えば支持台22をX方向に沿って移動させるサーボモータX
22と、Y方向に沿って移動させるサーボモータY
22と、Z方向に沿って移動させるサーボモータZ
22と、をその構成に有する。
【0021】
支持台駆動機構17が有する複数のサーボモータ(サーボモータX
22、サーボモータY
22およびサーボモータZ
22)の各々には、不図示のエンコーダが設けられている。これにより、サーボモータX
22、サーボモータY
22およびサーボモータZ
22の各々の回転量を示す信号を、制御装置18および修正装置12に出力することが可能になる。
【0022】
供給系統24は、ワイヤボビン30と、第1モータ32と、ブレーキローラ34と、第2モータ36と、張力検出部38と、上ガイド40と、を備える。これらのうち、ワイヤボビン30は、未使用のワイヤ電極14が巻かれる回転可能なボビンである。第1モータ32は、そのワイヤボビン30にトルクを付与するモータである。
【0023】
また、ブレーキローラ34は、ワイヤボビン30から架け渡されたワイヤ電極14に摩擦による制動力を付与する回転可能なローラである。第2モータ36は、ブレーキローラ34にブレーキトルクを付与するモータである。そして、張力検出部38は、ワイヤ電極14の張力の大きさを検出する検出器である。
【0024】
上ガイド40は、ブレーキローラ34を通過したワイヤ電極14を支持しつつ後述の下ガイド48の方へと案内するワイヤガイドである。この上ガイド40は、支持面22aの鉛直方向(Z方向)において、支持台22に対して支持面22a(上方)側に配置される。
【0025】
図3Aは、上ガイド40の概略構成図である。
【0026】
上ガイド40は、基準点42と、上側支点44と、有する。これらのうち、基準点42は、上ガイド40のZ方向での位置を表すときの基準の位置を示す、予め決められた点である。例えば、上ガイド40と支持台22とのZ方向での距離をプロープ等によって計測できることが知られているが、このときに計測される距離は基準点42と支持台22との距離である。本実施の形態の基準点42は、例として、上ガイド40の下端に設けられた開口部46とZ方向で同じ位置にあるものとする。
【0027】
上側支点44は、上ガイド40がワイヤ電極14を支持する際の支点である。なお、上側支点44の上ガイド40におけるZ方向での位置については、画一的に定めることが事実上困難であることが知られている。その困難性は、上ガイド40の個体差、あるいは支持対象であるワイヤ電極14から受ける力の影響により、設計された位置と実際の上側支点44の位置とが一致しなくなることに由来する。
【0028】
回収系統26は、下ガイド48と、ピンチローラ50と、フィードローラ52と、第3モータ54と、回収箱56と、を備える。これらのうち、下ガイド48は、供給系統24の上ガイド40を通過したワイヤ電極14を支持しつつピンチローラ50およびフィードローラ52の方へと案内するワイヤガイドである。この下ガイド48は、支持面22aの鉛直方向(Z方向)において、支持台22を挟んで上ガイド40とは反対(下方)側に配置される。
【0029】
図3Bは、下ガイド48の概略構成図である。
【0030】
下ガイド48は、下側支点58を有する。下側支点58は、下ガイド48がワイヤ電極14を支持する際の支点である。なお、下側支点58については、上側支点44と同様の理由により、Z方向での位置を画一的に定めることが事実上困難であることが知られている。
【0031】
ピンチローラ50およびフィードローラ52は、下ガイド48を通過したワイヤ電極14を互いに挟持し合う回転可能なローラである。第3モータ54は、フィードローラ52にトルクを付与するモータである。回収箱56は、ピンチローラ50およびフィードローラ52を通過したワイヤ電極14を回収する箱である。
【0032】
供給系統24と回収系統26とは、ワイヤ電極14をワイヤボビン30から始まり、ブレーキローラ34、上ガイド40、下ガイド48、フィードローラ52およびピンチローラ50、そして回収箱56まで、この順序で搬送することを実現する。
【0033】
図4は、上ガイド40および下ガイド48と、ワイヤガイド駆動機構19と、制御装置18と、の接続構成図である。
【0034】
上ガイド40と下ガイド48とは、ワイヤガイド駆動機構19に接続される。ワイヤガイド駆動機構19は、X方向(X方向に平行なU方向)、Y方向(Y方向に平行なV方向)、およびZ方向に沿って上ガイド40と下ガイド48との各々が加工槽20内を移動することを可能にする機構である。そのようなワイヤガイド駆動機構19は、上ガイド40をXYZ方向の各々に沿って移動させるサーボモータX
40、サーボモータY
40、およびサーボモータZ
40をその構成に有する。また、下ガイド48をXYZ方向の各々に沿って移動させるサーボモータX
48、サーボモータY
48、およびサーボモータZ
48をさらに有する。
【0035】
サーボモータX
40、サーボモータY
40、サーボモータZ
40、サーボモータX
48、サーボモータY
48、およびサーボモータZ
48の各々には、支持台駆動機構17の複数のサーボモータと同様に、不図示のエンコーダが設けられている。これにより、サーボモータX
40、サーボモータY
40、サーボモータZ
40、サーボモータX
48、サーボモータY
48、およびサーボモータZ
48の各々の回転量を示す信号を、制御装置18および修正装置12に出力することが可能になる。
【0036】
以上が、加工機本体16の構成例である。続いて、制御装置18および制御装置18に設けられる本実施の形態の修正装置12について説明する。
【0037】
制御装置18は、それは例えば数値制御装置であって、加工機本体16を制御する装置である。制御装置18には、本実施の形態の修正装置12が一体的に設けられる。
【0038】
図5は、実施の形態の修正装置12の概略構成図である。
【0039】
修正装置12は、上ガイド40と下ガイド48との各々の支点の位置を示す位置情報60を修正するために提供される装置であって、表示部62と、操作部64と、記憶部66と、演算部68と、を備える。
【0040】
これらのうち、表示部62は、情報を表示する画面を有した表示装置である。表示部62の画面は、限定されないが、それは例えば液晶の画面である。
【0041】
操作部64は、オペレータが修正装置12に情報を入力するために提供されるものであって、それは例えばキーボード、マウス、あるいは表示部62の画面に取り付けられるタッチパネルにより構成される。
【0042】
記憶部66は、情報を記憶するものである。記憶部66は、それは例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のハードウェアにより構成される。記憶部66は、前述の位置情報60と、所定の修正プログラム70と、を予め記憶する。
【0043】
位置情報60は、修正装置12により実現される修正の対象である。したがって、記憶部66に予め記憶される時点での位置情報60に情報としての高い精度を求める必要はなく、従来どおりにある程度の精度のものが用意されれば十分である。
【0044】
修正プログラム70は、位置情報60を精度よく修正する修正方法が規定されたプログラムである。この修正方法については、詳細を後述する。
【0045】
演算部68は、情報を演算により処理するものである。演算部68は、それは例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアにより構成される。
【0046】
また、本実施の形態の演算部68は、傾斜制御部72と、移動制御部74と、計測部76と、推定部78と、情報修正部80と、を備える。これらの各部は、演算部68が前述の修正プログラム70を読み取って実行することにより実現される。
【0047】
傾斜制御部72は、ワイヤ電極14と支持面22a上の計測部位28aとを相対移動方向で対向させた状態で、上ガイド40を下ガイド48よりも相対移動方向で計測部位28aに近い位置にすることにより、ワイヤ電極14を所定の角度αで傾斜させるものである。なお、相対移動方向とは、本実施の形態においてはX方向またはY方向のことであって、ワイヤ電極14と支持台22上の計測部位28aとが対向する方向のことを指す。
【0048】
傾斜制御部72は、前述のワイヤガイド駆動機構19を制御することにより、上ガイド40を下ガイド48よりも相対移動方向で計測部位28aに近い位置にさせる。この際、上ガイド40と下ガイド48との相対移動を行うことが必要になるが、その相対移動の量は、ワイヤガイド駆動機構19の複数のサーボモータの各々に設けられたエンコーダが出力する信号に基づくことで把握可能である。
【0049】
移動制御部74は、前述の支持台駆動機構17を制御することにより、上ガイド40および下ガイド48を相対移動方向に沿って支持台22に対して相対移動させるものである。移動制御部74は、傾斜制御部72がワイヤ電極14を傾斜させた後は、その傾斜を維持しつつワイヤ電極14を相対移動させる。なお、移動制御部74は、ワイヤガイド駆動機構19を制御することにより、上ガイド40および下ガイド48を相対移動方向に沿って移動させてもよい。
【0050】
計測部76は、ワイヤ電極14が計測部位28aに到達するまでの上ガイド40、下ガイド48およびワイヤ電極14の計測部位28aに対する相対移動量を計測するものである。特に、本実施の形態の計測部76は、下ガイド48と計測部位28aとを相対移動方向で所定の距離L
iniだけ離間させた状態から、所定の角度αで傾斜したワイヤ電極14が計測部位28aに到達するまでの相対移動量を計測する(
図8参照)。
【0051】
相対移動量は、支持台駆動機構17の複数のサーボモータの各々に設けられたエンコーダが出力する信号に基づくことで計測可能である。また、計測にあたっては、相対移動を開始した後、ワイヤ電極14が計測部位28aに到達したか否かを検出する必要がある。この検出は、例えばワイヤ電極14に所定の大きさの電圧を印加しながら相対移動を行うことで、その電圧値の変化を読み取ることにより実現可能である。
【0052】
以下、所定の距離L
iniを初期離間距離L
iniとも記載する。また、下ガイド48と計測部位28aとが相対移動方向で初期離間距離L
iniだけ離間した状態から、所定の角度αで傾斜したワイヤ電極14が計測部位28aに到達するまでの相対移動量を到達移動量uとも記載する。
【0053】
推定部78は、下側支点58と計測部位28aとのZ方向での離間距離の推定値である推定離間距離と、所定の角度αとに基づくことにより、推定移動量u’を求めるものである。推定移動量u’とは、傾斜したワイヤ電極14が計測部位28aに到達するまでの相対移動量の推定値のことを指す。また、推定移動量u’を推定する際に用いられる推定離間距離とは、オペレータが予め推定した値である。
【0054】
情報修正部80は、ワイヤ電極14の傾斜角度と、到達移動量uと、に基づいて位置情報60を修正するものである。具体的には改めて後述するが、本実施の形態の情報修正部80は計測部76が計測した到達移動量uと推定部78が推定した推定移動量u’との差分と、所定の角度αと、に基づくことで位置情報60を修正する。
【0055】
以上が、本実施の形態の修正装置12の構成例である。続いて、この修正装置12により実行されるワイヤ放電加工機10の修正方法について説明する。
【0056】
図6は、実施の形態の修正方法の流れを例示するフローチャートである。
【0057】
修正方法は、記憶ステップ(S1)と、傾斜制御ステップ(S2)と、計測ステップ(S4)と、情報修正ステップ(S5)と、を含む。また、本実施の形態においては、
図6のように、情報修正ステップよりも前に行われるステップとして、推定ステップ(S3)をさらに含む。以下、これらの各ステップについて説明していく。
【0058】
なお、以下における修正方法の説明では、前述の相対移動方向はX方向であるものとして説明する。計測対象物(治具)28の計測部位28aは、X方向に突出するように、支持面22aに載置される。
【0059】
記憶ステップは、位置情報60を記憶するステップである。位置情報60は記憶部66が記憶する。前述の通り、位置情報60は、修正の対象となる情報である。したがって、この時点で記憶される位置情報60の情報としての精度は、従前と同等で構わない。
【0060】
傾斜制御ステップは、計測部位28aとワイヤ電極14とをX方向で対向させた状態で、上ガイド40を下ガイド48よりも相対移動方向で計測部位28aに近い位置にすることにより、ワイヤ電極14を所定の角度αで傾斜させるステップである。本ステップは傾斜制御部72により実行される。
【0061】
図7Aは、実施の形態の傾斜制御ステップを説明するための第1の図である。
図7Bは、実施の形態の傾斜制御ステップを説明するための第2の図である。これらの各図は、上ガイド40、下ガイド48、支持台22および治具28をY方向に沿って見たときの様子を模式的に示すものである。
【0062】
傾斜制御ステップは、
図7Aのように、治具28を支持台22の支持面22aで支持すると共に、ワイヤ電極14と治具28の計測部位28aとをX方向で対向させた状態で行う。
【0063】
ワイヤ電極14を所定の角度αで傾斜させると、
図7Bの状態になる。なお、所定の角度αでワイヤ電極14を傾斜させる際の具体的な制御は、ワイヤ放電加工機10の属する技術分野においては既知であるため、本実施の形態では説明しない。
【0064】
推定ステップは、前述の推定移動量u’を求めるステップである。本ステップは、推定部78により実行される。
【0065】
図8は、推定ステップを説明するための図である。
【0066】
以下、推定部78が推定ステップにおいて行う演算処理の一例を説明する。推定ステップの開始後、推定部78は、まずは
図8のように、∠ACBが直角である直角三角形ABCを定義する。直角三角形ABCが有する3つの頂点A、頂点Bおよび頂点Cのうち、頂点Aは下側支点58である。また、頂点Bは、計測部位28aからX方向に延びる仮想直線と傾斜したワイヤ電極14との交点である。そして、頂点Cは、該仮想直線と鉛直状態のワイヤ電極14との交点である。直角三角形ABCの辺ACの長さは、前述の推定離間距離に等しい。
【0067】
ここで、推定離間距離は、本実施の形態において修正される前の位置情報60に基づいたおおよその値で構わない。本実施の形態では、上側支点44および下側支点58のZ方向での離間距離(支点間距離)L
44、58と、上ガイド40の基準点42と支持台22との離間距離(上ガイド40の位置の高さ)H
40との差分を、推定離間距離とする。なお、支点間距離L
44、58および上ガイド40の位置の高さH
40を計測する方法は既知であるので、本実施の形態では説明しない。
【0068】
続いて、推定部78は、辺AC(推定離間距離)の長さと所定の角度αとから、辺BCの長さを求める。このとき、辺BCの長さは、辺ACの長さと直角三角形ABCの正接とに基づくことで、容易に求まる(BC=AC×tanα)。
【0069】
そして、推定部78は、求めた辺BCの長さと、初期離間距離L
iniとの差分を、推定移動量u’として求める(u’=L
iniーBC)。推定部78は、求めた推定移動量u’を記憶部66に一旦記憶させる。これにより、推定ステップが完了する。
【0070】
計測ステップは、前述の到達移動量uを計測するステップである。本ステップは、計測部76により実行される。
【0071】
計測ステップにおいて、計測部76は、まず下ガイド48と計測部位28aとをX方向で初期離間距離L
iniだけ離間させる。このときの制御は、例えば計測部位28aに対するX方向での離間距離が初期離間距離L
iniになる下ガイド48の位置を予め記憶部66に記憶させておくことで実現可能である。その下ガイド48の位置は、例えばワイヤ電極14を傾斜させずに相対移動させることで計測部位28aに一旦到達させた後、そのまま初期離間距離L
iniだけ後退した位置として特定可能である。
【0072】
下ガイド48と計測部位28aとをX方向で初期離間距離L
iniだけ離間させた後、計測部76は、所定の角度αで傾斜したワイヤ電極14をX方向に沿って相対移動させることにより、到達移動量uを計測する。このときの相対移動は、移動制御部74に要求することで実現可能である。計測部76は、計測した到達移動量uを、記憶部66に一旦記憶させる。これにより、計測ステップが完了する。
【0073】
情報修正ステップは、所定の角度αと相対移動量とに基づいて記憶ステップで記憶した位置情報60を修正するステップである。本ステップは情報修正部80により実行される。
【0074】
図9は、情報修正ステップを説明するための図である。なお、
図9には、記憶部66の位置情報60により特定される上側支点44、下側支点58、およびこれらに支持されるワイヤ電極14を実線で示し、実際の上側支点44、下側支点58、およびこれらに支持されるワイヤ電極14を破線で示した。また、実際の上側支点44、下側支点58、およびこれらに支持されるワイヤ電極14の符号には、区別のために「’」を付した。
【0075】
以下、情報修正部80が行う演算処理の一例を説明する。情報修正部80は、まず
図9のように、∠DBB’が直角である直角三角形DB’Bを定義する。直角三角形DB’Bが有する3つの頂点B、頂点B’および頂点Dのうち、頂点Bは、計測部位28aからX方向に延びる仮想直線とワイヤ電極14との交点である。また、頂点B’は、該仮想直線とワイヤ電極14’との交点である。そして、頂点Dは、点BからZ方向に沿って延びる仮想直線とワイヤ電極14’との交点である。
【0076】
直角三角形DB’Bの辺BB’の長さは、推定移動量u’と到達移動量uとの差分に等しい。ここで、∠BDB’の大きさは所定の角度αであるから、辺BDの長さは、辺BB’の長さと直角三角形DB’Bの正接とに基づくことで、容易に求まる(BD=BB’/tanα)。
【0077】
これにより求まる辺BDの長さは、下側支点58(上側支点44)と下側支点58’(上側支点44’)とのZ方向での位置の差分に等しい。したがって、この差分を記憶部66の位置情報60に反映すれば、該位置情報60は精度のよい情報へと修正される。
【0078】
なお、
図9を見れば分かるように、推定移動量u’よりも到達移動量uの方が大きい場合、上側支点44および下側支点58は、より上方の位置へと修正される必要がある。その一方で、仮に、推定移動量u’よりも到達移動量uの方が小さければ、上側支点44および下側支点58は、より下方の位置へと修正される必要がある。修正された位置情報60は、記憶部66に記憶(更新)される。これにより、情報修正ステップが完了し、本実施の形態の修正方法が完了する。
【0079】
以上の通り、本実施の形態によれば、上ガイド40と下ガイド48との各々の支点の位置を示す位置情報60を精度よく修正するワイヤ放電加工機10、修正装置12および修正方法が提供される。
【0080】
なお、傾斜制御ステップの後に計測ステップを行うことができれば、推定ステップは傾斜制御ステップの前に行ってもよいし、計測ステップの後に行ってもよい。
【0081】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明された。実施の形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、請求の範囲の記載から明らかである。
【0082】
(変形例1)
以下、変形例1の修正装置12について説明する。ただし、実施の形態で既に説明した要素については同一の符号を付し、その説明を適宜割愛する。
【0083】
図10は、変形例1の修正装置12の概略構成図である。
【0084】
本変形例の修正装置12は、実施の形態の修正装置12と比較して概ね同様の構成を備えるものの、算出部82と、修正部84と、を情報修正部80が有するという点で少なくとも相違する。以下、便宜的に、本変形例の情報修正部80を情報修正部80’と記載する。
【0085】
また、本変形例を適用するにあたっては、記憶部66が、実施の形態で説明した情報のほか、第1の高さH
28aと、第2の高さH
40と、支点間距離L
44、58と、をさらに記憶することが前提となる。これらのうち、第1の高さH
28a(
図12参照)は、支持面22a上の計測部位28aの、支持面22aに対する鉛直方向での位置の高さのことである。また、第2の高さH
40は、実施の形態でも説明した、上ガイド40の基準点42と支持台22との離間距離(上ガイド40の位置の高さ)のことである。
【0086】
情報修正部80’が有する要素のうち、算出部82は、初期離間距離L
iniと到達移動量uとの差分と、所定の角度αとに基づくことにより、下側支点58と計測部位28aとの鉛直方向での距離を示す第1の距離L
28a、58(
図12参照)を算出するものである。また、それと共に、第1の高さH
28a、第2の高さH
40、支点間距離L
44、58および第1の距離L
28a、58に基づくことにより、基準点42と上側支点44との鉛直方向での距離を示す第2の距離L
42、44(
図12参照)を算出するものである。
【0087】
そして、修正部84は、第2の高さH
40と第2の距離L
42、44とに基づいて位置情報60のうちの上側支点44の位置を示す情報を修正するものである。また、それと共に、修正した上側支点44の位置および支点間距離L
44、58に基づいて位置情報60のうちの下側支点58の位置を示す情報を修正するものである。
【0088】
図11は、変形例1の修正方法の流れを例示するフローチャートである。
【0089】
以下、本変形例の修正方法について説明する。本変形例の修正方法は、
図11の通り、記憶ステップ(S1’)と、傾斜制御ステップ(S2’)と、計測ステップ(S3’)と、情報修正ステップ(S4’)と、を含む。実施の形態で説明した推定ステップは、本変形例においては不要である。
【0090】
以上のステップのうち、記憶ステップでは、実施の形態の記憶ステップで記憶する情報のほか、前述の第1の高さH
28aと、第2の高さH
40と、支点間距離L
44、58と、をさらに記憶する。また、傾斜制御ステップと計測ステップとについては、実施の形態と同様にして行う。
【0091】
情報修正ステップは、算出ステップ(S5’)と、修正ステップ(S6)と、を有する。これらのうち、算出ステップは、第1の距離L
28a、58と、第2の距離L
42、44と、を算出するステップであって、算出部82により実行されるステップである。
【0092】
図12は、変形例1の算出ステップを説明するための図である。なお、
図12における鉛直方向は、
図9と同様にZ方向である。また、相対移動方向は、これも
図9と同様にX方向である。
【0093】
以下、算出ステップにおける演算処理の一例を説明する。前提として、算出部82は、まず
図12のように、∠A’CB’が直角である直角三角形A’B’Cを定義する。直角三角形A’B’Cが有する3つの頂点A’、頂点B’および頂点Cのうち、頂点B’は、計測部位28aからX方向に延びる仮想直線とワイヤ電極14との交点である。また、頂点Cは、該仮想直線と鉛直状態のワイヤ電極14との交点である。そして、頂点A’は、下側支点58である。
【0094】
直角三角形A’B’Cの辺B’Cの長さは、初期離間距離L
iniと、計測ステップで計測される到達移動量uとの差分に等しい。また、辺A’Cの長さは、前述の第1の距離L
28a、58に等しい。ここで、∠B’A’Cの大きさは所定の角度αであるから、辺A’Cの長さは、辺B’Cの長さと直角三角形A’B’Cの正接とに基づくことで、容易に求まる(A’C=B’C/tanα)。第1の距離L
28a、58は、このようにして求めることができる。
【0095】
第1の距離L
28a、58が求まれば、第1の高さH
28a、第2の高さH
40および支点間距離L
44、58は記憶部66が記憶しているので、算出部82はこれらの数値に基づくことで前述の第2の距離L
42、44をさらに求めることができる。例えば、第1の距離L
28a、58から第1の高さH
28aを差し引くことで支持面22aと下側支点58とのZ方向での距離を求め、該距離と第2の高さH
40との和を支点間距離L
44、58から差し引くことにより、第2の距離L
42、44が求まる。求められた第2の距離L
42、44は、記憶部66に一旦記憶される。これにより、算出ステップは完了する。
【0096】
修正ステップは、算出ステップで算出した数値および記憶部66に記憶された情報に基づいて位置情報60を修正するステップであって、修正部84により実行されるステップである。
【0097】
修正部84は、修正ステップにおいて位置情報60のうちの上側支点44の位置を修正するときには、前述の通り、第2の高さH
40と第2の距離L
42、44とに基づくことができる。また、修正部84は、修正ステップにおいて位置情報60のうちの下側支点58の位置を修正するときには、修正済の上側支点44の位置を示す情報と、支点間距離L
44、58と、に基づくことができる。これにより、位置情報60が、精度のよい情報へと修正される。
【0098】
(変形例2)
修正装置12について、実施の形態ではワイヤ放電加工機10の制御装置18と一体的に構成されるものとして説明したが、修正装置12の構成はこれに限定されない。すなわち、修正装置12は、制御装置18とは別個の装置として構成され、ワイヤ放電加工機10に備わってもよい。
【0099】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0100】
<第1の発明>
ワイヤ電極(14)を支持するワイヤ放電加工機(10)の上ガイド(40)の上側支点(44)の位置および下ガイド(48)の下側支点(58)の位置を示す位置情報(60)を修正する修正装置(12)であって、前記ワイヤ放電加工機(10)は、計測部位(28a)を有する計測対象物(28)を支持する支持面(22a)を有すると共に、前記支持面(22a)の鉛直方向で前記上ガイド(40)と前記下ガイド(48)との間に配置される支持台(22)を備え、前記修正装置(12)は、前記位置情報(60)を記憶する記憶部(66)と、前記支持面(22a)に支持された前記計測対象物(28)の前記計測部位(28a)と前記ワイヤ電極(14)とを、前記鉛直方向と直交する相対移動方向で対向させた状態で、前記上ガイド(40)を前記下ガイド(48)よりも前記相対移動方向で前記計測部位(28a)に近い位置にすることにより、前記ワイヤ電極(14)を所定の角度(α)で傾斜させる傾斜制御部(72)と、前記下ガイド(48)と前記計測部位(28a)とを前記相対移動方向で所定の距離(L
ini)だけ離間させた状態から、前記上ガイド(40)および前記下ガイド(48)を前記相対移動方向に沿って相対移動させることにより、前記所定の角度(α)で傾斜した前記ワイヤ電極(14)が前記計測部位(28a)に到達するまでの前記上ガイド(40)、前記下ガイド(48)および前記ワイヤ電極(14)の前記計測部位(28a)に対する相対移動量(u)を計測する計測部(76)と、前記所定の角度(α)と前記相対移動量(u)とに基づいて前記記憶部(66)の前記位置情報(60)を修正する情報修正部(80)と、を備える。
【0101】
これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正する修正装置(12)が提供される。
【0102】
修正装置(12)は、前記下側支点(58)と前記計測部位(28a)との前記鉛直方向での離間距離の推定値である推定離間距離と、前記所定の角度(α)とに基づくことにより、前記相対移動量(u)の推定値である推定移動量(u’)を求める推定部(78)をさらに備え、前記情報修正部(80)は、前記相対移動量(u)と前記推定移動量(u’)との差分と前記所定の角度(α)とに基づくことで前記位置情報(60)を修正してもよい。これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正する修正装置(12)が提供される。
【0103】
前記上ガイド(40)は、前記上ガイド(40)の前記鉛直方向での位置を表すときの基準である基準点(42)を有し、前記記憶部(66)は、前記支持面(22a)に対する前記計測部位(28a)の前記鉛直方向での位置の高さを示す第1の高さ(H
28a)と、前記支持面(22a)に対する前記基準点(42)の前記鉛直方向での位置の高さを示す第2の高さ(H
40)と、前記上側支点(44)と前記下側支点(58)との前記鉛直方向での距離を示す支点間距離(L
44、58)と、をさらに記憶し、前記情報修正部(80)は、前記所定の距離(L
ini)と前記相対移動量(u)との差分と、前記所定の角度(α)とに基づくことにより、前記下側支点(58)と前記計測部位(28a)との前記鉛直方向での距離を示す第1の距離(L
28a、58)を算出すると共に、前記第1の高さ(H
28a)、前記第2の高さ(H
40)、前記支点間距離(L
44、58)および前記第1の距離(L
28a、58)に基づくことにより、前記基準点(42)と前記上側支点(44)との前記鉛直方向での距離を示す第2の距離(L
42、44)を算出する算出部(82)と、前記第2の高さ(H
40)と前記第2の距離(L
42、44)とに基づいて前記位置情報(60)のうちの前記上側支点(44)の位置を示す情報を修正すると共に、修正した前記上側支点(44)の位置および前記支点間距離(L
44、58)に基づいて前記位置情報(60)のうちの前記下側支点(58)の位置を示す情報を修正する修正部(84)と、を有してもよい。これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正する修正装置(12)が提供される。
【0104】
<第2の発明>
ワイヤ放電加工機(10)であって、ワイヤ電極(14)を支持する上側支点(44)を有する上ガイド(40)と、前記上ガイド(40)と共に前記ワイヤ電極(14)を支持する下側支点(58)を有する下ガイド(48)と、計測部位(28a)を有する計測対象物(28)を支持する支持面(22a)を有すると共に、前記支持面(22a)の鉛直方向で前記上ガイド(40)と前記下ガイド(48)との間に配置される支持台(22)と、前記上側支点(44)の位置および前記下側支点(58)の位置を示す位置情報(60)を記憶する記憶部(66)と、前記支持面(22a)に支持された前記計測対象物(28)の前記計測部位(28a)と前記ワイヤ電極(14)とを、前記鉛直方向と直交する相対移動方向で対向させた状態で、前記上ガイド(40)を前記下ガイド(48)よりも前記相対移動方向で前記計測部位(28a)に近い位置にすることにより、前記ワイヤ電極(14)を所定の角度(α)で傾斜させる傾斜制御部(72)と、前記下ガイド(48)と前記計測部位(28a)とを前記相対移動方向で所定の距離(L
ini)だけ離間させた状態から、前記上ガイド(40)および前記下ガイド(48)を前記相対移動方向に沿って相対移動させることにより、前記所定の角度(α)で傾斜した前記ワイヤ電極(14)が前記計測部位(28a)に到達するまでの前記上ガイド(40)、前記下ガイド(48)および前記ワイヤ電極(14)の前記計測部位(28a)に対する相対移動量(u)を計測する計測部(76)と、前記所定の角度(α)と前記相対移動量(u)とに基づいて前記記憶部(66)の前記位置情報(60)を修正する情報修正部(80)と、を備える。
【0105】
前記ワイヤ放電加工機(10)は、前記下側支点(58)と前記計測部位(28a)との前記鉛直方向での離間距離の推定値である推定離間距離と、前記所定の角度(α)とに基づくことにより、前記相対移動量(u)の推定値である推定移動量(u’)を求める推定部(78)をさらに備え、前記情報修正部(80)は、前記相対移動量(u)と前記推定移動量(u’)との差分と前記所定の角度(α)とに基づくことで前記位置情報(60)を修正してもよい。これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正するワイヤ放電加工機(10)が提供される。
【0106】
前記上ガイド(40)は、前記上ガイド(40)の前記鉛直方向での位置を表すときの基準である基準点(42)を有し、前記記憶部(66)は、前記支持面(22a)に対する前記計測部位(28a)の前記鉛直方向での位置の高さを示す第1の高さ(H
28a)と、前記支持面(22a)に対する前記基準点(42)の前記鉛直方向での位置の高さを示す第2の高さ(H
40)と、前記上側支点(44)と前記下側支点(58)との前記鉛直方向での距離を示す支点間距離(L
44、58)と、をさらに記憶し、前記情報修正部(80)は、前記所定の距離(L
ini)と前記相対移動量(u)との差分と、前記所定の角度(α)とに基づくことにより、前記下側支点(58)と前記計測部位(28a)との前記鉛直方向での距離を示す第1の距離(L
28a、58)を算出すると共に、前記第1の高さ(H
28a)、前記第2の高さ(H
40)、前記支点間距離(L
44、58)および前記第1の距離(L
28a、58)に基づくことにより、前記基準点(42)と前記上側支点(44)との前記鉛直方向での距離を示す第2の距離(L
42、44)を算出する算出部(82)と、前記第2の高さ(H
40)と前記第2の距離(L
42、44)とに基づいて前記位置情報(60)のうちの前記上側支点(44)の位置を示す情報を修正すると共に、修正した前記上側支点(44)の位置および前記支点間距離(L
44、58)に基づいて前記位置情報(60)のうちの前記下側支点(58)の位置を示す情報を修正する修正部(84)と、を有してもよい。これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正するワイヤ放電加工機(10)が提供される。
【0107】
<第3の発明>
ワイヤ電極(14)を支持するワイヤ放電加工機(10)の上ガイド(40)の上側支点(44)の位置および下ガイド(48)の下側支点(58)の位置を示す位置情報(60)を修正する修正方法であって、前記ワイヤ放電加工機(10)は、計測部位(28a)を有する計測対象物(28)を支持する支持面(22a)を有すると共に、前記支持面(22a)の鉛直方向で前記上ガイド(40)と前記下ガイド(48)との間に配置される支持台(22)を備え、前記修正方法は、前記位置情報(60)を記憶する記憶ステップと、前記支持面(22a)に支持された前記計測対象物(28)の前記計測部位(28a)と前記ワイヤ電極(14)とを、前記鉛直方向と直交する相対移動方向で対向させた状態で、前記上ガイド(40)を前記下ガイド(48)よりも前記相対移動方向で前記計測部位(28a)に近い位置にすることにより、前記ワイヤ電極(14)を所定の角度(α)で傾斜させる傾斜制御ステップと、前記下ガイド(48)と前記計測部位(28a)とを前記相対移動方向で所定の距離(L
ini)だけ離間させた状態から、前記上ガイド(40)および前記下ガイド(48)を前記相対移動方向に沿って相対移動させることにより、前記所定の角度(α)で傾斜した前記ワイヤ電極(14)が前記計測部位(28a)に到達するまでの前記上ガイド(40)、前記下ガイド(48)および前記ワイヤ電極(14)の前記計測部位(28a)に対する相対移動量(u)を計測する計測ステップと、前記所定の角度(α)と前記相対移動量(u)とに基づいて前記記憶ステップで記憶した前記位置情報(60)を修正する情報修正ステップと、を含む。
【0108】
これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正する修正方法が提供される。
【0109】
前記修正方法は、前記下側支点(58)と前記計測部位(28a)との前記鉛直方向での離間距離の推定値である推定離間距離と、前記所定の角度(α)とに基づくことにより、前記相対移動量(u)の推定値である推定移動量(u’)を求める推定ステップをさらに含み、前記情報修正ステップでは、前記相対移動量(u)と前記推定移動量(u’)との差分と前記所定の角度(α)とに基づくことで前記位置情報(60)を修正してもよい。これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正する修正方法が提供される。
【0110】
前記上ガイド(40)は、前記上ガイド(40)の前記鉛直方向での位置を表すときの基準である基準点(42)を有し、前記記憶ステップでは、前記支持面(22a)に対する前記計測部位(28a)の前記鉛直方向での位置の高さを示す第1の高さ(H
28a)と、前記支持面(22a)に対する前記基準点(42)の前記鉛直方向での位置の高さを示す第2の高さ(H
40)と、前記上側支点(44)と前記下側支点(58)との前記鉛直方向での距離を示す支点間距離(L
44、58)と、をさらに記憶し、前記情報修正ステップは、前記所定の距離(L
ini)と前記相対移動量(u)との差分と、前記所定の角度(α)とに基づくことにより、前記下側支点(58)と前記計測部位(28a)との前記鉛直方向での距離を示す第1の距離(L
28a、58)を算出すると共に、前記第1の高さ(H
28a)、前記第2の高さ(H
40)、前記支点間距離(L
44、58)および前記第1の距離(L
28a、58)に基づくことにより、前記基準点(42)と前記上側支点(44)との前記鉛直方向での距離を示す第2の距離(L
42、44)を算出する算出ステップと、前記第2の高さ(H
40)と前記第2の距離(L
42、44)とに基づいて前記位置情報(60)のうちの前記上側支点(44)の位置を示す情報を修正すると共に、修正した前記上側支点(44)の位置および前記支点間距離(L
44、58)に基づいて前記位置情報(60)のうちの前記下側支点(58)の位置を示す情報を修正する修正ステップと、を有してもよい。これにより、上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正する修正方法が提供される。
上ガイド(40)と下ガイド(48)との各々の支点の位置を示す位置情報(60)を精度よく修正するワイヤ放電加工機(10)、修正装置(12)および修正方法を提供する。修正装置(12)であって、位置情報(60)を記憶する記憶部(66)と、ワイヤ電極(14)を所定の角度(α)で傾斜させる傾斜制御部(72)と、下ガイド(48)と計測部位(28a)とを相対移動方向で所定の距離だけ離間させた状態から所定の角度(α)で傾斜したワイヤ電極(14)が計測部位(28a)に到達するまでの相対移動量を計測する計測部(76)と、所定の角度(α)と相対移動量とに基づいて記憶部(66)の位置情報(60)を修正する情報修正部(80)と、を備える。