(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜方向算出切替部は、前記加工プログラム経路の形状が円弧形状である場合には、前記第2傾斜方向算出部による前記工具中心経路に対する前記ノズルの傾斜方向の算出に切り替える、請求項2に記載のレーザ加工機の制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係るレーザ加工機の制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】開先加工を説明するための図であり、開先加工品の斜視図である。
【
図3】開先加工を説明するための図であり、開先加工時におけるノズルの姿勢及び軌跡を示す斜視図である。
【
図4】開先加工を説明するための図であり、開先加工時におけるノズルの軌跡を示す平面図である。
【
図5】開先加工時におけるノズルの傾斜方向及び傾斜角度を示す図である。
【
図6】開先加工において工具径補正を実行しないときのノズルの姿勢及び軌跡を示す図である。
【
図7】開先加工において工具径補正を実行したときの従来の制御装置により制御されるノズルの姿勢及び軌跡を示す図である。
【
図8】開先加工において工具径補正を実行したときの本実施形態に係る制御装置により制御されるノズルの姿勢及び軌跡を示す図である。
【
図9】開先加工においてノズルの傾斜角度を変更したときのレーザ照射領域を示す図である。
【
図10】開先加工において工具径補正を実行したときの従来のレーザ照射領域を示す図である。
【
図11】開先加工において工具径補正を実行したときの本実施形態のレーザ照射領域を示す図である。
【
図12】円弧状の加工プログラム経路で工具径補正を実行していないときのノズルの軌跡を示す図である。
【
図13】円弧状の加工プログラム経路で工具径補正を実行し、ノズルの傾斜方向を円弧状の加工プログラム経路に対する傾斜方向としたときのノズルの軌跡を示す図である。
【
図14】円弧状の加工プログラム経路で工具中心経路との半径差が大きい場合に工具径補正を実行し、ノズルの傾斜方向を円弧状の加工プログラム経路に対する傾斜方向としたときのノズルの軌跡を示す図である。
【
図15】円弧状の加工プログラム経路で、ノズルの傾斜方向を工具中心経路に対する傾斜方向とした場合と、ノズルの傾斜方向を加工プログラム経路に対する傾斜方向とした場合の加工形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1は、加工対象のワークに対して、レーザ加工機による開先加工を実行することにより、開先を有する部材に加工するものである。
【0014】
ここで、レーザ加工機による開先加工について、
図2〜
図6を参照して詳しく説明する。
図2は、開先加工を説明するための図であり、開先加工完成品Pの斜視図である。
図2に示す例では、四角錐台形状の開先加工完成品Pは、上面側ほど四方の側面が外側に傾斜する形状を有している。このような傾斜面で構成される開先は、レーザ溶接時の溝部を形成する。
【0015】
図3は、開先加工を説明するための図であり、開先加工時におけるノズル2の姿勢及び軌跡を示す斜視図である。また、
図4は、開先加工を説明するための図であり、開先加工時におけるノズル2の軌跡を示す平面図である。これら
図3及び
図4に示す例は、
図2に示す開先加工完成品にワークWを加工する場合のノズル2の軌跡を示している。
【0016】
図3及び
図4に示すように、ワークWの表面側において矩形状にノズル2を移動させる。このとき、ノズル2の進行方向に対してノズル2を傾斜させる。ノズル2の傾斜方向は、
図3及び
図4に示す例では、進行方向に対して90度傾斜する方向(
図3のX方向又はY方向)でかつ外側に傾斜する方向である。また、
図3及び
図4に示す例では、ノズル2の進行方向に直交する平面内における、ワークWの表面(平面)に垂直な方向(
図3のZ方向)から上記傾斜方向へのノズル2の傾斜角度は、45度に設定されている。
【0017】
ノズル2の傾斜方向及び傾斜角度について、
図5を参照してさらに詳しく説明する。
図5は、開先加工時におけるノズル2の傾斜方向及び傾斜角度を示す図である。
図5に示す例では、ノズル2の傾斜方向は、ノズル2の進行方向であるX方向に対して、90度回転する方向、すなわちY方向である。また、ノズル2の進行方向であるX方向に直交する平面、すなわちYZ平面内における、ワークWの表面(XY平面)に垂直な方向であるZ方向から、上記傾斜方向であるY方向へのノズル2の傾斜角度は、60度に設定されている。このように、開先加工では、ノズル2の傾斜方向及び傾斜角度が制御される。
【0018】
ここで、ノズル2の傾斜角度は、加工プログラム指令により加工形状等に応じて変更されることがある。ノズル2の傾斜角度が変更されると、加工対象のワークWに対するレーザの照射領域が変化する。そのため、レーザ加工機の制御装置1が通常備える工具径補正機能により、レーザの照射距離の調整が行われる。すなわち、工具径補正が行われると、
図3及び
図4に示すように、ノズル2の中心が通る工具中心経路が、加工プログラム経路からオフセットされ、両者は異なった経路となる。このオフセット量が工具径補正量である。
【0019】
図6は、開先加工において工具径補正を実行しないときのノズル2の姿勢及び軌跡を示す図である。
図6は、XY平面上から見たノズル2の姿勢と軌跡を示している。
図6に示す例では、工具径補正を実行していない状態であり、加工プログラム経路と工具中心経路は一致している。そして、これら経路の屈曲したコーナー部においても、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向が常に一定となるように制御されるため、ノズル2は自動で回転し、ノズル2の傾斜方向が維持される。
【0020】
図7は、開先加工において工具径補正を実行したときの従来の制御装置により制御されるノズル2の姿勢及び軌跡を示す図である。
図7に示すように、従来の制御装置により制御されるノズル2の傾斜方向は、工具中心経路に対する傾斜方向として常に一定となるように自動で制御されているところ、加工形状等によりノズル2の傾斜角度が変更されたことに応じて工具径補正量が変更(工具径補正機能ON)されると、工具中心経路の進行方向が変化し、それに伴ってノズル2の傾斜方向が変化する。そのため、加工プログラム経路に対するノズルの傾斜方向が変化し、加工精度が低下するという課題が生じる。
【0021】
そこで、本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1は、上述の課題を解決するものである。以下、本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1の構成について詳しく説明する。
【0022】
図1に戻って、本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1は、加工プログラム解析部11と、工具中心経路算出部12と、傾斜方向算出部13と、工具姿勢算出部14と、駆動軸移動量算出部15と、駆動軸制御部16と、を備える。
【0023】
本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1は、例えば、CPU、メモリ等を有するコンピュータに、本実施形態に係るレーザ加工を実行させるプログラムを読み込ませることによって実現される。本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1は、数値制御装置及びサーボ制御装置を含んで構成される。
【0024】
加工プログラム解析部11は、入力される加工プログラムを解析する。具体的に、加工プログラム解析部11は、加工プログラムを解析することにより、加工プログラム経路、ノズルの傾斜方向に関する情報、ノズルの傾斜角度、等の加工情報を取得する。
【0025】
工具中心経路算出部12は、上記加工プログラム解析部11による加工プログラムの解析結果に基づいて、加工プログラム経路に対するオフセットベクトルを作成し、該オフセットベクトルに基づいて、ノズルの中心が通る工具中心経路を算出する。この工具中心経路算出部12により、加工プログラム経路からオフセット(加工プログラム経路から工具径の分オフセット)した工具中心経路が算出されることで、工具径の補正が可能となっている。
【0026】
傾斜方向算出部13は、第1傾斜方向算出部131と、第2傾斜方向算出部132と、傾斜方向算出切替部133と、を有する。
【0027】
第1傾斜方向算出部131は、上記加工プログラム解析部11による加工プログラムの解析結果に基づいて、加工プログラム経路に対するノズルの傾斜方向を算出する。具体的に、加工プログラム解析部11で取得されたノズル2の傾斜方向に関する情報(ノズル2の進行方向に対する回転角度)に基づいて、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向を算出する。
【0028】
第2傾斜方向算出部132は、上記加工プログラム解析部11による加工プログラムの解析結果に基づいて、工具中心経路に対するノズルの傾斜方向を算出する。具体的に、加工プログラム解析部11で取得されたノズル2の傾斜方向に関する情報(ノズル2の進行方向に対する回転角度)に基づいて、工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向を算出する。
【0029】
傾斜方向算出切替部133は、第1傾斜方向算出部131による加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向の算出と、第2傾斜方向算出部132による工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向の算出と、を、加工プログラム経路の形状に応じて切り替える。具体的に、傾斜方向算出切替部133は、加工プログラム経路の形状が円弧形状である場合には、第2傾斜方向算出部132による工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向の算出に切り替える。この傾斜方向算出切替部133による傾斜方向算出の切り替えについては、後段で詳述する。
【0030】
なお、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向は、加工プログラム経路に対して直交する方向であることが好ましい。同様に、工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向は、工具中心経路に対して直交する方向であることが好ましい。これにより、いわゆる法線方向制御が可能となる。
【0031】
工具姿勢算出部14は、第1傾斜方向算出部131又は第2傾斜方向算出部132により算出されたノズル2の傾斜方向と、加工プログラム経路に直交する平面内におけるワークWの平面に垂直な方向から傾斜方向へのノズル2の傾斜角度と、に基づいて、ノズル2の姿勢を算出する。
【0032】
駆動軸移動量算出部15は、工具中心経路算出部12により算出された工具中心経路及び工具姿勢算出部14により算出されたノズル2の姿勢に基づいて、駆動軸の移動量を算出する。
【0033】
駆動軸制御部16は、駆動軸移動量算出部15により算出された駆動軸の移動量に基づいて、駆動軸を制御する。
【0034】
次に、本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1により制御されるレーザ加工機のノズル2の動作について、詳しく説明する。
【0035】
図8は、開先加工において工具径補正を実行したときの本実施形態に係る制御装置1により制御されるノズル2の姿勢及び軌跡を示す図である。
図8に示すように、本実施形態に係る制御装置1では、加工形状等によりノズル2の傾斜角度が変更されたことに応じて工具径補正量が変更(工具径補正機能ON)された場合には、ノズル2の傾斜方向を加工プログラム経路に対する傾斜方向として制御する。そのため、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向は常に一定に維持されるため、加工精度を向上できるようになっている。
【0036】
図9は、開先加工においてノズル2の傾斜角度を変更したときのレーザ照射領域LAを示す図である。
図9では、工具径補正がOFFのときを示しており、加工プログラム経路と工具中心経路は本来一致しているが、便宜上、
図9では両者をずらして記載している。
図9に示すように、ノズル2の傾斜角度を変更、具体的にはノズル2の姿勢の傾きを大きくすると、レーザの照射領域LAが広がることが分かる。
【0037】
これに対して、
図10は、開先加工において工具径補正を実行したときの従来のレーザ照射領域LAを示す図である。従来では、ノズル2の傾斜角度を変更して工具径補正がONになると、ノズル2の傾斜方向は、加工プログラム経路からオフセットされた工具中心経路に対する傾斜方向に制御されるため、工具中心経路に伴って傾斜方向が変化し、ワークWに対するレーザの当たり方も変化することが分かる。これにより、レーザ照射領域LAも大きく変化し、加工精度が低下する原因となる。
【0038】
これに対して、
図11は、開先加工において工具径補正を実行したときの本実施形態のレーザ照射領域LAを示す図である。
図11に示すように、ノズル2の傾斜角度を変更して工具径補正がONになると、ノズル2の傾斜方向は、加工プログラム経路に対する傾斜方向に制御されるため、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向が維持される。そのため、加工精度の低下が回避される。
【0039】
次に、傾斜方向算出切替部133による傾斜方向算出の切り替えについて、
図12〜
図15を参照して詳しく説明する。
【0040】
図12は、円弧状の加工プログラム経路で工具径補正を実行していないときのレーザ加工を示す図である。
図12に示すように、円弧状の加工プログラム経路上で開先加工を行う場合、ノズル2の傾斜方向は、円弧の接線に対して常に垂直(法線方向)となるように傾斜方向を制御しながら開先加工が行われる。なお、この
図12では、工具径補正を実行していないときを示しているため、加工プログラム経路と工具中心経路は一致している。
【0041】
図13は、円弧状の加工プログラム経路で工具径補正を実行し、ノズルの傾斜方向を円弧状の加工プログラム経路に対する傾斜方向としたときのレーザ加工を示す図である。
図13に示すように、ノズル2の傾斜方向を加工プログラム経路に対する傾斜方向としてノズル2を工具中心経路上に移動させると、特に経路の始点付近と終点付近において、工具中心経路の接線に対する法線の傾きと、プログラム経路の接線に対する法線の傾きとの間に傾きの差が生じる。このとき、経路が真円でも加工面の形状は真円とはならない。
【0042】
また、
図14は、円弧状の加工プログラム経路で工具径補正を実行し、工具中心経路との半径差が大きい場合に、ノズル2の傾斜方向を円弧状の加工プログラム経路に対する傾斜方向としたときのレーザ加工を示す図である。
図15は、円弧状の加工プログラム経路で、ノズル2の傾斜方向を工具中心経路に対する傾斜方向とした場合と、ノズル2の傾斜方向を加工プログラム経路に対する傾斜方向とした場合の加工形状を示す図である。これら
図14及び
図15に示すように、加工プログラム経路と工具中心経路との半径差が大きい場合には、ノズル2の傾斜方向を加工プログラム経路に対する傾斜方向にすると、加工形状が円弧状にならず、半径差が大きくなるに従い、加工形状は曲線状ではなくなることが分かる。
【0043】
そこで本実施形態では、傾斜方向算出切替部133により、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向の算出と、工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向の算出と、を加工プログラム経路の形状に応じて切り替える。特に、上述のように加工プログラム経路の形状が円弧形状である場合には、工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向の算出に切り替える。これにより、所望の加工形状を維持しながら加工精度を向上することが可能となっている。
【0044】
本実施形態に係るレーザ加工機の制御装置1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、オフセットベクトルに基づいて工具中心経路を算出する工具中心経路算出部12と、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向を算出する第1傾斜方向算出部131と、を設けた。また、算出されたノズル2の傾斜方向と、加工プログラム経路に直交する平面内におけるワークWの平面に垂直な方向から傾斜方向へのノズル2の傾斜角度と、に基づいて、ノズル2の姿勢を算出する工具姿勢算出部14と、工具中心経路及びノズル2の姿勢に基づいて駆動軸の移動量を算出する駆動軸移動量算出部15及び該駆動軸の移動量に基づいて駆動軸を制御する駆動軸制御部16を設けた。
これにより、加工形状等に応じてノズルの傾斜角度を変更し、工具径補正量が変更された場合においても、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向を維持できるため、加工精度を向上させることができる。
【0045】
また本実施形態によれば、加工プログラムの解析結果に基づいて工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向を算出する第2傾斜方向算出部132を設けた。また、第1傾斜方向算出部131による加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向の算出と、第2傾斜方向算出部132による工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向の算出と、を加工プログラム経路の形状に応じて切り替える傾斜方向算出切替部133を設けた。
これにより、ノズル2の傾斜方向を、工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向を算出するか、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向を算出するか、を加工プログラム経路の形状に応じて切り替えることができるため、加工形状を維持しつつ加工精度を向上させることができる。
【0046】
また本実施形態によれば、傾斜方向算出切替部133を、加工プログラム経路の形状が円弧形状である場合には第2傾斜方向算出部132による工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向の算出に切り替える構成とした。これにより、より確実に、加工形状を維持しつつ加工精度を向上させることができる。
【0047】
また本実施形態によれば、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向は、加工プログラム経路に対して直交する方向であり、同様に、工具中心経路に対するノズル2の傾斜方向は、工具中心経路に対して直交する方向とした。これにより、いわゆる法線方向制御が可能となり、加工精度を向上させることができる。
【0048】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良は本開示に含まれる。
工具径補正量変更時においても加工プログラム経路に対するノズルの傾斜方向を維持でき、加工精度を向上できるレーザ加工機の制御装置を提供すること。加工プログラム経路に対するオフセットベクトルに基づいて工具中心経路を算出する工具中心経路算出部12と、加工プログラム経路に対するノズル2の傾斜方向を算出する第1傾斜方向算出部131と、第1傾斜方向算出部131により算出されたノズル2の傾斜方向と、加工プログラム経路に直交する平面内におけるワークWの平面に垂直な方向から傾斜方向へのノズル2の傾斜角度と、に基づいて、ノズル2の姿勢を算出する工具姿勢算出部14と、工具中心経路及びノズル2の姿勢に基づいて駆動軸の移動量を算出する駆動軸移動量算出部15と、駆動軸の移動量に基づいて駆動軸を制御する駆動軸制御部16と、を備える、レーザ加工機の制御装置1である。