【文献】
The New England Journal of Medicine,2015年,Vol.373, Nol.1,pp.48-59
【文献】
Biochemical and Biophysical Research Communications,1994年,Vol.204, No.3,pp.1137-1142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶を有効成分とするポルフィリン症を治療又は予防するための医薬であって、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶の投与量が、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として50〜500mg/日である、前記医薬。
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶の投与量が、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として100〜300mg/日である、請求項1に記載の医薬。
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶の投与量が、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル
]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として100mg/日、200mg/日または300mg/日である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の医薬。
【背景技術】
【0002】
太陽から照射された光のうち、波長300nm以下の光線は成層圏のオゾン層に吸収されるため地上に届く太陽光は300nm以上の紫外線、可視光線、赤外線である.太陽光線を浴びた時に生じる生理的な反応としては日光皮膚炎(日焼け)や長期曝露により生じる光老化と呼ばれる皮膚変化(皺、たるみ、色素斑)などがある。一方、健常人で反応しない程度の光照射によって皮膚炎などの病的変化を生じる疾患は光線性皮膚疾患と呼ばれる。光線性皮膚疾患の一つにポルフィリン症が知られている。
【0003】
ポルフィリン症はヘム代謝酵素の活性低下により、ポルフィリン体あるいはその前駆体が蓄積することによって発症する疾患である。症状としては、光線過敏(日焼け、熱傷様症状)に加え、消化器症状、神経症状などを伴うことがある。一度発症すれば、症状は生涯続く場合が多い一方で、根治療法がなく、遮光するなど対症療法が主な治療法である。
【0004】
例えば、特許文献1には、アファメラノチド(Afamelanotide)などのMCRアゴニストペプチドを赤芽球性プロトポルフィリン症等の光線性皮膚疾患の治療の目的で使用することが開示されているが、アファメラノチドはMC1R選択的アゴニストではないので、副作用の発現が懸念される。またペプチドであるため、経口投与ができず、また、半減期が短く医療従事者による定期的な皮下インプラントが必要などの問題がある。
【0005】
一方、特許文献2では、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸などのピロリジン化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩、それらの溶媒和物或いは水和物、共結晶等が、優れたMCR、特にMC1Rの活性化作用を有することが開示されている。また、特許文献2では、当該化合物がMCR、特にMC1Rの活性化が関与する各種疾患又は症状の予防又は治療に有用であることは開示されており、対象疾患としてプロトポルフィリン症も記載されているが、具体的投与量については記載がない。
さらに、特許文献3には、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の共結晶が開示されている。しかし、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の共結晶をポルフィリン症の治療に用いる際の具体的投与量は記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポルフィリン症の根本的な治療法は少なく、症状の発現を避け、又は症状を緩和するためには皮膚の日光への曝露を防ぐ方法が主流となっている。特に可視光により誘発される光線性皮膚疾患に罹患した患者は日中の外出を忌避する傾向もあり、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を著しく損なうことが知られている。
上記の通り、MCRのリガンドであるα−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)のアナログが赤芽球性プロトポルフィリン症等の光線性皮膚疾患等の治療剤として開発されている(特許文献1)が、MC1Rの選択的アゴニストではなく、また、ペプチドであるため経口投与が出来ず、さらにはヒト体内での消失が早いために定期的なインプラントが必要である。
そのため、より安全かつ患者の負担なく効果的に治療が可能なポルフィリン症の治療又は予防用医薬組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶について、ヒトの臨床試験において特に有効な投与量を見出し、この投与量においては、赤芽球性プロトポルフィリン症(Erythropoietic protoporphyria(EPP):骨髄性プロトポルフィリン症とも呼ばれる)やX連鎖ポルフィリン症を含むポルフィリン症に対する優れた治療又は予防効果を発揮できることを見出した。特に、太陽光線が強く日照時間も長い季節(例えば北半球における春や夏などの季節)のみならず、太陽光線が弱まり日照時間も短くなる季節(例えば北半球における秋や冬などの季節)においてもプラセボに対して有意に薬効を発揮する、すなわち、一年を通じてポルフィリン症を効果的に治療又は予防できる用量を見出すことができた。さらに、先行薬であるアファメラノチドは臨床試験において直射日光に曝露された際の症状に対する治療効果が確認されているが、本発明の用量において1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶は直射日光のみならず、屋内等に居ても晒される間接的な太陽光線(indirect sunlight)への曝露によって引き起こされる症状に対しても治療効果を発揮することが確認された。これらの知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などのポルフィリン症を治療又は予防するための医薬であって、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が50〜500mg/日、好ましくは100〜300mg/日である、医薬を提供する。
【0010】
本発明は、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の有効量を治療又は予防を必要とする対象に投与する工程を含む、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などのポルフィリン症を治療又は予防するための方法であって、前記有効量が50〜500mg/日、好ましくは100〜300mg/日である、方法を提供する。
【0011】
本発明は、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などのポルフィリン症を治療又は予防するための、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶であって、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が50〜500mg/日、好ましくは100〜300mg/日である、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を提供する。
【0012】
本発明は、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などのポルフィリン症を治療又は予防するための医薬の製造における使用であって、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が50〜500mg/日、好ましくは100〜300mg/日である、使用を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一年を通じて、屋内・屋外を問わずいかなる環境においてもポルフィリン症の治療や予防が可能である。1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶は経口投与可能であってヒトにおける体内動態も良好であり、また、MC1R選択的な化合物であることから副作用が少なく、安全かつ患者の負担なく効果的にポルフィリン症の治療や予防を行うことができる。特に、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を特定の用量で投与することで、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症を含むポルフィリン症に対し、光毒性発現時間(光毒性関連兆候発現までの時間、または前駆症状までの時間ともいう。)の延長、疼痛イベントの低減、QOL向上など含む優れた治療効果を、一年を通じて、屋内・屋外を問わずに発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<有効成分>
本発明の医薬の有効成分である、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶については特許文献2に記載されており、特許文献2に記載の方法等で製造することができる。また、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶は、常法により取得できるが、例えば、特許文献3に記載の方法によっても得ることができる。
なお、本明細書において「1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶」の投与量または「化合物A」の投与量という場合、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸すなわちフリー体としての量を示す。
【0016】
<医薬用途>
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶は、優れたMC1Rアゴニスト活性を有し、それにより、ポルフィリン症に対し、一年を通して、いかなる環境においても光毒性発現時間の延長、疼痛イベントの低減、QOL向上などを含む優れた治療および予防効果を発揮する。
また、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶は、特定の患者群(赤血球プロトポルフィリンIXレベルのベースライン中央値が1980.50mcg/dL以上である患者群)で光毒性発現時間の特に優れた延長効果を示し、ポルフィリン症に対し、優れた治療および予防効果を発揮する。
さらに、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶は、特定の患者群(メラニン密度の中央値が3.0915以上の患者群)で用量によらず光毒性発現時間の優れた延長効果を示し、また、特定の患者群(メラニン密度の中央値が3.0915未満の患者群)では特定の用量(好ましくは、一日用量300mg)において光毒性発現時間の優れた延長効果を示し、ポルフィリン症に対し、優れた治療および予防効果を発揮する。
したがって、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分として含有する医薬は、ポルフィリン症を治療又は予防するために有用である。
【0017】
ポルフィリン症としては、赤芽球性プロトポルフィリン症、X連鎖ポルフィリン症、先天性骨髄性ポルフィリン症、異型ポルフィリン症、急性間欠性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、遺伝性コポルフィリン症などが挙げられる。
なお、ここでいう赤芽球性プロトポルフィリン症には、先天性赤芽球性プロトポルフィリン症も含まれる。
【0018】
光毒性発現時間とは、光毒性関連兆候(または単に兆候ともいう。)が発現するまでの時間をいう。前駆症状までの時間ともいう。光毒性関連兆候、兆候または前駆症状としては、灼熱感(Burning)、チクチク感(Tingling)、むずむず感(Itching)、ヒリヒリ感(Stinging)などが挙げられる。
【0019】
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸は、遊離の形でも、それらの医薬的に許容し得る塩又は共結晶の形でも医薬用途に供することができる。
ここで、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容し得る塩又は共結晶は、分子内塩や付加物、さらにそれらの溶媒和物或いは水和物、結晶多形等いずれも含むものである。
医薬的に許容し得る塩、共結晶、分子内塩、付加物等としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸又は臭化水素酸の如き無機酸、酢酸、フマル酸、シュウ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸又はマレイン酸の如き有機酸等を含むものが挙げられる。特にリン酸との共結晶が好ましい。
【0020】
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の1種又は2種以上をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶と医薬的及び製剤学的に許容しうる添加物を混合し、当業者に周知な形態の製剤として提供されうる。
【0021】
医薬的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、医薬の製造に通常用いられる適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、及び等張化剤等を用いることができる。例えば、賦形剤としては、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等、崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム又はタルク等、コーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等、基材としては、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等を用いることができる。他にも、注射あるいは点滴用に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を用いることができる。
【0022】
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶は、上述の添加物とともに適当な投与形態(粉末剤、注射剤、錠剤、カプセル剤又は局所外用剤など)に調製した後、その投与形態に応じた適当な投与方法(例えば静脈内投与、経口投与、経皮投与又は局所投与など)によって、患者(ヒト又は動物)に投与することができる。この中では、経口投与が好ましい。
【0023】
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を含む医薬の投与量は、低毒性で安全に使用することができ、一年を通じて屋内・屋外を問わずポルフィリン症に対して治療効果又は予防効果を発揮できる量であり、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の量として、50〜500mg/日であり、80〜400mg/日がより好ましく、100〜300mg/日が特に好ましく、例えば、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量が例示される。
【0024】
特に経口投与が好ましく、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を含む医薬は、経口的に1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の量として、50〜500mg/日であり、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量で投与される。特に好ましくは、100mg/日、200mg/日又は300mg/日の投与量で投与される。
【0025】
さらに好ましくは、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶を、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として100mg/日または300mg/日の投与量で投与する。
また、他に好ましくは、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶を、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として100mg/日または200mg/日の投与量で投与する。
【0026】
他の態様として、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶を、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として100mg/日の投与量で投与することが挙げられる。
【0027】
他の態様として、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶を、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として200mg/日の投与量で投与することが挙げられる。
【0028】
他の態様として、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸の共結晶を、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸の量として300mg/日の投与量で投与することが挙げられる。
【0029】
以下の実施例に記載の通り、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の一日用量100mg又は300mgは、プラセボと比較して、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して、光毒性発現時間の延長、疼痛イベントの低減、QOL向上などの治療効果を発揮することが示された。特に、赤血球プロトポルフィリンIXレベルのベースライン中央値が1980.50mcg/dL以上である患者群で光毒性発現時間の延長に対する効果が、一日用量100mgおよび300mgいずれの用量においてもプラセボと比較して統計学的に有意であった。また、メラニン密度の中央値が3.0915以上の患者群と3.0915未満の患者群で比較をすると、前者では一日用量100mgおよび300mgいずれの用量においても光毒性発現時間を同様に延長したが、後者では、一日用量300mgの患者群でより光毒性発現時間を延長した。
また、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の一日用量100mg又は200mgにおいても、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対する治療効果を確認している。
【0030】
特許文献2または特許文献3においては対象疾患として赤芽球性プロトポルフィリン症も記載されているが、具体的投与量については記載がなく、本発明においては、今回、臨床試験で同定された100mg/日又は300mg/日を含む用量、例えば、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日という投与量で投与することで赤芽球性プロトポルフィリン症に対し、一年を通して屋内・屋外を問わずに光毒性発現時間の延長、疼痛イベントの低減、QOL向上などを含む優れた治療効果を効果的に発揮することについて何ら記載されていない。
【0031】
すなわち、本発明の一態様においては、ポルフィリン症患者に対して投与される、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする、ポルフィリン症を治療又は予防するための医薬であって、ポルフィリン症患者に対して1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量である、医薬が提供される。
【0032】
本発明の他の一態様としては、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して投与される、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症を治療又は予防するための医薬であって、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量である、医薬が提供される。
【0033】
本発明の他の一態様としては、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して投与される、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症における光毒性発現時間(又は前駆症状までの時間)を延長し、および/または疼痛イベントを低減するための医薬であって、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量である、医薬が提供される。
【0034】
本発明の他の一態様としては、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して投与される、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などを含むポルフィリン症を治療又は予防ための医薬であって、特に、赤血球プロトポルフィリンIXレベルのベースライン中央値が1980.50mcg/dL以上である赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量である、医薬が提供される。
【0035】
本発明の他の一態様としては、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して投与される、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などを含むポルフィリン症を治療又は予防ための医薬であって、特に、メラニン密度の中央値が3.0915以上の赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量である、医薬が提供される。
【0036】
本発明の他の一態様としては、赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して投与される、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とする、赤芽球性プロトポルフィリン症やX連鎖ポルフィリン症などを含むポルフィリン症を治療又は予防ための医薬であって、特に、メラニン密度の中央値が3.0915未満の赤芽球性プロトポルフィリン症患者およびX連鎖ポルフィリン症患者に対して1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が、50〜500mg/日、好ましくは80〜400mg/日、より好ましくは100〜300mg/日、さらに好ましくは200〜300mg/日、具体的には、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量、より好ましくは150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日もしくはこれらの間の投与量である、医薬が提供される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の態様は以下の実施例の態様には限定されない。
【0038】
実施例で使用された化合物Aは以下の化合物である。
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸とリン酸を含む共結晶
【0039】
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸は特許文献2に記載の方法で製造し、リン酸との共結晶は以下の方法により製造した。
すなわち、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸 1/2エタン−1,2−ジスルホン酸(19.3kg)の酢酸エチル(86.6kg)懸濁液に、20〜30℃で炭酸カリウム(3.4kg)の水(77.0L)溶液及び水(19.3L)を順に加え、混合物を10分間撹拌した。静置後に水層を除き、有機層を水(96.3L)で2回洗浄した。有機層を35Lまで濃縮した後、エタノール(75.9kg)を加え、35Lまで濃縮した。エタノール(30.3kg)で希釈後、不溶物をろ過し、エタノール(75.6kg)で洗浄した。ろ洗液を35Lまで濃縮し、エタノール(17.9kg)で希釈した。20〜30℃で24%水酸化ナトリウム水溶液(6.1kg)及び水(15.6kg)を順に加え、混合物を20〜30℃で5時間撹拌した。20〜40℃でリン酸(8.5kg)の水(28.9L)溶液及び水(115.5L)を順に加えた。30〜40℃で化合物A(0.48kg)を種晶として加え、19.5時間撹拌した後に20℃に冷却した。固体を濾取し、該固体を水(96.3L)で洗浄した。固体を50℃以下で乾燥した後、粉砕し、化合物A(17.5kg)を得た。
取得した化合物AはIRを用いて同定した。
【0040】
実施例1
赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象とした化合物Aの臨床試験における光毒性関連兆候が発現するまでの時間
成人男女の赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象にランダム化二重盲検臨床試験にて化合物Aが16週間投与された。臨床効果の主評価項目として、直接日光に限らず、間接日光も含めた光線曝露に起因する兆候が日の出後1時間から日没前1時間までの間で、最初に発現するまでの時間が評価された。
赤血球プロトポルフィリンIXレベルのベースライン中央値は、血液中の赤血球を分画し、プロトポルフィリンIXレベルを測定して求めた。
メラニン密度の中央値は、額、左頬、右内側上腕部、左内側前腕部、腹部右側および臀部左側の6か所の皮膚において分光光度計を用いて測定して求めた。
【0041】
プラセボ服用35例、化合物Aの100mgを1日1回経口服用33例、化合物Aの300mgを1日1回経口服用34例の16週時点での評価結果を表1に示す。化合物Aの100mg及び300mg投与群ではプラセボ投与と比較してそれぞれ53.8分、62.5分と有意な時間延長が見られた。
【0042】
【表1】
【0043】
上記項目を赤血球プロトポルフィリンIXレベルのベースライン中央値が1980.50mcg/dL以上である患者群において解析すると、化合物Aの100mg投与における一日間で最初に兆候が発現するまでの時間の最小二乗平均値(分)が69.3分(P値は0.020)、300mg投与における一日間で最初に兆候が発現するまでの時間の最小二乗平均値(分)が82.6分(P値は0.003)といずれも統計学的に有意であることがわかった。赤血球プロトポルフィリンIXレベルのベースライン中央値が1980.50mcg/dL未満である患者群においても、一日間で最初に兆候が発現するまでの時間を延長する傾向が認められた。
また、上記項目をメラニン密度の中央値が3.0915以上である患者群と3.0915未満である患者群に分けて解析すると、前者では100mg投与における一日間で最初に兆候が発現するまでの時間の最小二乗平均値(分)が85.0分(P値は<0.001)、300mg投与においては80.3分(P値は0.002)であるのに対し、後者においては100mg投与における一日間で最初に兆候が発現するまでの時間の最小二乗平均値(分)は23.2分(P値は0.499)、300mg投与においては63.7分(P値は0.051)と300mgで光毒性関連兆候が発現するまでの時間を延長する効果がより大きいことがわかった。
【0044】
実施例2
化合物Aを春夏に初回服用したサブグループと秋冬に初回服用したサブグループの赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者における、光毒性関連兆候が発現するまでの時間(臨床主要評価項目)
以下の試験は北半球において実施した。化合物Aを春夏に初回服用したサブグループ(プラセボ服用20例、化合物Aの100mgを1日1回経口服用18例、化合物Aの300mgを1日1回経口服用18例)及び化合物Aを秋冬に初回服用したサブグループ(プラセボ服用15例、化合物Aの100mgを1日1回経口服用15例、化合物Aの300mgを1日1回経口服用16例)の16週時点での評価結果を表2に示す。春夏のサブグループにおいて、化合物Aの100mg及び300mg投与群ではプラセボ投与と比較して、それぞれ54.4分、42.2分と時間延長が見られ、秋冬のサブグループにおいて、化合物Aの100mg及び300mg投与群ではプラセボ投与と比較して、それぞれ52.8分、95.8分と有意な時間延長が見られた。季節に関係なく、化合物Aの100mg及び300mg投与群ともに時間延長が見られた。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例3
赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象とした化合物Aの臨床試験における16週評価期間中に患者が電子日記に記録した疼痛イベント数
成人男女の赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象にランダム化二重盲検臨床試験にて化合物Aが16週間投与された。その他の臨床効果の評価項目として16週評価期間中の疼痛イベント数が患者自身によって電子日記に記録された。
【0047】
プラセボ服用23例、化合物Aの100mgを1日1回経口服用24例、化合物Aの300mgを1日1回経口服用24例の評価結果を表3に示す。評価期間中の疼痛発現率はプラセボ投与群、化合物Aの100mg投与群、化合物Aの300mg投与群それぞれにおいて、7.5、3.3そして3.5であったことから、プラセボ投与群と比較して化合物Aの100mg及び300mg投与群では疼痛イベントが有意にそれぞれ60%、50%減少したことが示された(表3)。
【0048】
【表3】
【0049】
実施例4
赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象とした化合物Aの臨床試験における患者の健康関連QOL評価
成人男女の赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象にランダム化二重盲検臨床試験にて化合物Aが16週間投与された。臨床効果の副次評価項目として16週時点での患者の健康関連QOLであるPGIC(Patient Global Impression of Change)スコアが患者自身によって記録された。具体的には、身体面及び精神面の健康状態全般の改善度を7段階にスコア評価する質問状を作成した。このとき、本実施例におけるPGICスコアにおける1は変化なし或いは悪化したことを示し、7は顕著に改善したことを示す。
【0050】
プラセボ服用30例、化合物Aの100mgを1日1回経口服用25例、化合物Aの300mgを1日1回経口服用24例の評価結果を表4に示す。16週時点でのPGICスコアはプラセボ投与群、化合物Aの100mg投与群、化合物Aの300mg投与群それぞれにおいて、2.9、6.4そして6.6であったことから、プラセボ投与群と比較して化合物Aの100mg及び300mg投与群ではPGICスコアが有意に増加し、被験者の全般印象度の改善が示された(表4)。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例5 化合物Aを被験物質とした第3相試験
被験者
12才から75才までの男女の赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者
試験概略
ランダム化二重盲検臨床試験
プラセボ服用53例、化合物Aの100mgを1日1回経口服用53例および化合物Aの200mgを1日1回経口服用53例。
試験項目
(1)赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象とした化合物Aの臨床試験における光毒性関連兆候が発現するまでの時間
被験者に対し、ランダム化二重盲検臨床試験にて化合物Aが26週間、状況に応じて追加で26週間、最大58週間投与される。臨床効果の主評価項目として光線曝露に起因する兆候が一日の間で最初に発現するまでの時間が26週時点で評価される。
(2)赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象とした化合物Aの臨床試験における26週評価期間中に患者が電子日記に記録した疼痛イベント数
被験者に対し、ランダム化二重盲検臨床試験にて化合物Aが26週間、状況に応じて追加で26週間、最大58週間投与される。その他の臨床効果の評価項目として26週評価期間中の疼痛イベント数が患者自身によって電子日記に記録される。
(3)赤芽球性プロトポルフィリン症患者及びX連鎖ポルフィリン症患者を対象とした化合物Aの臨床試験における患者の健康関連QOL評価
被験者に対し、ランダム化二重盲検臨床試験にて化合物Aが26週間、状況に応じて追加で26週間、最大58週間投与される。臨床効果の副次評価項目として26週時点での患者の健康関連QOLであるPGIC(Patient Global Impression of Change)スコアが患者自身によって記録される。具体的には、身体面及び精神面の健康状態全般の改善度を7段階にスコア評価する質問状を作成する。このとき、本実施例中のPGICスコアにおける1は顕著に改善したことを示し、7は顕著に悪化したことを示す。
1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶を有効成分とするポルフィリン症を治療又は予防するための医薬であって、1−{2−[(3S,4R)−1−{[(3R,4R)−1−シクロペンチル−3−フルオロ−4−(4−メトキシフェニル)ピロリジン−3−イル]カルボニル}−4−(メトキシメチル)ピロリジン−3−イル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル}ピペリジン−4−カルボン酸もしくはその医薬的に許容しうる塩又は共結晶の投与量が50〜500mg/日である、ポルフィリン症を治療又は予防するための医薬。