特許第6959491号(P6959491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6959491積層されたアルミ等非磁性体の薄板材料の分離装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959491
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】積層されたアルミ等非磁性体の薄板材料の分離装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/24 20060101AFI20211021BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20211021BHJP
   B65H 3/16 20060101ALI20211021BHJP
   H01F 7/20 20060101ALI20211021BHJP
   H01F 13/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B03C1/24 101
   B03C1/00 B
   B03C1/00 F
   B65H3/16
   H01F7/20 Z
   H01F13/00
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-234667(P2017-234667)
(22)【出願日】2017年11月17日
(65)【公開番号】特開2019-93373(P2019-93373A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】519019115
【氏名又は名称】合同会社竹とんぼ技術設計
(72)【発明者】
【氏名】小森 一正
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/069189(WO,A1)
【文献】 特開平05−064753(JP,A)
【文献】 特開2001−062337(JP,A)
【文献】 特開平10−128150(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0328644(US,A1)
【文献】 特開2017−154863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C1/00−1/32
B65H1/00−3/68
H01F7/20
H01F13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の独立した電磁石を縦に一列に並べた一群、もしくはその縦に並べた一群を横に並列に複数列に並べた構造を成す電磁石群であって、非磁性体の導電体材料に対しては、これら複数の独立した電磁石群の全てでその電磁石の磁束の方向を同一方向に保持しつつ、電磁石の電流を個別に制御して磁束を増減させ、全ての電磁石で生じる全体の磁束の分布を縦方向に波形と成し、かつ、この磁束の縦方向の波形分布が時間軸で上方に移動するように変化させる制御を行うことにより、この電磁石群の全体を積層した薄板の非磁性体の導電体材料の側面に密着させて使用した際に、同材料内に誘導される磁束と電磁石群の磁束との間の相互作用として、非磁性体の導電体材料内に生じる上方への力を利用して非磁性体の導電体材料を分離し、かつ、磁性体材料に対しては、この電磁石群を構成する全ての電磁石の電流を同一方向に、かつ一定に保持し、この電磁石群の全体を薄板の磁性体の側面に密着させた際に、磁性体材料を同一極に磁化し、材料間の磁力の反発力を利用して磁性体の材料を分離することを特徴とする積層した非磁性体の薄板と積層した磁性体の導電体の薄板の双方に有効な磁束可変型分離器。
【請求項2】
前記磁束可変型分離器を成す電磁石群の電流を個別に制御して磁束とその磁束分布を調整する制御装置であって、非磁性体の導電体材料に対しては、前記磁束可変型分離器の全ての電磁石の磁束の方向を同一方向に保持しつつ、電磁石の電流を個別に制御して磁束を増減させ、前記磁束可変型分離器で生じる全体の磁束の分布を縦方向に波形と成し、かつ、この磁束の縦方向の波形分布が時間軸で上方に移動するように変化させる制御を行うことにより、前記磁束可変型分離器を積層した薄板の非磁性体の導電体材料の側面に密着させて使用した際に、同材料内に誘導される磁束と電磁石群の磁束との間の相互作用として、非磁性体の導電体材料内に生じる上方への力を利用して非磁性体の導電体材料を分離し、かつ、磁性体材料に対しては、前記磁束可変型分離器の全ての電磁石の電流を同一方向に、かつ一定に保持し、前記磁束可変型分離器を薄板の磁性体の側面に密着させた際に、磁性体材料を同一極に磁化し、材料間の磁力の反発力を利用して磁性体の材料を分離することを特徴とする請求項1に記載の磁束可変型分離器の磁束可変制御装置。
【請求項3】
前記磁束可変型分離器と前記磁束可変制御装置において、非磁性体の導電体材料に対しては、前記磁束可変型分離器の全ての電磁石の磁束の方向を同一方向に保持しつつ、前記磁束可変型分離器の電磁石の電流を個別に制御して磁束を増減させ、前記磁束可変型分離器の全ての電磁石で生じる全体の磁束の分布を縦方向に波形と成し、かつ、この磁束の縦方向の波形分布が時間軸で上方に移動するように制御することにより、前記磁束可変型分離器を積層した薄板の非磁性体の導電体材料の側面に密着させて使用した際に、同材料内に誘導される磁束と前記磁束可変型分離器の磁束との間の相互作用として、非磁性体の導電体材料内に生じる上方への力を利用して非磁性体の導電体材料を分離し、かつ、磁性体材料に対しては、前記磁束可変型分離器の全ての電磁石の電流を同一方向に、かつ一定に保持し、前記磁束可変型分離器を薄板の磁性体の側面に密着させた際に、磁性体材料を同一極に磁化し、材料間の磁力の反発力を利用して磁性体の材料を分離することを特徴とする請求項1に記載の磁束可変型分離器と請求項2に記載の磁束可変制御装置を用いた、積層した非磁性体の薄板と積層した磁性体の導電体の薄板の双方に有効な薄板の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のプレス部品製造における材料供給装置におけるアルミ等の非磁性体の分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体用プレス部品の生産に於いて、2枚以上の複数枚の材料を金型で加圧すると、過荷重でプレス機械が停止し、場合によっては金型が破損する等、生産を阻害する。このため積層されたプレス部品用材料を一枚ずつ的確に分離して供給する必要がある。
【0003】
車体用プレス部品の材質は殆どが軟鋼板であり、軟鋼板が磁性体である特性を利用して、その分離には磁石が用いられている。電磁石もしくは永久磁石を積層した材料の側面に密着させて材料を磁化し、材料自体が磁化することで、材料間に生じる磁石の同極の反発力を用いて分離を図るものである。磁性体に対する分離方法としてはこの磁石を用いた磁化方式が最も有効であることから、旧来より磁石式の分離装置が広く一般的に用いられている。
【0004】
軟鋼板に加えて、一部、自動車の軽量化等を目的にアルミ材も採用されている。アルミ材は非磁性体であるため、磁性体である鉄材用の磁石式分離装置が使えず、鋸刃状の器具で材料端を引っ掛ける方法や、材料端に強風を当てる方法や、材料を端から捲るように持ち上げる方法や、それらを組合わせた方法が用いられている。
【0005】
鋸刃状器具を用いる方式は、鋸刃状の引っ掛け具を積層した材料の側面に当て、引っ掛け具を下から上方に擦るように引き上げることで分離を図るものである。この時、材料の削り屑が発生し、この切り屑が異物となり、成形時の傷となりプレス部品の表面品質に悪影響を及ぼす一因となっている。
【0006】
強風を用いる方式は、積層した材料の側方もしくは側方やや斜め下から材料端に強風を当てて材料を捲りあげることで分離を図るものである。しかし、材料自体がその残留洗浄液で密着した状態であるため分離の確実性に難点があり、鉄材用の磁石式分離装置に比べ分離効果が著しく低い。
【0007】
材料を端から捲るように持上げる方法は、積層した材料を持上げるための複数の吸着カップの上昇タイミングや上昇速度、もしくそれら双方を制御して、材料の端から捲るように持上げることで、残留洗浄液により固着しがちな材料を引き剥がすように分離を図る方法である。しかし、多くの材料に対しトライアンドエラーでの微細な調整が必要であり、多くの手間を必要とする上、微細な調整であるため分離の確実性も低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−219339号公報
【特許文献2】特開2012−090467号公報
【特許文献3】特開2016−160055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非磁性体であるアルミ材の分離方法として、鋸刃や強風を用いる方法や、持上げ方法を工夫して対応しているが、鋸刃の接触時の切屑や分離の確実性の低さの問題点がある。また、軟鋼板材とアルミ材を混流して生産するラインに於いては、軟鋼板用のマグネット式分離装置に加え、アルミ材用の分離装置を備える必要があり、設備装置の複雑化による汎用性の制約や設備の高額化の原因となっている。従って、非磁性体であるアルミ材を確実に分離でき、かつ、軟鋼板材にも適用可能な分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁束可変型分離装置は、複数の独立した電磁石を縦に一列に、もしくはそれらを複数列に並べた構造を成し、磁束可変型分離装置の電磁石の電流を個別に制御して磁束と磁束可変型分離装置の全体の磁束分布を調整することを特徴とする。
【0011】
前記磁束可変型分離装置において、非磁性体の導電体材料に対しては、前記磁束可変型分離装置の電磁石の電流を個別に制御して電磁石の磁束を増減させ、前記磁束可変型分離装置の全ての電磁石で生じる前記磁束可変型分離装置全体の磁束の分布を縦方向に波形に成し、かつ、この磁束の縦方向の波形分布が時間軸で上方に移動するように制御することにより、前記磁束可変型分離装置を積層した薄板の非磁性体の導電体材料の側面に密着させて使用した際に、非磁性体の導電体材料内に誘導される磁束と前記磁束可変型分離装置の電磁石の磁束との間の相互作用として、非磁性体の導電本材料内に生じる上方への力を利用して非磁性体の導電体材料を分離し、かつ、磁性体材料に対しては、前記磁束可変型分離装置の全ての電磁石の電流を同一方向に、かつ一定に保持することにより、前記磁束可変型分離装置を薄板の磁性体の側面に密着させた際に、磁性体材料を同一極に磁化し、材料間の磁力の反発力を利用して磁性体の材料を分離する前記磁束可変型分離装置の制御方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
アルミ、ステンレス鋼、銅等の非磁性体の導電体材料の分離に適用できる。
【0013】
軟鋼板等の磁性体に対しても、本装置内の磁束を一定とすることにより、磁性体材料の分離にも適用できる。
【0014】
非磁性体と磁性体の両方に適用でき、設備装置の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】磁束可変型分離装置の構造と磁束分布の説明図である。
図2】磁束可変型分離装置の適用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
誘導電動機の基本原理として、アラゴの円盤が知られている。これは、磁石の移動により非磁性体の金属製円盤に電磁誘導による渦電流が発生し、その磁束が磁石の磁束と作用し合い円盤が回転するというものである。誘導電動機やリニアモータは、この原理に基づき、並べた電磁コイルに流す電流を制御して、磁束を変化、移動させている。
【0017】
図1に本発明の磁束可変型分離装置(10)の構造と磁束(13)とその分布(14)の説明図を示す。磁束可変型分離装置(10)を成す電磁石(11)は互いに独立しており、個々の電磁石(11)の電流(12)を個別に制御して電磁石(11)の磁束(13)とその分布(14)を調整する。なお、図1で示す磁束(13)の方向は一例であって、磁束(13)の方向は問わず、図と真逆の方向であっても良い。
【0018】
図2に磁束可変型分離装置(10)の非磁性体の導電体材料への適用例を示す。アルミ等の非磁性体の導電体材料に対しては、同電磁石(11)の電流(12)を制御して磁束(13)を変化させ、非磁性体の導電体材料(15)内の誘導電流(16)により生じる磁束(17)との相互作用として非磁性体の導電体材料(15)に生じる上方への力を利用して材料の分離を図る。
【0019】
非磁性体の導電体材料に対する磁束可変型分離装置(10)の制御方法をより詳しく説明する。磁束可変型分離装置(10)の全ての電磁石(11)の極性は交番させずに磁束(13)の方向を同一方向に保ちつつ、電磁石(11)の電流(12)を個別に制御して磁束(13)を増減させる。この磁束(13)の増減すなわち変化により、非磁性体の導電体材料(15)内に同一方向の磁束(17)が誘導される。さらに、電磁石(11)の電流(12)を個別に、磁束可変型分離装置(10)の全ての電磁石(11)で発生する全体の磁束(13)の分布(14)が縦方向に波形を成すように制御し、かつ、この磁束(13)の縦方向の波形分布(14)が時間軸で上方に移動するように制御する。これにより、磁束可変型分離装置(10)の磁束(13)と非磁性体の導電体材料(15)内に誘導された磁束(17)との間で働く相互作用として、非磁性体の導電体材料(15)内に生じる上方への力を利用して非磁性体の導電体材料(15)を分離する。
【0020】
リニアモータ(特許文献1と2)の電磁石は、その極性を交番させ、磁石の引力と反発力を利用しているが、本発明の磁束可変型分離装置(10)は、全ての電磁石(11)の極性を交番させず、磁束(13)の方向を同一方向に保ったまま電流(12)の増減により磁束(13)を増減させ、かつ、電磁石(11)の電流(12)を個別に調整して、磁束可変型分離装置(10)全体で磁束(13)の分布(14)を波形とし、かつ、この磁束(13)の波形分布(14)を上方に移動するように制御し、磁束可変型分離装置(10)の磁束(13)と非磁性体の導電体材料(15)内に誘導された磁束(17)との間で働くアラゴの円盤の原理である相互作用である力を利用する。
【0021】
上述の非磁性体への適用に加え、磁性体材料に対しては、磁束可変型分離装置(10)の全ての電磁石(11)の電流(12)を同一方向に、かつ一定に保持して磁性体材料を同一極に磁化し、材料間の磁気の反発力を利用して分離する。
【0022】
従来の材料分離装置(特許文献3)では、磁性体材料と非磁性体材料の双方に別々の材料分離装置が必要で、設備の構造が複雑になり、汎用性等の生産上の制約となるとともに設備の高額化の一因でもあった。本発明の磁束可変型分離装置(10)は、電磁石(11)の電流(12)の適切な制御により、磁性体と非磁性体の導電体の双方に対応可能であるため、設備を簡素化できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
磁性体、非磁性体を問わず、積層した薄板の導電体材料の分離に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
10 磁束可変型分離装置
11 磁束可変型分離装置の電磁石
12 磁束可変型分離装置の電磁石の電流
13 磁束可変型分離装置の電磁石の磁束
14 磁束可変型分離装置の磁束の分布
15 非磁性体の導電体材料
16 誘導電流
17 誘導電流により生じる磁束
図1
図2