(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記許可領域は、前記プリチャージ回路の抵抗素子の定格容量もしくは、周辺部品の許容温度から制定される許容発熱量に基づく許容電流を上限としてプリチャージ期間全体に亘る領域として設定された
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両の電源制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電源回路が正常に機能していればプリチャージは完了するはずであるが、何らかの異常でプリチャージが完了しない場合もある。例えば特許文献1の技術では、プリチャージ電流の変化率に関する条件が満たされずに所定時間が経過した場合(以下、タイムアウトと称する)には、プリチャージコンタクタをOFFして電源回路を遮断している。
電源回路にショート故障が生じている場合、プリチャージを再試行すると、プリチャージ回路の抵抗素子にプリチャージ時の電流が過剰に流れ続けて異常な発熱を生じ、例えば抵抗素子を固定している樹脂部材等の溶損(以下、抵抗素子の周辺部材の溶損と表現する)が引き起こされてしまう。そこで従来は、一回タイムアウトした場合に車両の再起動操作(プリチャージの再試行)を禁止している。
【0008】
しかしながら、実際には回路等に異常無いが、何らかの一過性の不具合によりタイムアウトが検出された場合、再試行により正常に起動可能であるにも拘らず、無用な再試行の禁止により走行不能に陥る可能性がある。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、平滑コンデンサのプリチャージが完了せずにタイムアウトしたときに、プリチャージを再試行しても支障がない場合には再試行を許可することにより、一過性の不具合でタイムアウトした場合の車両の走行不能を未然に回避することができる電動車両の電源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の電動車両の電源制御装置は、電源と該電源により駆動される電気負荷とを接続し、前記電気負荷への入力電圧の変動を平滑化する平滑コンデンサを備えたメイン回路と、前記メイン回路の前記電源と前記電気負荷との間に介装されたメインコンタクタと、前記メインコンタクタに対して並列接続され、プリチャージコンタクタと抵抗素子とからなるプリチャージ回路と、前記メインコンタクタ及び前記プリチャージコンタクタを共に接続した前記平滑コンデンサのプリチャージ中において、充電に伴って次第に増加する前記平滑コンデンサの電圧をコンデンサ電圧として検出する電圧検出手段と、
前記プリチャージ中において、前記平滑コンデンサの充電に伴って次第に低下する前記メイン回路を流れる電流をプリチャージ電流として検出する電流検出手段と、前記プリチャージ中において、前記コンデンサ電圧に基づき前記プリチャージの完了を判定するプリチャージ完了判定手段と、前記プリチャージ完了判定手段により前記プリチャージの完了判定が下されずにタイムアウトしたときに、0Aを含む所定電流範囲と前記プリチャージ中の所定期間とにより予め規定された許可領域内に前記プリチャージ電流が侵入したことを条件として、前記プリチャージの再試行を許可する再試行許可手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成した電動車両の電源制御装置によれば、メイン回路の正常時にはプリチャージコンタクタの接続と共にプリチャージ電流が立ち上がり、その後に平滑コンデンサの充電に従って次第に低下する。これに対してメイン回路に何らかの故障が生じている場合には、その故障内容に応じてプリチャージ電流が異なる軌跡を辿って変化する。
プリチャージの完了判定が下されずにタイムアウトしたときに、プリチャージ電流が許可領域内に侵入しなかった場合には、メイン回路に許容電流以上のショート故障が発生している可能性がある。このときプリチャージの再試行が許可されない。これに対してプリチャージ電流が許可領域内に侵入した場合には、オープン故障、或いは抵抗素子が発熱したとしても周辺部材が溶損に至らない軽度のショート故障と見なせるため、プリチャージの再試行が許可される。
【0011】
その他の態様として、前記許可領域が、前記プリチャージ回路の抵抗素子の定格容量もしくは、周辺部品の許容温度から制定される許容発熱量に基づく許容電流を上限としてプリチャージ期間全体に亘る領域として設定されていることが好ましい(請求項2)。
この態様によれば、プリチャージが再試行されたとき、プリチャージ電流が抵抗素子の許容電流以下まで低下するため、抵抗素子の発熱量が少なく、抵抗素子の周辺部材の溶損が防止される。
【0012】
その他の態様として、前記許可領域が、前記プリチャージが正常に完了したときの前記プリチャージ電流を上限としてプリチャージ期間全体に亘る領域として設定されていることが好ましい(請求項3)。
この態様によれば、タイムアウトしたにも拘わらず、プリチャージが正常に完了したときの値までプリチャージ電流が低下する状況はオープン故障と見なせ、プリチャージを再試行しても抵抗素子は発熱しない。
【0013】
その他の態様として、前記許可領域が、前記プリチャージが正常に完了したときに前記プリチャージ電流が辿る軌跡よりも低電流側の領域として設定されていることが好ましい(請求項4)。
この態様によれば、メイン回路の正常時にプリチャージ電流が辿る軌跡よりも低電流側の許可領域内にプリチャージ電流が侵入する事態はオープン故障と見なせ、プリチャージを再試行しても抵抗素子は発熱しない。
【0014】
その他の態様として、前記許可領域が、0Aを中心として発生し得る前記電流検出手段の検出誤差を含んだ領域として設定されていることが好ましい(請求項5)。
この態様によれば、プリチャージ電流が許可領域内に侵入した場合、電流センサの出力に含まれる検出誤差に関係なく、実際のプリチャージ電流は0Aである。プリチャージ中に流れるはずのプリチャージ電流が流れない事態はオープン故障と見なせ、プリチャージを再試行しても抵抗素子は発熱しない。
【0015】
その他の態様として、前記再試行許可手段により再試行を許可されたときには、前記プリチャージの再試行を自動または手動で実行することが好ましい(請求項6)
この態様によれば、タイムアウトの要因が一過性の不具合の場合には、プリチャージの再試行の実行により車両を起動可能となる。
その他の態様として、前記再試行許可手段により再試行を許可されなかったときには、前記プリチャージの再試行を禁止することが好ましい(請求項7)。
【0016】
この態様によれば、完全なショートを含む、許容電流以上のショート故障が発生している可能性がある場合に、プリチャージの再試行により、再度プリチャージ電流が流れて抵抗素子が発熱することを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動車両の電源制御装置によれば、平滑コンデンサのプリチャージが完了せずにタイムアウトしたときに、プリチャージを再試行しても支障がない場合には再試行を許可することにより、一過性の不具合でタイムアウトした場合の車両の走行不能を未然に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を電気自動車の電源制御装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の電気自動車の電源制御装置を模式的に表した全体構成図である。
電気自動車1(以下、単に車両と称する)には、走行用動力源としてモータジェネレータ2(電気負荷)が搭載されている。モータジェネレータ2はU相、V相、W相の各コイルを備えた三相交流電動機であり、電動モータ及びジェネレータとして機能する。モータジェネレータ2の出力軸2aはディファレンシャルギヤ3に連結され、ディファレンシャルギヤ3は左右の駆動軸4を介して車両1の車輪5に連結されている。
【0020】
モータジェネレータ2の電源として、車両1には多数の単電池を直列接続した組電池6が搭載され、組電池6とモータジェネレータ2との間には電源回路7が設けられている。この電源回路7により、組電池6とモータジェネレータ2との電気的な接続・切断や直流電力と三相交流電力との間の変換がなされる。
電源回路7はメイン回路8とプリチャージ回路9とからなり、組電池6の正極にはメイン回路8の電源線10の一端が接続され、組電池6の負極にはメイン回路8の負極11の一端が接続されている。メイン回路8に備えられたインバータ12は、それぞれ一対のスイッチング素子13を直列接続したU相、V相、W相回路14u,14v,14wからなり、図示はしないが各スイッチング素子13にはダイオードが逆並列に接続されている。
【0021】
インバータ12の各相回路14u,14v,14wは上記した電源線10と負極11との間で互いに並列に接続されると共に、各相回路14u,14v,14wのスイッチング素子13間の接続点がモータジェネレータ2の各相にそれぞれ接続されている。各相回路14u,14v,14wのスイッチング素子13はそれぞれ駆動回路15に接続され、この駆動回路15によりインバータ12が駆動される。
【0022】
メイン回路8の電源線10には第1メインコンタクタ17が介装され、負極11には第2メインコンタクタ18が介装されている。各メインコンタクタ17,18は可動接点17a,18a、固定接点17b,18b及びコイル17c,18cを有し、コイル17c,18cの励磁・消磁に応じて可動接点17a,18aと固定接点17b,18bとが導通・遮断される。
【0023】
第1及び第2メインコンタクタ17,18とインバータ12との間には、インバータ12に対して並列になるように平滑コンデンサ19が接続され、この平滑コンデンサ19はインバータ12への入力電圧の変動(リップル)を平滑化する機能を奏する。
第1及び第2メインコンタクタ17,18が共に導通すると、組電池6とインバータ12とが電気的に接続される。このため、モータジェネレータ2のモータ作動時には、組電池6の直流電力がインバータ12により三相交流電力に変換されてモータジェネレータ2に供給され、その駆動力が車輪5に伝達されて車両1が走行する。また車両1の減速時や降坂路の走行時には、車輪5側からの逆駆動によりモータジェネレータ2がジェネレータ作動し、発電された三相交流電力がインバータ12により直流電力に変換されて組電池6に充電される。
【0024】
プリチャージ回路9は、プリチャージコンタクタ20と抵抗素子21とを直列接続して構成され、第1メインコンタクタ17に対して並列接続されている。メインコンタクタ17,18と同様に、プリチャージコンタクタ20は可動接点20a、固定接点20b及びコイル20cを有し、コイル20cの励磁・消磁に応じて可動接点20aと固定接点20bとが導通・遮断される。
【0025】
平滑コンデンサ19には電圧センサ22(電圧検出手段)が配設され、メイン回路8の負極11には電流センサ23(電流検出手段)が介装されている。平滑コンデンサ19のプリチャージの際には、平滑コンデンサ19の端子間の電圧がコンデンサ電圧Vconとして電圧センサ22により検出され、メイン回路8を流れる電流がプリチャージ電流Ipreとして電流センサ23により検出される。
【0026】
各メインコンタクタ17,18及びプリチャージコンタクタ20のコイル17c,18c,20c、インバータ12の駆動回路15、電圧センサ22及び電流センサ23は、車両1の統合制御を実行するECU25の入力側に接続されており、ECU25の出力側には、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ26、車両1のイグニションスイッチ27、車両1の運転席に設けられた警告装置28等が接続されている。
【0027】
ECU25は、コンタクタ制御用のECU25a及び走行制御用のECU25bからなり、各ECU25a,25bは、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。コンタクタ制御用のECU25aにより各コンタクタ17,18,20の断接制御等が実行され、走行制御用のECU25bによりモータジェネレータ2を運転するためのインバータ12の制御等が実行される。
【0028】
本実施形態の電気自動車1の電源制御装置は以上のように構成されており、次いで、車両1を起動する際の処理について述べる。
車両1の起動のためのメインコンタクタ17,18のON操作は、例えば車両1を走行すべくイグニションスイッチ27がONされたとき、或いは充電ステーション等で組電池6を充電すべく、車両1の図示しない充電ポートに充電コネクタが接続されたとき等に実行される。
【0029】
以下、コンタクタ制御用のECU25aにより実行される車両1の起動時の処理について説明する。
図2は車両1を起動する際のプリチャージの実行状況を示すタイムチャートである。
例えばイグニションスイッチ27がON操作されると、前処理として各コンタクタ17,18,20の溶着検出が実行される。溶着検出の内容は周知であるため詳細な説明は省略するが、各コンタクタ17,18,20を順次ONしたときの組電池6の電圧V(以下、単に電池電圧と称する)とインバータ12側の電圧との比較に基づき溶着の有無が判定される。溶着が検出されず全てのコンタクタ17,18,20が正常と判定されると、プリチャージコンタクタ20がONされる(
図2中ポイントa)。なお、溶着判定の時点で既に第2メインコンタクタ18はONされている。組電池6からの電流はプリチャージ回路9の抵抗素子21により制限されつつ平滑コンデンサ19に充電されることから、その後にONされるメインコンタクタ17,18の溶着が未然に防止される。
【0030】
電源回路7が正常な場合、コンデンサ電圧Vconは電池電圧Vに漸近するように次第に増加し、電池電圧Vとコンデンサ電圧Vconとの差ΔVが所定の電圧判定値ΔV0以下(ΔV≦ΔV0)になったことを条件(以下、コンデンサ電圧Vconに関する条件と称する)として、プリチャージ完了の判定が下されて第1メインコンタクタがONされ(
図2中ポイントb)、その後にプリチャージコンタクタ20がOFFされて高電圧機器の平滑コンデンサ19へのプリチャージが完了する(
図2中ポイントc)。
【0031】
また、電源回路7に何らかの異常が生じている場合、上記したコンデンサ電圧Vconに関する条件が満たされず、後述するタイムアウト時間Toutの経過によりタイムアウトした場合にはプリチャージ不能の判定が下される。そして、プリチャージコンタクタ20がOFFされて電源回路7が遮断された上で、プリチャージ不能を示す故障コードが記憶されると共に、車両1の走行不能を表すメッセージが警告装置28に表示される。
【0032】
このようにプリチャージが完了せずにタイムアウトした場合、従来は車両1の再起動操作(プリチャージの再試行)を禁止しているが、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、タイムアウトの要因が一過性の不具合のケースもある。このため、プリチャージの再試行により車両1を起動可能であるにも拘わらず、不適切な再試行の禁止により路上で走行不能に陥ってしまうという問題があった。
【0033】
このような不具合を鑑みて本発明者は、タイムアウトの要因、換言すると電源回路7に生じ得る故障内容について考察した。電源回路7に許容電流以上のショート故障(短絡)が生じている場合には、プリチャージの再試行により抵抗素子21が発熱して周辺部材が溶損するため、再試行を避けるべきである。
これに対して電源回路7のオープン故障(断線、コンタクタ開固着)の場合には、プリチャージを再試行したとしても抵抗素子21の周辺部材の溶損のような重篤なトラブルは発生しない。また軽度のショートの場合、抵抗素子21が発熱したとしても周辺部材が溶損に至らないケースもある。よって、これらの場合にはプリチャージを再試行しても問題ないが、
図2中に破線で示すように、オープン故障でも完全なショート故障でもコンデンサ電圧Vconは立ち上がらないため、コンデンサ電圧Vconに基づく双方の判別は不可能である。
【0034】
そこで、本発明者はプリチャージ電流Ipreの変化に着目した。電源回路7が正常な場合、プリチャージ電流Ipreはプリチャージコンタクタ20のONと共に立ち上がり、その後に平滑コンデンサ19の充電に従って0A(アンペア)に漸近するように次第に低下する。これに対して電源回路7に何らかの故障が生じている場合には、その故障内容に応じてプリチャージ電流Ipreが異なる軌跡を辿って変化する。このため、プリチャージ電流Ipreの変化に基づき電源回路7に生じている故障内容、ひいてはプリチャージの再試行の可否を判定可能なことを見出した。
【0035】
そこで、このようにプリチャージ電流Ipreの変化軌跡に着目しつつ、異なる発想に基づきプリチャージの再試行の可否を判定する手法を、以下に第1〜4実施形態として説明する。
[第1実施形態]
端的に表現すると本実施形態の手法は、抵抗素子21の周辺部材の溶損に至ることなく耐え得る程度の軽度のショートであれば、プリチャージを再試行しても問題なし、との趣旨に基づく。
【0036】
図3はプリチャージ電流Ipreの変化に基づく再試行の可否判定を示すタイムチャートである。
抵抗素子21の周辺部材が溶損に至るか否かは、抵抗素子21の定格容量もしくは、周辺部品の許容温度から制定される許容発熱量から割り出した固有の許容電流から判断可能である。そこで、抵抗素子21の許容電流に対して若干の余裕分を見込んだ低電流側に許可判定値I0が設定され、プリチャージ中にプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下まで低下した場合に、プリチャージの再試行が許可される。
【0037】
従って、プリチャージを許可すべき領域(以下、許可領域Eと称する)を電流及び期間で規定すると、0Aを下限とし許可判定値I0を上限(所定電流範囲)としたプリチャージの期間全体(所定期間)に亘る領域として表現でき、プリチャージの再試行は、この許可領域E内にプリチャージ電流Ipreが侵入したことを条件として許可される。
以下、この許可領域Eに基づくプリチャージの再試行の可否判定を故障内容毎に説明する。
【0038】
まず、プリチャージ電流Ipreは故障内容に応じて以下に述べる軌跡を辿って変化する。
上記したように電源回路7が正常な場合、
図3中に実線で示すように、プリチャージ電流Ipreはプリチャージコンタクタ20のONと共に立ち上がり、その後に0Aに漸近するように次第に低下する。プリチャージコンタクタ20がONされた瞬間には平滑コンデンサ19が充電を開始していないため、立ち上がった瞬間のプリチャージ電流Ipreは、V/R相当値(V:電池電圧、R:抵抗素子21の抵抗)に達する。
【0039】
これに対して完全なショート故障では、プリチャージコンタクタ20のONと共に立ち上がり、プリチャージ中においてV/R相当値に維持され続ける。
またオープン故障では、プリチャージコンタクタ20がONされてもプリチャージ電流Ipreは立ち上がらず、プリチャージ中にも0Aに維持され続ける。
軽度のショート故障の場合、プリチャージ電流Ipreは電源回路7の正常時と完全なショート故障との間の軌跡を辿って変化する。即ち、このときのプリチャージ電流Ipreはチャージ正常時と同様に立ち上がった後に次第に低下するものの0Aまでは低下せず、ショート故障の度合いが重度であるほど(完全ショートに近いほど)高電流側で平衡する。従って、軽度のショート故障では、プリチャージ電流Ipreが許可判定値I0よりも高電流側で平衡するケースも、低電流側で平衡するケースもある。
【0040】
以上のプリチャージ電流Ipreの軌跡と故障内容との関係については、以下に述べる第2〜4実施形態でも共通する。
そして、このような軌跡を辿って変化するプリチャージ電流Ipreと許可領域Eとに基づき、ECU25aによりプリチャージ再試行の可否判定処理が実行されるのであるが、当該制御は、上記したプリチャージが完了せずにタイムアウトした場合に実行される。このため、まず、コンデンサ電圧Vconに関する条件に基づきECU25aにより実行されるプリチャージ完了判定処理について説明する。このプリチャージ完了判定処理を実行するときのECU25aが、本発明のプリチャージ完了判定手段として機能する。
【0041】
図4はECU25aが実行するプリチャージ完了判定処理を示すフローチャートであり、上記のように各コンタクタ17,18,20の溶着検出を実行した後に、平滑コンデンサ19をプリチャージすべくプリチャージコンタクタ20をONしたときに、ECU25aは当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行する。
まずステップS1で、電池電圧Vとコンデンサ電圧Vconとの差ΔVが所定の電圧判定値ΔV0以下であるか否かを判定し、No(否定)のときにはステップS2に移行する。ステップS2では、プリチャージ開始からの経過時間tが予め設定されたタイムアウト時間Toutに達したか否かを判定し、NoのときにはステップS1に戻り、ステップS1,2の処理を繰り返す。
【0042】
そして、ステップS1でYes(肯定)の判定を下したときにはプリチャージ完了と見なし、ステップS3で車両1の起動処理を実行した後にルーチンを終了する。既にプリチャージは完了しているため、ステップS3では、その後の第1メインコンタクタ17及びプリチャージコンタクタ20の切換処理が実行される。
また、タイムアウトによりステップS2でYesの判定を下したときにはプリチャージ不能と見なし、ステップS4でプリチャージの再試行が許可されたか否かを判定する。ステップS4の判定処理は、当該ルーチンと並行して実行されるプリチャージ再試行の可否判定処理に基づくが、その詳細については後述する。ステップS4の判定がYesのときにはステップS5でプリチャージを再試行し、判定がNoのときにはステップS6でプリチャージ不能を示す故障コードを記憶すると共に、車両1の走行不能を表すメッセージを警告装置28に表示し、その後にルーチンを終了する。
【0043】
以上のプリチャージ完了判定処理については、以下に述べる第2〜4実施形態でも同一内容で実行される。
一方、ECU25aは
図4のルーチンと並行して
図5に示すプリチャージ再試行の可否判定処理を実行する。このプリチャージ再試行の可否判定処理を実行するときのECU25aが、本発明の再試行許可手段として機能する。
【0044】
まず、ステップS11でプリチャージ中であるか否かを判定し、NoのときにはステップS12でメモリをリセットした後にルーチンを終了する。プリチャージ中でなければ、再試行の可否判定を実行するための情報は不要なためである。
また、ステップS11の判定がYesのときにはステップS13に移行し、
図4のステップS3で、プリチャージ完了を受けて車両1の起動処理が実行されているか否かを判定する。判定がNoのときにはステップS14に移行し、経過時間tがタイムアウト時間Toutに達したか否かを判定する。
【0045】
ステップS14でNoの判定を下したときには、ステップS15でプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下であるか否かを判定する。ステップS15の判定がNoのときには、ステップS11に戻ってステップS11,13〜15の処理を繰り返す。
そして、プリチャージの完了によりステップS13でYesの判定を下すと、ステップS12に移行する。再試行の可否判定が不要になったため、例えば経過時間t等の情報がメモリから消去される。
【0046】
また、ステップS15でYesの判定を下したときには、ステップS16でプリチャージの再試行を許可し、ステップS14でYesの判定を下したときには、ステップS17でプリチャージの再試行を禁止する。これらの許可・禁止判定に基づき、上記した
図4のステップS4の判定処理が実行される。
ステップS14の判定がYesの場合には、プリチャージ期間中においてプリチャージ電流Ipreが許可領域E内に侵入しなかったと見なせる。このときのプリチャージ電流Ipreが辿り得る軌跡としては、
図3中に示すV/R相当値に維持され続ける完全なショート故障、及び許可判定値I0よりも高電流側で平衡する軽度のショート故障の何れかであるが、何れの場合も許可判定値I0以下まで低下しない。このためプリチャージを再試行すると、プリチャージ電流Ipreは再び同様の軌跡を辿ることから、抵抗素子21に許容電流(許可判定値I0よりも若干高い)を超えたプリチャージ電流Ipreが流れて周辺部材が溶損する可能性が高い。この場合にはステップS17でプリチャージの再試行が禁止され、それを受けて
図4のステップS5でプリチャージは再試行されない。
【0047】
また、ステップS15の判定がYesの場合には、プリチャージ期間中においてプリチャージ電流Ipreが許可領域E内に侵入したと見なせる。このときのプリチャージ電流Ipreが辿り得る軌跡としては、
図3中に示す0Aに漸近する電源回路7の正常時、許可判定値I0よりも低電流側で平衡する軽度のショート故障、及び0Aに維持され続けるオープン故障の何れかであるが、何れの場合も許可判定値I0以下まで低下する。
【0048】
このため仮にプリチャージを再試行したとしても、プリチャージ電流Ipreは再び同様の軌跡を辿って抵抗素子21の許容電流よりも低い許可判定値I0以下まで低下するため、抵抗素子21の周辺部材が溶損する可能性は0に近い。よって、この場合にはステップS16でプリチャージの再試行が許可され、それを受けて
図4のステップS5でプリチャージが再試行される。
【0049】
以上のように本実施形態の電気自動車1の電源制御装置によれば、車両1を起動する際の平滑コンデンサ19のプリチャージ時において、コンデンサ電圧Vconに関する条件が満たされずにタイムアウトした場合、プリチャージ期間が経過するまでにプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下まで低下(許可領域E内に侵入)したことを条件として、プリチャージの再試行を許可している。
【0050】
許可判定値I0は抵抗素子21の許容電流よりも若干低電流側に設定されているため、プリチャージを再試行しても抵抗素子21の周辺部材は溶損しない。そして、タイムアウトの要因が一過性の不具合の場合には、プリチャージの再試行により車両1を起動できる。よって、不適切なプリチャージの再試行による抵抗素子21の周辺部材の溶損を防止した上で、一過性の不具合でタイムアウトした場合の車両1の走行不能を未然に回避することができる。
[第2実施形態]
端的に表現すると本実施形態の手法は、プリチャージが完了せずにタイムアウトしたにも拘わらず、プリチャージ完了と判定されたときの値までプリチャージ電流Ipreが低下している場合にはオープン故障と見なせる、との趣旨に基づく。
【0051】
図6はプリチャージ電流Ipreの変化に基づく再試行の可否判定を示すタイムチャートである。
平滑コンデンサ19のプリチャージが正常に完了して、コンデンサ電圧Vconに関する条件(ΔV≦ΔV0)が満たされたときのプリチャージ電流Ipreは、コンデンサ電圧Vcon/抵抗素子21の抵抗Rとして特定できる。本実施形態では、このときのプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0として設定され、プリチャージ中にプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下まで低下した場合に、プリチャージの再試行が許可される。
【0052】
従って、プリチャージの許可領域Eを電流及び期間で規定すると、0Aを下限とし許可判定値I0を上限とし(所定電流範囲)、プリチャージ期間全体(所定期間)に亘る領域として表現でき、プリチャージの再試行は、この許可領域E内にプリチャージ電流Ipreが侵入したことを条件として許可される。
ECU25aは、平滑コンデンサ19をプリチャージする際に
図4に示すプリチャージ完了判定処理を実行すると共に、これと並行してプリチャージ再試行の可否判定処理を実行する。可否判定処理の内容は第1実施形態で述べた
図5のものと同一であり、そのステップS15の許可判定値I0の設定が相違するだけのため、相違点を重点的に説明する。
【0053】
プリチャージ中において車両1の起動処理が実行されない場合(ステップS11,13)、ステップS14で経過時間tに関する判定を実行し、ステップS15でプリチャージ電流Ipreに関する判定を実行する。ステップS14の判定がYesのときにプリチャージ電流Ipreが辿り得る軌跡としては、
図3中に示す完全なショート故障、及び許可判定値I0よりも高電流側で平衡する軽度のショート故障の何れかであるが、何れの状況もタイムアウトと符合する。このため何れかの故障が電源回路7に発生していると見なせ、ECU25aはステップS17でプリチャージの再試行を禁止する。
【0054】
また、ステップS15の判定がYesのときにプリチャージ電流Ipreが辿り得る軌跡としては、
図3中に示す0Aに漸近する電源回路7の正常時、許可判定値I0よりも低電流側で平衡する軽度のショート故障、及び0Aに維持され続けるオープン故障の何れかである。
しかし、電源回路7の正常時及び許可判定値I0以下の軽度のショート故障ではプリチャージ完了と判定されるはずであり、それにも拘わらずタイムアウトしているため、これらの状況を除外できる。よって、このときには電源回路7のオープン故障と見なせ、オープン故障では抵抗素子21が発熱する可能性がないことから、ステップS16でプリチャージの再試行が許可される。
【0055】
以上のように本実施形態の電気自動車1の電源制御装置によれば、第1実施形態と同じくプリチャージが完了せずにタイムアウトした場合に、プリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下まで低下(許可領域E内に侵入)したことを条件として、プリチャージの再試行を許可している。
許可判定値I0は、コンデンサ電圧Vconに関する条件が満たされたときのプリチャージ電流Ipreとして設定されているため、タイムアウトしたにも拘わらずプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下まで低下する状況はオープン故障と見なせ、プリチャージを再試行しても抵抗素子21は発熱しない。そして、タイムアウトの要因が一過性の不具合の場合には、プリチャージの再試行により車両1を起動できるため、抵抗素子21の周辺部材の溶損を防止した上で、車両1の走行不能を未然に回避することができる。
【0056】
なお、本実施形態に比して第1実施形態では、許可領域Eが高電流側に拡大されている。このため、オープン故障のみならず軽度のショート(I≦I0)でもプリチャージの再試行が許可されることから、走行不能の回避の観点からは第1実施形態の方が望ましい。その反面、第1実施形態では周辺部材の溶損に至らないまでも抵抗素子21が発熱することから、抵抗素子21の保護の観点からは第2実施形態の方が望ましい。よって、何れを重視するかに応じて双方の実施形態の手法を選択すればよい。
[第3実施形態]
端的に表現すると本実施形態の手法は、正常時にプリチャージ電流Ipreが辿る軌跡よりも低電流側の領域にプリチャージ電流Ipreが侵入したときにはオープン故障を見なせる、との趣旨に基づく。
【0057】
図7はプリチャージ電流Ipreの変化に基づく再試行の可否判定を示すタイムチャートである。
平滑コンデンサ19のプリチャージが正常に完了した場合、
図7中に実線で示すように、プリチャージ電流Ipreはプリチャージコンタクタ20のONと共に立ち上がり、その後に0Aに漸近するように次第に低下する。このときのプリチャージ電流Ipreの軌跡よりも低電流側に許可領域Eが設定されており、本実施形態では、0Aを下限とし許可判定値I0を上限とし(所定電流範囲)、プリチャージの開始から許可時間T0が経過するまで(所定期間)の領域が許可領域Eとして設定されている。
【0058】
図7中では正常時にプリチャージ電流Ipreが辿る単一の軌跡を示しているが、電源回路7の個体差等に起因して正常時の軌跡にはバラツキが存在する。このため許可領域Eは、最も低下が急激な正常時の軌跡よりも僅かに低電流側に設定されている。
そして、許可時間T0が経過するまでにプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0以下まで低下した場合、換言すると、許可領域E内にプリチャージ電流Ipreが侵入した場合に、プリチャージの再試行が許可される。
【0059】
ECU25aは、平滑コンデンサ19をプリチャージする際に
図4に示すプリチャージ完了判定処理を実行すると共に、これと並行して
図8に示すプリチャージ再試行の可否判定処理を実行する。
まず、ステップS21でプリチャージ中であるか否かを判定し、NoのときにはステップS22でメモリをリセットした後にルーチンを終了する。
【0060】
また、ステップS21の判定がYesのときにはステップS23に移行し、プリチャージ電流Ipreが許可判定値I0を超えているか否かを判定し、NoのときにはステップS21に戻る。ステップS23でYesの判定を下したときには、ステップS24で車両1の起動処理が実行されているか否かを判定し、YesのときにはステップS22に移行する。ステップS24の判定がNoのときには、ステップS25でカウンタNをインクリメント(N+1)し、ステップS26でプリチャージ開始からの経過時間tが許可時間T0に達したか否かを判定する。
【0061】
ステップS26の判定がNoのときにはステップS21に戻り、YesのときにはステップS27でカウンタNが判定回数N0未満か否かを判定する。ステップS27の判定がYes(N<N0)のときにはステップS28でプリチャージの再試行を許可し、判定がNo(N≧N0)のときには、ステップS29でプリチャージの再試行を禁止する。
以上のように本実施形態の電気自動車1の電源制御装置によれば、プリチャージが完了せずにタイムアウトした場合に、電源回路7の正常時にプリチャージ電流Ipreが辿る軌跡よりも低電流側に設定された許可領域E内にプリチャージ電流Ipreが侵入したことを条件として、プリチャージの再試行を許可している。
【0062】
オープン故障を除き、プリチャージ電流Ipreは電源回路7の正常時が最も急激に低下する。このときプリチャージ電流Ipreが辿る軌跡よりも低電流側の許可領域E内にプリチャージ電流Ipreが侵入する事態はオープン故障以外あり得ず、プリチャージを再試行しても抵抗素子21は発熱しない。そして、タイムアウトの要因が一過性の不具合の場合には、プリチャージの再試行により車両1を起動できるため、抵抗素子21の周辺部材の溶損を防止した上で、車両1の走行不能を未然に回避することができる。
[第4実施形態]
端的に表現すると本実施形態の手法は、プリチャージ中に流れるはずのプリチャージ電流Ipreが検出されない場合にはオープン故障と見なせる、との趣旨に基づく。
【0063】
図9はプリチャージ電流Ipreの変化に基づく再試行の可否判定を示すタイムチャートである。
電流センサ23の出力には検出誤差が含まれており、実際の0Aに対して検出誤差は+側にも−側にも発生する。このため0Aを中心として発生し得る最大の検出誤差を含むように、検出誤差よりも僅かに+側の許可判定値I0を上限とし、僅かに−側の許可判定値−I0を下限とし(所定電流範囲)、プリチャージの開始から所定の許可時間T0が経過するまで(所定期間)の領域が許可領域Eとして設定されている。
【0064】
そして、許可時間T0が経過するまでにプリチャージ電流Ipreが許可領域E内に侵入した場合に、プリチャージの再試行が許可される。
ECU25aは、平滑コンデンサ19をプリチャージする際に
図4に示すプリチャージ完了判定処理を実行すると共に、これと並行してプリチャージ再試行の可否判定処理を実行する。可否判定処理の内容は第3実施形態で述べた
図8のものと同一であり、そのステップS23の許可判定値I0及びステップS26の許可時間T0の設定が相違するだけのため、相違点を重点的に説明する。
【0065】
プリチャージ中においてステップS23でプリチャージ電流Ipreが許可判定値I0を超えているか否かを判定し、判定結果に応じてステップS25でカウンタ処理を実行する。そして、許可時間T0の経過によりステップS26でYesの判定を下すと、ステップS27でカウンタNが判定回数N0未満であるか否かを判定する。
ステップS27の判定がYesのときには、ステップS28でプリチャージの再試行を許可する。判定がNoのときには、ステップS29でプリチャージの再試行を禁止する。
【0066】
以上のように本実施形態の電気自動車1の電源制御装置によれば、プリチャージが完了せずにタイムアウトした場合に、0Aを中心として電流センサ23の検出誤差を含むように設定された許可領域E内にプリチャージ電流Ipreが侵入したことを条件として、プリチャージの再試行を許可している。
プリチャージ電流Ipreが許可領域E内に侵入した場合、電流センサ23の出力に含まれる検出誤差に関係なく、実際のプリチャージ電流Ipreは0Aであると見なせる。プリチャージ中に流れるはずのプリチャージ電流Ipreが流れない事態はオープン故障以外あり得ず、プリチャージを再試行しても抵抗素子21は発熱しない。そして、タイムアウトの要因が一過性の不具合の場合には、プリチャージの再試行により車両1を起動できるため、抵抗素子21の周辺部材の溶損を防止した上で、車両1の走行不能を未然に回避することができる。
【0067】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、電気自動車1の電源制御装置に具体化したが、電源回路の平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路を備えた車両であれば、これに限るものではなく、例えば走行用動力源として電動モータ及びエンジンを搭載したハイブリッド車両に適用してもよい。
【0068】
また上記実施形態では、プリチャージの再試行が許可されたときに、自動で再試行を実行したが(
図4のステップS5)、手動でプリチャージの再試行を実行するようにしてもよい。