特許第6959612号(P6959612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959612
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】診断画像システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/12 20060101AFI20211021BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   A61B6/12
   A61B6/00 370
   A61B6/00 360Z
   A61B6/00 331E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-194308(P2017-194308)
(22)【出願日】2017年10月4日
(65)【公開番号】特開2019-63404(P2019-63404A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100153567
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐介
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】加治木 駿介
(72)【発明者】
【氏名】能登原 大介
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 圭
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040220(JP,A)
【文献】 特開2014−111083(JP,A)
【文献】 特開平04−144373(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145010(WO,A1)
【文献】 特開2012−045221(JP,A)
【文献】 特開2010−273854(JP,A)
【文献】 特表2006−518623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
A61B 5/055
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断画像を表示する表示装置と、
検体試料を採取する採取器具により血管内の前記検体試料の採取位置において採取した前記検体試料の分析を行う検体分析装置と、
記検体試料の採取位置を特定するための血管像が表示された第の診断画像を記憶する記憶部を含み、前記第1の診断画像を前記記憶部に記憶した後、前記第1の診断画像と、血管内に挿入された前記採取器具の先端部が血管内の採取位置に配置された状態のX線画像である前記第2の診断画像とを前記表示装置に並べて表示する制御を行う制御装置とを備える、診断画像システム。
【請求項2】
前記第の診断画像の採取位置と前記第の診断画像の前記血管像との相対位置関係に基づいて、前記第の診断画像内において前記検体試料の採取位置が特定されるように構成されている、請求項1に記載の診断画像システム。
【請求項3】
前記検体試料の採取位置は、前記第の診断画像の採取位置と前記第の診断画像の前記血管像との相対位置関係に基づいて、前記第の診断画像内において、使用者が前記検体試料の採取位置を入力することにより特定されるように構成されている、請求項2に記載の診断画像システム。
【請求項4】
前記第の診断画像は、前記検体試料を採取する採取器具の移動に伴い採取器具の位置が逐次変化し、採取位置に到達後、前記第の診断画像の前記血管像に基づいて採取位置が特定されるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の診断画像システム。
【請求項5】
記第の診断画像の前記血管像に基づいて、前記第の診断画像内において、前記検体試料の採取位置が特定されるように構成されている、請求項に記載の診断画像システム。
【請求項6】
前記第の診断画像は、X線画像である、請求項1〜のいずれか1項に記載の診断画像システム。
【請求項7】
前記第の診断画像は、被検体に造影剤を投与せずに取得された非造影X線画像であり、前記第の診断画像は、前記被検体に造影剤を投与し、取得された造影X線画像である、請求項に記載の診断画像システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1の診断画像に関連付けられた前記第1の診断画像が撮影された際の撮影位置および撮影方向が含まれる第1撮影位置情報に基づいて、前記第1撮影位置情報に対応する第2撮影位置情報を有する前記第2の診断画像を取得する制御を行うように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の診断画像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体(患者)の体内から血液や組織片などの検体試料を採取することにより、体内・臓器内における腫瘍などにより引き起こされる疾患の診断を行うことが知られている。ここで、従来、医師等が放射線画像診断装置によって被検体の透視画像を確認しながら、検体試料を採取するための採取デバイスを被検体内の採取位置まで送り込み、検体試料が採取されることが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1には、原発性アルドステロン症の診断のため、放射線画像診断装置による被検体のX線透視画像をリアルタイムで確認しながら、カテーテルを採取位置まで挿入することにより、副腎の様々な部位の静脈から血液(検体試料)を採取することが開示されている。ここで、非特許文献1には、採取された血液と、採取位置との対応関係を管理するために、カルテに副腎静脈のスケッチとともに採取位置を記入しておくことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】牧田幸三、「原発性アルドステロン症における副腎静脈採血−副腎静脈サンプリング手技を成功させるためのコツ−」、日本インターベンショナルラジオロジー学会雑誌、2013年、Vol.28、No.2、p.204−210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に記載されたカルテに副腎静脈のスケッチとともに採取位置を記入する方法では、採取位置の特定が不正確になりやすいとともに、採取位置の特定に要する医師等の作業負担が大きくなる。そのため、採取位置の特定をより正確に行うことが可能で、かつ、採取位置の特定に要する医師等の作業負担を軽減することが可能なシステムが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、採取位置の特定をより正確に行うことが可能で、かつ、採取位置の特定に要する医師等の作業負担を軽減することが可能な診断画像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における診断画像システムは、診断画像を表示する表示装置と、検体試料を採取する採取器具により血管内の前記検体試料の採取位置において採取した前記検体試料の分析を行う検体分析装置と、検体試料の採取位置を特定するための血管像が表示された第の診断画像を記憶する記憶部を含み、第1の診断画像を記憶部に記憶した後、第1の診断画像と、血管内に挿入された採取器具の先端部が血管内の採取位置に配置された状態のX線画像である第2の診断画像とを表示装置に並べて表示する制御を行う制御装置とを備える。
【0008】
この発明の一の局面による診断画像システムでは、上記のように、第1の診断画像と、第2の診断画像とを並べて表示するように構成することによって、検体試料の採取位置と、採取位置を特定するための血管像とを同時に確認することができるので、採取位置を正確に特定することができる。さらに、診断画像システム上で第1の診断画像および第2の診断画像が自動的に表示されるため、医師等は、カルテにスケッチを行う必要がなくなる。これにより、採取位置の特定に要する医師等の作業負担を軽減することができる。これらの結果、採取位置の特定をより正確に行うことが可能で、かつ、採取位置の特定に要する医師等の作業負担を軽減することができる。
また、採取位置を特定する際だけでなく、検体試料の採取時においても、第2の診断画像に基づいて血管像の構造を把握することができるので、使用者が検体試料を採取し易くなる。
また、検体試料を採取する採取器具の先端が採取位置となるため、より正確に採取位置を特定することができる。
【0009】
上記一の局面による診断画像システムにおいて、好ましくは、第の診断画像の採取位置と第の診断画像の血管像との相対位置関係に基づいて、第の診断画像内において検体試料の採取位置が特定されるように構成されている。このように構成すれば、たとえば、第の診断画像の血管像が複雑に分岐する血管のような構造を有していても、第の診断画像の採取位置と第の診断画像の血管像との相対位置関係に基づいて、検体の採取位置をより正確に特定することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、検体試料の採取位置は、第の診断画像の採取位置と第の診断画像の血管像との相対位置関係に基づいて、第の診断画像内において、使用者が検体試料の採取位置を入力することにより特定されるように構成されている。このように構成すれば、検体試料を採取した箇所をカルテにスケッチをしなくても、容易に検体試料の採取位置を特定し、記録することができる。
【0013】
上記一の局面による診断画像装置において、好ましくは、第の診断画像は、検体試料を採取する採取器具の移動に伴い採取器具の位置が逐次変化し、採取位置に到達後、第の診断画像の血管像に基づいて採取位置が特定されるように構成されている。このように構成すれば、第の診断画像に基づいて、医師等の使用者が採取器具を操作しながら採取器具の位置を把握することができるとともに、検体試料を採取後に第の診断画像に基づいて検体試料の採取位置を容易に特定することができる。
【0014】
上記第2の診断画像の血管像に基づいて採取位置が特定される構成において、好ましくは、第の診断画像の血管像に基づいて、第の診断画像内において、検体試料の採取位置が特定されるように構成されている。このように構成すれば、細かく枝分かれした微小血管から血液を採取する場合でも、血管像としての血管像に基づいて、検体試料の採取位置を正確に特定することができる。
【0015】
上記一の局面による診断画像システムにおいて、好ましくは、第の診断画像は、X線画像である。このように構成すれば、X線画像である第1の診断画像と第2の診断画像を用いて、採取位置を正確に特定することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第の診断画像は、被検体に造影剤を投与せずに取得された非造影X線画像であり、第の診断画像は、被検体に造影剤を投与し、取得された造影X線画像である。このように構成すれば、被検体に造影剤を投与しないため、検体試料を採取すると同時に第の診断画像を取得することができる。一方で、被検体に造影剤を投与することで、第の診断画像において検体試料の採取位置を特定するための血管像がより明確に表示される。
また、上記一の局面による診断画像システムにおいて、好ましくは、制御装置は、第1の診断画像に関連付けられた第1の診断画像が撮影された際の撮影位置および撮影方向が含まれる第1撮影位置情報に基づいて、第1撮影位置情報に対応する第2撮影位置情報を有する第2の診断画像を取得する制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、採取位置の特定をより正確に行うことが可能で、かつ、採取位置の特定に要する医師等の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態による診断画像システムの全体構成を示す模式図である。
図2】X線撮影装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図3】一実施形態による診断画像システムにおける検査の流れを示す図である。
図4】一実施形態による非造影画像と造影画像とを表示した例を示す図である。
図5】一実施形態による非造影画像と造影画像とを表示した例を示す図である。
図6】採血データを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図6を参照して、本発明の一実施形態による診断画像システム100の構成について説明する。診断画像システム100は原発性アルドステロン症の診断のための副腎静脈サンプリングや、内視鏡を用いて、内臓の組織片を採取して行う内視鏡下生検などの局所診断に用いられる。以下、本実施形態では、診断画像システム100が、原発性アルドステロン症の診断のための副腎静脈サンプリングに用いられる例について説明する。
【0021】
(診断画像システムの構成)
診断画像システム100は、図1に示すように、X線撮影装置1と、検体分析装置2とを備える。X線撮影装置1は、血管に挿入されたカテーテルなどの採取器具3を用いて被検体Tから血液Bを採取する際に、診断画像として被検体Tの非造影画像30(図4参照)を生成して表示装置16に表示するように構成されている。また、X線撮影装置1は、被検体Tから血液Bが採取される際の採取位置Pの特定が行われるように構成されている。なお、X線撮影装置1は、特許請求の範囲の「制御装置」の一例である。また、血液Bは、特許請求の範囲の「検体試料」の一例である。
【0022】
検体分析装置2は、被検体Tから採取された血液Bの分析を行うように構成されている。そして、X線撮影装置1は、特定された採取位置Pと血液Bの分析結果Aとを、血液Bを特定するための採血番号Nに基づいて関連付けるように構成されている。なお、採血番号Nは、たとえば、採取位置P毎に順に付される値(001など、図6参照)であり、複数の血液Bの各々と1対1で対応している。
【0023】
被検体Tは、診断が行われる対象であって、診断のための血液Bが医師等により被検体Tから採取される。被検体Tは、図1に図示したヒトに限られず、ヒト以外の動物でもよい。医師等は特許請求の範囲の「使用者」の一例である。
【0024】
X線撮影装置1および検体分析装置2は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に基づくネットワーク4を介して互いに接続されている。また、X線撮影装置1および検体分析装置2は、ネットワーク4を介してホストコンピュータ(サーバ)5に接続されている。ホストコンピュータ5には、ネットワーク4を介して電子カルテの情報を取得可能であり、被検体Tに関する情報(ID、名前、年齢、性別等)などを保持することが可能である。
【0025】
(X線撮影装置の構成)
X線撮影装置1は、図2に示すように、撮影装置11と、天板駆動装置12とを含む。撮影装置11は、照射部11aと、検出部11bと、アーム11c(図1参照)と、アーム駆動部11dとを有する。照射部11aは、図示しないX線源を含み、X線を被検体Tに向かって照射する。検出部11bは、照射部11aによって照射されて被検体Tを透過したX線(透過X線)を検出し、強度に応じた検出信号を制御部13に出力する。また、制御部13(画像処理部18)において、受信した検出信号に基づいて非造影画像30が取得される。なお、検出部11bは、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)から構成されている。
【0026】
アーム11cは、C字状に形成されている。アーム11cのC字状の一方端および他方端に、それぞれ、照射部11aおよび検出部11bが取り付けられている。この際、照射部11aと検出部11bとが被検体T(天板12a)を挟んで対向するように、アーム11cに取り付けられている。アーム駆動部11dは、アーム11cを水平方向および鉛直方向に移動させることによって、被検体Tに対する照射部11aからのX線の照射位置および照射方向(言い換えると、撮影位置および撮影方向)を変更させるように構成されている。
【0027】
天板駆動装置12は、被検体Tが載置される天板12aを、水平方向に移動させることが可能に構成されている。
【0028】
X線撮影装置1は、制御部13と、記憶部14と、通信部15と、表示装置16と、操作装置17とをさらに含む。制御部13、記憶部14および通信部15は、X線撮影装置本体1aに設けられている。
【0029】
制御部13は、X線撮影装置1の全体を制御する。制御部13は、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、RAMなどのメモリとを含む。また、制御部13は、メモリに記憶された所定の制御プログラムを実行することにより、所定の制御処理を行うように構成されている。
【0030】
記憶部14は、被検体Tに対して造影剤を用いない状態で、X線撮影装置1(撮影装置11)により撮影された非造影画像30(図4参照)が記憶可能に構成されている。この非造影画像30は、表示装置16等に画像として表示された際に、骨および副腎(図中ハッチングで示す)が表示されるとともに、採取器具3(カテーテル)と採取位置(採血位置)Pとが表示される。なお、非造影画像30では、採取位置Pとして、血液Bを採取する採取器具3(カテーテル)の先端部が表示される。また、非造影画像30は、特許請求の範囲の「第の診断画像」および「非造影X線画像」の一例である。
【0031】
また、非造影画像30は、記憶部14において、非造影画像30が撮影された際の撮影位置および撮影方向が含まれる第1撮影位置情報30aと関連付けて記憶される。なお、記憶部14に記憶される非造影画像30は、カテーテル3の移動に伴い逐次変化する動画として記憶されてもよいし、操作装置17を介して医師等が操作した際に、静止画として記憶されてもよい。
【0032】
また、記憶部14には、被検体Tに造影剤を投与し、X線撮影装置1(撮影装置11)を用いて撮影した複数の造影画像40(図4参照)が記憶されている。複数の造影画像40は、各々造影画像40が撮影された際の第2撮影位置情報40aが含まれる。造影画像40は、第2撮影位置情報40aが各々類似する第1撮影位置情報30aを有する非造影画像30(図4参照)に対応付けられた造影画像40として複数作成される。また、造影画像40は、特許請求の範囲の「第の診断画像」および「造影X線画像」の一例である。
【0033】
造影画像40は表示装置16等に画像として表示された際に、骨および臓器としての副腎(図中点線で示す)が表示されるとともに、血管像Vが明確に表示される。なお、血管像Vは、特許請求の範囲の「基準部」の一例である。
【0034】
通信部15は、ネットワーク4に接続されている。通信部15は、制御部13の指示により、検体分析装置2から採血番号Nに対応する血液Bの分析結果Aを、採血番号Nに関連付けられた状態で受信する。また、通信部15は、制御部13の指示により、ホストコンピュータ5から被検体Tに関する情報などを受信する。
【0035】
表示装置16は、たとえば液晶ディスプレイなどのモニタであり、非造影画像30等の画像を表示可能に構成されている。操作装置17は、たとえばキーボードおよびマウスなどを含んで構成され、医師等によるX線撮影装置1への入力操作を受け付けるように構成されている。
【0036】
検体分析装置2は、たとえば、液体クロマトグラフ質量分析計からなる。検体分析装置2は、血液B中の所定の成分量(たとえば、アルドステロン量およびコルチゾール量など)等を分析するとともに、血液Bの分析結果Aを、血液Bに対応する採血番号Nに関連付けた状態で、ネットワーク4を介してX線撮影装置1に出力する。
【0037】
次に、図3図5を参照して、本実施形態によるX線撮影装置1の制御部13(画像処理部18)における画像作成処理および採取位置Pの特定について説明する。なお、本実施形態では、図3に示す検査の流れのようにまず医師等が、被検体Tに造影剤を投与して造影画像40を撮影し、次いで、カテーテル3により血液Bを採取する際に、非造影画像30を動画(所定のフレームレート)で随時撮影する例について説明する。
【0038】
(造影画像の撮影)
医師等は、撮影装置11の天板12aに載置された被検体Tに造影剤を注射する。医師等は天板駆動装置12を駆動させ、撮影装置11の照射部11aと検出部11bとの間に被検体Tの造影剤が投与された血管が位置するように天板12aを移動させる。
【0039】
医師等は、被検体Tの位置を調整した後、操作装置17を操作して、造影画像40を撮影する。造影画像40は、第2撮影位置情報40aと関連付けて記憶部14に記憶される。
【0040】
(非造影画像の撮影)
医師等は、被検体Tを撮影装置11の天板12aに載置し、カテーテル3を挿入する。カテーテル3を挿入後、医師等は天板駆動装置12を駆動させ、撮影装置11の照射部11aと検出部11bとの間に被検体Tの血管が位置するように天板12aを移動させる。
【0041】
医師等は、被検体Tの位置を調整した後、操作装置17を操作して、非造影画像30を動画で撮影する。表示装置16には、血管内を移動するカテーテル3の画像が表示され、医師等がカテーテル3を操作することで、逐次非造影画像30が変化する。非造影画像30は逐次第1撮影位置情報30aと関連付けて記憶部14に記憶される。
【0042】
そして、X線撮像装置としては、第1撮影位置情報30aと第2撮影位置情報40aとを比較して、非造影画像30に対応する造影画像40を取得する。その後、X線撮影装置1は、非造影画像30と造影画像40とを並べて表示装置16に表示するように制御する。なお、図5では非造影画像30を画面左側、造影画像40を画面右側と左右に分割で表示をしているが、上下2分割であってもよい。また、非造影画像30を画面右側に、造影画像40を画面左側に表示してもよく、表示の態様は医師等の使用者の都合に合わせて適宜設定される。
【0043】
表示装置16に表示される非造影画像30は、採取位置Pを表示する画像であればよいが、好ましくは、図4のように非造影画像30には検体試料を採取するカテーテル3が表示されている。そうすることでカテーテル3の先端の位置が検体試料の採取位置Pとなり、検体試料の採取位置Pの特定を容易にすることができる。表示装置16に表示される検体試料の採取位置Pを特定するための基準部を表示する造影画像40は、採取位置Pを表示する非造影画像30との相対関係が明確であるほうが好ましい。
【0044】
(採取位置Pの特定)
X線撮影装置1内の、画像処理部18が造影画像40と非造影画像30を並べた画面を作成し、表示装置16に表示する。ここで、表示装置16に表示されている非造影画像30には血管像Vが、造影画像40には採取位置P(カテーテル3の先端部)がそれぞれ表示されているので、カテーテル3が採取位置Pに到達後、血管像Vと採取位置Pとの相対位置に基づいて、採取位置Pが特定される。あるいは、画像処理部18が造影画像40に対して画像処理を行うことにより、採取位置Pの特定を行ってもよい。この場合、非造影画像30におけるカテーテル3の先端部を認識することによって、カテーテル3の先端部を採取位置Pであると特定してもよい。また、たとえば、血管像Vにおける枝分かれしている分岐点を位置基準として、採取位置Pの位置を分岐点に対する相対位置(座標)として特定してもよい。
【0045】
また、画像処理部18により画像処理を行わずに、医師等による操作装置17(たとえばマウス)を介したX線撮影装置1への入力操作に基づいて、採取位置Pを特定してもよい。採取位置Pは図5に示すように、造影画像40中に文字と矢印とで示されてもよい。
【0046】
そして、採取位置Pと、採取位置Pで採取された血液Bと、採血番号Nとが1対1で関連付けられる。また、複数の採取位置Pにおいて血液Bが取得された場合には、異なる採血番号Nが関連付けられる。
【0047】
(採血データの作成)
血液Bの取得および採取位置Pの特定後、図1に示すように、検体分析装置2により分析された血液Bの分析結果Aが、採血番号Nと関連付けられた状態で、X線撮影装置1に送信される。そこで、X線撮影装置1の制御部13は、採血番号N(血液B)毎に、採血番号Nと、採取位置Pが特定された造影画像40と、採取位置Pに対応する血管名と、分析結果Aと、図示しない被検体Tに関する情報とが関連付けられた採血データD(D1、D2)が作成される。そして、X線撮影装置1からホストコンピュータ5等に作成した採血データDが送信される。これにより、医師等は、採血データDを参照することによって、血液Bの採取位置Pと分析結果Aとを容易に関連付けて確認することが可能である。
【0048】
また、採血データDにおいて、たとえば、採取位置Pを含むMRI画像またはPET画像等の画像を関連付けてもよいし、その他のデータ(血液成分のデータなど)と関連付けてもよい。
【0049】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0050】
本実施形態では、上記のように、非造影画像30と、造影画像40とを並べて表示するように構成することによって、血液Bの採取位置Pと、採取位置Pを特定するための血管像Vとを同時に確認することができるので、採取位置Pを正確に特定することができる。さらに、診断画像システム100上で非造影画像30と、造影画像40とが自動的に表示されるため、医師等は、カルテにスケッチを行う必要がなくなる。これにより、採取位置Pの特定に要する医師等の作業負担を軽減することができる。これらの結果、採取位置Pの特定をより正確に行うことが可能で、かつ、採取位置Pの特定に要する医師等の作業負担を軽減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、非造影画像30の採取位置Pと造影画像40の血管像Vとの相対位置関係に基づいて、造影画像40内において血液Bの採取位置Pが特定されるように構成されている。これにより、複雑に分岐する血管であっても、非造影画像30の採取位置Pと造影画像40の血管像Vとの相対位置関係に基づいて、血液Bの採取位置Pをより正確に特定することができる。
【0052】
また、本実施形態では、血液Bの採取位置Pは、非造影画像30の採取位置Pと造影画像40の血管像Vとの相対位置関係に基づいて、造影画像40内において、医者等が入力することにより特定されるように構成されている。これにより、血液Bを採取した箇所をカルテにスケッチをしなくても、容易に血液Bの採取位置Pを特定し、記録することができる。
【0053】
また、本実施形態では、X線撮影装置1は、造影画像40を取得した後に、非造影画像30を取得するように構成されている。これにより、採取位置Pを特定する際だけでなく、血液Bの採取時においても、造影画像40に基づいて血管像Vの構造を把握することができるので、医者等が血液Bを採取し易くなる。
【0054】
また、本実施形態では、非造影画像30は、血液Bを採取するカテーテル3が、識別可能に表示されている画像であり、造影画像40は、血液Bの採取位置Pを特定するための血管像Vが表示されている画像である。これにより、血液Bを採取するカテーテル3の先端が採取位置Pとなるため、より正確に採取位置Pを特定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、非造影画像30は、血液Bを採取するカテーテル3の移動に伴いカテーテル3の位置が逐次変化し、採取位置Pに到達後、造影画像40の血管像Vに基づいて採取位置Pが特定されるように構成されている。これにより、非造影画像30に基づいて、医師等の使用者がカテーテル3を操作しながらカテーテル3の位置を把握することができ、血液Bを採取後に造影画像40に基づいて血液Bの採取位置Pを容易に特定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、造影画像40の血管像Vに基づいて、造影画像40内において、血液Bの採取位置Pが特定されるように構成されている。これにより、細かく枝分かれした微小血管から血液Bを採取する場合でも、血管像Vに基づいて、血液Bの採取位置Pを正確に特定することができる。
【0057】
また、本実施形態では、非造影画像30および造影画像40は、X線画像である。これにより、X線画像である非造影画像30と造影画像40を用いて、採取位置Pを正確に特定することができる。
【0058】
また、本実施形態では、非造影画像30は、被検体Tに造影剤を投与せずに取得された非造影X線画像であり、造影画像40は、被検体Tに造影剤を投与し、取得された造影X線画像である。これにより、被検体Tに造影剤を投与しないため、血液Bを採取すると同時に非造影画像30を取得することができる。一方で、被検体Tに造影剤を投与することで、造影画像40において血液Bの採取位置Pを特定するための血管像Vがより明確に表示される。
【0059】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0060】
たとえば、上記実施形態では、非造影画像30は、血液Bを採取するカテーテル3の移動に伴いカテーテル3の位置が逐次変化する例について示したが、非造影画像30は変化しなくともよい。たとえば、血液Bを採取するときだけに非造影画像30を取得してもよい。
【0061】
上記実施形態では、非造影画像30は、被検体Tに造影剤を投与せずに取得された非造影X線画像であり、造影画像40は、被検体Tに造影剤を投与し、取得された造影X線画像である場合の例を示したが、これに限定されない。たとえば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像、超音波画像、核医学画像および光学画像等を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記実施形態では、造影画像40を被検体Tに造影剤を注射し撮影したが、被検体Tにカテーテル3を挿入し、カテーテル3の先端から造影剤を投与し撮影しても良い。また、X線撮影装置1を用いて、造影画像40を取得したが、X線CT装置を用いて造影三次元像から非造影画像30に対応するDRR画像を作成し、DRR画像を造影画像40としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、診断画像システム100が原発性アルドステロン症の診断のための副腎静脈サンプリングに用いられる例について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の診断画像システム100が原発性アルドステロン症の診断のための副腎静脈サンプリング以外の用途に用いられてもよい。たとえば、本発明の診断画像システム100を、カテーテル3を用いてがん細胞を採取するという用途に用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 X線撮影装置(取得部)
16 表示装置
30 非造影画像(第1の診断画像、非造影X線画像)
40 造影画像(第2の診断画像、造影X線画像)
100 診断画像システム
A 分析結果
B 血液(検体試料)
N 採血番号
P 採取位置
T 被検体
V 血管像(基準部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6