(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ASTM D1238に従い、190℃、21.18N荷重の条件下で測定されるメルトフローレートが20〜50g/10分の範囲にある、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(A)と、
密度が850〜880kg/m3であるエチレン系エラストマー(B)、または、JIS K 6922−1(190℃、21.18N)に従い測定されるメルトフローレートが70〜150g/10分である低密度ポリエチレン(C)と
を含み、かつ、
下記式(1)で表されるバイオマス由来の樹脂の重量比率が60〜100%である、
射出成形容器。
バイオマス由来の樹脂の重量比率=前記容器の製造に用いたバイオマス由来の樹脂の重量×該樹脂のバイオマス度(%)/前記容器の製造に用いた樹脂の合計重量・・・(1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のチューブ容器では、バイオマス由来のポリオレフィンを含む組成物を用いて頭部を射出成形等により形成することが記載されているが、射出成形性が良好であるとは言えなかった。
【0008】
なお、チューブ容器としては、射出成形により製造された容器も知られている。射出成形チューブは、所定の金型を用いて、口部および肩部からなる頭部と、前記肩部と連接した胴部とを備える成形体を形成した後、胴部の頭部側とは反対側の端をシールすることで形成される。このような射出成形チューブは、初期段階でエンドシール部にクラックが発生し、該クラックが成長して内容物の漏れにつながることが分かった。
特に、胴部の厚みが0.8mm以下である場合や、胴部の長さが10cm以上である射出成形チューブ容器は、射出成形しにくい上に、クラックが発生し易いことが分かった。
【0009】
従来の射出成形容器は、射出成形性が充分ではなく、特に、耐ストレスクラッキング性(以下「耐ストクラ性」ともいう。)が十分ではなかった。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、射出成形性および耐ストクラ性に優れる射出成形容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、特定のバイオマス由来の低密度ポリエチレンを含む容器によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下のとおりである。
【0011】
[1] ASTM D1238に従い、190℃、21.18N荷重の条件下で測定されるメルトフローレートが20〜50g/10分の範囲にある、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(A)を含み、かつ、
下記式(1)で表されるバイオマス由来の樹脂の重量比率が60〜100%である、
射出成形容器。
バイオマス由来の樹脂の重量比率=前記容器の製造に用いたバイオマス由来の樹脂の重量×該樹脂のバイオマス度(%)/前記容器の製造に用いた樹脂の合計重量・・・(1)
【0012】
[2] 前記容器が射出成形チューブ容器である、[1]に記載の容器。
[3] 前記容器が、口部および肩部からなる頭部と、前記肩部と連接した胴部とを備えるチューブ容器であって、
前記頭部と胴部とが一体成形された射出成形チューブ容器である、[1]または[2]に記載の容器。
[4] 前記胴部の厚さが、0.5〜0.8mmである、[3]に記載の容器。
【0013】
[5] さらにエチレン系エラストマー(B)を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の容器。
【0014】
[6] JIS K 6922−1(190℃、21.18N)に従い測定されるメルトフローレートが50〜150g/10分である低密度ポリエチレン(C)をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の容器。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射出成形性および耐ストクラ性に優れる容器を容易に得ることができる。
特に、本発明によれば、胴部の厚みが0.8mm以下であり、かつ、胴部の長さが10cm以上でありながらも、射出成形性および耐ストクラ性に優れる射出成形チューブ容器を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪容器≫
本発明に係る容器(以下「本容器」ともいう。)は、ASTM D1238に従い、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜50g/10分の範囲にある、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(A)(以下「成分(A)」ともいう。他の樹脂についても同様。)を含み、かつ、
下記式(1)で表されるバイオマス由来の樹脂の重量比率が60〜100%である。
バイオマス由来の樹脂の重量比率=前記容器の製造に用いたバイオマス由来の樹脂の重量×該樹脂のバイオマス度(%)/前記容器の製造に用いた樹脂の合計重量・・・(1)
本発明者が鋭意検討した結果、このように、比較的高いMFRを有するバイオマス由来の低密度ポリエチレンを用い、さらに、バイオマス由来の樹脂の重量比率が前記範囲にあると、理由は明らかではないが、射出成形性に優れ、特に耐ストクラ性に優れる射出成形容器が得られることが分かった。
【0018】
本容器としては、特に制限されないが、本発明の効果がより効果的に発揮される等の点から、射出成形チューブ容器であることがより好ましい。
該射出成形チューブ容器は、通常、
図1に示すように、肩部3および口部1からなる頭部と、該肩部3と連接した胴部2とを備えるチューブ容器である。
【0019】
前記胴部の厚さは、所望の用途により適宜選択すればよいが、前記成分(A)を用いる意義がより発揮される等の点から、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5〜0.8mm、特に好ましくは0.6〜0.7mmである。
前記成分(A)を用いることで、このような厚さの射出成形チューブ容器を容易に形成することができ、また、胴部がこのような厚さであっても、射出成形性および耐ストクラ性に優れる射出成形チューブ容器を得ることができる。
【0020】
また、前記胴部の長さも、所望の用途により適宜選択すればよいが、前記成分(A)を用いる意義がより発揮される等の点から、好ましくは10cm以上、より好ましくは11〜20cm、特に好ましくは14〜16cmである。
前記成分(A)を用いることで、このような長さの射出成形チューブ容器を容易に形成することができ、また、胴部がこのような長さであっても、射出成形性および耐ストクラ性に優れる射出成形チューブ容器を得ることができる。
【0021】
本容器の用途は特に制限されないが、リキッド状やクリーム状などの、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、建築用・土木用・農業用材料などを使用、保存、輸送等する用途などが挙げられ、より好適には、リキッドファンデーション、クリーム、洗顔フォームなどを使用、保存、輸送等する用途が挙げられる。
【0022】
<バイオマス由来の低密度ポリエチレン(A)>
本容器は、バイオマス由来の低密度ポリエチレン(A)を含むことを特徴とし、実質的に該ポリエチレン(A)のみからなる容器であってもよい。
このようなポリエチレン(A)を用いることで、大気中のCO
2量の増加を抑制し、石油資源の節約にもつながるため好ましいのみならず、耐ストクラ性に優れる射出成形容器を容易に得ることができる。
本容器に含まれるポリエチレン(A)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0023】
なお、バイオマス由来の樹脂の質量と化石燃料由来の樹脂の質量とは、含有する
14Cの比率によって区別することが可能であり、具体的には、ASTM−D6866−12により区別することが可能である。
【0024】
ポリエチレン(A)のASTM D1238に従い、190℃、21.18N荷重の条件下で測定されるMFRは、20〜50g/10分であり、射出成形性および耐ストクラ性により優れる射出成形容器を容易に得ることができる等の点から、好ましくは20〜40g/10分であり、より好ましくは20〜30g/10分である。
【0025】
ポリエチレン(A)のJIS K 7112に従い測定される密度は、特に柔軟性に優れる容器が得られる等の点から、好ましくは0.91〜0.94g/cm
3であり、より好ましくは0.91〜0.93g/cm
3である。
【0026】
前記バイオマスとしては特に制限されないが、サトウキビ(バガスを含む)、とうもろこし、デンプン、ひまし油、畳(使用済みの廃畳)の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑、草木ソルガム、甜菜の絞りかす、稲わら等の草木質、針葉樹材料、広葉樹材料、非樹木系材料、これら材料の廃棄物等が挙げられる。
【0027】
なお、本発明におけるバイオマス由来の低密度ポリエチレンとしては、バイオマス由来のエチレンを原料として得られる低密度ポリエチレンであれば特に制限されないが、具体的には、植物を発酵させて得られたアルコールを原料として合成したエチレンを用いた植物由来の低密度ポリエチレンが挙げられる。
より具体的には、従来公知の方法で、前記バイオマスから得られる糖液やデンプンを、酵母等の微生物により発酵させてバイオエタノールを製造し、これを触媒存在下で加熱し、分子内脱水反応等することにより得られたエチレンおよび必要によりα−オレフィン(例:1−ブテン、1−ヘキセン)等をモノマーとして用い、化石燃料由来の低密度ポリエチレンの合成と同様に、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒等を用いる高圧法やメタロセン触媒等を用いる重合法等で(共)重合させることにより得られる、低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0028】
前記共重合体としては、バイオマス由来のα−オレフィンの他に、低密度ポリエチレンの合成において一般に用いられる化石燃料由来のコモノマーを用いたものであってもよい。具体的には、エチレンを主成分とし、α−オレフィンを副成分とする混合単量体を、メタロセン触媒等の存在下に重合させることにより得られる低密度ポリエチレンであってもよい。α−オレフィンとしては、炭素数3〜40、好ましくは4〜35、より好ましくは4〜30のα−オレフィンの1種または2種以上が使用され、例えば、炭素数3〜8のα−オレフィンと炭素数10〜26のα−オレフィンとを併用することができる。低密度ポリエチレンが共重合体である場合、α−オレフィンの含有量は、共重合体に対し、好ましくは3〜15モル%である。
【0029】
ポリエチレン(A)としては、前述の方法等で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
【0030】
本容器中に含まれる樹脂成分の合計100重量%に対する、ポリエチレン(A)の含有量は、射出成形性および耐ストクラ性によりバランスよく優れる射出成形容器が得られる等の点から、好ましくは70〜100重量%であり、より好ましくは80〜100重量%であり、特に好ましくは90〜100重量%である。
【0031】
下記式(1)で表されるバイオマス由来の樹脂の重量比率は、大気中のCO
2量の増加を抑制し、かつ、石油資源の節約にもつながり、特に、より耐ストクラ性に優れる射出成形容器を容易に得ることができる等の点から、60〜100%、好ましくは75〜100%、より好ましくは85〜100%である。
バイオマス由来の樹脂の重量比率=前記容器の製造に用いたバイオマス由来の樹脂の重量×該樹脂のバイオマス度(%)/前記容器の製造に用いた樹脂の合計重量・・・(1)
【0032】
なお、本容器の原料として、バイオマス由来の樹脂を2種類(樹脂(a)と樹脂(b))用いる場合には、前記式(1)は下記式(1')の通りとなる。バイオマス由来の樹脂を3種類以上用いる場合も同様である。
バイオマス由来の樹脂の重量比率=(樹脂(a)の重量×樹脂(a)のバイオマス度(%)+樹脂(b)の重量×樹脂(b)のバイオマス度(%))/前記容器の製造に用いた樹脂の合計重量・・・(1')
【0033】
樹脂のバイオマス度は、該樹脂を合成する際の原料モノマーの合計重量に対する、該樹脂を合成する際に用いるバイオマス由来の原料モノマーの合計重量である。
【0034】
<エチレン系エラストマー(B)>
本容器は、柔軟性、透明性および低温シール性に優れる射出成形容器を容易に得ることができる等の点から、エチレン系エラストマー(B)を含んでもよい。
本容器がエラストマー(B)を含む場合、該エラストマー(B)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0035】
エラストマー(B)としては、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられ、より好ましくはエチレン・α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、1種または2種以上の、炭素数3〜20の、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
該共重合体中のα−オレフィン含量としては、共重合体に対し、通常3〜39モル%、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは5〜25モル%である。
【0036】
該炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンが挙げられるが、これらの中でもプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0037】
また、必要に応じて他のコモノマー、1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類や、シクロペンテン等の環状オレフィン類などを少量用いてもよい。
【0038】
エラストマー(B)を合成する際に用いられるエチレンやα−オレフィンとしては、大気中のCO
2量の増加を抑制し、かつ、石油資源の節約にもつながり、特に、より耐ストクラ性に優れる射出成形容器を容易に得ることができる等の点から、バイオマス由来のエチレンやα−オレフィンを用いることが好ましい。
【0039】
エラストマー(B)としては、透明性および耐ストクラ性に優れる射出成形容器を容易得ることができる等の点から、ポリエチレン(A)と相溶する樹脂、さらにはポリエチレン(A)および(C)と相溶する樹脂を用いることが好ましい。
【0040】
エラストマー(B)のASTM D1238に従い測定されるMFR(230℃、21.18N)は、特に射出成形性に優れる組成物が得られる等の点から、好ましくは5〜70g/10分、より好ましくは50〜70g/10分である。
【0041】
エラストマー(B)のASTM D1505に従い測定される密度は、特に柔軟性に優れる射出成形容器が得られる等の点から、好ましくは850〜900kg/m
3、より好ましくは850〜880kg/m
3である。
【0042】
エラストマー(B)は、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
【0043】
本容器がエラストマー(B)を含有する場合、本容器中に含まれる樹脂成分の合計100重量%に対する、エラストマー(B)の含有量は、柔軟性、耐ストクラ性および透明性により優れる射出成形容器が得られる等の点から、好ましくは5〜20重量%であり、さらに射出成形性により優れる等の点から、より好ましくは5〜10重量%である。
【0044】
<低密度ポリエチレン(C)>
本容器は、射出成形性に優れ、胴部の厚みや長さが前記範囲にある射出成形チューブ容器を容易に得ることができる等の点から、JIS K 6922−1に従い測定されるメルトフローレート(190℃、21.18N)が50〜150g/10分である低密度ポリエチレン(C)を含んでもよい。
本容器がポリエチレン(C)を含む場合、該ポリエチレン(C)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0045】
ポリエチレン(C)の前記MFRは、好ましくは70〜150g/10分であり、より好ましくは100〜150g/10分である。
MFRが前記範囲にあると、射出成形性に優れる組成物が得られるため好ましい。具体的には、射出成形容器を作成する際の樹脂充填性が向上するため、所望形状の容器をより容易に形成することができ、成形条件の選択肢が増え、射出成形容器を作成する際の金型への負荷を低減することができる。
【0046】
ポリエチレン(C)のJIS K 6922−1に従い測定される密度は、特に柔軟性に優れる射出成形容器が得られる等の点から、好ましくは0.91〜0.94g/cm
3であり、より好ましくは0.91〜0.93g/cm
3である。
【0047】
ポリエチレン(C)は、前記MFRの条件を満たすものであれば、その分子量、融点等については特に制限されないが、樹脂を溶融して成形する際により高温で溶融する必要がなく、実用上の熱耐久性が十分に得られる等の点から、融点(JIS K 6922−2)については、好ましくは90〜115℃、より好ましくは95〜110℃である。
【0048】
ポリエチレン(C)は、従来公知の方法、好ましくは高圧ラジカル重合で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
【0049】
前記高圧ラジカル重合としては、特に制限されず、高圧下、過酸化物や酸素等のラジカル発生剤を用いて重合を行う方法等が挙げられる。該重合の条件としては、特に制限されないが、例えば、温度200〜300℃、圧力1,000〜2,000気圧の条件が挙げられる。
なお、合成の際に、エチレンとともに少量の酢酸ビニル、エチレンアクリレート等を用いた共重合体としてもよい。また、MFRは分子量調節剤である水素やメタン、エタン等の炭化水素を用いることによって調節することができる。
【0050】
ポリエチレン(C)は、大気中のCO
2量の増加を抑制し、かつ、石油資源の節約にもつながる等の点から、バイオマス由来の低密度ポリエチレンであってもよい。バイオマス由来の低密度ポリエチレンを用いると、耐ストクラ性に優れる射出成形容器を容易に得ることができる。
【0051】
本容器がポリエチレン(C)を含有する場合、本容器中に含まれる樹脂成分の合計100重量%に対する、ポリエチレン(C)の含有量は、射出成形性および耐ストクラ性によりバランスよく優れる射出成形容器が得られる等の点から、好ましくは5〜20重量%であり、より好ましくは5〜10重量%である。
【0052】
<他の成分>
本容器は、必要に応じて、前記成分(A)〜(C)以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0053】
該他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤などの安定剤、紫外線散乱剤、スリップ防止剤、防曇剤、着色剤、分散剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、柔軟剤、可塑剤、加工助剤が挙げられる。
本容器は、これらの他の成分を、それぞれ1種単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0054】
本発明によれば、透明性に優れる容器を得ることができる。このような容器は、内容物の視認性に優れる等の点から好ましい。
なお、用途により、また、意匠性などの点から、着色した容器が要求される場合があるが、この場合には、従来公知の着色剤を用いればよい。着色剤を含まない本容器は、透明性に優れるため、内容物の視認性に優れる透明の容器とすることもできるし、着色剤により、所望の色に容易に着色することもできる。
【0055】
<容器の製造方法>
本容器は、前記成分(A)を射出成形することで製造できる。
なお、前記成分(A)の他に、前記成分(B)〜(C)および/または前記他の成分を配合する場合には、これら配合成分を混合し、組成物を形成した後、または、組成物を形成しながら、該組成物を射出成形することで製造することができる。
【0056】
前記組成物を形成する方法としては特に制限されないが、前記各成分を従来公知の装置、具体的には、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ミキサー、2本ロールミル等を用いて溶融混練する方法が好ましい。
【0057】
前記組成物の、JIS K 7210(190℃、21.18N荷重)に基づいて測定したMFRは、射出成形性に優れる組成物となり、耐衝撃性などの機械的強度に優れる射出成形容器が得られる等の点から、好ましくは20〜50g/10分、より好ましくは20〜40g/10分である。
【0058】
本容器は、前記本発明の効果がより発揮される等の点から、前記頭部と胴部とが一体成形された射出成形チューブ容器であることが好ましい。本発明では、原料として、成分(A)を用いるため、特に射出成形性に優れ、一体成形でのチューブ容器の製造が可能となる。
一体成形することによって、前記頭部と胴部とを組み合わせる工程を省略することができ、複雑で煩雑な工程が不要で、コストを低減することができるとともに、異物が付着したり、前記頭部と胴部との溶着強度が低下するなどの品質低下が起こり難いため好ましい。
【0059】
このような一体成形された射出成形チューブ容器は、具体的には以下の方法で製造することができる。
具体的には、口部、肩部および胴部を一体に形成可能な射出成形金型を用い、前記成分(A)または前記組成物を射出することで、一体成形された射出成形チューブ容器を得ることができる。
【0060】
前記射出の際には、少なくとも2箇所以上の湯口を通じて、成分(A)または前記組成物をキャビティに射出することが好ましい。2箇所以上の湯口を用いることで、均一な圧力で前記組成物を射出することができるため、所望形状のチューブ容器を容易に得ることができる。
【0061】
以上のようにして得られた前記頭部と胴部との一体成形体は、胴部の頭部側とは反対側の端を溶着することにより、チューブ容器とすることができる。
溶着方法としては、ホットエアー、超音波溶着、熱シール等の従来公知の溶着方法を制限なく採用することができる。
【0062】
また、本容器は、必要により、意匠性等を向上させる等の目的で、エンボス印刷を行ってもよく、小ロット生産が可能となり、印刷版が不要であり、多彩なデザインに対応できる等の点から、デジタル印刷を行ってもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0064】
以下の試験では、下記物性を有する市販品を用いた。
・バイオマス1:MFR(ASTM D1238、190℃、21.18N);30.0g/10min、密度(JIS K 7112);915kg/m
3、バイオマス度95%以上
・バイオマス2:MFR(ASTM D1238、190℃、21.18N);8.1g/10min、密度(JIS K 7112);918kg/m
3、バイオマス度95%以上
・バイオマス3:MFR(ASTM D1238、190℃、21.18N);7.2g/10min、密度(JIS K 7112);959kg/m
3、バイオマス度94%以上
・LDPE:密度(JIS K 6922−1);915kg/m
3、MFR(JIS K 6922−1、190℃、21.18N);145g/10min、曲げ弾性率(JIS K 6922−2);90MPa
・エチレン系エラストマー:MFR(ASTM D1238、230℃、21.18N);65g/10min、密度(ASTM D1505);870kg/m
3
【0065】
[実施例1]
口部、肩部および胴部を一体に形成可能な射出成形金型を用い、射出成形機を用いて200℃で前記バイオマス1を射出成形し、胴部の頭部側とは反対側の端を350℃で溶着することにより前記頭部と胴部とが一体成形された射出成形チューブ容器を得た。
なお、得られた射出成形チューブ容器の胴部の厚さは0.7mmであり、長さは14.5cmであった。
【0066】
[実施例2〜11および比較例1〜3]
バイオマス1の代わりに、表1に記載の原料を表1に示す量で射出成形機に投入した以外は、実施例1と同様にして、射出成形チューブ容器を得た。なお、表1中の原料の欄の数値の単位は重量部である。
【0067】
<バイオマス由来の樹脂の重量比率>
バイオマス由来の樹脂の重量比率を、下記式(1)に従って算出した。結果を表1に示す。
バイオマス由来の樹脂の重量比率=容器の製造に用いたバイオマス由来の樹脂の重量×該樹脂のバイオマス度(%)/容器の製造に用いた樹脂の合計重量・・・(1)
【0068】
<MFR>
表1に記載の原料(組成物)を用い、JIS K 7210に基づいて、190℃および荷重21.18Nの条件でMFRを測定した。結果を表1に示す。
【0069】
<充填圧力>
前記射出成形チューブ容器を形成する際に、金型を約0.6秒で満たすのに必要な樹脂充填圧力(シリンダ内樹脂圧力)を、射出成形機内の圧力センサを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0070】
<透明性>
得られた射出成形チューブ容器の中央部分を1cm×5cmに切り抜き、5個の検体を作成した。切り抜いた検体を用い、分光光度計(V−650(日本分光(株)製)にてヘイズを測定し、平均ヘイズ値を算出した。得られた平均ヘイズ値を基に、以下の評価基準に基づいてチューブ容器の透明度を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
S: 平均ヘイズ値 0%以上15%未満
A: 平均ヘイズ値 15%以上30%未満
B: 平均ヘイズ値 30%以上45%未満
C: 平均ヘイズ値 45%以上60%未満
D: 平均ヘイズ値 60%以上
【0071】
<柔軟性>
得られた射出成形チューブ容器を用い、本発明に関係のない被検者10人によるスクイズ試験を行った。
具体的には、射出成形チューブ容器を、内容物を押し出すように押しつぶした時に、押しつぶすことが容易か否かを被検者10人に判断してもらった。
実施例1〜11および比較例3で得られたチューブ容器を用いた場合には、10人の被験者全てが押しつぶすことが容易であると感じ(「可」とも評価する。)、比較例1および2で得られたチューブ容器を用いた場合には、8人以上の被験者が押しつぶすことが困難であると感じた(「不可」とも評価する。)。
【0072】
<耐ストレスクラッキング性>
実施例および比較例で得られたチューブ内に1%塩化ベンザルコニウム水溶液200mlを入れ、キャップをした後、2週間キャップを上にして、恒温槽(40℃、90%RH)中に立てた後、恒温槽から取り出して、チューブの割れを目視に手確認した。10本のチューブを用いて試験し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
S:10本のチューブのいずれにも割れは確認されなかった。
A:1〜2本のチューブに割れが確認された。
B:3〜5本のチューブに割れが確認された。
C:6〜9本のチューブに割れが確認された。
D:10本のチューブの全てが割れた。
【0073】
【表1】