【実施例】
【0049】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
1.実験材料及び実験方法
1−1.ショウジョウバエのストック
ショウジョウバエのストックは、全て、23℃又は25℃で、標準的な餌(グルコース、コーンミール、及び乾燥酵母含有)で飼育及び交配した。
【0051】
GMR-Gal4の導入遺伝子を有するトランスジェニックショウジョウバエは、京都工芸繊維大の山口政光教授から、UAS-EGFP (#6874)、及びelav-Gal4 (#8765)を有するトランスジェニックショウジョウバエは、ブルーミントンショウジョウバエストックセンター(Bloomington Drosophila Stock Center)から入手した。FUSのショウジョウバエのホモログであるcazに変異を有するショウジョウバエ(caz
2変異体)はドイツ、マックスプランク研究所のErik Storkebaum博士から入手した。
【0052】
なお、GMRはショウジョウバエの複眼における組織特異的プロモーターであり、elavはショウジョウバエの神経系に特異的に発現する遺伝子のプロモーター部位である。UASはGal4の結合によってその下流の転写が活性化される配列である。
【0053】
1−2.G4C2リピート配列コンストラクト及びトランスジェニックショウジョウバエの作製
異常伸長G4C2リピート配列を複眼において発現するトランスジェニックショウジョウバエをGal4-UASシステムを使用して樹立した。具体的な作製手順は以下に示す通りである。
【0054】
5'末端側がEagI認識配列、3'末端側がPspOMI認識配列で挟まれた人工合成された(G4C2)
50をT-ベクターpMD20にサブクローンした。繰り返し数を増やしたG4C2リピート配列を作製するために、pMD20-(G4C2)
50プラスミドをEagI及びPspOMIで処理し、(G4C2)
50インサートフラグメントを得て、EagIで線状化したpMD20-(G4C2)
50プラスミドベクター内にライゲーションした。ライゲーションされたプラスミドにおけるG4C2リピート配列は、理論的に50%の確率で、GGGGCCが100個繰り返し連結していることになる。得られたプラスミドをEcoRI及びHindIIIで処理し、精製した後に、pcDNA
TM3.1/myc-His(-)A vector (Invitrogen)にサブクローンした。サブクローンされたpcDNA
TM3.1/myc-His(-)A-(G4C2)
nプラスミドを増幅し、配列決定した。この段階で、偶発的に、(G4C2)
9からなるG4C2リピート配列を含むpcDNA
TM3.1/myc-His(-)A-(G4C2)
9プラスミドが得られた。再度、pcDNA
TM3.1/myc-His(-)A-(G4C2)
nプラスミドをEcoRI及びXbaIで処理し、精製した後に、ショウジョウバエpUAST vectorにサブクローンした。これらのコンストラクトは、G4C2リピート配列の上流に開始コドン(ATG)を有していない。これらのpUAST-(G4C2)
nプラスミドをrecombinase-mutated SURE2 E.coli株(Agilent Technologies)に導入し、増幅させた。
【0055】
Geteway Vector Conversion System (Invitrogen)を用いて、pUAST-FUSプラスミド、pUAST-ILF2プラスミド、及びpUAST-hnRNPKプラスミドを作製した。ヒトFUS cDNA(配列番号2)、ヒトILF2 cDNA(配列番号3)、及びヒトhnRNPK cDNA(配列番号4)をpENTR
TM/D-TOPO plasmid (Invitrogen)にサブクローンした。GatewayデスティネーションベクターpUAST-DESTを作製するために、Gateway cassette A sequences (Invitrogen)をpUASTベクターに挿入した。前記プラスミド、pUAST-DESTベクター、制限エンドヌクレアーゼ、及びリガーゼを用いて、pUAST-FUSプラスミド、pUAST-ILF2プラスミド、及びpUAST-hnRNPKプラスミドを得た。また、ヒトFUSタンパク質のアミノ酸配列305位、341位、359位、及び368位のフェニルアラニンをロイシンに変異させるようにDNA配列を変異させ、FUS RRM変異(FUS-RRMmut)コンストラクト(pUAST-FUS-RRMmut)も作製した。得られた各プラスミドDNAをPowerPrep HP Plasmid Maxiprep System (OriGene)を用いて精製し、G4C2リピート配列におけるGGGGCCの繰り返し数を求めた。なお、pUAST-(G4C2)
89プラスミドについては、EZ-Tn5
TM <KAN-2> Insertion Kit (Epicentre)を用いた転写因子の挿入変異の誘発後、挿入配列を利用して配列決定及びGGGGCCの繰り返し数を決定した。
【0056】
前記各pUASTベクターが導入されたトランスジェニックショウジョウバエを、標準的な方法にて作製した。pUAST-(G4C2)
nのトランスジェニックショウジョウバエをUAS-(G4C2)
nとし、UAS-(G4C2)
89はGMR-Gal4系統と交配した時の発現量が多いものを(G4C2)
89(S)、少ないものを(G4C2)
89(W)とした。また、Gal4系統とUAS系統を交配させることにより、所望の組織で導入遺伝子が発現するトランスジェニックショウジョウバエを作製した。
【0057】
1−3.Repeat-primed PCR分析
FastDNA Green SPIN Kit (MP-Biomedicals)を用いてトランスジェニックショウジョウバエからゲノムDNAを単離した。ゲノムDNA中のG4C2リピート配列について、文献(Renton, A.E. et al. A hexanucleotide repeat expansion in C9ORF72 is the cause of chromosome 9p21-linked ALS-FTD. Neuron 72, 257-68 (2011).)に記載の方法に従って、Repeat-primed PCRを行った。また、Peak Scanner
TM software v1.0 (Applied Biosystems)を備えたABI 3130xl genetic analyzer (Applied Biosystems)にて、PCRフラグメントの蛍光フラグメント長分析(Fluorescence fragment length analysis)を行った。これによって、導入されたG4C2リピート配列におけるGGGGCCの繰り返し数を求め、(G4C2)
9、(G4C2)
50、及び(G4C2)
89からなるG4C2リピート配列が、それぞれ導入されていることが確認された。
【0058】
1−4.ショウジョウバエの複眼のイメージング、及び当該複眼の色素異常とサイズの定量
CCDカメラPD21(Olympus)を備える実体顕微鏡SZX10(Olympus)を用いて、ショウジョウバエの複眼の光学顕微鏡像を取得した。ショウジョウバエの複眼の色素異常とサイズの定量は、文献(Saitoh, Y. et al. p62 Plays a Protective Role in the Autophagic Degradation of Polyglutamine Protein Oligomers in Polyglutamine Disease Model Flies. Journal of Biological Chemistry 290, 1442-1453 (2015).)に記載の方法に従て行った。遺伝子型毎に少なくとも10個の複眼を分析し、結果を平均値±SEMとして表した。
【0059】
1−5.卵から成虫までの生存率分析
第二染色体バランサーであるCyOを有し、ヘテロ接合型のelav-Gal4ドライバーを有する雌ショウジョウバエと、ホモ接合型のUAS-(G4C2)
nを有する雄ショウジョウバエとを交配した。F1では、神経細胞においてG4C2リピート配列を発現するショウジョウバエ(即ち、elav-Gal4ドライバー及びUAS-(G4C2)
nを有するショウジョウバエ)が生まれた。G4C2リピート配列を発現するショウジョウバエはCyOバランサーを有しておらず(即ち、表現型が[Cy
-])、G4C2リピート配列を発現しないショウジョウバエはCyOバランサーを有する(即ち、表現型が[Cy
+])。
【0060】
卵から成虫になるまでの孵化率を以下の方法で算出した:表現型が[Cy
-]のショウジョウバエの数を表現型が[Cy
+]のショウジョウバエの数で除し、更に100を掛けた相対値を卵から成虫までの生存率(%)として算出した。
【0061】
1−6.クライミングアッセイを利用した運動能力分析
高さ150 mm、内径22 mmのガラスバイアルに、10〜20個体の雄ショウジョウバエを個体に刺激を与えないように入れた。5分間静置した後に、ガラスバイアルの底部を穏やかにタップし、10秒間でショウジョウバエがガラスバイアルの壁を昇って到達した高さをデジタルビデオカメラで記録し、高さが2 cm未満を0、高さが2〜3.9 cmを1、高さが4〜5.9 cmを2、高さが6〜7.9 cmを3、高さが8〜9.9 cmを4、高さが10 cm以上を5としてスコア化した。本実験は、20秒間の間隔をあけて5回実施し、結果を平均値±SEMとして表した。
【0062】
1−7.寿命分析
1バイアルあたり約30個体のショウジョウバエに羽化後から標準餌を与えて飼育し、寿命分析を行った。2又は3日毎に、新鮮な餌が入ったバイアルに移し、その時に死亡していた個体数を計測した。ショウジョウバエの飼育は全個体が死滅するまで行った。各グループについて、3バイアル以上を用いて実験を行い、統計解析を行った。
【0063】
1−8.蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
3齢幼虫を氷冷PBS中で解剖により複眼成虫原基を取り出し、4%パラホルムアルデヒド(pH7.0)を含むPBS(RNase-free)で30分間固定し、更に100%メタノールで脱水処理した。固定サンプルを、75v/v%、50v/v%、及び25v/v%のエタノールを含むPBSで再水和後、PBS及び蒸留水(ジエチルピロカーボネート処理した蒸留水)でリンスした。次いで、0.2N HClを含む蒸留水を用いて、室温で20分間処理し、蒸留水でリンスした。更に、サンプルを0.2% Triton X-100を含むPBSで処理し、PBSで5分間リンスした後に、4%パラホルムアルデヒド(pH7.0)を含むPBSで20分間後固定した。その後、PBSを用いて5分間の洗浄を2回行い、2 mg/mLのグリシンを含むPBS内での15分間インキュベートを2回行った。アセチル化処理の後に、ハイブリダイゼーションバッファー(50%のホルムアミド、2×SSC、0.2mg/mLの酵母tRNA、及び0.5mg/mLのヘパリンを含有)内で、37℃で1時間インキュベートした。その後、サンプルを5'末端Alexa594標識(GGCCCC)
4 LNA(locked nucleic acid)プローブ又はAlexa488標識(CCGGGG)
4 LNAプローブ(5nM)と共に、ハイブリダイゼーションバッファー中で80℃、終夜インキュベートした。なお、これらのLNAプローブは、GeneDesign Incによって合成されたものを使用した。ハイブリダイゼーション後に、80℃の4×SSC内での5分間の洗浄を1回、80℃の2×SSC及び50%ホルムアミドを含む溶液内での20分間の洗浄を3回、80℃の0.1×SSC内での40分間の洗浄を3回、及び室温のPBT(0.5% Triton X-100を含むPBS)内での洗浄を1回行った。その後、サンプルをDAPIにて核染色し、SlowFadeゴールド退色防止剤(Thermo Fisher Scientific)を用いてスライドグラスにマウントし、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Zeiss LSM710)にて観察した。
【0064】
1−9.免疫蛍光染色
3齢幼虫を氷冷PBS中で解剖により複眼成虫原基を取り出し、4%パラホルムアルデヒド(pH7.0)を含むPBSで30分間固定した後に、PBTで3回洗浄した。次いで、サンプルを5%ヤギ血清を含むPBTでブロックングした後に、一次抗体としてラットモノクローナル抗poly(GR)抗体(clone 5A2, Millipore MABN778)、ウサギポリクローナル抗poly(GP)抗体(Cosmo Bio CAC-TIP-C9-P01)、又はウサギポリクローナル抗poly(GA)抗体(Novus Biologicals NBP2-25018)と共に4℃で終夜インキュベートした。PBTで3回洗浄した後に、二次抗体として、Alexa 633標識抗ラットIgG抗体(Invitrogen A-21094)、又はAlexa 488標識抗ウサギIgG抗体(Invitrogen A-11008)と共にインキュベートした。その後、PBTで3回洗浄した後に、DAPIにて核染色し、SlowFadeゴールド退色防止剤を用いてスライドグラスにマウントし、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Zeiss LSM710)にて観察した。
【0065】
1−10.ポリ(GP)タンパク質の測定
G4C2リピート配列、或は(G4C2)
89と共にEGFP、FUS、又はFUS-RRMmutを発現している5日齢のショウジョウバエの頭部を回収し、-80℃で保存した。サンプルを文献(Tran, H. et al. Differential Toxicity of Nuclear RNA Foci versus Dipeptide Repeat Proteins in a Drosophila Model of C9ORF72 FTD/ALS. Neuron 87, 1207-14 (2015).)に記載の方法に従って調製した。Poly(GP)は、文献(Su, Z. et al. Discovery of a biomarker and lead small molecules to target r(GGGGCC)-associated defects in c9FTD/ALS. Neuron 83, 1043-50 (2014).)に記載のサンドイッチELISA法によって測定した。データは、EGFPと(G4C2)
89を発現している場合の値によって標準化した。
【0066】
1−11.DPRsの凝集体数の定量
ZENイメージンフソフトウェア(Zeiss)を使用して、ショウジョウバエの複眼原基におけるDPRsの凝集体数を定量的に測定した。手順は以下に示す通りである。先ず、DAPI染色によって複眼原基の後端から2列と3列の発生途中の13個眼の光受容体ニューロンを選択した。次いで、直径が2 μmよりも大きく且つ細胞質に局在するDPRsの凝集体数を計測した。各遺伝子型について10個以上の複眼原基について分析し、結果を平均値±SEMとして表した。
【0067】
1−12.統計解析
全ての統計解析は、public domain R program (http://www.r-project.org/)又はGraphPad Prism 6 softwareを用いて行った。
【0068】
2.実験結果
2−1.異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエの特性
2−1−1.複眼の状態
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
50、(G4C2)
89(W)、及び(G4C2)
89(S))を発現するトランスジェニックショウジョウバエの複眼を光学顕微鏡にて観察した結果を
図1に示す。また、比較として、EGFP又は正常なG4C2リピート配列((G4C2)
9)を発現するトランスジェニックショウジョウバエの複眼を光学顕微鏡にて観察した結果も併せて
図1に示す。
【0069】
図1から分かるように、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエでは、強度の複眼神経変性が認められ、特に(G4C2)
50を発現する場合では25℃での飼育では死滅していた。一方、EGFP又は正常なG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエでは、複眼に異常は認められなかった。
【0070】
即ち、本結果から、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエでは、ALS/FTDの代表的な症状である神経変性を確認できた。
【0071】
2−1−2.成虫までの生存率及び成虫の寿命
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
50、(G4C2)
89(W))又は正常なG4C2リピート配列((G4C2)
9)を発現するトランスジェニックショウジョウバエについて、成虫までの生存率を評価した結果を
図2Aに示し、成虫の寿命を評価した結果を
図2Bに示す。これらの結果から、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエは、正常なG4C2リピート配列を発現する場合に比して、成虫までの生存率が低く、成虫の寿命が1/4〜1/5程度にまで短縮されていることが明らかとなった。
【0072】
2−1−3.運動能力
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
50、(G4C2)
89(W))又は正常なG4C2リピート配列((G4C2)
9)を発現するトランスジェニックショウジョウバエについて、クライミングアッセイを行った結果を
図3に示す。この結果から、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエは、正常なG4C2リピート配列を発現する場合に比して、クライミングアッセイにおけるスコアが著しく低下していることが分かった。特に(G4C2)
89を発現するトランスジェニックショウジョウバエでは加齢に伴ってスコアが有意に低下していた。即ち、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエは、ALS/FTDの代表的な症状である進行性運動障害を呈することが確認された。
【0073】
2−1−4.異常伸長G4C2リピート配列の転写及びRAN翻訳
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
89(S))を発現するトランスジェニックショウジョウバエの複眼において、当該リピート配列から転写されたRNA、及びDPRs(ポリ(GR)、ポリ(GA)、及びポリ(GP))をFISH及び免疫染色にて分析した結果を
図4に示す。
【0074】
この結果、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエでは、異常伸長したG4C2リピート配列から転写されたRNAが発現しており、更に当該RNAのRAN翻訳産物であるDPRs(ポリ(GR)、ポリ(GA)、及びポリ(GP))も凝集体を伴って生成していることが確認された。
【0075】
2−1−5.まとめ
異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエでは、G4C2リピート配列が転写されたRNA及び当該RNAのRAN翻訳産物であるDPRsの凝集体が認められ、更に神経変性及び運動障害を呈しており、寿命も短縮していた。これらの事象は、ALS/FTDにおいて典型的に認められるものであり、当該トランスジェニックショウジョウバエは、ALS/FTDのモデル動物として利用できることを示している。
【0076】
2−2.異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエに対してG4C2リピート配列に結合可能なタンパク質が及ぼす影響
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
89(S))又はEGFPと共に、FUS、ILF2(Interleukin enhancer-binding factor 2)、又はhnRNPK(Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein K)を発現するトランスジェニックショウジョウバエの複眼を光学顕微鏡にて観察した結果を
図5に示す。
【0077】
FUS、ILF2、及びhnRNPKは、G4C2リピート配列から転写されたRNAに対する結合能があることが報告されている。FUSは異常伸長したG4C2リピート配列による複眼神経変性を抑制していた。一方、ILF2、及びhnRNPKは異常伸長したG4C2リピート配列による複眼神経変性を抑制していなかった。即ち、この結果から、異常伸長したG4C2リピート配列に起因する症状の改善効果は、FUSに特有のものであることが明らかとなった。
【0078】
2−3.異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエに対してFUSが及ぼす影響
2−3−1.運動能力
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
50)と共に、FUS又はEGFPを神経系で発現するトランスジェニックショウジョウバエについて、クライミングアッセイを行った結果を
図6に示す。また、また、比較として、EGFPと共にFUSを発現するトランスジェニックショウジョウバエの結果についても
図6に示す。
【0079】
図6に示すように、異常伸長したG4C2リピート配列と共にFUSを発現する場合には、運動障害を効果的に抑制できていた。
【0080】
2−3−2.複眼の状態
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
89(S))と共に、FUS、FUS-RRMmut、又はEGFPを複眼で発現するトランスジェニックショウジョウバエについて、複眼を光学顕微鏡にて観察した結果及び複眼のサイズを測定した結果を
図7に示す。また、比較として、EGFPと共に、FUS、FUS-RRMmut、又はEGFPを発現するトランスジェニックショウジョウバエの結果についても
図7に示す。
【0081】
この結果、異常伸長したG4C2リピート配列と共にFUSを発現する場合には、複眼神経変性を効果的に抑制できていた。また、FUSのRNA認識モチーフ領域に変異を加えたFUS-RRMmutを発現する場合では、複眼神経変性を抑制できていなかった。即ち、これらの結果から、FUSは、G4C2リピート配列から転写されたRNAに結合することによって、神経変性を抑制していることが明らかとなった。
【0082】
2−3−3.異常伸長G4C2リピート配列の転写及びRAN翻訳
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
89(S))と共に、FUS又はEGFPを発現するトランスジェニックショウジョウバエの複眼において、DPRs(ポリ(GR)、ポリ(GA)、及びポリ(GP))を蛍光免疫染色した結果を
図8Aに示す。また、当該トランスジェニックショウジョウバエにおいて、各DRPsの凝集体数を測定した結果についても、
図8Bに示す。更に、異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
89(S))と共に、FUS、FUS-RRMmut、又はEGFPを発現するトランスジェニックショウジョウバエにおけるポリ(GP)量をELISA法にて測定した結果も
図8Cに示す。
【0083】
この結果から、異常伸長したG4C2リピート配列を発現するトランスジェニックショウジョウバエにおいてFUSを発現させることによって、DPRsの凝集体数、及びポリ(GP)の量が低減されていることが明らかとなった。
【0084】
2−3−4.ショウジョウバエFUSホモログcaz変異体の影響
異常伸長したG4C2リピート配列((G4C2)
89(S))又はEGFPを発現し、且つcaz
2変異の導入されたトランスジェニックショウジョウバエ(caz
2/+)について、複眼を光学顕微鏡にて観察した結果及び眼のサイズを測定した結果を
図9に示す。また、比較のために、caz
2変異を導入していないトランスジェニックショウジョウバエ(+/+)の結果についても、
図9に示す。
【0085】
この結果、ショウジョウバエFUSホモログであるcaz変異を導入すると複眼神経変性が増悪することが確認された。