(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959634
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】加飾成形品
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20211021BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
B44C1/17 E
B32B27/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-150188(P2017-150188)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-25856(P2019-25856A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】片山 就介
【審査官】
川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−101662(JP,U)
【文献】
特開2012−125956(JP,A)
【文献】
特開2011−177919(JP,A)
【文献】
実開昭63−088498(JP,U)
【文献】
特開平05−162497(JP,A)
【文献】
特開2004−351722(JP,A)
【文献】
特開2013−078909(JP,A)
【文献】
特開2003−322715(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2006−0099943(KR,A)
【文献】
特開2000−190636(JP,A)
【文献】
特開2005−067016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16−1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の表面に両面転写箔が転写された加飾成形品であって、
前記両面転写箔は、前記成形品の表面上に、少なくとも接着層、裏面絵柄層、表面絵柄層、保護層が順番に積層された状態であり、
前記成形品の裏面には、前記両面転写箔の裏面絵柄層の絵柄に対応した凹凸が形成されており、
前記成形品は透明であり、前記加飾成形品の表面側から前記表面絵柄層が視認可能であり、裏面側から前記両面転写箔の裏面絵柄層の絵柄と前記凹凸が重なった状態で視認可能であり、
前記両面転写箔に開口が設けられており、前記成形品には、前記両面転写箔の開口に合わせた窓部が設けられており、前記窓部は、前記成形品の表面には窪みとして形成され、前記成形品の裏面には前記窪みに対応する突部として形成されていることを特徴とする、加飾成形品。
【請求項2】
前記両面転写箔は、前記裏面絵柄層と前記表面絵柄層との間に中間層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記表面絵柄層および前記裏面絵柄層には、模様、文字、数字から選択された少なくとも1つの絵柄が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の加飾成形品。
【請求項4】
本体および蓋から構成される容器の蓋であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な成形品の表面に両面転写箔を転写した加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品などを加飾する手段として、低コストで一度に大量に製造することができる転写箔が用いられている。転写箔は、基材上に、剥離層、絵柄層、隠蔽層、蒸着層などを積層し、さらに、成形品に転写するための接着層を設けて形成されている。そして、転写箔は、前記接着層を用いて被転写物に転写され、前記基材が転写箔から剥離されると転写箔によって被転写物は加飾された状態となる(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2のような従来の転写箔は、被転写物の表面だけを加飾することを目的としており、転写箔によって被転写物の表面を絵柄、文字などによって加飾するように構成されている。そのため、被転写物が透明な成形品の場合、透明な成形品の裏面には、転写箔の接着層、隠蔽層、などが見えており、転写物の絵柄、文字などは認識できない状態、あるいは、反転した絵柄、文字などが薄らと見える状態であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−88498号公報
【特許文献2】特開2007−168079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被転写物が透明な成形品であっても、裏面から見ることが無ければ、一般的な転写箔でも特に問題は無いが、例えば、前記成形品がコンパクトの蓋の場合、コンパクトを開けた状態では、蓋の裏面が見える状態で使用されることになり、この場合、転写箔の接着層、隠蔽層、蒸着層などの何も加飾が施されていない面、あるいは、転写箔の絵柄などが反転した状態が見えるだけであり、加飾性を有するものではなく、使用者に良い印象を与えるものでは無かった。そのため、成形品の裏面を加飾するためには、さらなる加飾手段を用いる必要があった。1つの転写箔で両面を加飾することも可能ではあるが、成形品の透明な層を介して見ることになるので場合によっては加飾性が不足する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような従来の問題を解決し、1つの転写箔で透明な成形品の両面を同時に加飾し、さらに、成形品の裏面の加飾性を高めることができる加飾成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加飾成形品は、成形品の表面に両面転写箔が転写された加飾成形品であって、前記両面転写箔は、前記成形品の表面上に、少なくとも接着層、裏面絵柄層、表面絵柄層、保護層が順番に積層された状態であり、前記成形品の裏面には、前記両面転写箔の裏面絵柄層に設けられている絵柄に対応する凹凸が形成されており、前記成形品は透明であり、前記加飾成形品の表面側から前記表面絵柄層が視認可能であり、裏面側から前記両面転写箔の裏面絵柄層の絵柄と前記凹凸が重なった状態で視認可能であることを特徴とする。
【0008】
前記両面転写箔は、前記裏面絵柄層と前記表面絵柄層との間に中間層が設けられている。
【0009】
前記表面絵柄層および前記裏面絵柄層には、模様、文字、数字から選択された少なくとも1つが含まれている。
【0010】
前記両面転写箔に開口を設けることも可能である。
【0011】
前記加飾成形品を、本体および蓋から構成される容器の蓋として用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加飾成形品は、成形品の表面に両面転写箔が転写された加飾成形品であって、前記両面転写箔は、前記成形品の表面上に、少なくとも接着層、裏面絵柄層、表面絵柄層、保護層が順番に積層された状態であり、前記成形品の裏面には、前記両面転写箔の裏面絵柄層に設けられている絵柄に対応する凹凸が形成されており、前記成形品は透明であり、前記加飾成形品の表面側から前記表面絵柄層が視認可能であり、裏面側から前記両面転写箔の裏面絵柄層の絵柄と前記凹凸が重なった状態で視認可能であることにより、1つの両面転写箔で加飾成形品の表面および裏面を加飾すると同時に、前記加飾成形品の裏面を、絵柄層および凹凸によって立体感のある装飾を施すことが可能となり、よりデザイン性の高い加飾成形品を提供することができるようになる。
【0013】
前記両面転写箔が、前記裏面絵柄層と前記表面絵柄層との間に中間層が設けられていることにより、前記裏面絵柄層および前記表面絵柄層を反対面から見た時に透けない状態にすることができ、前記裏面絵柄層および前記表面絵柄層の絵柄、色などを自由に組み合わせることができるようになる。
【0014】
前記両面転写箔に開口が設けられていることにより、前記加飾成形品の内部を外から見ることができるようになる。
【0015】
前記加飾成形を、本体および蓋から構成される容器の蓋として用いることにより、蓋を開けた際に、蓋の裏面にも従来にはない装飾を施すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の加飾成形品である蓋を用いた容器の蓋を開いた状態の斜視図である。
【
図2】本発明の加飾成形品である蓋を用いた容器の蓋を閉じた状態の斜視図である。
【
図3】両面転写箔の平面図であり、(a)は表面から見た図、(b)は裏面から見た図である。
【
図6】中間層を設けた形態の両面転写箔の断面図である。
【
図7】中間層を設けた形態の両面転写箔を転写した蓋の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の加飾成形品は、両面転写箔および成形品からなり、前記成形品の表面に両面転写箔を転写したものである。本実施形態では、前記加飾成形品を、容器10の蓋1の形状に加工した形態を用いて以下に詳しく説明する。
図1,2が、本発明の加飾成形品である蓋1を用いた容器10の斜視図である。
【0018】
本発明の加飾成形品である蓋1は、蓋の形状に形成された樹脂からなる透明な成形品2の表面に両面転写箔3を転写したものである。
図1に示すように、前記蓋1は、化粧料容器10の容器本体4にヒンジ5を用いて開閉可能にヒンジ係合されており、前記蓋1を閉じた時に、前記蓋1の表面に前記両面転写箔3が接着された状態となっている。
【0019】
前記両面転写箔3は、
図4の断面図に示すように、基材36上に、保護層31、表面絵柄層32、裏面絵柄層34、接着層35を積層して形成しており、前記成形品2の表面に転写した後、前記基材36を除去することで、前記成形品2の表面に前記両面転写箔3が前記接着層35によって接着された状態となる。前記両面転写箔3の各層の材質等は特に限定するものではなく、従来の転写箔に用いられている材質を用いることができ、各層を複数の層とする、または、各層の間にさらなる層を設けることも可能である。
【0020】
前記表面絵柄層32は、前記蓋1の表面に表れる絵柄が形成されており、本実施形態では、
図3(a)に示すように、ストライプの模様と文字「cosmetic」が形成されている。前記裏面絵柄層34は、前記蓋1の裏面に表れる絵柄が形成されており、本実施形態では、
図3(b)に示すように、花、三角、丸が形成されている。前記表面絵柄層32および前記裏面絵柄層34の絵柄は、模様、文字、数字などが可能であり、複数層の構成とすることも可能である。
【0021】
前記接着層35は、前記成形品2の材質などに合わせて使用する材質などを決定する。前記保護層31は、前記両面転写箔3の表面を保護する層であり、剥離層を含むことも可能である。さらに、前記両面転写箔3には、蒸着層など、他の層を設けることも可能である。
【0022】
前記両面転写箔3には、
図3に示すように、矩形の開口37が設けられている。前記両面転写箔3を前記成形品2に転写すると、
図2に示すように、前記開口37は前記蓋1の窓として機能し、前記開口37を通じて、前記容器10内部の化粧料などを外から見ることができるようになる。
【0023】
前記両面転写箔3が前記成形品2に転写されて形成されている前記蓋1は、
図5の断面図に示すように、前記成形品2の上に、前記両面転写箔3の接着層35、裏面絵柄層34、表面絵柄層32、保護層31が順に積層された状態となっている。前記両面転写箔3の前記成形品2への転写方法は特に限定するものではなく、従来の転写箔の転写方法を用いることができる。
【0024】
前記成形品2は前記容器10の蓋の形状に形成された透明な樹脂成形品であり、ヒンジ5が一体成形されている。前記成形品2の材質は樹脂に限定するものではなく、透明であればよい。また、前記成形品2は無色透明である必要は無く、前記裏面絵柄層34が視認可能な透明であれば、着色されていても良い。これにより、前記蓋1の形態である加飾成形品は、表面側から前記表面絵柄層32の絵柄が視認可能な状態であり、裏面側から前記裏面絵柄層34の絵柄が視認可能な状態となり、表面と裏面で異なる絵柄を表現することができるようになる。
【0025】
前記成形品2の裏面には、前記両面転写箔3の裏面絵柄層34の絵柄に対応した凹凸が設けられている。本実施形態では、前記裏面絵柄層34の花については、
図1,5に示すように、花の輪郭に合わせて全体が突出し、中央が少し窪んでいる花の形の凹凸21を形成することで、花の模様に立体感を与えることができる。前記裏面絵柄層34の丸については、
図1,5に示すように、円柱の凸部22が設けられ、丸が手前に飛び出ているように見える効果を与える。前記裏面絵柄層34の三角については、
図1,5に示すように、三角錐の凸部23が設けられている。前記裏面絵柄層34の三角は、三角錐の凸部23の3つの斜面に合わせて、三角の中の3つのエリアを、色を変える、または、色の濃淡を変えることによって、前記三角錐がより立体的に見える効果を奏することができる。
【0026】
前記成形品2の凹凸は、前記裏面絵柄層34の模様、文字、数字などに合わせて様々な形状が可能である。例えば、前記裏面絵柄層34の丸については、円柱22ではなく、半球状に突出させることも可能である。その他に、絵柄の中に文字および数字が含まれる場合、文字および数字を突出させる、または、刻み込むことも可能であり、絵柄にラインが含まれる場合はラインに合わせて溝を設けることも可能である。また、前記成形品2の裏面の一部だけでなく全面に、前記裏面絵柄層34の絵柄に合わせて凹凸を設けて、平坦な部分が無い状態とすることも可能である。
【0027】
前記成形品2には、さらに、前記両面転写箔3の開口37に合わせて、
図1,2に示すように、窓部24が設けられており、前記窓部24は、前記成形品2の表面では窪みであり、裏面では窪みに対応する突部となっている。前記窓部24と前記開口37によって、前記容器1内の化粧料などを外から見ることができるようになる。
【0028】
このようにして形成された加飾成形品である蓋1を用いた容器10について図面を用いて説明する。前記容器10は化粧料を収容するコンパクトの形態であり、前記蓋1および容器本体4から構成され、前記蓋1が前記容器本体4にヒンジ5によって開閉可能にヒンジ係合されている。
図1に示すように、前記容器本体4の内部には、化粧料、化粧用具などを収容する2つの収容部6が設けられている。
図2に示すように、前記蓋1を閉じると、前記容器10の表面には、前記両面転写箔3の表面絵柄層32の絵柄が表れ、前記蓋1を開くと、
図1に示すように、前記蓋1の裏面には前記両面転写箔3の裏面絵柄層34の絵柄が表れ、前記成形品2の凹凸との相乗効果によって、立体的な絵柄が表れており、従来にはない優れた視覚効果を奏している。
【0029】
本実施形態では、前記容器10の蓋1の表面を加飾成形品の表面として説明してきたが、前記蓋1の裏面を加飾成形品の表面とすることも可能である。この場合、前記蓋1の裏面に前記両面転写箔3が転写された状態となり、前記蓋1の表面に凹凸が設けられることになる。これにより、前記容器10は前記蓋1を閉じた時の表面に凹凸が設けられた状態となり、前記容器10の蓋1の表面に前記両面転写箔3の裏面絵柄層34との相乗効果による視覚効果をもたらすことができるようになる。
【0030】
加飾成形品は、前記両面転写箔3の裏面絵柄層34および表面絵柄層32の色、材質、厚みなどによって、絵柄が反対面から透けて見える場合が有る。前記両面転写箔3’の絵柄が反対面から透けて見えることを防止する方法として、中間層33を設けた両面転写箔3’を加飾成形品に用いることも可能である、
【0031】
前記両面転写箔3’は、
図6,7に示すように、前記両面転写箔3’の裏面絵柄層34と表面絵柄層32との間に、隠蔽層として機能する中間層33を設けている。前記両面転写箔3’のその他の構成は前記両面転写箔3と同じであることから詳細な説明は省略する。前記両面転写箔3’は、前記中間層33の色、材質、厚みなどを、前記裏面絵柄層34および前記表面絵柄層32に合わせて選択することで、前記表面絵柄層32および前記裏面絵柄層34の絵柄を反対面から見た時に透けない状態にすることができる。
【0032】
このように、隠蔽層として機能する中間層33を設けた前記両面転写箔3’を転写して加飾成形品である蓋1’を得ることによって、前記両面転写箔3’の裏面絵柄層34および表面絵柄層32の絵柄、色などを自由に選択することが可能となり、加飾成形品をより加飾性の高いものとすることができる。
【0033】
本発明の加飾成形品は、蓋の形態以外も可能であり、例えば、容器の本体、筒状の容器の側面、袋の側面、カードなど、様々な形態とすることができる。これにより、1つの両面転写箔によって様々な成形品の両面を加飾することができ、さらに、一面には絵柄と凹凸の組み合わせによる立体的な視覚効果をもたらすことができるようになる。
【符号の説明】
【0034】
1,1’ 蓋
2 成形品
3,3’ 両面転写箔
4 容器本体
5 ヒンジ
6 収容部
10 容器
21 花の形の凹凸
22 円柱の凸部
23 三角錐の凸部
24 窓部
31 保護層
32 表面絵柄層
33 中間層
34 裏面絵柄層
35 接着層
36 基材
37 開口