【実施例】
【0049】
(試験例1.腸内細菌及び細菌由来の小胞の体内吸収、分布及び排泄様相の分析)
腸内細菌と細菌由来の小胞が胃腸管を通じて全身的に吸収されるかを評価するために次のような方法で実験を行った。マウスの胃腸に蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来の小胞をそれぞれ50μgの容量で胃腸管に投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。マウスの全体イメージを観察した結果、
図1aに示したように、細菌の場合には全身的に吸収されなかったが、細菌由来の小胞の場合には、投与5分後に全身的に吸収され、投与3時間後には、膀胱で蛍光が濃く観察されて、小胞が泌尿器系に排泄されることが分かった。小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった。
【0050】
また、腸内細菌と腸内細菌由来の小胞が全身的に吸収された後、多くの臓器に浸潤された様相を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来の小胞を上記の方法のように投与した後、投与12時間後に血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉を採取した。採取した組職で蛍光を観察した結果、
図1bに示したように、細菌由来の小胞が血液、心臓、肺、肝臓、脾臓、脂肪、筋肉、腎臓に分布したが、細菌は吸収されないことが分かった。
【0051】
(試験例2.臨床サンプルで細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
血液、小便、大便又は唾液などの臨床サンプルを先に10mlチューブに入れ、遠心分離法(3,500×g、10min、4℃)で浮遊物を沈めて上澄液のみを新しい10mlチューブに移した。0.22μmのフィルタを用いて細菌及び異物を除去した後、遠心濾過機(centrifugal filters 50kD)に移し、1500×g、4℃で15分間遠心分離して50kDより小さい物質は捨てて10mlまで濃縮した。もう一度、0.22μmのフィルタ(filter)を用いてバクテリア及び異物を除去した後、Type90tiローターで150,000×g、4℃で3時間の間超高速遠心分離方法を用いて上澄液を捨て、固まったペレット(pellet)を生理食塩水(PBS)でとかした。
【0052】
上記方法で分離した小胞100μlを100℃でボイルして内部のDNAを脂質の外から出るようにし、その後、氷に5分間冷やした。その後、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離して上澄液のみを集めた。そして、Nanodropを用いてDNA量を定量した。以後、前記抽出されたDNAに細菌由来のDNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNAプライマー(primer)でPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来の遺伝子が存在することを確認した。
【0053】
【表1】
【0054】
上記方法で抽出したDNAを上記の16S rDNAプライマーを用いて増幅した後にシークエンシングを行い(Illumina MiSeq sequencer)、その結果をStandard Flowgram Format(SFF)ファイルに出力し、GS FLX software(v2.9)を用いてSFFファイルをsequenceファイル(.fasta)とnucleotide qualityscoreファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、window(20bps)平均base call accuracyが99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。Operational Taxonomy Unit(OTU)分析のためには、UCLUSTとUSEARCHを用いてシーケンス類似度によってクラスタリングを行い、属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、網(class)は80%、門(phylum)は75%のシーケンス類似度を基準にクラスタリングし、各OTUの門(phylum)、網(class)、目(order)、科(family)、属(genus)レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S RNAシーケンスデータベース(108,453シーケンス)を用いて属レベルで97%以上のシーケンス類似度を有する細菌をプロファイリングした(QIIME)。
【0055】
(試験例3.胃癌患者の大便、血液及び小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で胃癌患者63人の大便と、性別と年齢をマッチングした正常対照群126人の大便を対象として、大便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の大便に比べて胃癌患者の大便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表2及び
図2a参照)。
【0056】
【表2】
【0057】
試験例2の方法で胃癌患者67人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群198人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて胃癌患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表3及び
図2b参照)。
【0058】
【表3】
また、試験例2の方法で胃癌患者61人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群120人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて胃癌患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表4及び
図2c参照)。
【0059】
【表4】
【0060】
(試験例4.大腸癌患者の大便及び小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で大腸癌患者52人の大便と、性別と年齢が対応した正常対照群83人の大便を対象として、大便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の大便に比べて大腸癌患者の大便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表5及び
図3a参照)。
【0061】
【表5】
【0062】
また、試験例2の方法で大腸癌患者38人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群38人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて大腸癌患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表6及び
図3b参照)。
【0063】
【表6】
【0064】
(試験例5.膵臓癌患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で膵臓癌患者291人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群291人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて膵臓癌患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表7及び
図4参照)。
【0065】
【表7】
【0066】
(試験例6.胆管癌患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で胆管癌患者79人の血液と、性別と年齢が対応したした正常対照群259人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて胆管癌患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表8及び
図5参照)。
【0067】
【表8】
【0068】
(試験例7.乳癌患者の血液及び小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で乳癌患者96人の血液と、性別と年齢が対応したした正常対照群192人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて乳癌患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表9及び
図6a参照)。
【0069】
【表9】
【0070】
試験例2の方法で乳癌患者127人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群220人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて乳癌患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表10及び
図6b参照)。
【0071】
【表10】
【0072】
(試験例8.卵巣癌患者の血液及び小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で卵巣癌患者136人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群136人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて卵巣癌患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表11及び
図7a参照)。
【0073】
【表11】
【0074】
実施例2の方法で卵巣癌患者136人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群136人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて卵巣癌患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表12及び
図7b参照)。
【0075】
【表12】
【0076】
(試験例9.膀胱癌患者の血液及び小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で膀胱癌患者96人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群184人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて膀胱癌患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表13及び
図8a参照)。
【0077】
【表13】
【0078】
また、試験例2の方法で膀胱癌患者95人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群157人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて膀胱癌患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表14及び
図8b参照)。
【0079】
【表14】
【0080】
(試験例10.前立腺癌患者の小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で前立腺癌患者53人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群159人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて前立腺癌患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表15及び
図9参照)。
【0081】
【表15】
【0082】
(試験例11.頭頸部癌患者の唾液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で頭頸部癌患者57人の唾液と、正常対照群277人の唾液を対象として、唾液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の唾液に比べて頭頸部癌患者の唾液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表16及び
図10参照)。
【0083】
【表16】
【0084】
(試験例12.リンパ腫患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法でリンパ腫患者57人の血液と、性別と年齢をマッチングした正常対照群163人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べてリンパ腫患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表17及び
図11参照)。
【0085】
【表17】
(試験例13.心臓疾患患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で心筋病症患者72人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群163人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて心筋病症患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表18及び
図12a参照)。
【0086】
【表18】
【0087】
実施例2の方法で心房細動患者34人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群63人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて心房細動患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表19及び
図12b参照)。
【0088】
【表19】
【0089】
試験例2の方法で異形狭心症患者80人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群80人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて異形狭心症患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表20及び
図12c参照)。
【0090】
【表20】
【0091】
(試験例14.脳卒中患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で脳卒中患者115人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群109人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて脳卒中患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表21及び
図13参照)。
【0092】
【表21】
【0093】
(試験例15.慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法でCOPD患者205人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群231人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べてCOPD患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表22及び
図14参照)。
【0094】
【表22】
【0095】
(試験例16.糖尿病患者の血液、小便及び唾液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で糖尿病患者61人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群122人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて糖尿病患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表23及び
図15a参照)。
【0096】
【表23】
【0097】
実施例2の方法で糖尿病患者60人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群134人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて糖尿病患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表24及び
図15b参照)。
【0098】
【表24】
【0099】
実施例2の方法で糖尿病患者37人の唾液と、年齢が対応した正常対照群277人の唾液を対象として、唾液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の唾液に比べて糖尿病患者の唾液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表25及び
図15c参照)。
【0100】
【表25】
【0101】
(試験例17.腎不全患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で腎不全患者32人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群32人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて腎不全患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表26及び
図16参照)。
【0102】
【表26】
【0103】
(試験例18.認知症患者の血液細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で認知症患者67人の血液と、性別と年齢が対応した正常対照群70人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の血液に比べて認知症患者の血液でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表27及び
図17参照)。
【0104】
【表27】
【0105】
(試験例19.パーキンソン病患者の小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法でパーキンソン病患者39人の小便と、性別と年齢が対応した正常対照群76人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べてパーキンソン病患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表28及び
図18参照)。
【0106】
【表28】
【0107】
(試験例20.鬱病患者の小便細菌由来の小胞のメタゲノム分析)
試験例2の方法で鬱病患者20人の小便と、性別と年齢をマッチングした正常対照群21人の小便を対象として、小便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、クプリアウィドゥス属細菌由来の小胞の分布を評価した。その結果、正常人の小便に比べて鬱病患者の小便でクプリアウィドゥス属細菌由来の小胞が有意に減少していることを確認した(表29及び
図19参照)。
【0108】
【表29】
【0109】
(試験例21.クプリアウィドゥス・メタリデュランス菌の培養及び小胞の分離)
クプリアウィドゥス・メタリデュランス(Cupriavidus metallidurans)菌株を培養した後、その小胞を分離して特性を分析した。クプリアウィドゥス・メタリデュランス菌株を28℃の好気性チャンバで吸光度(OD
600)が1.0〜1.5になるまでTSB(Tryptic soy broth)培地で培養した後、LB(Luria Bertani broth)培地に継代培養(sub−culture)した。以後、菌株が含まれている培地の上澄液を回収して10,000g、4℃で20分間遠心分離した後、菌株を除去して0.22μmのフィルタで濾過した。濾過した上澄液を100kDa Pellicon 2 Cassetteのフィルタメンブレイン(Merck Millipore、US)でMasterFlex pumpsystem(Cole−Parmer、US)を用いて限外濾過(microfiltration)を通じて50mlの体積で濃縮した。濃縮した上澄液をもう一度0.22μmのフィルタで濾過した。その後、BCA(Bicinchoninic acid)assayを用いてタンパク質を定量し、得られた小胞に対して下記実験を実施した。
【0110】
(試験例22.クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞の抗炎症効果)
炎症細胞でクプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞の細胞死滅に対する影響を確認するために、マウス大食細胞株であるRaw 264.7細胞にクプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞(C.metallidurans EV)を多様な濃度(0.1、1、10μg/ml)で処理した後、細胞生存力測定(Cell viability test)を行った。より具体的に、48−wellの細胞培養プレート中に4×10
4個ずつ分注したRaw 264.7細胞に、DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)無血清培地を入れた多様な濃度のクプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞を処理して12時間の間培養した。その後、細胞にEZ−CYTOX(Dogen、Korea)を4時間の間処理した後、SpectraMax M3 microplate reader(Molecular Devies、USA)を用いて450nmで吸光度を測定した。その結果、
図20に示したように、クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞を大食細胞株に処理したとき、細胞死滅が誘導されないことを確認した。
【0111】
上記結果を土台に、クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞の抗炎症効果を評価するために、多様な濃度(0.1、1、10μg/ml)のクプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞を大食細胞株に12時間前処理した後、病原性小胞である大腸菌由来の小胞1μg/mlを処理し、12時間後に炎症性サイトカインの分泌をELISAで測定した。ELISAを行うために、キャプチャー(Capture)抗体をリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)に希釈して96 wellのポリスチレン(polystyrene)プレートに作用濃度に合わせて50μlずつ分注した後、4℃で一晩の間反応させた。
【0112】
その後、PBST(0.05% tween−20が入っているリン酸緩衝生理食塩水)溶液100μlで3回ずつ洗浄した後、RD(1% BSAが入っているリン酸緩衝生理食塩水)溶液100μlを分注して常温で1時間の間ブロッキング(blocking)し、サンプル及びスタンダード(standard)は、濃度に合わせて50μlず分注して常温で2時間の間反応させた。その後、PBST 100μlで3回洗浄した後、検出(detection)抗体をRDに希釈して作用濃度に合わせて50μlずつ分注して常温で2時間の間反応させ、PBST 100μlで3回洗浄した後、Streptavidin−HRP(R&D system、USA)をRDに1/40で希釈して50μlずつ分注して常温で20分間反応させた。
【0113】
最後に、PBST 100μlで3回洗浄した後、TMB基質(SurModics、USA)50μlを分注して5分〜20分後に発色が進行した時点で、1Mの硫酸溶液を50μlずつ分注して反応を止め、SpectraMax M3 microplate reader(Molecular Devices、USA)を用いて450nmで吸光度を測定した。
【0114】
その結果、
図21に示したように、クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞を前処理した場合、大腸菌由来の小胞によるIL−6及びTNF−αの分泌が顕著に抑制されることを確認した。特に、クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞の前処理によるTNF−αの分泌抑制効果が有用微生物対照群であるラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来の小胞の前処理によるTNF−αの分泌抑制効果より著しく大きいことを確認した。上記結果は、大腸菌由来の小胞のような病原性小胞により誘導される炎症反応をクプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞が効率的に抑制できることを意味する。
【0115】
(試験例23.クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞の抗癌効果)
前記試験例を土台に、クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞の抗癌効果を確認した。それのために、
図22に示したように、クプリアウィドゥス・メタリデュランス菌株(CMT101)由来の小胞を6週齢のC57BL/6の雄マウスに腹腔注射又は経口で投与し、投与4日目に癌細胞株(CT26 cell)を皮下に注射して癌モデルを作った。癌細胞株を投与した後、クプリアウィドゥス・メタリデュランス菌株由来の小胞を腹腔注射又は経口で毎日投与して24日目まで癌組織のサイズを測定した。その結果、
図23に示したように、癌組織のサイズは、対照群である生理食塩水経口投与群に比べて前記小胞を腹腔注射で投与したマウスと経口で投与したマウスで癌組織のサイズが減少した。特に、経口で投与した場合にサイズが一層減少した。上記結果は、クプリアウィドゥス・メタリデュランス由来の小胞を投与したとき、癌組織の成長を効率的に抑制することができることを意味する。
【0116】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。