【実施例】
【0077】
[実施例1.腸内細菌及び細菌由来小胞の体内吸収、分布、及び排泄様相分析]
腸内細菌と細菌由来小胞が胃腸管を介して全身的に吸収されるかを評価するために次のような方法で実験を行った。マウスの胃腸に蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来小胞をそれぞれ50μgの用量で、胃腸管で投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。
【0078】
マウス全体イメージを観察した結果、
図1aに示されたように、細菌の場合には、全身的に吸収されないが、細菌由来小胞の場合には、投与後5分に全身的に吸収され、投与後3時間には、膀胱に蛍光が強く観察され、小胞が泌尿器系に排泄されるとことが分かった。また、小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった(
図1a参照)。
【0079】
腸内細菌と腸内細菌由来小胞が全身的に吸収された後、様々な臓器に浸潤された様相を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来小胞を前記の方法のように投与した後、投与12時間後に血液、心臓、肝、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉を摘出した。
【0080】
摘出した組織で蛍光を観察した結果、
図1bに示されたように、細菌由来小胞は血液、心臓、肺、肝、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉に分布したが、細菌は吸収されないことが分かった(
図1b参照)。
【0081】
[実施例2.臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
血液、尿、便などの臨床サンプルをまず10mlチューブに入れ、遠心分離法(3,500×g、10min、4℃)で浮遊物を沈め、上澄液だけを新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使用して細菌及び異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移して1500×g、4℃で15分間遠心分離した。50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮させた。再び0.22μmフィルターを使用してバクテリア及び異物を除去した後、タイプ90tiローターで150,000×g、4℃で3時間の間超高速遠心分離方法を使用して上澄液を捨て、固まったペレット(pellet)をPBS(phosphate buffered saline)で溶かした。
【0082】
前記方法で分離した小胞100μlを100℃でボイルして、内部のDNAを脂質外に出るようにし、その後、氷上で5分間冷ました後、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離し、上澄液だけを集めた。そして、ナノドロップ(Nanodrop)を利用してDNA量を定量した。その後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNAプライマー(primer)でPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。
【0083】
【表1】
【0084】
前記方法で抽出したDNAを前記の16S rDNAプライマーを使用して増幅をした後、シーケンシングを行い(Illumina MiSeq sequencer)、結果をスタンダードフログラムフォーマット(Standard Flowgram Format,SFF)ファイルで出力し、GS FLXソフトウェア(v2.9)を利用してSFFファイルをシークエンスファイル(.fasta)とヌクレオチドクオリティースコア(nucleotide quality score)ファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、ウィンドウ(20bps)平均ベースコールアキュラシ(base call accuracy)が99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。Operational Taxonomy Unit(OTU)分析のためには、UCLUSTとUSEARCHを利用してシークエンス類似度によってクラスタリングを行った。属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シークエンス類似度を基準としてクラスタリングをし、各運営分類単位の門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S RNAシークエンスデータベース(108,453シークエンス)を利用して属水準で97%以上のシークエンス類似度を有する細菌をプロファイリングした(QIIME)。
【0085】
[実施例3.癌患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で胃癌患者55人の便と正常対照群99人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて胃癌患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胃癌患者:1.1% vs 0.05%、p<0.001)(
図2参照)。
【0086】
また、胃癌患者67人の血液と正常対照群198人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて胃癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胃癌患者:1.3% vs 0.2%、p=<0.001)(
図2参照)。
【0087】
また、胃癌患者61人の尿と正常対照群120人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて胃癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胃癌患者:1.8% vs 0.1%、p<0.0001)(
図2参照)。
【0088】
また、実施例2の方法で大腸癌患者38人の便と正常対照群55人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて大腸癌患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs大腸癌患者:1.2% vs 0.05%、p<0.001)(
図3参照)。
【0089】
また、大腸癌患者38人の尿と性別と年齢をマッチングした正常対照群38人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて大腸癌患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs大腸癌患者:1.3% vs 0.06%、p<0.001)(
図3参照)。
【0090】
また、実施例2の方法で肝癌患者94人の血液と正常対照群152人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肝癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs肝癌患者:0.7% vs 0.01%、p<0.001)(
図4参照)。
【0091】
また、胆道癌患者84人の血液と正常対照群132人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて胆道癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胆道癌患者:0.7% vs 0.06%、p<0.001)(
図4参照)。
【0092】
また、膵臓癌患者191人の血液と正常対照群291人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて膵臓癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs膵臓癌患者:0.7% vs 0.06%、p<0.001)(
図4参照)。
【0093】
また、実施例2の方法で肺癌患者318人の血液と正常対照群234人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肺癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs肺癌患者:0.7% vs 0.1%、p<0.001)(
図5参照)。
【0094】
また、実施例2の方法で乳癌患者127人の尿と正常対照群220人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて乳癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs乳癌患者:1.4% vs 0.3%、p<0.001)(
図6参照)。
【0095】
また、卵巣癌患者136人の尿と正常対照群136人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて卵巣癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs卵巣癌患者:1.1% vs 0.1%、p<0.001)(
図6参照)。
【0096】
また、実施例2の方法で膀胱癌患者96人の血液と正常対照群184人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて膀胱癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs膀胱癌患者:0.8% vs 0.1%、p<0.001)(
図7参照)。
【0097】
また、膀胱癌患者95人の尿と正常対照群157人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて膀胱癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs膀胱癌患者:1.9% vs 0.1%、p<0.000001)(
図7参照)。
【0098】
また、実施例2の方法で前立腺癌患者53人の尿と正常対照群159人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて前立腺癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs前立腺癌患者:1.1% vs 0.09%、p<0.000001)(
図8参照)。
【0099】
また、実施例2の方法でリンパ腫患者93人の血液と正常対照群109人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてリンパ腫患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsリンパ腫患者:0.09% vs 0.00%、p<0.001)(
図9参照)。
【0100】
また、脳腫瘍患者84人の血液と正常対照群92人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて脳腫瘍患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs脳腫瘍患者:0.09% vs 0.01%、p<0.01)(
図9参照)。
【0101】
[実施例4.糖尿病及び心血管疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で糖尿病患者73人の血液と正常対照群146人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて糖尿病患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs糖尿病患者:0.4% vs 0.01%、p<0.01)(
図10参照)。
【0102】
また、実施例2の方法で心筋梗塞患者57人の血液と正常対照群163人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋梗塞患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs心筋梗塞患者:0.4% vs 0.07%、p<0.01)(
図11参照)。
【0103】
また、心筋病症患者72人の血液と正常対照群163人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋病症患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs心筋病症患者:0.4% vs 0.08%、p<0.01)(
図11参照)。
【0104】
また、心房細動患者69人の血液と正常対照群103人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心房細動患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs心房細動患者:0.1% vs 0.01%、p<0.01)(
図11参照)。
【0105】
また、異型狭心症患者32人の血液と正常対照群32人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて異型狭心症患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs異型狭心症患者:0.6% vs 0.1%、p<0.05)(
図11参照)。
【0106】
また、脳卒中患者87人の血液と正常対照群92人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて脳卒中患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs脳卒中患者:0.3% vs 0.00%、p<0.05)(
図12参照)。
【0107】
[実施例5.神経精神疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法でパーキンソン病患者39人の尿と正常対照群79人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてパーキンソン病患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsパーキンソン病患者:0.6% vs 0.02%、p<0.0001)(
図13参照)。
【0108】
また、実施例2の方法でうつ病患者20人の尿と正常対照群20人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてうつ病患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsうつ病患者:1.7% vs 0.06%、p<0.01)(
図13参照)。
【0109】
[実施例6.アレルギー及び呼吸器疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法でアトピー皮膚炎患者27人の血液と正常対照群138人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてアトピー皮膚炎患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsアトピー皮膚炎患者:2.0% vs 0.06%、p<0.00001)(
図14参照)。
【0110】
また、実施例2の方法で喘息患者291人、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者207人、及び正常対照群291人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて喘息患者及び慢性閉塞性肺疾患患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs喘息患者:0.7% vs 0.08%、p<0.01;正常ヒトvs慢性閉塞性肺疾患患者:0.7% vs 0.07%、p<0.01)(
図15参照)。
【0111】
[実施例7.炎症性腸疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome,IBS)患者57人の
便と正常対照群58人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて過敏性
腸症候群患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs過敏性
腸症候群患者:1.9% vs 0.00%、p<0.00001)(
図16参照)。
【0112】
また、実施例2の方法で炎症性腸炎(inflammatory bowel disease,IBD)患者91人及び正常対照群99人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて炎症性腸炎患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs炎症性腸炎患者:1.9% vs 0.00%、p<0.00001)(
図16参照)。
【0113】
[実施例8.プロテウスミラビリス培養液から小胞の分離及び特性分析]
前記実施例2〜7の結果を基に、プロテウス属細菌由来小胞の機能を評価するために、プロテウス属細菌の一つのプロテウスミラビリス菌株を培養した後、その小胞を分離して特性を分析した。
【0114】
様々なヒトの臨床サンプルから分離したプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)菌株を37℃嫌気性チャンバーで吸光度(OD600)が1.0〜1.5になるまでブレーンハートインフュージョン(brain heart infusion,BHI)培地で培養した後、 継代培養(sub−culture)した。以後、菌株が含まれていない培地の上澄液を回収して10,000g、4℃で15分間遠心分離し、0.45μmフィルターに濾過した後、濾過した上澄液を100kDaホロー(hollow)フィルターメンブレーンでクイックスタンドベンチトップシステム(QuixStand benchtop system,GE Healthcare,UK)を利用して200ml体積で濃縮した。以後、濃縮させた上澄液を再び0.22μmフィルターでフィルタリングした。以後、BCAアッセイ(assay)を利用してタンパク質を定量し、得られた小胞に対して下記実験を実施し、前記方法によって培養したプロテウスミラビリスの培養液から小胞を分離した後、電子顕微鏡を用いて形状とサイズを評価した。
【0115】
その結果、
図17aに示されるように、プロテウスミラビリス培養液から分離した小胞の形状は、球形であり、サイズは、200nmより小さいことを観察し、
図17bに示した動的光散乱法の測定結果を用いて前記小胞のサイズは、37.8±13.5nmであることを確認した。
【0116】
[実施例9.プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果]
プロテウスミラビリス由来小胞が炎症細胞で炎症媒介体の分泌に対する影響を調べてみるために、マウス大食細胞株であるRaw 264.7細胞にプロテウスミラビリス菌株から分離した小胞(P.mirabilis EV)を多様な濃度(0.1、1、10 μg/ml)で処理した後、病原性小胞である大腸菌由来小胞(E.coli EV)を処理して炎症媒介体(IL−6,TNF−αなど)の分泌量を測定した。
【0117】
より具体的に、Raw 264.7細胞を1×10
5個ずつ24−ウェル細胞培養プレートに分注した後、24時間の間DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Media)完全培地で培養させた。以後、培養上澄液を1.5mlチューブに集めて3,000gで5分間遠心分離して上澄液を集めて4℃に保管した後、エライザ(ELISA)分析を進めた。
【0118】
エライザ分析のために、キャプチャー抗体をPBS(phosphate buffered saline)に希釈させて96ウェルポリスチレン(96 well polystyrene)プレートに作用濃度に合うように50μlずつ分注した後、4℃で一晩中(overnight)反応させた。以後、PBST(0.05% tween−20が入っているPBS)溶液100μlで2回ずつ洗った後、RD(1% bovin serum albumin(BSA)が入っているPBST)溶液100μlを分注して常温で1時間の間ブロッキング(blocking)した後、再びPBST 100μlで2回洗った後、サンプル及びスタンダードを濃度に合うように50μlずつ分注して常温で2時間の間反応させた。再びPBST 100μlで2回洗った後、検出抗体をRDに希釈させて作用濃度に合うように50μlずつ分注して常温で2時間の間反応させた。再びPBST 100μlで2回洗った後、ストレプトアビジン−HRP(Streptavidin−horseradish peroxidaseをRDに1/200で希釈させて50μlずつ分注して常温で30分間反応させた。最後に、PBST 100μlで3回洗った後、TMB(3,3,5,5−tetramethylbenzidine)基質と0.04%過酸化水素水を1:1で混合した溶液50μlを分注した後、発色を待って5分から20分後に発色が進行されたとき、1M硫酸溶液を50μlずつ分注して反応を中止し、シナジー社のHTマルチ−ディテクションマイクロプレートリーダー(Synergy(登録商標)HT multi−detection microplate reader)を利用して(BioTek,USA)450nmで吸光度を測定した。
【0119】
その結果、プロテウスミラビリス由来小胞を前処理した場合、大腸菌由来小胞によるIL−6及びTNF−αの分泌が顕著に抑制されることを確認した(
図18a及び
図18b参照)。
【0120】
また、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果にプロテウスミラビリスの亜型の影響を評価するために、様々なヒトから分離した5種類のプロテウスミラビリス分離菌株由来小胞(PMR201,PMR202,PMR203,PMR204,PMR205)を多様な濃度で12時間の間前処理し、病原性小胞である大腸菌由来小胞1μg/mlを12時間処理した。培養上澄液を1.5mlチューブに集めて3000gで5分間遠心分離して上澄液を集めて4℃に保管した後、エライザを行った。
【0121】
その結果、プロテウスミラビリス分離菌株由来小胞を前処理した場合、プロテウスミラビリス標準菌株由来小胞(PMR101)と同様に、大腸菌由来小胞によるTNF−αの分泌を顕著に抑制することを確認した(
図19参照)。特に有用微生物対照群であるラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来小胞よりプロテウスミラビリス由来小胞の前処理によるTNF−αの分泌抑制効果が大きいことを確認した(
図19参照)。
【0122】
これは、大腸菌由来小胞のような病原性小胞により誘導される炎症反応をプロテウスミラビリス分離菌株由来小胞が亜型に関係なく炎症反応を効率的に抑制することができることを意味する。
【0123】
[実施例10.プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症作用に熱又は酸処理の効果]
前記実施例9を通じてプロテウスミラビリス標準菌株及び分離菌株由来小胞の抗炎症効果を確認し、ひいては、前記小胞の安定性及び有効物質の特性を具体的に調べてみようとした。このために、100℃で10分間ボイルや10分間酸処理(pH2.0)をした3種のプロテウスミラビリス由来小胞(PMR101,PMR202,PMR205)を大食細胞(Raw 264.7)に前処理して、抗炎症効果を評価した。
【0124】
その結果、小胞を100℃でボイルしたり酸処理したりしても、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果が維持されることを確認した(
図20参照)。これは、プロテウスミラビリス由来小胞が高い温度と酸に安定していることを意味し、また、プロテウスミラビリス由来小胞で抗炎症効果を示すことは、タンパク質成分でないことを意味する。
【0125】
[実施例11.プロテウスミラビリス由来小胞の抗癌効果]
前記実施例を通じて正常ヒトに比べて癌患者の臨床サンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認したところ、ひいては、前記小胞の抗癌効果を具体的に調べてみようとした。このために、
図21aに示されたように、プロテウスミラビリス由来小胞を6週齢のC57BL/6雄性マウスに経口で投与して、投与4日目に癌細胞株(CT26 cell)を皮下で注射して癌モデルを作った。癌細胞株を投与した後、20日目まで癌組織の大きさを測定して、癌の治療効果を評価した。その結果、生理食塩水の経口投与群に比べて前記小胞を経口で投与したマウスにおいて癌組織のサイズが顕著に減少した(
図21b参照)。
【0126】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。