(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来において、接着剤の塗布状態は、固定窓用ガラスに塗布された接着剤の総塗布量を判定することで検査される場合がある。この場合、例えば、塗布装置に備え付けられた供給用ポンプから供給された接着剤の供給量を、固定窓用ガラスに塗布された接着剤の総塗布量とみなし、固定窓用ガラスに塗布された接着剤の総塗布量が判定される。
【0006】
しかしながら、接着剤の総塗布量だけで塗布状態を検査した場合、固定窓用ガラスの周囲において、接着剤の塗布量が過剰な部分と、過少な部分とが含まれていても、全体としては総塗布量が適正と判定されて、誤判定を招く場合がある。そして、このように接着剤の塗布量が過剰な部分が存在する固定窓用ガラスを車体に接着固定すると、過剰な接着剤が車内側に食み出して美観に悪影響を与えるおそれがある。そのため、車内に食み出した接着剤の除去作業や、場合によっては固定窓用ガラスの付替え作業が強いられるなど、経済的損失が大きくなる。
【0007】
したがって、固定窓用ガラスを車体へ接着固定する前に、固定窓用ガラスに塗布された接着剤の塗布状態を正確に検査可能な技術の確立が望まれている。
【0008】
なお、このような技術は、固定窓用ガラスに限らず、接着固定される種々のワークに対しても望まれているのが実情である。
【0009】
本発明は、ワークを接着固定する前に、ワークに対する接着剤の塗布状態を正確に検査することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ワーク上に線状に塗布された接着剤の塗布状態を検査する接着剤検査装置であって、接着剤を含む検査領域を検査して、接着剤の断面形状を判定するための検査情報を出力する検査部と、ワーク上の位置情報と共に、検査領域に含まれるワーク上の接着剤以外の邪魔部材の形状を示す邪魔部材形状情報が予め記憶された邪魔部材形状記憶部と、検査情報と邪魔部材形状情報とに基づいて、接着剤の断面形状を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、ワーク上の位置情報と共に、ワーク上における接着剤の塗布本数を示す塗布パターン情報が予め記憶された塗布パターン記憶部を備え、判定部は、検査情報と邪魔部材形状情報と塗布パターン情報とに基づいて、接着剤の断面形状を判定することが好ましい。
【0012】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ワーク上に線状に塗布された接着剤の塗布状態を検査する接着剤検査装置であって、接着剤を含む検査領域を検査して、接着剤の断面形状を判定するための検査情報を出力する検査部と、ワーク上の位置情報と共に、ワーク上における接着剤の塗布本数を示す塗布パターン情報が予め記憶された塗布パターン記憶部と、検査情報と塗布パターン情報とに基づいて、接着剤の断面形状を判定する判定部を備えることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ワーク上に線状に塗布された接着剤の塗布状態を検査する接着剤検査方法であって、撮像部によって接着剤を含む検査領域を検査して、接着剤の断面形状を判定するための検査情報を作成する工程と、ワーク上の位置情報と共に、検査領域に含まれるワーク上の接着剤以外の邪魔部材の形状を示す邪魔部材形状情報を作成する工程と、検査情報と邪魔部材形状情報とに基づいて、接着剤の断面形状を判定する工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
上記の構成において、ワーク上の位置情報と共に、ワーク上における接着剤の塗布本数を示す塗布パターン情報を作成する工程を備え、前記接着剤の断面形状を判定する工程では、検査情報と邪魔部材形状情報と塗布パターン情報とに基づいて、接着剤の断面形状を判定することが好ましい。
【0015】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ワーク上に線状に塗布された接着剤の塗布状態を検査する接着剤検査方法であって、検査部によって接着剤を含む検査領域を検査して、接着剤の断面形状を判定するための検査情報を作成する工程と、ワーク上の位置情報と共に、ワーク上における前記接着剤の塗布本数を示す塗布パターン情報を作成する工程と、検査情報と塗布パターン情報とに基づいて、接着剤の断面形状を判定する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークを接着固定する前に、ワークに対する接着剤の塗布状態を正確に検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、接着剤検査装置1は、ワークとしての自動車の固定窓用ガラス(以下、単にガラスともいう)2の周縁部2xに沿って、所定の断面形状で線状に塗布された接着剤3の塗布状態を検査するものである。この実施形態では、接着剤3は、ガラス2の周縁部2xに沿って額縁状に塗布され、接着剤3の塗布領域は実質的に閉曲線となる。また、接着剤3の断面形状は略三角形である。さらに、接着剤3としては、ウレタンなどの不透明接着剤(例えば黒色の接着剤)が用いられる。
【0020】
接着剤検査装置1は、レーザ照射部11と、検査部としての撮像部12と、記憶部13と、判定部14とを備えている。この実施形態では、記憶部13と判定部14とは、撮像部12と有線又は無線で接続されたパーソナルコンピュータ(PC)15により構成されている。なお、PC15には、タブレット端末も含まれる。
【0021】
レーザ照射部11は、接着剤3の表面3aを経て、接着剤3の左右両側方のガラス2の表面2aに投影線Pが跨るように、接着剤3の上方からラインレーザ光Lを照射する。ラインレーザ光Lの照射部分に形成される投影線Pは、接着剤3の一方の側方においてガラス2の表面2a1に形成される第1の部分P1と、接着剤3の他方の側方においてガラス2の表面2a2に形成される第2の部分P2と、接着剤3の一方の斜面3a1に形成される第3の部分P3と、接着剤3の他方の斜面3a2に形成される第4の部分P4とから構成される。これらの各々の部分P1〜P4は、ラインレーザ光Lに起因するものであるので、隣接する部分同士は互いに連続している。
【0022】
レーザ照射部11としては、例えば赤外線レーザを利用することができる。
【0023】
撮像部12は、投影線Pを含む接着剤3の周辺を撮像領域(検査領域)T(図示例では四角形の領域)とし、撮像領域Tを接着剤3の上方から撮像すると共に、検査情報としての撮像情報を出力する。この実施形態では、撮像情報は、接着剤3の長手方向(又は走査方向S)の所定の区間D毎に出力される。すなわち、接着剤検査装置1は、所定の区間D毎に接着剤3の塗布状態を検査するように構成されている。そのため、一つの区間D内では、接着剤3の形状が同じであると仮定し、接着剤3の塗布状態を検査する。区間Dの長さを短くすれば精密な検査を実現でき、区間Dの長さを長くすれば高速な検査を実現できる。区間Dの長さは、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることが更に好ましい。この場合、接着剤3の検査間隔が緻密になるため、接着剤3の長手方向における途切れなどの不良も検出することができる。なお、接着剤3が平面視で円弧状などの曲線状に塗布される部分では、接着剤3が平面視で直線状に塗布される部分よりも一つの区間Dの長さを短くすることが好ましい。
【0024】
撮像部12としては、例えばCCDカメラを利用することができる。
【0025】
レーザ照射部11と撮像部12とは、接着剤3の長手方向に沿ってガラス2の上方空間を走査方向Sに一体的に移動する。これにより、ラインレーザ光Lが接着剤3の長手方向に沿って順次走査される。なお、レーザ照射部11と撮像部12を静止させた状態で、ガラス2側を移動させてもよい。すなわち、レーザ照射部11及び撮像部12からなるユニットと、ガラス2との間に相対的な移動があればよい。
【0026】
図2A及び
図2Bに示すように、レーザ照射部11と撮像部12とは、接着剤3の真上に配置されている。この実施形態では、レーザ照射部11と撮像部12のそれぞれは、接着剤3が走査方向Sと平行な直線状である場合に、断面三角形の接着剤3の頂点(稜線)を通る仮想垂直面上に配置された状態となる。レーザ照射部11の中心線C1はガラス2の表面2aに対して垂直になっており、レーザ照射部11は接着剤3にラインレーザ光Lを垂直落射するようになっている。一方、撮像部12の中心線C2は、レーザ照射部11の中心線C1に対して傾斜している。レーザ照射部11の中心線C1と撮像部12の中心線C2とは、ガラス2の表面2aで交差(図示例では、接着剤3の頂点からガラス2の表面2aに下した垂線の足で交差)するようになっており、そのなす角θは、例えば30°〜60°が好ましく、この実施形態では45°である。なお、レーザ照射部11と撮像部12の配置位置は特に限定されるものではなく、投影線Pが接着剤3の両側方に跨り、かつ、その投影線Pを撮像できる限りにおいて任意に調整することができる。例えば、この実施形態では、撮像部12はレーザ照射部11の走査方向Sの前方側に配置しているが、走査方向Sの後方側に配置してもよい。また、上述したレーザ照射部11と撮像部12のそれぞれの位置を入れ替えてもよい。
【0027】
図1に示した記憶部13には、接着剤3が適正に塗布された場合の基準形状を示す基準形状情報が記憶されている(基準形状記憶部)。基準形状は、接着剤3の塗布領域すべて同じ場合もあるが、この実施形態では、所定の領域毎に異なっている。すなわち、基準形状情報は、接着剤3が塗布される領域の位置情報(例えば、検査ステージを基準とした座標データなど)に紐付けされたデータとして記憶されている。この実施形態では、接着剤3の基準形状における断面積、高さ及び幅の3つのパラメータが予め記憶されている。これら3つのパラメータのうち、いずれか2つのパラメータのみを記憶させてもよい。この実施形態では、接着剤の基準形状を有する模型(マスター)を予め実測することで、基準形状情報を作成し記憶している。基準形状情報は、実測することなくデータとして直接入力し記憶させてもよい。
【0028】
また、記憶部13には、撮像領域Tに含まれるガラス2の表面2aに形成される邪魔部材の形状を示す邪魔部材形状情報が位置情報に紐付けされた状態で予め記憶されている(邪魔部材形状記憶部)。邪魔部材としては、例えば、接着剤3の車内側への侵入を防止するためのパッキン(
図5Aを参照)や、ガラス2を車体に固定するためのファスナー(
図6Aを参照)などが挙げられる。邪魔部材は、ガラス2の表面2a上における位置や大きさは予め決まっている。この実施形態では、邪魔部材の形状を有する模型(マスター)を予め実測することで、邪魔部材形状情報を作成し記憶している。邪魔部材形状情報は、実測することなくデータとして直接入力し記憶させてもよい。
【0029】
さらに、記憶部13には、ガラス2の表面2aに塗布される接着剤3の塗布本数を示す塗布パターン情報が位置情報と紐付けされた状態で予め記憶されている(塗布パターン記憶部)。この実施形態では、塗布パターンとしては、接着剤3が1列の部分と、接着剤が並列な2列の部分(
図7Aを参照)とが含まれており、1列の部分と2列の部分のそれぞれの位置は予め決まっている。接着剤3が2列の部分としては、接着剤3の塗布開始位置である始端部と、接着剤3の塗布終了位置である終端部とが重なる部分が挙げられる。
【0030】
記憶部13としては、例えばPC15のメモリを利用することができる。
【0031】
判定部14は、
図3に示すような撮像情報が得られた場合、その撮像情報に基づいて、接着剤3の表面に形成された投影線P(第3の部分P3と第4の部分P4)とガラス2の表面2aとで囲まれた形状A1を判定する。この形状A1は、接着剤3の断面形状を反映している。この実施形態では、形状A1の判定は、形状A1の高さH1、幅W1及び断面積(ハッチングを付した部分)に基づいて行っている。詳細には、判定部14は、形状A1の高さH1、幅W1及び断面積を算出すると共に、記憶部13から基準形状情報を読み出し、基準形状情報の高さ、幅及び断面積と、算出された形状A1の高さH1、幅W1及び断面積をそれぞれ比較する。その結果、両者の差が所定のしきい値内にある場合には、接着剤3の塗布状態が適正と判定する。一方、両者の差が所定のしきい値を超えた場合には、接着剤3の塗布状態が不適正と判定する。このようにすれば、基準形状と比較して高さH1と幅W1が適正な範囲であるが、接着剤3の斜面が窪んで接着剤の量が少なくなっている場合(
図4A)や、接着剤3の斜面が膨らんで接着剤3の量が多くなっている場合(
図4B)でも、算出された断面積によって接着剤3の塗布状態が不適正であると、正しく判定することができる。ここで、断面積は、算出された形状の幅に対応する撮像情報の積分値から求められる。
【0032】
また、ガラス2の表面2aにおいて、接着剤3の近傍にパッキンが形成されている位置では、
図5Aに示すような撮像情報が得られる場合がある。すなわち、撮像情報に、接着剤3の形状A2以外にパッキンの形状X2が反映される。この状態では、判定部14は、パッキンの形状X2を含んだ高さH2、幅W2及び断面積を算出してしまうため、接着剤の塗布状態の誤判定に繋がる。そこで、この実施形態では、接着剤検査装置1が撮像情報にパッキンが含まれる位置に来ると、判定部14は、記憶部13に予め記憶させた位置情報と邪魔部材形状情報を読み出し、撮像情報からその位置に対応した邪魔部材形状情報(パッキンの形状情報)を減算する。これにより、
図5Bに示すように、パッキンの形状X2が消去又は小さくなった撮像情報が得られる。この補正された撮像情報に基づいて、接着剤3の形状A2の高さH2a、幅W2a及び断面積を算出し、塗布状態を判定する。
【0033】
また、ガラス2の表面2aにおいて、接着剤3の近傍にファスナーが形成されている位置では、
図6Aに示すような撮像情報が得られる場合がある。すなわち、上記のパッキンの場合と同様に、撮像情報に、接着剤3の形状A3以外にファスナーの形状X3が反映される。この状態では、判定部14は、ファスナーの形状X3を含んだ高さH3、幅W3及び断面積を算出してしまうので、この実施形態では、接着剤検査装置1が撮像情報にファスナーが含まれる位置に来ると、判定部14は、記憶部13に予め記憶させた位置情報と邪魔部材形状情報を読み出し、撮像情報からその位置に対応した邪魔部材形状情報(ファスナーの形状情報)を減算する。これにより、
図6Bに示すように、ファスナーの形状X3が消去又は小さくなった撮像情報が得られる。この補正された撮像情報に基づいて、接着剤3の形状A3の高さH3a幅W3a及び断面積を算出し、塗布状態を判定する。
【0034】
また、ガラス2の表面2aにおいて、接着剤3が並列に2列配置されている位置では、
図7Aに示すような撮像情報が得られる場合がある。この状態で、塗布パターン情報から撮像情報に2本の接着剤3の形状が含まれていることが既知であるため、個々の形状A4,A5の高さ、幅及び断面積を算出し、接着剤3の塗布状態を判定してもよいが、この実施形態では次のように接着剤3の塗布状態を判定している。すなわち、形状A4及びA5を、これと等価な一つの断面三角形状に置き換える。詳細には、
図7Bに示すように、形状A4,A5の高さのうち、いずれか値の大きい方(図示例ではH4)と同じ値の高さH6を有し、かつ、形状A4,A5のそれぞれの断面積の総和と同じ値の断面積を有する一つの三角形状A6を求める。そして、このようにして置き換えられた一つの三角形状A6の幅W6を算出する。ここで、形状A4,A5のそれぞれの断面積の総和をS6とすると、W6=2×S6/H6となる。塗布状態は、高さH6、幅W6及び断面積S6に基づいて判定される。
【0035】
ここで、この実施形態では、接着剤の塗布状態を判定するに際し、接着剤3の断面形状の断面積が算出されている。そのため、判定部14は、算出された断面積に、予め決まっている接着剤3の塗布長さと、接着剤3の比重を乗算し、ガラス2の表面2aに塗布された接着剤3の重量を算出し、上記の塗布状態の検査結果と共に出力する。これにより、単位長さ当たりの接着剤3の重量(塗布量)や、ガラス2の表面2aに塗布された接着剤3の総重量を確認することができる。接着剤3の重量の算出は、省略してもよい。
【0036】
判定部14としては、例えばPC15のCPUを利用することができる。
【0037】
次に、以上のように構成された接着剤検査装置を用いた接着剤検査方法を説明する。
【0038】
まず、
図1に示すように、図示しない塗布装置によって表面2aに接着剤3が塗布された自動車の固定窓用ガラス2を、表面2aを上にした平置き姿勢で、接着剤検査装置1の検査ステージ(図示省略)上にセットする。この状態で、接着剤3の表面3aを経て、接着剤3の両側方のガラス2の表面2aに投影線Pが跨るように、接着剤3の上方からレーザ照射部11によってラインレーザ光Lを照射する(照射工程)。次に、投影線Pを含む接着剤3の周辺の撮像領域Tを接着剤3の上方から撮像部12で撮像して撮像情報を作成する(撮像工程)。その後、撮像情報に基づいて、接着剤3の表面3aに形成された投影線Pとガラス2の表面2aとで囲まれた形状を、その形状の高さ、幅及び断面積に基づいて判定し、その結果に基づいて接着剤3の塗布状態の適否を判定する(判定工程)。判定工程では、形状の高さ、幅及び断面積のすべてが所定の値(所定の区間毎に所定の値が異なる場合を含む)の範囲内にある場合に接着剤3の塗布状態が適正と判定し、形状の高さ、幅及び断面積の1つ以上が所定の値の範囲外にある場合に接着剤3の塗布状態が不適正と判定する。判定工程は、接着剤3の長手方向に沿った所定の区間D毎に行う。所定の区間D毎に判定を行いながら接着剤3の全周囲で検査が終了すると、この実施形態では、
図8に示すように、接着剤3の塗布エリアを表示した情報の上に、所定の区間D毎の検査結果が表示される。これにより、視覚的に検査結果と位置を容易に把握できるようになっている。図示例では、「G」と記載している部分が緑色で塗布状態が適正な部分を意味し、「R」と記載している部分が赤色で塗布状態が不適正な部分を意味している。検査結果の表示態様はこれに限定されるものではなく、位置情報と所定区間毎の検査結果がリスト表示されるものであってもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態に係る接着剤検査装置及び検査方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0040】
上記の実施形態では、接着剤3の断面形状が三角形である場合を説明したが、四角形や半円形などの他の形状であってもよい。
【0041】
また、上記の実施形態では、接着剤3の塗布装置とは別に、接着剤検査装置1を設ける場合を説明したが、接着剤検査装置1は塗布装置に組み込まれていてもよい。この場合、ガラス2の表面2aに接着剤3を塗布しながら接着剤3の塗布状態が順次検査してもよい。このようにすれば、接着剤3の塗布が終了するのとほぼ同時に、接着剤3の塗布状態の検査も終了する。
【0042】
また、上記の実施形態では、接着剤の塗布状態を、接着剤の断面形状の高さ、幅及び断面積に基づいて判定する場合を説明したが、接着剤の塗布状態を、接着剤の断面形状の高さ、幅及び断面積のうちの2つに基づいて判定してもよい。すなわち、接着剤の塗布状態を、接着剤の断面形状の高さと幅で判定してもよいし、接着剤の断面形状の高さと断面積で判定してもよいし、接着剤の断面形状の幅と断面積で判定してもよい。
【0043】
また、上記の実施形態において、人工知能(AI)に撮像情報のパターンを学習させることで、接着剤の断面形状の適否をAIに判定させるようにしてもよい。この場合、邪魔部材形状情報や塗布パターン情報を多く学習させることで、判定精度は向上する。
【0044】
また、上記の実施形態では、ワークが自動車の固定窓用ガラスである場合を例にとって説明したが、例えば液晶ディスプレイの液晶パネルなどであってもよい。
【0046】
本発明は、ワーク上に線状に塗布された接着剤の塗布状態を検査する接着剤検査装置であって、接着剤の両側方のワーク上に接着剤の表面を経て投影線が跨るように、接着剤の上方からラインレーザ光を照射するレーザ照射部と、投影線を含む接着剤の周辺を撮像領域とし、撮像領域を接着剤の上方から撮像して撮像情報を出力する撮像部と、撮像情報に基づいて、接着剤の表面に形成された投影線とワークの表面とで囲まれた形状を判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
【0047】
ここで、接着剤の表面に形成された投影線とワークの表面とで囲まれた形状は、接着剤の断面形状と実質的に同じである。そのため、上記のような構成によれば、ワークに対する接着剤の塗布状態を、接着剤の断面形状(又はこれに近い形状)に基づいて判定することができる。すなわち、接着剤の塗布量などに基づいて塗布状態を間接的に判定するのではなく、接着剤の形に基づいて塗布状態をより直接的に判定することができる。したがって、ワークを実際に接着固定する前に、ワークに対する接着剤の塗布状態を正確に検査することができる。
【0048】
上記の構成において、判定部は、撮像情報から形状の高さ、幅及び断面積のうち、少なくとも2つ以上を算出し、形状を判定することが好ましい。このようにすれば、接着剤の断面形状をより正確に判定することができ、より高精度に接着剤の塗布状態を判定することができる。
【0049】
この場合、判定部は、撮像情報から形状の高さ、幅及び断面積を算出し、形状を判定することが好ましい。すなわち、接着剤の断面形状において、高さと幅が適正であっても、接着剤の側面が膨らんで接着剤の量が多くなっている場合や、接着剤の側面が窪んで接着剤の量が少なくなっている場合などがある。したがって、形状の高さと幅に加えて、形状の断面積を算出すれば、このような事態が生じた場合に接着剤の塗布状態が不適正と正しく判定することができる。
【0050】
上記の構成において、判定部は、形状の断面積を算出し、算出された断面積に基づいてワーク上に塗布された接着剤の重量を更に算出してもよい。すなわち、単位長さ当たりの接着剤の塗布重量が設計基準として決められている場合がある。したがって、このような場合に、上記の構成のように接着剤の重量を算出すれば、設計基準通りに接着剤が塗布されているかどうかを確認することができる。
【0051】
上記の構成において、ワーク上の位置情報と共に、撮像領域に含まれるワーク上の接着剤以外の邪魔部材の形状を示す邪魔部材情報が予め記憶された邪魔部材情報記憶部を備え、判定部は、位置情報に対応した邪魔部材情報を撮像情報から減算した情報に基づいて形状を判定することが好ましい。このようにすれば、接着剤の形状判定の邪魔になる邪魔部材の影響を小さくできるので、邪魔部材を接着剤の一部と誤って判定するのを避けることができる。
【0052】
上記の構成において、ワーク上の位置情報と共に、ワーク上における接着剤の塗布本数を示す塗布パターン情報が予め記憶された塗布パターン情報記憶部を備え、判定部は、撮像情報と塗布パターン情報とに基づいて形状を判定することが好ましい。すなわち、ワーク上には、接着剤が線状に塗布されるが、1本のラインとして塗布される部分もあれば、並列な複数本(例えば2本)のラインとして塗布される部分もある。したがって、上記の構成のように、接着剤の塗布本数を示す塗布パターン情報を考慮して、接着剤の断面形状を判定するようにすれば、多様な接着剤の塗布パターンが実施される場合でも、塗布状態を精度よく検査することができる。
【0053】
上記の構成において、レーザ照射部は、接着剤の上方からラインレーザ光を垂直落射し、撮像部は、ラインレーザ光の垂直落射面を境界とする接着剤の前後いずれか一方の斜め上方から撮像領域を撮像するようにしてもよい。
【0054】
本発明は、ワーク上に線状に塗布された接着剤の塗布状態を検査する接着剤検査方法であって、接着剤の表面を経て、接着剤の両側方のワーク上に投影線が跨るように、レーザ照射部によって接着剤の上方からラインレーザ光を照射する工程と、投影線を含む接着剤の周辺を撮像領域とし、撮像部によって撮像領域を接着剤の上方から撮像して撮像情報を作成する工程と、撮像情報に基づいて、接着剤の表面に形成された投影線とワークの表面とで囲まれた形状を判定する工程とを備えたことを特徴とする。このような構成によれば、既に述べた対応する構成と同様の効果を享受することができる。
【0055】
上記の構成において、ワークが自動車の固定窓用ガラスであることが好ましい。