(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6959690
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】2ウェイ通信器
(51)【国際特許分類】
H04B 3/36 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
H04B3/36
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2021-44399(P2021-44399)
(22)【出願日】2021年3月18日
【審査請求日】2021年5月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、「柔軟伸縮素材を伝送媒体とする接触・非接触併用型二次元通信の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502258738
【氏名又は名称】学校法人南山学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 聡人
【審査官】
前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6653819(JP,B1)
【文献】
特開2013−058926(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/104786(WO,A1)
【文献】
特開2015−133551(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0302782(US,A1)
【文献】
Akihito Noda et al.,Inter-IC for Wearables (I2We): Power and Data Transfer over Double-sided Conductive Textile,IEEE Transactions on Biomedical circuits and systems,2019年02月,Vol.13 No.1,p.80-90
【文献】
野田聡人,身体表面に分散したデバイスの導電性衣服を介したネットワーク化,電子情報通信学会技術研究報告,2019年02月27日,Vol.118, No.476,p.31-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアル通信線に接続可能なシリアル通信端子と、
近接通信用のコイルアンテナと、
シリアル通信器と、
前記シリアル通信端子に接続されている第1端子と、前記コイルアンテナに接続されている第2端子と、前記シリアル通信器と接続されている第3端子を備えている信号中継器であって、前記第1端子と前記第3端子の間および前記第2端子と前記第3端子の間では信号を伝達し、前記第1端子と前記第2端子の間がアイソレーションされている信号中継器と、
を備えている、2ウェイ通信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、一対の通信線を介した通信と無線近距離通信の2種類の通信方式で通信可能な2ウェイ通信器に関する。
【背景技術】
【0002】
衣服の表裏に導電シートを貼着するとともに、その衣服に複数の小型デバイスを分散配置した装置が知られている(例えば特許文献1、2)。衣服の表裏に貼着された導電シートはシリアル通信線として利用される。夫々の小型デバイスは、温度センサやLEDなどである。小型デバイスが温度センサの場合、導電シートに接続された親機がそれぞれの小型デバイスから温度データを取得する。小型デバイスがLEDの場合、親機からの指令で特定のLEDが点灯する。小型デバイスは、導電シート(シリアル通信線)を介した通信が可能な通信器を備えており、その通信器で親機と通信する。特許文献1、2には、衣服に取り付ける小型デバイスに好適な小型低コストの通信器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6377290号
【特許文献2】特開2020−195091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2のように衣服上のすべての小型デバイスが電気的に並列接続されている系において、それぞれの小型デバイスに個別のデータ伝送を行うためには、それぞれの小型デバイスに固有の識別子を付与した上で、宛先となる識別子を含めてデータを送信することが必要となる。特に、小型デバイスの位置と対応付けられた個別の情報を伝送する目的においては、それぞれの小型デバイスの位置と識別子とを関連付ける必要がある。一例として、それぞれの小型デバイスが一つのLEDを有しており、これを縦横にマトリクス状に配置したLEDディスプレイを衣服上に形成するといった用途においては、LEDの点灯・消灯状態をその位置と対応させて制御する必要があり、小型デバイスの位置と識別子との対応関係が、制御装置(親機)において既知である必要がある。
【0005】
予め識別子を割り当てた複数の小型デバイスを衣服に分散配置することが考えられる。しかしその場合、衣服に取り付ける前の同一外観の複数の小型デバイスのそれぞれに識別子を記したタグを付すなどして識別できるようにしておかなければならないという煩雑さが伴う。このことは、工業的な製造工程において大きな制約となり得る。例えば、大量生産される工業製品において、ねじのような共通の部品は、当然、その一つ一つを区別することなく、同一品種のねじならばどの個体をどのねじ穴に挿入してもよい。同一外観の複数の小型デバイスを、不可視の内部的な識別子情報に応じて所定の位置に正しく固定しなければならないという状況は、ねじを一つ一つ見分けて所定の位置に挿入しなければならない状況に例えることができ、工業的な製造工程におけるその制約は大きい。
【0006】
上記の課題解決の一案は、識別子を割り当てる前の複数の小型デバイスを衣服に取り付けた後に、それぞれの小型デバイスに対してローカル通信により識別子を割り当てることである。識別子の送信器が、非常に密に近接したただ一つの小型デバイスに対してのみ識別子を送信/書き込みできるものとし、隣接した小型デバイスとの混同が生じ得ないことを仮定する。送信器を近接させる作業を行う作業者は、目視により近接した送信対象の小型デバイスの位置を認識することができ、その位置に対して所定の識別子を送信するように作業者が送信器を操作することで、小型デバイスの位置と識別子の間の所定の対応関係が実現されることになる。あるいは、手先に送信器を有するロボットが、手先の座標と識別子を対応させながら識別子の書き込みを行うなどにより自動化された工程でも同様である。
【0007】
この場合、小型デバイスに、シリアル通信線によるマルチ通信機能と、一対一のローカル通信機能が必要になる。マルチ通信機能を有するデバイスも、近接通信などの一対一のローカル通信機能を有するデバイスも既知である。しかしながら、衣服に取り付けるような小型デバイスに2種類の通信器を搭載することは現実的ではない。本明細書は、シリアル通信線を用いた通信と一対一のローカルな無線通信の2種類の通信機能を同時に備えた通信器を小型低コストで実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、2種類の異なる通信方式で通信可能な2ウェイ通信装置を開示する。その通信装置は、シリアル通信線に接続可能なシリアル通信端子と、近接通信用のコイルアンテナと、シリアル通信器と、信号中継器を備える。信号中継器には、シリアル通信端子とコイルアンテナとシリアル通信器が接続される。
信号中継器は、シリアル通信端子に接続されている第1端子と、コイルアンテナに接続されている第2端子と、シリアル通信器と接続されている第3端子を備えており、第1端子と第3端子の間および第2端子と第3端子の間では信号を伝達し、第1端子と第2端子の間がアイソレーションされている。信号中継器は、シリアル通信端子とシリアル通信器の間、および、コイルアンテナとシリアル通信器の間では信号を伝達する。一方、信号中継器は、シリアル通信端子とコイルアンテナの間では信号を遮断する。上記した信号中継器には、パワーコンバイナあるいはパワーディバイダと呼ばれる素子を用いることができる。この2ウェイ通信装置は、シリアル通信端子とコイルアンテナとシリアル通信器を上記した信号中継器で接続することで、シリアル通信器が、シリアル通信端子を通じて送られてくる信号と、コイルアンテナを通じて送られる信号の両方を扱うことができる。コイルアンテナを通じて送られてくる信号は、信号中継器で遮断されるのでシリアル通信端子へは伝達されない。すなわち、コイルアンテナを通じて送られてくる信号は、シリアル通信線に接続された別の通信器には届かない。コイルアンテナを用いたローカル通信が実現する。本明細書が開示する技術は、2種類の通信方法を、シンプルかつ低コストで実現することができる。
【0009】
なお、シリアル通信線を用いた通信機能とローカルな通信機能を有する小型低コストの2ウェイ通信器は、識別子の割り当て以外にも利用価値がある。それゆえ、本明細書が開示する技術は、識別子の割り当て以外の目的にも利用することができる。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例の2ウェイ通信器を含むウエアラブルセンサシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図を参照して実施例の2ウェイ通信器100を説明する。2ウェイ通信器100は、人体各所の温度を計測するウエアラブルセンサシステム2に組み込まれている。ウエアラブルセンサシステム2は、多数のセンサモジュール10、10a、10b等と、親機30とシリアル通信線3を備える。シリアル通信線3は、衣服の表裏に貼着された導電シートであり、複数のセンサモジュール10、10a、10b等は、衣服の各所に取り付けられており、人体各所の温度を計測する。それぞれのセンサモジュールが計測した温度はシリアル通信線3を介して親機30に送られる。
【0012】
シリアル通信線3は、信号線3aとグランド線3bの2線の通信線である。グランド線3bは、ウエアラブルセンサシステム2に接続された複数のデバイスに共通のグランド電位を与える。シリアル通信線3は、親機30とそれぞれのセンサモジュール10、10a、10b等との間で信号を伝送するだけでなく、不図示の電源からセンサモジュール10、10a、10b等へ電力を供給する電力線としても機能する。2線の通信線で電力と信号を送る方法は、例えば文献(特許第6377290号)を参照されたい。
【0013】
センサモジュール10、10a、10b等はすべて同じ構造を有している。以下、センサモジュール10について説明する。
【0014】
センサモジュール10は、温度センサ20と2ウェイ通信器100を備えている。温度センサ20は、入出力端子21とグランド端子22を備えている。入出力端子21は2ウェイ通信器100の第2信号端子113に接続されており、グランド端子22はシリアル通信線3のグランド線3bに接続されている。先に述べたように、シリアル通信線3は電力も伝送する。温度センサ20は、シリアル通信線3を通じて供給される電力で動作する。電力伝送系の回路は図示を省略した。
【0015】
2ウェイ通信器100は、シリアル通信線3に接続されており、親機30と通信することができる。温度センサ20が計測した温度が2ウェイ通信器100とシリアル通信線3を介して親機30へ送信される。
【0016】
センサモジュール10に組み込まれた2ウェイ通信器100について説明する。2ウェイ通信器100は、シリアル通信端子101、グランド端子102、コンデンサ103、シリアル通信器110、信号中継器130、コイルアンテナ120を備えている。
【0017】
シリアル通信端子101はシリアル通信線3の信号線3aに接続され、グランド端子102はシリアル通信線3のグランド線3bに接続される。
【0018】
シリアル通信器110は、例えばRS485などの既知の規格に準拠したシリアル通信を行うことができるデバイスである。シリアル通信器110は、第1信号端子111、第2信号端子113、グランド端子112を備える。RS485規格の通信器は、他にも端子を備えるが、ここでは、説明に必要な端子だけに注目する。なお、温度センサ20と同様に、シリアル通信器110も、シリアル通信線3を通じて供給される電力で動作する。
【0019】
第1信号端子111は、信号中継器130を介してシリアル通信線3の信号線3aとコイルアンテナ120の一端120aに接続されている。信号中継器130については後述する。グランド端子112は、シリアル通信線3のグランド線3bに接続される。シリアル通信器110は、第1信号端子111で受けた信号を受信するとともに、第1信号端子111へ信号を出力することができる。先に述べたように、シリアル通信器110は、シリアル通信線3を介して親機30と通信することができる。
【0020】
第2信号端子113は温度センサ20の入出力端子21に接続されている。先に述べたように、シリアル通信器110は、温度センサ20が計測した温度データを、第2信号端子113を通じて取得する。シリアル通信器110は、温度センサ20から取得した温度データを既知の通信プロトコルに則って親機30へ送信する。
【0021】
信号中継器130は、第1端子131、第2端子132、第3端子133を備えている。第1端子131は、コンデンサ103を介してシリアル通信端子101に接続されている。別言すれば、第1端子131は、コンデンサ103を介してシリアル通信線3の信号線3aに接続される。コンデンサ103は、信号線3aを通じて送られる信号の直流成分(より正確には、所定の遮断周波数よりも低い帯域成分)を遮断する。第2端子132はコイルアンテナ120の一端120aに接続されており、第3端子133はシリアル通信器110の第1信号端子111に接続されている。
【0022】
信号中継器130は、第1端子131と第3端子133の間、および、第2端子132と第3端子133の間では信号を伝達し、第1端子131と第2端子132の間では信号を遮断する。より具体的には、第1端子131と第3端子133の間、および、第2端子132と第3端子133の間は、低損失(例えば損失5dB以下)で接続されているので信号が伝達される。第1端子131と第2端子132の間は損失が大きく(例えば損失25dB以上)、アイソレーションされている。信号中継器130には、既存のパワーディバイダあるいはパワーコンバイナと呼ばれているデバイスの原理を適用することができる。パワーディバイダあるいはパワーコンバイナは電力を要しない受動素子だけで構成される。信号中継器も電力を要しない。
【0023】
コイルアンテナ120の他端120bは、グランド端子102に接続されている。コイルアンテナ120は、近接通信用のアンテナであり、他の近接通信器のアンテナとの間で信号を授受することができる。
【0024】
信号中継器130の役割を説明する。信号中継器130は、シリアル通信端子101とシリアル通信器110の間で信号を伝達するとともに、コイルアンテナ120とシリアル通信器110の間で信号を伝達するが、シリアル通信端子101とコイルアンテナ120の間では信号を遮断する。
【0025】
シリアル通信線3(信号線3a)を通じて送られる信号は、信号中継器130を介してシリアル通信器110に届く。しかし、シリアル通信線3を通じて送られる信号は、コイルアンテナ120には流れない。一方、コイルアンテナ120に相手側の近接通信装置を近づけ、近接通信装置がコイルアンテナ120に送った信号は、信号中継器130を介してシリアル通信器110に届く。しかし、コイルアンテナ120を通じて送られる信号は、シリアル通信線3の信号線3aには流れない。このように、シリアル通信器110はシリアル通信線3を通じて送られてくる信号と、コイルアンテナ120を通じて送られてくる信号のいずれも受信することができる。
【0026】
なお、コイルアンテナ120が伝送することのできる信号レベルと周波数には制限がある。より具体的には、コイルアンテナ120は、所定の遮断周波数以下の信号は遮断する。シリアル通信器110には、コイルアンテナ120の特性に対応した信号を受信可能なデバイスが選定されればよい。この点については後に詳しく説明する。
【0027】
2ウェイ通信器100では、シリアル通信線3を介した通信のプロトコルとして従来のプロトコルを採用することができる。RS485、RS422などのデジタルの通信プロトコルであってもよいし、振幅偏移変調(ASK)方式や、周波数偏移変調(FSK)方式などのプロトコルであってもよい。すなわち、RS485、RS422などの通信プロトコルに準拠した既存の通信チップ、あるいは、振幅偏移変調(ASK)方式や周波数偏移変調(FSK)方式に準拠した既存の通信チップをシリアル通信器110に利用することができる。
【0028】
厳密には、シリアル通信器110には、既知の規格に準拠しつつ、所定の遮断周波数よりも低い成分が遮断された信号に対応する通信デバイスが利用可能である。RS485、RS422などの通信プロトコルに準拠した既存の通信チップを利用する場合、所定の遮断周波数よりも低い帯域の成分が遮断された信号に対応するようにアレンジが必要とされる。これは次の理由による。コイルアンテナ120は、所定の遮断周波数よりも低い帯域の信号は通さない。信号線3aを介して送られる信号は、コンデンサ103によって遮断周波数よりも低い帯域は遮断される。別言すれば、コンデンサ103の容量は、シリアル通信端子101を通じて信号中継器110に送られる信号の帯域が、コイルアンテナ120が通す信号の帯域と同じになるように選定される。コンデンサ103を備えることで、コイルアンテナ120を介して送られる信号と、信号線3aを介して送られる信号の帯域が統一される。シリアル通信器110には、統一された帯域の信号に対応する通信デバイスが採用される。逆にいえば、コンデンサ103によって信号線3aを介して送られてくる信号の帯域をコイルアンテナ120が伝える信号帯域と揃えることで、シリアル通信器110は、信号線3aとコイルアンテナ120のどちらからの信号も受信できるようになる。RS485、RS422などの通信プロトコルに準拠した既存の通信チップを本実施例のシリアル通信器110に対応させるアレンジは、容易に実現できるので詳しい説明は割愛する。シリアル通信端子101と信号中継器110の間には、コイルアンテナ120と同じ信号通過帯域を有するフィルタ(コンデンサ103を含むフィルタ)を接続してもよい。
【0029】
シリアル通信器110の中にフィルタ103の機能が含まれていれば、フィルタ103は不要である。あるいは、親機30とシリアル通信器110との間の通信プロトコルの仕様によっては、フィルタ103が不要な場合もある。コイルアンテナ120を通じて送られてくる信号の帯域が、親機30とシリアル通信器110の間の通信プロトコルの物理層の仕様の許容範囲であれば、シリアル通信器110はコイルアンテナ120を通じた信号を受信することができる。別言すれば、シリアル通信器110が受信可能な信号レベルと周波数には制限があるが、親機30、および、コイルアンテナ120に対応した近接通信装置には、シリアル通信器110の性能に対応した信号を出力可能なデバイスが選定されればよい。
図1のコンデンサ103は、シリアル通信器110の性能に対応するようにシリアル通信線3の信号を調整する工夫の一例である。
【0030】
シリアル通信器110が第1信号端子111を通じて発信する信号は、シリアル通信線3(信号線3a)とコイルアンテナ120のいずれにも流れる。シリアル通信器110が発する信号は、シリアル通信線3を通じて親機30が受信することができるし、コイルアンテナ120に近づけた近接通信装置でも受信することができる。ただし、シリアル通信器110が発する信号は、コンデンサ103を介して信号線3aに流れるので、親機30は、遮断周波数よりも低い帯域が遮断された信号に対応する仕様である。
【0031】
コイルアンテナ120を介して近接通信装置に信号(データ)を送ることを望まない場合は、近接通信装置をコイルアンテナ120に近づけなれなければよい。コイルアンテナ120を介して信号を送りたいが親機30へは信号(データ)を送信することを望まない場合は、信号(データ)にヘッダ領域を設け、そのヘッダ領域に信号(データ)の送り先を指定するようにプロトコルを構築すればよい。
【0032】
上記したように、実施例の2ウェイ通信器100は、シリアル通信線3を介した通信と、コイルアンテナ120を介した無線近接通信の2つの通信方式を実現することができる。シリアル通信線を通して通信を行う通信器(例えばネットワーク通信器)も、コイルアンテナを通して通信を行う通信器(例えばカードリーダ)も既に存在する。しかし、実施例の2ウェイ通信器100は、独立した2個の通信器(例えば、ネットワーク通信器とカードリーダ)を要しないので、2種類の通信方式を小型低コストで実現することができる。
【0033】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例では、2ウェイ通信器100は、温度センサ20の計測データを親機30へ送信する。2ウェイ通信器100は、温度センサを利用したウエアラブルセンサシステム2以外にも適用可能である。例えば温度センサ20の代わりにLED点灯回路をシリアル通信器110の第2信号端子113に接続してもよい。
【0034】
LED点灯回路と2ウェイ通信器100を備えた複数のLEDモジュールを衣服に取り付けたシステムについて述べる。それぞれのLEDモジュールの2ウェイ通信器100に、近接通信装置からコイルアンテナ120を介して識別子を送る。すなわち、個々のLEDモジュールにローカルな無線通信方式にて識別子を割り当てる。
【0035】
コイルアンテナ120に近接通信装置を近づける際に作業者はLEDモジュール(2ウェイ通信器100)の位置と識別子を対応付けて把握することができる。全てのLEDモジュールに識別子を割り当てた後、親機30から特定の識別子とLED点灯コマンドをシリアル通信線3へ流す。すなわち、シリアル通信線3を通じてデータを送る。特定の識別子が自己の識別子であることを検知したLEDモジュールは、自己のLEDを点灯させる。LEDモジュールの2ウェイ通信器100は、無線通信方式とシリアル通信線を介した通信方式の2種類の通信方式を利用できる。
【0036】
先に述べたように、2ウェイ通信器100から親機30あるいは近接通信装置へデータを送ることも可能である。
【0037】
実施例の2ウェイ通信器100は、多数のモジュールを衣服等に分散配置するシステムに適用できるほどに小型低コストで実現できる。そのようなシステムは、具体的には、衣服の表裏のそれぞれに貼着された、シリアル通信線として利用する導電シートと、導電シートに分散配置された複数のモジュールであって、実施例の2ウェイ通信器100とセンサあるいはLEDを備えた複数のモジュールと、導電シートに接続された親機を備える。各モジュールが備えるセンサは、人体各所の温度を計測する。コイルアンテナ120を通じたローカル通信で各2ウェイ通信器100に個別に識別子を割り当てる。識別子を得た2ウェイ通信器100は、センサの計測データに識別子を付して導電シートに送る。親機は、送られてくる識別子で温度測定箇所を特定することができる。あるいは、親機から識別子を含むコマンドを導電シートに送ると、その識別子を有する2ウェイ通信器100が反応し、センサやLEDにコマンドを実行させることができる。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
2:ウエアラブルセンサシステム 3:シリアル通信線 3a:信号線 3b:グランド線 10、10a、10b:センサモジュール 20:温度センサ 21:入出力端子 22:グランド端子 30:親機 100:2ウェイ通信器 101:シリアル通信端子 102:グランド端子 103:コンデンサ 110:シリアル通信器 111:第1信号端子 112:グランド端子 113:第2信号端子 120:コイルアンテナ 130:信号中継器 131:第1端子 132:第2端子 133:第3端子
【要約】
【課題】本明細書は、一対の通信線を介した通信と無線近距離通信の2種類の通信方式で通信可能な通信器を低コストで実現する。
【解決手段】本明細書が開示する2ウェイ通信器、シリアル通信線に接続可能なシリアル通信端子と、近接通信用のコイルアンテナと、シリアル通信器と、信号中継器を備える。信号中継器には、シリアル通信端子とコイルアンテナとシリアル通信器が接続される。信号中継器は、シリアル通信端子とシリアル通信器の間、および、コイルアンテナとシリアル通信器の間では信号を伝達する。一方、信号中継器は、シリアル通信端子とコイルアンテナの間では信号を遮断する。この2ウェイ通信装置は、シリアル通信端子とコイルアンテナとシリアル通信器を上記した信号中継器で接続することで、1個のシリアル通信器が、シリアル通信端子を通じて送られてくる信号と、コイルアンテナを通じて送られる信号の両方を扱うことができる。
【選択図】
図1