【文献】
サントリー,ノンアルコールビールテイスト飲料No.1※ブランド「オールフリー」リニューアル新発売、2014年12月16日、[online]、[検索日:2021年2月21日]、<URL:https://www.suntory.co.jp/news/2014/12237.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原料中の麦芽比率が50質量%以上と高く、かつ糖質量が0.5g/100ml以下にまで低減されたビールテイスト飲料はこれまで得られていなかった。本発明者らは、後述する実施例に示すように、麦芽の使用比率が高く、かつ糖質量が0.5g/100ml以下であるビールテイスト飲料においては、甘味のキレが充分でないという特有の問題があることを見出した。
【0006】
本発明は、麦芽の使用比率が50質量%以上であり、糖質含有量が0.5g/100ml以下でありながら、甘味のキレに優れたビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルコール度数を3.7v/v%以下にすることにより、麦芽の使用比率50質量%以上かつ糖質含有量が0.5g/100ml以下であるビールテイスト飲料であっても甘味のキレを改善することができることを見出した。
【0008】
すなわち本発明のビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上であり、ビールテイスト飲料のアルコール度数が3.7v/v%以下であり、糖質含有量が0.5g/100ml以下である。上記ビールテイスト飲料は、甘味のキレに優れる。
【0009】
上記ビールテイスト飲料において、ビールテイスト飲料中のカプロン酸エチルの濃度が0.8ppm以下であることが好ましい。カプロン酸エチルの濃度が上記範囲であることにより、ビールテイスト飲料の甘味のキレを更に改善するとともに、ドリンカビリティを高めることができる。
【0010】
上記ビールテイスト飲料において、原料中の麦芽の比率が80質量%以上であることが好ましい。上記ビールテイスト飲料は、アルコール度数が3.7v/v%以下であることによって、麦芽の使用比率が80質量%以上であり、かつ糖質量が0.5g/100ml以下であるビールテイスト飲料において確認された、味のすっきり感が十分でないという特有の問題を改善することができる。
【0011】
本発明はまた、麦芽の比率が50質量%以上である原料を用い、ビールテイスト飲料のアルコール度数が3.7v/v%以下であり、かつ糖質含有量が0.5g/100ml以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。上記製造方法により、甘味のキレに優れたビールテイスト飲料を製造することができる。
【0012】
本発明はまた、ビールテイスト飲料のアルコール度数が3.7v/v%以下となるように調整することを含む、糖質含有量が0.5g/100ml以下であり、かつ原料中の麦芽の比率が50質量%以上であるビールテイスト飲料の、甘味のキレを改善する方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、麦芽の使用比率が50%以上であり、糖質含有量が0.5g/100ml以下でありながら、甘味のキレに優れたビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本明細書において「原料」とは、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)に基づいて決定されたビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。
【0016】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上であり、ビールテイスト飲料のアルコール度数が3.7v/v%以下であり、糖質含有量が0.5g/100ml以下である。
【0017】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料は、アルコール度数(濃度)が1.0v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1.0v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が1.0v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であることが好ましい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0018】
ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の下限は、例えば、1.0v/v%以上、1.5%以上、2.0v/v%以上、2.5%以上又は3.0v/v%以上であってよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の上限は、3.5v/v%以下、3.0v/v%以下、2.5%以下、2.0v/v%以下又は1.5%以下であってもよい。
【0019】
ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)上のビール、発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。
【0020】
ビールテイスト飲料のアルコール度数を調整する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、任意のアルコール度数となるように発酵の程度を調整する、水又はアルコールを添加してアルコール度数を調整する等の方法を用いることができる。
【0021】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であることが好ましい。本明細書において発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm
2)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm
2)未満であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm
2)程度であってもよく、0.235MPa(2.4kg/cm
2)程度であってもよい。
【0022】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上である。すなわち原料は、麦芽を50質量%以上含む。原料中の麦芽の比率は、66.7質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。原料中の麦芽比率が高いほど、より好ましい香味を有するビールテイスト飲料を得ることができる。原料中の麦芽の比率は100質量%であってもよい。原料中の麦芽の比率は、例えば、100質量%以下、99質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下であってもよい。
【0023】
麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等であってよく、大麦であることが好ましい。麦芽にはモルトエキスが含まれる。
【0024】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦芽以外の麦原料を含んでいてよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等の麦;麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキスを抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0025】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料以外の植物原料を含んでもよい。麦原料以外の植物原料としては、例えば、とうもろこし、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類等が挙げられる。麦原料以外の植物原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、原料としてとうもろこしを用いないことが好ましい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてスターチ、グリッツ等の澱粉原料を含んでいてもよい。
【0026】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として糖類(糖質原料)を含んでいてもよい。糖類(糖質原料)としては、平成11年6月25日付けの酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第3条において規定される「糖類」であれば特に制限されない。糖類は、単糖類、二糖類、三糖類又はこれらの組み合わせであってよく、四糖以上の糖類を更に含んでいてもよい。単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロース、アラビノース、タガトース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、イソマルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、マルトトリオース、イソマルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。四糖以上の糖類としては、例えば、スタキオース、マルトテトラオース等が挙げられる。糖類の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等であってよい。液状の糖類としては、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖であってもよい。糖類はグラニュー糖又は上白糖であってもよい。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類における、単糖類、二糖類及び三糖類の合計比率が50質量%以上、70%質量以上、90%質量以上又は95質量%以上であってもよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類における単糖類の比率が50質量%以上、70%質量以上、90%質量以上又は95質量%以上であってもよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類における二糖類の比率が50質量%以上、70%質量以上、90%質量以上又は95質量%以上であってもよい。
【0028】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類(糖質原料)の比率が50質量%以下である。当該比率は、例えば、33.3質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下又は1質量%以下であってもよい。原料中の糖類の比率は、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上又は20質量%以上であってよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として糖類を用いていなくてもよい。
【0029】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、カプロン酸エチルの濃度が0.8ppm以下であることが好ましい。カプロン酸エチルの濃度が上記範囲であることにより、ビールテイスト飲料における、味のすっきり感及び甘味のキレを改善することができるとともに、ドリンカビリティをより高めることができる。ドリンカビリティとは、飲みやすさを意味する。本実施形態に係るビールテイスト飲料のカプロン酸エチル濃度は、0.5ppm以下であることがより好ましく、0.4ppm以下であることが更に好ましく、0.3ppm以下であることがより更に好ましい。カプロン酸エチルの濃度は、例えば、0.05ppm以上又は0.1ppm以上であってよい。
【0030】
カプロン酸エチルの濃度は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.22 低沸点香気成分」に記載の方法によって測定することができる。
【0031】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が0.5g/100ml以下である。本明細書における糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分を除いたものをいう。また、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分の量を控除することにより算定される。タンパク質、脂質、灰分、水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。アルコール分の量は、水分量とともに測定することができる。具体的には、タンパク質の量は改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法で測定し、水分及びアルコール分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法で測定する。
【0032】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が0.5g/100ml未満、0.4g/100ml以下又は0.3g/100ml以下であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が0.1g/100ml以上、0.2g/100ml以上、0.3g/100ml以上又は0.4g/100ml以上であってもよい。ビールテイスト飲料の糖質含有量は、公知の方法によって調整することができ、例えば、製造工程における酵素(特に多糖分解酵素)の添加量、原料の種類及び使用量等を調整することによって所望の程度に低減することができる。
【0033】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、食物繊維を含んでいてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料の食物繊維含有量は、例えば、1.0g/100ml未満、0.7g/100ml未満、0.5g/100ml未満、0.3g/100ml未満又は0.2g/100ml未満であってよい。食物繊維含有量は、高速液体クロマトグラフ法又はプロスキー法で測定することができる。食物繊維含有量は、原料の種類、使用量等によって調整することができる。
【0034】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、植物原料由来の食物繊維のほか、原料として別途用いた食物繊維を含んでいてもよい。このような食物繊維としては、例えば難消化性デキストリンが挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、原料としての食物繊維を含まないことが好ましい。
【0035】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酵母エキスを原料として使用してもよいが、酵母エキス特有の香りをビールテイスト飲料に持ち込まない観点から、原料として酵母エキスを使用していないことが好ましい。
【0036】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、高甘味度甘味料を含んでいてもよい。高甘味度甘味料としては、人工甘味料、ステビア等が挙げられる。人工甘味料としては、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、ネオテーム等が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、人工甘味料を含まないことが好ましい。
【0037】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、着色料を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素等が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、カラメル色素を含まないことが好ましい。
【0038】
原料中の麦芽は色麦芽を含んでいてもよい。原料中の色麦芽の使用比率は、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上又は10質量%以上であってよい。原料中の色麦芽の使用比率は、例えば、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下であってよい。色麦芽を配合することによって、得られるビールテイスト飲料の色を調整することができる。
【0039】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、飲料に通常配合される酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等の添加剤を含んでいてもよい。
【0040】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0041】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、麦芽の比率が50質量%以上である原料を用い、ビールテイスト飲料のアルコール度数が3.7v/v%以下であり、かつ糖質含有量が0.5g/100ml以下となるように調整することを含む。
【0042】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、原料、水、酵素、及び必要に応じて各種添加剤を混合して原料を糖化し、糖化液を濾過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を得る仕込工程、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させる発酵工程を経ることで製造することができる。また、発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液に対して濾過、加熱(殺菌)、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。
【0043】
仕込工程及び/又は発酵工程で添加する酵素としては、例えば、多糖分解酵素(例:α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、セルラーゼ(β−グルカナーゼを含む)、ヘミセルラーゼ)、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を用いることができる。酵素は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。酵素の添加量は、例えば、原料の総量に対して0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上又は0.3質量%以上であってよく、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下又は0.1質量%以下であってよい。
【0044】
上記仕込工程で添加するプロテアーゼとしては、例えば、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、エキソ型プロテアーゼ、エンド型プロテアーゼ等が挙げられる。また、エンド型及びエキソ型両方の性質を有するプロテアーゼが挙げられる。プロテアーゼは、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。プロテアーゼの添加量は、使用する酵素の種類、酵素活性、原料の種類等に応じて適宜調節することができる。プロテアーゼの添加量は、例えば、原料の総量に対して0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上又は0.3質量%以上であってよく、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下又は0.1質量%以下であってよい。
【0045】
仕込工程で添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0046】
発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができ、中でも大麦スピリッツが好ましい。一実施形態として、ビールテイスト飲料はスピリッツ(好ましくは、大麦スピリッツ)を含んでもよい。
【0047】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、甘味のキレに優れるという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、ビールテイスト飲料のアルコール度数が3.7v/v%以下となるように調整することを含む、糖質含有量が0.5g/100ml以下であり、かつ原料中の麦芽の比率が50質量%以上であるビールテイスト飲料の甘味のキレを改善する方法が提供される。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0049】
(糖質量)
本実施例において飲料の糖質量は以下の方法で測定した。まず、測定対象である飲料の水分、アルコール分、タンパク質、灰分の量をそれぞれ測定した。水分とアルコール分は常圧加熱乾燥法により測定した。タンパク質量は、改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法により測定した。灰分量は、直接灰化法により測定した。サンプル中の脂質量を0g/100ml、食物繊維量を0g/100mlとみなし、サンプルの重量から、水分、アルコール分、タンパク質量及び灰分量を引いた値をサンプルの糖質量(g/100ml)として算定した。なお、アルコール又は水等の添加により濃度調整を行ったサンプルの糖質量については、上記方法で測定した濃度調整前のサンプルの糖質量の値から添加量に応じて算出した。
【0050】
[予備試験]
表1に示す比率の麦芽(粉砕した大麦麦芽)、水、及び多糖分解酵素を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。予備試験例1では原料中の比率0.01%未満のエンドウタンパクも原料として用いた。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁に、表1に示す比率の糖類(グラニュー糖)及びホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、表1に示すアルコール度数となるように必要に応じて適宜、水及び又はアルコールを添加して、ビールテイスト飲料サンプル1〜4を調製した。
【0051】
得られたサンプルについて、訓練された6名のパネルにより官能評価を行った。官能評価は、味のすっきり感及び甘味のキレについて、1〜5の5段階で行い、その平均値を評価スコアとした。味のすっきり感の評価項目では、数値が高いほど、よりすっきり感じられて良好であることを示す。甘味のキレとは、飲用後に甘味が口に残らずに消える感覚である。甘味のキレの評価項目では、数値が高いほど、甘味のキレがよい、すなわち飲用した後に甘味が口からより早く消え良好に感じられることを示す。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
原料中の麦芽比率が50質量%以上である表1のビールテイスト飲料において、糖質含有量が高い予備試験例3及び予備試験例4では甘味のキレは良好であった一方で、糖質含有量が0.5g/100ml以下である場合に甘味のキレが良好でないという問題があることが分かった。さらに、原料中の麦芽比率が80質量%以上であり、糖質含量が0.5g/100ml以下である場合には、味のすっきり感が良好でないという問題があることが分かった。
【0054】
[試験例1]
粉砕した大麦麦芽、水、及び多糖分解酵素を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、表2に示すアルコール度数となるように必要に応じて適宜、水及び/又はアルコールを添加して、実施例1〜3、比較例1のビールテイスト飲料を調製した。
【0055】
粉砕した大麦麦芽、水、及び多糖分解酵素を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。実施例4では原料中の比率0.01%未満のエンドウタンパクも原料として用いた。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)に、グルコアミラーゼ、β−アミラーゼ及びプルラナーゼを投入し、ビール酵母を添加して所定期間発酵させて、実施例4のビールテイスト飲料を得た。
【0056】
調製したビールテイスト飲料について、予備試験と同様に官能評価を行った。結果を表2に示す。糖質含有量が0.5g/100ml以下であるビールテイスト飲料においては、アルコール度数が3.7v/v%以下であると、甘味のキレに優れ、かつ味のすっきり感にも優れることが示された。
【0057】
【表2】
【0058】
[試験例2]
実施例1で得られたビールテイスト飲料に、飲料中のカプロン酸エチル含有量が表3に示す濃度となるようにカプロン酸エチルを適宜添加し、実施例5〜7のビールテイスト飲料を調製した。調製したビールテイスト飲料について、予備試験と同様に官能評価を行った。また、評価項目としてドリンカビリティを加えて評価した。ドリンカビリティの評価は1〜5の5段階で行い、その平均値を評価スコアとした。ドリンカビリティとは、飲みやすさの感覚である。ドリンカビリティの評価項目では、数値が高いほど、「グラス1杯のサンプル飲料を飲んだ後に、もう1杯飲みたい」とより強く感じることを示す。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例1、5〜7で得られたビールテイスト飲料は、味のすっきり感、甘味のキレ、及びドリンカビリティにおいて良好な結果であった。カプロン酸エチルは含有量が少ないほど各官能評価においてより良好な傾向であり、特にドリンカビリティにおいてその傾向が顕著であった。