(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る締結作業管理装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1に示すように、本実施形態に係る締結作業管理装置の第1実施形態が適用される乗客コンベアは、乗客が把持する移動手すり1と、躯体2内に配置されて無端状に接続された踏み段チェーン3と、踏み段チェーン3に接続された踏み段4とを備えている。また、上部機械室13に収納されており、踏み段4を予め決められた軌跡で移動させる踏み段反転装置5と、踏み段4及び移動手すり1を駆動する駆動装置6とを備えている。
【0011】
図2に示すように、踏み段チェーン3の踏み段取り付け部7と、踏み段4とは締結部品例えばボルト8で締結されている。踏み段4には、連続し重複する事のない番号が記載されたシール等の銘板が取り付けられている。なお、銘板に代えて二次元バーコードが付されていてもよい。前述した銘板、あるいは二次元バーコードによって特定された番号の踏み段4を締結するボルト8の部分は締結箇所を構成している。
【0012】
本発明に係る締結作業管理装置の第1実施形態は、前述した締結箇所におけるボルト8の締結作業が正常に行われたかを管理する装置である。
【0013】
図3に示すように、第1実施形態に係る締結作業管理装置は、作業者W1の胸に装着されて前述した締結箇所を撮像する撮像装置、例えばウェアラブルカメラ10を備えている。このウェアラブルカメラ10は、
図5に示すように、締結箇所を撮像し、撮像信号を出力する撮像部10aと、撮像部10aによって撮像された画像を画像信号として出力する出力部とを有している。
【0014】
また、第1実施形態は、
図3に示すように、ボルト8を回転させる回転工具、例えばトルクレンチ11を備えている。トルクレンチ11は、
図4及び
図9に示すように、ボルト8に装着されるソケット11aと、作業者W1によって把持される把持部11bと、トルクレンチ11によってボルト8に与えられた締め付けトルクを測定する測定部11cと、測定部11cで測定された締め付けトルク値を出力する通信部11dとを有している。
【0015】
また、第1実施形態は、
図3に示すように、作業者W1の腕部に装着されて、作業者W1の筋電値を計測する計測装置を構成するウェアラブルセンサ12を備えている。ウェアラブルセンサ12は、
図6及び
図10に示すように、作業者W1の筋肉の動きに係る皮膚表面の電位の変化を測定する筋電値センサ部12aと、筋電値センサ部12aで測定された筋電値を出力する通信部12cと、作業者W1の腕部への装着を容易にさせる装着帯12bとを有している。
【0016】
図7は、ウェアラブルセンサ12から出力された筋電値の波形特性を示す図である。横軸は時間tを示し、縦軸は筋電値Bを示している。同
図7において、
a: ボルト8の取り付け作業時に得られる波形特性
b: ボルト8の取り外し作業時に得られる波形特性
Pa: ボルト8の取り付け作業時にトルクレンチ11によって大きなトルクが与えられる回転操作領域
Pb: ボルト8の取り外し作業時にトルクレンチ11によって大きなトルクが与えられる回転操作領域
Ra: ボルト8の取り付け作業時にトルクレンチ11によってすばやい回転操作が行われる回転操作領域
Rb: ボルト8の取り外し作業時にトルクレンチ11によってすばやい回転操作が行われる回転操作領域
である。
【0017】
図7の波形特性bで示すように、ボルト8にソケット11aを装着させたトルクレンチ11を反時計方向に回転させたボルト8の取り外し作業時にあっては、トルクレンチ11の回転操作の初期段階の回転操作領域Pb
(請求項における第1所定期間)において大きなトルクに対応する大きな値の筋電値Bが出力される。その後のトルクレンチ11の回転操作に伴って小さな値の筋電値Bが出力され、ボルト8が取り外された時点で筋電値Bは0となる。
【0018】
また、
図7の波形特性aで示されるように、ボルト8にソケット11aを装着させたトルクレンチ11を時計方向に回転させたボルト8の取り付け作業時にあっては、筋電値Bが0の状態から回転操作領域Raで示されるように小さな値の筋電値Bが継続的に出力される。ボルト8の締め付けが完了する直前の時点で回転操作領域Pa
(請求項における第2所定期間)で示されるように大きなトルクに対応する大きな値の筋電値Bが出力される。
【0019】
したがって、
図7に示す筋電値Bの波形特性a,bから、ボルト8の取り付け作業が実施されているか、または、取り外し作業が実施されているかを検出することができる。
【0020】
また、第1実施形態は、
図3に示すように、ウェアラブルカメラ10から出力された画像信号、トルクレンチ11から出力された締め付けトルク値、ウェアラブルセンサ12から出力された筋電値をそれぞれ入力し、運搬が容易な制御装置を構成するタブレット形パーソナルコンピュータ(以下、「タブレット」という。)9を備えている。
【0021】
図8に示すように、タブレット9は、ウェアラブルカメラ10、トルクレンチ11、及びウェアラブルセンサ12と無線通信を行う通信部9aを備えている。
【0022】
また、タブレット9は、撮像装置を構成するウェアラブルカメラ10によって撮像された締結箇所、すなわち番号を含む踏み段4の画像を表示させる処理を行うとともに、計測装置を構成するウェアラブルセンサ12によって計測された筋電値と、回転工具を構成するトルクレンチ11によってボルト8に与えられた締め付けトルク値とに基づいて、締結箇所におけるボルト8の取り付け、取り外し作業が正常に行なわれたか判定する処理部9bを有している。この処理部9bは、CPU(Central Processing Unit)から成る。
【0023】
また、タブレット9は、ボルト8の取り付け箇所、例えばボルト8が取り外された取り外し箇所に再度取り付けられるボルト8の取り付け箇所を締結箇所データ、すなわち取り外し箇所データとして記憶するフラッシュメモリによって構成された記憶部9cを有している。
【0024】
この記憶部9cは、ボルト8の取り付け作業の完了時に、前述したボルト8の取り外し箇所にボルト8が取り付けられていない旨の文言、または画像を記憶するものから成る。ボルト8が取り付けられていない旨の文言は、例えば「番号○○の踏み段4にボルトを取り付けて下さい。」である。また、取り付けられていない旨の画像は、例えば番号○○の踏み段4に、ボルト8を取り付けることを促す画像である。
【0025】
また、記憶部9cは、ボルト8の取り外し作業が完了したと見做される際の締め付けトルク値及び筋電値を、第1トルク閾値及び第1筋電値閾値として予め記憶する。また、ボルト8の取り付け作業が完了したと見做される際の締め付けトルク値及び筋電値を、第2トルク閾値及び第2筋電値閾値として予め記憶する。また、ボルト8の取り付け作業が完了したと見做される際の許容される締め付けトルク値の範囲を規定範囲として予め記憶する。前述した第1トルク閾値、第2トルク閾値、第1筋電値閾値、及び第2筋電値閾値は、ボルト8の締結作業に熟練した作業者W1が、予めボルト8を緩めて取り外した際に得られる実測値、あるいは予めボルト8を締め付けて取り付けた際に得られる実測値に基づいて設定されている。
【0026】
また、タブレット9は、ウェアラブルカメラ10で撮像された締結箇所の画像を表示するとともに、ボルト8の取り外し箇所に再度ボルト8を取り付ける作業に際し、ボルト8の取り付け作業が完了した時点でボルト8の取り付け忘れを生じているときに、記憶部9cに記憶された取り外し箇所にボルト8が取り付けられていない旨の文言または画像を表示する表示部9dを有している。この表示部9dは、タッチパネル形の液晶ディスプレイによって構成されている。
【0027】
前述した処理部9bは、ボルト8の取り外し作業時に、トルクレンチ11の測定部11cで測定された締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された第1トルク閾値か判定するとともに、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第1筋電値閾値か判定する。締め付けトルク値が第1トルク閾値と判定され、かつ、筋電値が第1筋電値閾値と判定されたときに、ボルト8の取り外し作業は正常に行われたと判定する。
【0028】
また、処理部9bは、ボルト8の取り付け作業時に、トルクレンチ11の測定部11cで計測された締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された第2トルク閾値か判定するとともに、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第2筋電値閾値か判定する。締め付けトルク値が第2トルク閾値と判定され、かつ、筋電値が第2筋電値閾値と判定されたときに、さらに、締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された規定範囲に含まれるかを判定する。規定範囲に含まれると判定されたときに、ボルト8の取り付け作業は正常に行われたと判定する。
【0029】
また、処理部9bは、ウェアラブルカメラ10によって撮像された締結箇所の画像に基づいて、記憶部9cに取り外し箇所データ(踏み段4の番号)を記憶させる処理を行う。また、ボルト8の取り付け作業に際して、記憶部9cに記憶された締結箇所データ、すなわち取り外し箇所データに基づいて、ボルト8が取り外された取り外し箇所にボルト8が取り付けられたか判定し、取り外し箇所にボルト8が取り付けられていないと判定されたときに注意喚起信号を出力する。
【0030】
処理部9bから出力される注意喚起信号は、取り外し箇所にボルト8が取り付けられていない旨の前述した文言または画像を表示部9dに表示させる表示信号から成る。
【0031】
また、処理部9bは、取り外し箇所にボルト8が取り付けられたときに、記憶部9cに記憶された対応する取り外し箇所データ(踏み段4の番号)を消去する処理を行う。
【0032】
なお、タブレット9は、ボルト8の取り外し作業、取り付け作業の開始を指示する作業開始指示部9eと、ボルト8の取り外し作業、取り付け作業の終了を支持する作業終了指示部9iとを有している。
【0033】
以下、第1実施形態で実施されるボルト8の取り外し作業、取り付け作業の管理手順について説明する。
【0034】
[ボルト8の取り外し作業]
作業者W1は、
図3に示すように、胸にウェアラブルカメラ10を装着する。また、トルクレンチ11を回転操作する左右の少なくとも一方の腕、例えば右腕の肩関節から肘関節の間にウェアラブルセンサ12を装着する。
【0035】
図11に示すように、作業者W1は、取り外す踏み段4がボルト8の取り外し作業が可能な位置となるように乗客コンベアを運転し、上部機械室13の中に入る。次に、作業者W1はタブレット9の作業開始指示部9eを操作する。この作業開始指示部9eの操作によりウェアラブルカメラ10が起動する。このウェアラブルカメラ10の起動により、タブレット9の処理部9bの処理で表示部9dにウェアラブルカメラ10で撮像された画像が表示される。画像の検出は、一般に供される画像輪郭検出技術、例えばエッジ処理等により行われる。
【0036】
次に作業者W1は、取り外す踏み段4に係るボルト8にトルクレンチ11のソケット11aを装着し、トルクレンチ11を反時計方向に回転させる。
【0037】
なお、締結箇所においてウェアラブルカメラ10によるボルト8の撮像が困難な場合には、ボルト8の撮像にはこだわらずに踏み段4の番号が明確となる画像のみを撮像してもよい。
【0038】
タブレット9の処理部9bは、トルクレンチ11の測定部11cで測定され、通信部11dから出力された締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された第1トルク閾値か判定する。また、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第1筋電値閾値か判定する。
【0039】
締め付けトルク値が第1トルク閾値と判定され、かつ、筋電値が第1筋電値閾値と判定されたときに、ボルト8の取り外し作業は正常に行われたと処理部9bで判定される。また、このとき処理部9bの処理により、ボルト8が取り外された締結箇所、すなわち踏み段4の番号が取り外し箇所データとして記憶部9cに記憶される。また、処理部9bから出力される信号により、タブレット9の表示部9dにボルト8の取り外し作業が正常に行われた旨が表示される。
【0040】
なお、締結箇所が複数存在する場合は、同様の操作が全ての締結箇所のボルト8が取り外されるまで行なわれる。全ての締結箇所のボルト8の取り外し作業が完了したときには、作業者W1は、タブレット9の作業終了指示部9fを操作する。作業終了指示部9fが操作されると処理部9bの処理によりウェアラブルカメラ10は作動を停止する。
【0041】
[ボルト8の取り付け作業]
作業者W1は、踏み段4を踏み段チェーン3の踏み段取り付け部7に当接させ、ボルト8の取り付け作業が可能な位置まで乗客コンベアを運転し、上部機械室13の中に入る。次に作業者W1は、作業開始指示部9eを操作する。これによりウェアラブルカメラ10が起動する。このウェアラブルカメラ10の起動により、タブレット9の処理部9bの処理で表示部9dにウェアラブルカメラ10で撮像された画像が表示される。作業者W1は、踏み段4及び踏み段チェーン3の踏み段取り付け部7にボルト8を装着させ、ボルト8をトルクレンチ11で時計方向に回転させて締め付ける。
【0042】
タブレット9の処理部9bは、トルクレンチ11の測定部11cで測定された締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された第2トルク閾値か判定する。また、ウェアラブルセンサ12で計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第2筋電値閾値か判定する。
【0043】
締め付けトルク値が第2トルク閾値と判定され、かつ、筋電値が第2筋電値閾値と判定されたときに、締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された規定範囲に含まれるか判定する。規定範囲に含まれると判定されたときに、ボルト8の取り付け作業は正常に行われたと処理部9bで判定される。
【0044】
このとき処理部9bから出力される信号によりタブレット9の表示部9dに、ボルト8の取り付け作業が正常に行われた旨が表示される。また、処理部9bは、記憶部9cにおける該当する踏み段4に係る取り外し箇所データ(踏み段4の番号)の記憶を消去する処理を行う。
【0045】
なお、締結箇所が複数存在する場合には、同様の動作が全ての締結箇所にボルト8が取り付けられるまで行われる。全ての締結箇所のボルト8の取り付け作業が終了したときには、作業者W1はタブレット9の作業終了指示部9iを操作する。この操作に応じて処理部9bは、記憶部9cに記憶された取り外し箇所データ(踏み段4の番号)の有無を判定する。取り外し箇所データが記憶部9cに記憶されていなければ、処理部9bの処理により全てのボルト8の取り付け作業が正常に行われた旨の表示が、表示部9dに表示される。
【0046】
また、記憶部9cに取り外し箇所データの記憶が存在している場合には、処理部9bの処理により表示部9dに、該当する取り外し箇所にボルト8が取り付けられていない旨の前述した文言または画像が表示される。この表示部9dに表示された文言または画像に応じて作業者W1は、該当する取り外し箇所にボルト8を取り付けることを促される。
【0047】
このようにして取り付け忘れを生じたボルト8が取り外し箇所に取り付けられて、記憶部9cに記憶された該当する取り外し箇所データが消去されると、処理部9bの処理によりウェアラブルカメラ10は作動を停止する。
【0048】
このように構成した第1実施形態によれば、ウェアラブルカメラ10によって撮像された画像、トルクレンチ11の測定部11cで測定された締め付けトルク値、及びウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aによって計測された筋電値に基づいて、締結箇所に対するボルト8の取り外し、取り付け作業が正常に行われたかを精度良く管理することができる。また、締結箇所におけるボルト8の取り付け忘れを確実に防ぐことができる。
【0049】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態に係る締結作業管理装置も、第1実施形態におけるのと同様に、
図3に示したウェアラブルカメラ10及びウェアラブルセンサ12を備えている。ボルト8を回転させる回転工具は、
図4に示すソケット11aと把持部11bを有するものの、測定部11c及び通信部11dを有さない一般工具、例えばスパナから成る。
【0050】
また、この第2実施形態に備えられたタブレット9の記憶部9cは、ボルト8の取り外し作業が完了したと見做される際の筋電値を第1筋電値閾値として予め記憶し、ボルト8の取り付け作業が完了したと見做される際の筋電値を第2筋電値閾値として予め記憶する。また、記憶部9cは、
図12に示す筋電値Bと締め付けトルク値Tとの相関関係を記憶する。この相関関係は、筋電値Bの値が大きくなるに従って締め付けトルク値が大きくなる関係となっている。また、記憶部9cは、ボルト8の取り付け作業が完了したと見做される際の許容される締め付けトルク値の範囲を規定範囲Eとして記憶する。
【0051】
タブレット9の処理部9bは、ボルト8の取り外し作業時に、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第1筋電値閾値か判定する。計測された筋電値が第1筋電値閾値と判定されたときにボルト8の取り外し作業が正常に行われたと判定する。
【0052】
また、処理部9bは、ボルト8の取り付け作業時に、ウェアラブルセンサ12で計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第2筋電値閾値か判定する。第2筋電値閾値と判定されたときに、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値と、記憶部9cに記憶された
図12の相関関係とに基づいて締め付けトルク値を演算し、演算された締め付けトルク値が記憶部9cに記憶された規定範囲Eに含まれるか判定する。規定範囲Eに含まれると判定されたときに、ボルト8の取り付け作業は正常に行われたと判定する。
【0053】
この第2実施形態における処理部9bも、第1実施形態における処理部9bと同様に、ウェアラブルカメラ10によって撮像された締結箇所の画像に基づいて記憶部9cに取り外し箇所データ(踏み段4の番号)を記憶させる処理を行う。また、ボルト8の取り付け作業に際して記憶部9cに記憶された取り外し箇所データに基づいて、ボルト8が取り外された取り外し箇所にボルト8が取り付けられたか判定する。取り外し箇所にボルト8が取り付けられていないと判定されたときに注意喚起信号を出力する。注意喚起信号は、取り外し箇所にボルト8が取り付けられていない旨の文言、または画像を表示部9dに表示させる表示信号から成る。
【0054】
その他の構成は、前述した第1実施形態と同等である。また、第2実施形態に係る締結作業管理装置が適用される機械、及び締結箇所も、第1実施形態と同様の
図1に示す乗客コンベア、及び番号が付された踏み段4のボルト8部分である。
【0055】
[取り外し作業]
作業者W1は、胸部にウェアラブルカメラ10を装着する。また、スパナを操作する左右の少なくとも一方の腕に、例えば右腕にウェアラブルセンサ12を装着する。
【0056】
作業者W1は、取り外す踏み段4がボルト8の取り外し作業が可能となるように乗客コンベアを運転し、上部機械室13の中に入る。次に作業者W1は、タブレット9の作業開始指示部9eを操作してウェアラブルカメラ10を起動する。
【0057】
次に作業者W1は、取り外す踏み段4に係るボルト8にスパナのソケットを装着し、スパナを反時計方向に回転させる。
【0058】
タブレット9の処理部9bは、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第1筋電値か判定する。
【0059】
筋電値が第1筋電値閾値と判定されたときに、ボルト8の取り外し作業は正常に行われたと処理部9bで判定される。また、ボルト8の取り外し箇所が取り外し箇所データとして記憶部9cに記憶される。このとき処理部9bから出力される信号により、タブレット9の表示部9dに、ボルト8の取り外し作業が正常に行われた旨が表示される。
【0060】
なお、締結箇所が複数個所存在する場合には、同様の動作が全ての締結箇所からボルト8が取り外されるまで行われる。全ての締結箇所のボルト8の取り外し作業が完了したときに、作業者W1は、タブレット9の作業終了指示部9iを操作する。この作業終了指示部9iの操作に応じた処理部9bの処理によりウェアラブルカメラ10は作動を停止する。
【0061】
[ボルト8の取り付け作業]
作業者W1は、踏み段4を踏み段チェーン3の踏み段取り付け部7に当接させて、ボルト8の取り付け作業が可能な位置となるように乗客コンベアを運転し、上部機械室13の中に入る。次に作業者W1は、踏み段チェーン3の踏み段取り付け部7にボルト8を装着させ、ボルト8をスパナで時計方向に回転させて締め付ける。
【0062】
タブレット9の処理部9bは、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値が記憶部9cに記憶された第2筋電値閾値に至ったか判定する。
【0063】
処理部9bは、筋電値が第2筋電値閾値と判定されたときに、ウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aで計測された筋電値と、記憶部に記憶された
図12に示す相関関係とに基づいて筋電値に対応する締め付けトルク値Tを演算する。次に、演算された締め付けトルク値Tが記憶部9cに記憶された規定範囲Eに含まれるか判定する。規定範囲Eに含まれると判定されたときに、ボルト8の取り付け作業は正常に行われたと判定する。また、処理部9bは、記憶部9cにおける該当する踏み段4に係る取り消し箇所データの記憶を消去する処理を行う。
【0064】
なお、締結箇所が複数存在する場合は、同様の動作が全ての締結箇所にボルト8が取り付けられるまで行われる。全ての締結箇所におけるボルト8の取り付け作業が完了したときには、作業者W1はタブレット9の作業終了指示部9iを操作する。この操作に応じて処理部9bは記憶部9cに記憶された取り外し箇所データ(踏み段4の番号)の有無を判定する。取り外し箇所データが記憶部9cに記憶されていなければ、処理部9bの処理により全てのボルト8の取り付け作業が正常に行われた旨の表示が表示部9dに表示される。
【0065】
また、記憶部9cに取り外し箇所データ(踏み段4の番号)の記憶が存在している場合には、処理部9bの処理により表示部9dに、該当する取り外し箇所にボルト8が取り付けられていない旨の文言または画像が表示される。この表示部9dに表示された文言または画像に応じて作業者W1は、該当する取り外し箇所にボルト8を取り付けることを促される。
【0066】
取り付け忘れを生じたボルト8が取り外し箇所に取り付けられて、記憶部9cに記憶された該当する取り外し箇所データが消去されると、処理部9bの処理によりウェアラブルカメラ10は作動を停止する。
【0067】
このように構成した第2実施形態によれば、ウェアラブルカメラ10によって撮像された画像及びウェアラブルセンサ12の筋電値センサ部12aによって計測された筋電値によって、第1実施形態におけるのと同様に、締結箇所に対するボルト8の取り外し、取り付け作業が正常に行われたかを精度良く管理することができる。また、ボルト8の取り付け忘れを確実に防ぐことができる。
【0068】
なお、上記第1,第2実施形態では、ウェアラブルカメラ10が作業者W1の胸部に装着されていたが、このウェアラブルカメラ10は作業者W1の頭部に装着されていてもよく、また、作業者W1に装着されずに、締結箇所の撮像が可能な場所に設置されていてもよい。
【0069】
また、上記第1,第2実施形態では、ウェアラブルセンサ12が作業者W1の腕に装着されていたが、作業時の筋電値を測定可能であれば作業者W1の胸等に装着されていてもよい。
【0070】
また、上記第1実施形態では、ウェアラブルカメラ10、トルクレンチ11、ウェアラブルセンサ12とタブレット9との間で、また、第2実施形態では、ウェアラブルカメラ10、ウェアラブルセンサ12とタブレット9との間で、それぞれ無線通信を行わせていたが、有線による通信であってもよい。
【0071】
また、上記第1,第2実施形態では、締結部品がボルト8であったが、締結部品がボルトに螺合するナット、あるいはねじによって構成されていてもよい。
【0072】
また、上記第1,第2実施形態では、ボルト8を取り外した時点でボルト8が取り外された締結箇所、すなわち踏み段4を特定する番号を取り外し箇所データ(締結箇所データ)として記憶部9cに記憶させる構成となっているが、本発明は、このような構成には限定されない。ボルト8が取り付けられる締結箇所のデータ、すなわち踏み段4の番号を記憶部9cに予め記憶させた構成としてもよい。
【0073】
また、また、上記第1,第2実施形態が適用される機械として乗客コンベアを挙げ、締結箇所として踏み段4を締結するボルト8の部分を挙げたが、本発明が適用される機械、及び締結箇所は、乗客コンベア及び踏み段4には限定されない。
【0074】
本発明は、例えばエレベーター装置のブレーキ装置に備えられた複数の締結箇所における締結部品の取り外し、取り付け作業の管理にも適用可能である。
【0075】
さらに本発明は、乗客コンベア及びエレベーター装置とは異なる機械に備えられた締結箇所における締結部品の取り外し、取り付け作業の管理にも適用が可能である。
【0076】
なお、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。