(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959775
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂の製造装置及び繊維強化樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20211025BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20211025BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
B29C43/36
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-131567(P2017-131567)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-14102(P2019-14102A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】川上 宗仁
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−229244(JP,A)
【文献】
特開2016−60113(JP,A)
【文献】
特開平6−198673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/18
B29C 43/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が傾斜した成形面を有する下金型と、
前記成形面に沿って強化繊維が配置された状態で、所定の流入位置から前記強化繊維上に流入された溶融樹脂を、前記下金型に対して相対的に下降させられることにより前記強化繊維と一体的にプレスする上金型と、
前記成形面における最低位置と前記流入位置の間に上下方向へ移動自在に設けられ、上方へ移動した際に前記強化繊維を持ち上げる支持部材と、
前記支持部材を、前記溶融樹脂の流入時には上方へ位置させ、前記溶融樹脂のプレス時には下方へ位置させる移動機構と、を備えた繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項2】
前記成形面は、高い位置から低い位置へ向かう方向について、傾斜が大きくなる傾斜変化部を有し、
前記支持部材は、前記傾斜変化部の近傍に配置される請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記上金型の上下動と前記支持部材の上下動を連動させる連動機構を有する請求項1または2に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項4】
前記連動機構は、
前記下金型と前記支持部材の間に設けられ、前記支持部材を上方へ付勢する弾性部材と、
前記上金型に設けられ、前記上金型の下降時に前記弾性部材の付勢力に抗して前記支持部材を下降させる下降部材と、を有する請求項3に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【請求項5】
前記強化繊維上に流入する溶融樹脂に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部にて取得された情報に基づいて、前記支持部材の上下動を制御する制御部と、を有する請求項1または2に記載の繊維強化樹脂の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維を樹脂中に入れて強度を向上させた繊維強化樹脂の製造装置及び繊維強化樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維等のシート材を樹脂と一体的に成形する方法として、シート材を下金型と上金型の間に挟んで型閉めしてキャビティ部を形成し、ついで、キャビティ部内に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂を冷却固化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、これとは別の繊維強化樹脂の製造方法として、下金型の成形面上に強化繊維を配置しておき、強化繊維の上方から溶融樹脂を下金型内に流入させ、上金型を下降させて樹脂を強化繊維と一体的にプレスする方法が知られている。この製造方法では、プレス時に溶融樹脂が成形面上の全体に行き渡り、加圧して硬化されることで、下金型及び上金型の成形面に沿った形状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−198673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この製造方法では、下金型の成形面が傾斜している場合、プレス前に溶融樹脂の多くが成形面の低い位置へ流れてしまい、プレス時に樹脂が成形面の高い位置まで十分に行き渡らず、傾斜部分より高い位置において樹脂の厚さが薄くなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、下金型の成形面が傾斜していても、製造される繊維強化樹脂の全体にわたって樹脂の厚さを安定させることのできる繊維強化樹脂の製造装置及び繊維強化樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも一部が傾斜した成形面を有する下金型と、前記成形面に沿って強化繊維が配置された状態で、所定の流入位置から前記強化繊維上に流入された溶融樹脂を、前記下金型に対して相対的に下降させられることにより前記強化繊維と一体的にプレスする上金型と、前記成形面における最低位置と前記流入位置の間に上下方向へ移動自在に設けられ、上方へ移動した際に前記強化繊維を持ち上げる支持部材と、前記支持部材を、前記溶融樹脂の流入時に上方へ移動させ、前記溶融樹脂のプレス時に下方へ移動させる移動機構と、を備えた繊維強化樹脂の製造装置が提供される。
【0008】
この繊維強化樹脂の製造装置によれば、流入位置から強化繊維上に流入された溶融樹脂は、強化繊維上を広がっていく。このとき、支持部材により強化繊維が持ち上げられていることから、持ち上げられた部分を超える溶融樹脂の量が制限され、低い方向への溶融樹脂の流入が抑制される。これにより、所定量の溶融樹脂を持ち上げられた部分に留まらせ、プレス時に溶融樹脂を比較的高い位置まで十分に行き渡らせることができる。ここで、プレス時に支持部材は下方へ移動することから、支持部材により成形に支障が生ずることはない。
【0009】
上記繊維強化樹脂の製造装置において、前記成形面は、高い位置から低い位置へ向かう方向について、傾斜が大きくなる傾斜変化部を有し、前記支持部材は、前記傾斜変化部の近傍に配置されてもよい。
【0010】
この繊維強化樹脂の製造装置によれば、溶融樹脂が流れ落ちやすい傾斜変化部の近傍に支持部材が配置されているので、低い位置への溶融樹脂の流入を効果的に抑制することができる。
【0011】
上記繊維強化樹脂の製造装置において、前記移動機構は、前記上金型の上下動と前記支持部材の上下動を連動させる連動機構を有してもよい。
【0012】
この繊維強化樹脂の製造装置によれば、支持部材の上下動が上金型の上下動と連動しているので、的確なタイミングで支持部材を移動させることができ、製品の品質を向上させることができる。また、常に同じタイミングで支持部材が移動することから、製品の品質がばらつくこともない。
【0013】
上記繊維強化樹脂の製造装置において、前記連動機構は、前記下金型と前記支持部材の間に設けられ、前記支持部材を上方へ付勢する弾性部材と、前記上金型に設けられ、前記上金型の下降時に前記弾性部材の付勢力に抗して前記支持部材を下降させる下降部材と、を有してもよい。
【0014】
この繊維強化樹脂の製造装置によれば、上金型が離隔している状態では、支持部材は弾性部材の付勢力により上方に位置している。そして、上金型が下降すると、下降部材の抗力により弾性部材が弾性変形して支持部材は下降する。
【0015】
上記繊維強化樹脂の製造装置において、前記下降部材は、前記弾性部材よりも大きな付勢力で前記支持部材を下方へ付勢する第2の弾性部材であってもよい。
【0016】
この繊維強化樹脂の製造装置によれば、上金型側の第2の弾性部材の方が下金型側の弾性部材よりも付勢力が大きいため、上金型が下降して支持部材に両方の付勢力が作用すると、まず下金型側の弾性部材が弾性変形して支持部材が下降する。そして、下金型側の弾性部材の弾性変形が完了すると、上金型側の第2の弾性部材が弾性変形する。これにより、上金型が完全に下降する前に、支持部材を先行して下方へ移動させることができ、強化繊維の持ち上げられた部分に留まっていた溶融樹脂を各所に行き渡らせることができる。
【0017】
上記繊維強化樹脂の製造装置において、前記強化繊維上に流入する溶融樹脂に関する情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部にて取得された情報に基づいて、前記支持部材の上下動を制御する制御部と、を有してもよい。
【0018】
この繊維強化樹脂の製造装置によれば、流入する溶融樹脂の状態に基づいて、支持部材の上下動を細やかに制御することができる。
【0019】
また、本発明では、上記繊維強化樹脂の製造装置を用いた繊維強化樹脂の製造方法であって、前記強化繊維を前記成形面上に前記支持部材により持ち上げられた状態とする準備工程と、前記準備工程の後、前記流入位置から前記溶融樹脂を前記強化繊維上に流入させる樹脂流入工程と、前記樹脂流入工程の後、前記支持部材を下降させた状態で、前記溶融樹脂を前記強化繊維と一体的にプレスするプレス工程と、を含む繊維強化樹脂の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、下金型の成形面が傾斜していても、製造される繊維強化樹脂の全体にわたって樹脂の厚さを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を示す繊維強化樹脂の製造装置の模式断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA−A断面において下金型の本体を省略した説明図である。
【
図4】
図4は、強化繊維上に流入された溶融樹脂の流れを示す説明図である。
【
図5】
図5は、比較例であって、下金型に支持部材が設けられていない場合の強化繊維上に流入された溶融樹脂の流れを示す説明図である。
【
図6】
図6は、上金型の下降時の連動機構の動作を示す説明図であり、(A)は上金型が下金型から十分に離隔している状態、(B)は上金型側の下降部材が下金型側の駆動部材と接触した状態、(C)は下金型側の第1ばね部材が完全に弾性変形した状態、(D)は上金型と下金型の外枠部が接触した状態を示している。
【
図7】
図7は、溶融樹脂が強化繊維とともにプレスされる状態を示す繊維強化樹脂の製造装置の模式断面図である。
【
図8】
図8は、変形例を示す繊維強化樹脂の製造装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から
図4、
図6及び
図7は本発明の一実施形態を示すものであり、
図1は繊維強化樹脂の製造装置の模式断面図、
図2は下金型の模式平面図、
図3は
図2のA−A断面において下金型の本体を省略した説明図、
図4は強化繊維上に流入された溶融樹脂の流れを示す説明図、
図6は上金型の下降時の連動機構の動作を示す説明図であり、(A)は上金型が下金型から十分に離隔している状態、(B)は上金型側の下降部材が下金型側の駆動部材と接触した状態、(C)は下金型側の第1ばね部材が完全に弾性変形した状態、(D)は上金型と下金型の外枠部が接触した状態を示し、
図7は溶融樹脂が強化繊維とともにプレスされる状態を示す繊維強化樹脂の製造装置の模式断面図である。
【0023】
図1に示すように、この繊維強化樹脂の製造装置10は、一部が傾斜した成形面21を有する下金型20と、成形面21に沿って炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維100が配置された状態で成形面21上の溶融樹脂200をプレスする上金型30と、を備える。繊維強化樹脂に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のどちらでもよい。上金型30には、下金型20の成形面21に対応する成形面31が形成される。
図2に示すように、成形面21は、平面視にて、矩形状に形成され、4つの壁面22により包囲される。下金型20における各壁面22の外側には、プレス時に上金型30と当接する略水平の外枠部23が形成されている。本実施形態においては、成形面21は全体として所定方向について傾斜しており、ここでは、成形面21の傾斜方向を前後方向として説明することとする。
【0024】
上金型30は、下金型20の成形面21に沿って強化繊維100が配置された状態で、強化繊維100上に流入された溶融樹脂200を、強化繊維100と一体的にプレスする。上金型30は上下に移動可能であり、下降させられることにより溶融樹脂200をプレスする。尚、上金型30は下金型20に対して相対的に下降すればよく、例えば、下金型20を上昇させてプレスするようにしてもよい。上金型30は、下金型20の外枠部23に対応する外枠部33を有し、プレス時に各外枠部23,33同士が面接触をする。
【0025】
図1に示すように、成形面21は、略水平の底面24と、第1傾斜面25と、第1水平面26と、第2傾斜面27と、第2水平面28と、をこの順で前側から有する。すなわち、本実施形態においては、成形面21は、高い位置から低い位置へ向かう方向について、傾斜が大きくなる傾斜変化部21a,21bを2箇所有している。具体的には、第1傾斜面25と第1水平面26の接続部分が第1傾斜変化部21aをなし、第2傾斜面27と第2水平面28の接続部分が第2傾斜変化部21bをなしている。本実施形態においては、繊維強化樹脂の製造にあたり、第2水平面28の上方から溶融樹脂200が流入される。
【0026】
繊維強化樹脂の製造装置10は、下金型20の成形面21に形成された穴部21cに配置され、成形面21上に出没自在の支持部材40を有する。本実施形態においては、穴部21c及び支持部材40は、第1水平面26に設けられる。すなわち、穴部21c及び支持部材40は、成形面21における最低位置と溶融樹脂200の流入位置の間で、第1傾斜変化部21aの近傍に設けられる。支持部材40は、上下方向へ移動自在に設けられ、上方へ移動した際に強化繊維100を持ち上げ、下方へ移動すると成形面21上の空間から没する。本実施形態においては、各支持部材40は、上下方向へ長尺に形成される。
図2に示すように、穴部21a及び支持部材40は、左右方向に並んで複数設けられる。
【0027】
また、繊維強化樹脂の製造装置10は、支持部材40を樹脂200の流入時に上方へ移動させ、樹脂200のプレス時に下方へ移動させる移動機構50を有する。
図3に示すように、本実施形態においては、移動機構50は、各支持部材40の下端に接続され左右方向へ延びる連結部材51と、連結部材51の左右両端と接続される駆動部材52と、を有する。すなわち、各駆動部材52が上下動すると、各支持部材40も上下動するよう構成されている。
図2に示すように、本実施形態においては、平面視にて、連結部材51は成形面21の左右外側まで延び、各駆動部材52は外枠部23に配置される。
【0028】
図6(A)に示すように、移動機構50は、上金型30の上下動と支持部材40の上下動を連動させる連動機構60を有する。本実施形態においては、連動機構60は、下金型20と支持部材40の間に設けられ支持部材40を上方へ付勢する弾性部材としての第1ばね部材61と、上金型30に設けられ上金型30の下降時に第1ばね部材61の付勢力に抗して支持部材40を下降させる下降部材62と、を有する。
【0029】
第1ばね部材61は、各駆動部材52と下金型20の間にそれぞれ介装され、各駆動部材52及び連結部材51とともに各支持部材40を上方へ付勢する。下降部材62は、上金型30における各駆動部材52の上方に下方へ突出して設けられ、上金型30の下降時に各駆動部材52と接触する。本実施形態においては、下降部材62は、第1ばね部材61よりも大きな付勢力を生じる第2ばね部材である。
【0030】
以上のように構成された繊維強化樹脂の製造装置10を用いた繊維強化樹脂の製造方法を
図4を参照して説明する。
まず、強化繊維100を配置するための下金型20を用意する。初期の状態では、各支持部材40は各第1ばね部材61の付勢力により、所定の上昇位置に位置している。このように各支持部材40が成形面21から突出した状態で、強化繊維100を成形面21上に配置し、強化繊維100を成形面21上に支持部材40により持ち上げられた状態とする(準備工程)。そして、強化繊維100の上端側の上方(本実施形態においては第2水平面28の上方)から溶融樹脂200を強化繊維100上に流入させる(樹脂流入工程)。尚、溶融樹脂200の強化繊維100上への流入位置は任意であり、例えば、強化繊維100の中央側の上方(本実施形態においては第1水平面26の上方)から流入させてもよい。
【0031】
流入位置から強化繊維100上に流入された溶融樹脂200は、強化繊維100上を広がっていく。本実施形態においては、成形面21の一部が傾斜しているので、溶融樹脂200は強化繊維100上を流れ落ちていく。このとき、各支持部材40により強化繊維100が持ち上げられていることから、持ち上げられた部分を超える溶融樹脂200の量が制限され、低い方向への溶融樹脂200の流入が抑制される。特に、溶融樹脂200が流れ落ちやすい傾斜変化部21aの近傍に支持部材40が配置されているので、低い位置への溶融樹脂200の流入を効果的に抑制することができる。
【0032】
これに対し、
図5に示すように、下金型20に支持部材40が設けられていない場合、溶融樹脂200の多くが成形面200の底面24側へ流れてしまう。
図5は、比較例であって、下金型に支持部材が設けられていない場合の強化繊維上に流入された溶融樹脂の流れを示す説明図である。
【0033】
所定流量の樹脂200を下金型200に流入させた後、上金型30を下降させる。このとき、上金型30の下降と連動して、各支持部材40も下降する。このときの各支持部材40の動きを
図6(B)、
図6(C)、
図6(D)を参照して説明する。
上金型30が下降すると、
図6(B)に示すように、まず、下降部材62の下端が駆動部材52の上端と接触する。この状態からさらに上金型30が下降すると、
図6(C)に示すように、下降部材62の抗力により第1ばね部材61が弾性変形して支持部材40は下降する。本実施形態においては、下降部材62が第1ばね部材61よりも付勢力が大きい第2ばね部材であることから、上金型30が下降して駆動部材52、連結部材51及び支持部材40に両方の付勢力が作用すると、まず下金型20の第1ばね部材61が弾性変形して支持部材40が下降する。
【0034】
そして、
図6(D)に示すように、下金型20の第1ばね部材61の弾性変形が完了した後、上金型30の第2ばね部材が弾性変形する。これにより、上金型30が完全に下降する前に、支持部材40を先行して下方へ移動させることができ、強化繊維100の持ち上げられた部分に留まっていた溶融樹脂200を各所に行き渡らせることができる。上金型30の外枠部33と下金型20の外枠部23が接触すると、上金型30の下降が完了する。
【0035】
図7に示すように、上金型30が完全に下降した状態で、溶融樹脂200は強化繊維100と一体的にプレスされる(プレス工程)。溶融樹脂200が熱硬化性樹脂の場合、プレス時に溶融樹脂200は所定の硬化温度まで加熱され、溶融樹脂200が熱可塑性樹脂の場合、プレス時に溶融樹脂200は所定の硬化温度まで冷却される。このとき、所定量の溶融樹脂200は強化繊維100が強化持ち上げられた部分に留まっていたので、プレス時に溶融樹脂200を高い位置まで十分に行き渡らせることができる。また、プレス時に支持部材40は下方へ移動しているので、支持部材40により成形に支障が生ずることはない。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、下金型20の成形面21が傾斜していても、製造される繊維強化樹脂の全体にわたって樹脂の厚さを安定させることができる。また、支持部材40の上下動が上金型30の上下動と連動しているので、的確なタイミングで支持部材40を移動させることができ、製品の品質を向上させることができる。また、常に同じタイミングで支持部材40が移動することから、製品の品質がばらつくこともない。
【0037】
尚、前記実施形態においては、支持部材40の上下動を、弾性部材の付勢力、上金型30から加えられる抗力等により機械的に行うものを示したが、支持部材40を油圧、空気圧、電気等の他の駆動源を利用して動作させるようにしてもよい。この場合、上金型30の上下位置をセンサー等により検知し、上金型30の位置に応じて支持部材40を移動させることが好ましい。また、この場合、強化繊維100上に流入する溶融樹脂200の流量、重量、温度等の状態に応じて、支持部材40の上下動を制御することがより好ましい。すなわち、強化繊維100上に流入する溶融樹脂200に関する情報を取得する情報取得部と、情報取得部にて取得された情報に基づいて支持部材40の上下動を制御する制御部と、を有する構成とすることができる。これによれば、流入する溶融樹脂200の状態に基づいて、支持部材40の上下動を細やかに制御することができる。
【0038】
また、前記実施形態においては、成形面21が所定方向について一方的に下るよう傾斜したものを示したが、例えば
図8に示すように所定方向について中央側に成形面121の底面124が存在するような下金型120であってもよい。
図8の繊維強化樹脂の製造装置110においては、成形面121は、略水平の底面124の両端からそれぞれ延びる一対の傾斜面125と、各傾斜面125から延びる一対の水平面126と、を有し、一対の傾斜変化部121aを有している。そして、支持部材140及び連結部材151は、傾斜変化部121aの近傍に設けられている。
【0039】
また、前記実施形態においては、支持部材40を成形面21の水平部分に配置したものを示したが、成形面21の傾斜部分に配置してもよい。ここで、前記実施形態においては、下金型20の成形面21の一部が傾斜しているものを示したが、全部が傾斜している成形面であっても本発明を適用することができる。また、支持部材40の移動方向も厳密に上下方向である必要はなく、成形面上に出没するよう構成されていれば上下方向に対して傾いた方向に移動するものであってもよい。さらに、支持部材40は、プレス後に成形品を取り出す際のイジェクタピンと兼用であってもよい。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0041】
10 繊維強化樹脂の製造装置
20 下金型
21 成形面
21a 傾斜変化部
21b 傾斜変化部
21c 穴部
22 壁面
23 外枠部
24 底面
25 第1傾斜面
26 第1水平面
27 第2傾斜面
28 第2水平面
30 上金型
31 成形面
33 外枠部
40 支持部材
50 移動機構
51 連結部材
52 駆動部材
60 連動機構
61 第1ばね部材
62 下降部材
100 強化繊維
110 繊維強化樹脂の製造装置
120 下金型
121 成形面
121a 傾斜変化部
124 底面
125 傾斜面
126 水平面
130 上金型
140 支持部材
151 連結部材
200 溶融樹脂