特許第6959780号(P6959780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959780
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】マルチモード導波管
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/16 20060101AFI20211025BHJP
   H01P 3/127 20060101ALI20211025BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01P1/16
   H01P3/127
   H01P3/12 200
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-140054(P2017-140054)
(22)【出願日】2017年7月19日
(65)【公開番号】特開2018-29332(P2018-29332A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2020年7月14日
(31)【優先権主張番号】15/222,836
(32)【優先日】2016年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】ラリー エル.サヴェージ
(72)【発明者】
【氏名】テッド アール.ドンブロフスキ
(72)【発明者】
【氏名】コーリー エム.タッカー
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−053537(JP,A)
【文献】 特開平04−310001(JP,A)
【文献】 特開2002−368529(JP,A)
【文献】 特開2001−102856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/12
H01P 1/16
H01P 3/16
H01Q 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管を含む装置であって、前記導波管は、
基本伝搬モードに関連する形状を有する導波管壁と、
前記導波管の一部の長さに沿って変化する断面積を有する第1誘電材料と、を含む、装置。
【請求項2】
前記導波管壁は、円形の断面を有し、前記基本伝搬モードは、横電界11(TE11)モードを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1誘電材料は、テーパー形状を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記テーパー形状は、円錐形状、楕円形状、又は、対数曲線形状である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1誘電材料は、前記導波管の前記一部の長さに沿って直線的に変化する寸法を有する、請求項2〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記導波管は、第2誘電材料を含むとともに、前記導波管の第2端に近接して設けられた誘電率整合部をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記一部は、モード遷移部を含み、前記導波管は、前記モード遷移部と前記第2端との間にモード合成部を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記モード合成部の内部領域は、前記モード遷移部の内部領域よりも低い誘電率を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記導波管は、前記モード遷移部と前記導波管の第1端との間に供給部をさらに含み、前記供給部の内部領域は、前記モード遷移部の内部領域よりも低い誘電率を有する、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記導波管の内部領域の断面積は、前記モード遷移部の長さに沿って実質的に一定であり、
任意で、前記導波管の前記内部領域の断面積は、前記供給部に沿って実質的に一定であり、前記モード遷移部の長さに沿った前記内部領域の断面積、及び、前記供給部に沿った前記内部領域の断面積は、実質的に等しい、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
導波管において信号を受信し、その際、前記導波管は、基本伝搬モードと関連する形状を有する導波管壁と、前記導波管の一部の長さに沿って変化する断面積を有する誘電材料とを含み、
前記誘電材料を含む前記導波管の前記一部を通して前記信号を伝搬することにより、前記信号の一部を、前記基本伝搬モードから二次伝搬モードに変換する、ことを含む、方法。
【請求項12】
前記導波管壁は、円形断面を有し、前記基本伝搬モードは、横電界11(TE11)モードを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記二次伝搬モードは、横磁界11(TM11)モードを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記一部は、モード遷移部を含み、前記導波管のモード合成部を通して前記信号を伝搬することをさらに含む、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記モード合成部の内部領域の誘電率は、前記モード遷移部の内部領域の誘電率よりも低い、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は導波管に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波アンテナは、主ローブと副ローブとを含む放射パターンを有するエネルギーを出射することができる。副ローブのエネルギーは望ましくない場合がある。例えば、副ローブのエネルギーは、主ローブからエネルギーを奪い、エミッタの検出を容易にしうる。副ローブのエネルギーを低減するには、開口アンテナ又は導波管の口部において縦方向のエッジ電流を低減すればよい。縦方向のエッジ電流は、基本伝搬モードと高次伝搬モードとを含む混合伝搬モードにてエネルギーを伝搬して、縦方向の電流を相殺することにより、低減することができる。混合伝搬モードは、基本伝搬モードで伝搬するエネルギーを、高次伝搬モードで伝搬するエネルギーに変換することにより得られる。導波管の寸法(例えば、内部領域の断面積)をその長さに沿って変化させれば、基本伝搬モードで伝搬するエネルギーを高次伝搬モードで伝搬するエネルギーに変換する境界値不整(boundary value perturbation)を生じさせることができる。例えば、導波管の壁は、末広がり部(flare)、絞り(iris)、溝、又は、段差を含むことにより、エネルギーを高次伝搬モードに変換することができる。しかしながら、導波管の壁の断面積を変化させることは望ましくない場合がある。例えば、多くのシステムは、実質的に一定の断面積を有する導波管を含んでおり、これらのシステムにおける導波管を取り換えるには費用がかかる。
【発明の概要】
【0003】
特定の実施形態において、装置は、導波管を含む。前記導波管は、基本伝搬モードに関連する形状を有する導波管壁を含む。前記導波管は、前記導波管の少なくとも一部の長さに沿って変化する断面積を有する第1誘電材料を含む。
【0004】
他の特定の実施形態において、導波管は、供給部と、モード合成部と、モード遷移部と、誘電率整合部と、を含む。前記モード遷移部は、誘電材料を含むとともに、前記供給部と前記モード合成部との間に設けられている。前記誘電率整合部は、誘電材料を含む。前記モード合成部は、前記誘電率整合部と前記モード遷移部との間に設けられている。
【0005】
他の特定の実施形態において、方法は、導波管において信号を受信することを含む。前記導波管は、導波管壁と誘電材料とを含み、当該誘電材料は、前記導波管の一部の長さに沿って変化する断面積を有する。前記導波管壁は、基本伝搬モードと関連する形状を有する。前記方法は、さらに、前記誘電材料を含む前記導波管の前記一部を通して前記信号を伝搬することにより、前記信号の一部を、前記基本伝搬モードから二次伝搬モードに変換することを、さらに含む。
【0006】
本明細書で説明する特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において個々に実現可能であり、また、他の実施形態との組み合わせも可能である。詳細についは、以下の説明及び図面を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】モード遷移部を含む導波管を示す斜視図である。
図1B図1Aに示す導波管の供給部を示す断面図である。
図1C図1Aに示す導波管のモード遷移部を示す断面図である。
図1D図1Aに示す導波管のモード合成部を示す断面図である。
図1E図1Aに示す導波管を示す側方断面図である。
図2】円錐状テーパーを有する(導波管のモード遷移部の)誘電材料を示す斜視図である。
図3】楕円状テーパーを有する(導波管のモード遷移部の)誘電材料を示す側面図である。
図4】対数曲線状のテーパーを有する(導波管のモード遷移部の)誘電材料を示す側面図である。
図5図1Aに示すモード遷移部を含まない円形導波管の表面電流の例を示す図である。
図6図1Aに示すモード遷移部を含む円形導波管の表面電流の例を示す図である。
図7】誘電材料を含む導波管であって、当該誘電材料の断面積が当該導波管の一部の長さに沿って変化する導電管を通して信号を伝搬する方法の特定の例を示すフロー図である。
図8】モード遷移部を有する導波管を含む航空機のライフサイクルを示すフロー図である。
図9】モード遷移部を有する導波管を含む航空機の例示的な実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の特定の実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。以下の説明において、図面全体を通して、共通する特徴部は共通の参照数字で示されている。
【0009】
図面及び以下の記載は、特定の例示的な実施形態を説明するものである。したがって、本明細書に明瞭に説明又は図示されていなくても、本開示に従った請求の範囲に含まれるとともに、本開示で説明される原理を具現化する様々な変形が可能であることは、当業者であれば理解するであろう。さらに、本明細書で説明されている例は、本開示の原理に対する理解を助けることを意図するものであり、限定を加えるものではないと解釈すべきである。したがって、本開示は、以下に説明する特定の実施形態又は例に限定されるものではなく、請求の範囲及びその均等物によって限定されるものである。
【0010】
図1Aは、モード遷移部(例えば、部分106)を含む導波管100を示す斜視図である。図1Bは、図1Aの線Bに沿った、図1Aの導波管100を示す断面図である。図1Cは、図1Aの線Cに沿った、図1Aの導波管100を示す断面図である。図1Dは、図1Aの線Dに沿った、図1Aの導波管100を示す断面図である。図1Eは、図1Aの線A−Aに沿った、図1Aの導波管100を示す断面図である。図1Eに示すように、導波管100は、当該導波管100の部分106(例えば、モード遷移部)の長さに沿って寸法(例えば、断面の半径、直径、又は長さ)が変化する誘電材料110を含む。導波管100は、第1端114と第2端116とを有する導波管壁102を含む。導波管壁102は、基本伝搬モード(dominant propagation mode)に関連する断面形状(例えば、ジオメトリ)を有しうる。例えば、導波管壁102は円形状であり(例えば、導波管100は、円形導波管であってもよい)、基本伝搬モードは、横電界11(TE11)モードに対応する。これに代えて、導波管壁102は、方形又は矩形であってもよく(例えば、導波管100は、方形導波管又は矩形導波管であってもよく)、基本伝搬モードは、TE10モードに対応していてもよい。
【0011】
導波管100は、基本伝搬モードにおいて、エネルギーの伝搬を可能にする供給部104を含む。円形導波管を使用する場合で説明すると、供給部104は、信号103を受信し、受信された信号103は、その全体又は大部分が基本伝搬モード(例えば、TE11)にて、部分106に向かって伝搬する。
【0012】
図1Bに示すように、導波管100の供給部104は、内部領域195を含み、当該内部領域は、導波管100の供給部104に沿った導波管壁102の内面197によって画定されている。図示された実施形態においては(例えば、円形導波管)、内部領域195は、供給部104の長さに沿って、A=πR2(式1)に対応する断面積(A)を有し、Rは、内部領域195の断面の半径Rに対応している。他の実施形態においては(例えば、方形又は矩形の導波管)、導波管100の内部領域195は、円形以外の断面形状を有する。これらの例においては、導波管壁102により規定される供給部104の内部領域195は、式1の関係とは異なる関係式により規定される断面積を有する。例えば、上述したように、導波管壁102は、方形又は矩形であってもよい(例えば、導波管壁102の内面197は、方形又は矩形を規定する)。例示すると、供給部104に沿った内面197は、方形を規定し、内部領域195は、(供給部104に沿った内面197により規定される断面形状の)長さの二乗に対応する断面積を有しうる。他の例として、供給部104に沿った内面197は、矩形を規定し、内部領域195は、供給部104に沿った内面197により規定される断面形状の長さを、断面形状の幅で乗算したものに対応する断面積を有しうる。
【0013】
供給部104の内部領域195は、部分106の内部領域よりも低い誘電率を有する。例えば、以下により詳細に説明するように、供給部104の内部領域195は、空気で満たされているが、空気は、部分106の誘電材料110よりも低い誘電率を有する。
【0014】
信号103は、供給部104から部分106へ伝搬する。供給部104から部分106に接近又は入射する信号は、主に又は完全に基本伝搬モードで伝搬する。部分106の誘電材料110は、部分106に入射する際(すなわち、第1端187において)基本伝搬モードで伝搬する信号103の一部を、部分106の第2端188において第2モードで伝搬するエネルギーに変換する作用を有する。
【0015】
図1Cに示すように、導波管100の部分106は、内部領域196を含み、当該内部領域は、導波管100の部分106に沿った導波管壁102の内面197によって画定されている。いくつかの実施形態においては(例えば、円形導波管)、内部領域196は、部分106の長さに沿って、A=πR2(式2)に対応する断面積(A)を有し、Rは、内部領域196の断面の半径Rに対応している。他の実施形態においては(例えば、方形又は矩形の導波管)、導波管100の内部領域196は、円形以外の断面形状を有する。これらの例においては、部分106の内部領域196は、式2の関係式とは異なる関係式により規定される断面積を有する。例えば、上述したように、導波管壁102は、方形又は矩形であってもよい(例えば、導波管壁102の内面197は、方形又は矩形を規定する)。例示すると、部分106に沿った内面197は、方形を規定し、内部領域196は、(部分106に沿った内面197により規定される断面形状の)長さの二乗に対応する断面積を有しうる。他の例として、部分106に沿った内面197は、矩形を規定し、内部領域196は、部分106に沿った内面197により規定される断面形状の長さを、断面形状の幅で乗算したものに対応する断面積を有しうる。
【0016】
例示的な実施形態においては、部分106の内部領域196は、長さに沿って実質的に一定の断面積を有し、供給部104の内部領域195と同じ断面積を有する。本実施形態において、部分106は、導波路壁の不整箇所(perturbations)を含まない。
【0017】
例示的な実施形態においては、誘電材料110により、内部領域196の断面積を実際に変化させることなく、部分106の長さに沿ってあたかも内部領域196の断面積が増大しているかのように、信号103が挙動する。誘電材料110により、あたかも内部領域196の断面積が内部領域195の断面積よりも大きいかのように信号が挙動するのは、部分106の内部領域196が、供給部104の内部領域195よりも高い誘電率を有するからである(例えば、誘電材料110が、供給部104の内部領域195の材料よりも高い誘電率を有することに基づく)。例えば、供給部の内部領域195は、空気で満たされており(例えば、誘電率が1)、誘電材料110の誘電率は、1よりも大きい。いくつかの例においては、誘電材料110は、ポリマーで形成されている。
【0018】
円形導波管のいくつかの実施形態において、誘電材料110は、(部分106の第2端における)内面の断面形状が供給部104の半径Rの約2倍の半径を有する導波管壁をエミュレートする(emulate)ように構成されている。これらの例において、誘電材料110は、供給部104の内部領域195の材料又は充填物の誘電率の約4倍の誘電率を有しうる。例えば、供給部104の内部領域195は、空気で満たされており(例えば、誘電率が1)、誘電材料110は、誘電率が約4の誘電材料で形成されている。
【0019】
誘電材料110は、円形の断面を有することが図示されているが、他の実施形態においては、誘電材料110は、円形以外の断面形状を有していてもよい。例えば、上述したように、導波管100は、方形又は矩形の導波管であってもよい。これらの例において、誘電材料110は、方形又は矩形の断面形状を有する。方形導波管100のいくつかの例においては、誘電材料110は、実質的に角錐状であり、この場合、誘電材料110は、直線的に漸減している。これらの例においては、誘電材料110は、部分106の第2端188における内面の断面形状(例えば、方形又は矩形の断面形状)が供給部104の内部領域195の断面形状において対応する寸法値の約2倍又は少なくとも2倍の寸法以外の寸法(例えば、長さ又は幅)を有する導波管壁をエミュレートする(emulate)ように構成されている。
【0020】
このように、(誘電材料110を含む)部分106は、導波管壁102における不整箇所をエミュレートすることができ、導波管壁102における不整箇所を用いることなく、基本伝搬モードからのエネルギーを二次伝搬モードに変換する機能を有する。したがって、部分106は、供給部104と同じ(或いは、実質的に同じ)断面積を有する一方で伝搬モードを変換することができ、一定の断面積を有する導波管であっても、当該導波管に誘電材料110を加えることにより、モード変換を行えるように改良することができる。
【0021】
いくつかの例においては、誘電材料110の断面積は、部分106の長さに沿って、第1端114から第2端116へ向かう方向(例えば、図1Eにおけるd方向)に増大する。いくつかの例において、誘電材料110は、部分106の長さに沿って直線的に変化する寸法(例えば、半径)を有する。例えば、図2は、部分106の長さに沿ってd方向に増大する断面積を有する図1Eの誘電材料110を示しており、誘電材料110は、円錐形状(例えば、円錐のジオメトリ)を有する。この例において、誘電材料110のEにおける断面積は、円Eの面積に対応しており、誘電材料110のFにおける断面積は、円Fの面積に対応する。本例においては、Fにおける断面積は、Eにおける断面積よりも大きく、誘電材料110の断面積は、長さに沿ってd方向に増大する。
【0022】
図2の例においては、誘電材料110は円錐形状を有しているが、他の例においては、誘電材料110は、異なるテーパー形状を有しうる。例えば、誘電材料110は、楕円状又は対数曲線状のテーパーを有しうる。例えば、図3は、図1Eの誘電材料110が、長さに沿った楕円状テーパーを有する例を示しており、図4は、図1Eの誘電材料110が、長さに沿った対数曲線状テーパーを有する例を示している。
【0023】
再度図1Eを参照すると、導波管100は、部分106と第2端116との間にモード合成部108を含む。導波管100のモード合成部108は、内部領域198(図1Dを参照)を含み、当該内部領域は、モード合成部108の長さに沿った導波管壁102の内面197によって画定されている。いくつかの実施形態(例えば、円形導波管)においては、内部領域198は、モード合成部108の長さに沿って、A=πR2(式3)に対応する断面積(A)を有し、Rは、内部領域198の断面の半径Rに対応している。他の実施形態においては(例えば、方形又は矩形の導波管)、導波管100の内部領域198は、円形以外の断面形状を有する。これらの例においては、モード合成部108の内部領域198は、式3の関係式とは異なる関係式により規定される断面積を有する。例えば、上述したように、導波管壁102は、方形又は矩形であってもよい(例えば、導波管壁102の内面197は、方形又は矩形を規定する)。例示すると、モード合成部108に沿った内面197は、方形を規定し、内部領域198は、(モード合成部108に沿った内面197により規定される断面形状の)長さの二乗に対応する断面積を有しうる。他の例として、モード合成部108に沿った内面197は、矩形を規定し、内部領域198は、モード合成部108に沿った内面197により規定される断面形状の長さを、断面形状の幅で乗算したものに対応する断面積を有しうる。
【0024】
モード合成部108の内部領域198は、部分106の内部領域よりも低い誘電率を有する。いくつかの例においては、モード合成部108の内部領域は、空気で満たされているが、空気の誘電率は、誘電材料110よりも低い。
【0025】
モード合成部108の長さに沿った内部領域198の断面積は、部分106の長さに沿った内部領域196の断面積と実質的に同じであってもよい。モード合成部108は、二次伝搬モードのエネルギーがモード合成部108に沿ってd方向に伝搬する際に当該エネルギーが消滅するように、基本伝搬モードと関連付けられてもよい。これに加えて、モード合成部108は、第2端116において、基本伝搬モードで伝搬するエネルギーと二次伝搬モードで伝搬するエネルギーとの間に、特定の位相差が生じるような長さを有する。特定の位相差により、縦方向のエッジ電流を相殺することができる。縦方向のエッジ電流の相殺により、第2端116で送信される信号の放射パターンの副ローブのエネルギーを低減することができる。
【0026】
したがって、導波管100は、第1低誘電率部(例えば、供給部104)と、高誘電率部(モード遷移部106)と、第2低誘電率部(モード合成部108)との3つの部分を含む。図1A〜1Eに示す例において、導波管100は、当該導波管100の全長に沿って実質的に一定の断面積を有する内部領域を有する。高誘電率部は、導波管100の内部領域の断面積を変化させることなく、且つ、導波管壁102における不整箇所を含むことなく、伝搬モードを変換するように機能する。高誘電率部から出ていくエネルギーは、当該高誘電率部に入るエネルギーと比較して、二次伝搬モードで伝搬するエネルギーをより多く含む。高誘電率部から出ていくエネルギーは、低誘電率部に入り、当該低誘電率部において、縦方向のエッジ電流が、2つのモードのエネルギー間の位相差により相殺される。
【0027】
導波管100は、誘電率整合部(index matcher)112を含む。誘電率整合部112は、第2端116に近接して配置されており、誘電材料で形成することができる。誘電率整合部112は、信号103の二次伝搬モードの伝搬を支援することができる。上述したように、信号103がモード合成部108を通って伝搬する際、信号103の二次伝搬モードの部分は消滅しうる。誘電率整合部112は、導波管100により伝送される二次伝搬モードの信号の量を調節するように機能することができる。
【0028】
図5は、誘電材料110を含まず、図1A及び1Eに示す誘電率整合部も含まない円形導波管における、表面電流のシミュレーションを示す。図5においては、信号が、第1端514で導波管500に入り、当該導波管の全長に沿ってTE11モードで伝搬する。導波管500の第2端516における表面電流は、約ゼロ(0)dBA/mの縦方向の電流成分を含む。
【0029】
図6は、図1A及び図1Eに示す導波管100における表面電流のシミュレーションを示す。図6においては、信号が、第1端114で入射し、供給部104に沿ってTE11モードで伝搬する。この信号は、供給部104から部分106へ伝搬する。信号が、入射するとともに、部分106に沿って第2端116へ向かって伝搬すると、図1Eに示す誘電材料110は、信号の一部の伝搬モードをTE11モードからTM11モードへと変化させることにより、混合又はマルチモード信号(TE11モードとTM11モードの両方の部分を有する信号)を得る。この信号は、部分106からモード合成部108へ伝搬する。上述したように、モード合成部108は、第2端116において、基本モード(TE11モード)で伝搬するエネルギーと二次モード(TM11モード)で伝搬するエネルギーとの間に、特定の位相差が生じるような長さを有する。特定の位相差により、第2端116において、縦方向のエッジ電流を相殺することができる。したがって、第2端116における表面電流は、図5に示す第2端516における表面電流よりも低い(例えば、約−9dBA/m)。
【0030】
図7は、誘電材料を含む導波管であって、当該誘電材料の断面積が当該導波管の一部の長さに沿って変化する導波管を通して信号を伝搬する方法700を示す。図7に示す方法700は、図1A及び1Eに示す導波管100によって実行されうる。
【0031】
図7に示す方法700は、702において、導波管壁と誘電材料とを含む導波管において信号を受信することを含み、この誘電材料は、導波管の一部の長さに沿って変化する断面積を有する。上記信号は、図1Eに示す信号103に対応しうる。上記導波管は、図1A及び1Eに示す導波管100に対応しうる。上記導波管壁は、図1A、1B、1C、1D、及び1Eに示す導波管壁102に対応しうる。上記誘電材料は、図1C、1E、2、3、及び/又は、図4に示す誘電材料110に対応しうる。上記一部は、図1A及び1Eに示す部分106に対応しうる。導波管壁の形状は、図1Aを参照して先に説明した基本伝搬モードと関連している。
【0032】
図7に示す方法700は、704において、誘電材料を含む導波管の一部を通して信号を伝搬することにより、当該信号の一部を基本伝搬モードから二次伝搬モードに変換することを含む。例えば、導波管は、円形導波管であってもよく、上記一部は、図1Aに示す導波管100を参照しながら先に説明したように、信号の一部をTE11モードからTM11モードに変換することができる。
【0033】
図7に示す方法700は、706において、導波管のモード合成部を通して信号を伝搬することにより、基本伝搬モードで伝搬する信号の一部と、二次伝搬モードで伝搬する信号の一部との間に特定の位相差を生じさせることを、さらに含む。上記モード合成部は、モード合成部108に対応しうる。上述したように、モード合成部は、モード合成部の長さに基づいて特定の位相差を生じさせることができる。また、上述したように、特定の位相差により、縦方向のエッジ電流を相殺することができる。
【0034】
上述したように、導波管の内部領域の断面積は、一定(或いは、実質的に一定)であってもよい。本実施形態においては、導波管(例えば、(誘電材料110を含む)部分106)は、導波管壁102における不整箇所をエミュレートして、導波管壁102における不整箇所に依存することなく、基本伝搬モードからのエネルギーを二次伝搬モードに変換する。したがって、部分106は、供給部104の内部領域195と同じ(或いは、実質的に同じ)断面積を有する内部領域196を用いて伝搬モードを変換することができるため、一定の断面積を有する導波管であっても、当該導波管に誘電材料110を加えることにより、モード変換を行えるように改良することができる。
【0035】
図8を参照すると、導波管壁の不整箇所を用いずにモード変換を行う導波管を含む輸送機(例えば、陸上機、航空機、又は、水上船舶)又は地上設備(例えば、建物又は構造物)などのプラットフォームのライフサイクルを800で示すフロー図が示されている。生産の開始前において、例示的な方法800は、802において、図9を参照して説明する航空機902などのプラットフォームの仕様決定及び設計を含む。プラットフォームの仕様決定及び設計において、方法800は、820において、導波管を有する信号受信機又は信号送信機の仕様決定及び設計を含みうる。信号受信機又は信号送信機は、図9に示す通信系960などの通信系の一部であってもよい。通信系は、図1Eに示す信号103などの信号を送信又は受信するために、図9に示す(導波管を含む)アンテナ903などのアンテナを利用しうる。導波管は、図1A及び1Eに示す導波管100に対応しうる。804において、方法800は、材料調達を含む。830において、方法800は、図1C及び1Eに示す誘電材料110などの、導波管のための材料を調達することを含む。
【0036】
生産中には、方法800は、806において、部品及び小部品の製造を含み、808において、プラットフォームのシステムインテグレーションを含む。方法800は、840において、部品及び小部品の製造(例えば、導波管100の製造、又は、既存の一定の断面積を有する導波管に対する誘電材料110及び/又は誘電率整合部112の付加)を含みうる。また、850において、導波管のシステムインテグレーションを含みうる。例えば、導波管を、図9に示すアンテナ903などのアンテナに組み込んでもよいし、アンテナと関連して使用してもよい。810において、方法800は、プラットフォームの認可及び納品を含み、812において、プラットフォームの使用に入る。860において、認可及び納品は、導波管を認可することを含みうる。方法800は、870において、導波管の使用に入る。顧客による使用中は、プラットフォームは、定例の整備及び保守に組み込まれうる(これには、改良、再構成、改修などが含まれうる)。方法800は、814において、プラットフォームに対して整備及び保守を行うことを含む。方法800は、880において、導波管の整備及び保守を行うことを含む。例えば、導波管の整備及び保守は、導波管100又は誘電材料110の交換を含みうる。
【0037】
方法800の各工程は、システムインテグレーター、第三者、及び/又は、オペレーター(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレーターは、製造者及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよく、その数は特に限定されない。同様に、第三者は、売主、下請業者、及び供給業者をいくつ含んでいてもよい。オペレーターは、例えば、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織等である。
【0038】
図9を参照すると、モード変換を行うように構成された導波管100を含む航空機(例えば、飛行機又はドローン)902の例示的な実施形態を900で示すブロック図が示されている。図9に示すように、方法800により製造された航空機902は、機体918と、内装922と、1つ又は複数のエンジン944と、アンテナ903と、複数のシステム920とを含む。システム920は、推進系924、電気系926、油圧系928、環境系930、表示系950、及び、通信系960のうちの1つ又は複数を含みうる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。アンテナ903は、導波管100と、皿型反射体(reflective dish)などの付加的なアンテナ部品905とを含む。アンテナ903は、通信系960の一部であってもよく、1つ又は複数のエンジン944は、推進系924の一部であってもよい。
【0039】
本明細書で具現化される装置及び方法は、方法800における1つ又は複数のどの段階において採用してもよい。例えば、製造工程808に対応する部品又は小部品は、812などにおいて、航空機802の使用中に作製される部品又は小部品と同様に製造することができる。また、航空機902の使用812において、1つ又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又は、それらの組み合わせを、例えば、限定するものではないが、整備及び保守814に対して用いることができる。例えば、図1A及び1Eの導波管100は、航空機902の使用中、図1Eに示す信号などの信号の送信に用いられる図9に示すアンテナ903などのアンテナの一部であってもよいし、これに関連して用いられてもよい。
【0040】
本明細書で説明した例を示す図面は、様々な実施形態の構造を全体的に理解できるようにすることを意図している。これらの図面は、本明細書で説明した構造や方法を用いる装置及びシステムの要素及び特徴の全てを完全に説明するものではない。本開示を検討すれば、当業者には他の多くの実施形態が明らかであろう。本開示から他の実施形態を利用したり導き出したりすることが可能であり、本開示の範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な代替及び変形を行うことが可能である。例えば、方法ステップは、図示の順序とは異なる順序で実行してもよいし、1つ又は複数の方法ステップを省略することも可能である。したがって、本開示及び図面は、限定的ではなく、例示的なものとみなされるべきである。
【0041】
さらに、本明細書において特定の例を図示及び説明してきたが、記載されている特定の実施形態に代えて、同じ又は類似した結果を達成するために設計された将来の構成を用いることも可能である。本開示は、様々な実施形態の将来のいかなる改変及び変形をも範囲に包含することを意図している。本開示を検討すれば、当業者には、上記実施形態の組み合わせ、及び、本明細書に明示されていない他の実施形態が明らかであろう。
【0042】
提出される要約書は、請求の範囲及び意味を解釈又は限定するためのものではない。また、上述した詳細な説明において、本開示を簡素化するために、様々な特徴をまとめたり、1つの実施形態で説明したりする場合がある。以下の請求の範囲が示すように、請求される要旨は、本開示の実施例の全ての特徴に関するものではない場合もある。
【0043】
さらに、本開示は、以下の付記による実施形態を含む。
【0044】
付記1.導波管を含む装置であって、前記導波管は、
基本伝搬モードに関連する形状を有する導波管壁と、
前記導波管の一部の長さに沿って変化する断面積を有する第1誘電材料と、を含む、装置。
【0045】
付記2.前記導波管壁は、円形の断面を有し、前記基本伝搬モードは、横電界11(TE11)モードを含む、付記1に記載の装置。
【0046】
付記3.前記第1誘電材料は、テーパー形状を有する、付記2に記載の装置。
【0047】
付記4.前記テーパー形状は、円錐形状、楕円形状、又は、対数曲線形状である、付記3に記載の装置。
【0048】
付記5.前記第1誘電材料は、前記導波管の前記一部の長さに沿って直線的に変化する寸法を有する、付記2〜4のいずれかに記載の装置。
【0049】
付記6.前記導波管は、第2誘電材料を含むとともに、前記導波管の第2端に近接して設けられた誘電率整合部をさらに含む、付記1〜5のいずれかに記載の装置。
【0050】
付記7.前記一部は、モード遷移部を含み、前記導波管は、前記モード遷移部と前記第2端との間にモード合成部を含む、付記6に記載の装置。
【0051】
付記8.前記モード合成部の内部領域は、前記モード遷移部の内部領域よりも低い誘電率を有する、付記7に記載の装置。
【0052】
付記9.前記導波管は、前記モード遷移部と前記導波管の第1端との間に供給部をさらに含み、前記供給部の内部領域は、前記モード遷移部の内部領域よりも低い誘電率を有する、付記7又は8に記載の装置。
【0053】
付記10.前記導波管の内部領域の断面積は、前記モード遷移部の長さに沿って実質的に一定である、付記9に記載の装置。
【0054】
付記11.前記導波管の前記内部領域の断面積は、前記供給部に沿って実質的に一定であり、前記モード遷移部の長さに沿った前記内部領域の断面積、及び、前記供給部に沿った前記内部領域の断面積は、実質的に等しい、付記10に記載の装置。
【0055】
付記12.供給部と、
モード合成部と、
誘電材料を含むとともに、前記供給部と前記モード合成部との間に設けられたモード遷移部と、
誘電材料を含む誘電率整合部と、を含み、前記モード合成部は、前記誘電率整合部と前記モード遷移部との間に設けられている、導波管。
【0056】
付記13.前記誘電材料は、前記モード遷移部の長さに沿って変化する断面積を有する、付記12に記載の導波管。
【0057】
付記14.前記誘電材料は、テーパー形状を有する、付記13に記載の導波管。
【0058】
付記15.前記供給部に沿った内部領域の断面積、前記モード合成部に沿った内部領域の断面積、及び、前記モード遷移部に沿った内部領域は、実質的に等しい、付記12〜14のいずれかに記載の導波管。
【0059】
付記16.導波管において信号を受信し、その際、前記導波管は、基本伝搬モードと関連する形状を有する導波管壁と、前記導波管の一部の長さに沿って変化する断面積を有する誘電材料とを含み、
前記誘電材料を含む前記導波管の前記一部を通して前記信号を伝搬することにより、前記信号の一部を、前記基本伝搬モードから二次伝搬モードに変換する、ことを含む、方法。
【0060】
付記17.前記導波管壁は、円形断面を有し、前記基本伝搬モードは、横電界11(TE11)モードを含む、付記16に記載の方法。
【0061】
付記18.前記二次伝搬モードは、横磁界11(TM11)モードを含む、付記16又は17に記載の方法。
【0062】
付記19.前記一部は、モード遷移部を含み、前記導波管のモード合成部を通して前記信号を伝搬することをさらに含む、付記16〜18のいずれかに記載の方法。
【0063】
付記20.前記モード合成部の内部領域の誘電率は、前記モード遷移部の内部領域の誘電率よりも低い、付記19に記載の方法。
【0064】
上述した例は本開示を説明するものであって、何ら限定を加えるものではない。なお、本開示の原理に従って、種々な改変及び変形が可能である。したがって、本開示の範囲は、以下の請求の範囲及びその均等物により規定される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9