【実施例】
【0021】
表1に本発明の実施例の原料配合と評価結果を示している。また、表2に比較例の原料配合と評価結果を示している。実施例及び比較例における評価項目と評価方法は以下のとおりである。
【0022】
<1mm未満の原料で構成した耐火物の1000℃での膨張率>
各例の耐火原料中の粒径1mm未満の原料に所定量の水及び樹脂を添加して混練し、型枠に鋳込んで20×20×80mm形状の硬化体を作製した。そして、硬化体を110℃で24hの熱処理により乾燥したものを試験片として用いた。測定の雰囲気は大気中、温度は室温から1500℃までを測定した。測定方法は、JIS R 2207−1に準拠した。表1及び表2では、1000℃での熱膨張率が0.2%以下の場合を○(良)、0.2%超の場合を×(不良)と表記した。
【0023】
<熱伝導率>
各例に所定量の水を加えて混練し、型枠に鋳込んで114×65×230mm形状の硬化体を作製した。そして、硬化体を養生し、110℃で24hの熱処理により乾燥し、その後、1400℃で5hの熱処理により焼成したものを試験片として用いた。測定はJIS R 2616に準拠した熱線法で行った。測定温度は、室温、1200℃の2点とした。
【0024】
<耐食性>
各例に所定量の水を加えて混練し、所定形状の型枠に鋳込んで所定形状の硬化体を作製した。そして、硬化体を養生した後、110℃で24hの熱処理により乾燥したものを試験片として用いた。試験片に対して転炉スラグを用いて1550℃で3hのスラグ回転浸食試験を実施し、溶損量と浸潤量を測定した。表1及び表2では、溶損浸潤量(溶損量と浸潤量の合計)が5mm以下の場合を◎(優)、5mmより大きく7mm以下の場合を○(良)、7mmより大きく11mm以下の場合を△(可)、11mmより大きい場合を×(不良)と表記した。なお、溶損浸潤量は耐食性の指標であり、溶損浸潤量が少ないほど耐食性は高いことを示す。
【0025】
<耐熱衝撃性>
各例に所定量の水を加えて混練し、型枠に鋳込んで230×114×65mm形状の硬化体を作製した。そして、硬化体を養生した後、110℃で24hの熱処理により乾燥し、その後1000℃で3hの熱処理により焼成したものを試験片として用いた。この試験片を用いて加熱と冷却を繰り返し、亀裂の発生状況を観察した。具体的には、230×65mm面をガスバーナーで1600℃に5分間で昇温し、10分間保持してから10分間放冷する操作を2回繰り返して亀裂の発生状況を観察した。表1及び表2では、亀裂の発生が軽微であった場合を○(良)、やや大きな亀裂が発生した場合を△(可)、大きな亀裂が発生した場合を×(不良)と表記した。
【0026】
<総合評価>
以下の基準により、○(良)、△(可)、×(不良)の3段階で評価した。
○(良):1mm未満の原料で構成した耐火物の1000℃での膨張率が○、室温及び1200℃での熱伝導率が6.5以下、耐食性が◎又は○、かつ耐熱衝撃性が○の場合。
△(可):総合評価が上記○以外の場合であって、下記の要件を満たす場合。
1mm未満の原料で構成した耐火物の1000℃での膨張率が○、室温又は1200℃での熱伝導率が9以下、耐食性が◎、○又は△、かつ耐熱衝撃性が○又は△。
×(不良):評価項目のいずれか一つが下記に該当する場合。
1mm未満の原料で構成した耐火物の1000℃での膨張率が×、室温及び1200℃での熱伝導率が9超、耐食性が×、耐熱衝撃性が×。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1に示しているように本発明の範囲内にある実施例1〜14は、室温及び1200℃での熱伝導率が7.9以下と低熱伝導化(高断熱化)が図られており、総合評価も良好であった。
図2に実施例1の組織写真を例示しているように、本発明の不定形耐火物(実施例1〜14)ではマトリクスに微亀裂が形成されており、空隙が形成されているものもあった。この微亀裂ないし空隙の存在により、熱伝導率が低下し断熱性が向上したと考えられる。なお、実施例7はアルミナセメントを使用していない例である。この実施例7では、マグネシア微粉とシリカ超微粉とが結合剤としての作用を発揮する。
【0030】
比較例1は、炭化珪素粗粒の量が少ない例である。炭化珪素粗粒の長所である低膨張特性が十分に発揮されず、耐熱衝撃性が低下した。
【0031】
比較例2は、炭化珪素粗粒の含有量が多い例である。高熱伝導率材料である炭化珪素粗粒の含有量が多いので高熱伝導化が避けられず、室温及び1200℃での熱伝導率が高くなった。熱伝導率が高くなると、断熱性が低下する。
【0032】
比較例3は、炭化珪素微粒の含有量が多い例である。マトリクスが高熱伝導化し室温での熱伝導率が高くなった。
【0033】
比較例4は、アルミナ微粉の含有量が少ない例である。マトリクスの焼結収縮量が低下し、1mm未満の原料で構成した耐火物の1000℃での膨張率が高くなった。その結果、微亀裂効果が十分に得られず、熱伝導率抑制効果が十分に得られなかった。すなわち、室温及び1200℃での熱伝導率が高くなった。
【0034】
比較例5は、アルミナ微粉の含有量が多い例である。焼結が進みすぎて過度に緻密になり、その結果、耐熱衝撃性が低下した。
【0035】
比較例6は、シリカ超微粉の含有量が少ない例である。マトリクスの焼結収縮量が低下し、1mm未満の原料で構成した耐火物の1000℃での膨張率が高くなった。その結果、微亀裂効果が十分に得られず、熱伝導率抑制効果が十分に得られなかった。すなわち、室温及び1200℃での熱伝導率が高くなった。
【0036】
比較例7は、シリカ超微粉の含有量が多い例である。マトリクスの焼結が進みすぎて過度に緻密になり、その結果、耐熱衝撃性が低下した。また、低融物生成により耐食性も低下した。
【0037】
比較例8は、アルミナセメントの含有量が多い例である。焼結が進みすぎて過度に緻密になり、その結果、耐熱衝撃性が低下した。また、低融物生成により耐食性も低下した。