(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記径方向空気出入促進部と異なる位置に配置され、前記底部からタイヤ表面へ向けて前記タイヤ表面からの深さが漸減され、前記空気受壁部よりもタイヤ表面に対する角度が小さいスロープを有する第2空気出入促進部、
を備えた、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
前記底部のタイヤ幅方向内側に、ベルトを構成するタイヤ幅方向最大幅のベルトプライのタイヤ幅方向端部が位置している、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バットレス部に凹部を形成することで、バットレス部をある程度冷却することは可能であるが、負荷荷重が大きくなると歪みが増え、発熱が大きくなるため、冷却能力の向上が求められている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、バットレス部の冷却能力を向上させた重荷重用タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の重荷重用タイヤは、バットレス部に
前記バットレス部内で終端するように形成され、タイヤ外側に向けて開口し、底部を有する凹部と、前記底部に対してタイヤ径方向の
外側に配置され、前記底部からタイヤ表面へ向けて前記タイヤ表面からの深さが漸減されたスロープを有し、前記底部への空気の出入を促進する径方向空気出入促進部と、前記径方向空気出入促進部と前記底部を挟んで反対側に配置され、前記スロープよりもタイヤ表面に対する角度が大きい空気受壁部と、を備えている。
【0007】
重荷重用タイヤが回転することで、タイヤ表面と周囲の空気との間に速度差が生じ、バットレス部に形成された凹部に空気が流れ込む。請求項1に記載の重荷重用タイヤでは、凹部の底部に対してタイヤ径方向の一方側に径方向空気出入促進部が形成されている。径方向空気出入促進部は、タイヤ表面からの深さが漸減されたスロープを有し、底部への空気の出入を促進する。したがって、タイヤ回転時に、径方向空気出入促進部が底部に対して並進方向前側に配置された時には、底部へ空気が流入しやすくなり、径方向空気出入促進部が底部に対して並進方向後側に配置された時には、底部から空気が排出されやすくなる。また、底部を挟んで径方向空気出入促進部と反対側に空気受壁部が形成されている。この空気受壁部は、スロープよりもタイヤ表面に対する角度が大きいので、径方向空気出入促進部から流入した空気に乱流を形成することができる。これにより、径方向空気出入促進部から流入した空気が凹部の底に達することなく表面(浅い部分)のみを通過して抜けることが抑制され、凹部の底部での空気の滞留を抑制することができる。その結果、凹部の底部を空冷する効果を向上することができる。このようにバットレス部に凹部を設けることで、重荷重用タイヤを回転した際にバットレス部を効果的に冷却することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記径方向空気出入促進部と異なる位置に配置され、前記底部からタイヤ表面へ向けて前記タイヤ表面からの深さが漸減され、前記空気受壁部よりもタイヤ表面に対する角度が小さいスロープを有する第2空気出入促進部、を備えている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、径方向空気出入促進部と別に第2空気出入促進部を有しているので、例えば、径方向空気出入促進部から流入した空気が底部を経て空気受壁部に当たった後、第2空気出入促進部から凹部外へ抜けることができたり、凹部への空気の流入をより促進したりすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記第2空気出入促進部は、前記底部に対してタイヤ回転方向の少なくとも一方側に配置されている、周方向空気出入促進部である。
【0011】
このように、第2空気出入促進部を底部に対してタイヤ回転方向側に配置することにより、底部に対してタイヤ径方向側に配置された径方向空気流入促進部から流入した空気の方向を変えて第2空気出入促進部から良好に排出したり、第2空気出入促進部から流入した空気の方向を変えて径方向空気流入促進部から良好に排出したりすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の重荷重用タイヤにおいて、
前記径方向空気出入促進部に形成された前記スロープ、及び前記第2空気出入促進部に形成された前記スロープの前記タイヤ表面に対する平均の傾斜角度が5°〜45°の範囲内に設定されている。
【0013】
スロープのタイヤ表面に対する平均の傾斜角度を45°よりも大きくすると、タイヤ表面に沿って流れる空気の向きスロープに沿うように変えることが困難になる。一方、スロープのタイヤ表面に対する平均の傾斜角度を5°よりも小さくすると、冷却効果が少なくなる。なお、スロープのタイヤ表面に対する平均の傾斜角度は、5°〜30°の範囲に設定することが好ましく、15°〜25°の範囲に設定することがより一層好ましい。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記底部のタイヤ幅方向内側に、ベルトを構成するタイヤ幅方向最大幅のベルトプライのタイヤ幅方向端部が位置している。
【0015】
重荷重用タイヤが回転すると、トレッドが路面と接触、離間を繰り返すことによる歪みがタイヤ幅方向最大幅のベルトプライの端部近傍に生じ、これにより、特にタイヤ幅方向最大幅のベルトプライの端部付近の温度が上昇する。
請求項5の重荷重用タイヤでは、凹部の底部のタイヤ幅方向内側に、ベルトを構成しているタイヤ幅方向最大幅のベルトプライのタイヤ幅方向端部が位置しているため、当該ベルトプライの端部近傍で発生した熱を、凹部を介してタイヤ外へ効果的に放熱することができ、タイヤ幅方向最大幅のベルトプライのタイヤ幅方向端部近傍の温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の重荷重用タイヤによれば、バットレス部の冷却能力を向上することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図5を用いて、本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤ10について説明する。本実施形態の重荷重用タイヤ10は、後述する空冷部32以外の構造は、一般的な重荷重用の空気入りタイヤと同様の構成である。
【0019】
図1に示すように、重荷重用タイヤ10は、図示しない一対のビードコアを跨るカーカス12を備えている。
(ベルトの構成)
カーカス12のタイヤ径方向外側にはベルト14が配置されている。ベルト14は、複数のベルト層を具備している。具体的には、本実施形態に係る重荷重用タイヤ10は、2枚の保護ベルト16A,16Bからなる保護ベルト層16、2枚の主交錯ベルト18A,18Bからなる主交錯ベルト層18、及び、2枚の小交錯ベルト20A,20Bからなる小交錯ベルト層20を備えている。なお、保護ベルト16A,16B、主交錯ベルト18A,18B、及び小交錯ベルト20A,20Bは、各々、互いに平行に並べられた複数本のコードを被覆ゴムでコーティングした一般的な構造のものである。
【0020】
主交錯ベルト層18は、小交錯ベルト層20のタイヤ径方向外側に配置されており、保護ベルト層16は、主交錯ベルト層18のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0021】
本実施形態の重荷重用タイヤ10では、一例として小交錯ベルト層20を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度は、4〜10°であり、主交錯ベルト層18を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度は、18〜35°であり、保護ベルト層16を構成するコードとタイヤ周方向とがなす角度は、22〜33°である。
【0022】
以下に、本実施形態のベルト14における各ベルト層の幅について説明する。
タイヤ径方向最内側の小交錯ベルト20Bのタイヤ径方向外側に隣接する小交錯ベルト20Aの幅は、小交錯ベルト20Bの幅よりも若干狭く形成されている。
小交錯ベルト20Aのタイヤ径方向外側に隣接する主交錯ベルト18Bの幅は、小交錯ベルト20A,20Bよりも幅広に形成されている。
主交錯ベルト18Bのタイヤ径方向外側に隣接する主交錯ベルト18Aの幅は、小交錯ベルト20A,20Bよりも幅広で、かつ主交錯ベルト18Bよりも幅狭に形成されている。
主交錯ベルト18Aのタイヤ径方向外側に隣接する保護ベルト16Bの幅は、小交錯ベルト20A,20B、及び主交錯ベルト18A、18Bよりも幅広に形成されている。
また、保護ベルト16Bのタイヤ径方向外側に隣接し、ベルト14の最外側に位置する保護ベルト16Aの幅は、保護ベルト16B、及び主交錯ベルト18Bよりも幅狭で、かつ、小交錯ベルト20A,20B、及び主交錯ベルト18Aよりも幅広に形成されている。保護ベルト16Aは、複数のベルト層の内、タイヤ径方向最外側に配置されている。
また、ベルト14において、径方向内側から数えて5枚目の保護ベルト16Bが、複数のベルト層の内、最も幅広に形成されており、ベルト端部がタイヤ幅方向最外側に配置されている。この保護ベルト16Bは、タイヤ幅方向最大幅のベルトプライの一例である。
【0023】
ベルト14のタイヤ径方向外側には、トレッド22を構成するトレッドゴム24が配置されている。トレッドゴム24は、カーカス12に沿ってベルト14のタイヤ幅方向外側へ延び、ベルト14のタイヤ幅方向外側へ配置されている一部が、バットレス部26の一部を構成している。
【0024】
本実施形態におけるバットレス部26とは、タイヤ最大幅部Wmaxとトレッド22の接地端22Eとのタイヤ径方向寸法をHとしたときに、タイヤ最大幅部Wmaxから1/2×Hの位置から接地端22Eまでの間のタイヤ外側の領域を指す。
【0025】
また、トレッド22の接地端22Eとは、重荷重用タイヤ10をJATMA YEAR BOOK(2017、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときのものである。なお、使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
【0026】
重荷重用タイヤ10のトレッド22には、複数のラグ溝28がタイヤ周方向に複数本形成されている。トレッド22に形成されるラグ溝28は、トレッド22の接地端22Eよりもタイヤ幅方向外側へ延びており、
図2に示すように、その端部が重荷重用タイヤ10のバットレス部26に開口している。なお、本実施形態において、タイヤ周方向に隣接するラグ溝28とラグ溝28との間の陸部分をラグブロック30と呼ぶ。
【0027】
図1〜
図3に示すように、バットレス部26には、凹状の空冷部32が形成されている。本実施形態では、ラグ溝28で区画される各ラグブロック30の側面(バットレス部26)に空冷部32が形成されている。
【0028】
(空冷部の詳細)
図4に示すように、空冷部32は、凹部34と、凹部34に隣接して配置される周方向空気出入促進部36と、径方向空気出入促進部38とを含んで構成されている。
(凹部の詳細)
先ず、最初に凹部34について説明する。
図1から
図3に示すように、凹部34は、タイヤ軸方向から見た平面視で、凹部34は、バットレス部26に形成され、タイヤ外側に向けて開口している。また、
図4に示すように、タイヤ径方向外側(矢印A方向側)の底辺40Aが、タイヤ径方向内側の上辺40Bよりも幅広の台形状を呈した底部40を備えている。なお、底辺40A、及び上辺40Bは、タイヤ周方向(矢印B方向)の接線方向に対して平行であり、底部40のタイヤ回転方向(矢印B方向)側の辺40C、及び底部40のタイヤ回転方向とは反対方向側の辺40Dは、タイヤ径方向(矢印A方向)に対して傾斜している。
なお、本実施形態では、底部40は台形状であるが、正方形、長方形、三角形等、その他の多角形状であってもよいし、円形、楕円形状であってもよい。
【0029】
底部40は、
図5(A)に示すようにタイヤ回転方向(矢印B方向)に沿って深さは一定であるが、
図5(B)に示すように、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側(矢印A方向側)に向けて深さが徐々に浅くなるように傾斜している。なお、底部40は、タイヤ回転方向(矢印B方向)に沿う方向において傾斜していてもよい。また、タイヤ径方向に沿う(矢印A)方向において、深さが一定でもよい。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の凹部34では、ベルト14の中で最も幅広に形成された保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Beのタイヤ幅方向外側に底部40が配置されている。また、本実施形態では、凹部34のタイヤ径方向中央部のタイヤ幅方向内側に、保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Beが位置している。より詳細には、タイヤ幅方向端部16Beは、底部40の底辺40Aと上辺40B(
図4参照)の間で、上辺40Bに近い側に配置されている。
【0031】
図4に示すように、底部40のタイヤ回転方向(矢印B方向)前側とは反対側には凹部34の一部を構成している凹部側壁42が形成されている。凹部側壁42は、後述する周方向空気出入促進部36と底部40を挟んで反対側に形成される。また、底部40のタイヤ径方向内側(矢印A方向とは反対方向)には凹部34の他の一部を構成している空気受壁部としての凹部側壁44が形成されている。凹部側壁44は、後述する径方向空気出入促進部38と底部40を挟んで反対側に形成される。
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、凹部34は、底辺40Aから立ち上がり、凹部側壁44とタイヤ表面との角度が略同角度θ4である平面34A、凹部側壁42とタイヤ表面との角度が略同角度θ3である平面34Cによって区画されている。θ3、θ4は、40°よりも大きいことが好ましい。また、後述するスロープ46、52の傾斜角度よりも大きい。
なお、凹部側壁44、凹部側壁42の断面は、バットレス部26の表面との境界部分においてR状とされている。これにより、荷重によるバットレス部26の歪みを抑制することができる。
【0032】
図5(A)に示すように、凹部側壁42はバットレス部26の表面に垂直に立てた法線HLに対して傾斜しており、また、
図5(B)に示すように、凹部側壁44もバットレス部26の表面に垂直に立てた法線HLに対して傾斜している。これにより、凹部34は、底部40からタイヤ外側に向けて広がるように形成されている。
【0033】
(周方向空気出入促進部)
次に、周方向空気出入促進部36について説明する。
図4、及び
図5(A)に示すように、凹部34の底部40に対してタイヤ回転方向(矢印B方向)の前側には周方向空気出入促進部36が配置されている。周方向空気出入促進部36は、平面視で台形状を呈し、タイヤ回転方向前側(矢印B方向側)のバットレス部26の表面から凹部34の底部40に向けて傾斜するスロープ46を有した凹状の部分である。なお、スロープ46と底部40とは滑らかに接続されている。スロープ46は、底部40からタイヤ表面へ向けてタイヤ表面からの深さが漸減された傾斜面である。
なお、本実施形態では、スロープ46は平面視で台形状の例で説明したが、底部40の傾斜方向(辺40Cの延出方向)、バットレス部26の表面形状によって、スロープ46は、平面視で他の多角形状に形成することもできる。
【0034】
スロープ46のタイヤ径方向外側(矢印A方向側)にはスロープ46よりも傾斜が急な側壁48が形成され、スロープ46のタイヤ径方向内側にはスロープ46よりも傾斜が急な側壁50が形成されている。スロープ46に対して側壁48がなす角度は、スロープ46に対して側壁50がなす角度よりも大きくなっている。
【0035】
図4に示すように、タイヤ径方向において、周方向空気出入促進部36の幅は、タイヤ回転方向前方側から凹部34側に向けて漸増している。換言すれば、周方向空気出入促進部36のタイヤ回転方向前方側の端部の幅をW1とし、周方向空気出入促進部36の凹部34側の幅(タイヤ表面において凹部34と接続されている部分の幅。タイヤ径方向に測定)をW3とすると、W3>W1である。スロープ46の幅は一定であり、側壁48,50のタイヤ径方向幅が、タイヤ回転方向前方側から凹部34側に向けて漸増している。なお、周方向空気出入促進部36の幅が、タイヤ回転方向前方側から凹部34側に向けて一定であってもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、タイヤ表面における周方向空気出入促進部36の凹部34側の幅W3は、タイヤ表面における凹部34の幅W2(タイヤ径方向)と同一に設定されている。なお、
図4の2点鎖線(仮想線)は、周方向空気出入促進部36、及び後述する径方向空気出入促進部38が形成されていなかった場合の、凹部34の開口部を示している。
【0037】
図5(A)、(B)に示すように、スロープ46は、凹部34の凹部側壁42、凹部側壁44よりも緩やかに傾斜している。バットレス部26のタイヤ表面に対するスロープ46の平均傾斜角度θ1は、5°〜45°の範囲内であることが好ましい。ここで、この平均傾斜角度θ1が45°より大きいと、タイヤ表面に沿って流れる空気の向きを、スロープ46に沿うように変えることが困難になる。一方、スロープ46のタイヤ表面に対する平均の傾斜角度を5°よりも小さくすると、冷却効果が少なくなる。なお、この傾斜角度θ1は、5°〜30°の範囲内に設定することがより好ましく、15°〜25°の範囲内に設定することがより一層好ましい。
なお、スロープ46の断面は、辺40Cからバットレス部26の表面にかけて直線状である。このように直線状とすることにより、スロープ46の傾斜角度を一定にして空気の流出入の向きを、スロープ46に沿わせ易くすることができる。
【0038】
(径方向空気出入促進部)
次に、径方向空気出入促進部38について説明する。
図4に示すように、凹部34のタイヤ径方向外側(矢印A方向)側には径方向空気出入促進部38が配置されている。径方向空気出入促進部38は、
図5(B)に示すように断面で見て、バットレス部26の表面から凹部34の底部40に向けて傾斜するスロープ52を有した凹状の部分である。スロープ52は、平面視で略正方形を呈している。なお、スロープ52と底部40とは滑らかに接続されている。スロープ52は、底部40からタイヤ表面へ向けてタイヤ表面からの深さが漸減された傾斜面である。
なお、本実施形態では、スロープ52は略正方形状であるが、長方形、台形等、その他の多角形状であってもよい。
【0039】
図4に示すように、スロープ52のタイヤ回転方向前側(矢印B方向側)にはスロープ52よりも傾斜が急な側壁54が形成され、スロープ52のタイヤ回転方向前側とは反対方向側にはスロープ52よりも傾斜が急な側壁56が形成されている。スロープ52に対して側壁54、56なす角度は、略同じ程度となっている。本実施形態の径方向空気出入促進部38は、凹部34側の幅寸法(スロープ52の傾斜方向とは交差する方向の寸法)よりも、タイヤ径方向外側の幅寸法が相対的に小さく形成されている。また、スロープ52の、底辺40Aからバットレス部26の表面までの最短距離は、壁部44の上辺40Bからバットレス部26の表面までの最短距離よりも長い。
なお、スロープ52の幅は、凹部34の底部40からタイヤ径方向外側に向けて一定である。
【0040】
なお、径方向空気出入促進部38の側壁54と、前述した周方向空気出入促進部36の側壁48とは、互いに端部同士が接続されている。また、周方向空気出入促進部36の側壁50と凹部34の凹部側壁44とは、互いに端部同士が接続されている。
【0041】
スロープ52は、凹部34の凹部側壁42、凹部側壁44よりも緩やかに傾斜している。
図5(B)に示すように、バットレス部26の表面に対するスロープ52の平均傾斜角度θ2は、周方向空気出入促進部36のスロープ46の平均傾斜角度θ1と同様に、5°〜45°の範囲内であることが好ましく、5°〜30°の範囲内に設定することがより好ましく、15°〜25°の範囲内に設定することがより一層好ましい。
なお、スロープ52の断面は、底辺40Aからバットレス部26の表面にかけて直線状である。このように直線状とすることにより、スロープ52の傾斜角度を一定にして空気の流出入の向きを、スロープ52に沿わせ易くすることができる。
【0042】
図5(A),(B)に示すように、スロープ46の平均傾斜角度θ1、及びスロープ52の平均傾斜角度θ2は、凹部34の凹部側壁42の平均傾斜角度θ3、及び凹部側壁44の平均傾斜角度θ4よりも小さい。なお、
図5(C)は、
図4に示す空冷部の5C−5C線断面図である。また、スロープ46の、辺40Cからバットレス部26の表面までの最短距離は、壁部42の辺40Dからバットレス部26の表面までの最短距離よりも長い。
【0043】
図4に示すように、本実施形態の空冷部32では、周方向空気出入促進部36のスロープ46の凹部34側の端部が、凹部34の底部40におけるタイヤ回転方向前方側の辺40C全体に渡って連結されている。また、径方向空気出入促進部38のスロープ52の凹部34側の端部が、凹部34の底部40におけるタイヤ回転方向前方側の辺40A全体に渡って連結されている。
【0044】
(作用、効果)
以下に本実施形態の重荷重用タイヤ10の作用、効果を説明する。
重荷重用タイヤ10が走行により回転すると、トレッド22が路面に対して接地、及び離間が繰り返される。これにより、トレッド22に繰り返し歪みが生じ、特にバットレス部26が多く発熱をする。
【0045】
また、重荷重用タイヤ10が走行により回転すると、タイヤ表面と周囲の空気との間に速度差が生じ、バットレス部26に形成された空冷部32の凹部34に空気が流れ込む。具体的には、タイヤ回転方向前方側の周方向空気出入促進部36を介して、空冷部32のタイヤ回転方向前方側の空気が、
図3の矢印Cで示すように、凹部34に流れ込む。そして、凹部34に流入した空気は、凹部34の底部40に沿って流れ、凹部34の底部40を冷却する。
【0046】
周方向空気出入促進部36のスロープ46のタイヤ表面に対する平均傾斜角度θ1は45°以下であり、凹部34の凹部側壁42、及び凹部側壁44よりも緩やかに傾斜して凹部34の底部40に接続している。このため、特に、凹部34のタイヤ回転方向前方側の空気をスロープ46に沿って凹部34の内部にスムーズに導くことができる。そして、凹部34に流入した空気は、凹部34の底部40に沿って流れるので、底部40を効果的に冷却することができる。即ち、周方向空気出入促進部36を備えた空冷部32は、周方向空気出入促進部36が無い場合に比較して凹部34への空気の流入が促進され、バットレス部26をより効果的に冷却することができる。
【0047】
そして底部40に沿って流れた空気は、凹部側壁42に当たって乱流を形成することができる。これにより、周方向空気出入促進部36から流入した空気が凹部34の表面のみを通過して抜けることが抑制され、底部40での空気の滞留を抑制することができる。その結果、凹部34の底部を空冷する効果を向上することができる。
【0048】
底部40へ流入した空気は、凹部34のタイヤ径方向外側に配置された径方向空気出入促進部38のスロープ52に沿ってタイヤ外へ排出される。すなわち、タイヤ回転方向前方側から流入させた空気は、底部40で流れの方向を変えてタイヤ外側に排出される。これにより、空冷部32では、径方向空気出入促進部38が無い場合に比較して、凹部34への空気の出入が促進され、バットレス部26をより効果的に冷却することができる。
【0049】
また、凹部34のタイヤ径方向外側の径方向空気出入促進部38が凹部34のタイヤ進行方向前方側に位置したときには、該径方向空気出入促進部38から凹部34の底部40に向けて、タイヤ進行方向の後方に向かう空気(並進風)の流入を促進することができる。
【0050】
なお、周方向空気出入促進部36のスロープ46の平均傾斜角度θ1が45°よりも大きくなると、タイヤ表面に沿って流れる空気の向きをスロープ46に沿うように変えることが困難になる。一方、周方向空気出入促進部36のスロープ46の平均傾斜角度θ1が5°よりも小さくなると、凹部34の冷却効果が少なくなってしまう。径方向空気出入促進部38のスロープ52の平均傾斜角度θ2についても同様である。
【0051】
図4に示すように、本実施形態の空冷部32では、周方向空気出入促進部36のスロープ46の凹部34側の端部が、凹部34の底部40におけるタイヤ回転方向前方側の辺40C全体に渡って連結されている。また、径方向空気出入促進部38のスロープ52の凹部34側の端部が、凹部34の底部40におけるタイヤ回転方向前方側の辺40A全体に渡って連結されている。これにより、周方向空気出入促進部36から流入させた空気を、凹部34の底部40の幅方向全体に渡って流入させ、径方向空気出入促進部38から流出させることができ、底部40を効果的に冷却することができる。また、径方向空気出入促進部38からも効率的に空気を流入させることができる。
【0052】
重荷重用タイヤ10が回転したときにトレッド22は、ベルト14の最大幅付近、即ち、ベルト14を構成している最も幅広に形成された保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Be付近が温度上昇しやすい。
【0053】
本実施形態では、空冷部32の凹部34の底部40が、保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Beのタイヤ幅方向外側に配置され、最も温度上昇し易い保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Be近傍に位置している。このため、保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Be近傍で発生した熱を、凹部34の底部40を介してタイヤ外へ効果的に放熱することができ、最大幅の保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Be近傍の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の重荷重用タイヤ10では、保護ベルト16Bのタイヤ幅方向端部16Beが、凹部34の底部40のタイヤ径方向中央部のタイヤ幅方向内側に位置しているので、該タイヤ幅方向端部16Beのタイヤ径方向内側部分と、タイヤ径方向外側部分とを均等に冷却することができる。
【0055】
また、
図1の例では、ベルト14においてタイヤ径方向の最外側に配置されている保護ベルト16Aのタイヤ幅方向端16Aeのタイヤ幅方向外側に、凹部34の底部40が位置していなかったが、底部40をタイヤ径方向外側へ延ばして、最外側の保護ベルト16Aのタイヤ幅方向端16Aeのタイヤ幅方向外側に凹部34の底部40が位置するようにしてもよい。
【0056】
重荷重用タイヤ10が悪路等を走行することで、トレッド22の表面に亀裂が生じる場合がある。タイヤ径方向最外側の保護ベルト16Aのタイヤ幅方向端16Ae付近が発熱して温度が上昇すると、タイヤ幅方向端16Ae付近の周囲のトレッドゴム24の耐久性が低下し、トレッド22の表面に生じた亀裂が、耐久性の低下したゴム部分に向けて進展する場合がある。
【0057】
タイヤ径方向最外側の保護ベルト16Aのタイヤ幅方向端16Aeのタイヤ幅方向外側に、凹部34の底部40を配置することで、タイヤ幅方向端16Aeに底部40を近づけることができる。これにより、タイヤ幅方向端16Ae近傍の温度上昇を抑制することができ、タイヤ幅方向端16Ae近傍のトレッドゴム24の耐久性を維持することができ、トレッド22の表面に亀裂がタイヤ幅方向端16Ae近傍のトレッドゴム24に向けて進展することを抑制できる。
【0058】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0059】
以下に、周方向空気出入促進部、径方向空気出入り促進部と凹部34の位置関係等を変更した変形例を説明する。
図6、
図7は空冷部32の変形例を模式的に示す平面図であり、凹部34の底部、及び周方向空気出入促進部、径方向空気出入促進部のスロープのみを記載している。
【0060】
図6(A)〜
図6(C)に示される例では、凹部34のタイヤ径方向外側に径方向空気出入促進部38が形成されると共に、凹部34のタイヤ径方向内側に空気受壁部としての凹部側壁44が形成されている。
【0061】
図6(A)に示される例では、上記に加えて、さらに凹部34のタイヤ回転方向後側に周方向空気出入促進部37が形成されている。凹部側壁42は、仮想の壁面となり、凹部34のタイヤ回転方向前側には、仮想の平面34Cが配置されていた部分に凹部側壁34Cが形成される。
【0062】
図6(B)に示される例では、
図6(A)の構成に加えて、凹部34のタイヤ回転方向前側に、周方向空気出入促進部36が形成されている。凹部側壁34Cは、仮想の壁面となる。
【0063】
図6(C)に示される例では、凹部34のタイヤ径方向外側に径方向空気出入促進部38が形成されると共に、凹部34のタイヤ径方向内側に凹部側壁44が形成されており、他に空気出入促進部は形成されていない。
【0064】
図7(A)〜
図7(D)に示される例では、凹部34のタイヤ径方向内側に径方向空気出入促進部39が形成されると共に、凹部34のタイヤ径方向外側に空気受壁部としての凹部側壁34Aが形成されている。
【0065】
図7(A)に示される例では、上記の他に空気出入促進部は形成されていない。
【0066】
図7(B)に示される例では、
図7(A)に加えて、さらに凹部34のタイヤ回転方向前側に周方向空気出入促進部36が形成されている。凹部側壁34Cは、仮想の壁面となる。
【0067】
図7(C)に示される例では、
図7(A)に加えて、さらに凹部34のタイヤ回転方向後側に周方向空気出入促進部39が形成されている。凹部側壁42は、仮想の壁面となる。
【0068】
図7(D)に示される例では、
図7(C)に加えて、さらに凹部34のタイヤ回転方向前側に径方向空気出入促進部39が形成されている。