(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1〜
図6を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る衝突軽減装置が適用される車両100の走行駆動系の概略構成を示す図である。車両(自車両とも呼ぶ)100は、自動運転機能を有する自動運転車両として構成される。車両100は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
図1に示すように、車両100は、第1モータジェネレータ(MG1)1と第2モータジェネレータ(MG2)2とを走行駆動源として有する電気自動車である。なお、走行駆動源としてモータジェネレータMG1,MG2の代わりに、あるいはモータジェネレータMG1,MG2に加えてエンジン(内燃機関)を設け、内燃機関車両やハイブリッド車両として車両100を構成することもできる。
【0010】
第1モータジェネレータ1の動力は、差動機構3およびドライブシャフト4を介して左右の前輪FWに伝達される。第2モータジェネレータ2の動力は、差動機構5およびドライブシャフト6を介して左右の後輪RWに伝達される。したがって、車両100は、前輪FWと後輪RWの双方が駆動輪である四輪駆動車両として構成される。なお、一対のモータジェネレータMG1,MG2の代わりに、各車輪FW,RWの内側に、それぞれ各車輪FW,RWを駆動するためのインホールモータを配置するようにしてもよい。
【0011】
第1および第2モータジェネレータ1,2は、それぞれロータとステータとを有し、モータおよび発電機として機能することができる。すなわち、第1および第2モータジェネレータ1,2のロータは、電力制御ユニット(PCU)7を介してバッテリ(BAT)8からステータのコイルに供給される電力により駆動する。このとき第1および第2モータジェネレータ1,2は、モータとして機能する。
【0012】
一方、第1および第2モータジェネレータ1,2のロータの回転軸が外力により駆動されると、第1および第2モータジェネレータ1,2は発電し、電力制御ユニット7を介して電力がバッテリ8に蓄電される。このとき第1および第2モータジェネレータ1,2は、発電機として機能する。電力制御ユニット7は、インバータを含んで構成され、電子制御ユニット(ECU)として構成されるコントローラ20からの指令によりインバータが制御されることにより、第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2のそれぞれの出力トルクまたは回生トルクが制御される。
【0013】
図2は、車両100に設けられるシート200の概略構成を示す図である。
図2に示すように、シート200は、乗員が着座するシートクッション201と、乗員の上半身を支持するシートバック202と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト203とを有する。
図2に示すように、乗員は、一般に、頭部をヘッドレスト203から前方に離した着座姿勢をとることが多い。
【0014】
図3は、本実施形態に係る車両100に搭載される車両制御システム101の全体構成を概略的に示すブロック図であり、主に自動運転に係る構成を示す。
図2に示すように、車両制御システム101は、コントローラ10と、コントローラ10にそれぞれ電気的に接続された外部センサ群11と、内部センサ群12と、入出力装置13と、GPS受信機14と、地図データベース15と、ナビゲーション装置16と、通信ユニット17と、走行用のアクチュエータACとを主に有する。
【0015】
外部センサ群11は、車両100の周辺情報である外部状況を検出する複数のセンサの総称である。例えば外部センサ群11には、車両100の全方位の照射光に対する散乱光を測定して車両100から周辺の障害物までの距離を測定するライダ、電磁波を照射し反射波を検出することで車両100の周辺の他車両や障害物等を検出するレーダ、車両100に搭載され、CCDやCMOS等の撮像素子を有して車両100の周辺(前方、後方および側方)を撮像するカメラなどが含まれる。
【0016】
内部センサ群12は、車両100の走行状態を検出する複数のセンサの総称である。例えば内部センサ群12には、車両100の車速を検出する車速センサ、車両100の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、第1および第2モータジェネレータ1,2の回転数を検出する回転数センサ、車両100の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサなどが含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群12に含まれる。
【0017】
入出力装置13は、ドライバから指令が入力されたり、ドライバに対し情報が出力されたりする装置の総称である。例えば入出力装置13には、操作部材の操作によりドライバが各種指令を入力する各種スイッチ、ドライバが音声で指令を入力するマイク、ドライバに表示画像を介して情報を提供する表示部、ドライバに音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。各種スイッチには、自動運転モードおよび手動運転モードのいずれかを指令する手動自動切換スイッチ、自動運転レベルを指令する運転レベル指令スイッチが含まれる。
【0018】
手動自動切換スイッチは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて、自動運転機能を有効化した自動運転モードまたは自動運転機能を無効化した手動運転モードへの切換指令を出力する。手動自動切換スイッチの操作によらずに、手動運転モードから自動運転モードへの切換、あるいは自動運転モードから手動運転モードへの切換を指令することもできる。すなわち、ドライバによる所定の操作がなされたときや所定の走行条件が成立したときに、運転モードを手動運転モードまたは自動運転モードに自動的に切り換えることもできる。
【0019】
運転レベル指令スイッチは、例えばドライバが手動操作可能なスイッチとして構成され、スイッチ操作に応じて自動運転レベルが指令される。自動運転レベルとは、どの程度まで運転を自動化するかの指標である。自動運転レベルは、例えばSAEインターナショナルにより定められたSAEJ3016に基づきレベル0〜レベル5に分類される。具体的には、レベル0は、自動化なしの運転レベルであり、レベル0では、全ての運転操作を人間(ドライバ)が行う。
【0020】
レベル1は、加速、操舵および制動のいずれかの操作をシステムが行う運転レベル(運転支援)である。すなわち、レベル1では、特定の条件下で、アクセル、ブレーキ、ハンドルのいずれかの操作を車両制御システム101が周囲の状況に応じて制御し、それ以外の全ての運転操作を人間が行う。
【0021】
レベル2は、加速、操舵および制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う運転レベル(部分運転自動化)である。レベル2までは、人間に周囲の監視義務がある。
【0022】
レベル3は、加速、操作および制動の全てを車両制御システム101が行い、車両制御システム101が要請したときのみドライバが対応する運転レベル(条件付き自動運転)である。レベル3以降では、車両制御システム101が周囲を監視し、人間に周囲の監視義務はない。
【0023】
レベル4は、特定の状況で、車両制御システム101が全ての運転操作を行い、車両制御システム101が運転を継続できない場合でも人間は交代しなくてもよい運転レベル(高度自動運転)である。したがって、レベル4以降では、非常時であっても車両制御システム101が対応する。
【0024】
レベル5は、全ての条件下で、車両制御システム101が自律的に自動走行をする運転レベル(完全自動運転)である。
【0025】
運転レベル指令スイッチは、その操作に応じてレベル0〜5のいずれかの自動運転レベルを指令する。車両制御システム101が周囲の状況等により自度運転が可能な条件が満たされているか否かを判定し、判定結果に応じて運転レベル指令スイッチを自動で切り換え、レベル0〜5のいずれかを指令するように構成することもできる。例えば所定条件が成立しているときに、レベル2からレベル3へと自動的に切り換えることができる。
【0026】
GPS受信機14は、複数のGPS衛星からの測位信号を受信し、これにより車両100の絶対位置(緯度、経度など)を測定する。
【0027】
地図データベース15は、ナビゲーション装置16に用いられる一般的な地図情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクにより構成される。地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率など)の情報、交差点や分岐点の位置情報が含まれる。なお、地図データベース15に記憶される地図情報は、コントローラ20の記憶部22に記憶される高精度な地図情報とは異なる。
【0028】
ナビゲーション装置16は、ドライバにより入力された目的地までの道路上の目標経路を探索するとともに、目標経路に沿った案内を行う装置である。目的地の入力および目標経路に沿った案内は、入出力装置13を介して行われる。入出力装置13を介さずに、目的地を自動的に設定することもできる。目標経路は、GPS受信機14により測定された自車両の現在位置と、地図データベース15に記憶された地図情報とに基づいて演算される。
【0029】
通信ユニット17は、インターネット回線などの無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報および交通情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。取得した地図情報は、地図データベース15や記憶部22に出力され、地図情報が更新される。取得した交通情報には、渋滞情報や、信号が赤から青に変わるまでの残り時間等の信号情報が含まれる。
【0030】
アクチュエータACは、車両100の走行動作に関する各種機器を作動させるための走行用アクチュエータである。アクチュエータACには、第1および第2モータジェネレータ1,2の他、制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータ、および前輪FWを転舵する転舵用アクチュエータなどが含まれる。なお、コントローラ20とアクチュエータAC(例えば第1および第2モータジェネレータ1,2)との間には、電力制御ユニット7(
図1)などが設けられるが、
図2ではこの点の図示を省略する。
【0031】
コントローラ20は、走行制御に係る処理を行うCPU等の演算部21と、ROM,RAM,ハードディスク等の記憶部22と、I/Oポートなどの図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。
【0032】
記憶部22には、車線の中央位置の情報や車線位置の境界の情報等を含む高精度の詳細な地図情報が記憶される。より具体的には、地図情報として、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が記憶される。道路情報には、高速道路、有料道路、国道などの道路の種別を表す情報、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の3次元座標位置、車線のカーブの曲率、車線の合流ポイントおよび分岐ポイントの位置、道路標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事等により車線の走行が制限または通行止めとされている情報などが含まれる。記憶部22には、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報も記憶される。
【0033】
演算部21は、主に自動走行に関する機能的構成として、自車位置認識部23と、外界認識部24と、行動計画生成部25と、走行制御部26とを有する。
【0034】
自車位置認識部23は、GPS受信機14で受信した車両100の位置情報および地図データベース15の地図情報に基づいて、地図上の車両100の位置(自車位置)を認識する。記憶部22に記憶された地図情報(建物の形状などの情報)と、外部センサ群11が検出した車両100の周辺情報とを用いて自車位置を認識してもよく、これにより自車位置を高精度に認識することができる。なお、道路上や道路脇の外部に設置されたセンサで自車位置を測定可能であるとき、そのセンサと通信ユニット17を介して通信することにより、自車位置を高精度に認識することもできる。
【0035】
外界認識部24は、ライダ、レーダ、カメラ等の外部センサ群11からの信号に基づいて車両100の周囲の外部状況を認識する。例えば車両100の周辺を走行する周辺車両(前方車両や後方車両)の位置や速度や加速度、車両100の周囲に停車または駐車している周辺車両の位置、および他の物体の位置や状態などを認識する。他の物体には、標識、信号機、道路の境界線や停止線、建物、ガードレール、電柱、看板、歩行者、自転車等が含まれる。他の物体の状態には、信号機の色(赤、青、黄)、歩行者や自転車の移動速度や向きなどが含まれる。
【0036】
行動計画生成部25は、例えばナビゲーション装置16で演算された目標経路と、自車位置認識部23で認識された自車位置と、外界認識部24で認識された外部状況とに基づいて、現時点から所定時間先までの車両100の走行軌道(目標軌道)を生成する。目標経路上に目標軌道の候補となる複数の軌道が存在するときには、行動計画生成部25は、その中から法令を順守し、かつ効率よく安全に走行する等の基準を満たす最適な軌道を選択し、選択した軌道を目標軌道とする。そして、行動計画生成部25は、生成した目標軌道に応じた行動計画を生成する。
【0037】
行動計画には、現時点から所定時間T(例えば5秒)先までの間に単位時間Δt(例えば0.1秒)毎に設定される走行計画データ、すなわち単位時間Δt毎の時刻に対応付けて設定される走行計画データが含まれる。走行計画データは、単位時間Δt毎の車両100の位置データと車両状態のデータとを含む。位置データは、例えば道路上の2次元座標位置を示す目標点のデータであり、車両状態のデータは、車速を表す車速データと車両100の向きを表す方向データなどである。走行計画は単位時間Δt毎に更新される。
【0038】
行動計画生成部25は、現時点から所定時間T先までの単位時間Δt毎の位置データを時刻順に接続することにより、目標軌道を生成する。このとき、目標軌道上の単位時間Δt毎の各目標点の車速(目標車速)に基づいて、単位時間Δt毎の加速度(目標加速度)を算出する。すなわち、行動計画生成部25は、目標車速と目標加速度とを算出する。なお、目標加速度を走行制御部26で算出するようにしてもよい。
【0039】
走行制御部26は、運転モード(自動運転モード、手動運転モード)に応じてアクチュエータACを制御する。例えば自動運転モードにおいて、走行制御部26は、行動計画生成部25で生成された目標軌道に沿って車両100が走行するように各アクチュエータACを制御する。すなわち、単位時間Δt毎の目標点を車両100が通過するように、第1および第2モータジェネレータ1,2、ブレーキ用アクチュエータ、および操舵用アクチュエータなどをそれぞれ制御する。
【0040】
より具体的には、走行制御部26は、自動運転モードにおいて道路勾配などにより定まる走行抵抗を考慮して、行動計画生成部25で算出された単位時間Δt毎の目標加速度を得るための要求駆動力を算出する。そして、例えば内部センサ群12により検出された実加速度が目標加速度となるようにアクチュエータACをフィードバック制御する。すなわち、自車両が目標車速および目標加速度で走行するようにアクチュエータACを制御する。一方、手動運転モードでは、走行制御部26は、内部センサ群12により取得されたドライバからの走行指令(アクセル開度等)に応じて各アクチュエータACを制御する。
【0041】
ところで、例えばレベル3以上の自動運転モードで走行中においては、ドライバに前方監視義務はなく、ドライバは周囲の状況を監視しないで着座している場合が多い。このとき、後方車両が車両100に接近して車両100の後部に衝突(追突)すると、乗員(ドライバ)は不意に衝突による衝撃を受けることになる。このため、乗員は衝突に対する備えをなしておらず、乗員の被害が拡大するおそれがある。例えば、
図2に示すように後方車両の衝突時に乗員の頭部がヘッドレスト203に密着していないとき、乗員の胸部および腰部に対する頭部の後方への移動量(矢印A)が大きくなって頭部が後方に振られ、乗員の頸部に負荷が作用してむち打ち障害が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、後方車両の衝突時(後突時)の乗員の被害を軽減するため、以下のように衝突軽減装置を構成する。
【0042】
図4は、本実施形態に係る衝突軽減装置50の要部構成を示すブロック図である。この衝突軽減装置50は、自動運転モードにおける車両100の走行動作を制御するものであり、
図3の車両制御システム101の一部を構成する。
【0043】
図4に示すように、衝突軽減装置50は、コントローラ20と、車両検出器11aと、車間距離検出器11bと、手動自動切換スイッチ13aと、運転レベル指令スイッチ13bと、第1モータジェネレータ1と、第2モータジェネレータ2とを有する。
【0044】
車両検出器11aは、
図3の外部センサ群11の一部であり、ライダ、レーダ、カメラなどにより構成され、自車両の周囲の他車両を検出する。車間距離検出器11bは、外部センサ群11の一部であり、ライダやレーダにより構成され、自車両と他車両との間の車間距離を検出する。手動自動切換スイッチ13aと運転レベル指令スイッチ13bとは、
図2の入出力装置13の一部である。コントローラ20には、車両検出器11aと車間距離検出器11bと手動自動切換スイッチ13aと運転レベル指令スイッチ13bとからの信号が入力される。コントローラ20は、電力制御ユニット7(
図1)を介して第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とに制御信号を出力する。
【0045】
コントローラ20は、機能的構成として、衝突予測部20Aと駆動力制御部20Bとを有する。衝突予測部20Aは、例えば
図3の外界認識部24により構成される。駆動力制御部20Bは、例えば
図2の走行制御部26により構成される。
【0046】
衝突予測部20Aは、車両検出器11aと車間距離検出器11bとからの信号に基づいて、車両100の直後方を走行する後方車両が車両100に接近して車両100に衝突するか否かを予測する。より具体的には、車両検出器11aからの信号に基づいて後方車両を検出するとともに、車間距離検出器11bからの信号に基づいて車両100と後方車両との車間距離Lを検出する。さらに、車間距離Lを時間微分することで、車両100に対する後方車両の相対車速Vを検出する。相対車速Vは、車間距離Lが増加するとプラスの値に、車間距離Lが減少するとマイナスの値になる。衝突予測部20Aは、検出された車間距離Lが第1所定距離Laよりも小さく、かつ、検出された相対車速Vが第1所定車速Vaよりも小さいとき、後方車両が車両100に衝突すると予測する。なお、第1所定車速Vaは例えばマイナスの値に設定される。
【0047】
駆動力制御部20Bは、車間距離Lが第1所定距離Laよりも小さく、かつ、相対車速Vが第1所定車速Vaよりも小さいことにより、衝突予測部20Aにより後方車両が衝突すると予測されると、車両100に対する後方車両の相対車速Vが0となるような車両100の駆動力を算出する。そして、算出された駆動力で車両100が加速走行するように第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とに制御信号を出力する。
【0048】
相対車速Vが0となるように駆動力制御部20Bが第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とに制御信号を出力した後、衝突予測部20Aは、さらに車間距離検出器11bからの信号に基づいて後方車両が車両100に衝突するか否かを予測する。すなわち、車間距離検出器11bからの信号に基づいて車両100と後方車両との車間距離Lと、車両100に対する後方車両の相対車速Vとを検出するとともに、検出された車間距離Lが第2所定距離Lbよりも小さく、かつ、検出された相対車速Vが第2所定車速Vbよりも小さいとき、後方車両が車両100に衝突すると予測する。なお、第2所定距離Lbは第1所定距離Laよりも小さい値に設定され、第2所定車速Vbは例えば0に設定される。
【0049】
駆動力制御部20Bは、車間距離Lが第2所定距離Lbより小さく、かつ、相対車速Vが第2所定車速Vbより小さいことにより、衝突予測部20Aにより後方車両が衝突すると予測されると、衝突予想時刻を算出する。そして、衝突予想時刻の所定時間前、すなわち衝突の直前(例えば1秒前)に、第1モータジェネレータ1が回生トルクを発生し、第2モータジェネレータ2が駆動トルクを発生するように、第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とに制御信号を出力する。このとき、車両全体としては直前の加速力を維持するように、前輪FW側と後輪RW側の駆動力配分を制御する。これにより車両100が前傾状態となるため、衝突の直前に乗員の頭部をヘッドレスト203に密着させることができる。
【0050】
図5は、予め記憶部22に記憶されたプログラムに従い
図4のコントローラ20のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば手動自動切換スイッチ13aにより自動運転モードが指令され、かつ、運転レベル指令スイッチ13bによりレベル3以上の自動運転が指令されて、車両走行中に開始され、この状態が維持される限り、処理が継続される。なお、初期状態では、車両走行中の前輪FWと後輪RWの駆動力配分は例えば50:50である。前輪FWの駆動力配分を後輪RWの駆動力配分より多くしてもよい。
【0051】
まず、ステップS1で、車両検出器11aと車間距離検出器11bとからの信号に基づいて、車両100から所定距離内に車両100の前方を走行する前方車両が検出されたか否かを判定する。すなわち、車両検出器11aにより前方車両が検出されると、車間距離検出器11bにより前方車両と車両100との間の車間距離が検出されるが、ステップS1では、検出された車間距離が所定距離内であるか否かを判定する。ステップS1で否定されるとステップS2に進み、肯定されるとリターンする。
【0052】
ステップS2では、車両検出器11aと車間距離検出器11bとからの信号に基づいて、車両100から第1所定距離La未満の後方を走行する後方車両が検出されたか否かを判定する。すなわち、車両検出器11aにより後方車両が検出されると、車間距離検出器11bにより後方車両と車両100との間の車間距離Lが検出されるが、ステップS2では、検出された車間距離Lが第1所定距離Laより小さいか否かを判定する。ステップS2で肯定されるとステップS3に進み、否定されるとリターンする。
【0053】
ステップS3では、車間距離検出器11bからの信号に基づいて車両100に対する後方車両の相対車速Vを検出するとともに、相対車速Vが第1所定車速V1よりも小さいか否かを判定する。ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、否定されるとリターンする。ステップS4では、車両100に対する後方車両の相対車速Vが0となるように第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とに制御信号を出力する。すなわち、車両100の駆動力をアップさせる。
【0054】
次いで、ステップS5に進み、車間距離検出器11bからの信号に基づいて車両100に対する後方車両の相対車速Vを検出するとともに、相対車速Vが第2所定車速V2よりも小さいか否かを判定する。ステップS5で肯定されるとステップS6に進み、否定されるとリターンする。ステップS6では、車間距離検出器11bにより検出された車両100と後方車両との間の車間距離Lが第2車間距離L2よりも小さいか否かを判定する。このとき、衝突予想時刻を併せて算出する。ステップS6で肯定されると、すなわち後方車両の衝突が避けられないと判定されるとステップS7に進み、否定されるとステップS5に戻る。
【0055】
ステップS7では、衝突予想時刻の直前に車両全体の加速度を一定としたまま、第1モータジェネレータ1が回生トルクを発生し、第2モータジェネレータ2が駆動トルクを発生するように、第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とに制御信号を出力する。後方車両が車両100に衝突した後は、ステップS8に進み、第1モータジェネレータ1と第2モータジェネレータ2とブレーキ用アクチュエータとにそれぞれ制御信号を出力し、車両100を所定の減速度で減速させた後に、停止させる。その後、車両100のメイン電源をオフする。なお、以上の処理のうち、ステップS4以降の処理が衝突軽減制御に係る処理に相当する。
【0056】
図6は、本実施形態に係る衝突軽減装置50による動作の一例を示すタイムチャートである。
図6では、レベル3以上の自動運転モードの設定の有無(オンオフ)、衝突軽減制御の有無(オンオフ)、および車両100の駆動力(車両駆動力)のそれぞれの時間経過に伴う変化の一例を示す。
【0057】
図5のタイムチャートは、レベル3以上の自動運転モードが設定された状態で、車両100が駆動力一定で定常走行している状態から開始される。このとき、時点t1で、車両100に後方車両が接近し、車両100と後方車両との車間距離Lが第1所定距離Laよりも小さくなり、かつ、車両100に対する後方車両の相対車速Vが第1相対車速Vaよりも小さくなると、衝突軽減制御が開始され、車両100の駆動力が上昇する(ステップS4)。
【0058】
その後、さらに車両100に後方車両が接近し、相対車速Vが第2所定車速Vbよりも小さくなり、かつ、車間距離Lが第2所定距離Lbよりも小さくなると、後方車両の衝突を回避できなくなる。このとき、後方車両の衝突の直前に前輪FWが回生トルクを発生し、後輪RWが駆動トルクを発生するため、車両100が前傾状態となる(ステップS7)。これによりヘッドレスト203が乗員の頭部に向かって移動し、頭部に密着する。この状態で、時点t2に後方車両が車両100に追突すると、車両100から乗員に衝撃が作用するが、乗員の頭部の変位はヘッドレスト203により拘束されるため、衝突時における頸部に作用する負荷が軽減され、乗員のむち打ち傷害の発生を抑制できる。
【0059】
時点t2で、車両駆動力が減少させられた後、時点t3で車両駆動力が0となり、車両が停車する(ステップS8)。その後、時点t4で、メイン電源がオフし、自動運転モードが終了(オフ)するとともに、衝突軽減制御が終了(オフ)する。
【0060】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る衝突軽減装置50は、車両100に設けられ、車両100への後方車両の衝突時の乗員の受ける衝撃を軽減するものであり、走行駆動力を発生するとともに、前輪FWおよび後輪RWの駆動力配分を変更可能な第1および第2モータジェネレータ1,2と、車両100への後方車両の衝突を予測する衝突予測部20Aと、衝突予測部20Aにより車両100への衝突が予測されると、衝突軽減制御として、車両100と後方車両との衝突の前に車両100と後方車両との相対車速Vが小さくなるように、すなわち走行駆動力がアップするように第1および第2モータジェネレータ1,2を制御し、かつ、後輪RWの駆動力が前輪FWの駆動力よりも大きくなるように、より具体的には前輪FWが回生トルクを発生し、後輪RWが駆動トルクを発生するように第1および第2モータジェネレータ1,2を制御する駆動力制御部20Bと、を備える(
図1,4)。
【0061】
この構成により、後方車両の衝突の直前に後輪RW側の駆動力を前輪FW側よりも大きくすることができ、車両100を前傾状態にすることができる。したがって、ヘッドレスト203を乗員の頭部に密着させることができ、乗員の被害を軽減することができる。また、車両100に対する後方車両の相対車速V(接近の度合い)が小さくなるので、後方車両の衝突によって乗員に及ぼされる被害を軽減することができる。
【0062】
(2)車両100は、自動運転機能を有する自動運転車両であり、衝突軽減装置50は、走行中のドライバの周辺監視義務を含むレベル3未満の自動運転レベルまたは周辺監視義務を含まないレベル3以上の自動運転レベルに、自動運転のレベルを切り換える運転レベル指令スイッチ13bをさらに備える(
図4)。駆動力制御部20Bは、衝突予測部20Aにより車両100への衝突が予測されると、運転レベル指令スイッチ13bにより自動運転のレベルがレベル3以上の自動運転レベルに切り換わっていることを条件として、車両100と後方車両との衝突時に車両100と後方車両との相対車速Vが小さくなり、かつ、後輪RWの駆動力が前輪FWの駆動力よりも大きくなるように第1および第2モータジェネレータ1,2を制御する。レベル3以上の自動運転時には、乗員がヘッドレスト203に頭部を密着させていない蓋然性が高い。したがって、レベル3以上の自動運転を条件として衝突軽減制御を行うことで、必要以上に車両100の挙動を変化させることなく、乗員を最適に保護することができる。
【0063】
(3)駆動力制御部20Bは、衝突予測部20Aにより車両100への衝突が予測されると、前輪FW側の第1モータジェネレータ1が回生トルクを発生し、後輪RW側の第2モータジェネレータ2が駆動トルクを発生するように第1および第2モータジェネレータ1,2を制御する。これにより、前輪FW側と後輪RW側の駆動力差が大きくなるため、車両100を容易に前傾状態とすることができる。
【0064】
上記実施形態は種々の形態に変更することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、第1および第2モータジェネレータ1,2により、前輪FWおよび後輪RWの駆動力配分が変更可能となるように駆動力を発生するようにしたが、駆動力発生部の構成はこれに限らない。すなわち、上記実施形態では、前輪FWを駆動する前輪駆動部として第1モータジェネレータ1を、後輪RWを駆動する後輪駆動部として第2モータジェネレータ2を設けたが、例えば第1およびモータジェネレータ1,2の代わりにエンジンを設け、エンジンで発生した動力を、変速機を介して前輪側の差動機構3に伝達するとともに、前後輪の動力配分を変更可能な動力配分機構を例えばプロペラシャフトに設け、エンジンで発生した動力を、動力配分機構を介して後輪側の差動機構5に伝達するようにしてもよい。
【0065】
上記実施形態では、衝突予測部20Aが車両検出器11aと車間距離検出器11bとからの信号に基づいて後方車両が車両100に接近して車両100に衝突するか否かを予測するようにしたが、衝突予測部の構成はこれに限らない。上記実施形態では、衝突予測部20Aにより車両100への衝突が予測されると、第1モータジェネレータ1が回生トルクを発生し、第2モータジェネレータ2が駆動トルクを発生するように、駆動力制御部20Bが第1および第2モータジェネレータ1,2を制御したが、駆動力制御部の構成はこれに限らない。すなわち、車両100と後方車両との衝突の前に車両100と後方車両との相対速度が小さくなり、かつ、後輪RWの駆動力が前輪FWの駆動力よりも大きくなるように駆動力発生部を制御するのであれば、駆動力制御部の構成はいかなるものでもよい。例えば、前輪FWと後輪RWの両方が駆動トルクを発生するようにしてもよい。前輪FWがブレーキ力を発生し、後輪RWのみが駆動トルクを発生するようにしてもよい。なお、後輪RWの駆動力が前輪FWの駆動力よりも大きくなるように駆動力発生部を制御するタイミングは、後方車両の衝突の直前(例えば後方車両が衝突すると予測される時刻の所定時間前)であることが好ましい。
【0066】
上記実施形態では、レベル3以上の自動運転モードにおいて、ステップS4〜ステップS8の衝突軽減制御を行うようにしたが、レベル3未満の自動運転モードでも衝突軽減制御を行うようにしてもよい。自動運転モードだけでなく、手動運転モードにおいても衝突軽減制御を行うようにしてよい。車両走行中だけではなく、車両停車中に衝突軽減制御を行うようにしてもよい。すなわち、本実施形態に係る衝突軽減装置は、車両走行中と停車中とに拘らず適用可能である。
【0067】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。