(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0101】
I.定義
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0102】
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0103】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、「結合親和性」は、本明細書で使用される場合、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は概して、解離定数(Kd)で表され得る。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当該技術分野において既知の一般的な方法により測定され得る。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0104】
「親和性成熟」抗体とは、改変を保有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)及び/またはフレームワーク領域(FR)に1つ以上の改変を有し、かかる改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0105】
「血管内皮成長因子」または「VEGF」という用語は、配列番号47(Swiss Prot受託番号P15692、Gene ID(NCBI):7422も参照されたい)により例示されるような、血管内皮成長因子タンパク質Aを指す。「VEGF」という用語は、配列番号47のアミノ酸配列を有するタンパク質、ならびにその相同体及びアイソフォームを包含する。「VEGF」という用語はまた、既知のアイソフォーム、例えば、VEGFのスプライスアイソフォーム、例えば、VEGF
111、VEGF
121、VEGF
145、VEGF
165、VEGF
189、及びVEGF
206を、それらの天然のアレル形態及びプロセシング形態と共に包含し、これには、Ferrara Mol.Biol.Cell.21:687(2010),Leung et al.,Science,246:1306(1989)、及びHouck et al.,Mol.Endocrin.,5:1806(1991)に記載されているようなVEGF
165のプラスミン切断により生成された110個のアミノ酸の血管内皮細胞成長因子が含まれる。「VEGF」という用語はまた、マウス、ラット、または霊長類などの非ヒト種に由来するVEGFを指す。特定の種に由来するVEGFは、ヒトVEGFではhVEGF、マウスVEGFではmVEGFなどの用語により示される。「VEGF」という用語はまた、165個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8〜109または1〜109を含む、ポリペプチドの切断形態を指して使用されることもある。VEGFの任意のかかる形態への言及は、本出願において、例えば、「VEGF
109」、「VEGF(8〜109)」、「VEGF(1〜109)」、または「VEGF
165」により特定され得る。「切断型」天然VEGFのアミノ酸位は、天然VEGF配列に示されるように番号付けされる。例えば、切断型天然VEGFでのアミノ酸17位(メチオニン)は、天然VEGFでも17位(メチオニン)である。切断型天然VEGFは、KDR及びFlt−1受容体に対して、天然VEGFに匹敵する結合親和性を有する。「VEGF変異体」という用語は、本明細書で使用される場合、天然VEGF配列に1つ以上のアミノ酸突然変異を含むVEGFポリペプチドを指す。任意に、この1つ以上のアミノ酸突然変異には、アミノ酸置換(複数可)が含まれる。本明細書に記載されるVEGF変異体を簡潔に表記する目的で、数字は、推定上の天然VEGF(Leung et al.(上記)及びHouck et al.(上記)に提供される)のアミノ酸配列に沿ったアミノ酸残基の位置を指すことが留意される。別途示されない限り、「VEGF」という用語は、本明細書で使用される場合、VEGF−Aを示す。
【0106】
「抗VEGF抗体」、「VEGFに結合する抗体」、及び「VEGFに特異的に結合する抗体」という用語は、抗体が診断剤及び/または療法剤としてVEGFを標的とするのに有用となるような十分な親和性でVEGFに結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗VEGF抗体が無関係の非VEGFタンパク質に結合する程度は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)により測定した場合に、抗体がVEGFに結合する約10%未満である。ある特定の実施形態において、VEGFに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗VEGF抗体は、異なる種からのVEGF間で保存されているVEGFのエピトープに結合する。
【0107】
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントが含まれるが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0108】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原と結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab’、Fab−C、Fab’−SH、F(ab’)
2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例において、抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、及び容易に結晶化する能力を反映して表記される残留「Fc」フラグメントが産生される。Fabフラグメントは、重(H)鎖(VH)の可変領域ドメインと共に全軽(L)鎖と、1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とからなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab’)
2フラグメントが産出され、これは概して、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連鎖Fabフラグメントに対応し、依然として抗原に架橋することができる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に追加の残基を数個しか有さない点でFabフラグメントとは異なる。Fab−C分子は、配列が、第1のヒンジシステインで切断され、発現に際し直接的に遊離システインを有するFabをもたらすように発現されるFab分子である(例えば、Shatz et al.Mol.Pharmaceutics 2016;PubMed identifier(PMID)27244474を参照されたい)。例えば、Fab−C分子は、重鎖の位置Cys227で遊離システインを有し得る。他の事例において、Fab−C分子は、重鎖の位置Cys229で遊離システインを有し得る。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)
2抗体フラグメントは、元々、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生されたものであった。抗体フラグメントの他の化学的結合もまた既知である。
【0110】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書で別途示されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されているように、EU指標とも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0111】
「Fv」は、1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変領域ドメインが緊密な非共有結合で結合した二量体からなる。2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から各々3つのループ)が生じる。しかし、しばしば全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0112】
「sFv」または「scFv」と略される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に接合されているVH及びVL抗体ドメインを含む、抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、VH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーにより、sFvが抗原結合に所望の構造を形成することが可能となっている。sFvの概説に関しては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0113】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメイン対合が達成され、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5〜10個の残基)を用いてsFvフラグメント(前述の段落を参照されたい)を構築することにより調製された小さな抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在している、2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)でより完全に記載されている。
【0114】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減するものである。ある特定の遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0115】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、参照抗体がその抗原へ結合することを50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいて、抗体がその抗原へ結合することを50%以上遮断する参照抗体を指す。例示的な競合アッセイが本明細書に提供される。
【0116】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が特定の源または種に由来し、重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0117】
抗体の「クラス」は、その重鎖により保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0118】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより異なる抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0119】
「フレームワーク」または「フレームワーク領域」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは概して、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。
【0120】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を有するか、または本明細書に定義されるようなFc領域を含む重鎖を有する抗体を指して、本明細書において互換的に使用される。
【0121】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0122】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群からである。概して、配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD(1991),vols.1−3にあるような下位群である。一実施形態において、VLに関して、下位群は、Kabatら(上記)にあるような下位群カッパIである。一実施形態において、VHに関して、下位群は、Kabatら(上記)にあるような下位群IIIである。
【0123】
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体由来の配列を最小限に含んだキメラ抗体である。ほとんどの部分に関して、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性、及び機能性を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基により置き換えられる。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものが含まれるであろう。さらなる詳細に関しては、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0124】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが、抗体間の配列において大幅に異なるという事実を指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、かつ特定の抗体の特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインに均等に分布しているわけではない。代わりに、V領域は、各々9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域により分離される15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は概して、例えば、VLでは大体残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜97(L3)、ならびにVHで大体残基26〜35(H1)、49〜65(H2)、及び95〜102(H3)(一実施形態において、H1は、大体残基31〜35である)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))からのアミノ酸残基、さらに/または「超可変ループ」からの残基(例えば、VLでは残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、ならびにVHでは26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987)を含む。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にベータシート構成を取る4つのFRを含み、3つの超可変領域により接合され、それによりベータシート構造を接合するループ、及びいくつかの場合において、その一部を形成するループが形成される。各鎖における超可変領域は、FRにより他方の鎖の超可変領域と近位して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい)。したがって、HVR及びFR配列は概して、VH(またはVL)にFR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4の順序で現れる。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を示す。
【0125】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabatら(上記)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、「標準の」Kabatにより番号付けされた配列との抗体の配列の相同領域での整列により決定され得る。
【0126】
Kabat番号付けシステムは概して、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は概して、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及するときに使用される(例えば、Kabatら(上記)で報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書に別途示されない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書に別途示されない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えば、米国仮出願第60/640,323号、EU番号付けに関する図を参照されたい)。
【0127】
別途示されない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabatら(上記)に従って本明細書で番号付けされる。
【0128】
「免疫複合体」は、細胞傷害性薬剤を含むがこれに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)に複合体化される抗体である。
【0129】
「単離抗体」という用語は、本明細書に開示される様々な抗体を記載するために使用されるとき、抗体が発現された細胞または細胞培養物から特定され、分離及び/または回収されている、抗体を意味する。その天然環境の混入成分は典型的には、ポリペプチドの診断上または療法用途を妨げる材料であり、これらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性もしくは非タンパク質性の溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態において、本抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)により決定される、95%または99%を超える純度に精製される。抗体純度を査定するための方法の概説に関しては、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79−87(2007)を参照されたい。好ましい実施形態において、本抗体は、(1)スピニングカップシーケネータ(spinning cup sequenator)を使用してN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用して非還元もしくは還元条件下でSDS−PAGEにより均質になるまで、精製されるであろう。単離抗体には、組み換え細胞内でインサイツの抗体が含まれるが、これは、ポリペプチドの天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないためである。しかし、通常は、単離ポリペプチドは少なくとも1つの精製ステップにより調製されるであろう。
【0130】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団をなす個別の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に生じる突然変異を含むか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する可能な変異体抗体を除き、かかる変異体は概して、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるものとして抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない、多様な技法により作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
【0131】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、特に、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を網羅し、ここで、このVH−VL単位は、多重エピトープ特異性(すなわち、1つの生体分子上の2つの異なるエピトープまたは異なる生体分子上の各エピトープに結合することができる)を有する。かかる多重特異性抗体には、完全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’。Fab−C。Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ及びトリアボディ、共有連鎖または非共有連鎖されている抗体フラグメントが含まれるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」は、同じかまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「二特異性」または「二重特異性」は、同じかまたは異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合することができる能力を指す。しかし、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列が同一である2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームにより2つの抗原を認識することができる。二重特異性は、抗体が、高い親和性で単一のFabまたはIgG分子として2つの異なる抗原と相互作用することを可能にする。一実施形態によれば、IgG1形態の多重特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープに結合する。「単一特異性」は、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。
【0132】
「天然抗体」は、多様な構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン(variable heavy domain)または重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン(variable light domain)または軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、その後に定常軽(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0133】
抗体の標的分子への結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的な結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、非特異的相互作用とはある程度異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、ある分子の結合を、対照分子の結合と比較して決定することにより測定され得る。例えば、特異的な結合は、標的に類似している対照分子、例えば、過剰な非標識標的との競合により決定され得る。この場合、特異的な結合は、標識標的のプローブへの結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害された場合に示される。特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的な結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、標的に対して、10
−4M以下、あるいは10
−5M以下、あるいは10
−6M以下、あるいは10
−7M以下、あるいは10
−8M以下、あるいは10
−9M以下、あるいは10
−10M以下、あるいは10
−11M以下、あるいは10
−12M以下のKd、または10
−4M〜10
−6M、もしくは10
−6M〜10
−10M、もしくは10
−7M〜10
−9Mの範囲のKdを有する分子により示すことができる。当業者には理解されるように、親和性及びKdの値は、逆相関している。抗原の高い親和性は、低いKd値により測定される。一実施形態において、「特異的な結合」という用語は、ある分子が、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドのエピトープに実質的に結合することなく結合する、結合を指す。
【0134】
「抗VEGF抗体をコードする核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(またはそれらのフラグメント)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別々のベクター内のかかる核酸分子(複数可)を含み、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0135】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、それが結合している別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に連鎖している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0136】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、突然変異を含有し得る。元々形質転換された細胞に関してスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0137】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後の、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が開発したものであり、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権局(Washington D.C.,20559)に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムにより設定されており、変動しない。
【0138】
アミノ酸配列比較のためにALIGN−2が用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Aとの、または所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Aへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算され:100×分数X/Y、式中、Xは、配列整列プログラムALIGN−2によりそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致とスコア化されるアミノ酸残基の数であり、Yは、B内のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%が、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないことが理解される。別途具体的に明記されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN−2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「投与する」は、ある投与量の化合物(例えば、本発明の抗VEGF抗体、本発明の抗体複合体、本発明の融合タンパク質、本発明の高分子製剤、または本発明の抗VEGF抗体をコードする核酸)または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、本発明の抗VEGF抗体、本発明の抗体複合体、本発明の融合タンパク質、または本発明の高分子製剤を含む薬学的組成物)を、対象に供与する方法を意味する。本明細書に記載される方法で利用される組成物は、例えば、硝子体内に(例えば、硝子体内注入により)、目薬により、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に(percutaneously)、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜内に、皮下に、結膜下に、肺胞内に、粘膜内に、心膜内に、臍帯内に(intraumbilically)、眼内に、眼窩内に、口腔内に、局所的に、経皮的に(transdermally)、吸入により、注入により、インプラントにより、点滴により、連続点滴により、標的細胞に直接的に流す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームで、または脂質組成物で投与され得る。本明細書に記載される方法で利用される組成物は、全身または局所的にも投与され得る。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、及び治療される状態、疾患、または障害の重症度)に応じて異なり得る。
【0140】
「血管形成」は、新しい血管が既存の血管から形成するプロセスである。血管形成は、中胚葉細胞前駆体からの内皮細胞のデノボ形成である脈管形成とは異なる。病理学的血管形成に関連付けられる障害は、本発明の組成物及び方法により治療することができる。これらの障害には、非腫瘍性障害及び細胞増殖性障害の両方が含まれる。細胞増殖性障害には、以下に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。非腫瘍性障害には、眼の状態(非限定的な眼の状態には、例えば、増殖性糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態を含む)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)、コーツ病、ノリエ病、骨粗鬆症−偽性神経膠腫症候群(OPPG)、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、ならびに高血圧性網膜症を含む網膜症が含まれる)、自己免疫疾患(例えば、リウマチ性関節炎(RA)、乾癬、強直性脊椎炎、及び炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎))、所望されないまたは異常な肥大、関節炎、乾癬性関節炎、乾癬プラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、アテローム動脈硬化性プラーク、動脈性動脈硬化症、血管再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺過形成(グレーヴス病を含む)、角膜及び他の組織移植、肺炎症、急性肺損傷/ARDS、敗血症、原発性肺高血圧症、悪性肺水貯留、脳浮腫(例えば、急性脳卒中/非開放性頭部損傷/外傷に関連付けられる)、滑膜炎症、RA内のパンヌス形成、骨化性筋炎、超回帰線骨形成、骨関節炎(OA)、難治性腹水、多嚢胞卵巣疾患、子宮内膜症、細胞外液喪失疾患(3rd spacing of fluid disease)(膵臓炎、コンパートメント症候群、火傷、腸疾患)、慢性喘息、子宮筋腫、早期分娩、IBDなどの慢性炎症(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、炎症性腎疾患(糸球体腎炎、特に、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症候群、糖尿病性腎症、及び高血圧性腎硬化症を含む)、移植後に生じる疾患、腎同種移植片拒絶反応、炎症性疾患、ネフローゼ症候群、所望されないまたは異常な組織塊成長(非癌)、血友病性関節、肥厚性瘢痕、毛髪成長の阻害、オースラ−ウェバー症候群、化膿性肉芽腫水晶体後線維増殖、強皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、妊娠高血圧腎症、腹水、心膜液貯留(心膜炎に関連付けられるものなど)、ならびに胸水貯留が含まれるが、これらに限定されない。追加の眼の障害は、以下に記載される。
【0141】
病理学的血管形成に関連付けられ得る他の障害には、偽関節性骨折(治癒しない骨折)、化膿性肉芽腫、トラコーマ、血友病性関節、血管接着及び肥厚性瘢痕、移植片拒絶反応、繊維血管(fibrovascular)組織、酒さ性ざ瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞症、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット病、頸動脈閉塞症、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、コンタクトレンズ過度装用症、角膜移植片拒絶反応、角膜移植血管新生、イールズ病、流行性角結膜炎、真菌性潰瘍、単純疱疹感染症、帯状疱疹感染症、過粘着性症候群、カポジ肉腫、白血病、脂肪変性症、ライム病、辺縁表皮剥離、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染症、近視、乳頭小窩ピット、骨関節炎、ページェット病、扁平部睫状体炎、類天疱瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、多発性動脈炎、レーザー後合併症、原虫感染症、弾力繊維性仮性黄色腫、乾燥翼状片角膜炎(pterygium keratitis sicca)、放射状角膜切開、後水晶体線維形成、サルコイド、強膜炎、鎌状赤血球症、シェーグレン症候群、シュタルガルト病、スティーブンス・ジョンソン病、上位辺縁系角膜炎、梅毒、全身紅はん性、テリエン周辺角膜変性症、トキソプラズマ病、外傷、静脈閉塞症、ビタミンA欠損症及びヴェーゲナーサルコイドーシス、糖尿病に関連付けられる所望されない血管形成、寄生虫性疾患、異常創傷治癒、術後肥大、損傷または外傷、毛髪成長の阻害、排卵及び黄体形成の阻害、子宮内での着床の阻害及び胚発生の阻害が含まれる。
【0142】
「眼の障害」という用語は、本明細書で使用される場合、病理学的血管形成に関連付けられる任意の眼の障害(本明細書において互換的に「眼の状態」とも称される)を含む。眼の障害は、新しい血管の改変もしくは制御されていない増殖、及び/または網膜もしくは角膜などの眼の組織構造への侵入を特徴とし得る。非限定的な眼の障害には、例えば、AMD(例えば、滲出性AMD、乾燥AMD、中間AMD、進行性AMD、及び地図状萎縮(GA))、黄斑変性症、黄斑浮腫、DME(例えば、局所非中心部DME及びびまん性中心部関与関連DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、及び高地DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連付けられる疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる疾患、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノリエ病、OPPG、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障(レーバー先天性黒内障またはLCAとしても既知である)、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、目の乾燥、外傷性目の損傷、シェーグレン病、ならびに疾患または障害が眼内血管新生(ocular neovascularization)、血管漏出、及び/または網膜浮腫に関連付けられる他の眼の疾患が含まれる。追加の例示的な眼の障害には、全ての形態の増殖性硝子体網膜症を含む、皮膚潮紅(隅角血管新生(neovascularization of the angle)に関連付けられる疾患、及び繊維血管(fibrovascular)または繊維組織の異常増殖により引き起こされる疾患が含まれる。
【0143】
角膜血管新生に関連付けられる例示的な疾患には、流行性角結膜炎、ビタミンA欠損症、コンタクトレンズ過度装用症、アトピー性角膜炎、上位辺縁系角膜炎、乾燥翼状片角膜炎、シェーグレン症候群、酒さ性ざ瘡、フリクテン症(phylectenulosis)、梅毒、マイコバクテリア感染症、脂肪変性症、化学的熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純疱疹感染症、帯状疱疹感染症、原虫感染症、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁角膜変性症、辺縁表皮剥離、リウマチ性関節炎、全身紅はん性、多発性動脈炎、外傷、ウェジナーサルコイド症、強膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、ペリフィゴイド放射状角膜切開、及び角膜移植片拒絶反応が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる例示的な疾患には、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、鎌状赤血球症、サルコイド、梅毒、弾力繊維性仮性黄色腫、ページェット病、静脈閉塞症、動脈閉塞症、頸動脈閉塞症、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染症、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、網膜色素変性症、網膜浮腫(黄斑浮腫を含む)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)を引き起こす感染症、推定眼ヒストプラズマ症、ベスト病(卵黄様黄斑変性症)、近視、乳頭小窩ピット、シュタルガルト病、扁平部睫状体炎、網膜剥離(例えば、慢性網膜剥離)、過粘着性症候群、トキソプラズマ病、外傷、及びレーザー後合併症が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
「望ましくない血管透過性に関連付けられる障害」には、本明細書で使用される場合、例えば、脳腫瘍に関連付けられる浮腫、悪性病変に関連付けられる腹水、メーグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水貯留、循環器疾患に関連付けられる透過性、例えば、心筋梗塞及び脳卒中後の状態などが含まれる。
【0146】
上述される分類は、相互排他的ではなく、障害は、複数のカテゴリーに入ってもよいことを理解されたい。
【0147】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連付けられる障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、癌である。
【0148】
「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0149】
「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性または良性に関わらず、全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、ならびに全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。
【0150】
「血管形成因子または薬剤」は、血管の発生を刺激する、例えば、血管形成、内皮細胞成長、血管の安定化、及び/または脈管形成などを促進する成長因子である。例えば、血管形成因子には、例えば、VEGF及びVEGFファミリーのメンバー、PlGF、PDGFファミリー、繊維芽細胞成長因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エフリン、Del−1、繊維芽細胞成長因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞成長因子(HGF)/散乱因子(SF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、ミドカイン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板由来成長因子、特に、PDGF−BBまたはPDGFR−ベータ、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換成長因子−アルファ(TGF−アルファ)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)、血管内皮成長因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)などが含まれるが、これらに限定されない。それには、成長ホルモン、インシュリン様成長因子−I(IGF−I)、VIGF、上皮成長因子(EGF)、CTGF及びそのファミリーのメンバー、ならびにTGF−アルファ及びTGF−ベータなどの、創傷治癒を促進する因子も含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991)、Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)、Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999)、Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、既知の血管形成因子を列挙する表1)、及びSato,Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)を参照されたい。
【0151】
「抗血管形成薬剤」または「血管形成阻害剤」は、血管形成、脈管形成、または望ましくない血管透過性を直接的または間接的に阻害する小分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離タンパク質、組み換えタンパク質、抗体、またはそれらの複合体もしくは融合タンパク質を指す。抗血管形成薬剤には、血管形成因子またはその受容体の血管形成活性を結合及び遮断する薬剤が含まれることを理解されたい。例えば、抗血管形成薬剤は、上記で定義されるような、血管形成薬剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGFアンタゴニスト(例えば、VEGF−AまたはVEGF−A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt−1受容体)に対する抗体)、PDGFアンタゴニスト(例えば、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ)などの抗PDGFR阻害剤)である。抗血管形成薬剤には、天然血管形成阻害剤、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンなども含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991)、Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管形成療法を列挙する表3)、Ferrara&Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999)、Tonini et al.,Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば、既知の抗血管形成因子を列挙する表2)、及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)(例えば、表1は臨床治験で使用される抗血管形成剤を列挙する)。
【0152】
「VEGFアンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、VEGFに結合すること、VEGF発現レベルを低減させること、または1つ以上のVEGF受容体へのVEGFの結合、VEGFのシグナル伝達、ならびにVEGFに媒介される血管形成及び内皮細胞生存もしくは増殖を含むがこれらに限定されないVEGFの生物学的活性を中和する、遮断する、阻害する、抑止する、低減させる、もしくはそれに干渉することが可能な分子を指す。例えば、VEGFの生物学的活性を中和する、遮断する、阻害する、抑止する、低減させる、またはそれに干渉することができる分子は、1つ以上のVEGF受容体(VEGFR)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合型VEGF受容体(mbVEGFR)、または可溶性VEGF受容体(sVEGFR))に結合することによりその効果を発揮することができる。VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体及びその抗原結合フラグメント、VEGFに特異的に結合し、それにより1つ以上の受容体への結合を封鎖する受容体分子及び誘導体、融合体タンパク質(例えば、VEGF−Trap(Regeneron)及びVEGF
121−ゲロニン(Peregrine))が、本発明の方法において有用なVEGFアンタゴニストとして含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFポリペプチドのアンタゴニスト変異体、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つのフラグメントに相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つのフラグメントに相補的な低分子RNA、VEGFを標的とするリボザイム、VEGFに対するペプチボディ、及びVEGFアプタマーも含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFRに結合するポリペプチド、抗VEGFR抗体、及びそれらの抗原結合フラグメント、ならびにVEGFRに結合し、それによりVEGFの生物学的活性(例えば、VEGFのシグナル伝達)を遮断する、阻害する、抑止する、低減させる、もしくはそれに干渉する誘導体、または融合体タンパク質も含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFまたはVEGFRに結合し、VEGFの生物学的活性を遮断する、阻害する、抑止する、低減させる、またはそれに干渉することができる、非ペプチド小分子も含まれる。したがって、「VEGF活性」という用語は、VEGFに媒介される、VEGFの生物学的活性を具体的に含む。ある特定の実施形態において、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベルまたは生物学的活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。いくつかの実施形態において、VEGF特異的アンタゴニストにより阻害されるVEGFは、VEGF(8〜109)、VEGF(1〜109)、またはVEGF
165である。
【0153】
本明細書で使用される場合、VEGFアンタゴニストには、抗VEGFR2抗体及び関連分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap−Eye、EYLEA(登録商標))、及びジブ−アフリベルセプト(ziv−aflibercept)(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP−0250、バヌシズマブ(VEGF−ANG2)、及びUS2001/0236388に開示されている二重特異性抗体)、抗VEGF、抗VEGFR1、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ、及びラニビズマブ)、ならびに非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(例えば、パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ(dovitinig)、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)が含まれ得るが、これらに限定されない。追加のVEGFアンタゴニストは、以下に記載される。
【0154】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」は、必要な投与量で必要な期間にわたって所望の療法または予防結果を達成するのに有効な量を指す。
【0155】
「固体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。「対象」は、「患者」であり得る。
【0156】
「癌」及び「癌性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。かかる癌のより特定された例には、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、及び種々の頭頸部癌が含まれる。治療目的のための「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物及び家畜、非ヒト霊長類、ならびに動物園、競技用、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。
【0157】
「障害」は、抗体を用いた治療により利益を得るであろう任意の状態である。例えば、異常血管形成(過剰な、不適切な、または制御できない血管形成)または血管透過性を患うかまたはそれに対する予防を必要とする哺乳動物。これには、哺乳動物を問題の障害に罹りやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患が含まれる。本明細書において治療されるべき障害の非限定的な例には、病理学的血管形成に関連付けられる障害(例えば、眼の障害及び細胞増殖性障害)及び望ましくない血管透過性に関連付けられる障害が含まれる。
【0158】
「抗腫瘍性組成物」という用語は、少なくとも1つの活性療法剤、例えば、「抗癌剤」を含む、癌を治療するのに有用な組成物を指す。療法剤(抗癌療法剤)の例には、例えば、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性薬剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管形成剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、ならびに癌を治療するための他の薬剤、例えば、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−ベータ、BlyS、APRIL、BCMA、またはVEGF受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、他の生理活性及び有機化学薬剤などのうちの1つ以上に結合する抗HER−2抗体、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(商標))、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、アンタゴニスト(例えば、中和抗体)が含まれるが、これらに限定される。これらの組み合わせも、本発明に含まれる。
【0159】
「細胞傷害性薬剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞機能を阻害もしくは阻止し、かつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそれらのフラグメント;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらのフラグメント及び/または変異体を含む)などの毒素;ならびに以下に記載される様々な抗腫瘍または抗癌薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、癌の治療に有用な化学化合物が含まれる。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロスレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンωI1(例えば、Agnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994を参照されたい));ジネマイシンAを含むジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモホア及び関連クロモタンパク質エンジイン抗オビオティック(antiobiotic)クロモホア)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピュロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti−adrenal);フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニシン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;マイタンシン及びアンサミトシンなどマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類錯体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T−2毒素、ベラキュリンA、ロリデンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル、(Bristol− Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(商標)クレモホール−フリー、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone− Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イダンドロネート;イリノテカン(Camptosar,CPT−11)(5−FUとロイコボリンを用いたイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;細胞増殖を低減するPKC−アルファ、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(TARCEVA(商標)))、及びVEGF−Aの阻害剤、ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0161】
また、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)などの、腫瘍におけるホルモン作用を制御または阻害する上で作用する抗ホルモン剤;副腎におけるエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなど;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、具体的には、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−アルファ、Raf、及びH−Rasなど;リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;ワクチン、例えば、遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照されたい);ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体もこの定義に含まれる。
【0162】
「前駆薬物」という用語は、本明細書で使用される場合、親薬物と比較すると腫瘍細胞に対して細胞傷害性が低く、酵素によってより活性な親形態へと活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)及びStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明の前駆薬物にはリン酸塩含有前駆薬物、チオリン酸塩含有前駆薬物、硫酸塩含有前駆薬物、ペプチド含有前駆薬物、Dアミノ酸修飾前駆薬物、グリコシル化前駆薬物、β−ラクタム含有前駆薬物、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有前駆薬物または任意に置換されたフェニルアセトアミド含有前駆薬物、5−フルオロシトシン、及び他の5−フルオロウリジン前駆薬物が含まれるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞傷害性遊離薬物へと変換され得る。本発明で使用するための前駆薬物形態に誘導体化され得る細胞傷害性薬物の例には、上述される化学療法剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
「添付文書」という用語は、かかる療法剤製品の適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含む、療法剤製品の市販パッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
【0164】
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性の、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤)の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0166】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法上の変形)は、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中に実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または本発明の抗体を含む他の組成物(例えば、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤)が、疾患の発達を遅延させるか、または疾患の進行を減速させる。
【0167】
「単離」核酸分子は、それが通常、核酸の天然源で関連している、少なくとも1つの汚染核酸分子から特定及び分離される核酸分子である。単離核酸分子は、自然に見られる形態または状況以外の状態にある。したがって、単離核酸分子は、天然細胞内に存在するような核酸分子と区別される。しかし、単離核酸分子は、抗体を通常発現させる細胞内に含有される核酸分子を含み、ここで、例えば、核酸分子は天然細胞の核酸分子とは異なる染色体配置にある。
【0168】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における、操作可能に連鎖されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列には、例えば、プロモーター、場合によりオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが既知である。
【0169】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係性に置かれているとき、「操作可能に連鎖」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAと操作可能に連鎖しており、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、その配列に操作可能に連鎖しているか、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に操作可能に連鎖されている。概して、「操作可能に連鎖」されるは、連鎖しているDNA配列が連続的であること、及び分泌リーダーの場合においては連続的であり、かつリーディング相にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、連続的でなくてもよい。連鎖は、好都合な制限部位でのライゲーションにより達成される。かかる部位が存在していない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来的な慣例に従って使用される。
【0170】
本明細書で使用される場合、発現「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、互換的に使用され、かかる全ての表記は、子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という用語は、初代対象細胞及び転換の数に関わらずそれを由来とする培養物を含む。全ての子孫が、意図的な突然変異または不慮の突然変異に起因して、DNA含有量が精密に同一でなくてもよいことも理解される。元々形質転換された細胞に関してスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異子孫が含まれる。異なる表記が意図される場合、文脈から明確になるであろう。
【0171】
本明細書で使用される場合、「ライブラリー」は、複数の抗体もしくは抗体フラグメント配列(例えば、本発明の抗VEGF抗体)、またはこれらの配列をコードする核酸を指し、これらの配列は、本発明の方法に従ってこれらの配列に導入される変異体アミノ酸の組み合わせにおいて異なる。
【0172】
「突然変異」は、野生型配列などの参照ヌクレオチド配列に対する、ヌクレオチド(複数可)の欠失、挿入、または置換である。
【0173】
本明細書で使用される場合、「コドンセット」は、所望の変異体アミノ酸をコードするために使用される異なるヌクレオチド三連配列のセットを指す。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば、コドンセットにより提供されるヌクレオチド三連配列の可能性のある全ての組み合わせを表し、所望のアミノ酸群をコードするであろう配列を含む固相合成法により合成され得る。コドン表記の標準形態は、IUBコードの標準形態であり、これは、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載される。コドンセットは典型的には、例えば、NNK、NNS、XYZ、DVKなどの斜字体で3つの大文字により表される。例えば、TRIM法(Knappek et al.,J.Mol.Biol.296:57−86(1999))、Garrard et al.,Gene128:103(1993))などのある特定の位置において選択されたヌクレオチド「縮退」を有するオリゴヌクレオチドとの合成は、当該技術分野において周知されている。ある特定のコドンセットを有するかかるオリゴヌクレオチドのセットは、市販の核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能である)を使用して合成され得るか、または市販されているものから得ることができる(例えば、Life Technologies,Rockville,MDから)。したがって、特定のコドンセットを有する合成されたオリゴヌクレオチドのセットは典型的には、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含み、この差異は、全体的な配列内のコドンセットにより確立される。本発明に従って使用されるようなオリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸テンプレートに対するハイブリダイゼーションを可能にし、必須ではないが、例えば、クローニングの目的に有用な制限酵素部位も含み得る配列を有する。
【0174】
「ファージディスプレイ」は、変異体ポリペプチドがファージ、例えば、糸状ファージ粒子の表面上にコートタンパク質の少なくとも一部分への融合タンパク質としてディスプレイされる技法である。ファージディスプレイの有用性は、ランダムなタンパク質変異体の大きなライブラリーが、標的抗原に高い親和性で結合する配列に関して高速かつ効率的に分類され得るという事実にある。ペプチド及びタンパク質ライブラリーのファージへのディスプレイは、特異的な結合特性を有するものに関して、何百万ものポリペプチドをスクリーニングするのに使用されている。多価ファージディスプレイ法は、小さなランダムペプチド及び小さなタンパク質を、糸状ファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかへの融合を通じてディスプレイするために使用されている。Wells and Lowman,Curr.Opin.Struct.Biol.,3:355−362(1992)、及びそこに引用されている参考文献。一価ファージディスプレイにおいて、タンパク質またはペプチドライブラリーは、遺伝子IIIまたはその一部分に融合され、ファージ粒子が融合タンパク質の1つのコピーをディスプレイするか、または融合タンパク質をディスプレイしないように野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下で低レベルに発現される。結合活性効果が多価ファージと比べて低減しているため、分類は本質的なリガンド親和性に基づき、ファージミドベクターが使用され、これによりDNA操作が単純なものになる。Lowman and Wells,Methods:A companion to Methods in Enzymology,3:205−0216(1991)。
【0175】
「ファージミド」は、細菌複製起点、例えば、Co1E1と、バクテリオファージの遺伝子間領域のコピーとを有するプラスミドベクターである。ファージミドは、糸状バクテリオファージ及びラムドイドバクテリオファージを含む任意の既知のバクテリオファージに使用することができる。プラスミドは概して、抗生物質耐性の選択的マーカーも含むであろう。これらのベクターにクローニングしたDNAのセグメントは、プラスミドとして伝播され得る。これらのベクターを持つ細胞に、ファージ粒子の産生に必要な全ての遺伝子を提供すると、プラスミドの複製様式がローリングサークル複製に変化し、プラスミドDNAの一本鎖のコピー及びパッケージファージ粒子が生成される。ファージミドは、感染性または非感染性ファージ粒子を形成し得る。この用語には、異種ポリペプチドがファージ粒子の表面にディスプレイされるように、遺伝子融合として異種ポリペプチド遺伝子に連鎖したファージコートタンパク質遺伝子またはそのフラグメントを含む、ファージミドが含まれる。
【0176】
「ファージベクター」という用語は、異種遺伝子を含み、複製することができるバクテリオファージの二本鎖複製形態を意味する。ファージベクターは、ファージ複製及びファージ粒子形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは好ましくは、M13、f1、fd、Pf3ファージなどの糸状バクテリオファージもしくはそれらの誘導体、またはラムダ21、phi80、phi81、82、424、434などのラムドイドファージもしくはそれらの誘導体などである。
【0177】
開始または参照ポリペプチド(例えば、参照抗体またはその可変ドメイン(複数可)/HVR(複数可))の「変異体」または「突然変異体」は、(1)開始または参照ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、(2)天然突然変異生成または人工的(人造的)突然変異生成のいずれかによる開始または参照ポリペプチドに由来したポリペプチドである。本明細書において「アミノ酸残基改変」と称される、かかる変異体には、例えば、目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。したがって、変異体HVRは、開始または参照ポリペプチド配列に関して変異体配列を含むHVRを指す(抗体源または抗原結合フラグメントのHVRなど)。この文脈において、アミノ酸残基改変は、開始または参照ポリペプチド配列内の対応する位置におけるアミノ酸とは異なるアミノ酸を指す(参照抗体またはそのフラグメントのアミノ酸など)。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終変異体または突然変異体構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の機能的特徴を保有することを条件とする。アミノ酸変化は、ポリペプチドの翻訳後処理も改変し得、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化することができる。
【0178】
「野生型(WT)」もしくは「参照」配列、または「野生型」もしくは「参照」タンパク質/ポリペプチドの配列、例えば、参照抗体のHVRまたは可変ドメインは、変異体ポリペプチドが突然変異の導入を通じて誘導された参照配列であり得る。概して、所与のタンパク質に関する「野生型」配列は、自然界で最も一般的である配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然界で最も一般的に見られる、その遺伝子に対する配列である。突然変異は、自然過程で、または人工的な誘導手段のいずれかを通じて「野生型」遺伝子に導入され得る(したがって、それがコードするタンパク質)。かかる過程の産生物は、元の「野生型」タンパク質または遺伝子の「変異体」または「突然変異体」形態である。
【0179】
「参照抗体」は、本明細書で使用される場合、抗体またはそのフラグメントを指し、その抗原結合配列は、本明細書に記載される基準に従って多様化が実施されるとテンプレート配列としての機能を果たす。抗原結合配列は概して、好ましくはフレームワーク領域を含む抗体可変領域を好ましくは少なくとも1つ含む。
【0180】
当該技術分野において「次世代配列決定法」または「第二世代配列決定法」としても既知の「超並列配列決定法(massively parallel sequencing)」または「超並列配列決定法(massive parallel sequencing)」は、任意の高処理核酸配列決定法を意味する。これらの手法は典型的には、大量の(例えば、何千、何百万、または何十億の)空間分離されたクローン増幅DNAテンプレートまたは単一のDNA分子の並行配列決定法を伴う。例えば、Metzker,Nature Reviews Genetics 11:31−36,2010を参照されたい。
【0181】
「濃縮された」は、本明細書で使用される場合、構成要素(例えば、アミノ酸残基改変)が、対応する参照ライブラリー(例えば、未分類のライブラリー、または異なるかもしくは無関係の抗原に関して分類されたライブラリー)と比較して、分類されたライブラリー中でより高い頻度で存在することを意味する。対照的に「減損された」は、構成要素(例えば、アミノ酸残基改変)が、対応する参照ライブラリー(例えば、未分類のライブラリー、または異なるかもしくは無関係の抗原に関して分類されたライブラリー)と比較して、分類されたライブラリー中でより低い頻度で存在することを意味する。「中和」という用語は、アミノ酸残基変異体を特定する方法に関して使用されるとき、構成要素が、濃縮も減損もされておらず、言い換えると、それが、対応する参照ライブラリー(例えば、未分類のライブラリー、または異なるかもしくは無関係の抗原に関して分類されたライブラリー)と比較して、分類されたライブラリー中でおよそ同じ頻度で存在することを意味する。
【0182】
「等電点(pI)」は、分子(例えば、抗体などのタンパク質)が、当該技術分野において「pH(I)」または「IEP」とも称される正味電荷を担わないpHを意味する。
【0183】
本明細書で使用される場合、「抗体複合体」は、1つ以上のポリマーに共有結合される抗体である。例えば、親水性ポリマー(例えば、ヒアルロン酸(HA)またはポリエチレングリコール(PEG))または疎水性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA))などの任意の好適なポリマーは、抗体に複合体化され得る。
【0184】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、線状、円状、分岐状、架橋された状態、もしくは樹枝状、またはそれらの組み合わせで化学結合により接合された繰り返し構造単位(すなわち、モノマー)を含む分子を意味する。ポリマーは、合成もしくは天然に生じる、またはそれらの組み合わせであり得る。「ポリマー」という用語は、2つ以上の異なるモノマーを含むポリマーであるコポリマーを包含することを理解されたい。ポリマーは、たった一種類のモノマーを含むポリマーであるホモポリマーでもあり得る。
【0185】
本明細書において互換的に使用される「ヒアルロン酸」、「ヒアルラノン(hyaluranon)」、及び「HA」という用語は、N−アセチルグルコサミン及びグルクロン酸の繰り返し二糖類単位を含有するポリマーグリコサミノグリカン(GAG)を指す。HAは、例えば、細胞外マトリックス(例えば、目の硝子体内)、接合組織、上皮、及び神経組織で見ることができる陰イオン性非硫酸化GAGである。
【0186】
「ポリエチレングリコール」または「PEG」という用語は、本明細書で使用される場合、分子量に応じて、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても既知であるポリエーテル化合物を指す。PEGは、H−(O−CH
2−CH
2)
n−OHの構造を有し得、式中、nは、任意の好適な整数である。PEGは、分岐状PEG、星状PEG、または櫛状PEGであり得る。PEGは、例えば、PEG四量体、PEG六量体、またはPEG八量体であり得る。
【0187】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、第1のペプチド、タンパク質、またはポリペプチド、例えば、抗体(例えば、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR))が、第2のペプチド、タンパク質、またはポリペプチド、例えば、眼の結合ドメイン(例えば、HA結合ドメイン)に直接的または間接的に連鎖されるタンパク質を指す。一例において、第1のペプチド、タンパク質、またはポリペプチド(例えば、抗体)は、リンカーにより第2のペプチド、タンパク質、またはポリペプチド(例えば、眼の結合ドメイン(例えば、HA結合ドメイン))に連鎖され得る。融合タンパク質の文脈において、「連鎖する」及び「連鎖される」という用語、ならびにそれらの文法上の変形は、「共有結合される」という用語と互換的に使用され、融合タンパク質の2つの部分間の直接的または間接的な共有結合(例えば、ペプチド結合)を指す。概して、本発明の融合タンパク質は、抗体融合タンパク質である。本抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、またはFab−Cであり得る。いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fabである。
【0188】
「眼の結合ドメイン」という用語は、目の中に見られる生体物質(例えば、角膜、硝子体、網膜、網膜色素上皮、または脈絡膜)に結合するペプチド、タンパク質、ポリペプチド、またはそれらのフラグメントを指す。一例として、いくつかの事例において、目の中に見られる生体物質は、細胞外マトリックス構成成分、例えば、炭水化物(例えば、荷電炭水化物(例えば、グリコサミノグリカン))、糖タンパク質(例えば、フィブリリン及びオプティシン)、もしくはタンパク質(例えば、コラーゲン(例えば、コラーゲン種I〜XXVII、特にコラーゲンII、コラーゲンIX、コラーゲンV、コラーゲンVI、コラーゲンXI、及びそれらのヘテロタイプのコラーゲン原線維)、または例えば、Le Goff et al.,Eye 22:1214−1222,2008に記載されている他の細胞外マトリックス構成成分である。いくつかの事例において、細胞外マトリックス構成成分は、グリコサミノグリカン、例えば、HAまたはプロテオグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸塩またはヘパリン硫酸塩)である。一例において、眼の結合ドメインは、ヒアルロン酸結合ドメインである。
【0189】
本明細書で使用される場合、「ヒアルロン酸結合ドメイン」または「HA結合ドメイン」という用語は、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、またはHAに結合するそれらのフラグメントを指す。HA結合ドメインは、例えば、腫瘍壊死因子刺激遺伝子6(TSG6)、リンパ管内皮ヒアルロナン受容体1(LYVE−1)、ヒアルロナン及びプロテオグリカンリンクタンパク質(HAPLN)1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、ブレビカン、ニューロカン、ホスファカン、バーシカン、CAB61358、KIA0527、スタビリン−1、スタビリン−2、RHAMM、細菌性HAシンターゼ、ならびにコラーゲンVIを含むHA結合タンパク質(当該技術分野において「ヒアルアドヘリン」とも称される)に由来する場合がある。他のHA結合タンパク質は、当該技術分野において既知である。例示的なHA結合ドメインには、リンクモジュール、G1ドメイン、及びリジンに富んだオリゴペプチドが含まれる。
【0190】
「リンクモジュール」(当該技術分野において「リンクドメイン」とも称される)は、HAに結合する、およそ100個のアミノ酸の構造ドメインである(例えば、Yang et al.EMBO J.,13(2):286−296、Mahoney et al.,J.Biol.Chem.276(25):22764−22771,2001、及びBlundell et al.J.Biol.Chem.278(49):49261−49270,2003を参照されたい)。例示的で非限定的なリンクモジュールには、TSG6、CD44、LYVE−1、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、ブレビカン、ニューロカン、ホスファカン、バーシカン、CAB61358、KIA0527、スタビリン−1、及びスタビリン−2リンクモジュール、またはそれらの変異体からのものが含まれる。一例として、HA結合タンパク質TSG6のリンクモジュールは、ヒトTSG6(UniProt受託番号P98066)のアミノ酸残基36〜128を含み得る。変異体リンクモジュールは、HAに結合し、例えば、野生型または参照リンクモジュールに対して、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性)を有し得、野生型または参照リンクモジュールアミノ酸配列に対して挿入、欠失、及び置換(例えば、保存的アミノ酸置換)などの配列多様性を含み得る。
【0191】
融合タンパク質の文脈において、「リンカー」は、第1の部分(例えば、抗体(例えば、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)))を、第2の部分(例えば、眼の結合ドメイン(例えば、HA結合ドメイン))に連鎖させる(例えば、共有連鎖させる)ペプチドまたはポリペプチドであり得る。リンカーは、任意の好適な長さ、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの事例において、リンカーは、約3、約4、約5、約6、約7、または約8個の残基を含む。いくつかの事例において、リンカーは、GGGGS(配列番号61)のアミノ酸配列を含む。
【0192】
「ヒドロゲル」は、本明細書で使用される場合、共有化学架橋の存在に起因して非可溶性である、ホモポリマーまたはコポリマーからなる親水性または両親媒性ポリマーネットワークを指す。架橋は、ネットワーク構造及び物理的一体性を提供し得る。ヒドロゲルは、それらが水性媒体中で膨張することを可能にする水との熱力学的相溶性を示し得る。
【0193】
本明細書で使用される場合、「可逆的前駆薬物リンカー」という用語は、可逆的連鎖により一端上で生物学的に活性な部分(例えば、抗VEGF抗体などの薬物)に結合され、永久結合により他方の端上で担体(例えば、ヒドロゲル)に結合され、それにより生物学的に活性な部分を担体に連鎖する部分を意味する。かかる可逆的前駆薬物リンカーは、生理学的状態(例えば、pH7.4、37℃の水性緩衝液)下で非酵素的加水分解的に分解性、すなわち、切断可能であり、例えば、1時間〜12ヶ月の範囲の半減期を有する。可逆的連鎖には、例えば、アコニチル、アセタール、アミド、カルボン酸無水物、エステル、イミン、ヒドラゾン、マレイン酸アミド、オルトエステル、ホスファミド、ホスホエステル、ホスホシリルエステル、シリルエステル、スルホン酸エステル、芳香族カルバメート、及びそれらの組み合わせが含まれる。対照的に、永久連鎖は、生理学的状態(pH7.4、37℃の水性緩衝液)下で非酵素的加水分解的に分解性であり、12ヶ月超の半減期を有する。例示的な可逆的前駆薬物リンカーは、例えば、国際特許出願公開第WO2014/056923号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0194】
「クリアランス」という用語は、本明細書で使用される場合、単位時間当たり、コンパートメント(例えば、目(例えば、硝子体))から除去された物質(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質(例えば、Fab融合タンパク質)、または高分子製剤)の体積を指す。
【0195】
「半減期」という用語は、インビボ(例えば、目(例えば、硝子体)の中)またはインビトロで、物質(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質(例えば、Fab融合タンパク質)、または高分子製剤)を濃縮して、半分に減らすために必要とされる時間を指す。
【0196】
II.組成物及び方法
本発明は、例えば、診断及び療法用途のための、VEGFに結合する新規の抗体、ならびにそれらの作製方法及び使用方法を提供する。本発明は、例えば、診断及び療法用途のための抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤を含む、抗VEGF抗体を含む(本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体を含む)組成物、ならびにそれらの作製方法及び使用方法を提供する。本発明は、改善された特性、例えば、増強された結合親和性、安定性、及び/または発現を有する抗体変異体を特定する方法も提供する。
【0197】
A.例示的な抗VEGF抗体
一態様において、本発明は、VEGFに特異的に結合する抗体に部分的に基づく。例えば、本発明の抗体は血管形成を低減し、病理学的血管形成に関連付けられる障害(例えば、眼の障害または細胞増殖性障害)を治療するかまたはその進行を遅延させるのに有用である。例えば、本発明の抗体は血管透過性を阻害し、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害を治療するのにも有用である。
【0198】
いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GX
1TPX
2GGX
3X
4X
5YX
6DSVX
7X
8(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR−H2であって、式中、X
1がIleもしくはHisであり、X
2がAlaもしくはArgであり、X
3がTyrもしくはLysであり、X
4がThrもしくはGluであり、X
5がArg、Tyr、Gln、もしくはGluであり、X
6がAlaもしくはGluであり、X
7がLysもしくはGluであり、X
8がGlyもしくはGluである、HVR−H2、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASQX
1VSTAVA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR−L1であって、式中、X
1がAspもしくはArgである、HVR−L1、(e)X
1ASFLYS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR−L2であって、式中、X
1がSerもしくはMetである、HVR−L2、及び(f)X
1QGYGX
2PFT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR−L3であって、式中、X
1がGln、Asn、もしくはThrであり、X
2がAla、Asn、Gln、もしくはArgである、HVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号1〜6のうちのいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異体との組み合わせから選択された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含み得る。
【0199】
例えば、抗VEGF抗体は、(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GITPAGGYTRYADSVKG(配列番号7)、GITPAGGYEYYADSVKG(配列番号21)、もしくはGITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQGYGAPFT(配列番号10)もしくはQQGYGNPFT(配列番号23)のアミノ酸配列を含むHVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号1、3、7〜10、もしくは21〜23のうちのいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異体との組み合わせから選択された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含み得る。
【0200】
例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GITPAGGYTRYADSVKG(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号1、3、もしくは7〜10のうちのいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異体との組み合わせから選択された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含み得る。いくつかの事例の特定の例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYTRYADSVKG(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。
【0201】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTIS(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQAPGKGLEWVA(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISADTSKNTAYLQMRSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0202】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0203】
例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYTRYADSVKG(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTIS(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQAPGKGLEWVA(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSKNTAYLQMRSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGTLVTVSS(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0204】
例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQGYGNPFT(配列番号23)のアミノ酸配列を含むHVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号1、3、8、9、22、もしくは23のうちのいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異体との組み合わせから選択された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含み得る。いくつかの事例の特定の例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGNPFT(配列番号23)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。
【0205】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)またはEEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0206】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号24)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0207】
例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGNPFT(配列番号23)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号24)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0208】
いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGNPFT(配列番号23)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号24)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0209】
例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号1、3、8〜10、もしくは22のうちのいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異体との組み合わせから選択された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含み得る。いくつかの事例の特定の例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。
【0210】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)またはEEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0211】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)、DIQMTQSPESLSASVGDEVTITC(配列番号25)、またはDIQMTQSPSSLSASVGDEVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)またはWYQQKPGEAPKLLIY(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)またはGVPSRFSGSGSGTDFTLTIESLQPEDAATYYC(配列番号28)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0212】
例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPESLSASVGDEVTITC(配列番号25)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号34のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0213】
例えば、他の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDEVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGEAPKLLIY(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTIESLQPEDAATYYC(配列番号28)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号35のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0214】
例えば、他の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDEVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGEAPKLLIY(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTIESLQPEDAATYYC(配列番号28)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号35のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0215】
例えば、さらに他の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPESLSASVGDEVTITC(配列番号25)とのアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGEAPKLLIY(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0216】
例えば、さらに別の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDEVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0217】
他の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDEVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0218】
例えば、他の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0219】
他の事例において、抗VEGF抗体は、以下の6つのHVR:(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYEYYADSVEG(配列番号22)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの重鎖可変ドメインFR:(a)EEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号51)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。さらなる事例において、抗VEGF抗体は、以下の4つの軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0220】
いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号:11、40、もしくは42のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはそれらの配列を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン、(b)配列番号:12、41、もしくは46のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはそれらの配列を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの事例において、本抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号41のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号46のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0221】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTIS(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQAPGKGLEWVA(配列番号14)またはWVRQEPGKGLEWVA(配列番号39)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISADTSKNTAYLQMRSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGTLVTVSS(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0222】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)またはDIQMTQSPSSLSASVGDRVTIDC(配列番号45)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDSATYYC(配列番号44)、またはGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYC(配列番号54)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)またはFGQGTKVEVK(配列番号55)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0223】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGNPFTFGQGTKVEIK(配列番号59)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0224】
いくつかの実例において、本抗体は配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGNPFTFGQGTKVEIK(配列番号59)のアミノ酸配列を含むVLドメイン。
【0225】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGNPFTFGQGTKVEIK(配列番号59)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0226】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGNPFTFGQGTKVEIK(配列番号59)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0227】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGNPFTFGQGTKVEIK(配列番号59)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0228】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGAPFTFGQGTKVEIK(配列番号60)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0229】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGAPFTFGQGTKVEIK(配列番号60)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0230】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGAPFTFGQGTKVEIK(配列番号60)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0231】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号42のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGAPFTFGQGTKVEIK(配列番号60)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0232】
いくつかの事例において、本抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQGYGAPFTFGQGTKVEIK(配列番号60)のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号11に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはその配列を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号11に対する少なくとも90%の配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはその配列を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)DYWIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)GITPAGGYTRYADSVKG(配列番号7)のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)FVFFLPYAMDY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)RASQDVSTAVA(配列番号8)のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)SASFLYS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)QQGYGAPFT(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含み得る。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の重鎖フレームワーク領域:(a)EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTIS(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR−H1と、(b)WVRQAPGKGLEWVA(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR−H2と、(c)RFTISADTSKNTAYLQMRSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR−H3と、(d)WGQGTLVTVSS(配列番号16)のアミノ酸配列を含むFR−H4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、以下の軽鎖フレームワーク領域:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)のアミノ酸配列を含むFR−L1と、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)のアミノ酸配列を含むFR−L2と、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)のアミノ酸配列を含むFR−L3と、(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4とを含む。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むVHドメインと、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインと含む結合ドメインとを含む。いくつかの事例において、例示的な抗VEGFは、N94A.F83A.N82aR.Y58Rである。
【0233】
いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、(a)配列番号33もしくは51に対する少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはそれらの配列を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号12、34、35、36、37、もしくは38のうちのいずれか1つに対する少なくとも90%の配列(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはそれらの配列を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む。例えば、いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号34のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号35のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号38のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号35のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。いくつかの事例において、本抗体は、配列番号51のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0234】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):EEQLVEEGGGLVQPGESLELSCAASGFEIS(配列番号29)またはEEQLVEEGGGLVQPGESLRLSCAASGFEIS(配列番号52)のアミノ酸配列を含むFR−H1、(b)WVRQEPGEGLEWVA(配列番号30)またはWVRQEPGKGLEWVA(配列番号39)のアミノ酸配列を含むFR−H2、(c)RFTISADTSENTAYLQMNELRAEDTAVYYCAR(配列番号31)のアミノ酸配列を含むFR−H3、及び(d)WGQGELVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を含むFR−H4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0235】
いくつかの事例において、前述の抗VEGF抗体のうちのいずれも、以下の軽鎖可変ドメインFR:(a)DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号17)、DIQMTQSPESLSASVGDEVTITC(配列番号25)、またはDIQMTQSPSSLSASVGDEVTITC(配列番号26)のアミノ酸配列を含むFR−L1、(b)WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号18)またはWYQQKPGEAPKLLIY(配列番号27)のアミノ酸配列を含むFR−L2、(c)GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYC(配列番号19)、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号24)、またはGVPSRFSGSGSGTDFTLTIESLQPEDAATYYC(配列番号28)のアミノ酸配列を含むFR−L3、及び(d)FGQGTKVEIK(配列番号20)のアミノ酸配列を含むFR−L4のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含み得る。
【0236】
いくつかの事例において、本発明は、(a)配列番号48のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または(b)配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本抗体は、Fab形式で発現されるG6.31AARRである。
【0237】
いくつかの事例において、本発明は、(a)配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または(b)配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本抗体は、抗ヒトIgGに対する反応性を欠くG6.31AARRの変異体バージョンである。
【0238】
さらなる態様において、上記の実施形態のいずれかに記載の抗VEGF抗体は、以下の1〜8項に記載されるような特徴のいずれかを、単独または組み合わせて組み込み得る。
【0239】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。例えば、いくつかの事例において、本明細書に提供される抗体は、約10nM以下のKdでヒトVEGF(hVEGF)に結合する。いくつかの事例において、本明細書に提供される抗体は、約5nM以下のKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本明細書に提供される抗体は、約2nM以下のKdでhVEGFに結合する。例えば、いくつかの事例において、本抗体は、約25pM〜約2nM(例えば、約25pM、約50pM、約75pM、約100pM、約125pM、約150pM、約175pM、約200pM、約225pM、約250pM、約275pM、約300pM、約325pM、約350pM、約375pM、約400pM、約425pM、約450pM、約475pM、約500pM、約525pM、約550pM、約575pM、約600pM、約625pM、約650pM、約675pM、約700pM、約725pM、約750pM、約775pM、約800pM、約825pM、約850pM、約875pM、約900pM、約925pM、約950pM、約975pM、約1nM、約1.1nM、約1.2nM、約1.3nM、約1.4nM、約1.5nM、約1.6nM、約1.7nM、約1.8nM、約1.9nM、または約2nM)のKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約600pM(例えば、約75pM、約100pM、約125pM、約150pM、約175pM、約200pM、約225pM、約250pM、約275pM、約300pM、約325pM、約350pM、約375pM、約400pM、約425pM、約450pM、約475pM、約500pM、約525pM、約550pM、約575pM、約600pM)のKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約500pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約400pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約300pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約200pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約150pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約125pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約75pM〜約100pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約80pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約60pMのKdでhVEGFに結合する。いくつかの事例において、本抗体は、約40pMのKdでhVEGFに結合する。
【0240】
一実施形態において、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。一実施形態において、RIAは、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最小濃度の(
125I)標識抗原と平衡化し、次いで、抗Fab抗体でコーティングしたプレートで結合した抗原を捕捉することにより測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の2%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)で2〜5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)中、100pMまたは26pMの[
125I]−抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593−4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab−12の査定と一貫する)。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションは、平衡に達することを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、PBS中の0.1%ポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))を用いてプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT−20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上でプレートを10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0241】
別の実施形態によると、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、約10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。一実施形態において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給者の指示書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流量で注入して、およそ10の応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。反応速度測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM〜500nM)を、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBS中におよそ25μL/分の流量で注入する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることにより計算される。平衡解離定数(Kd)をk
off/k
on比として計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが10
6M
−1s
−1を超える場合、オンレートは、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗−抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nmの帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用することにより決定することができる。
【0242】
2.抗体安定性
本発明は、例えば、抗VEGF抗体、例えば、G6.31と比較して増強された安定性を有する抗体を提供する(例えば、米国特許第7,758,859号及び国際出願公開第WO2005/012359号を参照されたく、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。抗体の安定性は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、示差走査型蛍光定量法(DSF)、円二色性(CD)、固有のタンパク質蛍光、示差走査熱量測定、分光法、光散乱(例えば、動的光散乱(DLS)及び静的光散乱(SLS)、自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)を使用して決定され得る。この抗VEGF抗体は、例えば、増強された融解温度(T
m)、凝集温度(T
agg)、または抗VEGF抗体、例えば、G6.31と比較して安定した他のメトリクスを有し得る。
【0243】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、約80℃以上(例えば、約81℃、約82℃、約83℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、約92℃、または約93℃)であるT
mを有する。例えば、いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、約83.5℃以上(例えば、約83.5℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、約92℃、または約93℃)であるT
mを有する。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、約82℃〜約92℃(例えば、約82℃、約83℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、または約92℃)のT
mを有する。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、約82℃のT
mを有する。いくつかの事例において、抗VEGF抗体の前述のT
m値のうちのいずれも、DSFを使用して決定される。いくつかの実施形態において、抗VEGF抗体のT
m値は、本明細書において、例えば、実施例1に記載されるように決定される。
【0244】
3.抗体フラグメント
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体フラグメントである。抗体フラグメントには、Fab、Fab’、Fab−C、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fv、及びscFvフラグメント、ならびに以下に記載される他のフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体フラグメントの概説に関しては、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)を参照されたい。scFvフラグメントの概説に関しては、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York),pp.269−315(1994)を参照されたく、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)
2フラグメントの考察に関しては、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0245】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
【0246】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む抗体フラグメントである。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
【0247】
抗体フラグメントは、本明細書に記載されるような、インタクトな抗体のタンパク分解消化、ならびに組み換え宿主細胞(例えば、E.Coliまたはファージ)の産生が含まれるが、これらに限定されない様々な技法により作製され得る。
【0248】
4.キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変ドメイン)及びヒト定常ドメインを含む。さらなる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合フラグメントを含む。
【0249】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化される。概して、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含むことになる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となる抗体)からの対応する残基で置換される。
【0250】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:10029−10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods36:25−34(2005)(特異性決定領域(SDR)移植を記載している)、Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェイシング」を記載している)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャッフリング」を記載している)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」手法を記載している)にさらに記載されている。
【0251】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「最良適合」方法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照されたい)、及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0252】
5.ヒト抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に記載されている。
【0253】
ヒト抗体は、抗原投与に応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製され得る。かかる動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体内にランダムに合体されるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は概して、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説に関しては、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117−1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載している米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号、K−M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7,041,870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載している)米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。かかる動物により生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに修飾され得る。
【0254】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されたヒト抗体も、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)に記載されている。追加の方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載している)に記載されている物が含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)にも記載されている。
【0255】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載される。
【0256】
6.ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体に関してコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を保有する抗体に関してかかるライブラリーをスクリーニングするための多様な方法が当該技術分野において既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1−2):119−132(2004)にさらに記載されている。
【0257】
ある特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリーでランダムに組み換えられ、次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載されているように抗原結合ファージに関してスクリーニングされ得る。ファージは典型的には、一本鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントのいずれかとして抗体フラグメントをディスプレイする。免疫化源からのライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫源に高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)により記載されているように、(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化も伴うことなく、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する単一抗体源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリーは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)により記載されているように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用することによっても合成的に作製されて、高度可変CDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を達成し得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が含まれる。
【0258】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体フラグメントと見なされる。
【0259】
7.多重特異性抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの1つは、VEGFに対し、その他は、任意の他の抗原(例えば、第2の生体分子、例えば、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6);インターロイキン−6受容体(IL−6R);インターロイキン−13(IL−13);IL−13受容体(IL−13R);PDGF(例えば、PDGF−BB);アンジオポエチン;アンジオポエチン2(Ang2);Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合型VEGF受容体(mbVEGFR)、または可溶性VEGF受容体(sVEGFR));ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;インターロイキン−8(IL−8);CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10Aなどの加齢黄斑変性症(AMD)リスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質に対する。したがって、二重特異性抗体は、VEGF及びIL−1β、VEGF及びIL−6、VEGF及びIL−6R、VEGF及びIL−13、VEGF及びIL−13R、VEGF及びPDGF(例えば、PDGF−BB)、VEGF及びアンジオポエチン、VEGF及びAng2、VEGF及びTie2、VEGF及びS1P、VEGF及びインテグリンαvβ3、VEGF及びインテグリンαvβ5、VEGF及びインテグリンα5β1、VEGF及びベータセルリン、VEGF及びアペリン/APJ、VEGF及びエリスロポエチン、VEGF及び補体D因子、VEGF及びTNFα、VEGF及びHtrA1、VEGF及びVEGF受容体(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、mbVEGFR、またはsVEGFR)、VEGF及びST−2受容体、VEGF及びC2、VEGF及びB因子、VEGF及びH因子、VEGF及びCFHR3、VEGF及びC3b、VEGF及びC5、VEGF及びC5a、VEGF及びC3a、VEGF及びARMS2、VEGF及びTIMP3、VEGF及びHLA、VEGF及びIL−8、VEGF及びCX3CR1、VEGF及びTLR3、VEGF及びTLR4、VEGF及びCETP、VEGF及びLIPC、VEGF及びCOL10A1、またはVEGF及びTNFRSF10Aに対する結合特異性を有し得る。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、VEGFの2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、VEGFを発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化するためにも使用され得る。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、またはFab−Cフラグメント)として調製され得る。
【0260】
いくつかの事例において、二重特異性抗体は、米国特許出願第2014/0017244号に開示されている二重特異性抗VEGF/抗アンジオポエイチン(angiopoeitin)2(Ang2)抗体であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体は、VEGFに結合する第1の結合ドメイン(本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかなど)と、(a)GYYMH(配列番号62)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)WINPNSGGTNYAQKFQG(配列番号63)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(c)SPNPYYYDSSGYYYPGAFDI(配列番号64)のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)GGNNIGSKSVH(配列番号65)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(e)DDSDRPS(配列番号66)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び(f)QVWDSSSDHWV(配列番号67)のアミノ酸配列を含むHVR−L3、または上記のHVRのうちの1つ以上と、配列番号62〜67のうちのいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有するそれらの1つ以上の変異体との組み合わせを含むAng2に結合する第2の結合ドメインとを含み得る。
【0261】
いくつかの事例において、抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体は、VEGFに結合する第1の結合ドメイン(本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかなど)と、Ang2に結合し、(a)配列番号68に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはその配列を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン、(b)配列番号69に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)、もしくはその配列を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、または(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む第2の結合ドメインとを含み得る。いくつかの事例において、抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体は、VEGFに結合する第1の結合ドメイン(本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかなど)と、Ang2に特異的に結合する第2の結合ドメインとを含み得、ここで、第2の結合ドメインは、全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2010/069532号に記載されている任意の抗体結合ドメイン、またはその変異体である。
【0262】
他の事例において、抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体は、国際特許出願公開第WO2016/073157号に記載されている任意の抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体である。
【0263】
いくつかの事例において、二重特異性抗体は、二重特異性抗VEGF/抗IL−6抗体である。いくつかの事例において、抗VEGF/抗IL−6二重特異性抗体は、VEGFに結合する第1の結合ドメイン(本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかなど)と、IL−6に結合する第2の結合ドメインとを含み得る。第2の結合ドメインは、当該技術分野において既知の任意の抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ(gerilimzumab)、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体の結合ドメインであり得る。
【0264】
いくつかの事例において、二重特異性抗体は、二重特異性抗VEGF/抗IL−6R抗体である。いくつかの事例において、抗VEGF/抗IL−6R二重特異性抗体は、VEGFに結合する第1の結合ドメイン(本明細書に記載される抗VEGF抗体のうちのいずれかなど)と、IL−6Rに結合する第2の結合ドメインとを含み得る。第2の結合ドメインは、当該技術分野において既知の結合ドメイン任意の抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体であり得る。
【0265】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブ・イン・ホール(knob−in−hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、静電的ステアリング効果を操作して抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体またはフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体フラグメントを作製すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993))、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、及び、例えば、Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)に記載されているような三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0266】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0267】
本明細書における抗体またはフラグメントは、VEGF、ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含む(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0268】
8.抗体変異体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異体(例えば、1つ以上のアミノ酸残基改変を含む抗体変異体)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。アミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそこへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を保有することを条件とする。
【0269】
a)置換、挿入、及び欠失変異体
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換突然変異生成の目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化が、「例示的の置換」という見出しで表1に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的の抗体中に導入され、その産生物が、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCに関して、スクリーニングされてもよい。
表1
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0270】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0271】
一種の置換型変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基及び/またはFR残基の置換を伴う。概して、さらなる研究のために選択されて得られた変異体(複数可)は、親抗体に対して、ある特定の生物学的特性(例えば、増加した親和性、増加した安定性、増加した発現、改変されたpI、及び/または低減した免疫原性)における変更(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体であり、これは、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る。簡潔には、1つ以上のHVR残基が突然変異され、変異体抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。
【0272】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するためにHVR内で行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で突然変異を経るコドンによりコードされた残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照されたい)、及び/または抗原に接触する残基内で行われ得、得られた変異体VHまたはVLは、結合親和性に関して試験される。二次ライブラリーを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和成熟のいくつかの実施形態において、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異生成)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、ライブラリーがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異体が特定される。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6つの残基)がランダム化されるHVR指向手法を伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異生成またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。特に、CDR−H3及びCDR−L3が、しばしば標的化される。
【0273】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がHVR内で行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上記で提供される変異体VH及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、改変されないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0274】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のFR内で生じ得る。例えば、かかる改変は、抗体親和性及び/または安定性(例えば、増加した融解温度により査定される場合)を改善し得る。
【0275】
突然変異生成のために標的とされ得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085により記載されている「アラニンスキャニング突然変異生成」と呼ばれる。この方法において、標的残基の残基または基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかを決定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸配置に導入され得る。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原−抗体錯体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異体はスクリーニングされて、それらが所望の特性を含むかを決定することができる。
【0276】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合が含まれ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
【0277】
b)グリコシル化変異体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより好都合に達成され得る。
【0278】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞により産生された天然抗体は典型的には、N連鎖によりFc領域のCH2ドメインのAsn297に概して結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.,TIBTECH 15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、ある特定の特性の改善を有する抗体変異体を作製するために行われ得る。
【0279】
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されているように、MALDI−TOF質量分析法により測定された場合、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、錯体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297は、Fc領域の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に配置されるアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体中のわずかな配列の多様性に起因して、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち294〜300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する公報の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.,J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004)、Yamane−Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986)、米国特許出願第2003/0157108A1号、Presta,L、及びWO2004/056312A1、Adamsら、特に実施例11)、ならびにアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane−Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680−688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が含まれる。
【0280】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分される、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。かかる抗体変異体は、低減したフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。かかる抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異体は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0281】
c)Fc領域変異体
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域変異体が生成され得る。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸残基改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。ある特定の実施形態において、本発明は、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を保有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異体を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/減損を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)のページ464の表3に要約されている。
【0282】
目的の分子のADCC活性を査定するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号に記載されている(例えば、Hellstrom et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059−7063(1986)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499−1502(1985)、米国特許第5,821,337号、ならびにBruggemann et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照されたい)。あるいは、非放射性アッセイ方法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて査定され得る。C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合することができず、故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を査定するために、CDCアッセイが実施され得る(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg et al.,Blood 101:1045−1052(2003)、及びCragg et al.,Blood 103:2738−2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当該技術分野において既知の方法を使用して実施され得る(例えば、Petkova et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照されたい)。
【0283】
低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上で置換を有するFc突然変異が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0284】
FcRsへの改善または減損された結合を有するある特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい)。
【0285】
ある特定の実施形態において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0286】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.,J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されているように、改変された(すなわち、改善または減損された)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす改変は、Fc領域内で行われる。
【0287】
母体IgGの胎児への移入に関与する、増加した半減期、及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。かかるFc変異体には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。Fc領域変異体の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature 322:738−40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0288】
d)システイン操作された抗体変異体
ある特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「thioMAbs」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性のチオール基がそれにより抗体の利用しやすい部位に位置付けられ、それを使用して、薬物部分またはリンカー−薬物部分などの他の部分に抗体を複合体化して、本明細書にさらに記載されるように、免疫複合体を作製することができる。ある特定の実施形態において、以下の残基のうちのいずれか1つ以上が、システインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成され得る。
【0289】
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野において既知であり、かつ容易に入手可能である追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造において有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合するポリマーの数は異なり得、1つ以上のポリマーが結合する場合、それらは同じかまたは異なる分子であり得る。概して、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が療法において規定の条件下で使用されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。追加の抗体複合体は、本明細書において、例えば、以下のKの項及び実施例13に記載される。
【0290】
別の実施形態において、放射線への曝露により選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、炭素ナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600−11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞を傷つけないが、抗体−非タンパク質性部分に近位の細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むがこれらに限定されない。
【0291】
f)等電点変異体
本発明は、改変された等電点を有する抗体変異体を提供する。例えば、本発明は、例えば、抗VEGF抗体、例えば、G6.31と比較して低減した等電点(pI)を有する抗体変異体を提供する。いくつかの事例において、表面荷電は、生理学的pHにおいて低減される。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、約8以下(例えば、約8、約7、約6、約5、または約4)のpIを有する。いくつかの事例において、本抗体は、約4〜約8(例えば、約4、約5、約6、約7、または約8)のpIを有する。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、約5〜約7(例えば、約5、約6、または約7)のpIを有する。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、約5〜約6(例えば、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、または約6)のpIを有する。
【0292】
本発明の抗体は、低減したpIを有するように、例えば、より低いpIを有するアミノ酸で所与の位置における野生型アミノ酸残基を置換することにより操作され得る。アミノ酸のpIは、アミン(−NH
2)、カルボン酸(−COOH)、及びアミノ酸の側鎖のpKa値に基づいて決定され得、これは、当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態において、表面が曝露されたアミノ酸残基は、抗体のpIを低減するために置換され得る。一実施形態において、表面が曝露されたアミノ酸残基は、グルタミン酸塩(E)で置換され得る。一実施形態において、表面が曝露されたアミノ酸残基は、アスパラギン酸塩(D)で置換され得る。
【0293】
B.組み換え方法及び組成物
本明細書に記載される抗体(例えば、抗VEGF抗体)のいずれも、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているような組み換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態において、本明細書に記載される抗VEGF抗体をコードする単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。かかる一実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核性、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗VEGF抗体の作製方法が提供され、本方法は、上記で提供されるような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0294】
抗VEGF抗体の組み換え産生に関して、例えば、上述されるような抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞でのさらなるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクターに挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0295】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞または真核細胞が含まれる。例えば、本抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされないときに細菌中で産生され得る。細菌中の抗体フラグメント及びポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。E.Coliにおける抗体フラグメントの発現を記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245−254も参照されたい。発現後、本抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0296】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌及び酵母株を含む。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210−215(2006)を参照されたい。
【0297】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0298】
植物細胞培養物も宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物における抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。
【0299】
脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合された哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS−7)により形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されているような293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980)に記載されているようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982)に記載されているようなTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR
−CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、ならびにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説に関しては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255−268(2003)を参照されたい。
【0300】
C.アッセイ
本明細書に提供される抗VEGF抗体、ならびに抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤などの抗VEGF抗体(例えば、本明細書に提供される任意の抗VEGF抗体)を含む組成物は、当該技術分野において既知の様々なアッセイにより、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性に関して特定され得るか、スクリーニングされ得るか、または特徴付けられ得る。
【0301】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様において、本発明の抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット法などの既知の方法によりその抗原結合活性に関して試験される。
【0302】
別の態様において、競合アッセイは、VEGFに結合することに関して、本明細書に記載されるような抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤と競合する抗体を特定するために使用され得る。ある特定の実施形態において、かかる競合抗体は、本明細書に記載されるような抗体により結合される、同じエピトープ(例えば、線状または立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細で例示的な方法が、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。
【0303】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化VEGFが、VEGFに結合する第1の標識抗体と、VEGFへの結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験されている第2の未標識抗体とを含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化VEGFは、第1の標識抗体を含むが第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体がVEGFへ結合することを許容する条件下でのインキュベーションの後、過剰な非結合抗体を除去し、固定化VEGFに関連付けられる標識の量が測定される。固定化VEGFに関連付けられる標識の量が、対照試料に対して試験試料中で実質的に低減している場合、それは、第2の抗体がVEGFへの結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0304】
2.活性アッセイ
一態様において、アッセイは、生物学的活性を有する抗VEGF抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤を特定するために提供される。生物学的活性には、例えば、VEGF(例えば、血流中VEGF)またはそのペプチドフラグメントに、インビボ、インビトロ、またはエキソビボのいずれかで結合することが含まれ得る。ある特定の実施形態において、生物学的活性には、VEGFの遮断もしくは中和、またはVEGFがリガンド、例えば、KDRもしくはFlt−1などの受容体に結合することを防止することが含まれ得る。インビボ及び/またはインビトロにかかる生物学的活性を有する抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤も提供される。ある特定の実施形態において、本発明の抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤は、かかる生物学的活性に関して試験される。
【0305】
3.安定性アッセイ
一態様において、アッセイは、抗VEGF抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤の安定性(例えば、熱安定性)を決定するために提供される。例えば、本抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤の安定性は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、示差走査型蛍光定量法(DSF)、円二色性(CD)、固有のタンパク質蛍光、示差走査熱量測定、分光法、光散乱(例えば、動的光散乱(DLS)及び静的光散乱(SLS)、自己相互作用クロマトグラフィー(SIC)を使用して決定され得る。例えば、アッセイの安定性は、本明細書に記載されるように、例えば、実施例1及び2に記載されるようなDSFを使用して決定され得る。
【0306】
D.免疫複合体
本発明は、化学療法剤もしくは化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、もしくはそれらのフラグメント)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞傷害性薬剤に複合体化された本明細書における抗VEGF抗体を含む、免疫複合体も提供する。
【0307】
一実施形態において、免疫複合体は、抗体が1つ以上の薬物に複合体化された抗体−薬物複合体(ADC)であり、これには、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第0425235B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDFなどのオーリスタチン(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.Cancer Res.53:3336−3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925−2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477−523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters 16:358−362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717−721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829−834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529−1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336−4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065が含まれるが、これらに限定されない。
【0308】
別の実施形態において、免疫複合体には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテセン(tricothecene)が含まれるが、これらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に複合体化された本明細書に記載される抗体を含む。
【0309】
別の実施形態において、免疫複合体は、放射性原子に複合体化されて放射性複合体を形成する本明細書に記載されるような抗体を含む。放射性複合体の産生には、多様な放射性同位体が入手可能である。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、及びLuの放射性同位体が含まれる。放射性複合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
【0310】
抗体及び細胞傷害性薬剤の複合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6−ジイソシアネート)、及びビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science238:1098(1987)に記載されているように調製され得る。炭素−14で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への複合体化のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127−131(1992)、米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0311】
本明細書における免疫複合体またはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されているSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製されるかかる複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0312】
E.親和性精製、診断、及び検出のための方法及び組成物
本発明の抗体は、親和性精製薬剤として使用され得る。このプロセスにおいて、本抗体は、当該技術分野において周知の方法を使用して、かかるSEPHADEX(登録商標)樹脂または濾紙などの固相に固定化される。固定化抗体は、精製すべき抗原を含有する試料と接触され、その後、支持体を好適な溶媒で洗浄することにより、固定化抗体に結合している精製すべき抗原を除き、試料中の実質的に全ての材料が除去される。最後に、支持体を、pH5.0のグリシン緩衝液などの別の好適な溶媒で洗浄し、抗体から抗原が放出される。
【0313】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗VEGF抗体のうちのいずれも、生体試料中のVEGFの存在を検出するのに有用である。「検出すること」という用語は、本明細書で使用される場合、定量的または定性的検出を包含する。ある特定の実施形態において、生体試料は、血液(例えば、全血液、血漿、及び/または血清)、組織試料(例えば、腫瘍試料)などの細胞または組織を含む。
【0314】
一実施形態において、診断または検出方法で使用するための抗VEGF抗体が提供される。さらなる態様において、生体試料中のVEGFの存在の検出方法が提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、抗VEGF抗体がVEGFに結合することを許容する条件下で生体試料を本明細書に記載されるような抗VEGF抗体と接触させることと、錯体が抗VEGF抗体とVEGFとの間に形成されるかどうかを検出することとを含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。一実施形態において、抗VEGF抗体は、例えば、VEGFが患者の選択のための生物マーカーである場合、抗VEGF抗体を用いた療法に適した対象を選択するために使用される。
【0315】
本発明の抗体を使用して診断され得る例示的な障害には、病理学的血管形成に関連付けられる障害(例えば、眼の障害及び細胞増殖性障害)及び/または望ましくない血管透過性に関連付けられる障害(例えば、脳腫瘍に関連付けられる浮腫、悪性病変に関連付けられる腹水、メーグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水貯留、及び循環器疾患に関連付けられる透過性)が含まれる。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD、乾燥AMD、中間AMD、進行性AMD、または地図状萎縮(GA))、黄斑変性症、黄斑浮腫、DME(例えば、局所非中心部DMEまたはびまん性中心部関与関連DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、または高地DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連付けられる疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる疾患、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノリエ病、OPPG、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障(レーバー先天性黒内障またはLCAとしても既知である)、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、目の乾燥、外傷性目の損傷、またはシェーグレン病である。いくつかの事例において、眼の障害は、増殖性糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態を含む)、角膜血管新生、網膜血管新生、未熟児網膜症(ROP)、家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)、コーツ病、ノリエ病、骨粗鬆症−偽性神経膠腫症候群(OPPG)、結膜下出血、または高血圧性網膜症を含む網膜症である。いくつかの事例において、細胞増殖性障害は、癌である。いくつかの事例において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンスリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、または多発性骨髄腫である。
【0316】
ある特定の実施形態において、標識抗VEGF抗体が提供される。標識には、直接的に検出される標識または部分(蛍光標識、発色団標識、電子密度標識、化学発光標識、及び放射性標識など)、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用により間接的に検出される酵素またはリガンドなどの部分が含まれるが、これらに限定されない。例示的な標識には、放射性同位体
32P、
14C、
125I、
3H、及び
131I、希土類キレートもしくはフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロホア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0317】
本発明の別の実施形態において、本抗体は、標識される必要はなく、その存在は、本抗体に結合する標識抗体を使用して検出され得る。
【0318】
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイなどの任意の既知のアッセイ方法で用いられ得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)。
【0319】
競合結合アッセイは、限定された量の抗体と結合することに関して、標識標準物が、試験試料分析物と競合する能力に依存する。試験試料中の抗原の量は、抗体と結合した標準物の量に反比例する。結合した標準物の量の決定を容易にするために、本抗体は概して、抗体に結合している標準物及び分析物が結合していないままである標準物及び分析物から好都合に分離され得るように競合前または競合後に不溶化にされる。
【0320】
サンドイッチアッセイは、2つの抗体の使用を伴い、各々は、検出されるタンパク質の異なる免疫原生部分、またはエピトープに結合することができる。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料分析物は、堅い支持体に固定化されている第1の抗体により結合され、したがって、第2の抗体が分析物に結合して、非可溶性の3部の錯体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。第2の抗体は、検出可能部分でそれ自身が標識され得る(直接サンドイッチアッセイ)か、または検出可能部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を使用して測定され得る(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、一種のサンドイッチアッセイは、ELISAアッセイであり、その場合、検出可能部分は、酵素である。
【0321】
免疫組織化学に関して、腫瘍試料は、加工されていないかもしくは凍結されていてもよいか、またはパラフィンで包埋されていても、例えば、ホルマリンなどの防腐剤で固定されていてもよい。
【0322】
本抗体は、インビボ診断アッセイのためにも使用され得る。概して、本抗体は、腫瘍が免疫シンチオグラフィーを使用して局在化され得るように、放射性核種(
111In、
99Tc、
14C、
131I、
125I、
3H、
32P、または
35Sなど)または色素で標識される。
【0323】
F.診断キット
便宜上、本発明の抗体は、キットで、すなわち、パッケージにされた所定の量の試薬と診断アッセイの実施に関する指示書との組み合わせで提供され得る。抗体が酵素で標識される場合、キットは、酵素により必要とされる基材及び共同因子(例えば、検出可能なクロモホアまたはフルオロホアを提供する基材前駆体)を含むであろう。加えて、他の添加剤には、安定剤、緩衝液(例えば、遮断緩衝液または溶解緩衝液)などが含まれ得る。様々な試薬の相対量は、アッセイの感受性を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供するように幅広く異なり得る。特に、溶解すると適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む試薬は、乾燥粉末、通常凍結乾燥された状態で提供され得る。
【0324】
G.薬学的製剤
本明細書に記載されるような抗VEGF抗体またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤の薬学的製剤は、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で、所望の純度を有するかかる抗体を1つ以上の任意の薬学的に許容される担体と混合することにより調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。薬学的に許容される担体は概して、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これらには、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤がさらに含まれる。rHuPH20を含むある特定の例示的なsHASEGP及びその使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0325】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
【0326】
本明細書における製剤は、治療されている特定の適応症に対する必要に応じて、1つを超える活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物も含有し得る。例えば、免疫抑制剤をさらに提供することが望ましい場合がある。かかる分子は好適には、意図される目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
【0327】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法もしくは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、またはマイクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0328】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌状態は、例えば、滅菌濾過膜に通した濾過により、容易に達成され得る。
【0329】
ある特定の実施形態において、薬学的製剤は、1つ以上の追加の化合物を含む。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β、IL−6;IL−6R;IL−13;IL−13R;PDGF;アンジオポエチン;アンジオポエチン2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;IL−8;CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10Aなどの加齢黄斑変性症(AMD)リスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0330】
例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体である。
【0331】
いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。
【0332】
いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0333】
H.治療方法及び組成物
本明細書に提供される抗VEGF抗体、抗体複合体(例えば、HA複合体、PEG複合体、及び前駆薬物抗体複合体)、融合タンパク質、及び高分子製剤のうちのいずれかが治療方法で使用され得る。
【0334】
一態様において、薬品として使用するための抗VEGF抗体が提供される。別の態様において、薬品として使用するための抗体複合体が提供される。さらに別の態様において、薬品として使用するための融合タンパク質が提供される。さらに別の態様において、薬品として使用するための高分子製剤が提供される。さらなる態様において、本発明は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を治療するのに使用するための抗VEGF抗体を提供する。別の態様において、本発明は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を治療するのに使用するための抗体複合体を提供する。さらに他の態様において、本発明は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を治療するのに使用するための融合タンパク質を提供する。他の態様において、本発明は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を治療するのに使用するための高分子製剤を提供する。いくつかの実施形態において、病理学的血管形成に関連付けられる障害は、眼の障害または細胞増殖性障害である。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD、乾燥AMD、中間AMD、進行性AMD、または地図状萎縮(GA))、黄斑変性症、黄斑浮腫、DME(例えば、局所非中心部DMEまたはびまん性中心部関与関連DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、または高地DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連付けられる疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる疾患、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノリエ病、OPPG、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、目の乾燥、外傷性目の損傷、またはシェーグレン病である。いくつかの事例において、細胞増殖性障害は、癌である。いくつかの事例において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンスリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、または多発性骨髄腫である。別の態様において、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害を治療するのに使用するための抗VEGF抗体が提供される。いくつかの事例において、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害は、脳腫瘍に関連付けられる浮腫、悪性病変に関連付けられる腹水、メーグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水貯留、または循環器疾患に関連付けられる透過性である。
【0335】
別の態様において、治療方法で使用するための抗VEGF抗体が提供される。別の態様において、治療方法で使用するための抗体複合体が提供される。さらに別の態様において、治療方法で使用するための融合タンパク質が提供される。さらに別の態様において、治療方法で使用するための高分子製剤が提供される。ある特定の事例において、本発明は、個体に有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する対象を治療する方法で使用するための抗VEGF抗体を提供する。本発明は、個体に有効量の抗体複合体を投与することを含む、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する対象を治療する方法で使用するための抗体複合体も提供する。本発明は、個体に有効量の融合タンパク質を投与することを含む、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する対象を治療する方法で使用するための融合タンパク質も提供する。本発明は、個体に有効量の高分子製剤を投与することを含む、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する対象を治療する方法で使用するための高分子製剤も提供する。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD、乾燥AMD、中間AMD、進行性AMD、または地図状萎縮(GA))、黄斑変性症、黄斑浮腫、DME(例えば、局所非中心部DMEまたはびまん性中心部関与関連DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、または高地DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連付けられる疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる疾患、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノリエ病、OPPG、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、目の乾燥、外傷性目の損傷、またはシェーグレン病である。いくつかの事例において、細胞増殖性障害は、癌である。いくつかの事例において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンスリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、または多発性骨髄腫である。
【0336】
他の事例において、本発明は、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害を有する個体を治療する方法で使用するための抗VEGF抗体を提供する。いくつかの事例において、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害は、脳腫瘍に関連付けられる浮腫、悪性病変に関連付けられる腹水、メーグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水貯留、または循環器疾患に関連付けられる透過性である。前述の使用のうちのいずれも、例えば、以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を個体に投与することをさらに含み得る。
【0337】
いくつかの事例において、本発明は、対象における血管形成を低減または阻害するのに使用するための抗VEGF抗体を提供する。別の態様において、対象における血管形成を低減または阻害するのに使用するための抗体複合体が提供される。さらに別の態様において、対象における血管形成を低減または阻害するのに使用するための融合タンパク質が提供される。さらに別の態様において、対象における血管形成を低減または阻害するのに使用するための高分子製剤が提供される。ある特定の実施形態において、本発明は、個体に有効の抗VEGF抗体を投与して血管形成を低減または阻害することを含む、対象における血管形成を低減または阻害する方法で使用するための抗VEGF抗体を提供する。本発明は、個体に有効量の抗体複合体を投与することを含む、対象における血管形成を低減または阻害する方法で使用するための抗体複合体も提供する。本発明は、個体に有効量の融合タンパク質を投与することを含む、対象における血管形成を低減または阻害する方法で使用するための融合タンパク質も提供する。本発明は、個体に有効量の高分子製剤を投与することを含む、対象における血管形成を低減または阻害する方法で使用するための高分子製剤も提供する。他の事例において、本発明は、対象における血管透過性を低減または阻害するのに使用するための抗VEGF抗体を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、個体に有効の抗VEGF抗体を投与して血管透過性を低減または阻害することを含む、対象における血管透過性を低減または阻害するのに使用するための抗VEGF抗体を提供する。上記の使用のうちのいずれかに記載の「対象」は、ヒトであり得る。
【0338】
いくつかの事例において、本発明は、対象における自己免疫疾患を治療するのに使用するための抗VEGF抗体を提供する。いくつかの事例において、自己免疫障害は、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、及びクローン病である。前述の使用のうちのいずれも、例えば、以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を個体に投与することをさらに含み得る。
【0339】
本発明は、薬品の製造または調製において抗VEGF抗体の使用を提供する。本発明は、薬品の製造または調製において抗体複合体の使用も提供する。さらに、本発明は、薬品の製造または調製において融合タンパク質の使用を提供する。本発明は、薬品の製造または調製において高分子製剤の使用も提供する。例えば、一事例において、薬品は、病理学的血管形成に関連付けられる障害の治療のためのものである。さらなる事例において、薬品は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する対象に有効量の薬品を投与することを含む、病理学的血管形成に関連付けられる障害を治療する方法で使用するためのものである。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD、乾燥AMD、中間AMD、進行性AMD、または地図状萎縮(GA))、黄斑変性症、黄斑浮腫、DME(例えば、局所非中心部DMEまたはびまん性中心部関与関連DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、または高地DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連付けられる疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる疾患、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノリエ病、OPPG、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、目の乾燥、外傷性目の損傷、またはシェーグレン病である。いくつかの事例において、細胞増殖性障害は、癌である。いくつかの事例において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンスリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、または多発性骨髄腫である。さらなる事例において、薬品は、対象における血管形成を低減または阻害するためのものである。さらなる事例において、薬品は、対象に薬品の有効な量を投与して血管形成を低減または阻害することを含む、対象における血管形成を低減または阻害する方法で使用するためのものである。薬品の前述の使用のうちのいずれにおいても、本方法は、例えば、以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を個体に投与することを含み得る。
【0340】
別の事例において、薬品は、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害の治療のためのものである。いくつかの事例において、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害は、脳腫瘍に関連付けられる浮腫、悪性病変に関連付けられる腹水、メーグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水貯留、または循環器疾患に関連付けられる透過性である。さらなる事例において、薬品は、望ましくない血管透過性に関連付けられる有する対象に有効量の薬品を投与することを含む、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害を治療する方法で使用するためのものである。別の事例において、薬品は、対象における血管透過性を低減または阻害するためのものである。さらなる事例において、薬品は、対象に薬品の有効な量を投与して血管形成を低減または阻害することを含む、対象における血管透過性を低減または阻害する方法で使用するためのものである。薬品の前述の使用のうちのいずれにおいても、本方法は、例えば、以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を対象に投与することを含み得る。上記の使用のうちのいずれかに記載の「対象」は、ヒトであり得る。
【0341】
別の事例において、薬品は、自己免疫障害の治療のためのものである。いくつかの事例において、自己免疫障害は、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、及びクローン病である。さらなる事例において、薬品は、自己免疫障害を有する対象に有効量の薬品を投与することを含む、自己免疫障害を治療する方法で使用するためのものである。上記の使用のうちのいずれかに記載の「対象」は、ヒトであり得る。
【0342】
本発明は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を治療するための方法を提供する。一実施形態において、本方法は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する個体に有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む。別の例において、本方法は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する個体に有効量の抗体複合体を投与することを含む。さらに別の例において、本方法は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する個体に有効量の融合タンパク質を投与することを含む。さらに別の例において、本方法は、病理学的血管形成に関連付けられる障害を有する個体に有効量の高分子製剤を投与することを含む。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD、乾燥AMD、中間AMD、進行性AMD、または地図状萎縮(GA))、黄斑変性症、黄斑浮腫、DME(例えば、局所非中心部DMEまたはびまん性中心部関与関連DME)、網膜症、糖尿病性網膜症(DR)(例えば、増殖性DR(PDR)、非増殖性DR(NPDR)、または高地DR)、他の虚血関連網膜症、ROP、網膜静脈閉塞症(RVO)(例えば、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)及び網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)形態)、CNV(例えば、近視性CNV)、角膜血管新生、角膜血管新生に関連付けられる疾患、網膜血管新生、網膜/脈絡膜血管新生に関連付けられる疾患、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、FEVR、コーツ病、ノリエ病、OPPG、結膜下出血、皮膚潮紅、眼の血管新生疾患、血管新生緑内障、網膜色素変性症(RP)、高血圧性網膜症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、虹彩血管新生、眼内血管新生、網膜変性症、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、脈管炎、視神経乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎(例えば、感染性結膜炎及び非感染性(例えば、アレルギー性)結膜炎)、レーバー先天黒内障、ブドウ膜炎(感染性及び非感染性ブドウ膜炎を含む)、脈絡膜炎(例えば、多病巣性脈絡膜炎)、眼ヒストプラズマ症、眼瞼炎、目の乾燥、外傷性目の損傷、またはシェーグレン病である。いくつかの事例において、細胞増殖性障害は、癌である。いくつかの事例において、癌は、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンスリンパ腫(NHL)、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、または多発性骨髄腫である。さらなる事例において、本方法は、以下に記載されるように、有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を個体に投与することをさらに含む。上記の方法のうちのいずれかに記載の「対象」は、ヒトであり得る。
【0343】
本発明は、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害を治療するための方法を提供する。一実施形態において、本方法は、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害を有する個体に有効量の抗VEGF抗体を投与することを含む。いくつかの事例において、望ましくない血管透過性に関連付けられる障害は、脳腫瘍に関連付けられる浮腫、悪性病変に関連付けられる腹水、メーグス症候群、肺炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水貯留、または循環器疾患に関連付けられる透過性である。さらなる事例において、本方法は、以下に記載されるように、有効量の少なくとも1つの追加の療法剤を個体に投与することをさらに含む。上記の方法のうちのいずれかに記載の「対象」は、ヒトであり得る。
【0344】
本発明の抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤は、哺乳動物を治療するために使用され得ることが企図される。一実施形態において、本抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤は、例えば、前臨床データを得る目的のために非ヒト哺乳動物に投与される。治療される例示的な非ヒト哺乳動物には、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、齧歯類(例えば、マウス及びラット)、及び前臨床研究が実施される他の哺乳動物が含まれる。かかる哺乳動物は、本抗体を用いて治療される疾患に関して確立された動物モデルであり得るか、または目的の抗体の毒性もしくは薬物動態を研究するために使用され得る。これらの実施形態の各々において、用量漸増研究は、哺乳動物で実施され得る。本抗体は、例えば、固形腫瘍モデルで宿主齧歯類に投与され得る。本抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤は、例えば、硝子体内投与(例えば、硝子体内注入)によるか、またはポート送達デバイスを使用して、眼の薬物動態研究のために宿主(例えば、齧歯類、例えば、ウサギ)に投与され得る。
【0345】
さらなる態様において、本発明は、例えば、上記の治療方法のうちのいずれかで使用するための本明細書に提供される抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び/または高分子製剤のうちのいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一実施形態において、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び/または高分子製剤のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態において、薬学的製剤は、本明細書に提供される抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び/または高分子製剤のうちのいずれかと、例えば、以下に記載されるような少なくとも1つの追加の療法剤とを含む。ある特定の実施形態において、薬学的製剤は、1つ以上の追加の化合物を含む。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β;IL−6;IL−6R;IL−13;IL−13R;PDGF;アンジオポエチン;Ang2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;インターロイキン−8(IL−8);CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC、COL10A1;ならびにTNFRSF10Aなどの加齢黄斑変性症(AMD)リスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0346】
本発明の抗体、またはその抗体複合体、融合タンパク質、もしくは高分子製剤は、治療において単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、少なくとも1つの追加の療法剤と共に同時投与され得る。ある特定の実施形態において、追加の療法剤は、別の抗体、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、抗血管形成剤、免疫抑制剤、前駆薬物、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞傷害性放射線療法、コルチコステロイド、制吐剤、癌ワクチン、鎮痛剤、成長阻害剤、またはそれらの組み合わせである。
【0347】
例えば、ある特定の実施形態において、前述の方法のうちのいずれも、1つ以上の追加の化合物を投与することをさらに含む。ある特定の実施形態において、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤は、追加の化合物(複数可)と共に同時に投与される。ある特定の実施形態において、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤は、追加の化合物(複数可)の前または後に投与される。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β;IL−6;IL−6R;IL−13;IL−13R;PDGF;アンジオポエチン;Ang2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;インターロイキン−8(IL−8);CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC、COL10A1;ならびにTNFRSF10AなどのAMDリスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。上記の実施形態のいずれかに記載の(またはそれらに適用されるような)ある特定の実施形態において、眼の障害は、増殖性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病理学的近視、フォン・ヒッペル・リンドウ病、目のヒストプラズマ症、CRVO及びBRVOを含む網膜静脈閉塞症(RVO)、角膜血管新生、網膜血管新生、ならびに未熟児網膜症(ROP)からなる群から選択される眼内血管新生疾患である。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0348】
いくつかの事例において、本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害、例えば、本明細書に記載される眼の障害(例えば、AMD(例えば、滲出性AMD)、DME、DR、またはRVO)の治療のための少なくとも1つの追加の療法剤と組み合わせて投与され得る。眼の障害の治療を目的とした併用療法のための例示的な追加の療法剤には、例えば、抗VEGF抗体を含むVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF Fab LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ))、可溶性受容体融合タンパク質(例えば、組み換え可溶性受容体融合タンパク質EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト、VEGF Trap Eyeとしても既知である、Regeneron/Aventis))、アプタマー(例えば、抗VEGFペグ化アプタマーMACUGEN(登録商標)(ペガプタニブナトリウム、NeXstar Pharmaceuticals/OSI Pharmaceuticals))、及びVEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン(pyrrolidin)−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171)、バタラニブ(PTK787)、セマクサミニブ(semaxaminib)(SU5416、SUGEN)、及びSUTENT(登録商標)(スニチニブ))、トリプトファニル−tRNAシンテターゼ(TrpRS)、スクアラミン;RETAANE(登録商標)(デポ懸濁液のための酢酸アネコルタブ、Alcon,Inc.)、コンブレタスタチンA4前駆薬物(CA4P)、MIFEPREX(登録商標)(ミフェプリストーン−ru486)、テノン嚢下トリアムシノロンアセトニド、硝子体内結晶性トリアムシノロンアセトニド、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えば、プリノマスタット(AG3340、Pfizer))、フルオシノロンアセトニド(フルオシノロン眼内インプラントを含む、Bausch&Lomb/Control Delivery Systems)、リノミド、インテグリンβ3機能の阻害剤、アンジオスタチン、ならびにそれらの組み合わせなどの抗血管形成剤が限定されることなく含まれる。本発明の抗体と組み合わせて投与され得るこれらの療法剤及び他の療法剤は、例えば、米国特許出願第2014/0017244号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0349】
眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤と組み合わせて使用され得る追加の療法剤のさらなる例には、VISUDYNE(登録商標)(ベルテポルフィン、典型的には非熱レーザーを用いた光線力学療法と併用して使用される光により活性化される薬物)、PKC412、Endovion(NS 3728、NeuroSearch A/S)、神経栄養因子(例えば、グリア由来の神経栄養因子(GDNF)及び毛様体神経栄養因子(CNTF))、ジアタゼム、ドルゾラミド、PHOTOTROP(登録商標)、9−シス−レチナール、目薬(例えば、ホスホリンアイオダイド、エコチオパート、または炭酸脱水酵素阻害剤)、ヴェオバスタット(veovastat)(AE−941、AEterna Laboratories,Inc.)、Sirna−027(AGF−745、Sima Therapeutics,Inc.)、ニューロトロフィン(例としてのみ、NT−4/5、Genentechを含む)、Cand5(Acuity Pharmaceuticals)、INS−37217(Inspire Pharmaceuticals)、インテグリンアンタゴニスト(Jerini AG及びAbbott Laboratoriesからのものを含む)、EG−3306(Ark Therapeutics Ltd.)、BDM−E(BioDiem Ltd.)、サリドマイド(例えば、EntreMed,Inc.により使用されるような)、カルジオトロフィン−1(Genentech)、2−メトキシエストラジオール(Allergan/Oculex)、DL−8234(Toray Industries)、NTC−200(Neurotech)、テトラチオモリブデン酸塩(ミシガン大学)、LYN−002(Lynkeus Biotech)、微細藻類化合物(Aquasearch/Albany,Mera Pharmaceuticals)、D−9120(Celltech Group plc)、ATX−S10(Hamamatsu Photonics)、TGF−ベータ2(Genzyme/Celtrix)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、Allergan、SUGEN、またはPfizerからのもの)、NX−278−L(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、OPT−24(OPTIS France SA)、網膜細胞神経節神経保護剤(Cogent Neurosciences)、N−ニトロピラゾール誘導体(Texas A&M University System)、KP−102(Krenitsky Pharmaceuticals)、光線力学療法で使用される療法剤であるシクロスポリンA、(例えば、VISUDYNE(登録商標);受容体を標的とするPDT、Bristol−Myers Squibb,Co.;PDTを用いた注入用のポルフィマーナトリウム;ベルテポルフィン、QLT Inc.;PDTを伴うロスタポルフィン、Miravent Medical Technologies;PDTを伴うタラポルフィンナトリウム、Nippon Petroleum;モテキサフィンルテチウム、Pharmacyclics,Inc.)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例として、Novagali Pharma SAにより試験された産生物及びISIS−13650、Isis Pharmaceuticalsを含む)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0350】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、例えば、レーザー光凝固(例えば、汎網膜光凝固(PRP))、ドルーゼンレーザー加工、黄斑円孔手術、黄斑転座手術、インプラント可能ミニチュアテレスコープ、ファイモーション血管造影(また、マイクロレーザー療法及びフィーダーベッセル治療としても既知である)、陽子線治療、微小刺激治療、網膜剥離及び硝子体手術、強膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔的温熱療法、光化学系I治療、RNA干渉(RNAi)の使用、体外レオフェレシス(膜差濾過及びレオセラピー(rheotherapy)としても既知である)、マイクロチップインプラント、幹細胞治療、遺伝子交換療法、リボザイム遺伝子療法(低酸素応答要素用の遺伝子療法を含む、Oxford Biomedica;Lentipak、GENETIX;及びPDEF遺伝子療法、GenVec)、光受容体/網膜細胞移植(移植可能な網膜上皮細胞、Diacrin,Inc.;網膜細胞移植、Cell Genesys,Inc.を含む)、ならびに鍼、ならびにそれらの組み合わせを含む眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための療法または外科手技と組み合わせて投与され得る。
【0351】
いくつかの事例において、本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための抗血管形成剤と組み合わせて投与され得る。Carmeliet et al.Nature 407:249−257,2000により列挙されているものが含まれるが、これらに限定されない任意の好適な抗血管形成剤が、本発明の抗体と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、抗血管形成剤は、抗VEGF抗体(例えば、抗VEGF Fab LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、RTH−258(前ESBA−1008、抗VEGF一本鎖抗体フラグメント;Novartis)、または二重特異性抗VEGF抗体(例えば、抗VEGF/抗アンジオポエイチン(angiopoeitin)2二重特異性抗体、例えば、RG−7716;Roche))、可溶性組み換え受容体融合タンパク質(例えば、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト))、VEGF変異体、可溶性VEGFRフラグメント、VEGFまたはVEGFRを遮断することができるアプタマー(例えば、ペガプタニブ)、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤、抗VEGF DARPin(登録商標)(例えば、アビシパルペゴール)、VEGFまたはVEGFRの発現を阻害する小さな干渉RNA、VEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−(1−メチルピペリジン−4−イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)、4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン(pyrrolidin)−1−イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171)、バタラニブ(PTK787)、セマクサミニブ(semaxaminib)(SU5416;SUGEN)、及びSUTENT(登録商標)(スニチニブ))、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されないVEGFアンタゴニストである。いくつかの事例において、二重特異性抗VEGF抗体は、IL−1β;IL−6;IL−6R;PDGF(例えば、PDGF−BB);アンジオポエチン;アンジオポエチン2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、mbVEGFR、またはsVEGFR);ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;IL−8;CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10Aなどの加齢黄斑変性症(AMD)リスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質が含まれるが、これらに限定されない第2の生体分子に結合する。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。
【0352】
眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤と組み合わせて投与され得る他の好適な抗血管形成剤には、コルチコステロイド、血管形成抑制ステロイド、酢酸アネコルタブ、アンジオスタチン、エンドスタチン、チロシンキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤、インシュリン様成長因子−結合タンパク質3(IGFBP3)、間質由来因子(SDF−1)アンタゴニスト(例えば、抗SDF−1抗体)、色素上皮由来因子(PEDF)、ガンマ−セクレターゼ、デルタ様リガンド4、インテグリンアンタゴニスト、低酸素誘導因子(HIF)−1αアンタゴニスト、タンパク質キナーゼCK2アンタゴニスト、血管新生部位に対する幹細胞(例えば、内皮前駆細胞)ホーミングを阻害する薬剤(例えば、抗血管内皮カドヘリン(CD−144)抗体及び/または抗SDF−1抗体)、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0353】
いくつかの事例のさらなる例において、本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための、抗炎症性薬物、哺乳動物標的のラパマイシン(mTOR)阻害剤(例えば、ラパマイシン、AFINITOR(登録商標)(エベロリムス)、及びTORISEL(登録商標)(テムシロリムス))、シクロスポリン、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト(例えば、抗TNFα抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セトリズマブペゴール、及びゴリムマブ)、または可溶性受容体融合タンパク質(例えば、エタネルセプト))、抗補体薬剤、非ステロイド性抗炎症薬剤(NSAID)、またはそれらの組み合わせなどの血管新生に対する活性を有する薬剤と組み合わせて投与され得る。
【0354】
いくつかの事例のさらに別の例において、本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、神経保護性であり、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(ブランド名:PRASTERA(商標)及びFIDELIN(登録商標))、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩、及びプレグネノロン硫酸塩などの薬物を含む、「神経ステロイド」と呼ばれる薬物クラスなどの、乾燥AMDから滲出性AMDへの進行を低減する可能性があり得る薬剤と組み合わせて投与され得る。
【0355】
VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体(例えば、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、RTH−258(前ESBA−1008、抗VEGF一本鎖抗体フラグメント;Novartis)、もしくは二重特異性抗VEGF抗体(例えば、抗VEGF/抗アンジオポエイチン(angiopoeitin)2二重特異性抗体、例えば、RG−7716;Roche))、可溶性VEGF受容体融合タンパク質(例えば、EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト))、抗VEGF DARPin(登録商標)(例えば、アビシパルペゴール;Molecular Partners AG/Allergan)、または抗VEGFアプタマー(例えば、MACUGEN(登録商標)(ペガプタニブナトリウム));血小板由来成長因子(PDGF)アンタゴニスト、例えば、抗PDGF抗体、抗PDGFR抗体(例えば、REGN2176−3)、抗PDGF−BBペグ化アプタマー(例えば、FOVISTA(登録商標);Ophthotech/Novartis)、可溶性PDGFR受容体融合タンパク質、または二重PDGF/VEGFアンタゴニスト(例えば、小分子阻害剤(例えば、DE−120(Santen)またはX−82(TyrogeneX))または二重特異性抗PDGF/抗VEGF抗体));光線力学療法と組み合わされるVISUDYNE(登録商標)(ベルテポルフィン);抗酸化剤;補体システムアンタゴニスト、例えば、補体因子C5アンタゴニスト(例えば、小分子阻害剤(例えば、ARC−1905;Opthotech)もしくは抗C5抗体(例えば、LFG−316;Novartis)、プロパージンアンタゴニスト(例えば、抗プロパージン抗体、例えば、CLG−561;Alcon)、または補体D因子アンタゴニスト(例えば、抗補体D因子抗体、例えば、ランパリズマブ;Roche));視覚サイクル調節剤(例えば、エミクススタト塩酸塩);スクアラミン(例えば、OHR−102;Ohr Pharmaceutical);ビタミン及びミネラル補給剤(例えば、加齢性眼疾患研究1に記載されているもの(AREDS1;亜鉛及び/または抗酸化剤)及び研究2に記載されているもの(AREDS2;亜鉛、抗酸化剤、ルテイン、ゼアキサンチン、及び/またはオメガ−3脂肪酸));細胞療法、例えば、NT−501(Renexus);PH−05206388(Pfizer)、huCNS−SC細胞移植(幹細胞)、CNTO−2476(Janssen)、OpRegen(Cell Cure Neurosciences)、またはMA09−hRPE細胞移植(Ocata Therapeutics);組織因子アンタゴニスト(例えば、hI−con1;Iconic Therapeutics);アルファ−アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、ブリモニジン酒石酸塩);ペプチドワクチン(例えば、S−646240;Shionogi);アミロイドベータアンタゴニスト(例えば、抗ベータアミロイドモノクローナル抗体、例えば、GSK−933776);S1Pアンタゴニスト(例えば、抗S1P抗体、例えば、iSONEP(商標);Lpath Inc);ROBO4アンタゴニスト(例えば、抗ROBO4抗体、例えば、DS−7080a;Daiichi Sankyo);エンドスタチン及びアンジオスタチンを発現させるレンチウイルスベクター(例えば、RetinoStat);ならびにそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない任意の好適なAMD療法剤が、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤と組み合わせて追加の療法剤として投与され得る。いくつかの事例において、AMD療法剤(前述のAMD療法剤のうちのいずれかを含む)は、同時に製剤化され得る。例えば、抗PDGFR抗体REGN2176−3は、アフリベルセプト(EYLEA(登録商標))と同時に製剤化され得る。いくつかの事例において、かかる同時製剤は、本発明の抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0356】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のためのLUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)と組み合わせて投与され得る。LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)は、例えば、硝子体内注入により0.3mg/目または0.5mg/目で、例えば、毎月投与され得る。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0357】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のためのEYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)は、例えば、硝子体内注入により2mg/目で、例えば、4週間毎に(Q4W)投与され得るか、または最初の3か月間はQ4Wで投与され得、その後は、維持のために2ヶ月に1回注入される。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0358】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のためのMACUGEN(登録商標)(ペガプタニブナトリウム)と組み合わせて投与され得る。MACUGEN(登録商標)(ペガプタニブナトリウム)は、例えば、6週間毎に硝子体内注入により0.3mg/目で投与され得る。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0359】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための光線力学療法と組み合わせてVISUDYNE(登録商標)(ベルテポルフィン)と組み合わせて投与され得る。VISUDYNE(登録商標)は、例えば、任意の好適な用量(例えば、体表面積の6mg/m
2)で静脈点滴により投与され、3ヶ月に1回送達され得る(例えば、10分を超える点滴)。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0360】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のためのPDGFアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。本発明の抗体と組み合わせて使用され得る例示的なPDGFアンタゴニストには、抗PDGF抗体、抗PDGFR抗体、小分子阻害剤(例えば、スクアラミン)、FOVISTA(登録商標)(E10030;Ophthotech/Novartis)などの抗PDGF−Bペグ化アプタマー、または二重PDGF/VEGFアンタゴニスト(例えば、小分子阻害剤(例えば、DE−120(Santen)もしくはX−82(TyrogeneX))、または二重特異性抗PDGF/抗VEGF抗体)が含まれる。例えば、FOVISTA(登録商標)は、本発明の抗体の補助療法剤として投与され得る。FOVISTA(登録商標)は、任意の好適な用量、例えば、0.1mg/目〜2.5mg/目、例えば、0.3mg/目または1.5mg/目で、例えば、硝子体内注入により、例えば、4週間毎に(Q4W)投与され得る。OHR−102(乳酸スクアラミン点眼液、0.2%)は、目薬により、例えば、1日2回投与され得る。OHR−102は、LUCENTIS(登録商標)またはEYLEA(登録商標)などのVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、OHR−102、LUCENTIS(登録商標)、及び/またはEYLEA(登録商標)と組み合わせて投与され得る。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0361】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のためのRTH−258と組み合わせて投与され得る。RTH−258は、例えば、硝子体内注入または目の点滴により投与され得る。硝子体内注入に関して、RTH−258は、任意の好適な用量(例えば、3mg/目または6mg/目)で、例えば、最初の3か月間は4週間に1回(Q4W)ローディングとして投与され得、その後は、維持のために12週毎(Q12W)または8週毎に(Q8W)注入される。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0362】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のためのアビシパルペゴールと組み合わせて投与され得る。アビシパルペゴールは、例えば、硝子体内注入により投与され得る。アビシパルペゴールは、任意の好適な用量(例えば、1mg/目、2mg/目、3mg/目、4mg/目、または4.2mg/目)で、例えば、最初の3か月間は4週間に1回(Q4W)ローディングとして投与され得、その後は、維持のために12週毎(Q12W)または8週毎に(Q8W)注入される。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0363】
VEGFアンタゴニスト(例えば、LUCENTIS(登録商標)またはEYLEA(登録商標))、コルチコステロイド(例えば、コルチコステロイドインプラント(例えば、OZURDEX(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)またはILUVIEN(登録商標)(フルオシノロンアセトニド硝子体内インプラント))、または硝子体内注入による投与のために製剤化されたコルチコステロイド(例えば、トリアムシノロンアセトニド))、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない、任意の好適なDME及び/またはDR療法剤が、眼の障害(例えば、AMD、DME、DR、またはRVO)の治療のための本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤と組み合わせて投与され得る。いくつかの事例において、眼の障害は、DME及び/またはDRである。
【0364】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、DME及び/またはDR(例えば、NPDRまたはPDR)の治療のためのLUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)と組み合わせて投与され得る。LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)は、例えば、硝子体内注入により0.3mg/目または0.5mg/目、例えば、4週間毎に(Q4W)で投与され得る。
【0365】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、DME及び/またはDR(例えば、NPDRまたはPDR)の治療のためのEYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。EYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)は、例えば、硝子体内注入により2mg/目で、例えば、4週間毎に(Q4W)投与され得るか、または最初の5か月間はQ4Wで投与され得、その後は、維持のために8週間に1回(Q8W)注入される。
【0366】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、DME及び/またはDRの治療のためのOZURDEX(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)と組み合わせて投与され得る。OZURDEX(登録商標)は、0.7mgのデキサメタゾン硝子体内インプラントとして投与され得、これは、最大6ヶ月毎に投与され得る。
【0367】
本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤は、DME及び/またはDRの治療のためのILUVIEN(登録商標)(デキサメタゾン硝子体内インプラント)と組み合わせて投与され得る。OZURDEX(登録商標)は、0.19mgのフルオシノロンアセトニド硝子体内インプラントとして投与され得、これは、0.25μg/日の速度で溶出され得、最大約36ヶ月継続され得る。
【0368】
いくつかの場合において、TAO/PRN治療レジメンまたはTAE治療レジメンは、本発明の抗体、またはそれらの抗体複合体、融合タンパク質、及び/もしくは高分子製剤と組み合わせて、AMD療法剤(例えば、ラニビズマブまたはアフリベルセプト)を投与するために使用され得る。TAO/PRNレジメンに関して、4週間毎(Q4W)(典型的には約3ヶ月間)の最初の硝子体内注入の後、対象は、毎月または隔月(または、より長い間隔をもって)監視され、疾患活動性(例えば、視力の減退または光干渉断層撮影画像(OCT)上の流体)の徴候があると注入が施される。TAEレジメンに関して、対象は、4週間毎に(Q4W)治療され得、その後は、後の往診の各々に関して、決められた週の数(例えば、+2週)だけ最大の間隔(例えば、6週間毎、8週間毎、10週間毎、または12週間毎)まで治療の間隔を伸ばす。目(複数可)は、疾患活動性の徴候が無くても各往診において観察及び治療され得る。網膜黄斑が、滲出しているように見えた場合(例えば、OCTにより)、注入の間隔は、網膜黄斑が再び乾燥しているように見えるまで、短縮され得る(例えば、−2週)。いくつかの事例において、眼の障害は、AMD(例えば、滲出性AMD)である。
【0369】
上述されるかかる併用療法は、併用投与(同じかまたは別々の製剤中に2つ以上の療法剤が含まれる場合)及び別々の投与を包含し、別々の投与の場合、本発明の抗体の投与は、追加の療法剤(複数可)の投与前、投与と同時に、かつ/または投与後に行われ得る。一実施形態において、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤の投与及び追加の療法剤の投与は、互いに、約1、2、3、4、もしくは5ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。本発明の抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤は、放射線療法と組み合わせても使用され得る。
【0370】
眼の疾患または状態の予防または治療のための本発明の抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤(及び、任意の追加の療法剤)は、例えば、経眼的、眼内、及び/もしくは硝子体内注入、及び/もしくは強膜近傍注入、及び/もしくはテノン嚢下注入、及び/もしくは超脈絡膜注入、ならびに/または目薬及び/もしくは軟膏の形態での局所的な投与が含まれるが、これらに限定されない任意の好適な手段により投与され得る。本発明のかかる抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤は、多様な方法、例えば、Intraocular Drug Delivery,Jaffe,Jaffe,Ashton,and Pearson,editors,Taylor&Francis(March 2006)などの参照文献に記載されているものを含む、化合物が硝子体にゆっくりと放出されるのを可能にするデバイス及び/またはデポにより硝子体内に送達され得る。一例において、デバイスは、長時間にわたって化合物を放出するミニポンプ及び/またはマトリックス及び/または受動拡散系及び/または封入細胞の形態であり得る(Intraocular Drug Delivery,Jaffe,Jaffe,Ashton,and Pearson,editors,Taylor&Francis(March 2006)。使用され得る追加の手法は、以下のKの項に記載される。
【0371】
経眼的、眼内、または硝子体内投与のための製剤は、当該技術分野における既知の方法及び賦形剤を使用することにより調製され得る。有効な治療の重要な特徴は、目を通過する適切な浸透である。目の前方の疾患とは違い、薬物が局所的に送達され得る場合、網膜疾患は典型的には、より部位に特異的な手法から利益を得る。目薬及び軟膏は、目の後方にめったに浸透することはなく、血液眼バリアが、全身に投与された薬物が眼の組織中に浸透するのを妨げる。したがって、AMD及びCNVなどの網膜疾患を治療するための薬物送達の選択方法は典型的には、硝子体内直接注入である。硝子体内注入の間隔は通常、患者の状態、ならびに送達される薬物の特性及び半減期に応じて繰り返される。使用され得る追加の手法は、以下のKの項に記載される。
【0372】
特定の眼の障害または状態の治療に有効になるであろう抗体、その抗体変異体、その抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤の量は、障害または状態の性質に依存し、標準的な臨床技法により決定され得る。可能な場合、最初にインビトロで、次いで、有用な動物モデル系で用量応答曲線及び本発明の薬学的組成物を決定し、その後ヒトで試験することが望ましい。
【0373】
追加の好適な投与手段には、非経口的、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所的治療が所望される場合は、病巣内投与が含まれる。非経口点滴には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が短時間であるか慢性的であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注入などの注入によるものであり得る。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス点滴を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。いくつかの事例において、本発明の抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤は、静脈内に、筋肉内に、皮内に、経皮的に(percutaneously)、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹腔内に、腹膜内に、脳室内に、皮下に、結膜下に、肺胞内に、粘膜内に、心膜内に、臍帯内に(intraumbilically)、眼窩内に、口腔内に、局所的に、経皮的に(transdermally)、吸入により、注入により、インプラントにより、点滴により、連続点滴により、標的細胞に直接的に流す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームで、または脂質組成物で投与され得る。
【0374】
疾患の予防または治療に関して、本発明の抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤の適切な投与量(単独で、または1つ以上の他の追加の療法剤と組み合わせて使用されるとき)は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的または療法目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に応じる。抗体、抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤は好適には、1回で、または一連の治療にわたって患者に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.4mg/kg、0.6mg/kg、0.8mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kg)の抗体が、例えば、1回以上の別々の投与によるかまたは連続点滴によるかどうかに関わらず、患者への投与のための最初の候補投与量になり得る。いくつかの実施形態において、使用される抗体は、約0.01mg/kg〜約45mg/kg、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約35mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約25mg/kg、約0.01mg/kg〜約20mg/kg、約0.01mg/kg〜約15mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、または約0.01mg/kg〜約1mg/kgである。1つの典型的な1日投与量は、上述される要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲になり得る。状態に応じて数日間以上にわたって繰り返される投与に関して、治療は概して、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるであろう。
【0375】
いくつかの実施形態において、本方法は、追加の療法をさらに含み得る。追加の療法は、放射線療法、手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウィルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述のものの組み合わせであり得る。追加の療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態において、追加の療法は、小分子酵素阻害剤または抗点転移薬剤の投与である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、副作用制限薬剤(例えば、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤など)の投与である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態において、追加の療法は、ガンマ照射である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、上述される療法剤のうちの1回以上の別々の投与であり得る。
【0376】
上記の製剤または治療方法のうちのいずれも、抗VEGF抗体の代わりに、またはそれに加えて本発明の免疫複合体を使用して行われ得ることが理解される。
【0377】
上記の製剤または治療方法のうちのいずれも、抗VEGF抗体の代わりに、またはそれに加えて本発明(例えば、本明細書に記載されるいずれにおいても、例えば、以下のKの項)の抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤を使用して行われ得ることが理解される。
【0378】
I.製造物品
本発明の別の態様において、上述される障害の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含有する製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器上または容器に関連付けられるラベルもしくは添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。容器は、それ自体によるか、または別の組成物と組み合わせて、状態の治療、予防、及び/または診断に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈注射溶液バッグまたは皮下注入針により貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選択した状態を治療するために使用されることを示す。さらに、製造物品は、(a)本発明の抗体を含む組成物をその中に収容した第1の容器、及び(b)さらなる細胞傷害性薬剤、さもなければ療法剤を含む組成物をその中に収容した第2の容器を含み得る。本発明のこの実施形態における製造物品は、組成物が、特定の状態を治療するために使用され得ることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは、またはさらに、製造物品は、注入用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または、第3)の容器をさらに備え得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0379】
上記の製造物品のうちのいずれも、抗VEGF抗体の代わりに、またはそれに加えて本発明の免疫複合体を含み得ることが理解される。
【0380】
上記の製造物品のうちのいずれも、抗VEGF抗体の代わりに、またはそれに加えて本発明の抗体複合体、融合タンパク質、または高分子製剤を含み得ることが理解される。
【0381】
J.抗体変異体を特定する方法及び抗体を改善する方法
本発明は、抗体を改善する方法及び抗体変異体を特定する方法を提供する。いくつかの事例において、本方法は、抗体の標的分子への増強された結合を付与する1つ以上のアミノ酸残基改変を特定することを伴う。いくつかの事例において、本方法は、抗体の増強された安定性(例えば、熱安定性)、機能発現、及び/またはタンパク質折り畳みを付与する1つ以上のアミノ酸残基改変を特定することを伴う。いくつかの事例において、本発明は、抗体の標的分子への結合親和性を改善する方法を提供する。いくつかの事例において、本発明は、抗体の安定性(例えば、熱安定性)、機能発現、及び/またはタンパク質折り畳みを改善する方法を提供する。いくつかの事例において、本発明は、抗体の標的分子への結合親和性を改善する方法及び抗体の安定性(例えば、熱安定性)を改善する方法を提供する。
【0382】
例えば、本発明は、以下のステップ:(a)候補抗体変異体をコードする核酸を含むディスプレイライブラリーであって、各候補抗体変異体が、参照抗体と比較してVHまたはVL内にアミノ酸残基改変を含み、VHまたはVLの全ての位置のアミノ酸残基改変が、ディスプレイライブラリー中に存在する、ディスプレイライブラリーを提供すること、(b)候補抗体変異体の標的分子への結合に基づいてディスプレイライブラリーを分類して、参照抗体と比較して標的分子への増強された結合を有する候補抗体変異体を含む分類されたライブラリーを形成すること、及び(c)超並列配列決定法により決定される、各アミノ酸残基改変がディスプレイライブラリー中に存在する頻度と分類されたライブラリー中に存在する頻度とを比較し、それにより各アミノ酸残基改変が、ディスプレイライブラリーと比較して分類されたライブラリー中で濃縮されているかどうかを決定することにより、アミノ酸残基改変が、ディスプレイライブラリーと比較して分類されたライブラリー中で濃縮されている場合、標的分子への増強された結合を付与するものとして特定されること、のうちの1つ以上(例えば、1、2、または3)を伴う、抗体の標的分子への増強された結合を付与するアミノ酸残基改変を特定する方法を提供する。いくつかの事例において、本方法は、例えば、以下に記載されるように、抗体に増強された安定性を付与するアミノ酸残基を特定することをさらに含む。
【0383】
別の例において、本発明は、以下のステップ:(a)候補抗体変異体をコードする核酸を含むディスプレイライブラリーであって、各候補抗体変異体が、参照抗体と比較してVHまたはVL内にアミノ酸残基改変を含み、VHまたはVLの全ての位置のアミノ酸残基改変が、ディスプレイライブラリー中に存在する、ディスプレイライブラリーを提供すること、(b)候補抗体変異体の標的分子への結合に基づいてディスプレイライブラリーを分類して、参照抗体と比較して増強された安定性有する候補抗体変異体を含む分類されたライブラリーを形成すること、及び(c)超並列配列決定法により決定される、各アミノ酸残基改変がディスプレイライブラリー中に存在する頻度と分類されたライブラリー中に存在する頻度とを比較し、それにより各アミノ酸残基改変が、ディスプレイライブラリーと比較して分類されたライブラリー中で濃縮されているかどうかを決定することにより、アミノ酸残基改変が、ディスプレイライブラリーと比較して分類されたライブラリー中で濃縮されている場合、抗体に増強された安定性を付与するものとして特定されること、のうちの1つ以上(例えば、1、2、または3)を伴う、抗体に増強された安定性を付与するアミノ酸残基改変を特定する方法を提供する。いくつかの事例において、本方法は、例えば、上述されるように、抗体の標的分子への増強された結合を付与するアミノ酸残基を特定することをさらに含む。
【0384】
前述の方法のうちのいずれも、ステップ(b)後、超並列配列決定法により、各アミノ酸改変が、ディスプレイライブラリー及び分類されたライブラリー中に存在する頻度を決定することをさらに含み得る。
【0385】
いくつかの事例において、アミノ酸残基改変は、ディスプレイライブラリーと比較して分類されたライブラリー中で少なくとも2倍濃縮され得る。例えば、アミノ酸残基改変は、ディスプレイライブラリーと比較して、分類されたライブラリー中で1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、14倍、16倍以上濃縮され得る。
【0386】
ディスプレイライブラリーは、任意の好適な数の抗体変異体、例えば、約1×10
3〜約1×10
12個以上(例えば、約1×10
3、約1×10
4、約1×10
5、約1×10
6、約1×10
7、約1.5×10
7、約2.5×10
7、約1×10
8、約5×10
8、約1×10
9、約5×10
9、約1×10
10、約1×10
11、約1×10
12個以上)の抗体変異体を含み得る。いくつかの実施形態において、ディスプレイライブラリーは、約3×10
9個の抗体変異体を含み得る。他の実施形態において、ディスプレイライブラリーは、約8×10
8個の抗体変異体を含み得る。
【0387】
前述の方法のうちのいずれにおいても、アミノ酸残基改変は、任意の好適なコドンセットによりコードされ得る。例えば、いくつかの事例において、アミノ酸残基改変は、縮重コドンセットによりコードされる。選択のアミノ酸をテンプレート核酸に置換する方法は、当該技術分野においてしっかりと確立されており、そのいくつかは本明細書に記載される。米国特許第7,985,840号も参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、上述されるようなまたは以下の実施例の項に記載されるようなライブラリーは、クンケル法を使用して変異体アミノ酸でのアミノ酸置換により作製され得る。例えば、Kunkel et al.,Methods Enzymol.154:367−382,1987を参照されたい。
【0388】
アミノ酸残基改変は、任意の好適なコドンセットによりコードされ得る。コドンセットは、所望の変異体アミノ酸をコードするために使用される異なるヌクレオチド三連配列のセットである。コドンセットは、IUBコードに従って、以下に示されるように、特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの等モル混合物を表記するための記号を使用して表わされ得る。
IUBコード
G グアニン
A アデニン
T チミン
C シトシン
R(AまたはG)
Y(CまたはT)
M(AまたはC)
K(GまたはT)
S(CまたはG)
W(AまたはT)
H(AまたはCまたはT)
B(CまたはGまたはT)
V(AまたはCまたはG)
D(AまたはGまたはT)
N(AまたはCまたはGまたはT)
【0389】
例証的な例として、コドンセットDVKにおいて、Dは、ヌクレオチドAまたはGまたはTであり得、Vは、AまたはGまたはCであり得、Kは、GまたはTであり得る。このコドンセットは、18個の異なるコドンを呈示し得、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Ser、Arg、Asp、Glu、Gly、及びCysをコードし得る。
【0390】
オリゴヌクレオチドまたはプライマーセットは、標準的な方法を使用して合成され得る。オリゴヌクレオチドのセットは、例えば、コドンセットにより提供されるヌクレオチド三連配列の可能性のある全ての組み合わせを表し、所望のアミノ酸群をコードするであろう配列を含む固相合成法により合成され得る。ある特定の位置において選択されたヌクレオチド「縮退」を有するオリゴヌクレオチドの合成は、当該技術分野において周知されている。ある特定のコドンセットを有するかかるヌクレオチドのセットは、市販の核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems,Foster City,Califから入手可能である)を使用して合成され得るか、または市販されているものから得ることができる(例えば、Life Technologies,Rockville,Mdから)。したがって、特定のコドンセットを有する合成されたオリゴヌクレオチドのセットは典型的には、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含み、この差異は、全体的な配列内のコドンセットにより確立される。本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸テンプレートに対するハイブリダイゼーションを可能にし、クローニングの目的のための制限酵素部位も含み得る配列を有する。
【0391】
前述の方法のうちのいずれにおいても、縮重コドンセットは、アミノ酸残基改変をコードするために使用され得る。いくつかの事例において、縮重コドンセットは、NNKまたはNNSコドンセットであり、Nは、A、C、G、またはTであり、Kが、GまたはTであり、Sが、CまたはGである。特定の事例において、縮重コドンセットは、NNKコドンセットである。
【0392】
当該技術分野において既知であるか、または本明細書に記載される任意の好適なディスプレイ手法は、前述の方法のうちのいずれかと併用して使用され得ることを理解されたい。例えば、この方法は、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物ディスプレイ、リボソームディスプレイ、及び/またはmRNAディスプレイを伴い得る。前述の方法のうちのいずれにおいても、任意の好適なディスプレイライブラリーが使用され得る。例えば、ディスプレイライブラリーは、ファージディスプレイライブラリー、細菌ディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、哺乳動物ディスプレイライブラリー、リボソームディスプレイライブラリー、及びmRNAディスプレイライブラリーからなる群から選択され得る。特定の実施形態において、ディスプレイライブラリーは、ファージディスプレイライブラリーである。
【0393】
抗体可変ドメインの融合ポリペプチドは、多様な形式の細胞、ウィルス、ファージミド、または他の粒子の表面上にディスプレイされ得る。これらの形式は、例えば、scFv、Fab、及びこれらのフラグメントの多価形態を含む。多価形態は、ScFv、Fab、またはFab’の二量体であり得、本明細書において、それぞれ(ScFv)
2、Fab
2、及びF(ab’)
2と称される。例えば、特許公開第WO92/01047号及び本明細書に記載されるような、抗体フラグメントを含む融合ポリペプチドを、バクテリオファージの表面上にディスプレイするための方法が、当該技術分野において周知されている。他の特許公報、例えば、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、及びWO93/19172は、関連方法を記載している。他の公報は、ファージの表面上にディスプレイされた多様な抗原に対して人工的に再配列されているV遺伝子レパートリーを有する抗体の特定を示している(例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.227:381−388,1992を参照されたく、かつWO93/06213及びWO93/11236に開示されているようなもの)。
【0394】
前述の方法のうちのいずれにおいても、ディスプレイライブラリーは、分類(選択)及び/またはスクリーニングされて、例えば、抗原への高親和性結合体が特定され得る。分類することは、本明細書に記載されるように、または当該技術分野において既知の他の手法により実施され得る。例えば、米国特許第7,985,840号を参照されたい。いくつかの実施形態において、分類することは、ディスプレイライブラリーを固定化抗原(例えば、標的分子またはそれらのエピトープ)と接触させることを伴い得る。他の実施形態において、分類することは、ディスプレイライブラリーを可溶性抗原と接触させることを伴い得る。選択された抗体変異体は、さらにスクリーニングされて、抗体変異体を結合親和性(例えば、SPRにより)、安定性、折り畳み、構造(例えば、X線結晶学により)、または他の特質の観点で特徴付けられ得る。
【0395】
前述の方法のうちのいずれも、例えば、未分類のライブラリー中にアミノ酸残基改変が現れる頻度と比較して、分類後のライブラリー(分類されたライブラリーと称される)中にアミノ酸残基改変が現れる頻度を決定するために超並列配列決定法を伴い得る。超並列配列決定法のための幅広い多様な手法が当該技術分野において既知であり、任意の好適な手法が本発明の方法で使用され得る。例えば、Metzker,Nature Reviews Genetics11:31−36,2010を参照されたく、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。例示的な手法には、超並列署名配列決定法(MPSS)、ポロニー配列決定法、パイロ配列決定法(454/Roche Diagnostics)、イオン半導体配列決定法、単一分子リアルタイム配列決定法、合成配列決定法、ライゲーション配列決定法が含まれる。市販されている超並列配列決定法基盤は、Roche Diagnostics及び他の会社から入手可能である。配列決定法は、ディープ配列決定法、超ディープ配列決定法、及び/または次世代配列決定法であり得る。
【0396】
前述の方法のうちのいずれにおいても、この方法は、少なくとも約100,000リード以上(例えば、100,000リード、200,000リード、300,000リード、400,000リード、500,000リード、600,000リード、700,000リード、800,000リード、900,000リード、1,000,000リード、2×10
6個のリード、3×10
6個のリード、4×10
6個のリード、5×10
6個のリード、6×10
6個のリード、7×10
6個のリード、8×10
6個のリード、9×10
6個のリード、10
7個のリード、10
8個のリード、10
9個のリード、または10
10個以上のリード)の配列を決定することを伴い得る。この方法は、任意の好適な深さで配列決定法を伴い得る。
【0397】
前述の方法のうちのいずれにおいても、本抗体は、モノクローナル抗体であり得る。前述の方法のうちのいずれにおいても、本抗体は、IgG抗体であり得る。前述の方法のうちのいずれにおいても、本抗体は、抗体フラグメントであり得る。抗体フラグメントは、Fab、scFv、Fv、Fab’、Fab−C、Fab’−SH、F(ab’)
2、及びダイアボディからなる群から選択され得る。特定の事例において、抗体フラグメントは、Fabである。
【0398】
前述の方法のうちのいずれにおいても、二特異性抗体は、モノクローナル抗体であり得る。前述の方法のうちのいずれにおいても、二特異性抗体は、IgG抗体であり得る。前述の方法のうちのいずれにおいても、二特異性抗体は、抗体フラグメントであり得る。抗体フラグメントは、Fab、scFv、Fv、Fab−C、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、及びダイアボディからなる群から選択され得る。特定の事例において、抗体フラグメントは、Fabである。
【0399】
前述の方法のうちのいずれも、本方法のステップにより特定された抗体を生成することをさらに伴い得る。上述される方法は、本明細書に記載される抗体のうちのいずれかと共に使用され得る。
【0400】
K.抗VEGF抗体の経眼的長時間作用性送達手法
本発明は、目への抗VEGF抗体(本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体を含む、例えば、G6.31AARR)の長時間作用性送達のために使用され得る、眼の障害の治療のための組成物を提供する。例えば、本発明は、本明細書に記載される抗VEGF抗体を含む抗体複合体(例えば、FabまたはFab−C抗体複合体)を提供する。本発明は、融合タンパク質(例えば、Fab融合タンパク質)も提供する。他の態様において、本発明は、本明細書に記載される抗VEGF抗体を含む製剤(例えば、高分子製剤)を提供する。本発明は、本明細書に記載される抗VEGF抗体の経眼的投与のために使用され得るデバイスも提供する。本発明は、本明細書に記載される抗体複合体、融合タンパク質、及び/または製剤(例えば、高分子製剤)を含む薬学的組成物をさらに提供する。これらの組成物は、本明細書に記載される治療方法、例えば、眼の障害(例えば、AMD(例えば、滲出性AMD)、DME、DR(例えば、NPDRまたはPDR)、またはRVO(例えば、CRVOまたはBRVO))を治療する方法のうちのいずれかで使用され得る。
【0401】
1.抗体複合体
本発明は、抗VEGF抗体及び本抗体に共有結合されるポリマーを含む抗体複合体を提供する。抗VEGF抗体は、不可逆的な様式または可逆的な様式でポリマーに共有結合され得る。本明細書に記載されるものまたは当該技術分野において既知の他のものを含む任意の好適なポリマーが使用され得る。ポリマーは、親水性ポリマーまたは疎水性ポリマーであり得る。親水性ポリマーが水溶性ポリマーであり得ることを理解されたい。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2011/066417号及び/またはPelegri−O’Day et al.J.Am.Chem.Soc.136:14323−14332,2014に記載されている親水性ポリマーなどの任意の好適な親水性ポリマーが使用され得る。使用され得る例示的で非限定的な親水性ポリマーには、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG、ポリ(エチレングリコール)としても既知である)(例えば、直鎖PEG、分岐状PEG、櫛状PEG、及び樹状PEG)、ポリ[エチレンオキシド)−コ−(メチレンエチレンオキシド)]、ポリ(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)(pPEGMA)、アガロース、アルギン酸塩、カラゲナン、カルボキシメチルセルロース、セルロース、セルロース誘導体、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、コラーゲン、デルマタン硫酸塩、デキストラン、デキストラン硫酸塩、フィブリン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、フコイダン、ゼラチン、グリコサミノグリカン(GAG)、グリコポリマー、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、高度分岐状多糖類(例えば、ガラクトースデンドリマー)、ケラタン硫酸塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(pHPMA)、ペクチン、ペクチン誘導体、ペントサンポリ硫酸塩、デンプン、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、スチレン、ビトロネクチン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、多価電解質、ポリ(グルタミン酸)(PGA)、ポリ(グリセロール)(PG)(例えば、線状、中官能性、超分岐状、または線状超分岐状PG)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(2−オキサゾリン)(POZ)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン、ポリシアル酸(PSA)、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体(例えば、荷電ポリスチレン誘導体)、ポリ(スチレンスルホン酸塩−コ−PEGMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)(pNAcM)、及びそれらのコポリマーが含まれる。いくつかの事例において、ポリマーは、疎水性ポリマー、例えば、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、及びポリグリコリド(PGA)である。ポリマーは、生分解性及び/または生体適合性であり得る。
【0402】
例として、ポリマーは、例えば、2〜約1×10
4個(例えば、約10、約50、100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約2000、約3000、約4000、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、または約1x10
4個)以上のモノマーの任意の好適な数のモノマーを含み得る。例えば、ポリマーは、約50〜約250個のモノマー、約50及び約500個のモノマー、約50〜約1000個のモノマー、約50〜約2000個のモノマー、約50〜約3000個のモノマー、約50〜約4000個のモノマー、約50〜約5000個のモノマー、約50〜約6000個のモノマー、約50〜約7000個のモノマー、約50〜約8000個のモノマー、約50〜約9000個のモノマー、約50〜約10000個のモノマー、約100〜約250個のモノマー、約100及び約500個のモノマー、約100〜約1000個のモノマー、約100〜約2000個のモノマー、約100〜約3000個のモノマー、約100〜約4000個のモノマー、約100〜約5000個のモノマー、約100〜約6000個のモノマー、約100〜約7000個のモノマー、約100〜約8000個のモノマー、約100〜約9000個のモノマー、約100〜約10000個のモノマー、約250〜約500個のモノマー、約250〜約1000個のモノマー、約250〜約2000個のモノマー、約250〜約3000個のモノマー、約250〜約4000個のモノマー、約250〜約5000個のモノマー、約250〜約6000個のモノマー、約250〜約7000個のモノマー、約250〜約8000個のモノマー、約250〜約9000個のモノマー、約250〜約10000個のモノマー。約500〜約1000個のモノマー、約500〜約2000個のモノマー、約500〜約3000個のモノマー、約500〜約4000個のモノマー、約500〜約5000個のモノマー、約500〜約6000個のモノマー、約500〜約7000個のモノマー、約500〜約8000個のモノマー、約500〜約9000個のモノマー、または約500〜約10000個のモノマーを含み得る。いくつかの事例において、ポリマーは、約500個のモノマーを含み得る。
【0403】
本発明は、HAポリマーに共有結合される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)を含む抗体複合体を提供する。かかる抗体複合体は、本明細書において「HA複合体」と称される場合がある。いくつかの事例において、HAポリマーは、約2.5メガダルトン(MDa)以下(例えば、約2.5MDa以下、約2.4MDa以下、約2.3MDa以下、約2.2MDa以下、約2.1MDa以下、約2.0MDa以下、約1.9MDa以下、約1.8MDa以下、約1.7MDa以下、約1.6MDa以下、約1.5MDa以下、約1.4MDa以下、約1.3MDa以下、約1.2MDa以下、約1.1MDa以下、約1.0MDa以下、約900kDa以下、約800kDa以下、約700kDa以下、約600kDa以下、約500kDa以下、約400kDa以下、約300kDa以下、約200kDa以下、または約100kDa以下)の分子量を有する。いくつかの事例において、HAポリマーは、約1MDa以下(例えば、約1.0MDa以下、約900kDa以下、約800kDa以下、約700kDa以下、約600kDa以下、約500kDa以下、約400kDa以下、約300kDa以下、約200kDa以下、または約100kDa以下)の分子量を有する。いくつかの事例において、HAポリマーは、約25kDa〜約2.5MDa(例えば、約25kDa〜約2.5mDa、約25kDa〜約2MDa、約25kDa〜約1.5MDa、約25kDa〜約1MDa、約25kDa〜約900kDa、約25kDa〜約800kDa、約25kDa〜約700kDa、約25kDa〜約600kDa、約25kDa〜約500kDa、約100kDa〜約2.5MDa、約100kDa〜約2MDa、約100kDa〜約1.5MDa、約100kDa〜約1MDa、約100kDa〜約900kDa、約100kDa〜約800kDa、約100kDa〜約700kDa、約100kDa〜約600kDa、約100kDa〜約500kDa、約250kDa〜約2.5MDa、約250kDa〜約2MDa、約250kDa〜約1.5MDa、約250kDa〜約1MDa、約250kDa〜約900kDa、約250kDa〜約800kDa、約250kDa〜約700kDa、約250kDa〜約600kDa、約250kDa〜約500kDa、約500kDa〜約2.5MDa、約500kDa〜約2MDa、約500kDa〜約1.5MDa、約500kDa〜約1MDa、約500kDa〜約900kDa、約500kDa〜約800kDa、約500kDa〜約700kDa、約500kDa〜約600kDa、約1MDa〜約2.5MDa、約1MDa〜約2MDa、約1MDa〜約1.5MDa、約1MDa〜約1.25MDa、約1.25MDa〜約2.5MDa、約1.25MDa〜約2MDa、約1.25MDa〜約1.5MDa、約1.5MDa〜約2.5MDa、約1.5MDa〜約2MDa、約1.5MDa〜約1.75MDa、または1.75MDa〜約2.5MDa)の分子量を有する。
【0404】
いくつかの事例において、HAポリマーは、約25kDa〜約500kDa(例えば、約25kDa〜約500kDa、約25kDa〜約450kDa、約25kDa〜約400kDa、約25kDa〜約350kDa、約25kDa〜約300kDa、約25kDa〜約300kDa、約25kDa〜約250kDa、約25kDa〜約200kDa、約25kDa〜約150kDa、約25kDa〜約100kDa、約25kDa〜約50kDa、約40kDa〜約500kDa、約40kDa〜約450kDa、約40kDa〜約400kDa、約40kDa〜約350kDa、約40kDa〜約300kDa、約40kDa〜約300kDa、約40kDa〜約250kDa、約40kDa〜約200kDa、約40kDa〜約150kDa、約40kDa〜約100kDa、約40kDa〜約50kDa、約50kDa〜約500kDa、約50kDa〜約450kDa、約50kDa〜約400kDa、約50kDa〜約350kDa、約50kDa〜約300kDa、約50kDa〜約300kDa、約50kDa〜約250kDa、約50kDa〜約200kDa、約50kDa〜約150kDa、約50kDa〜約100kDa、約50kDa〜約75kDa、約100kDa〜約500kDa、約100kDa〜約450kDa、約100kDa〜約400kDa、約100kDa〜約350kDa、約100kDa〜約300kDa、約100kDa〜約300kDa、約100kDa〜約250kDa、約100kDa〜約200kDa、約100kDa〜約150kDa、約150kDa〜約500kDa、約150kDa〜約450kDa、約150kDa〜約400kDa、約150kDa〜約350kDa、約150kDa〜約300kDa、約150kDa〜約300kDa、約150kDa〜約250kDa、約150kDa〜約200kDa、約175kDa〜約500kDa、約175kDa〜約450kDa、約175kDa〜約400kDa、約175kDa〜約350kDa、約175kDa〜約300kDa、約175kDa〜約300kDa、175 200kDa〜約250kDa、約175kDa〜約225kDa、約200kDa〜約500kDa、約200kDa〜約450kDa、約200kDa〜約400kDa、約200kDa〜約350kDa、約200kDa〜約300kDa、約200kDa〜約300kDa、約200kDa〜約250kDa、または約200kDa〜225kDa)の分子量を有する。
【0405】
いくつかの事例において、HAポリマーは、約100kDa〜約250kDa(例えば、約100kDa、約110kDa、約120kDa、約130kDa、約140kDa、約150kDa、約160kDa、約170kDa、約180kDa、約190kDa、約200kDa、約210kDa、約220kDa、約230kDa、約240kDa、または約250kDa)の分子量を有する。特定の事例において、HAポリマーは、約200kDaの分子量を有する。
【0406】
前述の分子量のうちのいずれも、重量平均分子量(重量平均分子質量としても既知である)であり得る。
【0407】
いくつかの事例において、前述のHAポリマーのうちのいずれも、線状であり、すなわち、架橋されていない。
【0408】
他の事例において、本発明は、PEGポリマーに共有結合される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される抗VEGF抗体)を含む抗体複合体を提供する。かかる抗体複合体は、本明細書において「PEG複合体」と称される場合がある。任意の好適なPEGポリマーが使用され得る。PEGは、分岐状PEG、星状PEG、または櫛状PEGであり得る。PEGポリマーは、例えば、PEG四量体、PEG六量体、またはPEG八量体であり得る。いくつかの事例において、抗体複合体は、PEGデンドリマーに共有結合される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)を含む。PEGポリマーは、例えば、JenKem Technology,Quanta BioDesign,NOF America Corporation及び他の業者から市販されている。
【0409】
いくつかの事例において、PEGポリマーは、約1kDa〜約500kDa(例えば、約1kDa〜約500kDa、約1kDa〜約450kDa、約1kDa〜約400kDa、約1kDa〜約350kDa、約1kDa〜約300kDa、約1kDa〜約300kDa、約1kDa〜約250kDa、約1kDa〜約200kDa、約1kDa〜約150kDa、約1kDa〜約100kDa、約1kDa〜約50kDa、約10kDa〜約500kDa、約10kDa〜約450kDa、約10kDa〜約400kDa、約10kDa〜約350kDa、約10kDa〜約300kDa、約10kDa〜約300kDa、約10kDa〜約250kDa、約10kDa〜約200kDa、約10kDa〜約150kDa、約10kDa〜約100kDa、約10kDa〜約50kDa、約20kDa〜約500kDa、約20kDa〜約450kDa、約20kDa〜約400kDa、約20kDa〜約350kDa、約20kDa〜約300kDa、約20kDa〜約300kDa、約20kDa〜約250kDa、約20kDa〜約200kDa、約20kDa〜約150kDa、約20kDa〜約100kDa、約20kDa〜約75kDa、約30kDa〜約500kDa、約30kDa〜約450kDa、約30kDa〜約400kDa、約30kDa〜約350kDa、約30kDa〜約300kDa、約30kDa〜約300kDa、約30kDa〜約250kDa、約30kDa〜約200kDa、約30kDa〜約150kDa、約40kDa〜約500kDa、約40kDa〜約450kDa、約40kDa〜約400kDa、約40kDa〜約350kDa、約40kDa〜約300kDa、約40kDa〜約300kDa、約40kDa〜約250kDa、約40kDa〜約200kDa、約50kDa〜約500kDa、約50kDa〜約450kDa、約50kDa〜約400kDa、約50kDa〜約350kDa、約50kDa〜約300kDa、約50kDa〜約300kDa、50 200kDa〜約250kDa、または約50kDa〜約225kDa)の分子量を有する。
【0410】
いくつかの事例において、PEGポリマーは、約5kDa〜約250kDa(例えば、約1kDa、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、約35kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa、100kDa、約110kDa、約120kDa、約130kDa、約140kDa、約150kDa、約160kDa、約170kDa、約180kDa、約190kDa、約200kDa、約210kDa、約220kDa、約230kDa、約240kDa、または約250kDa)の分子量を有する。特定の事例において、PEGポリマーは、約20kDaの分子量を有する。他の事例において、PEGポリマーは、約40kDaの分子量を有する。
【0411】
前述の分子量のうちのいずれも、重量平均分子量(重量平均分子質量としても既知である)であり得る。
【0412】
いくつかの事例において、PEGポリマーは、PEG四量体である。例えば、NOF America SUNBRIGHT(登録商標)PTE−400MA、PTE−200MA、PTE−100MA、及びJenKem Technology USA 4アームPEGマレイミド(Cat.No.4ARM−MAL)などのPEG四量体が市販されている。いくつかの事例において、PEG四量体は、ペンタエリスリトールコアを有する。例えば、いくつかの事例において、PEG四量体は、式(I)の構造を含み、式中、nは独立して、任意の好適な整数である。
式I:
【0413】
いくつかの事例の別の例において、PEGポリマーは、PEG六量体である。例えば、JenKem Technology USA 6アームPEGアミン(Cat.No.6ARM(DP)−NH2HCl)などのPEG六量体、またはQuanta BioDesignからのPEG六量体が市販されている。いくつかの事例において、PEG六量体は、ジペンタイルエリスリトール(dipentylerythritol)コアを含む。
【0414】
いくつかの事例において、PEGポリマーは、PEG八量体である。例えば、NOF America SUNBRIGHT(登録商標)HGEOシリーズまたはJenKem Technology USA 8アームPEGマレイミド(Cat.No.8ARM(TP)−MAL)などのPEG八量体が市販されている。いくつかの事例において、PEG八量体は、トリペンタエリスリトール(tripentaerithritol)コアを含み得る。例えば、いくつかの事例において、PEG八量体は、式(II)の構造を含み、式中、nは独立して、任意の好適な整数である。
式II:
【0415】
いくつかの事例のさらに別の例において、PEG八量体は、トリペンタエリスリトールコアを含む。
【0416】
本明細書に記載されるもの及び当該技術分野において既知の他のものを含む任意の好適な複合体化手法が、本発明の抗VEGF抗体をポリマーに複合体化するために使用され得ることを理解されたい。例えば、ポリマーは、一級アミン基、カルボキシル基、スルフヒドリルフロウプ、またはカルボニル基を含む任意の好適なタンパク質官能基に複合体化され得る。任意の好適な化学反応性基は、タンパク質官能基、例えば、カルボジイミド(例えば、EDC)、NHSエステル、イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィン、マレイミド、ハロアセチル(例えば、ブロモアセチルまたはヨードアセチル)、ピリジルジスルフィド、チオスルホン酸塩、ビニルスルホン、ヒドラジン、アルコキシアミン、ジアジリン、アリールアジド、イソシアン酸塩、または当該技術分野において既知の他のものを標的とするために使用され得る。例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,3
rdEdition,2013を参照されたい。
【0417】
前述の抗体複合体のうちのいずれも、約5nm〜約200nm(例えば、約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、または約200nm)の流体力学半径を有し得る。いくつかの事例において、抗体複合体は、約5nm〜約150nm(例えば、約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、または約150nm)の流体力学半径を有する。いくつかの事例において、抗体複合体は、約5nm〜約100nm(例えば、約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、または約100nm)の流体力学半径を有する。いくつかの事例において、抗体複合体は、約5nm〜約60nm(例えば、約5nm、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、または約60nm)の流体力学半径を有する。いくつかの事例において、抗体複合体は、約25nm〜約35nm(例えば、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、または約35nm)の流体力学半径を有する。いくつかの事例において、流体力学半径は、約28nmである。
【0418】
いくつかの事例において、抗体複合体は、約10nm〜約200nm、約10nm〜約180nm、約10nm〜約160nm、約10nm〜約140nm、約10nm〜約120nm、約10nm〜約100nm、約10nm〜約80nm、約10nm〜約60nm、約10nm〜約50nm、約10nm〜約40nm、約10nm〜約30nm、約20nm〜約200nm、約20nm〜約180nm、約20nm〜約160nm、約20nm〜約140nm、約20nm〜約120nm、約20nm〜約100nm、約20nm〜約80nm、約20nm〜約60nm、約20nm〜約50nm、約20nm〜約40nm、約20nm〜約30nm、約30nm〜約200nm、約30nm〜約180nm、約30nm〜約160nm、約30nm〜約140nm、約30nm〜約120nm、約30nm〜約100nm、約30nm〜約80nm、約30nm〜約60nm、約30nm〜約50nm、約30nm〜約40nm、約40nm〜約200nm、約40nm〜約180nm、約40nm〜約160nm、約40nm〜約140nm、約40nm〜約120nm、約40nm〜約100nm、約40nm〜約80nm、約40nm〜約60nm、約40nm〜約50nm、約50nm〜約200nm、約50nm〜約180nm、約50nm〜約160nm、約50nm〜約140nm、約50nm〜約120nm、約50nm〜約100nm、約50nm〜約80nm、約50nm〜約60nm、約60nm〜約200nm、約60nm〜約180nm、約60nm〜約160nm、約60nm〜約140nm、約60nm〜約120nm、約60nm〜約100nm、または約60nm〜約80nmの流体力学半径を有する。
【0419】
いくつかの事例において、抗体複合体は、前駆薬物抗体複合体(担体連鎖前駆薬物とも称される)であり、ここで、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)は、例えば、リンカー(例えば、可逆的前駆薬物リンカー)を介して、担体(例えば、ヒドロゲル)に可逆的に複合体化される。この手法は、例えば、国際特許出願公開第WO2006/003014号、同第WO2009/095479号、同第WO2011/012715号、同第WO2013/053856号、及び同第WO2014/056923号にさらに記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。かかる前駆薬物抗体複合体は、Ascendis Pharma(例えば、TransCon技術基盤)から市販されている。リンカーは、目(例えば、硝子体)の中で抗VEGF抗体の時間制御された放出をもたらす、本来の自己切断特性を有し得る(例えば、リンカーは、目に投与されると非酵素的に加水分解され得る)。
【0420】
例えば、いくつかの事例において、本発明は、リンカーにより担体に共有結合される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)を含む前駆薬物抗体複合体を提供する。特定の事例において、リンカーは、可逆的前駆薬物リンカーである。いくつかの事例において、担体は、ポリマー、例えば、PEGを含む。PEGは、例えば、線状、分岐状、マルチアーム、または樹状PEGであり得る。いくつかの事例において、担体は、生分解性ヒドロゲルを含むヒドロゲルである。例えば、PEG系ヒドロゲルなどの任意の好適なヒドロゲルが使用され得る。PEG系ヒドロゲルは、例えば、少なくとも10%のPEG、少なくとも20%のPEG、少なくとも30%以上のPEGを含み得る。ヒドロゲルは、微粒子ビーズの形状であり得る。かかる微粒子ビーズは、約1μm〜約1000μm、例えば、約5μm〜約500μm、約10μm〜約100μm、約20μm〜約100μm、または約20μm〜約80μmの直径を有し得る。ビーズ直径は、微粒子ビーズが等張性水性緩衝液中で懸濁されるときに測定され得る。いくつかの事例において、ヒドロゲルは、WO2006/003014またはWO2011/012715に開示されている任意のヒドロゲルであり得る。
【0421】
前述の抗体複合体のうちのいずれにおいても、本抗体は、VEGFに結合する抗体フラグメント、例えば、VEGFに結合する本明細書に記載される抗VEGF抗体の抗体フラグメントであり得る。いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab−C、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)
2フラグメントからなる群から選択される。特定の事例において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、またはFab−Cである。いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fab−Cである。
【0422】
前述の抗体複合体のうちのいずれも、ポリマー(例えば、親水性ポリマー)に共有結合されない参照抗体に対して増加された眼半減期を有し得る。いくつかの事例において、眼半減期は、参照抗体に対して、少なくとも約2倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、約20倍以上)増加される。いくつかの事例において、眼半減期は、参照抗体に対して少なくとも約4倍増加される。いくつかの事例において、眼半減期は、硝子体半減期である。いくつかの事例において、参照抗体は、抗体複合体の抗体と同一である。他の場合において、参照抗体は、抗体複合体の抗体と同一ではない。
【0423】
前述の抗体複合体のうちのいずれも、ポリマー(例えば、親水性ポリマー)に共有結合されない参照抗体に対して減少される眼クリアランスを有し得る。いくつかの事例において、クリアランスは、参照抗体に対して、少なくとも約2倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、約20倍以上)減少される。いくつかの事例において、クリアランスは、参照抗体に対して少なくとも約4倍減少される。いくつかの事例において、クリアランスは、硝子体からのクリアランスである。いくつかの事例において、参照抗体は、抗体複合体の抗体と同一である。他の場合において、参照抗体は、抗体複合体の抗体と同一ではない。
【0424】
いくつかの事例において、前述の抗体複合体(例えば、HA複合体、PEG複合体、及び前駆薬物抗体複合体)のうちのいずれか2つの眼内投与間の期間(例えば、硝子体内注入による)は、少なくとも1ヶ月、例えば、少なくとも1ヶ月、少なくとも5週、少なくとも6週、少なくとも7週、少なくとも8週、少なくとも9週、少なくとも10週、少なくとも11週、少なくとも12週、少なくとも13週、少なくとも14週、少なくとも15週、少なくとも16週、少なくとも20週、少なくとも24週、少なくとも28週、少なくとも32週、少なくとも36週、少なくとも40週、少なくとも44週、少なくとも48週、少なくとも52週以上である。次いで、いくつかの場合において、2つの眼内投与間の最大期間は、4年以下、例えば、3年以下、2年以下、または1年以下である。抗体複合体は、例えば、2〜12ヶ月毎、例えば、4〜10ヶ月毎に投与され得る。いくつかの事例において、抗体複合体は、6ヶ月毎に投与される。
【0425】
本発明は、上述される抗体複合体(例えば、HA複合体、PEG複合体、及び前駆薬物抗体複合体)のうちのいずれかを含む組成物(例えば、薬学的組成物)も提供する。ある特定の実施形態において、本組成物は、1つ以上の追加の化合物を含む。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β;IL−6;IL−6R;PDGF;アンジオポエチン;アンジオポエチン2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;インターロイキン−8(IL−8);CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10Aなどの加齢黄斑変性症(AMD)リスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0426】
本発明は、上述される抗体複合体(例えば、HA複合体、PEG複合体、及び前駆薬物抗体複合体)のうちのいずれかと、追加のVEGFアンタゴニストとを含む組成物(例えば、薬学的組成物)をさらに提供する。
【0427】
2.融合タンパク質
本発明は、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)と、眼の結合ドメインとを含む融合タンパク質を提供する。眼の結合ドメインは、例えば、目の中で見られる生体物質(例えば、角膜、硝子体、網膜、網膜色素上皮、または脈絡膜)に結合し得、それは、抗体の眼(例えば、硝子体)内滞留時間を(例えば、半減期を増加及び/またはクリアランスを減少することにより)増加し得る。眼の結合ドメインは、例えば、細胞外マトリックス構成成分を含む任意の好適な生体物質に結合し得る。例えば、目(例えば、硝子体)の中の好適な生体物質には、細胞外マトリックス構成成分、例えば、炭水化物(例えば、荷電炭水化物(例えば、グリコサミノグリカン))、糖タンパク質(例えば、フィブリリン及びオプティシン)、及びタンパク質(例えば、コラーゲン(例えば、コラーゲン種I〜XXVII、特にコラーゲンII、コラーゲンIX、コラーゲンV、コラーゲンVI、コラーゲンXI、及びそれらのヘテロタイプのコラーゲン原線維)、または例えば、Le Goff et al.,Eye 22:1214−1222,2008に記載されている他の細胞外マトリックス構成成分が含まれ得る。いくつかの事例において、細胞外マトリックス構成成分は、グリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸(HA)またはプロテオグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸塩またはヘパリン硫酸塩)である。特定の事例において、グリコサミノグリカンは、HAである。HA結合ドメイン、ならびにHA結合ドメインを含む融合タンパク質は、例えば、Park et al.,Molecular Pharmaceutics 6(3):801−812,2009;米国特許第5,986,052号、同第7,183,377号、同第7,723,472号、及び同第8,846,034号;米国特許出願公開第2004/005277号;ならびに国際特許出願第WO1998/052590号、同第WO2010/045506号、同第WO2014/099997号、同第WO2015/198243号、同第WO2015/110809号に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。眼の結合ドメインは、例えば、抗VEGF抗体に組み換え融合されることにより、抗体に共有結合され得る。他の事例において、眼の結合ドメインは、(例えば、ビオチン−ストレパビジン(ストレパビジン(strepavidin))連鎖)により、抗VEGF抗体に共有複合体化または非共有複合体化され得る。
【0428】
例えば、本発明は、HA結合ドメインに共有結合される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)を含む融合タンパク質を提供する。いくつかの事例において、HA結合ドメインは、抗体の重鎖または軽鎖に共有結合される。例えば、HA結合ドメインは、重鎖に共有結合される。別の例において、HA結合ドメインは、軽鎖に共有結合される。HA結合ドメインは、任意の好適な部位、例えば、N末端、C末端、または内部部位(例えば、挿入)で抗VEGF抗体に共有結合され得る。HA結合ドメインは、重鎖のC末端または軽鎖のC末端に共有結合され得る。例えば、いくつかの事例において、HA結合ドメインは、重鎖のC末端に共有結合される。他の事例において、HA結合ドメインは、軽鎖のC末端に共有結合される。
【0429】
前述の融合タンパク質のうちのいずれにおいても、融合タンパク質は、リンカーをさらに含み得、リンカーは、抗体とHA結合ドメインとの間に位置付けられている。例えば、(Gly
n−Ser
n)
nまたは(Ser
n−Gly
n)
nリンカーなどの任意の好適なリンカーが使用され得、式中、nは独立して、1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13以上)の整数である。WO2014/099997は、いくつかのリンカーを記載しており、そのうちのいずれかが本発明の融合タンパク質中で使用され得る。いくつかの事例において、リンカーは、GGGGS(配列番号61)のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの事例において、リンカーは、GGGGS(配列番号61)のアミノ酸配列から構成され得る。他の好適なリンカーには、(Gly
4Ser)
4、(Gly
4Ser)
3などが含まれる。いくつかの事例において、セリンは、アラニン(例えば、(Gly
4Ala)または(Gly
3Ala))で置き換えられ得る。
【0430】
前述の融合タンパク質のうちのいずれにおいても、本抗体は、VEGFに結合する抗体フラグメントであり得る。いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab−C、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)
2フラグメントからなる群から選択される。例えば、いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、またはFab−Cである。いくつかの事例において、HA結合ドメインは、FabのCH1ドメインのC末端に共有結合される。他の事例において、HA結合タンパク質は、FabのCLドメインのC末端に共有結合される。
【0431】
前述の融合タンパク質のうちのいずれにおいても、HA結合ドメインは、リンクモジュール、G1ドメイン、リジンに富んだオリゴペプチド、及び当該技術分野において既知の他のHA結合ドメインからなる群から選択され得る。例えば、HA結合ドメインは、Park et al.,Molecular Pharmaceutics 6(3):801−812,2009;米国特許第5,986,052号、同第7,183,377号、同第7,723,472号、及び同第8,846,034号;米国特許出願公開第2004/005277号;ならびに/または国際特許出願第WO1998/052590号、同第WO2010/045506号、同第WO2014/099997号、同第WO2015/198243号、同第WO2015/110809号に記載されている任意のHA結合ドメインであり得る。例えば、WO2014/099997に記載されているように、HA結合ドメインは、HA10、HA10.1、HA10.2、HA11、またはHA11.1であり得る。
【0432】
いくつかの事例において、HA結合ドメインは、リンクモジュールである。任意の好適なリンクモジュールが使用され得る。例えば、いくつかの事例において、リンクモジュールは、TSG6、CD44、リンパ管内皮ヒアルロナン受容体1(LYVE−1)、ヒアルロナン及びプロテオグリカンリンクタンパク質(HAPLN)1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、ブレビカン、ニューロカン、ホスファカン、バーシカン、CAB61358、KIA0527、スタビリン−1、ならびにスタビリン−2リンクモジュール、またはそれらの変異体からなる群から選択される。いくつかの事例において、リンクモジュールは、TSG6リンクモジュール、例えば、ヒトTSG6リンクモジュールである。いくつかの事例において、HA結合タンパク質TSG6のリンクモジュールは、ヒトTSG6(UniProt受託番号P98066)のアミノ酸残基36〜128を含み得る。
【0433】
前述の融合タンパク質のうちのいずれも、少なくとも1つの追加のHA結合ドメインをさらに含み得る。例えば、融合タンパク質は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、または8つの追加のHA結合ドメイン(複数可)をさらに含み得る。いくつかの事例において、少なくとも1つの追加のHA結合ドメインは、抗体の重鎖または軽鎖に共有結合される。例えば、いくつかの事例において、少なくとも1つの追加のHA結合ドメインは、抗体の重鎖に共有結合される。他の事例において、少なくとも1つの追加のHA結合ドメインは、抗体の軽鎖に共有結合される。いくつかの事例において、少なくとも1つの追加のHA結合タンパク質は、リンカーにより抗体に連鎖される。上述されるリンカーなどの任意の好適なリンカーが使用され得る。いくつかの事例において、リンカーは、GGGGS(配列番号61)のアミノ酸配列を含む。いくつかの事例において、リンカーは、GGGGS(配列番号61)のアミノ酸配列からなる。いくつかの事例において、第1のHA結合ドメインは、重鎖に共有結合され、第2のHA結合ドメインは、軽鎖に共有結合される。少なくとも1つの追加のHA結合ドメインは、任意の好適な部位、例えば、N末端、C末端、または内部部位(例えば、挿入)で抗VEGF抗体に共有結合され得る。抗体が抗体中に1つ超の追加のHA結合ドメインを含む事例において、挿入は、抗体中の単一の部位にあるか、または抗体中の複数の異なる部位にある場合がある。例えば、いくつかの事例において、第1のHA結合ドメインは、重鎖のC末端に連鎖され、第2のHA結合ドメインは、軽鎖のC末端に連鎖される。いくつかの事例において、少なくとも1つの追加のHA結合タンパク質は、リンクモジュール、G1ドメイン、及びリジンに富んだオリゴペプチドからなる群から選択される。例えば、いくつかの事例において、少なくとも1つの追加のHA結合タンパク質は、リンクモジュールである。リンクモジュールは、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において既知の任意のリンクモジュールであり得る。いくつかの事例において、リンクモジュールは、TSG6リンクモジュール、例えば、ヒトTSG6リンクモジュールである。いくつかの事例において、HA結合タンパク質TSG6のリンクモジュールは、ヒトTSG6(UniProt受託番号P98066)のアミノ酸残基36〜128を含み得る。
【0434】
前述の融合タンパク質のうちのいずれも、VEGF及びHAに特異的に結合し得る。いくつかの事例において、融合タンパク質は、約10μM以下のKdでHAに結合する。例えば、いくつかの事例において、融合タンパク質は、約10μM以下、8μM以下、6μM以下、4μM以下、2μM以下、1μM以下、750nM以下、500nM以下、250nM以下、100nM以下、50nM以下、10nm以下、または1nm以下のKdでHAに結合する。いくつかの事例において、融合タンパク質は、約2nM以下のKdでHAに結合する。いくつかの事例において、融合タンパク質は、約1nM〜約2μM、例えば、約1nM〜約1.8μM、約1nM〜約1.6μM、約1nM〜約1.4μM、約1nM〜約1.2μM、約1nM〜約1.0μM、約1nM〜約900nM、約1nM〜約800nM、約1nM〜約700nM、約1nM〜約600nM、約1nM〜約500nM、約1nM〜約400nM、約1nM〜約300nM、約1nM〜約200nM、約1nM〜約100nM、約1nM〜約50nM、約1nM〜約40nM、約1nM〜約30nM、約1nM〜約20nM、約1nM〜約10nM、約5nM〜約100nM、約5nM〜約50nM、約5nM〜約25nM、約5nM〜約15nM、または約5nM〜約10nMのKdでHAに結合する。いくつかの事例において、融合タンパク質は、約10nMのKdでHAに結合する。
【0435】
前述の融合タンパク質のうちのいずれも、HA結合ドメインに共有結合されない参照抗体に対して増加された眼半減期を有し得る。いくつかの事例において、眼半減期は、参照抗体に対して、少なくとも約2倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、約20倍以上)増加される。いくつかの事例において、眼半減期は、参照抗体に対して少なくとも約4倍増加される。いくつかの事例において、眼半減期は、硝子体半減期である。いくつかの事例において、参照抗体は、融合タンパク質の抗体と同一である。他の場合において、参照抗体は、融合タンパク質の抗体と同一ではない。
【0436】
前述の融合タンパク質のうちのいずれも、HA結合ドメインに共有結合されない参照抗体に対して減少された眼クリアランスを有し得る。いくつかの事例において、クリアランスは、参照抗体に対して、少なくとも約2倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、約20倍以上)減少される。いくつかの事例において、クリアランスは、参照抗体に対して少なくとも約4倍減少される。いくつかの事例において、クリアランスは、硝子体からのクリアランスである。いくつかの事例において、参照抗体は、融合タンパク質の抗体と同一である。他の場合において、参照抗体は、融合タンパク質の抗体と同一ではない。
【0437】
いくつかの事例において、前述の融合タンパク質のうちのいずれか2つの眼内投与間の期間(例えば、硝子体内注入による)は、少なくとも1ヶ月、例えば、少なくとも1ヶ月、少なくとも5週、少なくとも6週、少なくとも7週、少なくとも8週、少なくとも9週、少なくとも10週、少なくとも11週、少なくとも12週、少なくとも13週、少なくとも14週、少なくとも15週、少なくとも16週、少なくとも20週、少なくとも24週、少なくとも28週、少なくとも32週、少なくとも36週、少なくとも40週、少なくとも44週、少なくとも48週、少なくとも52週以上である。次いで、いくつかの場合において、2つの眼内投与間の最大期間は、4年以下、例えば、3年以下、2年以下、または1年以下である。融合タンパク質は、例えば、2〜12ヶ月毎、例えば、4〜10ヶ月毎に投与され得る。いくつかの事例において、融合タンパク質は、6ヶ月毎に投与される。
【0438】
本発明は、上述される融合タンパク質のうちのいずれかを含む組成物(例えば、薬学的組成物)も提供する。ある特定の実施形態において、本組成物は、1つ以上の追加の化合物を含む。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β;IL−6;IL−6R;PDGF;アンジオポエチン;アンジオポエチン2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;IL−8;CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10AなどのAMDリスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0439】
本発明は、上述される融合タンパク質のうちのいずれかと、追加のVEGFアンタゴニストとを含む組成物(例えば、薬学的組成物)も提供する。
【0440】
3.高分子製剤
本発明は、本発明の抗VEGF抗体と、ポリマーとを含む製剤を提供する。高分子製剤は、例えば、マイクロスフェア、インプラント、ヒドロゲル、オルガノゲル、ナノ集合体、ミセル、インサイツ成型デポ、または当該技術分野において既知の別の種類の高分子製剤であり得る。任意の好適なポリマーが、本発明の高分子製剤で使用され得る。例えば、ポリマーは、親水性ポリマーまたは疎水性ポリマーであり得る。親水性ポリマーが水溶性ポリマーであり得ることを理解されたい。例えば、国際特許出願公開第WO2011/066417号またはPelegri−O’Day et al.J.Am.Chem.Soc.136:14323−14332,2014に記載されている親水性ポリマーなどの任意の好適な親水性ポリマーが使用され得る。他の事例において、例えば、疎水性ポリマーが使用され得る。ポリマーは、生分解性及び/または生体適合性であり得る。
【0441】
使用され得る例示的で非限定的な親水性ポリマーには、ヒアルロン酸(HA)、ポリエチレングリコール(PEG、ポリ(エチレングリコール)としても既知である)(例えば、直鎖PEG、分岐状PEG、櫛状PEG、及び樹状PEG)、ポリ[エチレンオキシド)−コ−(メチレンエチレンオキシド)]、ポリ(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)(pPEGMA)、アガロース、アルギン酸塩、カラゲナン、カルボキシメチルセルロース、セルロース、セルロース誘導体、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、コラーゲン、デルマタン硫酸塩、デキストラン、デキストラン硫酸塩、フィブリン、フィブリノゲン、フィブロネクチン、フコイダン、ゼラチン、グリコサミノグリカン(GAG)、グリコポリマー、ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、高度分岐状多糖類(例えば、ガラクトースデンドリマー)、ケラタン硫酸塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(pHPMA)、ペクチン、ペクチン誘導体、ペントサンポリ硫酸塩、デンプン、ヒドロキシルエチルデンプン(HES)、スチレン、ビトロネクチン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アミン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、多価電解質、ポリ(グルタミン酸)(PGA)、ポリ(グリセロール)(PG)(例えば、線状、中官能性、超分岐状、または線状超分岐状PG)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(2−オキサゾリン)(POZ)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン、ポリシアル酸(PSA)、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体(例えば、荷電ポリスチレン誘導体)、ポリ(スチレンスルホン酸塩−コ−PEGMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)(pNAcM)、及びそれらのコポリマーが含まれる。他の事例において、例えば、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、及びポリグリコリド(PGA)を含む任意の好適な疎水性ポリマーが使用され得る。
【0442】
本発明は、ポリマー溶媒デポ(インサイツ成型インプラントとしても既知である)として製剤化される抗VEGF抗体を提供する。例えば、ポリマー溶媒デポは、ポリマー(例えば、本明細書に記載されるポリマーのうちのいずれか、例えば、PLGAなどの疎水性ポリマー)と、溶媒(例えば、有機溶媒)と、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体)とを含み得る。この溶媒は、低い水混和性を有し得る。使用され得る例示的な有機溶媒には、トリアセチン(酢酸グリセロール)、N−メチル−2−ピロリドン、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、及びエチル安息香酸塩が含まれる。一実施例において、ポリマー溶媒デポは、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)の噴霧乾燥粉末を、PLGAトリアセチン溶液内に分散することにより調製され得る(例えば、Chang et al.J.Pharm.Sci.104(10):3404−17,2015を参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。PLGAは、例えば、約10kDa、約41kDa、または約56kDaの分子量を有し得る。例えば、RG752S、RG755S、及びRG756S(Evonik Industries,Darmstadt,Germany)などのPLGAポリマーが市販されている。PLGA濃度は、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約20%以上(重量%)であり得る。抗体濃度は、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約4%、約5%(重量%)以上であり得る。いくつかの事例において、抗体濃度は、約1.5%(重量%)である。ポリマー溶媒デポ製剤のうちのいずれも、例えば、27ゲージ(27G)針により注入可能であり得る。投与(例えば、注入(例えば、硝子体内注入)により)されると、かかるポリマー溶媒デポ製剤は、目の中でゲルまたは固形デポに形質転換し得る。ゲルまたは固形デポは、水性及び非水性相を脱混合した結果として形成し得る。水性相への溶媒転換速度に部分的に応じて、注入されたデポは、ポリマー沈降に起因して固形またはゲル材料に遷移し得、抗VEGF抗体(及び、任意の追加の療法剤または化合物)を物理的に封入し得る。他の事例において、インサイツ架橋またはインサイツ固形化オルガノゲルは、例えば、ゲルまたは固形デポを形成するために使用され得る。ポリマー溶媒デポは、例えば、約30日以上、例えば、約30日、約40日、約50日、約60日、約70日、約80日、約90日、約100日、約110日、約120日、約130日以上にわたる長期間送達を可能にし得る。いくつかの場合において、ポリマー溶媒デポは、目の中で約80日間の長期間送達を可能にし得る。
【0443】
本発明は、ポリマーミセルとして製剤化される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体)も提供する。ポリマーミセルは、例えば、ポリマー(例えば、両親媒性ブロック(例えば、ジブロックまたはマルチブロック)コポリマー)の、疎水性コア及び親水性外皮を有するナノ粒子への自己集合により形成され得る。ポリマーミセルは、任意の好適な直径(例えば、平均直径)、例えば、約1nm〜約1000nm(例えば、約1nm、約10nm、約100nm、約200nm、約300nm、約400nm、約500nm、約600nm、約700nm、約800nm、約900nm、約1000nm)以上の直径を有し得る。いくつかの事例において、ポリマーミセルは、約5nm〜約100nm(例えば、約5、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、または約100nm)の直径(例えば、平均直径)を有し得る。例えば、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(D,L−乳酸)(PDLLA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリ(L−アスパラギン酸塩)、及びポロクサマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(プロピレンオキシド)−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)コポリマー(例えば、PLURONICS(登録商標))などの両親媒性ブロックコポリマーを含む任意の好適なポリマーが使用され得る。他の両親媒性ブロックコポリマーが当該技術分野において既知である。いくつかの事例において、抗VEGF抗体は、例えば、ポリマーへの共有結合によりポリマーミセルの親水性外皮に結合され得る。したがって、いくつかの事例において、上述される抗体複合体は、抗VEGF抗体を含むポリマーミセルを調製するために使用され得る。
【0444】
本発明は、ポリマーインプラントとして製剤化される抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)も提供する。ポリマーインプラントは、固形薬物製剤(例えば、抗体)が疎水性ポリマー(例えば、PLGA)内で均等に分布されている剛性物体である。ポリマーインプラントは典型的には、ミリメートルにサイズ決めされる(例えば、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.5mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm以上)。ポリマーインプラントは、例えば、外科手技(例えば、顕微鏡手術)によるか、または好適なデバイスを使用する注入(例えば、硝子体内注入による)により目に投与され得る。ポリマー系インプラントは、目の中の任意の好適な部位、例えば、硝子体、目の前部もしくは後部チャンバ、または目の網膜内、網膜下、脈絡膜内、脈絡膜上、強膜上、結膜下、角膜内、もしくは角膜外部位への投与のために製剤化され得る。特定の事例において、ポリマー系インプラントは、硝子体への投与のために製剤化される。
【0445】
抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体、例えば、G6.31AARR)を含むポリマーインプラントは、加熱性溶融押出成形(HME)プロセスを使用して調製され得る。熱が適用されて、ポリマーを融解(流動化)し、次いで、機械的せん断が加えられ、流体ポリマー相内で固形薬物製剤をブレンド及びマイクロ調合し得る。次いで、薬物−ポリマー混合物は、ミリメートルにサイズ決めされたダイ(例えば、円状ダイ)を通して押出成形され得る。押出成形物が冷却可能であるとき(例えば、室温に)、それは、任意の所望の長さに切断され得るロッド(例えば、円筒形ロッド)を形成する。いくつかの事例において、ポリマーインプラントは、抗VEGF抗体と、PLGAとを含むPLGAロッドであり得る。本発明の文脈において使用され得るポリマーインプラントは、例えば、Rajagopal et al.J.Pharmaceutical Sciences 102(8):2655−2666,2013及び国際特許出願公開第WO2006/093758号に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0446】
一実施例において、抗VEGF抗体(例えば、本明細書に記載される任意の抗VEGF抗体)は、高温で安定させるためのトレハロース及びヒスチジン−HCl緩衝液を含み得る噴霧乾燥製剤として調製され得、これは、次いで、PLGAなどの疎水性ポリマーに添加され得、HMEを経てポリマー系インプラントを形成し得る(例えば、Rajagopal et al.(上記)を参照されたい)。例えば、噴霧乾燥製剤は、任意の好適な濃度(例えば、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL)の抗体、任意の好適な濃度(例えば、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、3.3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、10mg/mLのトレハロース、及び/または緩衝液(例えば、10mMのヒスチジンHCl)を含み得る。噴霧乾燥製剤は、任意の好適なpH、例えば、約5〜約8(例えば、約5、約6、約7、または約8)のpHを有し得る。いくつかの事例において、噴霧乾燥製剤は、約6または約6.2のpHを有し得る。特定の事例において、噴霧乾燥製剤は、抗VEGF抗体、3.3mg/mLのトレハロース、及び10mMのヒスチジン−HCl、pH6.2を含む。ポリマー系インプラントは、PLGAなどの疎水性ポリマーを有する噴霧乾燥製剤のHMEにより調製され得る。例えば、固形PLGAペレット及び噴霧乾燥製剤は、室温で予備混合され得、円錐形の逆回転二軸押出機中に供給され得る。この組み合わせは、マイクロ調合され得、続いて、100℃で0.5mmの円状ダイを通して押出成形される。いくつかの事例において、噴霧乾燥製剤は、30分未満の間100℃に曝露される。
【0447】
ポリマーインプラントは、例えば、約1%〜約90重量%の抗VEGF抗体(例えば、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90重量%)を含有し得る。いくつかの事例において、ポリマーインプラントは、約10重量%の抗VEGF抗体を含む。ポリマー系インプラントは、任意の好適な寸法を有し得、例えば、いくつかの事例において、インプラントは、約0.1〜約1mm(例えば、約0.5mm)の直径及び約1〜約30mm(例えば、約14mm)の長さを有する。PLGAインプラント(例えば、PLGAロッド)に関して、PLGAコポリマー中のポリ乳酸のパーセンテージは、0〜100%、例えば、約15〜85%、約35〜65%、または50%であり得る。いくつかの事例において、PLGAインプラント(例えば、PLGAロッド)は、1つ以上の追加のポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)をさらに含み得る。
【0448】
前述の高分子製剤(例えば、ポリマー溶媒デポ、ポリマーミセル、及びポリマーインプラント)のうちのいずれにおいても、本抗体は、VEGFに結合する抗体フラグメントであり得る。いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab−C、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)
2フラグメントからなる群から選択される。例えば、いくつかの事例において、抗体フラグメントは、Fab、Fab’、またはFab−Cである。
【0449】
前述の高分子製剤(例えば、ポリマー溶媒デポ、ポリマーミセル、及びポリマーインプラント)のうちのいずれも、高分子製剤として製剤化されない参照抗体に対して増加された眼半減期を有し得る。いくつかの事例において、眼半減期は、参照抗体に対して、少なくとも約2倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、約20倍以上)増加される。いくつかの事例において、眼半減期は、参照抗体に対して少なくとも約4倍増加される。いくつかの事例において、眼半減期は、硝子体半減期である。いくつかの事例において、参照抗体は、高分子製剤の抗体と同一である。他の場合において、参照抗体は、高分子製剤の抗体と同一ではない。
【0450】
前述の高分子製剤(例えば、ポリマー溶媒デポ、ポリマーミセル、及びポリマーインプラント)のうちのいずれも、高分子製剤として製剤化されない参照抗体に対して減少された眼クリアランスを有し得る。いくつかの事例において、クリアランスは、参照抗体に対して、少なくとも約2倍(例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約14倍、約16倍、約18倍、約20倍以上)減少される。いくつかの事例において、クリアランスは、参照抗体に対して少なくとも約4倍減少される。いくつかの事例において、クリアランスは、硝子体からのクリアランスである。いくつかの事例において、参照抗体は、高分子製剤の抗体と同一である。他の場合において、参照抗体は、高分子製剤の抗体と同一ではない。
【0451】
いくつかの事例において、前述の高分子製剤のうちのいずれか2つの眼内投与間の期間(例えば、硝子体内注入による)は、少なくとも1ヶ月、例えば、少なくとも1ヶ月、少なくとも5週、少なくとも6週、少なくとも7週、少なくとも8週、少なくとも9週、少なくとも10週、少なくとも11週、少なくとも12週、少なくとも13週、少なくとも14週、少なくとも15週、少なくとも16週、少なくとも20週、少なくとも24週、少なくとも28週、少なくとも32週、少なくとも36週、少なくとも40週、少なくとも44週、少なくとも48週、少なくとも52週以上である。次いで、いくつかの場合において、2つの眼内投与間の最大期間は、4年以下、例えば、3年以下、2年以下、または1年以下である。高分子製剤は、例えば、2〜12ヶ月毎、例えば、4〜10ヶ月毎に投与され得る。いくつかの事例において、高分子製剤は、6ヶ月毎に投与される。
【0452】
本発明は、上述される高分子製剤(例えば、ポリマー溶媒デポ、ポリマーミセル、及びポリマーインプラント)のうちのいずれかを含む組成物(例えば、薬学的組成物)も提供する。ある特定の実施形態において、本組成物は、1つ以上の追加の化合物を含む。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β、IL−6;IL−6R;PDGF;アンジオポエチン;アンジオポエチン2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;IL−8;CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10AなどのAMDリスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0453】
本発明は、上述される高分子製剤(例えば、ポリマー溶媒デポ、ポリマーミセル、及びポリマーインプラント)のうちのいずれかと、追加のVEGFアンタゴニストとを含む組成物(例えば、薬学的組成物)も提供する。
【0454】
4.デバイス
本明細書に記載される組成物(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤)のうちのいずれも、ポート送達デバイスを使用して目に投与され得る。ポート送達デバイスは、何ヶ月もの期間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上)にわたって療法剤(例えば、抗VEGF抗体)を放出し得るインプラント可能な詰め替え可能デバイスである。使用され得る例示的なポート送達デバイスには、ForSight Labs,LLC及び/またはForSight VISION4からのもの、例えば、国際特許出願公開第WO2010/088548号、同第WO2015/085234号、同第WO2013/116061号、同第WO2012/019176号、同第WO2013/040247号、同第WO2012/019047号に記載されているようなものが含まれ、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0455】
例えば、本発明は、本明細書に記載される組成物(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤)のうちのいずれかを収容する貯留槽を含むポート送達デバイスを提供する。ポート送達デバイスは、近接領域と、貯留槽と流体連通している近位領域にカップリングされた筒体と、貯留槽と流体連通しており、かつ組成物を目の中に放出するように構成されている1つ以上の出口とをさらに含み得る。筒体は、約0.5mm以下の目の中の切り口または開口部を通って挿入されるように構成されている外径を有し得る。デバイスは、約1mm〜約15mmの長さ(例えば、約1mm、約2mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約9mm、約11mm、約13mm、または約15mmの長さ)であり得る。貯留槽は、任意の好適な容積を有し得る。いくつかの事例において、貯留槽は、約1μl〜約100μl(例えば、約1μl、約5μl、約10μl、約20μl、約50μl、約75μl、または約100μl)の容積を有する。デバイスまたはその構成部は、任意の好適な材料、例えば、ポリイミドでできている場合がある。
【0456】
いくつかの事例において、ポート送達デバイスは、本明細書に記載される組成物(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤)のうちのいずれか及び1つ以上の追加の化合物を収容する貯留槽を含む。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、IL−1β;IL−6;IL−6R;PDGF;アンジオポエチン;アンジオポエチン2;Tie2;S1P;インテグリンαvβ3、αvβ5、及びα5β1;ベータセルリン;アペリン/APJ;エリスロポエチン;補体D因子;TNFα;HtrA1;VEGF受容体;ST−2受容体;さらに補体経路構成成分C2、B因子、H因子、CFHR3、C3b、C5、C5a、及びC3a;HtrA1;ARMS2;TIMP3;HLA;IL−8;CX3CR1;TLR3;TLR4;CETP;LIPC;COL10A1;ならびにTNFRSF10AなどのAMDリスクと遺伝的に関係付けられるタンパク質からなる群から選択される第2の生体分子に結合する。ある特定の実施形態において、追加の化合物は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。例えば、いくつかの事例において、追加の化合物は、二重特異性抗体(例えば、RG−7716などの抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはWO2010/069532もしくはWO2016/073157に開示されている任意の二重特異性抗VEGF/抗Ang2二重特異性抗体、またはそれらの変異体である。いくつかの事例の別の例において、追加の化合物は、抗IL−6抗体、例えば、EBI−031(Eleven Biotherapeutics、例えば、WO2016/073890を参照されたい)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))、オロキズマブ、クラザキズマブ、シルクマブ、エルシリモマブ、ジェリリムズマブ、OPR−003、MEDI−5117、PF−04236921、またはそれらの変異体である。いくつかの事例のさらに別の例において、追加の化合物は、抗IL−6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))(例えば、WO1992/019579を参照されたい)、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX−0061)、SA−237、またはそれらの変異体である。
【0457】
いくつかの事例において、ポート送達デバイスは、本明細書に記載される組成物(例えば、抗VEGF抗体、抗体複合体、融合タンパク質、及び高分子製剤)のうちのいずれか及び追加のVEGFアンタゴニストを含む。
【0458】
III.実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上記で提供される概要を得ると、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0459】
実施例1:G6.31のディープスキャニング突然変異生成法は、安定型集合体Fabの集合にとって重要な位置を特定する。
G6.31は、高い親和性の抗VEGF抗体である(Fuh et al.,J.Biol.Chem.281(10):6625−6631(2006)、Liang et al.,J.Biol.Chem.281(2):951−961(2006)。重鎖及び軽鎖可変ドメインがそれぞれ、頻繁に使用されるヒト生殖細胞系IGHV3−23及びIGKV1−39起源であるため、G6.31は、ヒト抗体の代表と見なされる。
【0460】
G6.31のVH及びVLドメイン内の単一の突然変異の効果を体系的に査定するために、各可変ドメイン(Kabat番号付けスキームによるVL位置2−107及びVH位置2−113)の飽和単一部位突然変異生成ライブラリーを生成した。これらのライブラリーはそれぞれ、VH及びVL NNKウォークライブラリーと称される。ディープ突然変異スキャニング実験でこれらのライブラリーを使用することにより、選択中の2つのライブラリー内の各突然変異の濃縮比(ER)の計算が可能になり、分子の適合に対する突然変異の影響の査定の機能を果たす。特定の突然変異のERは、機能発現に対する突然変異の影響、折り畳みの安定性に対する突然変異の影響、及び選択タンパク質(例えば、抗gD(軽鎖のC末端に融合されるペプチドタグ)、タンパク質A、タンパク質L、またはVEGF)への結合に対する突然変異の影響を含む多様な作用を集める。
【0461】
Fabの機能発現及び折り畳み安定性に対する各突然変異の影響を査定するために、VH及びVLライブラリーを、抗gD、タンパク質A、またはタンパク質Lに対して別々にパニングした。これらのパニング戦略は、Fab分子がファージ上にディスプレイされているかどうか、かつある程度、それが適切に折り畳まれ、集合しているかどうかを検出する。重鎖ライブラリー及び軽鎖ライブラリーの所与の位置における、2331及び2226アミノ酸置換(停止を含む)、ならびにそれぞれの野生型アミノ酸のERをそれぞれ、3つのパニングの各々に関して決定した(
図1A〜1F)。3つの重鎖パニング戦略または3つの軽鎖パニング戦略の比較は、非常に類似の結果が得られたことを示す(
図2A〜2B)。例えば、ERは、抗gDパニングとタンパク質Lパニングとの間の良好な線状関係(r
2=0.98)を示す(
図2A)。タンパク質Aパニングデータセットとタンパク質Lパニングデータセットとの間の比較は、より低い線状相関性(r
2=0.611)を示し、これは、タンパク質A結合、したがって、2つの選択肢における示差的濃縮に対する直接的な影響を有する突然変異のサブセットを起因とし得る。軽鎖に関して類似のパターンが観察された(
図2B)。
【0462】
Fabの機能発現及び安定性に影響を及ぼす位置を特定するための一手法において、保存され、選択中に突然変異に耐容性を示さない位置を決定した。代表的なスキャンとして抗gDパニングから得られたデータセットを使用して、所与の位置における全ての突然変異の平均濃縮比(ER
pos)を、保存の指標として各位置に関して計算した(
図3A〜3B)。VH及びVLドメインの両方において、βストランドBとFとの間のシステイン対(HC−C22、HC−C93;LC−C23、LC−88)、ならびに隣接したトリプトファン残基(HC−W36、LC−W35)からなる中心コア残基を高度に保存した(
図3A〜3D)。免疫グロブリン折り畳みの疎水性コアは、例えば、Halaby et al.Protein Engineering12(7):563−571,1999に記載されている。延長疎水性コアの部分である、分子の下半分内に配置される数個の疎水性残基が中心コアに隣接している(HVRが上向くようにFabが配向されているとき)。それらは保存されたが、中心コア残基より小さなER
pos値を示した。これらの残基のなかでもとりわけ、Ig折り畳みの安定性にとって重要であると以前から示されているのがチロシン(HC−Y90、HC−86)である(例えば、Hamill et al.,J.Mol.Biol.295(3):641−649(2000)を参照されたい。保存残基の第3の基をVH/VL界面内に配置した(HC−L45、HC−Y91、HC−W103、LC−P44、LC−Y36、LC−Y96)。VH/VL界面残基は、間接的な選択(例えば、タンパク質LパニングからのVHデータ)だけでなく、直接的な選択(例えば、タンパク質AパニングからのVHデータ)によってもパニング内に保存され、記載された界面位置での突然変異が、低減した安定性を有する集合体Fabをもたらしたことを示す。保存残基の第4の基(HC−E46、HC−R38、HC−D86、LC−R61、LC−D82)は、安定性にとって重要であるFabの下半分の水素結合ネットワーク内に残基を含む。特に、α1−ヘリックス内のアスパラギン酸塩残基は、データセット内の最も高い保存のうちの1つを示した位置に属する。位置LC−R61及びLC−D82での突然変異が、軽鎖内の原線維形成を誘導し、凝集を誘導すると以前から示されている(Helms et al.,J.Mol.Biol.257(1):77−86(1996)を参照されたい)。最後に、高度に保存されているHVR−H3内の4つの位置、HC−A93、HC−R94、HC−P100、HC−D101を特定した。これらのパニング戦略は抗原結合のために選択されていないため、これらの結果は、HVR3ループ立体配座がFabの安定性に関与することを示した。
【0463】
要約すると、高度に保存されている可変ドメインの数個の位置を除いて、多くの位置は、これらの選択においてFab分子の全体的な安定性及び発現に影響を及ぼすことなく突然変異に耐容性を示し得る。さらに、小さなER
posを有するいくつかの位置さえも、保存アミノ酸置換に耐容性を示し得る。例えば、突然変異生成データは、より低いコアの疎水性残基が、Fabの安定性に影響を及ぼすことなく類似の疎水性残基で置換され得ることを呈示した(
図1A〜1F)。単一置換に対するVH/VL安定性の耐性は、ヒトIgG1のCH3ドメインのディープ突然変異生成スキャンから得られた結果に対照的であり、ここで、過半数の残基は、いずれの突然変異にも耐容性を示さなかった(Traxylmayr et al.,J.Mol.Biol.423(3):397−412(2012)を参照されたい)。
【0464】
材料及び方法
A.完全可変ドメインNNKウォークライブラリーの設計及び生成。
G6.31の完全VH(残基2〜113)及びVL(残基2〜107)を、ランダム化にかけた。サブライブラリーにつき10〜12個の後の残基をランダム化した。サブライブラリー内で、TAAコドンをクンケル突然変異生成により各ランダム化した位置で導入した(Kunkel,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83(2):488−492(1985))。10個のVLサブライブラリー及び12個のVHサブライブラリー停止テンプレートを生成した。ライブラリー設計に関して、各位置をNNKコドンを有するオリゴヌクレオチド指向突然変異生成によりランダム化し、ここで、Nは、4つの天然ヌクレオチドのうちのいずれかであり、Kは、50%のT(チミン)及び50%のG(グアニン)である。NNKコドンは、20個の天然アミノ酸のうちのいずれかをコードし得る。軽鎖及び重鎖のサブライブラリーを別々に作製し、次いで、各鎖のそれぞれのライブラリーを組み合わせて、VLライブラリー及びVHライブラリーを形成した。組み合わされたライブラリーは、VHまたはVL NNKウォークライブラリーとも称される。ライブラリーをファージFabフラグメントディスプレイベクター中に作製した。VH NNKウォークライブラリーは、3×10
9個のメンバーのサイズを有したが、VL NNKウォークライブラリーは、8×10
8個のメンバーのサイズを有した。
【0465】
B.抗gD、タンパク質L、またはタンパク質Aのファージパニング選択
結合クローンを、継続的な選択ラウンドにおいて5、0.5、0.1nMのビオチン化VEGFでVHまたはVL NNKウォークファージディスプレイライブラリーをインキュベートすることにより選択し、次いで、室温または37℃で100nMの非ビオチン化VEGFと競合させて、より低い親和性クローンがVEGFに結合することを低減した。結合したクローンをニュートラアビジンでコーティングしたELISAプレートで捕捉し、洗浄し、室温で20分間、100mMのHCl中に溶出した。溶出したファージをpH8.0の1Mの1/10体積のトリスで中和し、次の選択ラウンドの増幅を目的としてE.Coliに感染させるために使用した。
【0466】
抗gD、タンパク質L、またはタンパク質Aによる選択に関して、結合クローンを、抗gD、タンパク質L、またはタンパク質AでコーティングしたELISAプレート上でVHまたはVL NNKウォークファージディスプレイライブラリーをインキュベートすることにより選択し、洗浄し、室温で20分間、100mMのHCl中に溶出した。溶出したファージをpH8.0の1Mの1/10体積のトリスで中和し、次の選択ラウンドの増幅を目的としてE.Coliに感染させるために使用した。
【0467】
C.G6.31ディープ突然変異スキャニングライブラリーのイルミナ配列決定法
ディープ配列決定法に関して、ファージミドDNAを、非選択または選択されたVHまたはVL NNKウォークライブラリーのいずれかからのファージミドベクターを担うE.ColiXL1細胞から単離した。精製したDNAを、VL及びVH領域の限定サイクルPCRに基づく増幅のためのテンプレートとして使用した。PCR産生物をアガロースゲル抽出及び清浄(Qiagen Gel Extraction Kit)により精製した。溶出した増幅産物DNAを、TRUSEQ(商標)DNA試料調製(Illumina)を使用する標準的なイルミナライブラリー調製方法を用いたディープ配列決定法ライブラリー調製のための基準として使用した。アダプター連鎖ライブラリーを、PCRの単一サイクルにかけ、Illumina MISEQ(登録商標)、ペアードエンド300bpで配列決定して、増幅産物の全体の長さを網羅した。
【0468】
D.ディープスキャニング突然変異生成データ分析
FLAShを使用して、配列決定したペアードエンドリードを合わせた(Magoc et al.,Bioinformatics 27(21):2957−2963(2011))。統計的プログラミングラングエッジR(Team RC“R:A language and environment for statistical computing”R Foundation for Statistical Computing(2014))及びShortRead(Morgan et al.,Bioinformatics 25(19):2607−2608(2009))パッケージを使用して、さらなる配列決定法データ分析を実施した。品質管理の第1のステップは、それぞれのHC及びLCバーコードを担った配列に関して濾過することであった。第2のステップにおいて、隣接領域のVH及びVLドメインを、合わせたリードの各々に関して特定し、正確な長さを確認して、挿入または欠失突然変異(挿入欠失)を有する大多数のリードを除去した。配列決定法の誤差をさらに訂正するために、非NNK突然変異を野生型塩基に変換して、2つ超のNNK突然変異を含有したリードを濾過した。位置重量マトリックスを、全てのランダム化した位置の全ての突然変異の頻度を計算することにより生成した。先述されるように、分類された試料中の所与の位置における所与の突然変異の頻度を、未分類の試料中の全く同じ突然変異の頻度で除算することにより、全ての突然変異の濃縮比を計算した(Fowler et al.,Nature Methods7(9):7412−746(2010))。
【0469】
実施例2:G6.31のディープスキャニング突然変異生成法スクリーンは、増強された安定性及び/またはVEGFへの改善された結合親和性を有するアミノ酸残基変異体を特定する。
抗原結合に対するG6.31の単一置換の影響の総合的概論を得るために、実施例1に記載されるVH及びVL NNKウォークライブラリーをVEGFに対してパニングした(
図4A〜4B)。得られた濃縮比(ER)値は、二峰性分布を示した(
図5A〜5B)。突然変異のサブセットは、結合機能に対して強いマイナスの効果を有したが、過半数の突然変異は中立的であり、数個の突然変異は、適合に対して強いプラスの効果を有した。結合に対してマイナスの影響を有した突然変異は、ループがG6.31の結合機能のほとんどを提供すると見なされるHC−HVRか、または抗gDパニングで特定されるようなフレームワークの保存残基内に配置されるほとんどの部分に関する(実施例1を参照されたい)。強力に濃縮された突然変異を、フレームワーク領域及びHC−HVRの低度に保存された区域に主に配置した。これらの結果は、可変ドメインが強く、Fabの抗原結合機能に実質的に影響を及ぼすことなく多くの単一の突然変異に耐容性を示し得る、上述されるgDパニングによる観察(実施例1を参照されたい)を確認する。
【0470】
ディープ突然変異生成スキャニングから得られた結果を確認するために、選択された突然変異を発現させ、精製し、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してそれらのVEGFへの親和性を測定し、示差走査型蛍光定量法(DSF)を使用してそれらの熱安定性(融解温度、T
mにより査定される)を測定した。抗原結合及び折り畳みに対する選択された強力に濃縮された突然変異の効果を評価した。さらに、高く濃縮された突然変異を、Abysisデータベースに従って、ヒト抗体中の所与の位置におけるそれらの存在に基づいて選択した。加えて、強く減損したいくつかの突然変異もマイナスの対象として試験した。示されるG6.31変異体のKd及びT
mは、表2に示される。BIACORE(登録商標)T200デバイスを使用する単一サイクル反応速度分析を使用して、表2に列挙されるKd値を測定した。
表2:ディープスキャニング突然変異生成により特定されたG6.31変異体の特徴付け
【0471】
34個の突然変異(VHにおいて16個及びVLにおいて18個)からのデータを使用すると、濃縮比と、親和性または安定性において得られた増加との間に非線状な関係が観察された(
図5C〜5D)。理論に束縛されるものではないが、これは、ERが、E.Coli内の機能発現、ファージ粒子上でのFabの安定性、ならびに選択タンパク質への結合を含む、多様な要因により影響を受けるという事実を反映する場合があり得る。これが、軽鎖の疎水性コアの部分である突然変異LC−L73Gであることを例証する一例。この位置で疎水性ロイシンを、グリシンと置き換えることにより、コア内の充填が減少し、安定性に欠ける軽鎖がもたらされる可能性が高い。LC−L73G突然変異体のT
mは、その野生型G6.31FabのT
mより14.4℃低い。LC−L73G突然変異は、VEGFパニング実験で減損したが、それは、BIACORE(登録商標)SPRにより測定すると、抗原結合親和性に対する明らかな影響を有しなかった(親和性が野生型G6.31と比較しておよそ1.6倍増加する(すなわち、より低いK
d))。G6.31LC
L73Gの減損が、ファージ上の突然変異の低減したディスプレイの効果である可能性が高く、この効果が、実際の抗原選択よりもこの突然変異体の選択を支配した。さらに、その反対も正である:ディスプレイを増加する突然変異(例えば、発現及び/または安定性を増強することにより)は、濃縮され得る可能性があるが、実際の抗原結合機能は、(偽陽性を生成する)野生型と比較して減退または変化しない。したがって、濃縮により特定された変異体は、結合親和性、安定性、発現、及び/または他の特性のいずれかに関して改善され得る。
【0472】
ディープスキャニング突然変異生成手法により特定されたHVR−H2における2つの突然変異、HC−T57E及びHC−Y58Rは、野生型G6.31と比較して最も高く増加した親和性(8〜9倍)を有した(
図5E)。フレームワーク領域の突然変異、HC−N82aRは、野生型G6.31と比較して、およそ6.6倍の親和性の増加をもたらした(
図5E)。いくつかの他のフレームワーク領域の突然変異は、野生型G6.31と比較して2〜4倍増加した親和性を示した(
図5E〜5F)。熱安定性の最も高い増加は、軽鎖の突然変異LC−F83Aで得られた(+5.4℃)(
図5F)。融解温度の増加に加えて、LC−F83Aは、G6.31のVEGFへの親和性を3倍増加した。驚くべきことに、親和性の増加をもたらした多くの突然変異は、抗原結合部位に対して遠位に配置されていた(
図5E〜5F)。これらの中でもとりわけ、HC−N82aRは、ヘリックスα1とストランドβ Eとの間のループ内に抗原結合部位から22Åを超えて離れて配置され、LC−F83Aは、VLと軽鎖定常ドメイン(CL)との間の界面にHVRから25Åを超えて離れて配置される。
【0473】
要約すると、VH及びVL NNKウォークライブラリーを使用するG6.31のディープスキャニング突然変異生成法ならびに次世代配列決定法は、FabのVEGFへの結合親和性及び/または安定性を増加させたアミノ酸残基改変を特定した。
【0474】
材料及び方法
A.VEGFのファージパニング選択
結合クローンを、継続的な選択ラウンドにおいて5、0.5、0.1nMのビオチン化VEGFでVHまたはVL NNKウォークファージディスプレイライブラリー(実施例1に記載される)をインキュベートすることにより選択し、次いで、室温または37℃で100nMの非ビオチン化VEGFと競合させて、より低い親和性クローンがVEGFに結合することを低減した。結合したクローンをニュートラアビジンでコーティングしたELISAプレートで捕捉し、洗浄し、室温で20分間、100mMのHCl中に溶出した。溶出したファージをpH8.0の1Mの1/10体積のトリスで中和し、次の選択ラウンドの増幅を目的としてE.Coliに感染させるために使用した。
【0475】
B.G6.31ディープ突然変異スキャニングライブラリーのイルミナ配列決定法及びデータ分析
ディープ配列決定法に関して、ファージミドDNAを、非選択または選択された、VEGFに対してパニングしたVH及びVL NNKウォークライブラリーのいずれかからのファージミドベクターを担うE.ColiXL1細胞から単離した。精製したDNAを、VL及びVH領域の限定サイクルPCRに基づく増幅のためのテンプレートとして使用した。PCR産生物をアガロースゲル抽出及び清浄(Qiagen Gel Extraction Kit)により精製した。溶出した増幅産物DNAを、TRUSEQ(商標)DNA試料調製(Illumina)を使用する標準イルミナライブラリー調製方法を用いたディープ配列決定法ライブラリー調製のための基準として使用した。アダプター連鎖ライブラリーを、PCRの単一サイクルにかけ、Illumina MISEQ(登録商標)、ペアードエンド300bpで配列決定して、増幅産物の全体の長さを網羅した。データ分析を実施例1のように実施して、位置重量マトリックス及び濃縮比を計算した。
【0476】
C.抗体発現
選択された変異体のVH及びVL配列を、発現のために哺乳動物Fabベクターにクローンニングした。重鎖及び軽鎖の両方のプラスミドを、30mlの293T細胞に、7日間トランスフェクトした(15μg)。上清を収穫して、タンパク質Gカラムにより精製した。
【0477】
D.BIACORE(登録商標)SPRによる抗体親和性決定
選択されたFab変異体の結合親和性を決定するために、BIACORE(登録商標)T200機器を用いたSPR測定を使用した。簡潔には、シリーズSセンサチップCM5を、供給者の指示書に従って、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)試薬を用いて活性化し、ヒトVEGF(hVEGF)をカップリングして、50〜80の応答単位(RU)を達成し、次いで、1Mのエタノールアミンで未反応基を遮断した。
【0478】
HBS−P緩衝液(0.01MのHEPES、pH7.4、0.15のMのNaCl、0.005%の界面活性剤P20)中のFabの低(0.02nM)から高(50nM)の3倍段階希釈液を注入した(流量:30μl/分)。hVEGFにおける結合応答を、空のフローセルからRUを控除することにより訂正した。センサグラムを記録し、参照及び緩衝液控除にかけて、その後、BIACORE(登録商標)T200 Evaluation Software(バージョン2.0)により評価した。単純な1対1ラングミュア結合モデルを使用して、会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を計算した。平衡解離定数(Kd)をk
off/k
on比として計算した。
【0479】
E.示差走査型蛍光定量法による融解温度(T
m)の決定
示差走査型蛍光定量法(DSF)は、蛍光色素の存在下でのタンパク質の熱変性を監視し、典型的には、リアルタイムPCR機器(例えば、Bio−Rad CFX)を使用することにより実施される。SYPRO(登録商標)オレンジ色素(Invitrogen,Cat.番号 S6650)をリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中で1:20に希釈した。1μlの希釈色素を、1ウェルにつき24μlのFabタンパク質(およそ100μg/ml)中に添加した。リアルタイムPCR機器(Bio−Rad CFX)を使用して温度を20℃から100℃に増加し、蛍光強度をプロットし、ボルツマン方程式などの方程式を使用して遷移曲線(T
m)の変曲点を計算した(例えば、Niesen et al.,Nature Protocols 2(9):2212−2221(2007)を参照されたい)。
【0480】
実施例3:LC−F83の立体配座変化は、G6構造におけるFabのL字型立体配座と相互関連する。
抗原結合部位から空間遠隔にある突然変異がどのようにして抗原結合及び安定性に対してかかる強力な影響を有し得る可能性があるのかを理解するために、LC−F83Aの突然変異の構造効果をより詳細に調べた。G6.31の親抗体であるG6は、VEGF結合及びVEGF遊離形態で先に結晶化されている(Fuh et al.(上記))。G6.31は、G6と比較して、HVR−L3においてわずか4つの置換を担う。したがって、G6の結晶構造をG6.31のモデルとして使用した。G6のVEGF遊離形態の結晶構造は、非対称な単位の中に12個のFab分子を含有する。Fab構造は、定常ドメインの可変ドメイン(V−C界面)への配向に基づいて2つの異なる基にクラスター形成され得(
図6A)、これは、FabのL字型領域内の異なる立体配座の結果であり、FabのL字型角度を測定することにより定量化され得る(例えば、Stanfield et al.,J.Mol.Biol.357(5):1566−1574(2006)を参照されたい)。
【0481】
FabのL字型角度の柔軟性は、重鎖内の球状ソケットジョイントにより影響を受け(例えば、Lesk et al.,Nature 335(6186):188−190(1988)を参照されたい)るだけでなく、軽鎖クラスによっても支配され得、これが、恐らくより重要である。典型的には、カッパ軽鎖抗体はL字型角度に制限され、それらは、めったに180°を超えないおよそ140°及びおよそ175°の二峰性分布ピーキングに適合し、かつそれらを示し得るが、ラムダ軽鎖抗体は、幅広い範囲の角度を取り得る(例えば、Stanfield et al.(上記)を参照されたい)。結晶構造内の6つのG6分子は、小さなL字型角度(143〜155°)及びVLのα1に対してCLドメインのDE−ループの密充填を有するが、他の6つの分子は、緩く充填されたVL−CL界面と共に大きなL字型角度(170〜187°)を有する(
図6B〜6C)。緩く充填または密充填されたVL−CL界面を有する異なるFab分子の界面域分布は、
図7Cに示される。密充填された界面域は、平均で、およそ600Åであるが、緩く充填された界面域は、およそ450Åである。さらに詳細なかつより詳細な分析は、6つのG6
遊離分子が、密充填されたVL−CL界面(VLのα1に対して充填されたCLドメインのDE−ループを含む;304±48Å
2)に関連付けられる小さなL字型角度(143〜155°)を有する一方で、他の6つの分子は、より低度に密充填されたVL−CL界面(234±29Å
2界面域)と共に大きなL字型角度(170〜187°)を有することを明らかにした。したがって、G6結晶構造は、G6が、180°未満のL字型角度を有する典型的なヒトカッパ軽鎖抗体のように挙動することを明らかにする(
図6A〜6C)。
【0482】
LC−F83の側鎖立体配座は、FabのL字型角度の変化と相互関連した。大きなL字型角度構造において、LC−F83は、VLドメインの遠位キャッピング領域内で疎水性ポケットと密に結合する(「内」立体配座と称される)(
図6C)。小さなL字型構造において、LC−F83は、疎水性ポケットから弾き出され(「外」立体配座と称される)、部分的に溶媒に曝露される(
図6B)。LC−F83は、FabのL字型領域に空間近接して配置されるが、L字型の部分ではない。しかし、LC−F83’の立体配座変化は、L字型残基LC−I106の側鎖位置の変化により反映される。LC−F83が「外」立体配座である構造において、LC−F106Iの側鎖は、「上方」に移動し、疎水性ポケットを占める。対照的に、LC−F83が「内」立体配座である構造において、LC−I106の側鎖は、「下方」に移動する(「上方」及び「下方」配向は、「上方」にあるHVR及び「下方」にある定常ドメインに関して記載されることに留意されたい)。LC−F83と対照的に、LC−I106の移動は、側鎖に限定されず、タンパク質主鎖においても立体配座変化をもたらし(LC−105Φ角度、LC−106ψ角度)、結果として、異なるL字型角度が観察される可能性が高い。要約すると、G6の結晶構造は、G6におけるL字型角度の変化が、位置LC−I106及びLC−F83での立体配座変化を必要とすることを呈示した。
【0483】
実施例4:LC−83Fの立体配座とLC−106Iの立体配座とのカップリングは、ヒト抗体構造における一般的な特徴である。
G6/G6.31は、ファージライブラリーから発生した、重鎖及び軽鎖の一般的なフレームワーク領域上に作成される(Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004))。軽鎖の最も近接した生殖細胞系遺伝子は、IGKV1−39及びIGKJ1である。IMGTデータベースによる、最も一般的に使用されるヒトIGKV下位群(Lefranc et al.,In Silico Biology 5(1):45−60(2005))である、IGKV1及びIGKV3は、位置LC−83でフェニルアラニンを担うが、その他の頻繁にはあまり使用されない生殖細胞系は典型的には、位置83でバリン(IGKV2及びIGKV4)またはアラニン(IGKV5及びIGKV6)を担う。位置LC−106でのイソロイシンは、全ての5つのヒトIGKJ生殖細胞系遺伝子内に保存される。
【0484】
位置F83の側鎖立体配座とFabのL字型立体配座とのカップリングがヒト抗体における一般的な特徴であるかどうかを決定するために、LC−F83の立体配座を、タンパク質データバンク(PDB)からの319個のヒトFab結晶構造において決定した。構造を、「内」立体配座(−50°〜−100°の二面角chi1)のLC−F83を有する構造及び「外」立体配座の構造(主に50°〜180°のchi1角度)として群分けした(
図7A)。LC−F83立体配座は、大多数の構造において、位置LC−106でのFabのL字型領域の変化と相互関連した(
図7B)。さらに、2つの群は、L字型角度における著しい差異(
図7C)、ならびにV−C界面域における著しい差異を示し、これは、大きなL字型角度を有する構造が、より小さく、かつより低度に充填されたV−C界面を有し、大きなL字型角度を有する構造が大きなV−C界面を有することを示した(
図7C)。
【0485】
LC−F83Aの突然変異がより高い熱安定性、及び抗原へのより高い親和性をもたらしたため、LC−83A及びLC−106Iを担うPDBにおいて入手可能な20個のヒトFab構造のL字型角度を決定した。これらの構造は、LC−83Fの「外」確認構造の特性を反映した:それらは、小さなL字型角度及び大きなV−C界面を示した(
図7C)。
【0486】
要約すると、これらの結果は、以前に観察されたようなヒトカッパ軽鎖抗体のFabのL字型角度における二峰性分布(Stanfield et al.(上記))が主に、位置LC−83でのフェニルアラニン側鎖の異なる立体配座の結果であることを示した。データは、位置LC−83に存在するアミノ酸の種類が、FabのL字型角度に対して大きな影響を有することをさらに示した。
【0487】
材料及び方法
ヒト抗体構造を構造抗体データベースから得た(SAbDab,Dunbar et al.,Nucleic Acids Research 42:D1140−1146(2014))。Bio3Dを使用して、追加の構造濾過及び構造ハンドリング(アミノ酸の再番号付け、二面角の決定、構造整列)を実施した(Grant et al.,Bioinformatics 22(21):2695−2696(2006))。CCP4−Pisaの局所的事例を使用して、定常ドメインと可変ドメインとの間の界面域を計算した(Krissinel et al.,J.Mol.Biol.372(3):774−797(2007))。ABangle(Dunbar et al.,Protein Eng.Des.Sel.26(10):611−620(2013))を、VH−VL相互作用を特徴付けるために使用した。Pymol及び公的に入手可能なスクリプトを、L字型角度を計算するために使用した。
【0488】
実施例5:分子動力学シミュレーションは、位置LC−83が大きなFabのL字型立体配座と小さなFabのL字型立体配座との間を遷移するスイッチのように作用することを確認する。
分子動力学を、実施例4に記載される構造メタ分析で特定されるLC−F83Aの突然変異の作用のさらなる見識を得るために使用した。LC−F83Aの突然変異の効果を2つの異なる構造的背景でシミュレーションした。大きなL字型角度を有するG6Fabの結晶構造(G6鎖VU、「VU.F83」)及び小さなL字型角度を有する結晶構造(G6鎖BA、「BA.F83」)を使用した。突然変異型構造(VU.F83A及びBA.F83A)に加えて両方の構造を水中で100ns間、シミュレーションした。シミュレーションの時間の間、F83の立体配座における変化は観察されなかった:VU.F83の場合、LC−F83は「内」立体配座内に留まり、BA.F83の場合、残基は「外」立体配座内に留まった(
図8A)。シミュレーションの間の時間の経過におけるL字型角度の変化の比較は、全ての4つの分子のL字型角度は、約25nsの最初の平衡化相の後、シミュレーションの間ほぼ安定したままであったことを明らかにした(
図8B)。BA.F83及びBA.F83AのL字型角度分布において統計的に著しい差異は観察されなかった。両方の分子に関して、L字型角度は、大体135°で変動した。しかし、シミュレーションの間、VU.F83のL字型角度とVU.F83AのL字型角度との間に著しい差異が存在した。シミュレーションの最初の25nsの間、VU.F83AのL字型角度が落ち込み、大体140°に変動したが、VU.F83のL字型角度は、161°の大きな角度で安定したままであった(
図9A)。
【0489】
上記で表示された結果は、大きなFabのL字型角度を安定させるためにLC−F83の「内」立体配座が重要であることを示す。LC−F83Aの突然変異は、分子動力学シミュレーションにおいて、小さなL字型角度への迅速な遷移及びより大きなVL−CL界面をもたらした。LC−F83側鎖の「内」から「外」立体配座への遷移及びその逆の遷移が観察され得る可能性がないため、これらの結果は、LC−F83が分子のL字型角度の変化において著しいエネルギーバリアを課すことを呈示する。
【0490】
これらを踏まえると、G6.31と比較した場合のG6.31
LC−F83Aの熱安定性の増加は、V−C界面の相互作用域が増加し、したがって、Fabの4つのドメインの折り畳みがさらに安定することにより説明することができる。さらに、V−C界面のより密な充填は、LC−I106のように疎水性残基の溶媒曝露を低減する。
【0491】
材料及び方法
amber12を使用して、分子動力学シミュレーションを実施した(Case et al.,J.Comput.Chem.26(16):1668−1688(2005))。記載されていない場合、定常圧力及び300Kで、100nsをシミュレーションした。シミュレーションの前に、PDBのエントリー4hh9を使用して、電子密度の欠如に起因して分解されなかったG6構造の定常ドメイン内の区域を補足した。VMD(Humphrey et al.,Journal of Molecular Graphics 14(1):33−38,27−38(1996))、Bio3d、CCP4−Pisa、Pymol、及びABangleを使用して、得られたシミュレーション構造を分析した。
【0492】
実施例6:G6FabのL字型角度動態は、VH−VL回旋角度を調節することにより抗原結合界面に影響を与える。
FabのL字型角度の変化により、LC−F83A変異体における融解温度の増加の説明がついたが、FabのL字型動態の変化によっては、抗原結合に対するこの突然変異の効果の直接的な説明がつかなかった。理論に束縛されるものではないが、LC−F83Aの突然変異は、LC−F83AがVH−VL界面に近接してあり、かつVH及びVLドメインの互いに対する配向に影響を及ぼし得る可能性があるため、FabのL字型角度の変化を介して抗原結合に間接的に影響を与え得る可能性があるか、または抗原結合に直接的に影響を与え得る可能性がある。VH−VL界面は、抗原と直接接触していないが、抗原結合親和性に強力な影響を有し得る(例えば、Masuda et al.,FEBS J.273(10):2184−2194(2006)、Khalifa et al.,Journal of Molecular Recognition 13(3):127−139(2000)を参照されたい)。さらに、抗原遊離の状態において、FabのVH−VL界面は典型的には柔軟性であるが、抗原結合は剛性の増加をもたらす(Dunbar et al.,Prot.Eng.Des.Sel.26(10):611−620(2013))。加えて、VH−VL配向は、リガンド遊離と抗原結合形態との間で実質的に異なり得る(例えば、Stanfield et al.,Structure1(2):83−93(1993)を参照されたい)。
【0493】
確かに、G6の結晶構造は、柔軟性、及び異なるG6抗原遊離構造(G6
非結合)と、VEGF結合構造(G6
結合)との間にあるVH/VL回旋角度(HL回旋角度)において著しい差異を示した。大きなL字型角度を有する6つのG6
遊離分子の平均VH/VL回旋角度(HL回旋角度)は、およそ60°であるが、小さなL字型を有する6つの分子に関して、それはおよそ58°である。これは、したがって、−55°であるG6
VEGFの平均HL回旋角度に実質的により近接している(
図9B)。
【0494】
回旋角度におけるこれらの変化が結晶化の人為的結果である可能性を除外するために、分子動力学シミュレーションを使用した。VU.F83のHL回旋角度の中央値は、およそ62°であるが、それはBA.F83に関してはおよそ59°であり、G6
非結合結晶構造で見られた結果と一致する。さらに、2つの突然変異体Fab(BA.F83A及びVU.F83A)は、さらにより小さな回旋角度(それぞれ、およそ57°及びおよそ57°)を示し、それは、G6
結合構造で観察された回旋角度にさらにより近接している(
図9C)。さらに、LC−F83Aでの突然変異は、BA.F83AのHL角度がBA.F83のHL角度より著しく小さい(p<0.0001)場合、VH−VL界面に対する突然変異の追加の効果を呈示した。
【0495】
これらの結果は、LC−F83Aの突然変異が、HL回旋角度、次いで、2つの異なる機序による抗原結合に影響を与えることを示した。第1に、LC−F83Aの突然変異は、FabのL字型角度を変化させることによりこれを間接的に媒介する。構造データ及び分子動力学シミュレーションは、L字型角度とHL角度との間に相関性があることを示した(
図8A〜8C及び9A〜9D)。第2に、LC−83は、VH−VL界面に直接的に影響を与える。LC−F83Aが導入されたときに、HL回旋角度の追加の著しい増加が存在した(
図9A〜9D、分子BA.F83及びBA.F83Aの比較)。結果は、G6
VEGFの構造で観察されたものにより近接しているG6.31
LC−F83Aの抗原遊離形態における抗原結合部位構成である。理論に束縛されるものではないが、G6.31
LC−F83Aの再配列された抗原結合界面が、VEGF結合に対するより低いエネルギーコストをもたらし、したがって、観察されたG6.31
LC−F83Aの親和性の増加(減少したKd)をもたらし得る可能性がある。さらに、おそらくG6.31
LC−F83AにおけるVH−VL界面のより良好な充填により、代替的または追加の折り畳み安定化機序が提供され(例えば、Rothlisberger et al.,J.Mol.Biol.347(4):773−789(2005)を参照されたい)、観察されたT
mの増加の説明をつけることができる可能性がある。
【0496】
材料及び方法
構造分析及び分子動力学シミュレーションを実施例3〜5に記載されるように実施した。
【0497】
実施例7:水素−重水素交換質量分析(HDX−MS)により、G6.31と比較してG6.31
F83Aにおける定常可変界面、ならびに抗原結合領域の立体配座変化を確認する。
実施例3〜6に記載されるLC−F83Aの突然変異に起因するFab分子のドメイン間動態の変化が溶液中で観察され得ることを示すために、HDX−MSを使用した。HDX−MSは、主鎖アミド水素原子と重水素との交換速度を測定する。主鎖アミド水素原子は典型的には、それらが溶媒曝露され、かつ水素結合の形成を伴わない場合、それらが埋没され、かつ/または水素結合の形成を伴うときと比較してより速く交換する。いくつかの領域は、G6.31の水素−重水素交換パターンがG6.31
LC−F83Aと比較されるとき差異を示す(
図9D)。VL−CL界面を形成し、LC−F83Aの突然変異に近位するCLドメインのDE−ループは、G6.31と比較してG6.31
LC−F83Aにおいてよりゆっくりと交換した。HVRループ及び隣接領域の交換速度の変化も観察された。HVRループH1及びL2は、G6.31と比較してG6.31
LC−F83Aにおいてよりゆっくりと交換したが、VH−VL界面にあるHVR−H3ループの隣接領域は、より速く交換した。HVR−L2及びHVR−H3ループは、VH−VL界面の部分である(例えば、Vargas−Madrazo et al.,Journal of Molecular Recognition 16(3):113−120(2003)、Aburatani et al.,J.Biochem.132(5):775−782(2002)、Padlan,Molecular Immunology 31(3):169−217(1994)を参照されたい)。したがって、G6.31とG6.31
LC−F83Aとの間のHDX−MSにおけるHVR及びVL−CL界面で観察された交換パターンの変化は独立して、構造分析及び分子動力学シミュレーションから得られた結果を確認した。
【0498】
材料及び方法
G6.31WT及びF83Aの突然変異体試料(45μM)を15倍に希釈して、pD7.0の20mMの酢酸ヒスチジン緩衝液及び>90%のD
2O含有量を有する50mMのNaCl中に入れて、20℃で標識反応を開始した。30秒〜1000分の期間の6つの対数的に離間した間隔時間で、pH低減(pH2.5)、ならびに2Mの塩化グアニジウム(GdmCl)及び0.25Mのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の添加により標識反応を停止し、その後、冷却オンラインシステムに注入した(例えば、Mayne et al.J.Am.Soc.Mass Spectrom.22(11):1898−1905,2011を参照されたい)。
【0499】
簡潔には、停止した試料をまず、タンパク質分解のために固定化ペプシンカラム(2.1×30mm、Applied Biosystems)に0℃で通過させ、次いで、脱塩のためにトラップカラムに結合させ(ACQUITY VANGUARD(商標)C8)、その後、逆相クロマトグラフィーにより分離し(ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18、1.7μmの粒子サイズ、1.0×50mm)、重水素含有量の測定のために質量分光計に導入した(Thermo ORBITRAP ELITE(商標)、m/z400での120kのHz分解)。クロマトグラフ移動相を、先述されるように2.25のpHで調製して(Walters et al.J.Am.Soc.Mass Spectrom.23(12):2132−2139,2012)、重水素回収を最大化したが、これは、完全に重水素化された対照物の測定により平均すると82%であった。突然変異体及び野生型実験を組み合わせ、ランダム化した時点を三連で収集し、全体の工程をLEAPv1ロボット工学プラットホーム(Leap Technologies,Carrboro,NC)により自動化し、全ての試料ハンドリングステップを実施した。この工程は、大体95%の配列網羅を提供する、野生型及び突然変異体試料の両方に関してExMSプログラムにより一貫して特定された152個の固有のペプチドをもたらした(Kan et al.J.Am.Soc.Mass Spectrom.22(11):1906−1915,2011)。重水素含有量の分析は、先述されるカスタムパイソンスクリプトの使用を伴い(Kan et al.(上記);Walters et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110(47):18898−18903,2013、及びHu et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110(19):7684−7689,2013)、野生型と突然変異体との間の重水素取り込みレベルにおける著しい差異を、HDX−MS実験に関して先述される、p−値<0.05を有するようなスチューデントのt−試験により特定した(Leurs et al.Anal.Chem.86(23):11734−11741,2014)。
【0500】
実施例8:ヒト抗体における体細胞超突然変異は、LC−83及びLC−106を標的とする。
位置LC−83は、IGKV1−39生殖細胞系軽鎖遺伝子内のAIDホットスポットモチーフ(RGYW、式中、Rがプリンであり、Yがピリミジンであり、WがAまたはTである)に近接して配置される。LC−F83Aの突然変異により引き起こされた熱安定性の増加は、G6.31と同じ生殖細胞系から発生する他の抗体に伝達可能であった。したがって、ヒト抗体中の位置LC−83での体細胞突然変異の頻度を評価した。加えて、LC−106もこの分析に含めた。
【0501】
IGKV1生殖細胞系から発生する軽鎖配列内の体細胞超突然変異(SHM)の分布を調べるために、2つの手法を使用した。まず、いくつかの公的に入手可能なデータベースで入手可能な4623個の固有のヒトIGKV1軽鎖配列の体細胞突然変異を照合した(
図10A、上のパネル)。第2に、1000を超える個別のヒトリンパ系組織から発生するRNAからのIGKV1配列を増幅し、続いて、高性能の再現性がある単一分子リアルタイム配列決定法(SMRT)及びSHM照合を行った。2つのデータセットの異なる起源に関わらす、体細胞突然変異の非常に類似した分布が観察された(
図10A〜10C)。LC−83は、VLセグメント内で最も頻繁に突然変異される位置のうちの1つであり、全てのIGKV1配列のうちのそれぞれ7%及び19%が2つのデータセット内のLC−83で突然変異を担う。興味深いことに、位置LC−106も、IGKV1配列において頻繁に突然変異し(それぞれ9%及び20%)、最も一般的な突然変異は、バリンである。G6VLの最も近接した生殖細胞系遺伝子セグメントは、IGKV1−39及びIGJ1である。したがって、IGKV1.39の生殖細胞系源の抗体を調べると、LC−F83での体細胞突然変異が主に、より小さな側鎖(セリン、バリン、及びロイシンを含む)をもたらすことが明らかになった(
図10A〜10C)。IGKV1.39の抗体中のアラニン置換は観察されなかったが、これは、アラニン突然変異が、LC−F83でのコドンにおいて2つの塩基置換を必要とすることに因る可能性が高いが、これはめったに生じない。
【0502】
次に、位置LC−83及びLC−106の最も頻繁な体細胞突然変異を担うG6.31Fab変異体を生成し、抗原結合及び熱安定性に対するそれらの効果を決定した(
図10D)。全ての単一の突然変異体は、おそらく、FabのL字型角度を減少し、VL−CL界面域を増加することによりT
mを4.8℃〜6℃増加させた。一貫して、二重突然変異LC−F83A/LC−I106Vは、T
mの著しい増加をもたらさなかった。理論に束縛されるものではないが、両方の側鎖のサイズを同時に低減することにより、典型的にはLC−F83またはLC−I106が占める疎水性空洞に空隙が残り、VLがCLに対して安定した充填を行う能力が低減されるであろう。VEGF親和性に対するLC−83の突然変異の効果は混合している。LC−F83Vは、LC−F83Aと類似して3倍増加した親和性をもたらす一方で、突然変異LC−F83S及びLC−I106Vは、親和性の増加をほとんど示さなかった。抗原親和性に対するLC−83の突然変異の効果は、状況に依存し得る。LC−F83Aの突然変異をG6.31と同じ生殖細胞系から発生した別の抗体に導入すると、熱安定性及び親和性において類似の増加が観察された。さらに、LC−F83Sの突然変異が、抗エストラジオール抗体の親和性を増加させることが報告されている。
【0503】
要約すると、LC−83及びLC−106は、ヒト抗体中で頻繁に突然変異される。親和性及び安定性に対するこれらの2つの位置の影響を考慮すると、全体的なFabドメイン動態の最適化は、インビボでの抗体親和性成熟中でよく利用され得る分子機序である。
【0504】
材料及び方法
ヒト軽鎖配列を、様々な公的に入手可能な源から得た:Abysis(bioinf.org.uk/abysisのウェブサイトで入手可能である)、Kabatデータベース(Martin,Proteins 25(1):130−133(1996))、IMGTデータベース(Lefranc,Molecular Biotechnology40(1):101−111(2008))、ジェンバンク(Benson et al.,Nucleic Acids Research 43:D30−35(2015))、及びタンパク質データバンク(Berman et al.,Nucleic Acids Research 28(1):235−242(2000))。二重の配列を除去し、IGBlast(Ye et al.,Nucleic Acids Research 41:W34−40(2013))を使用して、最も近接した生殖細胞系遺伝子をそれぞれのV−セグメントに関して割り当てた。マウスまたはラット生殖細胞系が割り当てられた配列をデータセットから除去した。配列をKabat番号付けし(例えば、Wu et al.,J.Exp.Med.132(2):211−250(1970)を参照されたい)、V−セグメントのフレームワーク内の体細胞突然変異を特定した。この分析において、HVR領域内の突然変異(Kabat番号付けスキーマにより定義されるような)を考慮しなかった。
【0505】
ヒト抗体配列の第2の源は、1088の個体から発生したヒト脾臓、扁桃、骨髄、及び末梢血液リンパ球からの、市販されているRNAからのものである(Clonetech and Amsbio)。まず、SMARTER(登録商標)RACE cDNA Amplification Kit(Clonetech)を使用して、RNAをcDNAに転写した。IGKV特異性DNAに対しては、IGKC領域の5’の領域をアニールするカスタムプライマー(5’−CATCAGATGGCGGGAAGATGAAGACAGATGGTGC−3’(配列番号56))を有する5’RACE(Advantage 2 PCR Kit,Clonetech)を使用して増幅したが、IGKV1セグメントに対しては、プライマーを使用する第2のPCRステップで濃縮した:フォワード:5’−GCCATCCAGATGACCCAGTCTCC−3’(配列番号57)及びリバース:5’−GGCTGCACCATCTGTCTTC−3’(配列番号58)。Pacific Bioscience RSII(EA Genomic Services)を使用して、PCR産生物をゲル精製し、配列決定した。全部で994.8Mbpが得られた。Pacific Bioscience’s SMRT Analysis 2.3ソフトウェアパッケージを使用して、各リードのコンセンサス配列を作製した。VDJFastaを使用して、コンセンサス配列の生殖細胞系アノテーションを実施した(Glanville et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106(48):20216−20221)。配列をKabat番号付けし、V−セグメントのフレームワーク内の体細胞突然変異を特定した。全体として、19034個の配列がIGKV1としてアノテートされ、そのうちの3796個が少なくとも3つのフレームワーク領域及び2つのHVRを含有し、SHM分布を生成するように含まれた。
【0506】
実施例9:G6.31の表面荷電変異体の特定
G6.31のpIを低下させるために使用され得る可能性がある突然変異を単離するために、G6結晶構造からの構造情報を使用して、表面が曝露された位置を可変ドメイン内で特定した。グルタミン酸塩への置換がNNKウォークVH及びVLライブラリーのVEGFパニングに基づいて1以上の濃縮比を示した位置を選択して(実施例2)、BIACORE(登録商標)T200システムを使用する単一サイクル反応速度分析によるVEGF結合親和性、及び熱安定性(DSF)に対するそれらの影響を試験した(表3A)。上述されるように、グルタミン酸塩への置換、ならびに他の荷電残基(例えば、アルギニン、リジン)を含有する突然変異体を生成し、発現させ、精製した(実施例2、材料及び方法を参照されたい)。いくつかの事例において、いくつかの変異体に関して表3Aに列挙される全体的なKdは、単一サイクル反応速度分析(表3A)と複数のサイクル反応速度分析(表4)との間にある適合差異に起因して、表4の結果と比較するとより弱いことを留意されたい。表3Bは、示される変異体に関する収率、モノマーパーセント(モノマー%)、及び溶出時間を示す。
表3A:表面が曝露された荷電変異体の特徴付け
表3B:表面が曝露された荷電変異体に関する精製パラメータ
【0507】
表3Aに示されるように、G6.31と比較して匹敵するかまたはVEGFへの改善された結合親和性を有した、いくつかの表面が曝露された荷電変異体が特定された。
【0508】
実施例10:VEGFへの改善された結合親和性及び改善された安定性を有する組み合わせ変異体の生成及び特徴付け
A.VEGFへの改善された結合親和性及び改善された安定性を有する変異体の生成
G6.31は、HVR−L3(N94−P95)内に自己切断部位を含有し、それは、その安定性に影響を及ぼし得る可能性がある。実施例2に記載される単一変異体の組み合わせ(例えば、表2を参照されたい)を、増加した結合親和性及び増加した安定性を有するクローンを特定するために組み合わせた。特に4つの突然変異:LC−F83A(改善された熱安定性及び親和性を提供する)、LC−N94A(自己切断部位を除去する)、HC−Y58R(親和性を改善する)、及びHC−N82aR(親和性を改善する)に焦点をあてた。自己切断部位を除去することを意図する位置LC−N94でのいくつかの他の置換も、複数のサイクル反応速度測定によりVEGFへの結合親和性、ならびにDSFにより安定性に対するそれらの効果に関して試験した(表4)。自己切断部位の除去は、非還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE−SDS)を使用して決定した低分子量構成要素のパーセンテージにより査定すると、フラグメンテーションを一貫して低減させていた(
図12)。
表4:自己切断部位変異体の親和性及び熱安定性
【0509】
LC−F83A、LC−N94A、HC−Y58R、及びHC−N82aR変異体を組み合わせて単一のクローン(「Y58R.N94A.N82aR.F83A」、「G6.31AARR」とも称される)にすることにより、VEGFへの明らかに増加した結合親和性がもたらされ(Kd=80pM)、G6.31と比較すると6.6倍改善された。Y58R.N94A.N82aR.F83Aは、明らかに改善された熱安定性も有し、G6.31と比較するとT
mが4.8℃増加した。(表5)。Y58R.N94A.N82aR.F83AのVHドメインのアミノ酸配列は、配列番号11で示され、VLドメインのアミノ酸配列は、配列番号12で示される。
表5:組み合わせ変異体Y58R.N94A.N82aR.F83Aは、G6.31と比較してVEGFへの改善された結合親和性及び改善された安定性を有する。
【0510】
B.改変されたpIを有する表面が曝露された荷電変異体の生成
より低いpIを有する変異体を生成するために、いくつかのグルタミン酸塩置換をG6.31の配列に導入した。単一の表面が曝露された荷電変異体の突然変異データ(表3A〜3B)に基づいて、VEGF結合に対して大きなマイナスの影響を有さなかった変異体をさらなる操作のために選択した。発現レベル(収率により査定される場合)及び低減した凝集(高モノマー%により査定される場合)も、突然変異の選択において考慮した。APBSを使用して、G6.31の等静電表面を計算した(Baker et al.Proc Natl.Acad.Sci.USA 98(18):10037−10041(2001))。選択されたグルタミン酸塩突然変異を、静電表面上にマッピングし、(i)空間近接して配置された突然変異を回避し、(ii)強力な、正に荷電されたパッチ内に配置された突然変異を有利としたグルタミン酸塩突然変異の組み合わせを選択した。2つの重鎖の組み合わせ変異体(R19Eを有するもの、及び有しないもの)及び5つの軽鎖の組み合わせ変異体をさらなる特徴付けのために生成した(表6)。全ての軽鎖の組み合わせ変異体は、自己切断部位を除去するためのLC−N94Aの突然変異及び抗体の熱安定性を改善するためのLC−F83Aの突然変異を含有した。いくつかの変異体は、VEGFへの改善された親和性を示した(表6、表7、及び表9)を参照されたい。例えば、HCLC2及びHCLC5は、G6.31と比較して改善された親和性及び明らかに低減したpI(G6.31のpI8.9と比較して、それぞれpI5.3及び5.6)を示した(表7及び表9を参照されたい)。
表6:表面が曝露された荷電変異体の組み合わせ
表7:表面が曝露された荷電変異体結合の組み合わせのVEGFに対する反応速度
【0511】
加えて、選択された表面が曝露されたグルタミン酸塩置換と、親和性及び/または安定性を改善した単一変異体とを含むいくつかの他の組み合わせ変異体を生成した(表8)。
表8:追加の組み合わせ変異体の結合反応速度
【0512】
表9は、選択された組み合わせ変異体の結合親和性、安定性、及びpIデータの要約を示す。インハウスプログラムを使用して、かつ標準的なpI対照を用いて等電点電気泳動(IEF)ゲルを実行することにより、抗体pIを計算した。表10は、これらの抗体の対応するVH及びVLアミノ酸配列を示す。表11は、これらの抗体のVL HVRアミノ酸配列を示す。表12は、これらの抗体のVH HVRアミノ酸配列を示す。
表9:選択された組み合わせ変異体の要約
表10:表9の抗体のVH及びVLアミノ酸配列
表11:表9の抗体のVL HVR配列
表12:表9の抗体のVH HVR配列
【0513】
上記に列挙される抗体のうちのいずれか、例えば、G6.31AARRのFab重鎖の上ヒンジ領域は突然変異されて、文献に報告されている抗IgG1ヒンジ自己抗体に対する反応性が除去され得る。例えば、Brezski et al.,J.Immunol.181:3183−3192,2008及びBrezski et al.,mAbs 2:3,212−220,2010を参照されたい。したがって、G6.31AARR重鎖のC末端アミノ酸は、T(野生型(WT)バージョン)またはL(抗ヒトIgGFabに対する反応性を欠く変異体バージョン)のいずれかであり得る。野生型G6.31AARRの完全長重鎖アミノ酸配列は、配列番号48である。抗ヒトIgGのFabに対する反応性を欠く変異体バージョンの完全長重鎖アミノ酸配列は、配列番号49である。G6.31AARR、及び抗ヒトIgGのFabに対する反応性を欠く変異体バージョンの両方の完全長軽鎖アミノ酸配列は、配列番号50である。
【0514】
要約すると、ディープスキャニング突然変異生成法により特定された変異体の組み合わせは、改善された特性を有する抗体をもたらした。いくつかの事例において、それらの抗体は、G6.31と比較してVEGFへの改善された結合親和性、ならびに改善された安定性(明らかに増加したT
mにより判断した場合)を有した。いくつかの変異体(例えば、抗体HCcombo、HCLC1、HCLC2、HCLC3、HCLC4、及びHCLC5)は、VEGFへの改善された結合親和性及び明らかに低減したpIの両方を有した。低減したpIを有する変異体に関して、重鎖後方のR19Eの突然変異を、位置19で元のアルギニン(例えば、R19HCcombo、R19HCLC2、R19HCLC4、及びR19HCLC5にあるような)に回復させることにより、さらなる親和性の改善及び増加したT
m(約2.2〜2.8℃の分)を有する変異体がもたらされた。
【0515】
実施例11:ウサギにおける硝子体内投与後のG6.31変異体の眼の薬物動態及び全身性薬物動態
インビボでのG6.31変異体の薬物動態(PK)特性を査定するために、ニュージーランドホワイト(NZW)ウサギを使用して以下の実験を実施した。2つの異なるG6.31変異体である、G6.31AAEE(LC−N94A.LC−F83A.HC−A40E.HC−T57E)及びG6.31AARR(Y58R.N94A.N82aR.F83A)、ならびに親G6.31WTの眼半減期を決定した。各場合において、それらの抗体の各々のFabを、10mg/mLの濃度でPBS中にて製剤化した。50μL(0.5mg)を、麻酔をかけたウサギに硝子体内注入した。ウサギ(10個の群)に、1回/目で投薬した。群1にはG6.31AAEEを投薬し、群2にはG6.31WTを投薬し、群3にはG6.31AARRを投薬した。投薬前、投薬2時間後、6時間後、1日後、2日後、4日後、8日後、15日後、及び21日後に組織(硝子体液、水様液、及び血清)を収集した。以下に記載される合計のFab ELISAを使用して、試料を抗VEGEのレベルに関してアッセイした。
【0516】
硝子体液及び水様液の各々における各変異体及びWTの薬物動態分析の結果は、
図11Aに表示される。結果は、G6.31AAEEのPK及びG6.31AARRのPKは、硝子体液及び水様液の両方においてWTG6.31のPKと本質的に同じであることを示す。硝子体半減期及び水様半減期を計算し、それらの結果を以下の表13に表示する。変異体G6.31Fabの半減期は、WTに類似しており、文献に報告されているFabの眼半減期とも一貫していた。
表13:G6.31変異体及びG6.31WTの半減期
【0517】
硝子体内注入後のFabへの全身性曝露を、血清中の抗VEGFのレベルを測定することにより査定した。血清試料を抗VEGFに関してアッセイした。結果は、
図11Bに示される。クリアランス(ml/kg/日)を計算し、それらの結果を以下の表14に示す。血清を抗治療用抗体(ATA)に関してもアッセイした。ATAは、14日目から全ての動物中に存在した。
表14.G6.31変異体及びG6.31WTのクリアランス
【0518】
表14に示される結果により示されるように、全ての3つのFabが同じ生物学的利用能を有する場合、G6.31AARRは、G6.31WT及びG6.31AAEEと比較してより低い全身性曝露を示す最速クリアランスを有した。かかるより低い全身性曝露は、G6.31WT及びGG6.31AAEEと比較してG6.31AARRのより良好で安全なプロファイルをもたらし得る。
【0519】
材料及び方法
A.合計のFab ELISA
ELISAプレートを、AffiniPure F(ab’)
2フラグメントヤギ抗ヒトIgGを用いて4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを3回洗浄し、その後、遮断緩衝液(PBS、pH7.4、0.5%のBSA、及び15ppmのPROCLIN(商標))でインキュベートした。3回洗浄した後、WTG6.31、G6.31AARR、またはG6.31AAEEを投薬したNZWウサギから収集した水性試料及び硝子体試料を穏やかに混合しながら、プレート内で室温にて2時間インキュベートした。次いで、コーティング抗体に結合したG6.31分子を、F(ab’)
2ペルオキシダーゼ複合体化ヤギ抗ヒトIgGを用いて室温で1時間検出した。3回洗浄した後、TMBE−1000基材溶液を30分間プレートに添加し、1MのH
3PO
4を使用して反応を停止した。シグナルを450/620nmで記録した。
【0520】
標準的な曲線を使用して、G6.31分子の濃度を決定した。
【0521】
実施例12:VEGF誘導HUVEC移動アッセイ
G6.31変異体を、VEGF誘導HUVEC移動を阻害する能力に関して試験した。Falcon24マルチウェル挿入システムを使用して、表15に示される変異体のHUVEC移動アッセイを実施した(BD Biosciences cat.351184)。挿入を、8mg/mlのマウスラミニン(LifeTechnologies 23017−015)で、一晩事前にコーティングした。HUVECを一晩欠乏させ、収穫し、アッセイ培地(EBM−2、0.1%のBSA)中で再懸濁した。細胞(5×10
4個)を上方チャンバに添加し、20ng/mLのVEGFを下方チャンバに添加して、様々な用量レベルの遮断抗体の存在下または不在下で16時間、移動を刺激した。固定し、上方表膜から擦り取った後、下方表面上の細胞をメタノールで固定し、SYTOX(登録商標)の緑色(LifeTechnologies S7020)で染色した。倒立型蛍光顕微鏡を使用して画像を取得し、ImageJソフトウェアを使用して細胞数を分析した。
【0522】
図13は、多様なFab濃度で親G6.31と比較した、G6.31 LC−N94AによるVEGF誘導HUVEC移動の阻害のプロットを示す。
図13から見ることができるように、単一のLC−N94Aの突然変異は、VEGF誘導HUVEC移動アッセイにおいて、親WT G6.31と比較して約5倍、著しく効能が低い。表15に示されるように、二重突然変異体であるLC−N94A.LC−F83Aも、このアッセイにおいて、親WT G6.31と比較して約5倍効能が低い。四重突然変異体であるLC−N94A.LC−F83A.HC−A40E.HC−T57E(G6.31AAEE)は回復し、効能はわずかに改善した(表15)。驚くべきことに、四重突然変異体であるN94A.F83A.N82aR.Y58R(G6.31AARR)は、親WT G6.31と比較して効能を約2倍、著しく改善した(表15)。
表15.HUVEC移動アッセイにおいてIC50により決定したG6.31変異体の細胞効能
【0523】
実施例13:G6.31AARR及び他の抗体へのヒアルロン酸(HA)の複合体化
病理学的血管形成に関連付けられる眼の障害(例えば、AMD(例えば、滲出性AMD)、DME、DR、またはRVO)の治療のための現在の手法は典型的には、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF Fabラニビズマブ)の硝子体内注入を伴う。抗VEGF Fabの作用の部位が網膜において目の後方にあるため、かつFabが目の中で比較的短い滞留時間を有し得るため、抗VEGF Fabから患者が得られる最大の利益は典型的には、硝子体内注入による比較的頻繁な投薬(例えば、Q4W)により得られる。眼の障害に対する抗VEGF抗体または抗体フラグメント(例えば、Fab)の長時間作用性送達が、投薬頻度を少なくとも部分的に減少する上で所望され、これにより、改善された患者の利便性及び適応性がもたらされる。この実施例において、線状未架橋ヒアルロン酸(HA)をG6.31変異体のG6.31AARRに複合体化する効果を評価した。複合体の分子特性、薬物動態パラメータ(例えば、硝子体半減期及びクリアランス)、熱力学的安定性、及びVEGFの阻害効能を分析した。
【0524】
モデルのウサギFab(rabFab、Shatz et al.Mol.Pharmaceutics 2016;PubMed identifier(PMID)27244474)を、この分析の一部として使用した。タンパク質療法剤のための送達技術の開発は典型的には、インビボの有用性を示すために関連動物モデルにおいて試験することを伴う。眼の薬物動態の初期研究では、一般的にウサギモデルを用いる。残念ながら、ほとんどのヒト及びヒト化抗体は、ウサギにおいて免疫原生であり、これは、長時間作用性送達技術を使用した重要な薬物動態パラメータの予測を妨げる。この問題に対処するために、ウサギモデルにおける送達技術を評価するのに有用である、種が合致したウサギFab(「rabFab」)である代用化合物を開発した。本明細書に記載されるrabFabは、ヒトホスホc−Metに結合するウサギモノクローナル抗体に由来していた。ウサギモノクローナル抗体を含むウサギ抗体の作製方法は、当該技術分野において周知されている。例えば、米国特許第5,675,063号及び/または同第7,429,487号を参照されたい。ヒトホスホc−Metに結合する例示的なウサギモノクローナル抗体は、Abcam(Cambridge,MA,USA)から製品番号ab68141で市販されている。
【0525】
現在の実験において、G6.31AARRまたはrabFab Fab−C分子を、40kDa(HA40K−)、100kDa(HA100K−)、200kDa(HA200K−)、及び600kDa(HA600K−)を含む、様々な重量平均分子質量(Mw)の線状未架橋HAに複合体化した。Fab−C分子は、配列が、第1のヒンジシステインで切断され、発現から直接的に遊離システインを有するFabをもたらすように発現されるFab分子である。完全長モノクローナル抗体の消化により生成された遊離システインを有するFab’分子も使用され得る。この実施例に記載されるHA複合体に関して、Fab−C分子を、HAのグルクロン酸糖単位上でカルボン酸基に共有結合した。合成の第1のステップにおいて、HA上のこれらの酸基のある特定のパーセンテージをマレイミドに変換した(典型的には2〜10%の酸基を変換した)。次いで、Fab−C分子を、Fab−C分子上の遊離システインを通じてマレイミド基に複合体化した。しかし、複合体化化学に対するわずかな修飾が、Fab分子または他の抗体形式をHAに複合体化するために使用され得る。
【0526】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、屈折率(RI)多角度光散乱(MALS)、及び準弾性光散乱(QELS)(SEC−RI−MALS−QELSとも称される)の組み合わせを、選択されたHA−Fab複合体のHA Mw、複合体Mw、Fab充填パーセンテージ(共有結合されたFab分子が占めるHAカルボン酸基のパーセンテージとして定義される)、流体力学半径(Rh)、遊離Fab(溶液中で遊離し、HA分子に共有結合されないFab分子のパーセンテージとして定義される)、及びタンパク質質量分率(タンパク質質量/(タンパク質質量+HA質量)を査定するために使用した(表16)。
図14は、HA40K−rabFab、HA200K−rabFab、及びHA600K−rabFabの重量平均分子質量(Mw)を査定するためのSEC−RI−MALS−QELSの例示的な結果を示す(QELSデータは、
図14に示されていないことを留意されたい)。
表16.SEC−RI−MALS−QELSにより査定した選択HA−Fab複合体の特性
*およそのRh値
**ウサギPK研究で調査した試料(例えば、
図16及び以下を参照されたい)
【0527】
AMDなどの眼の障害の治療に関して、眼半減期は長いが全身性半減期が短いことが、例えば、全身性抗VEGF曝露を最小限に抑える上で所望され得る。全身性循環からのHAクリアランスは、ヒアルロニダーゼ保持肝細胞により媒介される。以前の報告は、天然HA上のヒアルロニダーゼ活性がグルクロン酸カルボン酸基による認識を伴うことを示す。これらのカルボン酸基が修飾されて、Fab−C分子に結合したため、複合体化HAがヒアルロニダーゼにより酵素消化される能力を査定した。HA複合体化rabFabは、HYAL2でインキュベートしたHA及びHA100K−rabFabのSEC−MALS分析により査定すると、ヒアルロニダーゼ−2(HYAL2)による消化に対する酵素感受性を保持した(
図15)。
【0528】
硝子体内投与後のウサギ硝子体内の眼の薬物動態パラメータ(例えば、半減期及びクリアランス)に対するFabフラグメントのHA複合体化の効果を決定した。HA100K(HA100K−I
125−rabFab)へのrabFabの複合体化は、非複合体化rabFabまたはラニビズマブと比較して、クリアランスの著しい減少及び硝子体半減期の著しい増加をもたらした(
図16及び表17)。HA100K複合体化rabFabは、履歴データから、非複合体化rabFabと比較しておよそ4倍増加した硝子体半減期(t
1/2)を有した(それぞれ、11.9日対3.2日)(
図16及び表17)。表17は、rabFab及びHA100K−I
125−rabFabのRhも示す。これらのデータは、HA複合体化がFabの流体力学半径を増加させ、結果的に、硝子体クリアランスを減速させ、硝子体半減期を増加させたことを示す。
表17.硝子体内投与後のウサギ硝子体からのrabFab及びHA100K−
125I−rabFabのクリアランス
【0529】
HA100K−rabFabに関して上述されるデータと連結した、流体力学サイズ(例えば、流体力学半径の観点における)と硝子体滞留時間(例えば、半減期の観点における)との間の線状相関性は、rabFab、20KDのポリエチレングリコール(PEG)に複合体化されたrabFab(rabFab−20kDa PEG)、及び40kDaのPEGに複合体化されたrabFab(rabFab−40kDa PEG)(Shatz et al.(上記))の履歴データと併せて、HA100KまたはHA200Kに複合体化されたG6.31及びHA300Kに複合体化されたG6.31の硝子体半減期の予測を可能にした(
図17)。HA100K−G6.31は、およそ11日の予測硝子体半減期を有するが、HA200K−G6.31は、およそ17日のさらに大きな予測硝子体半減期を有する(
図17)。HA300K−G6.31は、およそ19日の予測硝子体半減期を有する(
図17)。これらの結果は、線状未架橋HAへの、本明細書に記載されるG6.31AARRまたは他のG6.31変異体の複合体化が、硝子体内注入後の増加した眼の滞留時間(例えば、半減期)及び減少したクリアランスをもたらすというさらなる証拠を提供する。
【0530】
Fabの熱力学的安定性に対するHA複合体化の効果も評価した(表18)。3つの異なるモル質量のHAへのrabFabの共有結合は、親Fabと比較して類似の複合体のTm開始及びピークTmにより示されるように、Fabの熱力学的安定性を改変しなかった(表18)。
表18.HAへのFabの複合体化は、Fabの熱力学的安定性を著しく改変しない。
【0531】
最後に、G6.31AARRのVEGF阻害効能に対するHA複合体化の効果を査定した。驚くべきことに、線状未架橋HAへのG6.31AARRの複合体化は、VEGF阻害に関するpKDRアッセイにおいて比較したとき、親Fabを超える著しく改善された効能をもたらした(表19)。表19のqAC50値は、活性アッセイ形式で50%の応答を誘発するために必要とされる濃度を示す。qAC50値は、IC50値と同等である。HA複合体化G6.31AARRは、非複合体化親Fabと比較しておよそ7倍増加した効能を有した(表19)。したがって、本明細書に記載されるG6.31AARR及び他のG6.31変異体の複合体化は、両方とも、硝子体薬物動態パラメータ(半減期及びクリアランスを含む)、ならびにVEGF阻害効能を改善するのに有用であり得る。
表19.HAへのG6.31AARRの複合体化は、改善されたVEGF阻害効能をもたらす。
【0532】
前述の実験データに基づいて、HA複合体化G6.31AARR分子は、AMD(例えば、滲出性AMD)、DME、DR、及びRVOを含む眼の障害の治療にとって著しく改善された特徴を有する。これらの改善された特徴には、増強された硝子体滞留時間に起因する増加した効能及び投薬頻度の低下の機会が含まれる。
【0533】
材料及び方法
A.マレイミド官能化HA(HA−mal)の合成
様々なモル質量の線状未架橋HAポリマーを、Lifecore Biomedicalから得た。カップリング試薬である4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)及びリンカーであるN−(2−アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩(AEM)との水性反応を使用して、HAをマレイミド基で修飾した。HAを、2.5mg/mLでpH5.5の100mMの2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸中に溶解し、この溶液に、1.5モル過剰のDMTMM及び3.75モル過剰のAEMを攪拌しながら添加した(モル過剰は、HA中のカルボン酸のモルに基づいて計算した)。溶液を2時間、70℃に加熱した。
【0534】
過剰AEM及びDMTMMを、脱塩手順を介して反応から除去した。HiPrep(商標)26/10脱塩カラムを、AKTA(商標)精製システムに備え付け、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.0の150mMのNaClで平衡化した。反応をカラム上にニート注入し、HA−malピークを302nmでの吸収度に従って収集し、遠心限外濾過デバイスを使用して5mg/mL超に濃縮した。UV可視分光光度計を使用して、302nmでの吸収度によりHA−mal保存溶液中のマレイミド濃度を測定し、多角度光散乱と合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MALS)により、HA鎖あたりのマレイミド基のモル比を査定した。
【0535】
B.HA−malへのFab−Cの複合体化
pH6.5の1Mのリン酸塩を使用して、Fab−Cの溶液を6.5にpH調整し、50mMの最終リン酸塩濃度にした。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)をその溶液中にスパイクして、2.5mMの最終濃度にした。Fab−C溶液を攪拌し、それに、反応緩衝液(10mMのリン酸塩、150mMのNaCl、2.5mMのEDTA(pH6.5))中に希釈したHA−malを添加した。化学量論を最終反応において1モルのマレイミドあたり1.2モルのFab−Cに設定し、体積を1mg/mLの最終タンパク質濃度をもたらすように設定した。複合体化反応を、攪拌しながら室温で行った。3時間の時点で、メルカプトエタノールを1モルのマレイミドあたり2モルで添加して、未反応のマレイミド基をキャップした。メルカプトエタノール添加の30分後、反応を、精製のために10mMのリン酸塩(pH6.5)で50mM未満のNaClに希釈した。
【0536】
陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して精製を行い、複合体から遊離Fab−C及びFab二量体を分離した。HiTrap(商標)Q FFの5mLカラムをAKTA(商標)精製システムに備え付け、10mMのHisHCl(pH5.5)を平衡化した。希釈反応をカラムに流して、HA−Fab複合体を捕捉し、同時に遊離Fab−C及び二量体を溶出した。10mMのHisHCl(pH5.5)、100mMのNaClで洗浄した後、複合体を段階勾配により10mMのHisHCl(pH5.5)、500mMのNaClに溶出した。溶出した複合体を貯め、10mMのHisHCl(pH5.5)で希釈して、10mMのHisHCl(pH5.5)、150mMのNaClの最終組成物にした。製剤化した複合体を遠心限外濾過により濃縮した。
【0537】
C.HA−Fab複合体の分析
Wyatt Optilab T−rEX RI検出装置及びWyatt HELEOS−II MALS検出装置を並んで有するAgilent1200高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)システムで、屈折率(RI)多角度光散乱(MALS)と合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)と、準弾性光散乱(QELS)との組み合わせ(SEC−RI−MALS−QELSとも称される)により、残留遊離Fab含有量、全複合体モル質量、及びタンパク質質量分率を査定した。実行緩衝液としてPBS(pH7.4)を用いた分析のためにTosoh G6000 PWxlカラムを使用した。MALS検出装置を正規化し、検出装置間のバンド広がりを訂正するためにBSA制御を使用した。Fab及びHA−Fab複合体と対応するUV A
280ピークを合体させることにより、遊離Fab含有量を測定した。複合体モル質量を、複合体ピークの重量平均分子量(Mw)(重量平均分子質量とも称される)として取った。示差的RI(dRI)及びUV A
280シグナルを使用するタンパク質複合体分析を使用してタンパク質質量分率を計算した。
【0538】
D.HA−rabFab複合体の動的走査熱量測定(DSC)研究
rabFab、39kDaの重量平均分子質量(Mw)を有するHAに複合体化したrabFab(HA39K−rabFab)、100kDaのMwを有するHAに複合体化したrabFab(HA100K−rabFab)、及び300kDaのMwを有するHAに複合体化したrabFab(HA300K−rabFab)の溶液を、10mMのHisHCl(pH5.5)、150mMのNaCl中で0.5mg/mL(タンパク質に基づいた所与の濃度)で調製した。DSC研究をVP−DSCミコ熱量計(MicroCal,Inc.)で、1℃/分のランプ速度を用いて15〜105℃で行った。緩衝液のみの参照スキャンを各試料スキャンから控除した。付随するORIGINソフトウェアスイートを使用して、融解温度(Tm)及びTm開始を評価した。
【0539】
E.リン酸化KDR(pKDR)受容体活性化アッセイ
KDRを過剰発現させるために操作されたCHO細胞(KDR−CHO細胞;Binetruy−Tournaire et al.EMBO J.19(7):1525−1533,2000及びBenzinger et al.BBA Biomembranes 1466:71−78,2000を参照されたく、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を、平底の96ウェル組織培養物プレート中、80μlの細胞播種培地(50:50の高グルコースDMEM/HamのF−12、0.2%のBSA、0.25%の透析濾過したウシ胎児血清(FBS)、25mMのHEPES、及び2mMのL−グルタマックス)内に1×10
4個の細胞/ウェルで播種した。細胞を37℃で一晩インキュベートした。同時に、PBS中で希釈した25μlの抗gD抗体(Genentech)でNUNC(登録商標)MAXISORB(登録商標)384ウェルELISAプレート(Thermoカタログ番号439454)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。
【0540】
翌日、細胞刺激の2時間前、組織培養プレートを軽く押し固め、培養培地を、40μlの血清−遊離細胞刺激培地(50:50の高グルコースDMEM/HamのF−12、0.5%のBSA、及び25mMのHEPES)に変化させ、37℃で2時間インキュベートした。G6.31AARRまたはHA100K−G6.31AARRの3倍の段階希釈液を細胞刺激培地内に作製した。ヒトVEGF
165(100ng/ml)の希釈液も細胞刺激培地内で調製した。ディープウェルブロックプレートを使用して、G6.31AARRまたはHA100K−G6.31AARRの段階希釈液からの試料を、希釈したVEGF試料と混合し、37℃で1時間インキュベートした。40μLの得られた混合物を細胞の各ウェルに、合計の培養物体積が80μLになるように添加した。VEGFのみを有するウェルまたはVEGFが添加されていないウェルも対照として調製した。細胞を37℃で15分間インキュベートした。培養培地を軽く押し固め、25μLの氷のように冷たい細胞溶解緩衝液(150mMのNaCl、50mMのHEPES、0.5%のTRITON(商標)X−100、1xHALT(登録商標)プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermoカタログ番号78444、100倍保存から使用の直前に添加した)、5mMのEDTA)を添加した。細胞を、ELISAで進める前に15分間氷上で溶解した。
【0541】
抗gDコーティングELISAプレートのウェルを洗浄緩衝液(pH7.4の0.05%のTWEEN(登録商標)20を有するPBS)で3回洗浄した。ウェルを80μlの遮断緩衝液(0.5%のBSAを有するPBS(R&D Systems、カタログ番号#DY995))を用いて室温で1時間遮断した。次いで、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に、1つのウェルあたり25μlの細胞可溶化液を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートし、続いて、洗浄緩衝液でウェルを4回洗浄した。25μlの1:2000で希釈した抗リン酸化チロシン(クローン4G10)ビオチン複合体化抗体(0.5μg/ml)(Milliporeカタログ番号16−103)をアッセイ緩衝液(0.5%のBSAを有するPBS、遮断緩衝液と同じ)に入れて各ウェルに添加し、得られた混合物を室温で2時間インキュベートし、続いて、洗浄緩衝液で3回洗浄した。25μlの1:10,000で希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−ストレパビジン(Strepavidin)(GE Health Care UK、カタログ番号RPN44OIV)をアッセイ緩衝液に入れて各ウェルに添加し、室温で30分間インキュベートし、続いて、洗浄緩衝液で3回追加で洗浄した。次いで、25μlのTMBを各ウェルに添加し、20分間発色させて、その後、25のH
2SO
4を添加して反応を停止させた。最後に、ウェルの光学密度を450/620nmのプレートリーダーで読み取った。
【0542】
F.HA100K−rabFabのヒアルロニダーゼ消化
最大10%のFab複合体化(HA上の入手可能な酸基に基づいて発現されるパーセント)がHA−Fab複合体のヒアルロニダーゼ感受性を改変しなかったことを確認するために、100kDaのMwを有するHA(HA100K)及びHA100Kに複合体化したrabFab(HA100K−rabFab)を、pH4.5の10mMの酢酸ナトリウム中の4μg/mLのヒアルロニダーゼ−2を用いて、200μg/mLのHA(HA100K−rabFab濃度をHA主鎖に対して200μg/mLの濃度を達成するように調整した)でインキュベートした。試料を37℃でインキュベートし、上述されるように、Mw分析のために30分間隔でSEC−RI−MALS上にすぐに注入した。
【0543】
G.ウサギ硝子体からのHA−Fabクリアランスの速度を査定するためのPK研究
ウサギ硝子体内のHA100K−rabFabの眼の薬物動態プロファイルを以下に記載されるようにrabFabの履歴データと比較した。
【0544】
HA100K−rabFabをその日に
125Iを用いて標識し、その後投薬した。投薬製剤を調製するために、適切な量のHA100K−rabFabを、Millipore AMICON(登録商標)30K遠心濾過管を使用して、トリスヨウ素化緩衝液(25mMのトリスHCl、0.4MのNaCl、pH7.5)と交換した。Pierce社の事前にコーティングしたヨウ素化管をトリスヨウ素化緩衝液で湿潤させ、デカントした。適切な体積のトリスヨウ素化緩衝液を管の底に添加し、続いて、適切な量のNa
125I(Perkin Elmer)を添加した。ヨウ素を30秒毎に回転させながら15分間活性化した。適切な体積の試験試料であるトリスヨウ素化緩衝液、及び活性化したヨウ素をNUNC(登録商標)微小遠心管に添加し、穏やかに振動させることによりおよそ1〜5分間混合した。スカベンジング緩衝液(チロシン、2mg/mLのトリス緩衝液)を添加することによりヨウ素化反応を停止させ、製剤を混合し、1分及び4分の時点で軽く混合しながら5分間インキュベートした。タンパク質精製に関して、AMICON(登録商標)30K遠心濾過管を、PBSを用いて、6,000RPMで15分間の遠心分離により調製した。NUNC(登録商標)管の含有物を、AMICON(登録商標)30K遠心濾過管に添加し、PBS中で最大4回洗浄して、およそ400μLの最終放射性標識試験物質体積を達成した。各試験物質の放射能、タンパク質濃度、及び放射化学純度を決定した。ピペットを使用して、AMICON(登録商標)管の含有物をNUNC(登録商標)管に移し、製剤の最終濃度をおよそ10mg/mLにした。
【0545】
HA100K−rabFab−
125Iをニュージーランドホワイトウサギの目の中に硝子体内注入した(500μg/目)(N=24個の目)。硝子体内注入のために、ウサギをイソフルランで効果が出るように鎮静させ/麻酔をかけ、横向きに置いた。トロピカミド点眼液(2滴)及び2.5%のフェニルエフリンHCl(1滴)を両方の目に適用した。局所的プロパラカインを調製及び投薬の直前に各眼に適用した。結膜円蓋を1:50希釈のベタジン溶液で流し、眼瞼辺縁を無希釈の5%のベタジン溶液でぬぐった。上耳側の眼球結膜を無希釈ベタジン溶液でぬぐった。Jameson社のカリパスを上耳側の眼球結膜上の縁郭の1.5〜2.0mm後部の箇所に印をつけるために使用した。印をつけた箇所において強膜を通して5mm先の硝子体液に注入シリンジに固着した針を右手で挿入しながら、左手で眼球位置を固定するために結膜鑷子を使用した。注入針を眼球の後部軸に対面するように位置付け、シリンジプランジャーをゆっくりと押し下げることにより含有物を硝子体の真ん中に送達した。注入シリンジに固着した針を引き抜き、強膜上組織を結膜鑷子で捉えた挿入の部位に30秒間接近させて、注入材料の還流を低下した。投薬部位の残留放射能をぬぐった。調製及び用量投与を第2の目に対して同じ方法で繰り返した。手順の間、適切な試験物質を濡れ氷上に置いておき、片方の目につき50μLの用量体積で1回投与した。注入後に間接的な検眼鏡検査を実施して、レンズまたは網膜接触が生じていないかを確認した。各注入部位のふき取った投薬を収集し、室温で保持して、液体シンチレーション計数(LSC)により分析して、残留放射能を決定した。回収した放射能を投与量から控除して、実際に投与した放射性用量を出した。
【0546】
投薬前、投薬6時間後、ならびに投薬1、2、4、7、11、14、21、及び28日後に血液試料を動物の頸静脈から収集して、室温で抗凝固薬を含まない管に入れた。全血液の分割量(およそ0.1mL)を収集し、放射分析のために処理した。残りの血液を周囲温度で遠心分離にかけて血清を得、放射分析のために処理した。
【0547】
各時点、2匹の動物を安楽死溶液の静脈注射により安楽死させ、続いて、聴診した。終末時点は、投薬6時間後、ならびに投薬2、7、14、21、及び28日後であった。水様液、レンズ、硝子体液、網膜/脈絡膜、及び強膜を指定の動物から収集した。目を取り出し、任意の異常組織を眼球の外側から切り落とした。ツベルクリン針を有するシリンジを介して水様液を除去し、事前に計量したガンマ管に収集して入れた。残りの目を液体窒素内でおよそ30秒間凍結させた。冷却した切断表面において、角膜、虹彩、及びレンズを取り出した。レンズを少量のPBSですすぎ、リンス液をガンマ管に収集して入れた。レンズを吸い取り乾燥させ、事前に計量したガンマ管内に置いた。必要に応じて、目を液体窒素内で再凍結させた。強膜を切断し、硝子体液から後方に剥いだ。硝子体液を取り出して、事前に計量した容器内に可溶化のために置いた。結合する網膜/脈絡膜を有する強膜を、前述のリンス液と共に貯めたPBSの1mlのリンス液中に浸漬し、組織を丁寧に吸い取り乾燥させた。網膜/脈絡膜を強膜から除去し、別々の事前に計量したガンマ管内に置いた。適切な表面及び器具を濡れガーゼでふき取り、計数のためにガンマ管に収集して入れた。全ての組織、リンス液、及びふき取り物をプラスチック容器に収集して入れ、放射分析のために処理した。
【0548】
選択動物からの各時点につき1つの目(投薬2、14、及び28日後時点の動物を含む)を、硝子体液の放射クロマトグラフプロファイリングのために処理した。右目を取り出し、異常組織を眼球の外側から切り落とした。ツベルクリン針を有するシリンジを介して水様液を除去し、事前に計量したガンマ管内に置いた。18ゲージの針を有する10mlのシリンジを使用して、最大量の硝子体液を収集した。含有物をHPLC−Gamma−RAM(商標)による分析のために事前に計量した容器に移した。硝子体液試料を放射クロマトグラフプロファイリングのために冷蔵したままか、または濡れ氷上で保存した。残りの右目組織を可溶化のために事前に計量した容器内に置き、放射分析のために処理した。
【0549】
投薬製剤、血清、及び全血液の単一または複製分割量をよく混合し、ガンマ計数による放射能の直接分析のために試料採取した。眼の組織を直接計数して、PBS中で希釈するか、または3NのKOH/メタノール/TRITON(商標)X−100の溶液中に、およそ50℃に設定したインキュベートオーブン内で可溶化し、ガンマ計数による放射能分析のために三連で試料採取した。収集した全ての放射性試料を二連または三連の許容範囲の試料サイズで少なくとも5分間または100,000カウントの間計数した。200dpm超の放射能を有した全ての試料結果(dpm/gの試料で計算した)は、中央値の15%以内であった。
【0550】
放射クロマトグラフプロファイリングを、投薬2、14、及び28時間後の1匹の動物からの右目硝子体液試料で実施した。試料をHPLC−Gamma−RAM(商標)による適格な方法に従って分析した。ピーク域及び保持時間を、時間経過における試験物質の一体性を査定するために比較した。試料を調製するために、PRECELLYS(登録商標)24ホモジナイザーを、冷却窒素流を用いて−10〜0℃に事前に冷却した。ジルコニアビーズを適切な管に添加した。ポジティブ配置用ピペットを用いて、ジルコニアビーズを含む管に硝子体液の試料を添加した。試料を事前に冷却したPRECELLYS(登録商標)24ホモジナイザー内に置き、6,500RPMで60秒のサイクルを6回で均質にした。管を14,000RPMで10分間遠心分離にかけ、その後、分析した。
【0551】
PHOENIX(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン6.2.1(Certara USA,Inc.,Princeton,NJ)を使用して、薬物動態パラメータを予測した。投与の硝子体内経路と一貫している非コンパートメント手法をパラメータ予測のために使用した。ウサギ硝子体内のHA100K−rabFab−
125Iの半減期の値は、履歴データからのrabFabの3.2日と比較して11.9日であった(Shatz et al.Mol.Pharmaceutics 2016;PubMed identifier(PMID)27244474)。
【0552】
前述の発明は明確な理解のために例証及び例により多少詳しく説明されているが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。