(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、患者に関連付けられた電気生理的データを受領する段階であって、前記電気生理的データは前記電気的波形および該電気的波形の一つまたは複数の周期成分に関連付けられた一つまたは複数の以前に割り当てられた分類を含む、段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、患者に関連付けられた血行動態データを受領する段階であって、前記血行動態データは前記血行動態波形を含む、段階とをさらに含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
命令を有する少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体であって、該命令は、一つまたは複数のプロセッサによる該命令の実行に応答して、前記一つまたは複数のプロセッサに、以下の動作、すなわち:
電気的波形の周期成分と前記電気的波形の周期成分に以前に割り当てられた分類とを同定する段階であって、前記電気的波形は患者の心臓における電気的活動を表わす、段階と;
患者の心血管系における血行動態活動を表わす血行動態波形の対応する周期成分を解析する段階であって、前記対応する周期成分は前記電気的波形の前記周期成分に因果的に関係している、段階と;
前記解析に基づく、前記以前に割り当てられた分類が前記対応する周期成分にも当てはまるとの判定に応答して、前記以前に割り当てられた分類をもって前記血行動態波形の前記対応する周期成分を分類する段階と;
血行動態テンプレートのデータベースにおいて、前記以前に割り当てられた分類に関連付けられた血行動態テンプレートを、前記血行動態波形の前記対応する周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう更新する段階とを実行させるものであり、
波形の周期成分とは、該波形において繰り返し発生する、山をなす部分である、
少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
波形品質をフィルタリングおよび評価するためのアルゴリズムは、時に、典型的でない電気的活動を、かかる活動が心血管異常の証拠であるときに、誤って(たとえば干渉および/または患者動きに起因する)ノイズまたはアーチファクトとして分類する。たとえば、いくつかのアルゴリズムは電気的および/または血流力学的
〔血行動態〕(hemodynamic)波形を正常および異常な波形のテンプレートと比較する。しかしながら、多くの異常な波形は既存のテンプレートにマッチしないことがあり、結果として、実際には真の心血管異常が存在するときに、ノイジー分類につながることがある。このように、心血管異常をよりよく識別し、既存のアルゴリズムを使ってなされた分類を確証/反証するよう、心血管波形を解析し、分類する方法およびシステムを提供することが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、心血管波形のテンプレートに基づく解析および分類のための発明的な方法および装置に向けられる。たとえば、本開示は、心拍のような血流力学的波形の周期成分を、正常および異常な波形のテンプレートのようなさまざまな信号に基づいて分類する(またはそれに注釈付けする)ためおよび/または患者の心臓における電気的活動を表わす電気的波形の周期成分を確証および/または再分類するための技法を記述する。さらに、正常な波形およびさまざまな型の異常な波形に関連したテンプレートが、新たに識別された正常および異常な波形の特徴を含むよう更新されてもよい。
【0005】
一般に、ある側面では、方法は、電気的波形の周期成分に関連する、以前に割り当てられた分類を同定する段階であって、前記電気的波形は患者の心臓における電気的活動を表わす、段階と;患者の心血管系における血流力学的活動を表わす血流力学的波形の対応する周期成分を解析する段階であって、前記対応する周期成分は前記電気的波形の周期成分に因果的に関係している、段階と;該解析に基づく、前記以前に割り当てられた分類が前記対応する周期成分にも当てはまるとの判定に応答して、前記以前に割り当てられた分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てる段階と;血流力学テンプレートのデータベースにおいて、前記以前に割り当てられた分類に関連する血流力学テンプレートを、前記血流力学的波形の前記対応する周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう更新する段階とを含んでいてもよい。
【0006】
さまざまな実施形態において、本方法はさらに:患者に関連する電気生理的データを受領する段階であって、前記電気生理的データは前記電気的波形および該電気的波形の一つまたは複数の周期成分に関連付けられた一つまたは複数の以前に割り当てられた分類を含む、段階と;患者に関連付けられた血流力学的データを受領する段階であって、前記血流力学的データは前記血流力学的波形を含む、段階とを含む。
【0007】
さまざまな実施形態において、前記電気生理的データは心電図の一つまたは複数の電極から受領される。さまざまな実施形態において、前記血流力学的データは、患者の動脈血圧を示す信号を含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記血流力学的データは、患者の肺血圧を示す信号を含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記血流力学的データは、中心静脈圧を示す信号を含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、前記血流力学的データは、プレチスモグラフからの信号を含んでいてもよい。
【0008】
さまざまな実施形態において、本方法はさらに:前記と同じ血流力学的波形または異なる患者に関連付けられた異なる血流力学的波形の、未分類の周期成分を識別し;該未分類の周期成分を血流動力学テンプレートの前記データベースのテンプレートと照合し;マッチするテンプレートに関連付けられた分類を、前記血流力学的波形の前記未分類の周期成分に割り当てることを含んでいてもよい。さまざまなバージョンにおいて、本方法はさらに、前記血流力学的波形の新たに分類された周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう、マッチするテンプレートを更新することを含んでいてもよい。
【0009】
さまざまな実施形態において、前記以前に割り当てられた分類は、異常分類を含んでいてもよい。前記割り当てることは、前記解析に基づく、前記血流力学的波形の前記対応する周期成分と前記血流力学的波形の以前の周期成分との間の差分がある閾値を満たすとの判定に応答して、前記異常分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てることを含んでいてもよい。
【0010】
さまざまな実施形態において、本方法はさらに:アーチファクトと見なされる前記電気的波形の別の周期成分に割り当てられたアーチファクト分類を同定する段階と;前記電気的波形の前記別の周期成分に因果的に関係している前記血流力学的波形の対応する別の対応する周期成分を解析する段階と;前記解析に基づく、前記血流力学的波形の前記別の対応する周期成分と前記血流力学的波形の別の以前の周期成分との間の差分がある閾値を満たすとの判定に応答して、異常分類を前記血流力学的波形の前記別の対応する周期成分に割り当てる段階と;前記電気的波形の前記別の周期成分を前記異常分類と再分類する段階とを含んでいてもよい。
【0011】
さまざまな実施形態において、前記以前に割り当てられた分類は、正常分類を含んでいてもよく、前記割り当てることは、前記解析に基づく、前記対応する周期成分がある信号品質指数(SQI: signal quality index)を満たすとの判定に応答して、前記正常分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てることを含んでいてもよい。
【0012】
さまざまな実施形態において、前記解析することは、前記対応する周期成分を血流力学テンプレートの前記データベースのテンプレートと照合することを含んでいてもよい。さまざまなバージョンにおいて、前記更新することは、前記対応する周期成分を、前記マッチする血流力学テンプレートと関連付けて記憶されている周期成分と融合させることを含んでいてもよい。
【0013】
上記の概念および下記でより詳細に論じられる追加的な概念のあらゆる組み合わせが(そのような概念が互いに整合しないものでないかぎり)本稿で開示される主題の一部として考えられることは理解しておくべきである。特に、本開示の末尾にある特許請求される主題のあらゆる組み合わせが、本稿で開示される主題の一部として考えられる。また、本稿で明示的に用いられる用語であって、参照によって組み込まれるいずれかの開示にも現われうるものは、本稿で開示される具体的な概念と最も整合する意味を与えられるべきであることも理解しておくべきである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ABP、PAPおよび/またはCVP、またプレチスモグラフからの信号(「PLETH」)を表わすもののような心血管波形は、異所性拍動および/または不整脈のような生理的変化によって影響されることがある。特に、たとえばECGによって測定される患者の心臓における電気的活動は、さまざまな血流力学的波形の形に影響しうる。波形品質をフィルタリングおよび評価するための既存のアルゴリズムは、時に、典型的でない電気的活動を、かかる活動が心血管異常の証拠であるときに、誤ってノイズまたはアーチファクトとして分類する。たとえば、いくつかのアルゴリズムは電気的および/または血流力学的波形を正常および異常な波形のテンプレートと比較する。しかしながら、多くの異常な波形は既存のテンプレートにマッチしないことがあり、結果として、実際には真の心血管異常が存在するときに、ノイジー分類につながることがある。このように、当技術分野においては、心血管異常をよりよく識別し、既存のアルゴリズムを使ってなされた分類を確証/反証するよう、心血管波形を解析し、分類することが必要とされている。より一般には、正常な心血管波形および異常な心血管波形に関連付けられた新たなパターンを常時学習することが有益であろうことが、認識され、理解される。上記に鑑み、本開示のさまざまな実施形態および実装は、心拍のような血流力学的波形の周期成分を、正常な波形および異常な波形のテンプレートのようなさまざまな信号に基づいて分類するまたはそれに注釈付けすることおよび/または患者の心臓における電気的活動を表わす電気的波形の周期成分を確証および/または再分類することに向けられる。さらに、正常な波形および異常な波形のテンプレートのデータベースは、新たに識別された正常な波形および異常な波形の特徴を含むよう更新されてもよい。
【0021】
図1を参照する、開示される技法が実装されうる例示的な環境100が描かれている。患者102は、患者の心臓における電気的活動および/または患者の脈管系における血流力学的活動をモニタリングするために、さまざまな医療装置に接続されていてもよい。たとえば、患者102は、ECG 104、APB 106、PAP 108、CVP 110および/またはPLATH 112のような一つまたは複数の医療装置によってモニタリングされてもよい。これらの装置は単に例であり、限定することは意図されていない。他の電気的および/または血流力学的信号が得られて、モニタリングされてもよい。
【0022】
ECG 104の場合、いくつかの実装では、患者の心臓における電気的活動を検出して信号114を生成するために、一つまたは複数の電極(図示せず)が患者102に取り付けられてもよい。ABP 106の場合、患者102のABPをたとえば規則的な間隔でまたは連続的に測定して信号116を生成するために、血圧計のような器具が使われてもよい。PAP 108は、経胸腔エコー図(TTE: trans-thoracic echocardiogram)および/または右心カテーテル法といったさまざまな形を取ることができ、信号118を生成しうる。さまざまな実施形態において、CVP 110は、注入ポンプに中心静脈カテーテル(図示せず)を接続して信号120を生成することによって測定されうる。PLETH 112の場合、信号122は、患者102のある器官内または全身内の体積変化を測定するための器具であるプレチスモグラフによって生成されうる。
【0023】
さまざまな実施形態において、信号114〜122は、心血管解析システム124に提供されてもよい。心血管解析システム124によって実行される動作は、複数のコンピュータ・システムを横断して分散されてもよい。たとえば、心血管解析システム124は、ネットワーク(図示せず)を通じて互いに結合された一つまたは複数の位置にある一つまたは複数のコンピュータで走るコンピュータ・プログラムとして実装されてもよい。心血管解析システム124は、ハードウェア、ソフトウェアまたは両者の任意の組み合わせを使って実装されうるさまざまなエンジンおよび/またはモジュールを含んでいてもよい。さまざまな実施形態において、これらのモジュールおよび/またはエンジンは、初期注釈付けエンジン125、解析エンジン126および/またはテンプレート・エンジン128を含んでいてもよい。いくつかの実装では、エンジン125、126および128の一つまたは複数が省略されてもよい。いくつかの実装では、エンジン125、126および128の全部または諸側面が組み合わされてもよい。いくつかの実装では、エンジン125、126および128の一つまたは複数は、心血管解析システム124とは別個のコンポーネントにおいて実装されてもよい。
【0024】
初期注釈付けエンジン125は、単独で、ECG 104によって生成された電気信号114をさまざまな特徴について解析するよう構成されてもよい。いくつかの実施形態では、初期注釈付けエンジン125は、電気的波形のさまざまな「周期成分」に、「正常」、「異常」として、あるいは「アーチファクト」(「ノイズ」としても知られる)として注釈付けしてもよい。本稿での用法では、波形の「周期成分(periodic component)」は、波形において繰り返し典型的に生起する(ただし生起のたびに同一である必要はない)任意の成分を指しうる。いくつかの実施形態では、周期成分は、波形の繰り返し発生する「ピーク」であってもよい。たとえば、電気的波形において、各「ピーク」は、電気的活動におけるサージを表わしうる。他の実施形態では、周期波形は、波形の「谷」または別の典型的に繰り返し発生する視覚的特徴、たとえばピーク/谷の対(ただし、ピークの高さもしくは位相と谷の深さは生起によって異なってもよい)を指しうる。本稿で使われるところの「周期(的)」という修飾語は、その成分が通常は周期的に生起するまたは少なくとも周期的に生起するはずの何かであることを指すことが意図されている。しかしながら、さまざまなシナリオにおいて、特に重病の患者では、患者によって生成される波形が周期成分を示すことも示さないこともあり、および/または周期成分は特定の患者について実際には周期的に生起しないことがある(これは、患者の疾病の原因または結果であることもないこともある)。いくつかの実施形態では、注釈は、初期注釈付けエンジン125によって、セグメントおよび不整脈解析ST/AR ECGおよび/またはDXLアルゴリズムのようなさまざまなアルゴリズムを使って追加されてもよい。ただし、注釈付けは他のアルゴリズムを使って加えられてもよい。
【0025】
さまざまな実装において、解析エンジン126は、患者の心臓における電気的活動および/または患者の脈管系における血流力学的活動を表わす注釈付けされた波形を解析して、一つまたは複数の注釈または「分類」が正しい、間違っているなどかどうかを判別するよう構成されてもよい。血流力学的波形では、各「ピーク」(またはピークと谷の組み合わせ)が心拍を表わしうる。さまざまな実装において、解析エンジン126は、たとえば初期注釈付けエンジン125によって患者の心臓における電気的活動を表わす電気的波形の周期成分に割り当てられた分類/注釈を識別するよう構成されてもよい。たとえば、解析エンジン126は、「正常」、「異常」としてまたは「アーチファクト」として分類または注釈付けされた特定のピークを同定してもよい。解析エンジン126は次いで、患者の脈管系における血流力学的活動を表わす(たとえば信号116〜122のうちの一つまたは複数を表わす)血流力学的波形の対応する周期成分を解析してもよい。対応する周期成分は、電気的波形の周期成分に因果的に関係していてもよい。
【0026】
この解析に基づいて、解析エンジン126は、血流力学的波形の対応する周期成分を、電気的波形の周期成分に割り当てられたのと同じ分類または異なる分類をもって分類(あるいはすでに他のところに分類されている場合には再分類)しうる。たとえば、血流力学的波形の解析が初期注釈付けエンジン125によって電気的波形のある周期成分に割り当てられた「正常」の分類を確証する場合には、解析エンジン126は血流力学的波形の対応する周期成分を、「正常」として分類してもよい。他方、解析が初期注釈付けエンジン125によって電気的波形の該周期成分に割り当てられた「アーチファクト」の分類に矛盾するとする。たとえば、解析エンジン126は本稿に記載される技法を使って、血流力学的波形の対応する周期成分が実際には異常を示すと判定するとする。そのような場合、解析エンジン126は、血流力学的波形の対応する周期成分を「異常」として分類してもよく、電気的波形の周期成分を「アーチファクト」から「異常」に再分類してもよい。
【0027】
さまざまな実装において、ひとたび解析エンジン126が電気的および/または血流力学的波形の周期成分を分類および/または再分類したら、解析エンジン126は、効果的にその知識および/または心血管解析システム124の知識を「更新」してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、テンプレート・エンジン128が血流力学テンプレートの一つまたは複数のデータベースを維持してもよい。さまざまな実施形態において、各血流力学テンプレートは、前記血流力学的波形の前記周期成分と同じ分類をもつ一つまたは複数の血流力学的波形の一つまたは複数の周期成分の一つまたは複数の「特徴」を含んでいてもよい。
図1において、テンプレート・エンジン128は、「正常」分類に関連付けられたテンプレートおよび種々の疾病(たとえば異所性拍動、不整脈など)に関連付けられたさまざまな型の「異常」分類をもつテンプレートを含む血流力学テンプレートのデータベース130を維持する。しかしながら、これは限定することは意図されていない。他の実施形態では、正常、異常またはさらには「アーチファクト」として分類されるテンプレートは、別個のデータベースにおいて記憶されてもよい。
【0028】
解析エンジン126は上記の解析を実行した後、さまざまな実施形態において、テンプレート・エンジン128が諸テンプレート・データベース130の一つまたは複数を、血流力学的波形の対応する周期成分の一つまたは複数の特徴をもって更新することを要求してもよい。波形の周期成分またはもとになった血流力学的活動のさまざまな特徴が、テンプレートを更新するために使われてもよい。そうした特徴は、波形全体を表わす包括的データから最大/最小振幅、前のピークからの距離、増大/減少率、不整(turbulence)、血液密度、平均速度、血液粘性などといった個別的特徴まである。いくつかの実施形態では、あるテンプレートに、複数の波形(たとえば電気的および血流力学的)の特徴が加えられてもよい。たとえば、「脈波伝搬時間」はECG波形のピークとABPもしくはPLETH波形の谷との間の時間差であってもよい。いくつかの実施形態では、脈波伝搬時間は、周期成分への注釈としてテンプレートに含められてもよい。
【0029】
新しいまたはそうでなくとも未分類の血流力学的波形が解析エンジン126によって解析されるとき、解析エンジン126は該新しい血流力学的波形の周期成分を、データベース130中のテンプレートと比較してもよい。たとえば解析対象の周期成分の一つまたは複数の特徴がテンプレートの対応する特徴と十分に似ているとき、テンプレートは解析対象の特定の周期成分にマッチしうる。
【0030】
たとえば、いくつかの実施形態では、解析対象の周期成分から特徴ベクトルが抽出されてもよい。テンプレートに関連するテンプレート特徴ベクトルと解析対象の周期成分の特徴ベクトルとの間の類似性指標を計算するために、さまざまな機械学習技法が用いられうる。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークおよび/またはロジスティック回帰のような数学的モデルがトレーニングされてもよい。そのようなモデルをトレーニングするためのさまざまな学習アルゴリズムが使われてもよい。たとえば、バッチまたは統計的勾配降下法および/または正規方程式の適用などである。計算された類似性が一つまたは複数の閾値を満たせば、マッチがありうる。結果として、解析対象の周期成分は、テンプレート特徴ベクトルと同じに分類されうる。いくつかの実装では、周期成分から抽出された特徴ベクトルからの一つまたは複数の特徴が、たとえば将来の比較を助けるために、テンプレート・データベース130のテンプレートに組み込まれてもよい。
【0031】
他の実施形態では、血流力学テンプレートは、たとえば複数の以前に分類された周期成分の融合を表わす一つまたは複数の周期成分を含んでいてもよい。解析対象の周期成分は、マッチがあるかどうかを判定するためにテンプレートの前記一つまたは複数の周期成分との相関を調べられてもよい(たとえば、両者の間の差が一つまたは複数の閾値を満たすか満たさないか)。いくつかの実施形態では、解析対象の周期成分が、テンプレート周期成分(単数または複数)から減算されてもよく、差が前記一つまたは複数の閾値と比較されてもよい。他の実施形態では、高速フーリエ変換(FFT)または共分散シフトのような技法が、解析対象の周期成分をテンプレート周期成分と相関付けるために用いられてもよい。
【0032】
ここで
図2を参照するに、二つの例示的波形が描かれている。実線で描かれている第一の波形240は患者の電気的活動、たとえばECG 104によって生成された信号114を表わす。破線で描かれている第二の波形242は患者の脈管系の血流力学的活動、たとえばABP 106によって生成された信号116を表わす。この例では、ピークの形の第一の波形240の(左から右に)五つの周期成分が、たとえば初期注釈付けエンジン125によって決定された、患者の心臓における正常な(normal)電気的活動を示す文字「N」をもって注釈付け/分類されている。第六の電気的ピークは、たとえば振幅の突然の増大および/または位相の突然の減少に起因して初期注釈付けエンジン125によって知覚された、「アーチファクト(artifact)」を示す文字「A」をもって注釈付けされている。アーチファクトに続いて、正常と分類された第一の波形のさらに四つの周期成分がある。
【0033】
この例において、ピークの形を取る第二の波形242の周期成分は、第一の波形240の周期成分に因果的に関係している。特に、第一の波形240における(ピークによって表わされる)電気的パルスには、第二の波形242における結果的ピークが続く。これは、患者の心臓における電気的パルスが血液を拍出するよう心臓をトリガーし、ピーク電気的パルスよりある時間期間後にピーク血圧が生起するからである。この例では、第二の波形242において、比較的正常で一様な振幅をもつ五つの同様のピークがあり、その後、より高いピーク、次いでより低いピークが続き、正常ピーク振幅に近づいていくさらに四つのピークが続く。
【0034】
記号Δによって示されるように、第二の波形242の第六および第七のピークの間に測定されたABPにおける差がある。これは、「アーチファクト」として分類された電気的周期成分の帰結であったように見える。第二の波形242が、第一の波形240における「アーチファクト」と言われるものの結果としてこのΔを示しているように見えるという事実は、そのアーチファクトは全くアーチファクトではないということを示唆する。むしろ、Δによって実証される第二の波形242における対応する異常は、期外収縮によって引き起こされる収縮期ABPにおける降下を示唆する。その結果として、患者の心臓によって脈管系に拍出される血液が不十分になる。換言すれば、生理的な異常な電気的パルスが、生理的な異常な血流力学的パルスを引き起こしたのである。本稿に記載される技法を使って、Δで示される第二の波形242の周期成分は「異常」として分類されうる。いくつかの実施形態では、初期に「アーチファクト」として分類された第一の波形240の周期成分(すなわち、電気的パルス)が「異常」として再分類されうる。次いで、一方または両方の周期成分の特徴が、さまざまなデータベースに加えられたテンプレートに含められてもよい。
【0035】
図3は、さまざまな実施形態に基づく、心血管解析システム124の一つまたは複数のコンポーネントによって実行されうる例示的方法300を描いている。いくつかの実施形態では、方法300は、ひとたび患者が一つまたは複数の健康モニタリング装置(たとえば
図1の104〜112)につながれたときに初期に実行されて、患者に関連付けられたさまざまな型のテンプレート(たとえば正常、さまざまな範疇の異常)を生成してもよい。いくつかの実施形態では、方法300は、十分な数のテンプレートが生成されるときに、その患者のために実行されるのをやめてもよい。たとえば、ひとたび特定の分類(たとえば正常、さまざまな型の異常)をもつテンプレートが少なくともある閾値数になったら、方法300はもはや実行されなくてもよい。ただし、医療人員がそれらのテンプレートに欠陥があると判断する場合には、医療人員は、その患者のためのテンプレート生成を再び始める「再学習」ルーチンを作動させてもよい。
図3の動作は特定の順序で描かれているが、これは限定することは意図されていない。さまざまな実施形態において、一つまたは複数の動作が順序を変えられたり、省略されたり、あるいは追加されたりしてもよい。
【0036】
ブロック302では、電気的波形(たとえばECG 104によって生成される信号114)の周期成分に割り当てられた分類が同定されてもよい。たとえば、解析エンジン126は、初期注釈付けエンジン125によって信号114における周期成分に割り当てられた注釈を同定してもよい。あるいは、解析エンジン126は、初期注釈付けエンジン125によって加えられたものであってもなくてもよい注釈をもつ、以前に記録された信号波形を解析してもよい。ブロック304において、同じ患者からの血流力学的波形の対応する周期成分が識別されてもよい。上述したように、対応する周期成分は、電気的波形の周期成分に因果的に関係していてもよく、多くの場合、何らかの予測可能な時間間隔またはある範囲の時間間隔だけ電気的な周期成分のあとにくるために、対応するとして識別されうる。
【0037】
ブロック306では、血流力学的波形の周期成分の(または複数の周期成分を含む血流力学的波形全体またはその一部に関連する)信号品質指数または「SQI」が決定されてもよい。SQIはさまざまな仕方で計算されうる。いくつかの実施形態では、たとえば、ABP信号に関連するSQIは、心臓サイクルにおけるさまざまな位相において血圧を推定して、信号の生理学的もっともらしさに基づいてスコアを割り当ててもよい。いくつかのSQIは、形態論的な正常性を測ってもよい。他は、ノイズ(またはアーチファクト)に起因する信号の劣化を測ってもよい。波形によって表わされる信号が相対的にノイズが多い場合には、波形は相対的に低いSQIを受けてもよい。ここで具体的に言及されていない他のSQIが適用されてもよい。
【0038】
ブロック306で決定されたSQIが何らかの閾値τ(これはたとえば、さまざまな値に設定されうる)を満たさない場合、方法300はブロック308に進んでもよく、その点で、もともとブロック304で同定された血流力学的波形の対応する周期成分が拒否されてもよい。しかしながら、SQIが閾値τを満たす場合には、方法はブロック310に進んでもよい。
【0039】
ブロック310では、電気的波形の周期成分に割り当てられた分類(ブロック302で同定されたもの)が「正常」またはその何らかの等価な変形であるかどうかが判定されてもよい。答えが肯定であれば、方法300はブロック312に進んでもよい。ブロック312では、ブロック304で同定された血流力学的波形の対応する成分が「正常」(またはその意味的に等価な変形)として分類されてもよい。
【0040】
次いで、ブロック314において、今分類された対応する周期成分から抽出された一つまたは複数の特徴が、血流力学テンプレート・データベース130に記憶されている「正常」血流力学テンプレートに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、前記一つまたは複数の特徴を組み込むことは、今分類された対応する周期成分を、「正常」血流力学テンプレートと関連付けて記憶されているすでに融合された周期成分と融合することを含んでいてもよい。たとえば、それら二つの周期成分の継続時間が正規化されてもよく、次いで、それら二つの周期成分の平均が決定されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、今分類された周期成分の、前記テンプレートによって表わされるn個の周期成分との重み付けされた平均が決定されてもよい。たとえば、「正常」血流力学テンプレートの周期成分は、該テンプレートに加えられた過去のn個の周期成分の平均を含んでいてもよい。n個の周期成分のそれぞれは、どのくらい最近加えられたかに従って重み付けされてもされなくてもよい。特定の周期成分が時間的により以前にテンプレートに組み込まれたほど(これはたとえば反復工程または純粋な時間に関して決定される)、より小さな重みが割り当てられてもよい。別の言い方をすれば、遠い過去になるほど減少する指数関数的重みが、テンプレートに融合されるn個の周期成分に割り当てられてもよい。いくつかの実施形態では、テンプレートに関連付けて記憶されている周期成分を決定するために、単極フィルターのような低域通過フィルターが用いられてもよい。
【0042】
ブロック310に戻って、電気的信号の周期成分が「正常」として注釈付けされていなかった場合には、方法300はブロック316に進んでもよい。ブロック316では、(ブロック302において同定された)電気的波形の周期成分に割り当てられた分類が「アーチファクト」、「ノイズ」またはその何らかの等価な変形であるかどうかが判定されてもよい。答えが肯定であれば、方法300はブロック318に進んでもよい。ブロック318において、血流力学的波形の対応する周期成分が一つまたは複数の基準を満たすかどうかが判定されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、先述したΔ――すなわち、二つの隣り合うピークの間の振幅の間の差――が何らかの閾値を満たすかどうかが判定されてもよい。いくつかの実施形態では、次のような式が用いられてもよい。
【数1】
ここで、SBP(n)は、検査対象の周期成分における収縮期血圧(systolic blood pressure)であり、SBP(n−1)は、直前の周期成分における収縮期血圧である。この例では5%が閾値として使われているが、これは限定することは意図されていないことを理解しておくべきである。ささまざまな状況のもとで、患者の健康、患者の状況(たとえば患者が従事している活動)などに依存して、さまざまな他の閾値が選択されうる。
【0043】
ブロック318の基準が満たされない場合には、方法300はブロック320に進んでもよく、その点で、対応する周期成分が拒否されてもよい。これは、たとえば、電気的波形の周期成分が実際に、アーチファクトして適正に分類されていたことを示しうる。他方、ブロック318の基準が満たされる場合、方法300はブロック322に進んでもよい。ブロック322では、電気的波形の周期成分は再分類されてもよい。この例では「アーチファクト」から「異常」に再分類される。ブロック324では、血流力学的波形の対応する周期成分は同様に「異常」として分類されてもよい。そして、すでに論じたように、ブロック314では、血流力学的波形の今分類された対応する周期成分の一つまたは特徴が、データベース(たとえば130)に記憶されている「異常」テンプレートに組み込まれてもよい。
【0044】
ブロック316に戻ると、電気的信号の周期成分が「ノイズ」または「アーチファクト」として注釈付けされていなかった場合、方法300はブロック326に進んでもよい。ブロック326では、(ブロック302において同定された)電気的波形の周期成分に割り当てられた分類が「異常」またはその何らかの等価な変形であるかどうかが判定されてもよい。答えが否定であれば、方法300はブロック302に戻ってもよい。しかしながら、ブロック326における答えが肯定であれば、方法300はブロック328に進んでもよい。ブロック328では、ブロック318でなされたのと同様の判定がなされてもよい。たとえば、上記で使われたのと同じまたは同様の式が再び使われてもよい。ブロック328における閾値が満たされない場合には、方法300はブロック320に進んでもよく、その点で、血流力学的波形の周期成分が拒否されてもよい。ブロック328における閾値が満たされる場合、方法300はブロック324、次いでブロック314に進んでもよい。これらは前述した。
【0045】
図3では、ブロック306において単一のSQI決定がなされるが、これは限定することは意図されていない。さまざまな実施形態において、電気的波形の周期成分に割り当てられた分類に依存して、種々のSQI決定がなされてもよい。たとえば、正常として分類されている場合、第一のSQIが決定されてもよい。異常として分類されている場合、第二のSQIが決定されてもよい。などとなる。そして、上記の特定の式は、血流力学的波形における異常を判別するために使われてもよいが、これが単独でのみ使用できることや代替的な式が使用できないことを示唆することは意図されていない。
【0046】
図4は、
図3に描かれるもののような方法を使って形成されたテンプレートを使って未分類の周期波形成分を分類するためおよび130のような一つまたは複数のデータベースに血流力学テンプレートを追加することを続けるための例示的方法400を描いている。方法300と同様に、
図4の動作は特定の順序で描かれているが、これは限定することは意図されていない。さまざまな実施形態において、一つまたは複数の動作が順序を変えられたり、省略されたり、あるいは追加されたりしてもよい。
【0047】
ブロック402では、考察対象の血流力学的波形が、たとえばそれぞれピークおよび/または谷のような周期成分を含むセグメントに、セグメント分割されてもよい。ブロック404では、
図3のブロック306と同様に、各セグメント(または全体としての波形)についてSQIが決定されてもよい。SQIが閾値τを満たさない場合、方法400はブロック406に進んでもよく、その点で、そのセグメント(すなわち、周期成分を含む波形の一部)が「ノイズ」または「アーチファクト」として分類されてもよい。しかしながら、閾値τが満たされる場合には、方法400はブロック408に進んでもよい。
【0048】
ブロック408では、各セグメント/周期成分は、テンプレート・データベース(たとえば130)におけるテンプレートとの相関を調べられてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、セグメント/周期成分は、正常テンプレートおよびそれぞれ異なる型の異常分類(たとえば期外収縮、心房細動など)に関連付けられている複数の異常テンプレートの両方との相関を調べられてもよい。いくつかの実施形態では、先に述べたように、解析対象のセグメント/周期成分はテンプレート周期成分(単数または複数)から減算されてもよく、差が前記一つまたは複数の閾値と比較されてもよい。他の実施形態では、FFTまたは共分散シフトのような技法が、解析対象の周期成分を一つまたは複数のテンプレート周期成分と相関を調べるために用いられてもよい。
【0049】
ブロック410においてセグメント/周期成分と一つまたは複数のテンプレートとの間の相関Rが別の閾値(
図4ではτ
2)を満たさない場合、方法400はブロック412に進んでもよく、その点で、周期成分は未確定として分類され、および/または拒否されてもよい。しかしながら、閾値τ
2が満たされる場合には、方法400はブロック414に進んでもよい。さまざまな実施形態において、τ
2は、テンプレートとセグメント/周期成分の間の相関を評価するための調整可能な閾値であってもよい。いくつかの実施形態では、τ
2は0.5から1までの間の値、たとえば0.8に設定されてもよい。他の実施形態では、τ
2は(たとえば機械学習技法またはさまざまなヒューリスティクスを使って)患者データから時間を追って学習されていってもよい。たとえば、テンプレート・データベースにより多くのテンプレートが追加されるにつれて、より近いマッチを得ることが可能になることがある。よって、τ
2は時間とともに変化しうる。
【0050】
ブロック414では、セグメント(すなわち周期成分)の一つまたは複数の特徴が、テンプレート・データベース(たとえば130)において記憶されているテンプレートに組み込まれてもよい。周期成分がどのようにテンプレートに組み込まれうるかの例は、上記でブロック314に関して述べた。ブロック416では、セグメント/周期成分は、たとえば一つまたは複数の下流のコンポーネントおよび/またはアルゴリズムによる使用のために、しかるべく分類されうる。
【0051】
本稿に記載される技法を使ってその周期成分が分類/再分類/注釈付けされた波形は、さまざまな下流の目的のために使われてもよい。たとえば、本稿に記載される技法を使って異常として分類されたピークのような血流力学的波形の周期成分は、血流力学的劣化を検出および警報するために使われてもよい。さらに、注釈付けされた周期成分との関連で見られるとき、他の心血管測定が、より正確にされうる。少なくとも部分的には開示される技法を使って決定される分類/注釈付けに基づいて、たとえば心拍数不整がより正確に識別されうる。いくつかの実施形態では、本稿に記載される技法は、ECGおよびPLETH信号を同時にモニタリングする睡眠モニタリング・システムとともに使われてもよい。さらに、ここでの技法を使って注釈付けされた血流力学的波形は、臨床決定支援アルゴリズムのような用途のために使われて、たとえば周期成分を適正に異常として分類することにより偽警報率を減らしてもよい。もう一つの例として、本稿に記載される技法は、ECG信号におけるECGアーチファクトを、遡及的に異常として訂正するために使われてもよい。
【0052】
図5は、「正常」(上)および「期外」(下、すなわち特定の型の異常)として分類された、複数の累積された周期成分(図では「拍」と称されている)が太い黒線によって表わされる単一の累積的な周期成分に融合されうる様子の、限定しない例を描いている。未分類の周期成分が
図5に描かれる太い黒線の周期成分に十分類似している場合には、それはしかるべく分類されうる。たとえば、未分類の周期成分から抽出された特徴ベクトルと、
図5に示される融合済みの累積的な周期成分から抽出された特徴ベクトルとの間の類似性スコアが一つまたは複数の閾値を満たす場合には、その未分類の周期成分は同じに分類されうる。
【0053】
図6は、例示的なコンピュータ・システム610のブロック図である。コンピュータ・システム610は典型的には、バス・サブシステム612を介していくつかの周辺装置と通信する少なくとも一つのプロセッサ614を含んでいる。本稿での用法では、用語「プロセッサ」は、本稿に記載されるCDSシステムに帰されるさまざまな機能を実行することができるさまざまな装置、たとえばマイクロプロセッサ、FPGA、ASIC、他の同様のデバイスおよびそれらの組み合わせを包含するものと理解される。これらの周辺装置は、たとえばメモリ・サブシステム625およびファイル記憶サブシステム626を含むデータ保持サブシステム624と、ユーザー・インターフェース出力装置620と、ユーザー・インターフェース入力装置622と、ネットワーク・インターフェース・サブシステム616とを含んでいてもよい。入力および出力装置は、コンピュータ・システム610とのユーザー対話を許容する。ネットワーク・インターフェース・サブシステム616は、外部ネットワークへのインターフェースを提供し、他のコンピュータ・システムにおける対応するインターフェース装置に結合される。
【0054】
ユーザー・インターフェース入力装置622は、キーボード、ポインティングデバイス、たとえばマウス、トラックボール、タッチパッドもしくはグラフィック・タブレット、スキャナー、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、オーディオ入力装置、たとえば音声認識システム、マイクロフォンおよび/または他の型の入力装置を含んでいてもよい。一般に、「入力装置」という用語の使用は、コンピュータ・システム610にもしくは通信ネットワークに情報を入力するためのあらゆる可能な型の装置および仕方を含むことが意図されている。
【0055】
ユーザー・インターフェース出力装置620は、ディスプレイ・サブシステム、プリンター、ファクス機または非視覚的ディスプレイ、たとえばオーディオ出力装置を含んでいてもよい。ディスプレイ・サブシステムは陰極線管(CRT)、フラットパネルデバイス、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)、投影デバイスまたは視覚的イメージを生成するための他の何らかの機構を含みうる。ディスプレイ・サブシステムは、オーディオ出力装置を介するなどして、非視覚的ディスプレイをも提供してもよい。一般に、「出力装置」という用語の使用は、コンピュータ・システム610からユーザーにまたは別の機械またはコンピュータ・システムに情報を出力するためのあらゆる可能な型の装置および仕方を含むことが意図されている。
【0056】
データ保持システム624は、本稿に記載されるモジュールのうち一部または全部のモジュールの機能を提供するプログラミングおよびデータ構造体を記憶する。たとえば、データ保持システム624は、方法300または400の選択された側面を実行するためおよび/または心血管解析システム124の一つまたは複数のコンポーネントを実装するための論理を含んでいてもよい。
【0057】
これらのソフトウェア・モジュールは、一般に、プロセッサ614によって単独で、または他のプロセッサとの組み合わせにおいて実行される。記憶サブシステムにおいて使われるメモリ625は、プログラム実行の間の命令およびデータの記憶のためのメイン・ランダムアクセスメモリ(RAM)630、固定した命令が記憶される読み出し専用メモリ(ROM)632および他の型のメモリ、たとえば命令/データ・キャッシュ(これは追加的または代替的に少なくとも一つのプロセッサ614と一体であってもよい)を含むいくつかのメモリを含むことができる。ファイル記憶サブシステム626はプログラムおよびデータ・ファイルのための持続的記憶を提供でき、ハードディスクドライブ、付随するリムーバブル・メディアと一緒のフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ、光学式ドライブまたはリムーバブル・メディア・カートリッジを含みうる。ある種の実装の機能を実装するモジュールは、ファイル記憶サブシステム626によってデータ保持システム624にまたはプロセッサ(単数または複数)614がアクセスできる他の機械に記憶されてもよい。本稿での用法では、「非一時的なコンピュータ可読媒体」という用語は、揮発性メモリ(たとえばDRAMおよびSRAM)および不揮発性メモリ(たとえばフラッシュメモリ、磁気記憶および光学式記憶)の両方を包含するが、一時的な信号は含まないと理解される。
【0058】
バス・サブシステム612は、コンピュータ・システム610のさまざまなコンポーネントおよびサブシステムが互いと意図されるように通信できるようにするための機構を提供する。バス・サブシステム612は概略的に単一のバスとして示されているが、バス・サブシステムの代替的な実装は複数のバスを使ってもよい。
【0059】
コンピュータ・システム610は、ワークステーション、サーバー、コンピューティング・クラスター、ブレード・サーバー、サーバー・ファームまたは他の任意のデータ処理システムもしくはコンピューティング装置を含むさまざまな型であることができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ・システム610は、クラウド・コンピューティング環境内に実装されてもよい。コンピュータおよびネットワークの絶えず変化する性質のため、
図6に描かれているコンピュータ・システム610の記述はいくつかの実装を例解する目的のための特定の例としてのみ意図されている。
図6に描いたコンピュータ・システムより多くの、あるいは少ないコンポーネントをもつコンピュータ・システム610の他の多くの構成が可能である。
【0060】
いくつかの実施形態が本稿において記述され、例解されているところ、当業者は、前記機能を実行するためおよび/または本稿に記載される結果および/または利点の一つまたは複数を得るための多様な他の手段および/または構造を容易に構想するであろう。そのような変形および/または修正の一つ一つは、本稿に記載される実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般には、当業者は、本稿に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料および構成が例示的であることが意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は本教示が使われる具体的な応用(単数または複数)に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本稿に記載される個別的実施形態に対する多くの等価物を認識する、あるいは高々日常的な試行を使って見きわめることができるであろう。したがって、上記の実施形態は単に例として呈示されており、付属の請求項およびその等価物の範囲内で、実施形態は具体的に記述および特許請求されている以外の仕方で実施されてもよいことは理解しておくものとする。本開示の発明的な実施形態は、本稿に記載される一つ一つの個別的な特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に向けられている。加えて、二つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせが、かかる特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が互いに整合しないものでない限り、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0061】
本稿で定義され、使用されるあらゆる定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれた文書における定義および/または定義された用語の通常の意味よりも優先して適用されると理解されるべきである。
【0062】
本願で明細書および請求項において使われるところの単数の表現は、そうでないことが明確に示されていない限り、「少なくとも一つ」を意味すると理解されるべきである。
【0063】
本願で明細書および請求項において使われるところの「および/または」の句は、それにより結ばれる要素の「一方または両方」、すなわち場合によっては連言的に存在し場合によっては選言的に存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「および/または」とともに挙げられる複数の要素も同じように、すなわち、それにより結ばれる要素の「一つまたは複数」を意味するものと解釈されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意的に存在していてもよい。これは特定的に同定されている要素と関係したものでも関係ないものでもよい。こうして、限定しない例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「有する/含む」のようなオープンな言辞との関連で使われるとき、ある実施形態ではAのみ(任意的にB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(任意的にA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(任意的に他の要素を含む);などを指すことがある。
【0064】
本願で明細書および請求項において使われるところでは、「または」は上記で定義した「および/または」と同じ意味をもつと理解されるべきである。たとえば、リスト中の項目を分離するとき、「または」と「および/または」は包含的として解釈される。すなわち、いくつかの要素または要素のリストのうちの少なくとも一つだが二つ以上でもよいものと、任意的には追加的な、リストにない項目を含む。「…の一つだけ」または「…のちょうど一つ」といった、あるいは請求項で使われるときは「…からなる」といった、逆のことを明確に示す用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうちのちょうど一つの要素を含むことを指す。一般に、本稿で使われるところの用語「または」は、「どちらか」、「…の一方」、「…のうち一つのみ」または「…のうちのちょうど一つ」といった排他性の用語を伴うときにのみ、排他的な代替(すなわち「一方または他方だが両方ではない」)を示すと解釈される。請求項で使われるときの「本質的には…からなる」は、特許法の分野において使われるところの通常の意味をもつ。
【0065】
本願で明細書および請求項において使われるところでは、一つまたは複数の要素のリストに言及しての「少なくとも一つ」という句は、その要素のリストにおける要素の任意の一つまたは複数から選択される少なくとも一つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に挙げられている要素それぞれの少なくとも一つを含むとは限らず、要素のリスト中の要素のいかなる組み合わせも排除しないものと理解されるべきである。この定義は、「少なくとも一つ」の句が指す要素のリスト中で具体的に特定されている要素以外に要素が任意的に存在していてもよいことをも許容する。これは具体的に特定されている要素に関係したものであっても関係しないものであってもよい。このように、限定しない例として、「AおよびBの少なくとも一つ」(または等価だが「AまたはBの少なくとも一つ」または等価だが「Aおよび/またはBの少なくとも一つ」)は、ある実施形態では少なくとも一つで任意的には二つ以上のA(Bは存在しない)(任意的にはB以外の要素を含む);別の実施形態では少なくとも一つで任意的には二つ以上のB(Aは存在しない)(任意的にはA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では少なくとも一つで任意的には二つ以上のAおよび少なくとも一つで任意的には二つ以上のB(任意的には他の要素を含む);などを指すことができる。
【0066】
そうでないことが明確に示されるのでない限り、二つ以上の段階または工程を含む本願で特許請求される任意の方法において、段階または工程の順序は必ずしもその方法の段階または工程が記載される順序に限定されないことも理解しておくべきである。
【0067】
請求項および上記の明細書において、「有する」「含む」「担持する」「もつ」「包含する」「関わる」「保持する」「構成される」などといったあらゆる移行句はオープンなものと理解される。すなわち、含むがそれに限定されないことを意味する。「…からなる」および「本質的には…からなる」という移行句のみが、米国特許商標庁審査基準の第2111.03節に記載されるところのそれぞれクローズドまたは半クローズドの移行句である。特許協力条約(PCT)の規則6.2(b)に従って請求項において使用されるある種の表現および参照符号は範囲を限定しないことを理解しておくべきである。
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
コンピュータ実装される方法であって:
一つまたは複数のプロセッサによって、電気的波形の周期成分に関連付けられた、以前に割り当てられた分類を同定する段階であって、前記電気的波形は患者の心臓における電気的活動を表わす、段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、患者の心血管系における血流力学的活動を表わす血流力学的波形の対応する周期成分を解析する段階であって、前記対応する周期成分は前記電気的波形の前記周期成分に因果的に関係している、段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記解析に基づく、前記以前に割り当てられた分類が前記対応する周期成分にも当てはまるとの判定に応答して、前記以前に割り当てられた分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てる段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、血流力学テンプレートのデータベースにおいて、前記以前に割り当てられた分類に関連付けられた血流力学テンプレートを、前記血流力学的波形の前記対応する周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう更新する段階とを含む、
コンピュータ実装される方法。
〔態様2〕
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、患者に関連付けられた電気生理的データを受領する段階であって、前記電気生理的データは前記電気的波形および該電気的波形の一つまたは複数の周期成分に関連付けられた一つまたは複数の以前に割り当てられた分類を含む、段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、患者に関連付けられた血流力学的データを受領する段階であって、前記血流力学的データは前記血流力学的波形を含む、段階とをさらに含む、
態様1記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様3〕
前記電気生理的データは心電図の一つまたは複数の電極から受領される、態様2記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様4〕
前記血流力学的データは、患者の動脈血圧を示す信号を含む、態様2記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様5〕
前記血流力学的データは、患者の肺血圧を示す信号を含む、態様2記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様6〕
前記血流力学的データは、中心静脈圧を示す信号を含む、態様2記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様7〕
前記血流力学的データは、プレチスモグラフからの信号を含む、態様2記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様8〕
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記と同じ血流力学的波形または異なる患者に関連付けられた異なる血流力学的波形の、未分類の周期成分を識別し;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記未分類の周期成分を血流動力学テンプレートの前記データベースのテンプレートと照合し;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、マッチするテンプレートに関連付けられた分類を、前記血流力学的波形の前記未分類の周期成分に割り当てることをさらに含む、
態様1記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様9〕
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記血流力学的波形の今分類された周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう、前記マッチするテンプレートを更新することをさらに含む、態様8記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様10〕
前記以前に割り当てられた分類が異常分類を含み、前記割り当てることは、前記解析に基づく、前記血流力学的波形の前記対応する周期成分と前記血流力学的波形の以前の周期成分との間の差分がある閾値を満たすとの判定に応答して、前記異常分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てることを含む、態様1記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様11〕
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、アーチファクトと見なされる前記電気的波形の別の周期成分に割り当てられたアーチファクト分類を同定する段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記電気的波形の前記別の周期成分に因果的に関係している前記血流力学的波形の対応する別の対応する周期成分を解析する段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記解析に基づく、前記血流力学的波形の前記別の対応する周期成分と前記血流力学的波形の別の以前の周期成分との間の差分がある閾値を満たすとの判定に応答して、異常分類を前記血流力学的波形の前記別の対応する周期成分に割り当てる段階と;
前記プロセッサのうちの一つまたは複数によって、前記電気的波形の前記別の周期成分を前記異常分類をもって再分類する段階とをさらに含む、
態様1記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様12〕
前記以前に割り当てられた分類が正常分類を含み、前記割り当てることは、前記解析に基づく、前記対応する周期成分がある信号品質指数(SQI)を満たすとの判定に応答して、前記正常分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てることを含む、態様1記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様13〕
前記解析することは、前記対応する周期成分を血流力学テンプレートの前記データベースのテンプレートと照合することを含む、態様1記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様14〕
前記更新することは、前記対応する周期成分を、マッチする血流力学テンプレートと関連付けて記憶されている周期成分と融合させることを含む、態様13記載のコンピュータ実装される方法。
〔態様15〕
一つまたは複数のプロセッサと;前記一つまたは複数のプロセッサと動作可能に結合されたメモリとを有するシステムであって、前記メモリは血流力学テンプレートのデータベースを記憶しており、各血流力学テンプレートは血流力学的波形の一つまたは複数の周期成分の一つまたは複数の特徴および対応する分類を含み、前記血流力学的波形は患者の心血管系における血流力学的活動を表わす血流力学的波形を表わし、前記メモリはさらに命令を記憶しており、該命令は、前記一つまたは複数のプロセッサによる該命令の実行に応答して、前記一つまたは複数のプロセッサに:
前記血流力学的波形の、未分類の周期成分を識別する段階と;
前記未分類の周期成分を血流動力学テンプレートの前記データベースのテンプレートと照合する段階と;
前記血流力学的波形の前記未分類の周期成分を、マッチするテンプレートに関連付けられた分類をもって分類する段階と;
前記血流力学的波形の今分類された周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう、前記マッチするテンプレートを更新する段階とを実行させるものである、
システム。
〔態様16〕
命令を有する少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体であって、該命令は、一つまたは複数のプロセッサによる該命令の実行に応答して、前記一つまたは複数のプロセッサに、以下の動作、すなわち:
電気的波形の周期成分に割り当てられた、以前に割り当てられた分類を同定する段階であって、前記電気的波形は患者の心臓における電気的活動を表わす、段階と;
患者の心血管系における血流力学的活動を表わす血流力学的波形の対応する周期成分を解析する段階であって、前記対応する周期成分は前記電気的波形の前記周期成分に因果的に関係している、段階と;
前記解析に基づく、前記以前に割り当てられた分類が前記対応する周期成分にも当てはまるとの判定に応答して、前記以前に割り当てられた分類を前記血流力学的波形の前記対応する周期成分に割り当てる段階と;
血流力学テンプレートのデータベースにおいて、前記以前に割り当てられた分類に関連付けられた血流力学テンプレートを、前記血流力学的波形の前記対応する周期成分の一つまたは複数の特徴を含むよう更新する段階とを実行させるものである、
少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様17〕
患者に関連付けられた電気生理的データを受領する段階であって、前記電気生理的データは前記電気的波形および該電気的波形の一つまたは複数の周期成分に関連付けられた一つまたは複数の分類を含む、段階と;
患者に関連付けられた血流力学的データを受領する段階であって、前記血流力学的データは前記血流力学的波形を含む、段階とを実行するための命令をさらに有する、
態様16記載の少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様18〕
前記電気生理的データは心電図の一つまたは複数の電極から受領される、態様17記載の少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様19〕
前記血流力学的データは、患者の動脈血圧を示す信号を含む、態様17記載の少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様20〕
前記血流力学的データは、患者の肺血圧を示す信号を含む、態様17記載の少なくとも一つの非一時的なコンピュータ可読媒体。