特許第6959964号(P6959964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959964
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H01H37/76 P
   H01H37/76 F
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-155320(P2019-155320)
(22)【出願日】2019年8月28日
(62)【分割の表示】特願2016-58423(P2016-58423)の分割
【原出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2019-201003(P2019-201003A)
(43)【公開日】2019年11月21日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−035281(JP,A)
【文献】 特開2016−035816(JP,A)
【文献】 特開2015−230804(JP,A)
【文献】 特開2011−060762(JP,A)
【文献】 特開2013−229295(JP,A)
【文献】 特開2015−201313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、
上記絶縁基板上に設けられた第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極と、
上記絶縁基板上に設けられ、且つ上記第1の発熱体電極及び上記第2の発熱体電極に接続された発熱体と、
上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、一方に接続する発熱体引出電極と、
上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、他方に接続する第3の電極と、
上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する可溶導体とを有し、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち少なくとも上記発熱体引出電極と接続する一方と上記発熱体とが接続し、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体と上記発熱体引出電極とが接続する保護素子。
【請求項2】
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、
上記絶縁基板上に設けられた発熱体と、
上記発熱体に接続する第1の発熱体電極と、
上記第1の発熱体電極に接続する第3の電極と、
上記第1の電極と上記第2の電極との間で可溶導体を支持する発熱体引出電極と、
上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する上記可溶導体とを有し、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記第1の発熱体電極と上記発熱体とが接続し、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体と上記発熱体引出電極とが接続する保護素子。
【請求項3】
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、
上記絶縁基板上に設けられた第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極と、
上記絶縁基板上に設けられ、且つ上記第1の発熱体電極及び上記第2の発熱体電極に接続された発熱体と、
上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、一方に上記発熱体を介し接続する発熱体引出電極と、
上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、他方に接続する第3の電極と、
上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する可溶導体とを有し、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体引出電極が上記絶縁基板に向かって垂直方向に延在し、上記発熱体に接続する保護素子。
【請求項4】
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、
上記絶縁基板上に設けられた発熱体と、
上記発熱体に接続する第1の発熱体電極と、
上記第1の発熱体電極に接続する第3の電極と、
上記発熱体に接続する発熱体引出電極と、
上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する可溶導体とを有し、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体引出電極が上記絶縁基板に向かって垂直方向に延在し、上記発熱体に接続する保護素子。
【請求項5】
上記可溶導体は、上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々にハンダにて接続され、
少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体と、上記ハンダにて上記可溶導体と接続された上記発熱体引出電極とを接続する請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項6】
上記発熱体と上記発熱体引出電極との間に積層された第1の絶縁層を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項7】
上記絶縁基板と上記発熱体との間に第2の絶縁層を有する請求項6に記載の保護素子。
【請求項8】
上記絶縁基板の両面を貫通し電気的に接続するためのスルーホールを有し、
上記発熱体、上記第1の発熱体電極及び上記第2の発熱体電極は、上記絶縁基板の上記発熱体引出電極が設けられた面の反対面に設けられ、
上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、一方と上記発熱体引出電極とを上記スルーホールを介して接続する請求項1又は3に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流経路上に実装され、定格を超える電流が流れた時に過電流によるジュール熱で溶断し、又は電流経路を形成する回路上の異常等で電流経路を遮断する必要がある時にヒータによる加熱で可溶導体を溶断し当該電流経路を遮断する保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路を形成する回路上の異常等で電流経路を遮断する必要がある時にヒータによる加熱で可溶導体を溶断し、当該電流経路を遮断する保護素子が用いられている。このような保護素子は、絶縁基板上に電極や可溶導体を搭載した機能型のチップに形成され、このチップを回路基板上に実装する表面実装型のものが知られている。
【0003】
上述のような保護素子では、外部回路からの信号に基づきヒータに通電して加熱をすることで可溶導体を溶断するため、外部回路の制御に基づくタイミングで電流経路を遮断するスイッチのような使い方が可能である。このような保護素子は、例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池の保護回路として用いられる。
【0004】
近年、リチウムイオンバッテリ等の二次電池の用途に大電流出力を要求するもの、例えば電動アシスト自転車や充電式電動工具等が増えてきており、保護回路の定格電流が上昇し、大電流に耐えうる保護素子が用いられるようになってきた。
【0005】
特許文献1に記載の技術にあっては、絶縁基板の表面にヒータを設け、ヒータから発する熱を絶縁層を介して可溶導体に伝達することで可溶導体を溶融し、電流経路を遮断する素子が開示されている。また、特許文献1に記載の技術にあっては、絶縁基板の裏面にヒータを設け、ヒータから発する熱を絶縁基板を介して可溶導体に伝達することで可溶導体を溶融し、電流経路を遮断する素子も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−060762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の技術にあっては、絶縁基板の表面にヒータを設けた場合、絶縁基板上の絶縁層を介してヒータから可溶導体への熱伝導経路が形成されており、熱伝導効率が悪いという課題が生じる。また、絶縁基板の裏面にヒータを設けた場合にあっては、絶縁基板を介して、ヒータから可溶導体への熱伝導経路が形成されており、更に熱伝導効率が悪いという課題が生じる。
【0008】
また、上記特許文献1に記載の技術にあっては、大電流に対応するにつれて可溶導体の溶断体積が大きくなるため、ヒータによる加熱時間が長くなり、可溶導体の速溶断性が悪化することが懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、大電流に対応可能でありヒータから可溶導体に熱を効率的に伝達し、速溶断性に優れる保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、上記絶縁基板上に設けられた第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極と、上記絶縁基板上に設けられ、且つ上記第1の発熱体電極及び上記第2の発熱体電極上に接続された発熱体と、上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、一方に接続する発熱体引出電極と、上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、他方に接続する第3の電極と、上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する可溶導体とを有し、少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち少なくとも上記発熱体引出電極と接続する一方と上記発熱体とが接続し、少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体と上記発熱体引出電極とが接続するものである。
また、上述した課題を解決するために、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、上記絶縁基板上に設けられた発熱体と、上記発熱体に接続する第1の発熱体電極と、上記第1の発熱体電極に接続する第3の電極と、上記第1の電極と上記第2の電極との間で可溶導体を支持する発熱体引出電極と、上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する上記可溶導体とを有し、少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記第1の発熱体電極と上記発熱体とが接続し、少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体と上記発熱体引出電極とが接続するものである。
【0011】
また、上述した課題を解決するために、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、上記絶縁基板上に設けられた第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極と、上記絶縁基板上に設けられ、且つ上記第1の発熱体電極及び上記第2の発熱体電極上に接続された発熱体と、上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、一方に上記発熱体を介し接続する発熱体引出電極と、上記第1の発熱体電極及び第2の発熱体電極のうち、他方に接続する第3の電極と、上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する可溶導体とを有し、少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体引出電極が上記絶縁基板に向かって垂直方向に延在し、上記発熱体に接続するものである。
また、上述した課題を解決するために、本発明に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板上に設けられた第1の電極及び第2の電極と、上記絶縁基板上に設けられた発熱体と、上記発熱体に接続する第1の発熱体電極と、上記第1の発熱体電極に接続する第3の電極と、上記発熱体に接続する発熱体引出電極と、上記第1の電極及び第2の電極間を上記発熱体引出電極を経由して各々に接続する可溶導体とを有し、少なくとも上記可溶導体と重畳する位置にて、上記発熱体引出電極が上記絶縁基板に向かって垂直方向に延在し、上記発熱体に接続するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱体から可溶導体への熱伝導効率を上げる事により、発熱体の発熱による可溶導体の溶断時間を短縮させて、大電流定格の保護素子を実現する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施の形態にかかるヒューズ素子についてカバー部材を取り外して示す平面図である。
図2図2は、図1におけるヒューズ素子について可溶導体を取り外した状態を示す平面図である。
図3図3は、図1におけるA−A’線における断面図である。
図4図4は、ヒューズ素子の回路構成を説明する等価回路図であり、図4(A)がヒューズ素子の動作前の状態を示し、図4(B)がヒューズ素子の動作後、可溶導体が溶融した状態を示す。
図5図5は、図1におけるヒューズ素子が作動し可溶導体が溶融した状態を示す平面図である。
図6図6は、第2の実施の形態にかかるヒューズ素子についてカバー部材を取り外して示す平面図である。
図7図7は、図6におけるヒューズ素子について可溶導体を取り外した状態を示す平面図である。
図8図8は、図6におけるA−A’線における断面図である。
図9図9は、第3の実施の形態にかかるヒューズ素子についてカバー部材を取り外して示す平面図である。
図10図10は、図9におけるヒューズ素子について可溶導体を取り外した状態を示す平面図である。
図11図11は、図9におけるA−A’線における断面図である。
図12図12は、図9におけるヒューズ素子の回路構成を説明する等価回路図であり、図12(A)がヒューズ素子の動作前の状態を示し、図12(B)がヒューズ素子の動作後、可溶導体が溶融した状態を示す。
図13図13は、第4の実施の形態にかかるヒューズ素子についてカバー部材を取り外して示す平面図である。
図14図14は、図13におけるヒューズ素子について可溶導体を取り外した状態を示す平面図である。
図15図15は、図13におけるA−A’線における断面図である。
図16図16は、参考例のヒューズ素子についてカバー部材を取り外して示す平面図である。
図17図17は、図16におけるヒューズ素子について可溶導体を取り外した状態を示す平面図である。
図18図18は、図16におけるA−A’線における断面図である。
図19図19は、図16におけるヒューズ素子の回路構成を説明する等価回路図であり、図19(A)がヒューズ素子の動作前の状態を示し、図19(B)がヒューズ素子の動作後、可溶導体が溶融した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明が適用された保護素子として、ヒューズ素子について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
[第1の実施の形態]
ヒューズ素子1は、図1乃至図3に示すように、例えばリチウムイオン二次電池の保護回路等の回路基板にリフローにより表面実装されることにより、リチウムイオン二次電池の充放電経路上に可溶導体10を組み込むものである。
【0016】
この保護回路は、ヒューズ素子1の定格を超える大電流が流れると、可溶導体10が自己発熱(ジュール熱)によって溶断することにより電流経路を遮断する。また、この保護回路は、ヒューズ素子1が実装された回路基板等に設けられた2次保護ICによって所定のタイミングで発熱体5へ通電し、発熱体5の発熱によって可溶導体10を溶断させることによって電流経路を遮断することができる。
【0017】
[ヒューズ素子]
ヒューズ素子1は、図1乃至図3に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2上に設けられた第1の電極3及び第2の電極4と、絶縁基板2上に設けられた発熱体5と、発熱体5に接続する第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7と、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7のうち、一方に接続する発熱体引出電極9と、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7のうち、他方に接続する第3の電極8と、第1の電極3及び第2の電極4間を発熱体引出電極9を経由して各々に接続する可溶導体10とを有し、少なくとも可溶導体10と重畳する位置にて、第2の発熱体電極7もしくは発熱体5と発熱体引出電極9とを接続するように構成したものである。
【0018】
具体的に、ヒューズ素子1は、第3の電極8が第1の発熱体電極6に接続され、可溶導体10と重畳する位置にて発熱体引出電極9が絶縁基板2に向かって垂直方向に延在して第2の発熱体電極7もしくは発熱体5に接続されている。また、ヒューズ素子1は、絶縁基板2上に抵抗測定電極11を有しており、抵抗測定電極11が第2の発熱体電極7に接続されている。この抵抗測定電極11は、製造プロセス中の抵抗測定に使用するものであり、製品として必ずしも必要なものではない。なお、ヒューズ素子1では、第3の電極8を第2の発熱体電極7に接続するようにしてもよく、この場合に、可溶導体10と重畳する位置にて発熱体引出電極9が絶縁基板2に向かって垂直方向に延在して第1の発熱体電極6もしくは発熱体5に接続することによっても同等の構成をとることができる。
【0019】
また、ヒューズ素子1は、第1の電極3及び第2の電極4と、絶縁基板2の裏面2bに設けられた第1の実装電極3a及び第2の実装電極4aとを接続し、絶縁基板2の側面に設けられた第1のハーフスルーホール3b及び第2のハーフスルーホール4bを有している。また、ヒューズ素子1は、第3の電極8と絶縁基板2の裏面2bに設けられた第3の実装電極8aとを接続する第3のハーフスルーホール8bを絶縁基板2の側面に有している。
【0020】
発熱体引出電極9は、可溶導体10と重畳する位置にて、第2の発熱体電極7と電気的に接続する接続部9aを有しており、接続部9aの先端において第2の発熱体電極7と接続され、また発熱体5とも先端の一部が接している。従って、発熱体引出電極9は、発熱体5から放出される熱を可溶導体10に向かって垂直方向に伝達するため、可溶導体10に至る最短経路の熱伝導経路を構成する。
【0021】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0022】
[電極]
第1の電極3及び第2の電極4は、絶縁基板2の表面2a上に、相対向する側縁近傍にそれぞれ離間して配置されることにより開放され、可溶導体10が搭載されることにより、可溶導体10を介して電気的に接続されている。また、第1の電極3及び第2の電極4は、ヒューズ素子1に定格を超える大電流が流れ可溶導体10が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、あるいは発熱体5が通電に伴って発熱し可溶導体10が溶断することによって、電流経路が遮断される。
【0023】
図1乃至図3に示すように、第1の電極3及び第2の電極4は、それぞれ絶縁基板2の側面に設けられた第1のハーフスルーホール3b及び第2のハーフスルーホール4bを介して裏面2bに設けられた外部接続電極である第1の実装電極3a及び第2の実装電極4aと接続されている。ヒューズ素子1は、これら第1の実装電極3a及び第2の実装電極4aを介して外部回路が形成された回路基板と接続され、当該外部回路の電流経路の一部を構成する。
【0024】
第1の電極3及び第2の電極4は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができる。また、第1の電極3及び第2の電極4の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、ヒューズ素子1は、第1の電極3及び第2の電極4の酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。
【0025】
また、ヒューズ素子1をリフロー実装する場合に、可溶導体10を接続する接続用ハンダあるいは可溶導体10の外層に低融点金属層が形成されている場合に当該低融点金属が溶融することにより第1の電極3及び第2の電極4を溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0026】
[発熱体]
発熱体5は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru、Cu、Ag、あるいはこれらを主成分とする合金等からなる。発熱体5は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。また、発熱体5は、一端が第1の発熱体電極6と接続され、他端が第2の発熱体電極7と接続されている。また、発熱体5は、他端が発熱体引出電極9の接続部9aの先端の一部と接続されている。
【0027】
発熱体5は、ヒューズ素子1が回路基板に実装されることにより、第3の実装電極8aを介して回路基板に形成された外部回路と接続される。そして、発熱体5は、外部回路の電流経路を遮断する所定のタイミングで第3の実装電極8aを介して通電され、発熱することにより、第1の電極3及び第2の電極4を接続している可溶導体10を溶断することができる。また、発熱体5は、可溶導体10が溶断することにより、自身の電流経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0028】
[発熱体電極]
第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7は、絶縁基板2の表面2a上で、相対向する側縁近傍がそれぞれ離間して配置されることにより開放され、発熱体5が搭載されることにより、発熱体5を介して電気的に接続されている。
【0029】
第1の発熱体電極6は、絶縁基板2の表面2a上で、第3の電極と接続されており第3の電極8と一体に形成されている。また、第2の発熱体電極7は、絶縁基板2の表面2a上で、抵抗測定電極11と接続されており抵抗測定電極11と一体に形成されている。これら、第1の発熱体電極6、第2の発熱体電極7、第3の電極8及び抵抗測定電極11は、第1の電極3及び第2の電極4と同様にCuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができ、それらを同一プロセスで形成する事もできる。
【0030】
なお、抵抗測定電極11は、ヒューズ素子1の抵抗値を測るために用いられる電極であり、実装基板にヒューズ素子1を実装しない状態であっても、第3の電極8及び抵抗測定電極11間でヒューズ素子1の抵抗値を測定することを可能とするものである。従って、ヒューズ素子1は、抵抗値の測定を不要とする場合に、抵抗測定電極11を省略して構成することもできる。
【0031】
ここで、第1の実装電極3a及び第1のハーフスルーホール3bは、第1の電極3と同様の材料により形成することができ、第2の実装電極4a及び第2のハーフスルーホール4bは、第2の電極4と同様の材料により形成することができ、第3の実装電極8a及び第3のハーフスルーホール8bは、第1の発熱体電極6と同様の材料により形成することができるものとする。また、第1のハーフスルーホール3b、第2のハーフスルーホール4b、第3のハーフスルーホール8bはハーフスルーホール形状に限定される必要は無く、円形やその他任意の形状のスルーホールであっても良い。
【0032】
[絶縁層]
ヒューズ素子1は、発熱体5と発熱体引出電極9との間に積層された第1の絶縁層12を有する。第1の絶縁層12は、発熱体5を覆い発熱体5と発熱体引出電極9との接触を妨げる。第1の絶縁層12としては、例えばガラス材料を用いることができる。
【0033】
また、ヒューズ素子1は、発熱体5の熱を効率良く可溶導体10に伝えるために、絶縁基板2と発熱体5の間に図示しない第2の絶縁層を積層しても良い。第2の絶縁層は、発熱体5から放出される熱を絶縁基板2に拡散させないようにすることができる。第2の絶縁層としては、例えばガラス材料を用いることができる。
【0034】
ここで、第1の絶縁層12は、発熱体5と発熱体引出電極9との間に切り欠き部12aが形成されている。この切り欠き部12aは、発熱体引出電極9の接続部9aに対応する解放領域であり、接続部9aが配設される。
【0035】
[発熱体引出電極]
発熱体引出電極9は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができる。また、発熱体引出電極9の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
【0036】
発熱体引出電極9は、上述の導電材料を含有したペーストを塗布することにより形成することができるが、その形状は、略T字形状に形成されている。発熱体引出電極9は、第3の電極8と抵抗測定電極11にむけて両側に広がる幅広部を有しており、幅広部よりも幅の狭い領域が接続部9aとして第2の発熱体電極7に向けて延在する。
【0037】
発熱体引出電極9は、接続部9aの幅Wが可溶導体10の幅Wよりも広くなるように構成されており、発熱体5が発熱した際に、可溶導体10全体を十分に加熱できるようになっている。従って、第1の絶縁層12の切り欠き部12aの幅はW以上となるように第1の絶縁層12が形成されることが好ましい。
【0038】
[可溶導体]
可溶導体10は、発熱体5の発熱により速やかに溶断される材料からなり、例えばハンダや、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の低融点金属を好適に用いることができる。
【0039】
また、可溶導体10は、Pb、Ag、Cu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする合金等の高融点金属を用いてもよく、あるいは内層を低融点金属層とし外層を高融点金属層とする等の低融点金属と高融点金属との積層体であってもよい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、ヒューズ素子1をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、低融点金属の外部への流出を抑制し、可溶導体10の形状を維持することができる。また、溶断時も、低融点金属が溶融することにより、高融点金属を溶食(ハンダ食われ)することで、高融点金属の融点以下の温度で速やかに溶断することができる。
【0040】
なお、可溶導体10は、発熱体引出電極9、第1の電極3及び第2の電極4に対して、ハンダ14により接続されている。可溶導体10は、リフローはんだ付けによって容易に接続することができる。可溶導体10は、発熱体引出電極9上に搭載されることにより、発熱体引出電極9と重畳され、また発熱体5とも重畳される。また、第1の電極3及び第2の電極4の間にわたって接続された可溶導体10は、第1の電極3と第2の電極4との間において溶断し、第1の電極3及び第2の電極4間を遮断する。すなわち、可溶導体10は、中央部が発熱体引出電極9に支持されるとともに、発熱体引出電極9と第1の電極3及び第2の電極4の各々の間が溶断部とされている。
【0041】
また、可溶導体10は、酸化防止、濡れ性の向上等のため、フラックス15が塗布されている。可溶導体10は、フラックス15が保持されることによって、可溶導体10の酸化及び酸化に伴う溶断温度の上昇を防止して、溶断特性の変動を抑制し、速やかに溶断することができる。
【0042】
なお、ヒューズ素子1は、小型且つ高定格の保護素子を実現するものであり、例えば、絶縁基板2の寸法として10mm×5mm程度と小型でありながら、抵抗値が0.5〜1mΩ、40〜60A定格と高定格化が図られている。なお、本発明は、あらゆるサイズ、抵抗値及び電流定格を備える保護素子に適用することができるのはもちろんである。
【0043】
なお、ヒューズ素子1は、絶縁基板2の表面2a上に、内部を保護するとともに溶融した可溶導体10の飛散を防止するカバー部材16を取り付けるようにしている。カバー部材16は、絶縁基板2の表面2a上に搭載される側壁16aと、ヒューズ素子1の上面を構成する天面16bとを有する。このカバー部材16は、例えば、熱可塑性プラスチック,セラミックス,ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。
【0044】
[回路構成]
ここで、ヒューズ素子1の回路構成と、通電経路の遮断動作について説明する。ヒューズ素子1は、図4(A)に示すように、第1の電極3から第2の電極4にわたって可溶導体10が接続されており、可溶導体10の中途部分に発熱体引出電極9が接続されている。また、発熱体引出電極9は、可溶導体10と接続された側の反対側に、第2の発熱体電極7、発熱体5、第1の発熱体電極6の順に接続されている。従って、ヒューズ素子1は、第1の電極3、第2の電極4及び第1の発熱体電極6から、それぞれ第1のハーフスルーホール3b、第2のハーフスルーホール4b及び第3のハーフスルーホール8bを介して接続される第1の実装電極3a、第2の実装電極4a及び第3の実装電極8aを外部端子とする3端子の素子であるといえる。
【0045】
ヒューズ素子1は、第1の電極3から第2の電極4に向かって主回路の電流が流れるように構成されており、第1の発熱体電極6から電流が流れた場合に、発熱体5が発熱し、第2の発熱体電極7及び発熱体引出電極9の接続部9aを主の熱伝導経路として発熱体引出電極9を加熱して、図4(B)及び図5に示すように、発熱体引出電極9上の可溶導体10が溶融し、溶融体10aが発熱体引出電極9上に凝集し、可溶導体10が切断される。これにより、ヒューズ素子1は、第1の電極3及び第2の電極4間の電流経路が遮断されるとともに、発熱体5に対する電流経路も遮断される。
【0046】
発熱体5から放出された熱は、第1の絶縁層12を介して発熱体引出電極9にも伝達するが、第1の絶縁層12よりも熱伝導率の高い発熱体引出電極9の接続部9aによって垂直方向に速やかに伝達され、発熱体引出電極9を速やかに加熱するとともに、接続部9aと重畳して配置される可溶導体10も速やかに加熱する。従ってヒューズ素子1は、従来と比して熱伝導効率が非常に高まったと言える。
【0047】
また、ヒューズ素子1は、発熱体引出電極9の接続部9aが直接発熱体5とも接しているため、更に熱伝導効率が高く、より効率的に可溶導体10を加熱することが可能となった。
【0048】
以上のようにヒューズ素子1は、可溶導体10に発熱体5からの熱を速やかに効率的に伝達することができるため、可溶導体10の速溶断性を向上させることができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。また、第1の実施の形態で説明したヒューズ素子1と略同等の部位については同じ符号を付して説明を省略し、差異について説明する。また、等価回路としては、図4で説明したものと同じであるため説明を省略する。
【0050】
[ヒューズ素子]
第2の実施の形態にかかるヒューズ素子20は、図6乃至図8に示すように、絶縁基板2の両面を貫通し電気的に接続するためのスルーホール9bを有し、発熱体5、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7が、絶縁基板2の発熱体引出電極9が設けられた面の反対面に設けられ、第2の発熱体電極7と発熱体引出電極9とをスルーホール9bを介して接続するように構成したものである。
【0051】
具体的にヒューズ素子20は、発熱体引出電極9と第2の発熱体引出電極7とを、少なくとも可溶導体10と重畳する位置において、スルーホール9bを介して電気的に接続されている。
【0052】
ヒューズ素子20は、絶縁基板2の裏面2bに、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7を設け、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7と連結するように発熱体5を形成し、発熱体5を覆うように第1の絶縁層12を形成している。
【0053】
スルーホール9bは、発熱体引出電極9、第2の発熱体引出電極7及び可溶導体10が重畳する位置に複数設けられた円筒形の導電経路であり、絶縁基板2に設けられた貫通孔の内側面に形成される。
【0054】
スルーホール9bは、絶縁基板2の貫通孔の内側面に、CuやAg等の一般的な導電材料を用いて形成することができ、導電材料をペースト状にして塗布することによって発熱体引出電極9とともに形成することができる。また、スルーホール9bは、導電材料を充填した穴埋めスルーホールとすることが好ましい。穴埋めスルーホールは、電気抵抗値を低減させるとともに熱伝導経路を確保することができる。
【0055】
なお、ヒューズ素子20は、スルーホール9bを3つ設ける構成を例示しているが、スルーホールの数は任意とすることができることは言うまでもない。スルーホール9bは、発熱体5からの熱を発熱体引出電極9に均等に伝達するために、第2の発熱体電極7と重畳する位置で、第2の発熱体電極7の引出方向に均等間隔で配置されることが好ましい。
【0056】
ヒューズ素子20は、第1の発熱体電極6から電流が流れた場合に、発熱体5が発熱し、第2の発熱体電極7及びスルーホール9bを主の熱伝導経路として発熱体引出電極9を加熱して、発熱体引出電極9上の可溶導体10が溶融する。これにより、ヒューズ素子20は、第1の電極3及び第2の電極4間の電流経路が遮断されるとともに、発熱体5に対する電流経路も遮断される。
【0057】
発熱体5から放出された熱は、絶縁基板2を介して表面2aの発熱体引出電極9にも伝達するが、絶縁基板2よりも熱伝導率の高いスルーホール9bによって垂直方向に速やかに伝達され、発熱体引出電極9を速やかに加熱するとともに、スルーホール9bと重畳して配置される可溶導体10も速やかに加熱する。従ってヒューズ素子20は、後述する参考例と比して熱伝導効率が非常に高まったと言える。
【0058】
以上のようにヒューズ素子20は、可溶導体10に発熱体5からの熱を速やかに効率的に伝達することができるため、可溶導体10の速溶断性を向上させることができる。
【0059】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。また、第1の実施の形態で説明したヒューズ素子1と略同等の部位については同じ符号を付して説明を省略し、差異について説明する。また、等価回路としては、図4で説明したものと略同じであるが、一部に差異があるため簡単な説明を行う。
【0060】
[ヒューズ素子]
第3の実施の形態にかかるヒューズ素子30は、図9乃至図11に示すように、ヒューズ素子1と比較して絶縁基板2上の発熱体5に接続される第2の発熱体電極7を省略した構成であり、絶縁基板2と、絶縁基板2上に設けられた第1の電極3及び第2の電極4と、絶縁基板2上に設けられた発熱体5と、発熱体5に接続する第1の発熱体電極6と、第1の発熱体電極6に接続する第3の電極8と、発熱体5に接続する発熱体引出電極9と、第1の電極3及び第2の電極4間を発熱体引出電極9を経由して各々に接続する可溶導体10とを有し、少なくとも可溶導体10と重なる位置にて、発熱体5と発熱体引出電極9とを接続しているものである。
【0061】
発熱体引出電極9は、可溶導体10と重畳する位置にて、発熱体5と接続する接続部9aを有しており、接続部9aの先端において発熱体5と接続されている。従って、発熱体引出電極9は、発熱体5から放出される熱を接続部9aを介して可溶導体10に向かって垂直方向に伝達するため、可溶導体10に至る最短経路の熱伝導経路を構成する。
【0062】
ヒューズ素子30は、ヒューズ素子1と比較して第2の発熱体電極7を省略した構成としたため、構成が簡素化されるとともに、発熱体5から放出される熱を直接、接続部9aを介して可溶導体10に伝えることができるため、より熱伝達効率を高めることができる。ヒューズ素子30は、ヒューズ素子1における第2の発熱体電極7の機能を発熱体引出電極9の接続部9aの先端に持たせたものともいえる。
【0063】
[回路構成]
ここで、ヒューズ素子30の回路構成と、通電経路の遮断動作について説明する。ヒューズ素子30は、図12(A)に示すように、第1の電極3から第2の電極4にわたって可溶導体10が接続されており、可溶導体10の中途部分に発熱体引出電極9が接続されている。また、発熱体引出電極9は、可溶導体10と接続された側の反対側に、発熱体5、第1の発熱体電極6の順に接続されている。
【0064】
ヒューズ素子30は、第1の電極3から第2の電極4に向かって主回路の電流が流れるように構成されており、第1の発熱体電極6から電流が流れた場合に、発熱体5が発熱し、接続部9aを主の熱伝導経路として発熱体引出電極9を加熱して、図12(B)に示すように、発熱体引出電極9上の可溶導体10が溶融する。これにより、ヒューズ素子30は、第1の電極3及び第2の電極4間の電流経路が遮断されるとともに、発熱体5に対する電流経路も遮断される。
【0065】
発熱体5から放出された熱は、第1の絶縁層12を介して発熱体引出電極9にも伝達するが、第1の絶縁層12よりも熱伝導率の高い発熱体引出電極9の接続部9aによって垂直方向に速やかに伝達され、発熱体引出電極9を速やかに加熱するとともに、接続部9aと重畳して配置される可溶導体10も速やかに加熱する。従ってヒューズ素子30は、後述する参考例と比して熱伝導効率が非常に高まったと言える。
【0066】
また、ヒューズ素子30は、発熱体引出電極9の接続部9aが直接発熱体5と接しているため、更に熱伝導効率が高く、より効率的に可溶導体10を加熱することが可能となった。
【0067】
以上のようにヒューズ素子30は、可溶導体10に発熱体5からの熱を速やかに効率的に伝達することができるため、可溶導体10の速溶断性を向上させることができる。
【0068】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。また、第1の実施の形態で説明したヒューズ素子1と略同等の部位については同じ符号を付して説明を省略し、差異について説明する。また、等価回路としては、図4で説明したものと同じであるため説明を省略する。
【0069】
[ヒューズ素子]
第4の実施の形態にかかるヒューズ素子40は、図13乃至図15に示すように、絶縁基板2の両面を貫通し電気的に接続するためのスルーホール9bを有し、発熱体5、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7が、絶縁基板2の発熱体引出電極9が設けられた面の反対面に設けられ、第2の発熱体電極7と発熱体引出電極9とをスルーホール9bを介して接続するように構成したものである。
【0070】
具体的に、ヒューズ素子40は、発熱体引出電極9と発熱体5とを、可溶導体10と重畳する位置において、スルーホール9bを介して電気的に接続されている。
【0071】
ヒューズ素子40は、絶縁基板2の裏面2bに、発熱体5を設け、発熱体5上の相対抗する両端辺に第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7を形成し、発熱体5、第1の発熱体電極6及び第2の発熱体電極7を覆うように第1の絶縁層12を形成している。
【0072】
ヒューズ素子40は、第1の発熱体電極6から電流が流れた場合に、発熱体5が発熱し、スルーホール9bを主の熱伝導経路として発熱体引出電極9を加熱して、発熱体引出電極9上の可溶導体10が溶融する。これにより、ヒューズ素子40は、第1の電極3及び第2の電極4間の電流経路が遮断されるとともに、発熱体5に対する電流経路も遮断される。
【0073】
発熱体5から放出された熱は、絶縁基板2を介して表面2aの発熱体引出電極9にも伝達するが、絶縁基板2よりも熱伝導率の高いスルーホール9bによって垂直方向に速やかに伝達され、発熱体引出電極9を速やかに加熱するとともに、スルーホール9bと重畳して配置される可溶導体10も速やかに加熱する。従ってヒューズ素子40は、後述する参考例と比して熱伝導効率が非常に高まったと言える。
【0074】
また、ヒューズ素子40は、スルーホール9bが直接発熱体5と接しているため、更に熱伝導効率が高く、より効率的に可溶導体10を加熱することが可能となった。
【0075】
以上のようにヒューズ素子40は、可溶導体10に発熱体5からの熱を速やかに効率的に伝達することができるため、可溶導体10の速溶断性を向上させることができる。
【0076】
[参考例]
ここで、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態として説明したヒューズ素子が有する熱伝導経路を可溶導体10と重畳させない構成について、参考例を用いて説明する。また、第1の実施の形態で説明したヒューズ素子1と略同等の部位については同じ符号を付して説明を省略し、差異について説明する。また、等価回路としては、図4で説明したものと略同じであるが、一部に差異があるため簡単な説明を行う。
【0077】
[ヒューズ素子]
参考例にかかるヒューズ素子50は、図16乃至図18に示すように、ヒューズ素子1と比較して発熱体引出電極9の接続先が抵抗測定電極11とされ、可溶導体10と重畳する位置で発熱体5や第2の発熱体電極7と接続しない構成であり、絶縁基板2と、絶縁基板2上に設けられた第1の電極3及び第2の電極4と、絶縁基板2上に設けられた発熱体5と、発熱体5に接続する第1の発熱体電極6と、第1の発熱体電極6に接続する第3の電極8と、第2の発熱体電極7に接続する抵抗測定電極11と、抵抗測定電極11に接続する発熱体引出電極9と、第1の電極3及び第2の電極4間を発熱体引出電極9を経由して各々に接続する可溶導体10とを有するものである。
【0078】
発熱体引出電極9は、抵抗測定電極11まで延在する接続部9cを有しており、接続部9cを介して抵抗測定電極11と電気的に接続される。発熱体引出電極9は、可溶導体10と重畳する位置にて、発熱体5や第2の発熱体電極7と接続されていない。
【0079】
従って、ヒューズ素子50は、発熱体5から発する熱の伝導経路が、第2の発熱体電極7、抵抗測定電極11、接続部9cを介するものとなり非常に長くなっているといえる。このため、ヒューズ素子50では、発熱体5から可溶導体10への熱が、第1の絶縁層12を主の熱伝導経路として伝達することとなる。
【0080】
[回路構成]
ここで、ヒューズ素子50の回路構成と、通電経路の遮断動作について説明する。ヒューズ素子50は、図19(A)に示すように、第1の電極3から第2の電極4にわたって可溶導体10が接続されており、可溶導体10の中途部分に発熱体引出電極9が接続されている。また、発熱体引出電極9は、可溶導体10と接続された側の反対側に、抵抗測定電極11、第2の発熱体電極7、発熱体5、第1の発熱体電極6の順に接続されている。
【0081】
ヒューズ素子50は、第1の電極3から第2の電極4に向かって主回路の電流が流れるように構成されており、第1の発熱体電極6から電流が流れた場合に、発熱体5が発熱し、第1の絶縁層12を主の熱伝導経路として発熱体引出電極9を加熱して、図19(B)に示すように、発熱体引出電極9上の可溶導体10が溶融する。これにより、ヒューズ素子50は、第1の電極3及び第2の電極4間の電流経路が遮断されるとともに、発熱体5に対する電流経路も遮断される。
【0082】
発熱体5から放出された熱は、第2の発熱体電極7、抵抗測定電極11、接続部9cを介して発熱体引出電極9にも伝達するが、上述したように熱伝導経路が長くなるため可溶導体10の加熱に対する寄与は極めて少なくなる。
【0083】
このため、上述した参考例と第1の実施の形態乃至第4の実施の形態とを比較すると、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態におけるヒューズ素子の熱伝導効率が高いことが容易に理解できる。また、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態におけるヒューズ素子の熱伝導効率が優れていることは従来技術に対しても同様である。
【0084】
[まとめ]
以上のように第1の実施の形態乃至第4の実施の形態として説明したヒューズ素子は、発熱体から可溶導体を結ぶ最短ルートを絶縁基板や絶縁層よりも高熱伝導率の発熱体引出電極を用いて熱伝導経路を形成したことで、可溶導体に対して発熱体の熱を速やかに伝達し、可溶導体を速やかに溶断し、大電流に対応しつつ速溶断性に優れた保護素子を得ることができる。
【0085】
なお、第1の実施の形態乃至第4の実施の形態におけるヒューズ素子の構造を適宜組み合わせた構造としてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1,20,30,40,50 ヒューズ素子、2 絶縁基板、2a 表面、2b 裏面、3 第1の電極、3a 第1の実装電極、3b 第1のハーフスルーホール、4 第2の電極、4a 第2の実装電極、4b 第2のハーフスルーホール、5 発熱体、6 第1の発熱体電極、7 第2の発熱体電極、8 第3の電極、8a 第3の実装電極、8b 第3のハーフスルーホール、9 発熱体引出電極、9a 接続部、9b スルーホール、9c 接続部、10 可溶導体、10a 溶融体、11 抵抗測定電極、12 第1の絶縁体、12a 切り欠き部、14 ハンダ、15 フラックス、16 カバー部材、16a 側壁、16b 天面
図1
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