特許第6960022号(P6960022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960022
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】旅客搭乗橋
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/305 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   B64F1/305
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-104147(P2020-104147)
(22)【出願日】2020年6月17日
(62)【分割の表示】特願2019-529392(P2019-529392)の分割
【原出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2020-147284(P2020-147284A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 義弘
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6720414(JP,B2)
【文献】 特開2013−124024(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0231472(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0098539(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0098538(US,A1)
【文献】 特表2005−518308(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0120358(US,A1)
【文献】 米国特許第5761757(US,A)
【文献】 特開平08−072798(JP,A)
【文献】 特開平06−199297(JP,A)
【文献】 米国特許第5226204(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行通路を有するトンネル部と、
前記トンネル部の先端に設けられたキャブと、
前記トンネル部又は前記キャブに設けられた駆動輪と、
前記キャブの先端位置を回転させる回転機構と、
前記駆動輪を制御することにより前記キャブを移動させるとともに、前記回転機構を制御することにより前記キャブの先端部分が航空機の乗降部と対向する姿勢となるように前記キャブの先端位置を回転させ、前記キャブの先端部分を前記乗降部に装着させる制御部と、
前記キャブに取り付けられ、前記キャブの床の先端に設けられたバンパーと共に前記航空機の乗降部を撮影する乗降部撮影用カメラと、
前記乗降部撮影用カメラで撮影される前記乗降部の画像に基づいて前記航空機の乗降部を検知するとともに、当該乗降部の位置情報を算出する乗降位置算出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記乗降位置算出部で算出される前記乗降部の位置情報に基づいて、前記キャブを前記乗降部に装着するために移動させる移動先の目標位置を算出し、前記キャブを前記目標位置に向かって移動させるよう構成された、
旅客搭乗橋。
【請求項2】
前記目標位置は、前記キャブが前記乗降部から所定距離前方に位置するときの前記キャブの位置であり、
前記制御部は、
前記キャブが前記目標位置に到達したときに前記乗降位置算出部で算出される前記乗降部の位置情報に基づいて、前記キャブが前記乗降部に装着されるときの位置である装着位置を算出し、前記装着位置まで前記キャブを移動させて停止させるよう構成された、
請求項1に記載の旅客搭乗橋。
【請求項3】
前記制御部は、
前記キャブが前記目標位置に到達したときに前記キャブの移動を一時停止させ、この一時停止させた状態のときに前記装着位置を算出し、その後、前記装着位置に向かって前記キャブの移動を再開させるよう構成された、
請求項2に記載の旅客搭乗橋。
【請求項4】
前記目標位置は、前記キャブが前記乗降部に装着されるときの前記キャブの位置であり、
前記制御部は、
前記キャブが前記目標位置に到達したときに前記キャブの移動を停止させるよう構成された、
請求項1に記載の旅客搭乗橋。
【請求項5】
前記制御部によって制御され前記キャブを昇降させる昇降機構をさらに備え、
前記乗降位置算出部は、
前記乗降部の画像に基づいて前記キャブの高さを前記乗降部の高さに合わせるための前記キャブの上下移動量を算出するよう構成され、
前記制御部は、
前記乗降位置算出部で算出された前記キャブの上下移動量に基づいて前記キャブを昇降させるよう構成された、
請求項1〜4のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項6】
前記乗降位置算出部は、
前記乗降部撮影用カメラで撮影される前記航空機の前記乗降部のドアのコーナー部の形状に基づいて前記乗降部を検知し、前記ドアの前記コーナー部の曲線部分と前記コーナー部に続く直線部分との境界点を検出し、この境界点に基づいて前記乗降部の位置情報を算出するよう構成された、
請求項1〜5のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項7】
前記乗降位置算出部は、
前記乗降部撮影用カメラで撮影される前記ドアのコーナー部の形状と前記ドアの直下に存在する補強用プレートの形状とに基づいて前記乗降部を検知するよう構成された、
請求項6に記載の旅客搭乗橋。
【請求項8】
前記キャブの先端部分の左右に取り付けられ、前記航空機との距離を計測する一対の距離センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記一対の距離センサの計測値が等しくなるように前記キャブの先端位置を回転させるよう構成された、
請求項1〜7のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項9】
前記キャブが所定の待機位置にあるときに前記航空機が所定の駐機場所に到着して停止したことを検出する航空機検出部をさらに備え、
前記乗降位置算出部は、
前記航空機検出部による検出があったときに動作を開始するよう構成された、
請求項1〜8のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項10】
前記キャブに取り付けられ、前記キャブの前記航空機の乗降部への装着が完了したことを前記航空機の乗務員に報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記キャブを前記乗降部に装着させたときに前記報知部に前記装着が完了したことを報知させるよう構成された、
請求項1〜9のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項11】
前記キャブに取り付けられ、前記航空機の前輪及びその周辺部を撮影する前輪撮影用カメラと、
前記キャブが所定の待機位置にあるときに前記前輪撮影用カメラで撮影される航空機の前輪及びその周辺部の画像と予め記憶されている機種ごとの航空機の前輪及びその周辺部の形状パターンとを比較することにより、前記航空機の機種を判別する機種判別部と、をさらに備えた、
請求項1〜7のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項12】
前記キャブの先端部分の左右に取り付けられ、前記航空機との距離を計測する一対のレーザー距離計をさらに備え、
平面視において、前記レーザー距離計のレーザ出射方向と前記乗降部撮影用カメラの撮影方向とが一致している、
請求項1〜7のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項13】
前記乗降部撮影用カメラは、
前記キャブの床面より上の前記キャブの内部に設置されて前記キャブに対して設置位置及び撮影方向が固定されており、平面視においてその撮影方向が前記キャブの先端部分の前記バンパーと直交するよう構成された、
請求項1〜12のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項14】
前記制御部は、
前記駆動輪を制御して前記キャブを前記目標位置に向かって移動させているときに、前記乗降部撮影用カメラによる撮影画像を監視し、この撮影画像から前記乗降部を検知できなくなった場合に、不具合が発生したと判断し、自動制御を停止するよう構成された、
請求項1〜13のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項15】
前記トンネル部の基端が接続されたロタンダと、
前記ロタンダの中心点から前記キャブの中心点までの距離を検出するための距離センサと、
前記ロタンダまわりの前記トンネル部の回転角度を検出する角度センサと、
前記キャブに搭載され前記キャブの位置を検出するための衛星測位システムの受信機と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記受信機によって検出される前記キャブの位置と、前記距離センサ及び前記角度センサの計測値から算出される前記キャブの位置との誤差を算出し、この誤差が許容範囲を超えると異常と判断し、自動制御を停止するよう構成された、
請求項1〜14のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
空港において、航空機に乗降する際には、ターミナルビルと航空機とを連結する旅客搭乗橋が用いられる。このような旅客搭乗橋の移動を自動化することが提案されている(例えば特許文献1,2,3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のように、旅客搭乗橋は、歩行通路を有するトンネル部と、トンネル部の先端に回転自在に設けられたキャブと、トンネル部又はキャブに設けられた駆動輪と、キャブを回転させる回転機構と、駆動輪及び回転機構を制御することにより、待機位置にあるキャブを移動させ、キャブを航空機の乗降部に対向する姿勢で所定の目標位置に停止させる制御装置と、を備えている。また、特許文献1では、キャブが航空機の乗降部に1回目に装着された時の、キャブの実際の装着位置、及び、航空機の実際の停止位置と当該航空機の所定の停止位置とのずれ量、に基づいて目標位置が設定され、キャブを航空機の乗降部に2回目以降に装着するときには、設定した目標位置に基づいて、駆動輪及び回転機構を制御することが記載されている。さらに、特許文献1では、キャブを航空機の乗降部に2回目以降に装着するときに、航空機の所定の停止位置からのずれ量が入力されると、当該ずれ量に応じて前記目標位置を補正することも記載されている。
【0004】
なお、特許文献2、3には、予め制御装置に与えられた情報により航空機用乗降装置を航空機扉の予想位置の手前まで接近させ、前記乗降装置のヘッド部に設けられたテレビカメラからの映像により航空機扉と乗降装置との相対的な位置関係を測量し、得られた情報を元に乗降装置が航空機扉に接機するまでの移動制御を行う航空機用乗降装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−104193号公報
【特許文献2】特開昭63−43900号公報
【特許文献3】特開昭59−156897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成では、1回目の装着には、操作員の手動操作が必要となる。通常、旅客搭乗橋は、複数の機種の航空機に用いられるので、特許文献1の構成では、機種ごとに、1回目の装着には、操作員の手動操作が必要となる。手動操作によってキャブを航空機に装着する場合には、高度かつ面倒な操作が必要であり、操作に熟練を要する。また、航空機が所定の停止位置からずれる場合を想定すると、特許文献1の構成では、1回目の装着時において目標位置を設定する場合、及び、2回目以降の装着時において目標位置の補正を行う場合のいずれの場合にも、当該ずれ量の正確な測定、入力が都度不可欠となる。
【0007】
また、特許文献2,3では、はじめに航空機扉の予想位置を目標として、その手前まで接近させた後で、テレビカメラからの映像により航空機扉と乗降装置との相対的な位置関係を測量し、接機するまでの移動制御を行うようにしているので、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合には、はじめに目標とした航空機扉の予想位置が実際の位置からずれることになり、ずれの程度によっては乗降装置は上記予想位置の手前において進行方向を大きく変化させる必要がある。この場合、乗降装置の移動距離が大きく増加し、接機するまでの時間が大幅に増加することになる。そして、場合によっては、乗降装置を一旦バックさせる等の切り返しが必要になる虞も生じる。特許文献2,3では、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合については殆ど考慮されておらず、乗降装置を航空機扉の予想位置の手前に接近させたときに、ずれの程度によってはテレビカメラで航空機扉を認識できない場合が生じると考えられる。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、ずれ量を測定することなく、操作員による操作を省略または簡単にしてキャブを航空機に装着することができる旅客搭乗橋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る旅客搭乗橋は、歩行通路を有するトンネル部と、前記トンネル部の先端に回転自在に設けられたキャブと、前記トンネル部又は前記キャブに設けられた駆動輪と、前記キャブを回転させる回転機構と、前記駆動輪を制御することにより前記キャブを移動させるとともに、前記回転機構を制御することにより前記キャブの先端部分が航空機の乗降部と対向する姿勢となるように前記キャブを回転させ、前記キャブの先端部分を前記乗降部に装着させる制御部と、前記キャブに取り付けられ、前記航空機の乗降部を撮影する乗降部撮影用カメラと、前記乗降部撮影用カメラで撮影される前記乗降部の画像に基づいて前記航空機の乗降部を検知するとともに、当該乗降部の水平位置情報を算出する乗降位置算出部と、を備え、前記制御部は、前記キャブを前記乗降部に装着する際の前記キャブの移動の起点となる所定の待機位置に前記キャブがあるときに、前記乗降位置算出部で算出される前記乗降部の水平位置情報に基づいて、前記キャブを前記乗降部に装着するために移動させる移動先の目標位置を算出し、前記待機位置にある前記キャブを前記目標位置に向かって移動させるよう構成されている。
【0010】
この構成によれば、制御部が、乗降部撮影用カメラで撮影される乗降部の画像から求められる乗降部の水平位置情報に基づいてキャブの移動先の目標位置を算出し、待機位置にあるキャブを目標位置に向かって移動させるので、操作員は、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、ずれ量を測定して入力する等の特別な操作を行う必要が無い。よって、操作員による操作を省略または簡単にして、キャブを待機位置から移動させて航空機に装着することが可能になる。また、キャブを乗降部に装着する際のキャブの移動の起点となる待機位置において、乗降部撮影用カメラで乗降部を撮影し、目標位置を算出するので、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、はじめから乗降部に向かってキャブを移動させることができる。よって、キャブを乗降部に装着するまでのキャブの移動距離及び移動時間の短縮を図ることができる。
【0011】
前記目標位置は、前記キャブが前記乗降部から所定距離前方に位置するときの前記キャブの位置であり、前記制御部は、前記キャブが前記目標位置に到達したときに前記乗降位置算出部で算出される前記乗降部の水平位置情報に基づいて、前記キャブが前記乗降部に装着されるときの位置である装着位置を算出し、前記装着位置まで前記キャブを移動させて停止させるよう構成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、キャブが乗降部から所定距離前方まで接近した状態においてキャブの装着位置を算出するため、キャブを待機位置から装着位置まで正確にかつ自動的に移動させることができる。
【0013】
前記制御部は、前記キャブが前記目標位置に到達したときに前記キャブの移動を一時停止させ、この一時停止させた状態のときに前記装着位置を算出し、その後、前記装着位置に向かって前記キャブの移動を再開させるよう構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、一時停止して装着位置を算出することにより、装着位置をより正確に算出することができる。
【0015】
前記目標位置は、前記キャブが前記乗降部に装着されるときの前記キャブの位置であり、前記制御部は、前記キャブが前記目標位置に到達したときに前記キャブの移動を停止させるよう構成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、キャブを待機位置から装着位置まで素早く自動的に移動させることができる。
【0017】
前記制御部によって制御され前記キャブを昇降させる昇降機構をさらに備え、前記乗降位置算出部は、前記乗降部の画像に基づいて前記キャブの高さを前記乗降部の高さに合わせるための前記キャブの上下移動量を算出するよう構成され、前記制御部は、前記乗降位置算出部で算出された前記キャブの上下移動量に基づいて前記キャブを昇降させるよう構成されていてもよい。
【0018】
前記乗降位置算出部は、前記乗降部撮影用カメラで撮影される前記航空機の前記乗降部のドアのコーナー部の形状に基づいて前記乗降部を検知し、前記ドアの前記コーナー部の曲線部分と前記コーナー部に続く直線部分との境界点を検出し、この境界点に基づいて前記乗降部の水平位置情報を算出するよう構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、機種情報に頼らなくても乗降部を検出することができる。また、航空機側に何らの工夫を施す必要もない。
【0020】
前記乗降位置算出部は、前記乗降部撮影用カメラで撮影される前記ドアのコーナー部の形状と前記ドアの直下に存在する補強用プレートの形状とに基づいて前記乗降部を検知するよう構成されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、機種情報に頼らなくても乗降部を検出することができる。また、航空機側に何らの工夫を施す必要もない。
【0022】
前記キャブに取り付けられ、前記航空機の前輪及びその周辺部を撮影する前輪撮影用カメラと、前記キャブが前記待機位置にあるときに前記前輪撮影用カメラで撮影される航空機の前輪及びその周辺部の画像と予め記憶されている機種ごとの航空機の前輪及びその周辺部の形状パターンとを比較することにより、前記航空機の機種を判別する機種判別部と、をさらに備えてもよい。
【0023】
この構成によれば、操作員が旅客搭乗橋に機種情報を入力したり、旅客搭乗橋が外部設備から機種情報の提供を受けたりしなくても、旅客搭乗橋は自律的に機種を判別することができる。また、操作員が機種情報を入力する場合でも、入力ミスの有無を確認することができる。
【0024】
なお、機種情報を活用することで、目標位置におけるキャブの姿勢が機種判別部で判別された航空機の機種に応じて予め定められた姿勢となるようにキャブを回転させるよう制御したり、乗降部の検出精度を高めたりすることができる。
【0025】
前記キャブの先端部分の左右に取り付けられ、前記航空機との距離を計測する一対の距離センサをさらに備え、前記制御部は、前記一対の距離センサの計測値が等しくなるように前記キャブを回転させるよう構成されていてもよい。
【0026】
前記キャブが前記待機位置にあるときに前記航空機が所定の駐機場所に到着して停止したことを検出する航空機検出部をさらに備え、前記乗降位置算出部は、前記航空機検出部による検出があったときに動作を開始するよう構成されていてもよい。
【0027】
この構成によれば、航空機が駐機場所に到着して停止すると、自動的にキャブの移動が開始される。
【0028】
前記キャブに取り付けられ、前記キャブの前記航空機の乗降部への装着が完了したことを前記航空機の乗務員に報知する報知部をさらに備え、前記制御部は、前記キャブを前記乗降部に装着させたときに前記報知部に前記装着が完了したことを報知させるよう構成されていてもよい。
【0029】
この構成によれば、報知部によって装着が完了したことが報知されることにより、航空機の乗務員は乗降部のドアを開いて乗降可能な状態にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、以上に説明した構成を有し、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、ずれ量を測定することなく操作員による操作を省略または簡単にしてキャブを航空機に装着することができる旅客搭乗橋を提供することができるという効果を奏する。
【0031】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。
図2図2は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面から視た図である。
図3図3は、操作盤等の一例を示す図である。
図4図4は、旅客搭乗橋の装着時の動作を説明するための概略平面図である。
図5図5は、旅客搭乗橋の装着時の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、旅客搭乗橋の装着時の動作において制御量の演算方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、キャブが待機位置での前輪撮影用カメラの撮影画像の一例を示す概略図である。
図8図8は、キャブが待機位置でのドア撮影用カメラの撮影画像の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0034】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。また、図2は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。図3は、操作盤等の一例を示す図である。
【0035】
旅客搭乗橋1は、空港のターミナルビル2の乗降口2aに接続された水平回転自在なロタンダ(基部円形室)4と、基端がロタンダ4に接続されたトンネル部5と、トンネル部5の先端に正逆回転自在に設けられたキャブ(先端部円形室)6とを備えている。なお、トンネル部5のサイドには、例えば、操作員が地上からキャブ6に出入りするのに使用する補助階段(図示せず)が設置されている。
【0036】
ロタンダ4は、支柱7によって回転軸(鉛直軸)CL1の回りに正逆回転自在に支持されている。トンネル部5は、ターミナルビル2の乗降口2aと航空機3のドア3aとをつなぐ連絡通路を形成する伸縮自在な筒状体であり、複数のトンネル5a〜5cがテレスコピック式(入れ子式)に嵌合されて伸縮自在に構成され、トンネル部5はその全体が伸縮するようになっている。なお、ここでは、3つのトンネル5a〜5cによって構成されたトンネル部5が例示されているが、トンネル部5は2つ以上のトンネルによって構成されていればよい。
【0037】
また、トンネル部5の先端寄り部分(最も先端側のトンネル5c)には、支持脚としてドライブコラム8が設けられている。ドライブコラム8には、キャブ6及びトンネル部5を上下移動させる昇降機構10が設けられている。この昇降機構10によってトンネル部5を上下移動させることにより、キャブ6及びトンネル部5は、ロタンダ4を基端として上下方向に揺動運動することができる。
【0038】
また、ドライブコラム8には、昇降機構10の下方に、一対の駆動輪9が設けられている。駆動輪9は、前進走行及び後退走行が自在に構成され、また、舵角がトンネル部5の長手方向に対して、−90゜〜+90゜の範囲内で変更可能なように、2つの駆動輪9の中心点を通る回転軸(鉛直軸)CL3の回りに正逆回転が自在に構成されている。なお、ドライブコラム8は、トンネル5cではなくキャブ6に設けられてあってもよい。
【0039】
キャブ6は、トンネル部5の先端に設けられており、図示しない回転機構によってキャブ6の床面に垂直な回転軸CL2の回りに正逆回転自在に構成されている。このようにキャブ6はトンネル部5の先端に取り付けられているので、ドライブコラム8の昇降機構10によって、キャブ6もトンネル部5とともに、ロタンダ4を基端として上下方向に揺動運動することができる。
【0040】
図1図2に示すように、キャブ6の先端部分の床面よりやや上に航空機3のドア3aを撮影するためのドア撮影用カメラ(乗降部撮影用カメラ)21が設置されている。また、キャブ6の先端部分の床下には、航空機3の前輪3bを撮影するための前輪撮影用カメラ22が設置されている。これらのカメラ21,22には、例えばIPカメラが用いられており、本例ではキャブ6に対して設置位置および撮影方向が固定されている。また、キャブ6の先端部の床62の先端に設けられたバンパー61の左右方向に並んで、キャブ6と航空機3との間の距離を検出する距離センサ23(例えばレーザー距離計)が複数(この例では2つ)取り付けられている。
【0041】
また、図2に示すように、キャブ6の先端部には、前後方向に伸縮可能な蛇腹部63が設けられている。図2には、蛇腹部63の前端部分で航空機3と当接する門型の当接部分が図示されている。また、キャブ6の内部には、キャブ6が航空機3に装着されたときに、航空機3内の乗務員が航空機3のドア3aの窓から見える位置に装着完了報知部29が設けられている。この装着完了報知部29は、例えば、緑色のランプ等で構成することができ、ランプを点灯することで、乗務員に装着が完了したことを報知することができ、この装着完了の報知によって、乗務員は航空機3のドア3aを開ける。
【0042】
さらに、図3に示すように、旅客搭乗橋1には、ロタンダ4の回転角度α(図1)を検出する角度センサ24と、トンネル部5に対するキャブ6の回転角度β(図1)を検出する角度センサ25と、駆動輪9の回転角度γ(図1)を検出する角度センサ26と、昇降機構10によるトンネル部5の昇降量を測定しトンネル部5の高さを検出する高さセンサ27と、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)からキャブ6の中心点(回転軸CL2の位置)までの距離R(図1)を検出するための距離センサ28とが、適宜な位置に設けられている。距離センサ28は、例えば、トンネル部5の長さを測定する距離計等で構成され、その測定値から上記距離Rを算出することができるとともに、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)から一対の駆動輪9の中心点(回転軸CL3の位置)までの距離を算出することができる。
【0043】
そして、キャブ6の内部には、図3に示すような操作盤31が設けられている。操作盤31には、昇降機構10によるトンネル部5及びキャブ6の昇降や、キャブ6の回転等を操作するための各種操作スイッチ33の他、駆動輪9を操作するための操作レバー32及び表示装置34が設けられている。操作レバー32は、多方向の自由度をもったレバー状入力装置(ジョイスティック)によって構成されている。
【0044】
また、制御装置50は、操作盤31と相互に電気回路で接続され、操作スイッチ33や操作レバー32の操作に基づく情報(操作情報)が入力されるとともに、カメラ21,22で撮影される画像データ及び各センサ23〜28の出力信号等が入力されて、旅客搭乗橋1の動作を制御するとともに、表示装置34に表示される情報等を出力する。
【0045】
なお、制御装置50には、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部とを有している。記憶部には、旅客搭乗橋1を動作させるための制御プログラム及び当該動作に必要な情報が予め記憶されており、演算処理部が制御プログラムを実行することにより、旅客搭乗橋1の各部の動作(2つの駆動輪9、昇降機構10及びキャブ6の回転機構等の動作)の制御等を行う制御部として機能するとともに、機種判別部51及びドア位置算出部(乗降位置算出部)52等として機能する。なお、旅客搭乗橋1の動作中に記憶される情報も記憶部に記憶される。制御装置50は、例えば、キャブ6または最も先端側のトンネル5c等に設けられている。
【0046】
次に、旅客搭乗橋1の動作の一例について説明する。この旅客搭乗橋1の動作は、制御装置50の制御によって実現される。図4は、旅客搭乗橋1の装着時の動作を説明するための図であり、図1に新たな符号を付す等している。図5は、旅客搭乗橋1の装着時の動作の一例を示すフローチャートである。
【0047】
旅客搭乗橋1を制御する際、制御装置50は、図1図4に示すようなXY直交座標を用いる。すなわち絶対座標として、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)を原点(0,0)にして、X軸、Y軸をとり、旅客搭乗橋1の各部の位置座標をあらわす。
【0048】
旅客搭乗橋1は、航空機3がエプロン(所定の駐機場所)に到着して停止する前には、図4の実線で示された位置である待機位置で待機している。この待機位置では、平面視において、カメラ21,22の撮影方向が機軸ラインALと直交しており、カメラ21,22は航空機3の側方から航空機3を撮影する。また、2つの距離センサ23のレーザ出射方向も、平面視において、機軸ラインALと直交している。さらに、本例では、待機位置において、キャブ6の先端部分(バンパー61)が機軸ラインALと平行になるようにキャブ6の姿勢(向き)が制御されている。
【0049】
キャブ6の待機位置は、キャブ6を航空機3の乗降部(ドア3a)に装着する際のキャブ6の移動の起点となる所定の位置である。キャブ6は、航空機3の乗降部に装着される際は、待機位置から移動を開始して乗降部に装着される。そして、キャブ6が乗降部から離脱したときには待機位置に戻って停止し、次の航空機の乗降部への装着動作が開始されるまで、待機位置で待機している。よって、キャブ6の待機位置は、この旅客搭乗橋1が利用される複数の航空機(複数の機種の航空機であってもよいし同一機種の航空機でもよい)に対して、それらの乗降部へキャブ6を装着する際のキャブ6の移動の起点として予め定められた位置であり、キャブ6を乗降部へ装着する際のキャブ6の移動途中の位置ではない。
【0050】
なお、キャブ6が航空機3から離脱して待機位置へ戻るために、目標とする待機位置における一対の駆動輪9の中心位置(回転軸CL3の位置)P3の座標は、予め制御装置50に記憶されている。また、キャブ6の中心位置P1から先端位置P2までの距離RC(所定値)と、キャブ6の中心位置P1から一対の駆動輪9の中心位置(回転軸CL3の位置)P3までの距離RD(所定値)とは、予め制御装置50に記憶されている。
【0051】
例えば、キャブ6の中心位置(P1)は、キャブ6の中心点(回転軸CL2の位置)の位置座標で表される。待機位置におけるキャブ6の中心位置P1の座標は、例えば、距離センサ28により検出されるロタンダ4の中心点からキャブ6の中心点までの距離Rと、角度センサ24で検出されるロタンダ4の回転角度αとを用いて算出できる。また、キャブ6の先端位置P2の座標は、キャブ6の中心位置P1と、キャブ6の中心位置P1から先端位置P2までの距離RCと、角度センサ25で検出されるキャブ6の回転角度βとを用いて算出できる。また、一対の駆動輪9の中心位置(回転軸CL3の位置)P3の座標は、ロタンダ4の中心点から駆動輪9の中心点までの距離(R−RD)と、角度センサ24で検出されるロタンダ4の回転角度αとを用いて算出できる。
【0052】
また、図4の二点鎖線で示された旅客搭乗橋1は、キャブ6が第1停止位置にある状態を示し、キャブ6の先端位置(P5)が航空機3のドア3aから所定距離SL(本例ではSL=1m)前方の位置にある状態を示している。
【0053】
また、航空機3の正規の停止位置は、航空機3の機軸が機軸ライン(機体誘導ライン)AL上で、かつ、Y軸方向において定められた所定の位置である。航空機3は、正規の停止位置を目標にして停止されるが、実際の停止位置は正規の停止位置とはずれが生じる場合がある。なお、機軸ラインALは、エプロンに描かれている。図1図4では、航空機3の機軸が機軸ラインAL上にある状態が示されている。
【0054】
この旅客搭乗橋1では、航空機3に装着されるまでの動作が制御装置50による制御によって全て自動で行われる。この自動制御は、以下のようにして行われる。なお、以下では、位置Pn(nは整数)のX座標をXn、Y座標をYnで表す。そして、X座標値、Y座標値は、それぞれ、ロタンダ4の回転軸CL1の位置である原点(0,0)からの距離(例えば単位〔mm〕)を示す。ここでは、X座標値は原点(0,0)より右側を正の値とし、左側を負の値とする。
【0055】
図5に示すように、制御装置50では、まず、ステップS10で、航空機3が到着したか否かを判定する。この判定は、2つの距離センサ23の計測値に基づいて行う。航空機3が到着していないときには、2つの距離センサ23からの計測値は得られないが、航空機3が到着して停止したときには、2つの距離センサ23の計測値が安定して定まる。よって、制御装置50は、2つの距離センサ23の計測値が安定して定まったときに航空機3が到着した(到着して停止した)と判定する。ここで、制御装置50及び2つの距離センサ23は航空機検出部として機能している。図1図4では、航空機3が到着して停止したときの状態を示している。
【0056】
次に、ステップS11において、制御装置50は、例えば前輪撮影用カメラ22の撮影画像に基づいて航空機3の機種を判別する。この判別方法について、以下に詳しく説明する。
【0057】
図7は、キャブ6が待機位置での前輪撮影用カメラ22の撮影画像A1の一例を示す概略図である。一般的に、航空機は機種ごとに前輪の近傍の機械的構造(サスペンション構造)が異なっている。本例では、キャブ6の待機位置から見た航空機の前輪の近傍の機械的構造の形状を用いて機種を判別する。そのため、制御装置50の記憶部には、予め複数の機種に応じた前輪及びその近傍の機械的構造の側方から見た形状パターン(以下「前輪部分形状パターン」という)が記憶されている。
【0058】
そして、制御装置50の機種判別部51(図3)では、例えば、前輪撮影用カメラ22で撮影された前輪3b及びその近傍の機械的構造を含む領域の画像A11を、上記複数の前輪部分形状パターンと比較することにより、最も近い前輪部形状パターンを選択して航空機3の機種を判別する。
【0059】
次に、ステップS12において、制御装置50は、キャブ6を目標位置へ移動させるための制御量を演算する。具体例としては、以下の(1)〜(3)で示される。また、この場合のフローチャートの一例を図6に示す。なお、図6に示される各ステップの順序は、図6に示される順序に限定されるものではない。ここで、目標位置は、2点鎖線で示されている位置であり、キャブ6の先端部分のバンパー61が航空機3のドア3aに対向する姿勢でドア3aからその前方に所定距離SL(例えば1m)だけ離れた位置(第1停止位置)である。
【0060】
(1)駆動輪9の走行距離及び回転角度の演算(図6のステップS51〜S59)
ここでは、キャブ6の中心位置を、待機位置にある現在位置P1(X1,Y1)から目標位置P6(X6,Y6)へ移動させるための、駆動輪9の走行距離及び回転角度(走行方向)を演算する。
【0061】
制御装置50は、ステップS51では、キャブ6が待機位置にある現在の駆動輪9の中心位置P3(X3,Y3)を次式により算出する。なお、距離Rは、キャブ6が待機位置のときの距離センサ28に基づく値、回転角度αは、キャブ6が待機位置のときのロタンダ用角度センサ24に基づく値である。
X3=(R−RD)×cosα
Y3=(R−RD)×sinα
次に、航空機3のドア3aの位置P4(X4,Y4)を算出するために、ステップS52〜S56を行う。なお、(X4,Y4)が乗降部の水平位置情報である。
【0062】
まず、ステップS52では、現在のキャブ6の中心位置P1(X1,Y1)を次式により算出する。
X1=R×cosα
Y1=R×sinα
次に、ステップS53では、現在のキャブ6の先端位置P2(X2,Y2)を次式により算出する。なお、回転角度βは、現在のキャブ用角度センサ25に基づく値である。
X2=X1−RC×cos(180−α−β)
Y2=Y1+RC×sin(180−α−β)
次に、ステップS54では、現在のキャブ6の先端位置P2から航空機3までの距離RAを求める。この距離RAには、例えば、2つの距離センサ23の計測値のうちの短い方の計測値を用いる。
【0063】
次に、ステップS55、S56では、制御装置50は、ドア撮影用カメラ21の撮影画像に基づいて航空機3のドア3aを検出し、そのドア3aの位置P4(X4,Y4)を算出する。
【0064】
これについて詳しく説明する。図8は、キャブ6が待機位置でのドア撮影用カメラ21の撮影画像A2の一例を示す概略図である。
【0065】
一般的に、航空機は、機種ごとに、ドアの4隅のコーナー部(アール部)の形状(曲率)が異なっている。本例では、ドアの4隅のうちの下側の2つの隅のコーナー部の形状を用いてドアを検出する。制御装置50の記憶部には、予め複数の機種に応じた乗降部の形状パターン、例えば、ドアの下側の2つのコーナー部の形状パターン(以下「ドア部分形状パターン」という)が記憶されている。
【0066】
そして、制御装置50のドア位置算出部52(図3)では、例えば、ドア撮影用カメラ21で撮影された画像を、記憶されているドア部分形状パターンと比較することにより、領域A21内のドア3aを検出し、そのドア3aの位置として、左右の基準点p2,p3を検出する。なお、画像認識技術等によってドア3aの4隅のうちの下側の2つの隅のコーナー部の形状に基づいてドア3aを検出できるのであれば、記憶されているドア部分形状パターンとの比較は必ずしも必要なく、機種特有の情報に頼らなくても乗降部(ドア3a)を検出することができる。ただし、本例のように機種特有の情報も併用することで、乗降部の検出精度あるいは検出速度を高めることができる。
【0067】
基準点p2,p3は、ドア3aのペイント部分41の下側の左右のコーナー部の曲線部分とそのコーナー部から上に延びる直線部分との境界点の位置である。一般的に、航空機3では、ドア3aが視認できるようにドア3aの輪郭部分にペイントが施されており、本例では、そのペイント部分41の形状に基づいてドア3a及びその基準点p2,p3を検出するようにしている。
【0068】
ステップS55では、制御装置50は、上記のようにして、ドア3a及びその位置として基準点p2,p3を検出し、基準点p2,p3のうちのいずれか一方、本例では左側の基準点p2の位置をyz座標(y2,z2)で求める。なお、制御装置50は、撮影画像A2において、所定の位置(例えば左上の角部)を原点(0,0)としてyz直交座標系を定めている。撮影画像A2上の任意の点のy座標値及びz座標値は、原点(0,0)から数えたピクセル値で表される。
【0069】
この撮影画像A2において、キャブ6を目標位置へ移動する際に、キャブ6を図4におけるY軸方向に移動する必要がない場合(すなわちキャブ6のY軸方向における移動量が0の場合)のドアの基準点p2のy座標基準値y0(所定値)が設定されている。
【0070】
ステップS56では、制御装置50は、所定の演算式(A)に基づいて、基準点p2のy座標値y2と基準値y0との差dy(=y2−y0)が、Y軸方向の実際の距離dYに換算された値を算出する。この演算式(A)は、現在のキャブ6の先端位置P2から航空機3までの距離(RA)と、基準点p2のy座標値(y2)とを変数として、距離dYを算出する式である。
【0071】
さらに、ステップS56では、制御装置50は、航空機3のドア3aの位置P4(X4,Y4)を次式により算出する。
X4=X2−RA
Y4=Y2+dY
次に、ステップS57では、制御装置50は、航空機3のドア3aの位置P4(X4,Y4)に基づいて、キャブ6が目標位置となるときのキャブ6の中心位置P6(X6,Y6)を算出する。ここで、航空機3から1m(SL)手前の目標位置となるときのキャブ6の先端位置P5(X5,Y5)を、
X5=X4+SL (ここで、SL=1000[mm])
Y5=Y4
とする。そして、キャブ6の中心位置P6(X6,Y6)を、
X6=X5+RC=X4+SL+RC
Y6=Y5=Y4
として算出する。
【0072】
次に、ステップS58では、制御装置50は、キャブ6が目標位置となるときの駆動輪9の中心位置P7(X7,Y7)を次式により算出する。
X7=(R1−RD)×cosα1
Y7=(R1−RD)×sinα1
ここで、キャブ6が目標位置となるときのロタンダ4の中心点からキャブ6の中心点までの距離をR1とし、そのときのロタンダ4の回転角度をα1としている。
【0073】
上記のX7,Y7の算出式において、
R1={(X6)2+(Y6)21/2
cosα1=X6/R1
sinα1=Y6/R1
として算出する。
【0074】
次に、ステップS59では、制御装置50は、キャブ6が現在位置から目標位置へ移動するときの駆動輪9の走行距離RDAと、回転角度γ1とを次式により算出する。
RDA={(X3−X7)2+(Y3−Y7)21/2
γ1=180−α−arccos{(X3−X7)/RDA}
以上のようにして、駆動輪9の走行距離RDAと、回転角度γ1とを算出できる。なお、現在位置の駆動輪9の回転角度がγの場合には、後のステップS13において、γ1とγとの差分だけ駆動輪9を回転させるようにすればよい。
【0075】
(2)キャブ6の回転角度の算出(図6のステップS60)
次に、ステップS60では、制御装置50は、キャブ6が目標位置となるときのキャブ6の姿勢(向き)を定めるキャブ6の回転角度β1を算出する。制御装置50では、航空機の機種ごとに、平面視において、航空機の機軸とキャブ6が装着される乗降部の機体部分の接線とがなす角度(以下、「機体角度」という)を記憶している。よって、制御装置50は、記憶している複数の機体角度の中から、図5のステップS11で判別した機種に応じた機体角度を選択する。この選択された機体角度がθ1(図4参照)であるとすると、次式によって回転角度β1を求める。
β1=180−α1−θ1
ここで、α1=arccos(X6/R1)、但し、90<α1<180である。
【0076】
なお、現在位置のキャブ6の回転角度がβの場合には、後のステップS14において、β1とβとの差分だけキャブ6を回転させるようにすればよい。この場合、ステップS14において、目標位置におけるキャブ6の姿勢(向き)が航空機3の機種に応じて予め定められた姿勢となるようにキャブ6が回転させられることになる。
【0077】
(3)キャブ6の上下移動量の算出(図6のステップS61)
次に、ステップS61では、制御装置50は、キャブ6が現在位置から目標位置へ移動するときの昇降機構10によるトンネル部5の上下移動量、すなわち、キャブ6の高さをドア3aの高さに合わせるためのキャブ6の上下移動量を算出する。
【0078】
前述のステップS56では、図8の撮影画像A2におけるドア3aの基準点p2のy座標値y2を用いたが、ここでは、基準点p2のz座標値z2を用いる。
【0079】
図8の撮影画像A2において、キャブ6を目標位置へ移動する際に、キャブ6を高さ方向に移動する必要がない場合(すなわちキャブ6の上下移動量が0の場合)のドアの基準点p2のz座標基準値z0(所定値)が設定されている。
【0080】
ステップS61では、制御装置50は、所定の演算式(B)に基づいて、基準点p2のz座標値z2と基準値z0との差dz(=z2−z0)が、高さ方向の実際の距離dZに換算された値を算出する。この演算式(B)は、現在のキャブ6の先端位置P2から航空機3までの距離(RA)と、基準点p2のz座標値(z2)とを変数として、距離dZを算出する式である。上記換算された距離dZがキャブ6の上下移動量となる。
【0081】
以上のようにして制御量を算出した後、制御装置50は、ステップS13〜S15を行う。
【0082】
ステップS13では、制御装置50は、駆動輪9の回転角度が「γ1」となるように2つの駆動輪9を逆回転させて駆動輪9の向きを修正した後、2つの駆動輪9による走行を開始させる。ステップS14では、キャブ6の回転角度が「β1」となるようにキャブ6を回転させる。ステップS15では、距離「dZ」だけキャブ6が上下移動するように昇降機構10を動作させる。
【0083】
ステップS16では、制御装置50は、キャブ6が第1停止位置(この例ではドア3aから1m手前の位置)になったか否かを判定し、第1停止位置になると2つの駆動輪9による走行を一時停止する(ステップS17)。制御装置50では、駆動輪9の走行開始時から走行距離を常時算出しており、この走行距離が「RDA」になると第1停止位置になったと判定し、駆動輪9による走行を停止させる。
【0084】
また、上記の駆動輪9による走行中、すなわち、駆動輪9がその中心位置がP3からP7へ移動中において、制御装置50は、ロタンダ用角度センサ24と距離センサ28との計測値に基づいて駆動輪9の中心位置を常時算出し、駆動輪9が目標とする中心位置P7に向かって走行するように2つの各々の駆動輪9の回転速度(走行速度)を制御するようにしてもよい。また、上記走行中において、制御装置50は、ドア撮影用カメラ21による撮影画像を監視し、同撮影画像からドア3aを検出できなくなった場合(すなわち撮影画像にドア3aが映らなくなった場合)等には、何らかの故障等の不具合が発生したと判断し、自動制御を停止し、旅客搭乗橋1の移動を停止させるようにしてもよい。この後は、操作員が手動で操作することになる。
【0085】
次に、ステップS18では、制御装置50は、キャブ6を航空機3のドア3aに装着する装着位置へ移動するための制御量を演算する。この演算は、ステップS12の場合と同様にして行うことができる。ただし、ステップS18では、キャブ6の目標位置を装着位置として演算するので、キャブ6の先端位置と航空機3のドア3aとの距離SLは、SL=0とする。なお、キャブ6が第1停止位置においてドア撮影用カメラ21で撮影された画像は、図8に示す待機位置で撮影された画像よりもドア3aが大きく撮影されている。
【0086】
そして、ステップS18で演算した制御量に基づいて、制御装置50は、ステップS19〜S21を行う。ここで、ステップS18において、駆動輪9の回転角度として「γ2」、走行距離として「RDA2」が求められ、キャブ6の回転角度として「β2」が求められ、キャブ6の上下移動量として「dZ2」が求められているものとする。
【0087】
ステップS19では、制御装置50は、駆動輪9の回転角度が「γ2」となるように2つの駆動輪9を逆回転させて駆動輪9の向きを修正した後、2つの駆動輪9による走行を開始させる。ステップS20では、キャブ6の回転角度が「β2」となるようにキャブ6を回転させる。ステップS21では、距離「dZ2」だけキャブ6が上下移動するように昇降機構10を動作させる。
【0088】
上記のステップS19で、2つの駆動輪9による走行を開始させた後、制御装置50は、距離センサ23で検出されるキャブ6と航空機3間の距離が所定距離(例えば0.3m)以下となったときに、走行速度を遅くするようにしている。
【0089】
次に、ステップS22では、制御装置50は、キャブ6が第2停止位置(この例ではドア3aから0.1m手前の位置)になったか否かを判定し、第2停止位置になると2つの駆動輪9による走行を一時停止する(ステップS23)。この場合、制御装置50は、第1停止位置から駆動輪9による走行を再開させると、2つの距離センサ23の計測値に基づいて航空機3とキャブ6の先端との距離を測定し、この測定距離が所定距離(例えば0,3m)以下になると走行速度を低速にし、測定距離が0.1mになるとキャブ6が第2停止位置になったと判定し、駆動輪9による走行を停止させる。上記測定距離は、例えば、2つの距離センサ23の計測値のうちの短い方の値を採用する。
【0090】
次に、ステップS24では、制御装置50は、2つの距離センサ23の計測値が等しくなるようにキャブ6を回転させた後、キャブ6の位置等の微調整を行うための制御量を演算する。ここでは、例えば、ステップS61の場合と同様にして、ドア撮影用カメラ21による撮影画像に基づいて、キャブ6の上下移動量として距離「dZ3」を算出する。
【0091】
次に、ステップS25では、制御装置50は、駆動輪9による走行を微速にて再開させて、2つの距離センサ23の計測値のうちのいずれかが0になると、走行を停止させる。続いて、制御装置50は、蛇腹部63を前方へ延ばすように動作させて航空機3に当接させることにより、キャブ6を航空機3に装着する。ここで、制御装置50は、駆動輪9による走行を停止させたときに、ドア撮影用カメラ21による撮影画像上でのドア3aの基準点のz座標値とz座標基準値との差(図8のdzに対応する値)が、0もしくは許容範囲内に入っていることを確認してから、蛇腹部63を動作させて航空機3に当接させるようにしてもよい。
【0092】
最後に、ステップS26では、制御装置50は、装着完了報知部29を制御して航空機3の乗務員にキャブ6の装着(旅客搭乗橋1の装着)が完了したことを報知する。
【0093】
なお、キャブ6を待機位置へ戻す場合には、例えば、操作員が操作盤31のデッドマンスイッチ方式のリターンボタン(操作スイッチ33の一つ)を押すことにより、制御装置50に、所定の待機位置へ戻るための自動制御を開始させることができる。
【0094】
上記において、キャブ6の中心位置を検出するためにGPS受信機をキャブ6に搭載し、制御装置50は、待機位置及び第1停止位置において、GPS受信機によって検出されるキャブ6の中心位置と、距離センサ28及び角度センサ24の計測値から算出されるキャブ6の中心位置との誤差を算出し、この誤差が許容範囲を超えると異常と判断し、自動制御を停止するようにしてもよい。
【0095】
また、ステップS10において、航空機の到着の判定を、2つの距離センサ23の計測値に基づいて行うようにしたが、これに代えて、ドア撮影用カメラ21の撮影画像に基づいて航空機3のドア3aを検出したときに、航空機3が到着したことを判定するようにしてもよい。また、航空機3が到着したときに、操作員が操作盤31のスタートボタン(操作スイッチ33の一つ)を押すことにより、制御装置50にスタート信号が入力され、これによって制御装置50が、ステップS11以降の自動制御を開始するようにしてもよい。
【0096】
また、航空機3には、ドア3aの直下に補強用プレート3cが設けられている。そこで、ドア撮影用カメラ21の撮影画像に基づいて航空機3のドア3aを検出する際、ドア3aのコーナー部の形状と補強用プレート3cの形状とに基づいてドア3aを検出するようにしてもよい。すなわち、補強用プレート3cの存在とともにドア3aを認識するようにしてもよい。これにより、機種特有の情報に頼らなくてもより正確にドア3aを検出することが可能になる。
【0097】
また、上記では、キャブ6が待機位置から装着位置へ移動する間に、第1、第2停止位置を設けて2回一時停止するようにしたが、第1、第2停止位置のうちのいずれか1つだけを設けて1回だけ一時停止するようにしてもよいし、一時停止することなく、待機位置から装着位置まで連続して移動するようにしてもよい。いずれの場合も、装着位置に近づくほど駆動輪9の走行速度を低速にすることが好ましい。
【0098】
なお、第1停止位置を設けない場合には、キャブ6が待機位置にあるときに行われるステップS12では、目標位置を装着位置として(SL=0)、制御量の演算を行っても良いし、さらに第1停止位置に相当する位置で速度を落とし、制御量の再演算を行うことで装着精度を高めるようにしても良い。また、第2停止位置を設けない場合には、キャブ6が装着位置に近づいて低速で走行中に制御量の演算(ステップS18)を行うようにしてもよい。
【0099】
本実施形態では、制御装置50の制御によってキャブ6が待機位置から装着位置まで自動的に移動するように構成されているので、操作員による操作は不要である。また、航空機3が到着したときに、操作員が操作盤31のスタートボタンを押すことによって、制御装置50が、ステップS11以降の自動制御を開始するようにした場合でも、操作員はスタートボタンを押すというような簡単な操作だけで、キャブ6を待機位置から移動させて航空機3に装着することが可能になる。
【0100】
また、本実施形態では、キャブ6をドア3aに装着する際のキャブ6の移動の起点となる待機位置において、ドア撮影用カメラ21でドア3aを撮影し、目標位置を算出するので、航空機3が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、はじめからドア3aに向かってキャブ6を移動させることができる。よって、キャブ6をドア3aに装着するまでのキャブ6の移動距離及び移動時間の短縮を図ることができる。また、操作員は、航空機3が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、ずれ量を測定して入力する等の特別な操作を行う必要が無い。
【0101】
また、本実施形態では、キャブ6が待機位置から装着位置まで自動的に移動するように構成されているが、その移動の一部又は全部を操作員による手動操作によって行うことも可能である。例えば、キャブ6を待機位置から第1停止位置まで自動的に移動させた後、第1停止位置から装着位置までのキャブ6の移動をデッドマンスイッチ方式による操作員による手動操作によって行うようにしてもよい。この第1停止位置から装着位置までのキャブ6の移動は簡単な操作で済む。
【0102】
なお、キャブ6の待機位置や第1停止位置等において、キャブ6と航空機3間の距離を距離センサ23で検出するようにしたが、ドア撮影用カメラ21で撮影された画像上でのドア3aの2つの基準点(p2,p3)の各々のyz座標を用いて、キャブ6と航空機3間の距離(実距離)を算出するようにしてもよい。この場合、例えば、制御装置50に、航空機3の機種ごとに、ドア3aの2つの基準点p2,p3間の実距離(実際の長さ)を予め記憶しておいて、撮影された画像上でのドア3aの2つの基準点p2,p3間のyz座標に基づく距離と、該当する機種の基準点p2,p3間の実距離とを、所定の演算式に代入することによって、キャブ6と航空機3間の距離を算出するようにしてもよい。
【0103】
また、キャブ6の待機位置において、前輪撮影用カメラ22で撮影された前輪3b及びその近傍の機械的構造を含む領域の前輪部分画像A11を、上記複数の前輪部分形状パターンと比較することにより、最も近い前輪部分形状パターンを選択して航空機3の機種を判別するようにしたが、前輪部分形状パターンが似ている複数の機種の航空機が旅客搭乗橋1の設置された空港を利用する場合が考えられる。この場合、前輪撮影用カメラ22で撮影された画像から前輪3bの中心位置p1を算出し、画像上でのドア3aの基準点(例えば基準点p2)と前輪3bの中心位置p1との距離aを算出する。この画像上での距離aは、y軸方向における距離であってもよいし、z軸方向における距離であってもよいし、直線距離であってもよい。そして、制御装置50に、機種ごとに、画像上での距離aに相当する実際の距離(長さ)を予め記憶しておく。この場合、制御装置50は、前輪部分画像A11を用いて判別される航空機3の機種(複数機種)と、画像上での距離aを用いて判別される航空機3の機種(複数機種)とに共通する1つの機種を航空機3の機種に決定すればよい。このとき、例えば、前輪部分画像A11を用いて航空機3の機種をいくつかの機種に絞り込んだ後、画像上での距離aを距離センサ23で検出される距離に基づいて実際の距離に変換し、これを、機種ごとに記憶された実際の距離と比較することにより、航空機3の機種を判別するようにしてもよい。
【0104】
なお、本実施形態では、ステップS12、S18において、ステップS60に示されるように、キャブ6の回転角度を算出するようにしたが、制御装置50は、キャブ6の回転角度を算出することなく、ステップS14、S20において、2つの距離センサ23の計測値が等しくなるようにキャブ6を回転させるようにしてもよい。この場合、航空機3の機種を判別する必要がなく、ステップS11の処理を省略することができる。また、前輪撮影用カメラ22も不要である。
【0105】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、航空機が所定の停止位置からずれて停止した場合でも、ずれ量を測定することなく操作員による操作を省略または簡単にしてキャブを航空機に装着することができる旅客搭乗橋等として有用である。
【符号の説明】
【0107】
1 旅客搭乗橋
3 航空機
3a 乗降用ドア
3b 前輪
3c 補強用プレート
5 トンネル部
6 キャブ
9 駆動輪
10 昇降機構
21 ドア撮影用カメラ
22 前輪撮影用カメラ
23 距離センサ
29 装着完了報知部
50 制御装置
51 機種判別部
52 ドア位置算出部
図1
図2
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図8