(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960042
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】凝集したODH触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 27/057 20060101AFI20211025BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20211025BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20211025BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20211025BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20211025BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20211025BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20211025BHJP
C07C 5/333 20060101ALI20211025BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20211025BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
B01J27/057 Z
B01J35/10 301G
B01J37/04 102
B01J37/00 D
B01J37/08
B01J35/08 Z
B01J35/02 B
C07C5/333
C07C11/04
!C07B61/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-505375(P2020-505375)
(86)(22)【出願日】2018年7月31日
(65)【公表番号】特表2020-529310(P2020-529310A)
(43)【公表日】2020年10月8日
(86)【国際出願番号】IB2018055746
(87)【国際公開番号】WO2019025981
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年3月31日
(31)【優先権主張番号】2975144
(32)【優先日】2017年8月3日
(33)【優先権主張国】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】513269848
【氏名又は名称】ノヴァ ケミカルズ(アンテルナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンヒ
(72)【発明者】
【氏名】シマンゼンコフ、ワシリー
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、シャオリャン
(72)【発明者】
【氏名】サリバン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、マリー
(72)【発明者】
【氏名】アンシーユー、ルネ
(72)【発明者】
【氏名】スタイルズ、イーペイ
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−539124(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/029572(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0256432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07C 1/00−409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10から95重量%の、式:Mo1.0V0.12−0.49Te0.06−0.16Nb0.15−0.20Od(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)の触媒と、
5〜90重量%の、TiO2、ZrO2、Al2O3、AlO(OH)及びそれらの混合物の酸性、塩基性又は中性バインダースラリーからなる群から選択されるバインダー(ただし、ZrO2はアルミニウム含有バインダーとの組合せでは使用されない)と
を含む、1つ以上のC2−4アルカンを対応するアルケンに酸化的脱水素化するための凝集触媒であって、
以下の条件:
・ 1から5/1.3のアスペクト比を有し、100N/mmまでの破砕強度を有する棒状の形状である;
・ 100N/mmまでの破砕強度を有する球状の形状である;
の1つ以上を備える、上記凝集触媒。
【請求項2】
BETにより測定される35m2/g未満の累積表面積を有する、請求項1に記載の凝集触媒。
【請求項3】
0.05から0.50cm3/gの累積細孔容積を有する、請求項2に記載の凝集触媒。
【請求項4】
150オングストローム未満の細孔幅サイズを有する4%未満の細孔サイズ分布を有する、請求項2に記載の凝集触媒。
【請求項5】
前記C2−4アルカンがエタンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の凝集触媒。
【請求項6】
1.3mmから5mmのサイズを有する球又は棒の形状である、請求項2に記載の凝集触媒。
【請求項7】
前記バインダーが、酸性化バインダーである、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項8】
前記バインダーが、塩基処理されたバインダーである、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項9】
前記バインダーが、TiO2、ZrO2、Al2O3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択される(ただし、ZrO2はアルミニウムベースのバインダーとは混合されない)、請求項7に記載の凝集触媒。
【請求項10】
前記バインダーが、TiO2、ZrO2、Al2O3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択される(ただし、ZrO2はアルミニウムベースのバインダーとは混合されない)、請求項8に記載の凝集触媒。
【請求項11】
前記触媒が、式:
Mo1.0V0.25−0.38Te0.10−0.16Nb0.15−0.19Od
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項12】
前記触媒が、式Mo1.0V0.22−0.33Te0.10−0.16Nb0.15−0.19Od
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項13】
前記触媒が、式:Mo1.0V0.12−0.19Te0.14−0.16Nb0.15Od
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項14】
式:Mo1.0V0.17−0.20Te0.06−0.07Nb0.19−0.20Od
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項15】
式:Mo1.0V0.12−0.19Te0.14−0.16Nb0.15Od
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する、請求項6に記載の凝集触媒。
【請求項16】
i) 10から95重量%までの触媒を含む触媒の水性スラリー又はペーストを形成する工程;
ii) 12までのpHを有する酸性、中性又は塩基性のコロイド懸濁液の形態で、TiO2、ZrO2、Al2O3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択されるバインダー(ただし、ZrO2はアルミニウムベースのバインダーとの組合せでは使用されない)を5から90重量%までスラリー又はペーストに添加する工程;
iii) 得られたスラリー又はペーストの含水量を30重量%未満に減らす工程;
iv) 前記減水したスラリー又はペーストを押し出して、1.3mmから5mmのサイズを有する棒状又は球状粒子を形成する工程;
v) 90℃から115℃までの温度で酸素含有雰囲気中において粒子を乾燥する工程;
vi) 得られた粒子を600℃までの温度で焼成する工程;
を含む、請求項1に記載の触媒を調製する方法。
【請求項17】
300℃までの温度で棒状凝集粒子を球状化し、次いで得られた球体を600℃までの温度でさらに焼成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酸素及び1つ以上のC2−4アルカンを含む混合物の酸化的脱水素化の方法であって、
請求項1に記載の凝集触媒に、前記混合物を、340℃から420℃未満の温度、172.3kPag(25psig)から689kPag(100psig)までの圧力、500/時から3000/時の空間速度、及び0.002から20秒の滞留時間で、通過させる工程を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィンを、典型的にはC
2−4を、好ましくはエタンを、対応するアルケンに転化するための凝集した酸化的脱水素化触媒に関する。そのような反応は、固定床又は流動床反応器内で行われてもよい。使用中の摩耗を回避するのに十分な強度を有する触媒粒子を形成する必要がある。触媒粒子のために適切なバインダーを選択することにより、25%転化率が得られる温度の観点で、触媒の活性が、選択性の著しい(例えば5%未満)低下なしに改善され得る。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,524,236号(1985年6月18日にMcCainに発行され、Union Carbide Corporationに譲渡された)は、エタンからエチレンへの酸化的脱水素化のための、Mo
aV
bNb
cSb
dX
eの焼成組成物を含む触媒を教示している。ここで、式中、X=少なくとも次の1つ:Li、Sc、Na、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Y、Ta、Cr、Fe、Co、Ni、Ce、La、Zn、Cd、Hg、Al、Tl、Pb、As、Bi、Te、U、及びW;並びに
a=0.5〜0.9
b=0.1〜0.4
c=0.001〜0.2
d=0.001〜0.1
e=0.001〜1.0
a、b、c、d及びeの値は、それぞれ、触媒中の元素Mo、V、Nb、Sb、及びXの相対グラム原子(relative gram−atoms)を構成する。それらの元素は、様々な酸化物の形態で酸素との組合せで存在する。
【0003】
この特許は、担体(support)の有無にかかわらず触媒が使用できることを教示している。この触媒は、溶液として調製され、乾燥され、焼成される。この特許は、シリカ、アルミニウム酸化物、炭化ケイ素、ジルコニア、チタニア、及びそれらの混合物を含む触媒に適する担体を教示している。担体上で使用される場合、担持触媒(supported catalyst)は通常、触媒組成物の約10から50重量%を構成し、残りは担体である。この特許は、担体に触媒が含浸されていることを教示している(第4欄38〜43行)。
【0004】
欧州特許出願第0262264(Manyikらの名前で1988年3月30日に公開され、Union Carbide Corporationに譲渡され、CA1262556に対応する)は、米国特許第4,524,236号(1985年6月18日にMcCainに発行された)の触媒を使用して、エタンをエチレンに脱水素化するプロセスを教示している。この特許出願は、触媒溶液が担体に含浸するために使用される(すなわち、初期湿潤法)ことを教示している(7頁30〜35行)。担体は、1グラム当たり約1平方メートル未満の表面積と、10ミクロンを超える比較的大きなメジアン細孔直径とを有する。この特許は、凝集触媒を教示していない。初期湿潤含浸では、担体を最小限に濡らすため、制御された種類(細孔への吸着を改善する)と量の溶媒を含む溶解した触媒の溶液の使用が必要である。細孔サイズ、担体の組成(疎水性又は親水性)、及び溶媒の種類と量は、担持触媒内での活性触媒の吸収と配置に制約を課す。凝集法は、バインダーと担体の分散液を、任意選択での、溶媒/希釈剤の低減、押出、及び最終乾燥とともに、混合ブレンドすることにより実施される。凝集プロセスにより、バインダーと触媒の比率のウィンドウがより広くなり、細孔容積、細孔サイズ、及び細孔分布の制御が強化される。
【0005】
米国特許第7,319,179号(2008年1月15日にLopez Nietoらに発行され、Convestio Superior de Investigacionse Cientificas及びUniversidad Politecnica De Valenciaに譲渡された)は、エタンの酸化的脱水素化用の5成分金属酸化物触媒を教示している。この特許は、触媒が、例えばシリカ、アルミナ、チタン酸化物及びそれらの混合物など、固体上に担持された混合酸化物であり得ることを教示している。好ましい方法では、固体担体としてのシリカは、触媒の総重量に対して20〜70重量%の割合で存在する。さらに、触媒は、炭化ケイ素上に担持された混合酸化物の形でもあり得る。担体上の触媒の異なる元素の固定は、細孔容積、過剰溶液などの従来の含浸方法によって、又は単に活性元素を含有する溶液の担体上での沈殿によって行うことができる。この特許は、触媒の各元素を担体に個別に結合することを教示しているようである。
【0006】
米国特許出願公開第20140121433号(Cizeronらの名前で2014年5月1日に公開され、Siluriaに譲渡された)は、メタンの酸化カップリング用の触媒を教示している。この開示では、バインダーと希釈剤という用語を交換可能に使用しているようである。メタン用の酸化カップリング触媒(OCM)は、ナノワイヤである。この特許は、エタンの酸化的脱水素化に使用できる触媒も教示している[357及び358]。段落[0146]〜[0153]の記載では、「希釈剤」について議論している。これらは不活性のようである。いずれにしても、本発明は、ナノワイヤ複合体を意図していない。
【0007】
米国特許第8,846,996号(Kustovらの名前で2014年9月30日に発行され、NOVA Chemicals(International)SAに譲渡された)は、本発明と比較し得る酸化的脱水素化触媒と、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、イットリウム、ランタン、シリコンの酸化物及びそれらの混合組成物又は炭素マトリックスから選択される不活性担体との共粉砕(湿式又は乾式粉砕;第5欄50行)を教示しており、1〜100ミクロンのサイズを有する粒子を生成し、得られた粒子を0.1〜2mmのサイズを有するペレットに形成することを教示している。本発明では、共粉砕ステップは採用していない。さらに、共粉砕工程の生成物はペレットに形成され、適切な粒子サイズを得るために粉砕される(第5欄55行)。
【0008】
米国特許出願公開第20170008821号(Hossainらの名前で2017年1月12日に公開され、King Fahd University of Petroleum and Mineralsに譲渡された)は、循環撹拌床反応器内で気体酸素の非存在下で行われる酸化的脱水素化プロセスを教示している。触媒は格子酸素を含む。触媒から酸素が除去されると、それは酸化反応器に循環され、そこで格子酸素が補充される。触媒は、初期湿潤プロセスを用いてZrO
2で処理されたアルミナベースの担体に担持されている(段落64)。次に、初期湿潤プロセスを使用して、処理された担体上に触媒を担持する。この触媒は、押出法を使用して調製されない。
【0009】
本発明は、改善された活性を有する様々な形状に押し出され得る、エタンの酸化的脱水素化のための(押出(extruded))凝集触媒を提供しようとするものである。この触媒は、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択される(ただし、ZrO
2はアルミニウム含有バインダーとの組合せでは使用されない)酸性の担体上に押し出される。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、凝集した(agglomerated)、好ましくは押し出された(extruded)触媒を提供し、当該触媒は以下を含む:
10から95重量%、好ましくは25から80重量%、望ましくは30から45重量%の、式:Mo
1.0V
0.12−0.49Te
0.06−0.16Nb
0.15−0.20O
d(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)の触媒;並びに、
5〜90重量%、好ましくは20から75重量%、望ましくは55から70重量%の、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、AlO(OH)及びそれらの混合物の酸性、塩基性又は中性バインダースラリーからなる群から選択されるバインダー(ただし、ZrO
2はアルミニウム含有バインダーとの組合せでは使用されない)。
【0011】
さらなる実施形態では、凝集触媒(agglomerated catalyst)は、BETにより測定される35m
2/g未満、あるいは、20m
2/g未満、あるいは3m
2/g未満の累積表面積を有する。
【0012】
さらなる実施形態では、凝集触媒は、0.05から0.50cm
3/gの累積細孔容積を有する。
【0013】
さらなる実施形態では、凝集触媒は、4%未満の細孔が150オングストローム未満の細孔幅サイズを有するような細孔サイズ分布を有する。
【0014】
さらなる実施形態では、凝集触媒は、40%未満の細孔面積分布の割合と、対応する20%未満の細孔容積の割合とを有する。
【0015】
さらなる実施形態では、凝集触媒は、約1.3mmから5mmのサイズを有する球、棒、リング、又はサドルの形状である。
【0016】
さらなる実施形態では、バインダーは、酸性化バインダーである。
【0017】
さらなる実施形態では、バインダーは、塩基処理されたバインダーである。
【0018】
さらなる実施形態では、バインダーは、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択される(ただし、ZrO
2はアルミニウムベースのバインダーとは混合されない)。
【0019】
さらなる実施形態では、凝集触媒は、1から5/1.3のアスペクト比を有し、100N/mmまでの破砕強度を有する棒状の形状である。
【0020】
さらなる実施形態では、凝集触媒は、100N/mmまでの破砕強度を有する球状の形状である。
【0021】
凝集触媒におけるさらなる実施形態では、触媒は、実験式:
Mo
1.0V
0.25−0.38Te
0.10−0.16Nb
0.15−0.19O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する。
【0022】
凝集触媒におけるさらなる実施形態では、触媒は、PIXEにより決定される実験式 Mo
1.0V
0.22−0.33Te
0.10−0.16Nb
0.15−0.19O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する。
【0023】
凝集触媒におけるさらなる実施形態では、触媒は、PIXEにより測定される実験式:Mo
1.0V
0.12−0.19Te
0.14−0.16Nb
0.15O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する。
【0024】
凝集触媒におけるさらなる実施形態では、触媒は、PIXEにより測定される実験式:Mo
1.0V
0.17−0.20Te
0.06−0.07Nb
0.19−0.20O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する。
【0025】
凝集触媒におけるさらなる実施形態では、触媒は、PIXEにより測定される実験式:Mo
1.0V
0.12−0.19Te
0.14−0.16Nb
0.15O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有する。
【0026】
さらなる実施形態では、上記の触媒を調製する方法を提供し、以下の工程を含む:
i) 10から95重量%までの触媒を含む触媒の水性スラリー又はペーストを形成する工程;
ii) 12までのpHを有する酸性、中性又は塩基性のコロイド懸濁液の形態で、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択されるバインダー(ただし、ZrO
2はアルミニウムベースのバインダーとの組合せでは使用されない)を5から90重量%までスラリー又はペーストに添加する工程;
iii) 必要な場合、得られたスラリー又はペーストの含水量を30重量%未満に減らす工程;
iv) 前記減水したスラリー又はペーストを押し出して、約1.3mmから5mmのサイズを有する棒状、リング状又はサドル状粒子を形成する工程;
v) 90℃から115℃までの温度で酸素含有雰囲気中において粒子を乾燥する工程;
vi) 得られた粒子を600℃までの温度で焼成する工程。
【0027】
さらなる実施形態では、工程vi)において、粒子は350℃未満の温度で再焼成される。
【0028】
さらなる実施形態では、棒状凝集粒子は、300℃までの温度で球状化され、次いで、得られた球体を600℃までの温度でさらに焼成する。
【0029】
本発明は、酸素及び1つ以上のC
2−4アルカンを含む混合物の酸化的脱水素化の方法をさらに提供する。当該方法は、請求項1に記載の押出凝集触媒に、前記混合物を、340℃から420℃未満の温度、172.3kPag(25psig)から689kPag(100psig)までの圧力、500/時から3000/時の空間速度、及び0.002から20秒の滞留時間で、通過させることを有する。
【0030】
さらなる実施形態では、酸化的脱水素化プロセスは、押出触媒中のバインダーの量を、当該触媒中のバインダーの範囲内で5から50重量%の範囲で増加させる工程、及び、触媒床温度を420℃未満、好ましくは395℃未満、好ましくは385℃未満に維持し、選択率を±3%以内に維持しながら、触媒床を通過するガス流速度を比例量だけ増加させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、BETによって測定された、(試料13の)細孔幅の関数としての、バインダーを含まない触媒の細孔面積の割合のプロットである(細孔面積の割合による細孔幅分布)。
【0032】
【
図2】
図2は、BETによって測定された、(試料5の)細孔幅の関数としての、TiO
2バインダーを含む触媒の細孔面積の割合のプロットである(細孔面積の割合による細孔幅分布)。
【0033】
【
図3】
図3は、BETによって測定された、(試料25の)細孔幅の関数としての、TiO
2バインダーを含む押出触媒の細孔面積の割合のプロットである。
【0034】
【
図4】
図4は、BETによって測定された、(試料14の)細孔幅の関数としての、60%のAlO(OH)バインダーを含み押し出されなかった触媒の細孔面積の割合のプロットである(細孔面積の割合による細孔幅分布)。
【0035】
【
図5】
図5は、BETによって測定された、(試料19の)細孔幅の関数としての、60%のAl
2O
3バインダーを含み押し出されなかった触媒の細孔面積の割合のプロットである(細孔面積の割合による細孔幅分布)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
操作例における、又は他に指示がある場合を除き、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを指す全ての数又は表現は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明が得ようとする特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、且つ通常の丸め技法を適用して解釈されるべきである。
【0037】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載されている数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0038】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分的な範囲を含むことが意図されることを理解されたい。例えば、「1〜10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間及びそれらを含む全ての部分的な範囲を含むことが意図されている;すなわち、最小値が1以上で最大値が10以下である。開示された数値範囲は連続的であるので、それらは最小値と最大値の間のあらゆる値を含む。他に明示的に示されていない限り、本願において特定される様々な数値範囲は近似値である。
【0039】
本明細書で表される全ての組成範囲は、実際には合計で100%(体積%又は重量%)に制限され、100%を超えない。複数の成分が組成物中に存在し得る場合、各成分の最大量の合計は100%を超えることがあるが、当業者が容易に理解するように、実際に使用される成分の量は最大100%に一致するであろうことは理解される。
【0040】
バインダーは、触媒粒子間の凝集力を高めるために、及び任意選択で担体(存在する場合)への触媒の接着を改善するために、触媒に添加される材料を意味する。
【0041】
本明細書では、「エタンからエチレンへの25%転化率がある温度」という語句は、典型的には25%転化率より下及び上のデータ点を用いて、温度に対するエチレンへの転化率のグラフをプロットすることによって決定され、又は、そのデータを式に当てはめて、エタンからエチレンへの25%転化率がある温度が決定される。実施例のいくつかの例では、25%転化率が生じた温度を決定するためにデータを外挿しなければならなかった。
【0042】
本明細書では、「25%転化率での選択率」という語句は、その選択率を温度の関数としてプロットすることによって、又はそれを式に当てはめることによって、決定される。次いで、25%転化率が生じる温度を計算したら、グラフから又は式からその温度での選択率を決定することができる。
【0043】
表面積をガスの体積に関連付けるには、いくつもの方法があり、凝集した担体に組み込むことができる。
【0044】
1つの方法は、累積細孔容積(cm
3/g)と累積表面積(m
2/g)である。
【0045】
2番目の方法は、表面積の割合に対する細孔幅の分布である(例えば、触媒のどの表面積が定義された直径の細孔サイズを有するか)。
図4では、細孔面積の4%は、5〜150Åの細孔幅(直径)の範囲を有する。細孔面積の残りの96%は、150Åを超える細孔幅(直径)を有する。
【0046】
3番目の方法は、
第一に、累積細孔容積の関数として累積表面積を決定すること;
第二に、累積表面積と累積細孔容積を正規化して、総分布の割合を作成すること;及び
第三に、細孔容積の割合の関数としてその表面積の割合をプロットすること;
を含む。
【0047】
エタンなどの低級(C
2−4)アルカンの酸化的脱水素化では、処理される分子と生成物分子の直径は、約2.5〜4オングストローム(0.25〜0.40nm)である。分子の直径、細孔の直径、及び細孔の表面積は、分子が触媒と相互作用する確率(細孔壁又は表面)に影響する。例えば、大きな直径の細孔、低い内部表面積、大きな細孔容積では、分子が材料の内部表面(触媒)と接触する可能性が最も低く、その結果、転化率が低くなる。
【0048】
C
2−4アルカンなどの低級アルカン、特にエタンから、C
2−4アルケン、特にエチレンへの酸化的脱水素化において有用な触媒の1つのファミリーは、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、及び任意選択で他の成分(Pt、Pd、Ta、Ti、W、Hf、Zr、Sb、Zn、Sc、Y、La、Ce、Ta、Cr、W、U、Te、Fe、Co及びNiなど)の混合酸化物の触媒であり、エタンからエチレンへの酸化的脱水素化用である。
【0049】
アルカン、特に低級C
2−4アルカンの酸化的脱水素化に有用な触媒の1つのファミリーは、次の式を有していた:
Mo
1.0V
0.12−0.38Te
0.06−0.16Nb
0.11−0.20O
d(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)。
【0050】
触媒の組成は、触媒がどのように製造されるかに応じて、上記の一般式内で変化し得る。
【0051】
したがって、典型的には、そのような触媒及び前駆体は、水熱プロセスを使用して作製される。
【0052】
典型的には、水熱プロセスにおいて、前駆体は次のように調製される:
i)30℃〜85℃の温度で、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(四水和物)とテルル酸の水溶液を形成し、窒素含有塩基でその溶液のpHを6.5〜8.5、好ましくは7〜8、最も好ましくは7.3〜7.7に調整し、金属の可溶性塩を形成する工程;
ii)室温から80℃(好ましくは50℃〜70℃、最も好ましくは55℃〜65℃)の温度で、硫酸バナジルの水溶液を調製する工程;
iii)工程i)及び工程ii)からの溶液を一緒に混合する工程;
iv)一酸化ニオブシュウ酸塩(NbO(C
2O
4H)
3)の溶液を、工程iii)からの溶液にゆっくりと添加(滴下)してスラリーを形成する工程;
v)6時間以上、150℃から190℃の温度で、不活性雰囲気下のオートクレーブ内で得られたスラリーを加熱する。
【0053】
工程v)から得られた固体をろ過し、脱イオン水で洗浄し、洗浄した固体を70〜100℃の温度で4〜10時間乾燥させる。
【0054】
さらなる実施形態では、前駆体は、不活性雰囲気中で200℃〜600℃の温度で1〜20時間焼成される。
【0055】
上記は、前駆体及び最終的な酸化的脱水素化触媒を調製するための典型的な水熱プロセスである。
【0056】
触媒が従来の水熱プロセスを用いて作製されている場合、それは、式:
Mo
1.0V
0.25−0.45Te
0.10−0.16Nb
0.15−0.19O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)を有してもよい。
【0057】
いくつかの調製方法では、乾燥した触媒前駆体を過酸化物で、典型的には過酸化水素で処理する。過酸化水素処理は、大気圧、及び室温(例えば、15℃〜30℃)から約80℃、場合によっては35℃から75℃、その他の場合は40℃から65℃で、行われてもよい。過酸化水素は、水中で、10〜30重量%、場合によっては15〜25重量%の濃度を有してもよい。処理時間は、1〜10時間、場合によっては2〜8時間、その他の場合は4〜6時間の範囲であってもよい。触媒前駆体は、前駆体1グラム当たり0.3〜2.8ml、いくつかの実施形態では0.3〜2.5mlの水性H
2O
2の30重量%溶液で処理される。その処理は、H
2O
2の均一な分布を提供し、温度上昇を制御するために、スラリー(例えば、前駆体が少なくとも部分的に懸濁している)で行う必要がある。H
2O
2を用いた焼成後の処理では、H
2O
2との突然の激しい反応が遅延する。これにより、より制御された安全な瞬間的な反応が得られる。
【0058】
次いで、処理された触媒前駆体は焼成されて、活性な酸化的脱水素化触媒が生成される。処理された前駆体は、200℃〜600℃の温度の不活性雰囲気で1〜20時間焼成してもよい。焼成に用いられるパージガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、CO
2(好ましくは高純度>90%)の1つ以上を含む不活性ガスであり、前記ガス又は混合物は、200〜600℃、好ましくは300〜500℃で、1体積%未満の水素又は空気を含む。焼成工程は、1〜20時間、場合によっては5〜15時間、その他の場合では約8〜12時間、一般に約10時間かかり得る。得られる混合酸化物触媒は、典型的には水に不溶性の、もろい固体である。典型的には、焼成生成物のかさ密度は、1.20〜1.90g/ccである。このかさ密度は、1.5mlの圧縮及び粉砕された触媒の重量に基づいている。
【0059】
過酸化物処理が用いられる場合、触媒は、PIXEにより決定される式:
Mo
1.0V
0.22−0.33Te
0.10−0.16Nb
0.15−0.19O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)を有してもよい。
【0060】
いくつかのプロセスでは、水熱処理は、10psi〜190psi(960kPa〜1300kPa)の制御された低圧で実行される。これは、オートクレーブへのベントと、レギュレータなどのいくつかの適切な圧力制御手段、又は場合によってはベントガスが逃げなければならない水などの液体の柱とを有することにより、達成することができる。そのようなプロセスでは、水熱処理の時間を最大72時間まで延長してもよい。
【0061】
この方法で調製した場合、触媒は、式:
Mo
1.0V
0.25−0.45Te
0.10−0.16Nb
0.15−0.19O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)を有してもよい。
【0062】
いくつかの方法では、水熱反応器内の圧力を、大気圧より高く、1〜8psig(6.89kPag〜55.1kPag)の範囲、好ましくは5psig(34.4kPag)未満にまで、さらに低下させることができます。これらの条件下で、触媒は、PIXEにより測定される実験式:
Mo
1.0V
0.12−0.19Te
0.14−0.16Nb
0.15O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)を有してもよい。
【0063】
本発明は、上記材料の混合物又は組合せの使用を意図している。
【0064】
本発明によれば、10から95重量%、好ましくは25から80重量%、望ましくは30から45重量%の触媒が、5から90重量%、好ましくは20から75重量%、望ましくは55から70重量%の、酸性の、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のバインダー(ただし、ZrO
2はアルミニウム含有バインダーとの組合せでは使用されない)とともに、凝集(押出)される。
【0065】
凝集触媒は、当業者に知られている方法により調製することができる。一実施形態では、焼成された触媒は希釈剤に、典型的には水に懸濁され、調製し又は購入したバインダーの酸性、中性又は塩基性の懸濁液が、上記の量で触媒懸濁液に添加される。
【0066】
バインダーは、TiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、AlO(OH)及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、ZrO
2は、アルミニウムベースのバインダーと混合されない。
【0067】
バインダーは、約3重量%〜90重量%、いくつかの実施形態では20重量%〜80重量%のバインダー、典型的には約40〜60重量%のバインダーを含む酸性、中性又は塩基性のペーストスラリー又は懸濁液として購入又は作製することができる。バインダーの残りは、揮発性希釈剤、通常は水である。活性相へのバインダーの接着を改善するために、バインダー溶液に他の添加剤が存在してもよい。バインダーのペースト、スラリー又は懸濁液は、約0.5〜12のpH、いくつかの実施形態では3〜6のpHを有し得る。バインダーのペースト、スラリー又は懸濁液は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される従来の酸を用いて、酸性化されてもよい。バインダーの塩基性ペースト、スラリー又は懸濁液は、一般的な塩基、好ましくは7.5〜12、いくつかの実施形態では8〜10のpHを有する低級ジC
1−6アルキルアミンなどの揮発性塩基で処理されてもよい。
【0068】
バインダーのスラリーを、触媒のスラリーに添加して、ペースト、スラリー又はスリップ(以下、スリップと呼ぶ)を形成する。このスリップは、触媒とバインダーとの共粉砕なしで調製される。希釈剤は、典型的には乾燥により懸濁液から部分的に分離されるが、ろ過又は真空の適用などの他の手段が適している場合がある。得られるスリップ中の希釈剤(水)の含有量は、一般に30重量%未満、好ましくは25重量%未満、いくつかの実施形態では20重量%未満に減少する。一般的に、混合したブレンドは、大気圧で約90〜100℃の温度で加熱される。上記のように、場合によっては、真空を適用して、対応する温度の低下をもたらし、希釈剤を除去してもよい。部分的に乾燥した混合ブレンドは、通常の操作条件下で押出機を流れることができる十分な流体であることが重要である。
【0069】
混合物又はスリップの流動特性を改善するために、押出の前に、混合物に1つ以上の流動改善剤及び/又は押出助剤を含めることが望ましい場合がある。混合物に含めるのに適した添加剤には、セルロース若しくはその誘導体、脂肪族アミン、四級アンモニウム化合物、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、スルホキソニウム、スルホニウム、ホスホニウム及びヨードニウム化合物、アルキル化芳香族化合物、非環式モノカルボン酸、脂肪酸、スルホン化芳香族化合物、アルコール硫酸塩、エーテルアルコール硫酸塩、硫酸化油脂、ホスホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリアクリルアミド、ポリオール及びアセチレングリコールが含まれる。いくつかの添加剤は、Nalco及びSuperflocの商標で販売されている。
【0070】
押出機内の圧縮圧力を調整して、最大100N(22.5lb)の平均(側面)破砕強度を持つ構造を生成した。
【0071】
得られた製品(スリップ)は、ペースト又は濃いペースト(例:泥)の粘稠性を有する。このペーストは押し出され、カッターを通過して、球、三葉虫棒(trilobite rods)を含む棒、リング、又はサドルなどの形状に成形された生成物に入れられ、その後乾燥される。粒子、典型的には棒状体は、球状化され、最大約5mm、典型的には約2〜3mmの直径を有する球体を生成し得る。
【0072】
<成長凝集(撹拌法)>
押し出された粒子は、流体流動システム内で互いに凝集し得る。これは通常、液体とバインダーの存在下で行われる。粒子サイズの増大は、毛細管力に基づく合体又は凝集(雪だるま式)によって生じる。いくつかの例外的なケースでは、主要な凝集力はファンデルワールス力である。通常、凝集体は直径0.5〜20mmの球状である。典型的な機器のタイプには、ドラム、コーン、パン、パドルミキサー、すきの刃状(plowshare)ミキサーが含まれる。
【0073】
押し出された/凝集した生成物は、約0.5から5mm、典型的には1.3から2.5mm、望ましくは1.35から1.45mmの直径、及び最大8mm、典型的には5mm未満の長さを有してもよい。粒子のアスペクト比は、1(例:球体)から5/1.3までであってもよい。
【0074】
スリップ(slip)が押出機を通過すると、多くの変化が生じる。押出機は、製品中の希釈剤(例えば、水)の含有量を減らすのに役立ち得る。押出機内の圧力に応じて、スリップ内の空隙(interstitial voids)の一部がつぶれる。結果として、押し出され及び乾燥した粒子は、BETで測定して35m
2/g未満、あるいは20m
2/g未満、あるいは3.0m
2/g未満の表面積を有し得る。20重量%を超えるバインダーの高負荷では、いくつかの実施形態において、バインダーの高負荷(例えば、60重量%)で凝集触媒の表面積が増加し、その表面積は約250m
2/gにもなり得る。
【0075】
結果として、凝集し及び乾燥した粒子は、約0.05〜0.50cm
3/gの細孔容積範囲を有し得る。次いで、得られた成形生成物は、約80℃〜約150℃、典型的には120℃未満、いくつかの実施形態では110℃未満の温度で空気中で乾燥される。次いで、乾燥した微粒子触媒は、300℃〜600℃、いくつかの実施形態では350℃〜500℃の温度で焼成される。凝集した触媒は、1時間以上、典型的には最大約4時間の間、焼成される。
【0076】
最終粒子は、ODH反応器内の操作条件に耐えるのに十分な破砕強度を持つ必要がある。破砕強度は、最大100N/mm、いくつかの実施形態では10N/mm(2.25lb)以下の範囲であってもよい(例えば、ロッドの場合)。得られた凝集触媒は、150オングストローム未満の細孔幅サイズを有する4%未満の細孔サイズ分布を有し得る。あるいは、得られた凝集触媒は、0.05から0.50cm
3/gの累積細孔容積を有し得る。
【0077】
<酸化的脱水素化反応>
一般に、酸化的脱水素化(ODH)プロセスには、エタンと酸素の混合フィードを通過させることが含まれ、その温度は420℃未満、場合によっては410℃未満、場合によっては400℃未満、場合によっては390℃未満、場合によっては380℃未満である。本発明の触媒は、複数の温度で使用することができ、0.8から1.2気圧の圧力で1つ以上の固定床を介し、ガス毎時空間速度は、望ましくは1500/時以上、好ましくは少なくとも3000/時である。いくつかの実施形態では、本発明の触媒は、典型的には300℃から450℃の温度、場合によっては330から380℃、いくつかの実施形態では340℃から360℃で、空間速度は500/時から3000/時で、酸化的脱水素反応器を操作することを可能にする。
【0078】
ODH反応器からの出口圧力は、105kPag(15psig)から172.3kPag(25psig)であってもよく、入口圧力は、床全体にわたる圧力降下によってより高くなり、反応器の構成、床中の粒子サイズ及び空間速度を含む多くの要因に依存する。一般に、圧力降下は689kPag(100psig)未満、好ましくは206.7kPag(30psig)未満であってもよい。
【0079】
反応器内の1つ以上のアルカン、典型的にはC
2−4アルカンの滞留時間は、0.002から20秒である。
【0080】
酸化的脱水素化反応器への供給物には、爆発/燃焼の上限を超える量の酸素が含まれている。例えば、エタンの酸化的脱水素化の場合、供給流中に本質的に酸素とエタンとを含み、典型的には、酸素は、約16モル%以上、好ましくは約18モル%以上、例えば約22〜27モル%、又は23〜26モル%の量で存在するであろう。酸素が過剰になりすぎないことが望ましく、これは、供給物又は最終生成物の燃焼から生じる選択率を低下させる可能性があるためである。さらに、供給流中の酸素が多くすぎると、反応の下流端で追加の分離ステップが必要になる場合がある。状況によっては、窒素、アルゴン、ヘリウム、CO
2、CO、蒸気などの反応性の低い供給ガスで供給流を希釈する場合がある。
【0081】
いくつかの実施形態では、アルカンの割合は最大40モル%であってもよい。ODHの前のガス混合物が25モル%の酸素と40モル%のアルカンとを含む場合、残りは窒素、二酸化炭素、又は蒸気などの不活性希釈剤で補う必要がある。不活性希釈剤は、反応器内の条件で気体状態で存在する必要があり、反応器に添加される炭化水素の可燃性を高めるべきではなく、その特徴は、どの不活性希釈剤を使用するかを決定するときに、当業者が理解するであろう。
【0082】
目標は、ODH反応器から出る未反応アルカンと酸素を最小限に抑え、且つ一酸化炭素又は二酸化炭素の生成を最小限に抑えた、アルカンの100%転化率の達成である。本発明の一実施形態では、ODH反応器を出る生成物流は、5%未満、好ましくは2.5%未満、最も好ましくは1%未満の未反応低級アルカンを含有する。本発明の別の実施形態では、ODH反応器を出る生成物流は、2%未満の酸素、好ましくは1.5%未満の酸素、最も好ましくは1%未満の酸素を含有する。
【0083】
酸化的脱水素化プロセスにおける本発明のさらなる実施形態では、押出触媒中のバインダーの量は5〜50重量%の範囲内で増加し、触媒床を通過するガス流速度は比例量だけ増加し(例えば、バインダーは10%増加し、ガス流速度は最大10%増加する)、その一方で、床温度を420℃未満、好ましくは395℃未満、好ましくは285℃未満に維持し、選択率を±3%以内に維持する。
【0084】
これにより、生産性の向上と同様に反応の経済性が向上する。
【0085】
ここで、本発明を以下の非限定的な例により説明する。
【実施例】
【0086】
[例1]
上記の従来の水熱プロセスを用いて、ベース触媒を調製した。焼成した触媒は、実験式:
Mo
1.0V
0.25−0.45Te
0.10−0.16Nb
0.15−0.19O
d
(式中、dは酸化物の原子価を満たす数である)
を有していた。
【0087】
触媒を水に分散させ、塩基性、酸性、中性の様々なバインダーと混合した。それらの組成を以下の表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
溶液の元素重量パーセント組成に基づくバインダーの量(重量%)を、表に示す。得られたスラリーを上記のように押し出し又は球形化し、90〜100℃で乾燥し、空気中で350〜500℃で再焼成した。凝集した粒子を、実験室規模の脱水素化反応器で試験した。約1:1のモル比のエタンと酸素を、出発原料と同じ流速で固定床に通した。25%転化率が生じた温度と、その転化での選択率を記録した。その結果を、表1、2及び3に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
この結果は、次の結論を裏付けている。
1. SiO
2は、エチレンの酸化的脱水素化のための触媒の拮抗剤である(試料8、10、及び11)。エタンからエチレンへの25%転化率がある温度は、上がる。
2. 触媒に酸のみを添加しても、効果はほとんどない(試料1及び3)。
3. 酸性又は塩基性のバインダーとして4〜8重量%のTiO
2を使用すると、25%転化率が達成される温度が、約10℃低下する(試料1、4、5、及び6)。
4. バインダーとして40重量%の酸性TiO
2を使用すると、25%転化率が生じる温度が、約16℃低下する(試料1及び9)。
5. 8重量%のZrO
2のバインダーを使用すると、25%転化率が生じる温度が、約6℃低下する(試料1及び12)。
6. 8重量%のAl
2O
3のバインダーを使用すると、25%転化率が生じる温度が、約6℃低下する(試料1及び8)。
7. 60重量%のAlO(OH)を使用すると、25%転化率が生じる温度が、約20℃低下する(試料14〜16及び18)。
8. 70重量%のAlO(OH)を使用すると、25%転化率が生じる温度が、約15℃低下する(試料20及び21)。
9. 凝集した触媒混合物を形成するために60重量%のAlO(OH)を含む触媒を350℃で焼成すると、凝集した触媒混合物を形成するために500℃で焼成する(試料22及び23)よりも、選択率が6%高い
【0094】
[例2]
試料3、及び試料10を、実験室規模の脱水素化反応器で、異なる条件下で再試験した。毎分標準立方センチメートル(SCCM)での供給流量を、ベースとなるケース(バインダーなし)で使用されるバインダーの割合に比例して増加した。換言すると、凝集粒子全体(バインダーと活性相)を触媒として試験した。
【0095】
【表5】
【0096】
実施例は、バインダーの量を増加させ、それに対応してガス供給速度を増加させることにより、反応温度は上昇するがそれでも380℃未満であり、選択性が維持又は増加することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0097】
凝集した酸化的脱水触媒は、触媒床での使用に適した良好な活性と機械的特性を有している。