特許第6960052号(P6960052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960052
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ゴム製品の調製のための配合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20211025BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20211025BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K3/06
   C08K3/04
   C08K3/16
   B60C1/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-523409(P2020-523409)
(86)(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公表番号】特表2021-500456(P2021-500456A)
(43)【公表日】2021年1月7日
(86)【国際出願番号】IB2018058282
(87)【国際公開番号】WO2019082086
(87)【国際公開日】20190502
【審査請求日】2020年5月7日
(31)【優先権主張番号】102017000122778
(32)【優先日】2017年10月27日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ストラッフィ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンカルロ コッス
(72)【発明者】
【氏名】マリア セシリア パランビ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト コンパレリ
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−060452(JP,A)
【文献】 特開昭62−246948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00−21/02
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性不飽和鎖ポリマーベース、補強性充填剤および加硫系を含む、ゴム製品の調製用配合物であって、前記加硫系は、少なくとも硫黄、1つ以上の加硫促進剤および加硫活性剤を含み;前記配合物は、前記加硫活性剤が、フッ化グラファイトのみであり;前記フッ化グラファイトが、0.5〜20phrの量で前記配合物中に存在し、前記配合物が、ステアリン酸も酸化亜鉛も含まないことを特徴とする、ゴム製品の調製用配合物。
【請求項2】
請求項に記載の配合物を用いて製造された、空気入りタイヤ部分。
【請求項3】
請求項に記載の部分を含む、空気入りタイヤ。
【請求項4】
架橋性不飽和鎖ポリマーベース、補強性充填剤および加硫系を含む、ゴム製品の調製用の配合物における唯一の加硫活性剤としてのハロゲン化グラファイトの使用であって、
前記ハロゲン化グラファイトが、フッ化グラファイトであり、
前記ハロゲン化グラファイトが、0.5〜20phrの量で前記配合物中に存在し、
前記配合物が、ステアリン酸も酸化亜鉛も含まない、使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品の製造のためのゴム配合物に関する。
【0002】
本発明は、空気入りタイヤの調製において特に有利な用途を見出すものであり、そのため、この説明では、一般性を失うことなく明示的に言及する。
【背景技術】
【0003】
最近、ゴム配合物の分野での研究のトピックの1つは、加硫活性剤としての酸化亜鉛(ZnO)の可能な代替に集中している。
【0004】
それらの環境への影響の可能性のため、完全に排除されないまでも、ZnOの使用を制限する必要がある。明らかに、ZnOの過度の制限は、一方で環境特性の要求に対応する場合、他方では、得られる配合物の機械的特性の点でマイナスの結果を伴い、配合物の効果的な加硫を損なうかもしれない。
【発明の概要】
【0005】
したがって、ゴム配合物におけるZnOの使用の代替を提供するニーズがあり、これは、環境特性の要求を尊重することができ、この理由により、得られる配合物の加硫を変更せず、その結果、その機械的特性を損なうことはない。
【0006】
出願人は、特定のクラスの官能化グラファイトが、配合物中の加硫活性剤としてのZnOの存在を完全に置き換えることができ、同時に、得られる配合物の機械的特性を変化させずに維持できることを予期せずに発見した。
【0007】
本発明の目的は、架橋性不飽和鎖ポリマーベース、補強性充填剤および加硫系を含む、ゴム製品の調製用配合物であって、前記加硫系は、少なくとも硫黄、1つ以上の加硫促進剤および加硫活性剤を含み;前記配合物は、前記加硫活性剤が、ハロゲン化グラファイトのみであり;前記配合物が、ステアリン酸も酸化亜鉛も含まないことを特徴とする、ゴム製品の調製用配合物である。
【0008】
以降、ハロゲン化グラファイトは、炭素原子が共有結合によってハロゲン原子と結合しているグラファイトを指す。
【0009】
以降、用語「架橋性不飽和鎖ポリマーベース」は、硫黄ベースの系を用いた架橋(加硫)後にエラストマーによって通常想定されるすべての化学的物理的および機械的特性を想定し得る、天然または合成の非架橋ポリマーを指す。
【0010】
好ましくは、前記ハロゲン化グラファイトは、フッ化グラファイトである。
【0011】
好ましくは、前記ハロゲン化グラファイトは、0.1〜100phr、より好ましくは0.5〜20phrの量で配合物中に存在する。
【0012】
本発明のさらなる目的は、本発明の目的である、配合物を用いて製造された空気入りタイヤ部分である。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、本発明の目的である、配合物を用いて製造された部分を含む空気入りタイヤである。
【0014】
本発明のなおさらなる目的は、ゴム製品の調製用の配合物における唯一の加硫活性剤としてのハロゲン化グラファイトの使用である。
【0015】
本発明をよりよく理解するために、以下の例は、例示的かつ非限定的な目的で含まれる。
【実施例】
【0016】
ハロゲン化グラファイトの加硫活性剤としての機能をテストするために、2セットの配合物を調製した。第1のセットの配合物(配合物A〜D)は、補強性充填剤としてカーボンブラックを含み、一方、第2のセットの配合物(配合物E〜H)は、補強性充填剤としてシリカを含む。
【0017】
2つのセットのそれぞれは、加硫活性剤を使用しない第1の比較配合物(配合物Aおよび配合物E)と、酸化亜鉛を加硫活性剤として使用する第2の比較配合物(配合物Bおよび配合物F)と、加硫活性剤としてそれぞれ2つの異なる量のハロゲン化グラファイトの一例を使用した本発明による2つの配合物(配合物C、配合物Dおよび配合物G、配合物H)とを含む。
【0018】
その例の配合物は、以下の手順に従って得た:
−配合物の調製−
【0019】
(第1の混合ステップ)
混合を開始する前に、接線ローターと230〜270リットルの内容積を備えるミキサーに、架橋性ポリマーベースとカーボンブラックまたは後者の代わりにシリカとシラン結合剤を充填し、それによって66〜72%の充填率とした。
【0020】
そのミキサーを40〜60回転/分の速度で動作させ、140〜160℃の温度に達したところで、形成した混合物を排出した。
【0021】
(第2の混合ステップ)
前のステップから得られた混合物を、40〜60回転/分の速度で動作するミキサーで再加工し、その後、130〜150℃の温度に達したところで排出した。
【0022】
(最終混合ステップ)
前のステップから得られた混合物に硫黄、加硫促進剤を加え、ある場合は、ハロゲン化グラファイト、またはステアリン酸と組み合わせたZnOのいずれかを添加し、63〜67%の充填率とした。
【0023】
上記に反して、酸化亜鉛の場合のように、ハロゲン化グラファイトは、第1または第2の混合ステップ中に添加することができる。
【0024】
ミキサーを20〜40回転/分の速度で動作させ、100〜110℃の温度に達したところで、形成した混合物を排出した。
【0025】
表IおよびIIは、上記の8つの配合物の組成をphrで示している。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
使用したポリマーベースは、ポリイソプレンである。
【0029】
使用したカーボンブラックは、N330に分類される。
【0030】
使用したシリカは、EVONIK社からUltrasil VN3 GRという名称で販売されており、表面積は約180m/gである。
【0031】
使用したシラン結合剤は、ポリスルフィドオルガノシランのクラスに属し、EVONIK社からSI75の名称で販売されている。
【0032】
使用したハロゲン化グラファイトは、SIGMA ALDRICH社が販売しているフッ化グラファイト(CAS番号:51311−17−2、コード番号372455)である。
【0033】
TBBSは、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド化合物の略語であり、加硫促進剤として使用される。
【0034】
それらの架橋、レオメトリー、機械的および動的機械的特性を評価するために、それぞれのサンプルを表IおよびIIの配合物から調製し、一連の試験にかけた。
【0035】
特に、架橋特性は、Xリンク密度測定によって測定した(Flory,Paul;Rehner,John J.Chem.Phys.11:521〜526(1943));レオメトリー特性は、ISO 6502規格に従って測定した;機械的特性はISO 37規格に従って測定した;動的機械的特性は、ISO 4664規格に従って測定した。
【0036】
試験から得られた値を表IIIおよびIVに示す。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表IIIおよびIVの値は、加硫活性剤としてのハロゲン化グラファイトの驚くべき活性を示している。実際、上に示した特性に関する結果は、ハロゲン化グラファイト(配合物C、D、G、H)の存在が、加硫活性剤がないもの(配合物AおよびE)とは異なり、酸化亜鉛(配合物BおよびF)のそれに匹敵し、配合物の適切な加硫を促進することを示している。
【0040】
特に、2つのセットの配合物(補強性充填剤としてのカーボンブラックまたはシリカの代替使用)は、加硫活性剤として機能するハロゲン化グラファイトの有効性が、使用する補強性充填剤のタイプによらないことを示している。
【0041】
結論として、本発明は、ゴム配合物における酸化亜鉛のハロゲン化グラファイトでの置換によって、ゴム配合物における酸化亜鉛の使用を排除することを可能にし、このため、同じ配合物の加硫およびその結果としてのその機械的特性について決して妥協することがない。