特許第6960060号(P6960060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960060
(24)【登録日】2021年10月12日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】イオン源の動的温度制御
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/02 20060101AFI20211025BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01J27/02
   H01J37/08
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-532975(P2020-532975)
(86)(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公表番号】特表2021-507462(P2021-507462A)
(43)【公表日】2021年2月22日
(86)【国際出願番号】US2018057321
(87)【国際公開番号】WO2019125599
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2020年7月29日
(31)【優先権主張番号】15/847,485
(32)【優先日】2017年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】アレクザンダー エス ペレル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ピー スポーリーダー
(72)【発明者】
【氏名】アダム エム マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ アール チェニー
(72)【発明者】
【氏名】ニイル ジェイ バッソン
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537951(JP,A)
【文献】 特開平09−063496(JP,A)
【文献】 実開平01−103248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J27/00−27/26
37/04
37/06−37/08
37/248
37/30−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェースプレート温度が動的に調節可能なイオン源であって、
複数のチャンバ壁と、
圧縮力を使用して前記チャンバ壁に当接配置されるフェースプレートと、及び
前記フェースプレートを前記チャンバ壁に固定する1つ又はそれ以上の緊締具であり、前記緊締具によって印加される圧縮力が電子的に変化され得る、該緊締具と、
を備える、イオン源。
【請求項2】
請求項1記載のイオン源において、前記緊締具は、緊締デバイス及び力調節器を有し、前記力調節器は、ばねと、負荷の下にある前記ばねの長さを調節する電子的長さ調節器とを有する、イオン源。
【請求項3】
請求項2記載のイオン源において、前記電子的長さ調節器は、圧電アクチュエータを有する、イオン源。
【請求項4】
請求項2記載のイオン源において、前記電子的長さ調節器は、ソレノイドを有する、イオン源。
【請求項5】
請求項2記載のイオン源において、前記電子的長さ調節器は、サーボモータ及びアームを有し、前記アームの基端部は前記サーボモータの回転部分に取り付ける、イオン源。
【請求項6】
請求項2記載のイオン源において、前記電子的長さ調節器は、空気シリンダを有する、イオン源。
【請求項7】
請求項2記載のイオン源において、前記電子的長さ調節器は、サーボモータ及びボールねじを有する、イオン源。
【請求項8】
請求項1記載のイオン源において、前記緊締具は、緊締デバイス及び力調節器を有し、前記力調節器は、巻回可能コイルばね、圧電アクチュエータ、ソレノイド、空気シリンダ、サーボモータ及びボールねじ、並びにサーボモータ及びアームの基端部をサーボモータの回転部分に取り付けた該アーム、よりなるグループから選択される、イオン源。
【請求項9】
フェースプレート温度が動的に調節可能なイオン源を有する装置であって、前記イオン源は、
複数のチャンバ壁、
前記チャンバ壁に当接配置されるフェースプレート、及び
前記フェースプレートを前記チャンバ壁に固定する1つ又はそれ以上の緊締具
を有するものである、該イオン源と、並びに
前記緊締具によって前記フェースプレートに印加される圧縮力を調節するよう前記緊締具と通信するコントローラと
を備える、装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、前記緊締具は、ばねと、負荷の下にある前記ばねの長さを調節するよう前記コントローラと通信する電子的長さ調節器とを有する、装置。
【請求項11】
請求項9記載の装置において、前記コントローラは、前記イオン源内に導入される供給ガスの種に基づいて圧縮力を調節する、装置。
【請求項12】
請求項9記載の装置において、前記コントローラは入力デバイスを有し、前記コントローラは、前記入力デバイスから受け取る入力に基づいて圧縮力を調節する、装置。
【請求項13】
フェースプレート温度が動的に調節可能なイオン源であって、
複数のチャンバ壁と、及び
前記チャンバ壁に当接配置されるフェースプレートと、
を備え、
前記フェースプレートの温度は、前記フェースプレートとチャンバ壁との間における熱伝導率を変化させることによって電子的に調節可能である、イオン源。
【請求項14】
請求項13記載のイオン源において、さらに、前記フェースプレートとチャンバ壁との間における圧縮力を変更することによって前記熱伝導率を変化させるコントローラを備える、イオン源。
【請求項15】
請求項14記載のイオン源において、前記フェースプレートは、ばね及び電子的長さ調節器によって前記チャンバ壁に保持され、前記電子的長さ調節器は負荷の下にある前記ばねの長さを調節し、また前記コントローラは前記電子的長さ調節器を使用して前記圧縮力を変更する、イオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、イオン源、及びより具体的にはイオン源のフェースプレートの温度を動的に変化させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの作製は複数の個別で複雑な処理を伴う。このようなプロセスはイオン源から抽出することができるイオンビームを利用することができる。イオン源において、イオンを形成するため供給ガスが活性化される。これらイオンは、次にフェースプレートに配置される抽出開孔経由でイオン源から抽出される。これらイオンは、電極、加速及び減速段、及び質量分析器を含む様々なコンポーネントにより下流で操作される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
供給ガスからのイオンはイオン源から抽出されるとき、これらイオンの幾分かはフェースプレート上に溜まることがあり得る。さらに、中性ガスもフェースプレートに溜まり得る。これらイオン及び中性物質は濃縮し、堆積を形成することがあり得る。若干の実施形態において、この堆積は抽出開孔に沿って生ずる。これら実施形態において、抽出開孔から抽出されるイオンビームの均一性は損なわれることがあり得る。他の実施形態において、この堆積はフェースプレートの前面に生し、アーク発生を増加する結果となり得る。
【0004】
フェースプレート及び供給ガス種の温度は、フェースプレート上における堆積の量及び堆積速度を決定する要因となり得る。例えば、BF及びGeFのようなフッ素をベースとする種に関しては、堆積は表面が熱くなるほど促進され得る。逆に、一酸化炭素ガスに関しては、堆積は表面が熱くなるほど減少し得る。
【0005】
したがって、フェースプレートの温度を動的に変化させるシステム及び方法がある場合、有用である。さらに、動的な変化が利用された供給ガスの種に基づいて実施されるならば有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
イオン源のフェースプレートの温度を変化させるためのシステム及び方法を開示する。フェースプレートは複数の緊締具によってイオン源のチャンバ壁に保持する。これら緊締具としては、引張ばね又は圧縮ばねがあり得る。負荷の下での引張又は圧縮ばねの長さを変化させることによって、ばねのばね力を増加させることができる。この増加したばね力は、フェースプレートとチャンバ壁との間の圧縮力を増加させ、向上した熱伝導率をもたらす。若干の実施形態において、ばね長さは、電子的長さ調節器によって調節される。この電子的長さ調節器は、ばねの所望長さを示す電気信号を出力するコントローラと通信する。ばねの長さを調節する種々の機構を開示する。
【0007】
一実施態様によれば、イオン源を開示する。このイオン源は、複数のチャンバ壁と、圧縮力を使用して前記チャンバ壁に当接配置されるフェースプレートと、及び前記フェースプレートを前記チャンバ壁に固定する1つ又はそれ以上の緊締具であり、前記緊締具によって印加される圧縮力が電子的に変化され得る、該緊締具と、を備える。若干の実施形態において、前記イオン源は間接的に加熱されるカソードを有する。若干の実施形態において、前記緊締具は、緊締デバイス及び力調節器を有する。若干の実施形態において、前記力調節器は、ばねと、負荷の下にある前記ばねの長さを調節する電子的長さ調節器とを有する。前記電子的長さ調節器は、圧電アクチュエータ、ソレノイド、空気シリンダ、サーボモータ及びボールねじ、並びにサーボモータ及びアームの基端部をサーボモータの回転部分に取り付けた該アームとすることができる。前記ばねは引張ばね又は圧縮ばねとすることができる。
【0008】
他の実施態様によれば、装置を開示する。この装置は、イオン源であって、複数のチャンバ壁、前記チャンバ壁に当接配置されるフェースプレート、及び前記フェースプレートを前記チャンバ壁に固定する1つ又はそれ以上の緊締具を有する、該イオン源と、並びに前記緊締具によって前記フェースプレートに印加される圧縮力を調節するよう前記緊締具と通信するコントローラとを備える。若干の実施形態において、前記緊締具は、ばねと、負荷の下にある前記ばねの長さを調節するよう前記コントローラと通信する電子的長さ調節器とを有する。若干の実施形態において、前記コントローラは、前記イオン源内に導入される供給ガスの種に基づいて圧縮力を調節する。若干の実施形態において、前記コントローラは入力デバイスを有し、前記コントローラは、前記入力デバイスから受け取る入力に基づいて圧縮力を調節する。
【0009】
他の実施態様によれば、イオン源を開示する。このイオン源は、複数のチャンバ壁と、及び前記チャンバ壁に当接配置されるフェースプレートと、を備え、前記フェースプレートの温度は、前記フェースプレートとチャンバ壁との間における熱伝導率を変化させることによって電子的に調節可能である。若干の実施形態において、イオン源は、さらに、前記フェースプレートとチャンバ壁との間における圧縮力を変更することによって前記熱伝導率を変化させるコントローラを備える。若干の実施形態において、前記フェースプレートは、ばね及び電子的長さ調節器によって前記チャンバ壁に保持され、前記電子的長さ調節器は負荷の下にある前記ばねの長さを調節し、また前記コントローラは前記電子的長さ調節器を使用して前記圧縮力を変更する。幾つかの実施形態において、前記圧縮力は前記イオン源内に導入される供給ガスの種に基づいて選択される。
【0010】
本開示をよりよく理解するため、参照により本明細書に組み入れられる以下の添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるイオン源の図である。
図2図1のイオン源内部の図である。
図3】一実施形態による力調節器である。
図4】第2実施形態による力調節器である。
図5】第3実施形態による力調節器である。
図6】第4実施形態による力調節器である。
図7】第5実施形態による力調節器である。
図8】第6実施形態による力調節器である。
図9】圧縮ばねを採用する図4の実施形態を示す。
図10】一実施形態によるコントローラの動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したように堆積はイオン源のフェースプレート上で生じ得る。この堆積は、イオン源の寿命を短くする、イオンビームの均一性に影響を及ぼす、故障率を増加させる、又はその他にイオン源に対して悪影響を与えることがあり得る。
【0013】
イオン源のフェースプレート温度を動的に変化させることによって、堆積の量及び速度に影響を与えることができる。図1は、一実施形態によるフェースプレートの温度を変化させるイオン源を示す。イオン源10は、イオン源チャンバを画定する複数のチャンバ壁11を備える。抽出開孔41を有するフェースプレート40はチャンバ壁11に配置することができる。フェースプレート40は、単一コンポーネントとすることができる、又は複数コンポーネントからなるものとすることができる。例えば、一実施形態において、フェースプレート40は、外側フェースプレートの下側に配置し、また抽出開孔41を画定するのに役立つフェースプレートインサートを有する。したがって、本開示で使用する用語「フェースプレート」は、イオンが取り出される抽出開孔を有する構体を作成する任意なコンポーネントを意味する。イオン源チャンバ内はイオンを生成するメカニズムとすることができる。例えば、一実施形態において、間接的に加熱されるカソード(IHC)をイオン源チャンバ内に配置することができる。
【0014】
図2は一実施形態による電子機器及びイオン源10の内部を示す。この実施形態において、イオン源10は、互いに対向する2つの端部及びこれら端部を連結するチャンバ壁11からなるチャンバ200を有する。チャンバ200は、さらに、底壁及びフェースプレート40を有する。チャンバ壁11は、導電性かつ熱伝導性の材料で構成し、また互いに電気的に導通状態にすることができる。カソード210は、チャンバ200の第1端部でチャンバ200内に配置する。フィラメント260をカソード210の背後に配置する。このフィラメント260はフィラメント電源265に導通させる。このフィラメント電源265は、フィラメント260が熱イオン電子を放出するよう、フィラメント260に電流を導通させる構成とする。カソードバイアス電源215は、カソード210に対してフィラメント260が負性になるようバイアス印加し、これによりこれら熱イオン電子がカソード210に向かって加速され、またカソード210の後面に衝突するときカソード210を加熱する。カソードバイアス電源215はフィラメント260をバイアス印加して、カソード210の電圧よりも負性で、例えば、200V〜1500Vとの間における電圧を有するようにすることができる。カソード210は、このときカソード前面で熱イオン電子をチャンバ200内に放出する。
【0015】
このように、フィラメント電源265はフィラメント260に電流を供給する。カソードバイアス電源215はフィラメント260をバイアス印加し、カソード210よりも負性を大きくし、電子をフィラメント260からカソード210に向けて引き寄せるようにする。さらに、カソード電源270を使用してカソード210をチャンバ200に対して電気的にバイアス印加する。
【0016】
この実施形態において、リペラー(反発器)220をカソード210側とは反対側におけるチャンバ200の第2端部でチャンバ200内に配置する。リペラーはリペラー電源225を導通状態にすることができる。その名前が示唆するように、リペラー220は、カソード210から放出された電子をチャンバ200の中心に向けて戻すよう反発させる作用をする。例えば、リペラー220はチャンバ200に対して負の電圧でバイアス印加して電子を反発させることができる。例えば、リペラー電源225は、0〜−150Vの範囲内における出力を有することができるが、他の電圧を使用することができる。若干の実施形態において、リペラー220は、チャンバ200に対して0〜−150Vの範囲内でバイアス印加される。他の実施形態において、カソード電源270を使用して同様にリペラー220に電圧を供給する。他の実施形態において、リペラー220は接地する又は浮遊状態にすることができる。
【0017】
動作にあたり、ガスをチャンバ200に供給する。カソード210から放出される熱イオン電子はガスに対してプラズマ250を形成するよう作用させる。このプラズマ250からのイオンは、この後フェースプレート40における抽出開孔41から抽出させる。次にイオンを操作してワークピースに向かうイオンビームを形成する。
【0018】
イオンを発生するための他のメカニズムを使用することができる点に留意されたい。これら他のメカニズムとしては、限定しないが、バーナス(Bernas)イオン源、RFアンテナ、及び容量結合源がある。
【0019】
図1に戻って説明すると、イオン源10はベースプレート30に取り付ける。若干の実施形態において、ベースプレート30は温度制御することができる。例えば、ベースプレート30は、ヒートシンクに取り付ける、又はそれ自体をヒートシンクとすることができる。このようにして、チャンバ壁11はベースプレート30に直接温度接触させる。このことは、チャンバ壁11を冷却するよう作用することができる。
【0020】
フェースプレート40は、複数の緊締具50を介してチャンバ壁11の頂部に配置する。これら緊締具各々は、フェースプレート40の頂部に固着されるフックのような緊締デバイス51、並びに緊締デバイス51及びベースプレート30に取り付けられる力調節器52を有する。他の実施形態において、力調節器52は、緊締デバイス51及びチャンバ壁11のような他の静止表面に取り付けることができる。緊締具50は、フェースプレート40をチャンバ壁11に固定するよう作用する。
【0021】
力調節器52はコントローラ70と通信することができる。コントローラ70は、処理ユニット71及び関連するメモリデバイス72を有する。このメモリデバイス72は、処理ユニット71が実行する命令を格納し、コントローラ70が本明細書記載の機能を実施できるようにする。このメモリデバイス72は、フラッシュROM、電気的に消去可能なROM又は他の適当なデバイスのような不揮発性メモリとすることができる。他の実施形態において、メモリデバイス72は、RAM又はDRAMのような揮発性メモリとすることができる。処理ユニット71は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、マイクロコントローラ又は他のタイプの電気回路とすることができる。コントローラ70は、以下に詳細に説明するように、1つ又はそれ以上の電気信号を力調節器52に出力することができる。コントローラ70は、ユーザー・インタフェース又は他の入力デバイス73と通信することができる。コントローラ70は、以下に説明するように、入力デバイス73からの入力を受け取ることができる。
【0022】
力調節器52を使用して、フェースプレート40とチャンバ壁11の頂部との間における圧縮力を変化させる。若干の実施形態において、力調節器52は、引張ばねを使用して緊締デバイス51によってフェースプレート40に加わる力を変化させることができる。引張ばねが伸張するとき、そのばね力は長さを線形的に増加する。したがって、引張ばねを伸張させることによって、フェースプレート40に対して緊締デバイス51が加える下向き力を変化させることができる。他の実施形態においては、引張ばねをしないものとすることができる。
【0023】
すべての実施形態において、システムは、複数のチャンバ壁11及びチャンバ壁11の頂部に配置したフェースプレート40を有するイオン源10を備える。複数の緊締具50は、フェースプレート40をチャンバ壁11に保持するのに使用される。緊締具50は、一方の端部でフェースプレート40に取り付け、また反対側の端部でベースプレート30又は他の静止物体に取り付けことができる。緊締具50は、フェースプレート40に加わる圧縮力を動的に変化させることができる。幾つかの実施形態において、コントローラ70は緊締具50と通信して緊締具50によって加わる圧縮力を制御する。
【0024】
上述したように、若干の実施形態において、コントローラ70は、タッチスクリーン、キーボード又はマウスのような入力デバイス73と通信する。若干の実施形態において、入力デバイス73は他のコントローラに対するインタフェースとすることができる。この実施形態において、ユーザー又はオペレーターは、入力デバイス73を使用して所望圧縮力を選択することができる。入力に基づいて、コントローラ70は、1つ又はそれ以上の電気信号を力調節器52に出力して、フェースプレート40に加わる圧縮力を変化させることができる。
【0025】
例えば、若干の実施形態において、供給ガスがフッ素含有種であるとき、フェースプレート40はより低い温度を有するのが望ましい場合があり得る。チャンバ壁11はベースプレート30に取り付けられているため、チャンバ壁11は、フェースプレート40よりも低い温度になり得る。フェースプレート40に加わる圧縮力を増加することによって、フェースプレート40とチャンバ壁11との間の熱接触を改善することができる。この熱接触の改善は、他の実施形態において、フェースプレート40の温度を増加させるのが有利な場合があり得る。フェースプレート40に加わる圧縮力を減少することによって、熱伝導率を減少し、フェースプレート40の温度を増加させる。
【0026】
電気的制御力調節器52を使用することによって、フェースプレート40に対するこれら温度変化は、任意なコンポーネントに対する真空又は物理的操作を中断することなく動的に行うことができる。
【0027】
若干の実施形態において、最小の容認可能な圧縮力であるようにすることができる。この最小容認可能圧縮力は、誤整列のリスクなしにフェースプレート40を所定位置に保持するのに必要な最小の力であり得る。同様に、最大容認可能圧縮力があり得る。例えば、この最大容認可能圧縮力より大きい力は、フェースプレート40とチャンバ壁11との間における熱伝導率を改善することはない。
【0028】
したがって、若干の実施形態において、電気的制御力調節器52は、最小容認可能圧縮力と最大容認可能圧縮力との間における力を得ることができる。幾つかの実施形態において、電気的制御力調節器52はこれら2つの限界値間の複数の圧縮力を印加することができる。
【0029】
図3〜7は引張ばねを利用する力調節器の実施形態を示す。引張ばねは、負荷下にある引張ばねの長さを変化させ、したがってばね力を変化させる電子的長さ調節器と関連して使用する。
【0030】
図3は、電子的長さ調節器300が1つ又はそれ以上の圧電アクチュエータ310を有する第1実施形態を示す。電子的長さ調節器300は、一方の端部で引張ばね330に取り付ける。反対側の端部はベースプレート30又は他の静止物に取り付ける。この実施形態において、コントローラ70は、圧電アクチュエータ310における電極320に1つ又はそれ以上の電圧を印加する。これら電圧は、圧電アクチュエータ310の長さを変化させる電場を生ずる。圧電アクチュエータの長さ変化は、電極320に印加される電圧に関連する。電子的長さ調節器300は、電極320に印加される最低電圧が最大容認可能圧縮力を生ずるよう構成することができる。より高い電圧は圧電アクチュエータ310の長さを伸張させ、圧縮力を減少させる。多数の圧電アクチュエータ310を直列接続し、この実施形態における電子的長さ調節器300によって得ることができる長さ最大変化を増加させる。長さ変化は印加電圧に関連するため、この実施形態における電子的長さ調節器300は、或る範囲にわたるばね力を生ずることができる。
【0031】
図4は、電子的長さ調節器400が空気シリンダ410を有する第2実施形態を示す。空気シリンダ410は、ベースプレート30又は他の静止物に取り付けることができる。空気シリンダ410におけるピストン411は引張ばね430に取り付けることができる。コントローラ70は、空気シリンダ410とガス容器420との間に配置されるバルブ415と通信することができる。バルブ415が開くとき、ガス容器420からの圧縮ガスは、空気シリンダ410内の容積部に流入する。この圧縮ガスは空気シリンダ410内のピストン411を引張ばね430から離れる方向に押圧し、引張ばね430の長さを増加させる。圧縮ガスが容積部から排除されるとき、ピストン411がベースプレート30から離れる方向に押圧し、引張ばね430の長さを減少させる。バルブ415はコントローラ70によって制御することができる。図4は単動シリンダとしての空気シリンダ410を示しているが、若干の実施形態において複動シリンダを使用できると理解されたい。ピストン411の位置は容積部内圧縮ガス量に関連するため、この実施形態における電子的長さ調節器400は、或る範囲にわたるばね力を生ずることができる。
【0032】
図5は、電子的長さ調節器500がソレノイド510を有する第3実施形態を示す。ソレノイドの一方の端部はベースプレート30又は他の静止物に取り付けることができる。ソレノイド510の他方の端部は、引張ばね430に取り付けることができる。コントローラ70は電気信号をソレノイド510に供給することができる。一方の状態において、ソレノイド510は膨張状態に移動し、引張ばね530の長さを減少する。このことは、ばね力を低下させ、これによりフェースプレート40に対する圧縮力を低下させる。第2状態においてソレノイド510は収縮状態に移動し、引張ばね530の長さを増加する。このことは、ばね力、及びしたがってフェースプレート40に加わる圧縮力を増加させる。ソレノイドは正確に2つの状態を有するため、この実施形態においては、電子的長さ調節器500は2つの異なる長さを達成することができる。
【0033】
図6は、電子的長さ調節器600がサーボモータ610を有する第4実施形態を示す。サーボモータ610の回転力は回転アーム611の基端部と連動することができる。サーボモータ610は、ベースプレート30又は他の静止物に備え付けることができる。回転アーム611の末端部は引張ばね630に取り付けることができる。コントローラ70はサーボモータ610と通信することができ、回転軸線の周りに回転させる。このことは、次にアーム611を回転させる。回転アーム611の末端部がベースプレート30から最も遠い位置にあるとき、引張ばね630の長さは最小化され、またこの結果として、フェースプレート40の圧縮力が減少する。回転アーム611が回転するときに、末端部がベースプレート30に近づき、このことは、引張ばね630の長さを増加する。長さ変化は回転アーム611の回転角度に関連するため、この実施形態における電子的長さ調節器600は或る範囲にわたるばね力をもたらすことができる。
【0034】
図7は、電子的長さ調節器700がサーボモータ710、ボールねじ715、及びボールねじナットブラケット720を有する第5実施形態を示す。サーボモータ710はコントローラ70と通信することができる。サーボモータ710は、垂直向きにすることができるボールねじ715を回転する。ボールねじナットブラケット720は、ボールねじ715に備え付け、ボールねじ715の回転に基づいて垂直方向に移動する。ボールねじ715は、チャンバ壁11のような壁によって支持することができる。引張ばね730は、ボールねじナットブラケット720に取り付けることができる。このようにして、ボールねじナットブラケット720が垂直下向きに移動するとき、引張ばね730の長さは増加してばね力を増加させる。逆に、ボールねじナットブラケット720が上向きに移動するとき、引張ばね730の長さは減少してばね力を減少させる。長さ変化はボールねじ715の回転に関連するため、この実施形態においては、電子的長さ調節器700は或る範囲にわたるばね力をもたらすことができる。
【0035】
図8は、力調節器が引張ばねを採用しない他の実施形態を示す。この実施形態において、力調節器800は巻回可能コイルばね810を有する。巻回可能コイルばね810の内側端部は、コントローラ70によって回転することができるロッド811に取り付ける。巻回可能コイルばね810の外側端部は緊締デバイス51に取り付けることができる。巻回可能コイルばね810をより強く巻回するとき、巻回可能コイルばね810の張力は増加し、フェースプレート40に対する圧縮力を増加する。巻回可能コイルばね810の巻回を緩めるとき張力は減少し、フェースプレート40に対する圧縮力を減少する。若干の実施形態において、巻回可能コイルばね810は、ベースプレート30又は他の静止物に固着されるハウジング820内に配置することができる。張力変化はロッド811の回転角度に関連するため、この実施形態においては、力調節器800は或る範囲にわたる圧縮力をもたらすことができる。
【0036】
図3〜7はすべて引張ばねの使用を示すが、圧縮ばねをこれら実施形態のいずれにも使用できることを理解されたい。上述した実施形態のすべてを再現することなく、図4の実施形態における圧縮ばね使用を例として示される。当業者は、他の実施形態でどのように圧縮ばねを使用できるかは容易に理解できるであろう。
【0037】
図9は、圧縮ばね930を採用する図4の実施形態を示す。図4の実施形態と共通する要素は同一参照符号を付している。この実施形態において、緊締デバイス51はピストン411に取り付ける。圧縮ばね930は空気シリンダ410と固定壁のような剛性構体940との間に配置する。ピストン411が移動するにつれ、圧縮ばね930の長さが変化する。
【0038】
したがって、引張ばねを利用する図3〜7の実施形態と同様に、本明細書記載の電子的長さ調節器も圧縮ばねとともに使用することができる。
【0039】
さらに、若干の実施形態において、図3〜7に示す実施形態はばねを使用せずに採用することができる。これら実施形態において、電子的長さ調節器は力調節器52(図1参照)として作用する。例えば、図3において、1つ又はそれ以上の圧電アクチュエータ310は、フェースプレート40に印加される力を変化させる力調節器として作用することができる。図4において、空気シリンダ410は力調節器として作用することができる。図5において、ソレノイド510は力調節器として作用することができる。図6において、サーボモータ610は力調節器として作用することができる。最後に図7において、ボールねじ715及びボールねじナットブラケット720は力調節器として作用することができる。
【0040】
動作にあたり、ユーザー又はオペレーターは、チャンバ200内に導入される供給ガスの種を決定することができる。供給ガスの選択は、フェースプレート40にとって特別な温度が好ましいことを示し得る。例えば、上述したように、フッ素含有種は、より冷たいフェースプレート40に有利であり得る。したがって、この場合、フェースプレート40に印加される圧縮力を増加させ、向上したチャンバ壁11との熱接触を生ずる。このことは、フェースプレート40の温度を減少する。逆に、一酸化炭素ガスは、より熱いフェースプレート40に有利であり得る。したがって、この場合、フェースプレート40に印加される圧縮力を減少させ、チャンバ壁11との熱接触を低下させる。一実施形態において、コントローラ70は、供給ガスの選択に基づいて、緊締具50に、より具体的には力調節器52に1つ又はそれ以上の電気信号を出力する。他の実施形態において、ユーザー又はオペレーターは、コントローラ70に所望セッティングを指示することができる。一実施形態において、ホット及びクールの2つのセッティングがあり得る。他の実施形態において、複数のセッティングがあり得る。この場合、コントローラ70は入力されたセッティングに基づいて適切な電気信号を出力する。
【0041】
図10はこのシーケンスを説明するフローチャートを示す。ボックス1000で示すように、コントローラ70は入力デバイス73からの入力を受け取る。この入力は、フェースプレート40の所望動作温度又は使用すべき供給ガス種とすることができる。この入力に基づいて、コントローラ70は、ボックス1010に示すように、フェースプレート40に加えるべき圧縮力を決定する。この圧縮力は、次にボックス1020で示すように、電圧に変換される。若干の実施形態において、コントローラは、力及び対応電圧を含むテーブルを利用することができる。他の実施形態において、コントローラ70は、力を電圧に変換する等式を使用することができる。若干の実施形態において、コントローラ70は、入力デバイス73からの入力を、圧縮力を決定する中間プロセスなしに電圧に直接変換することができる。電圧が決定された後、ボックス1030で示すように、この電圧が力調節器52に印加される。
【0042】
本明細書記載のシステム及び方法は多くの利点を有する。上述したように、イオン源のフェースプレートにおける堆積は供給ガスの種及びフェースプレートの温度の関数であり得ることが分かっている。フェースプレートの温度を変化させることによって、堆積を減少させることができる。さらに、このシステムによれば、真空中断又は任意なコンポーネントへの物理的アクセスをすることなく温度を変化させることができる。1つの試験において、引張ばねのばね力を2倍にすることによってフェースプレートの温度を70℃減少させることが分かった。したがって、チャンバ壁とフェースプレートとの間における圧縮力を変化させることによって、フェースプレートの温度を操作することができ、改善された性能及びより長い予防的保守プロセス間運用を得ることができる。さらにまた、このシステムによれば、イオン源の構成を物理的に変化させる必要がなくイオン源内の供給ガスを変化させることができる。
【0043】
本開示は、本明細書記載の特別な実施形態によって範囲を限定されない。実際、本明細書記載の実施形態に加えて、本開示に対する他の様々な実施形態又は変更例は、当業者には上述した説明及び添付図面から明らかであろう。したがって、このような他の実施形態及び変更例は本開示の範囲内に納まることを意図する。さらにまた、本開示は、特別な目的のための特別な環境における特別な実施形態の文脈で説明したが、当業者であれば、その有用性はそれに限定されない、及び本開示は任意な数の目的のための任意な数の環境でも有利に実施できることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、本明細書記載の本開示の全範囲及び精神の観点で解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10