特許第6960102号(P6960102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6960102バルーン用バリア性積層体およびバルーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960102
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】バルーン用バリア性積層体およびバルーン
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20211025BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20211025BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20211025BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20211025BHJP
   A63H 27/10 20060101ALI20211025BHJP
   B64B 1/40 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B32B27/34
   B32B9/00 A
   B32B15/08 Q
   B32B27/32 Z
   A63H27/10 Z
   B64B1/40
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-168691(P2017-168691)
(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公開番号】特開2019-43039(P2019-43039A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】渡 辺 由 香
(72)【発明者】
【氏名】岸 本 好 弘
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−230696(JP,A)
【文献】 特開2007−223076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
A63H1/00−37/00
B64B1/00− 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理面を有する樹脂基材と、透明蒸着層と、バリアコート層と、シーラント層とをこの順に備える、バルーン用バリア性積層体であって、
前記樹脂基材が、ポリアミド樹脂を含み、
前記樹脂基材のプラズマ処理面に、前記透明蒸着層が形成されており、
前記透明蒸着層が、酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜であり、
前記バリア性積層体のヘリウムガス透過度が、5.0×10−5g/m・24H・25℃・mbar以下である、バリア性積層体。
【請求項2】
前記樹脂基材の厚さが、4μm以上25μm以下である、請求項1に記載のバリア性積層体。
【請求項3】
前記バリアコート層が、金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜である、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
【請求項4】
前記シーラント層が、ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項5】
前記樹脂基材の前記透明蒸着層と反対側の面上に、印刷層をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のバリア性積層体を備える、バルーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体に関し、さらに詳細には、樹脂基材と、透明蒸着層と、バリアコート層と、シーラント層とをこの順に備えるバルーン用バリア性積層体に関する。また、該バルーン用バリア性積層体を備えるバルーンにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、 バルーンは種々存在し、近年では透明性フィルムを用いたものから、不透明性フィルムを用いたものまで多種多様である。
【0003】
透明性フィルムとして、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂等のフィルムを用いたものが挙げられ、これらの透明性フィルムは、裏面印刷が可能なため、美しく印刷されたバルーンを提供できる。しかし、これらのフィルム自体はガスバリア性が十分でなく、バルーンとして用いた際のガスバリア性を確保しようとすると、フィルムの厚さを厚くする必要があり、そのためバルーン用フィルム自体の重量が重くなり、これを使用した小型のバルーンは浮遊しなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、フィルム自体のガスバリア性を改善するために、従来、バルーン用フィルムにアルミニウム等の金属を真空蒸着したフイルムが用いられている。例えば、印刷層/透明フィルム基材(PET)/酸化アルミニウム透明蒸着層/ガスバリア中間層/アルミニウム蒸着層/シーラント層を備えるバルーン用積層フィルムが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような金属蒸着層を有するバルーン用積層フィルムは不透明であり、また仮に浮遊中に電線に接触した場合には停電を引き起こす恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−230628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、バルーンとして用いた場合に浮遊能力に優れ、耐久性に優れ、かつ停電防止性に優れたバルーン用バリア性積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、樹脂基材と、透明蒸着層と、バリアコート層と、シーラント層と、をこの順に備えるバリア性積層体において、樹脂基材としてポリアミド樹脂基材を用い、バリア性積層体のヘリウムガス透過度を調節することで、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明の一態様によれば、
樹脂基材と、透明蒸着層と、バリアコート層と、シーラント層とをこの順に備える、バルーン用バリア性積層体であって、
前記樹脂基材が、ポリアミド樹脂を含み、
前記バリア性積層体のヘリウムガス透過度が、5.0×10−5g/m・24H・25℃・mbar以下である、バリア性積層体が提供される。
【0009】
本発明の態様においては、前記樹脂基材の厚さが、4μm以上25μm以下 であることが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記透明蒸着層が、酸化アルミニウムを主成分とする無機酸化物蒸着膜であることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記バリアコート層が、金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記シーラント層が、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記樹脂基材の前記透明蒸着層と反対側の面上に、印刷層をさらに備えることが好ましい。
【0014】
本発明の他の態様によれば、上記バリア性積層体を備えるバルーンが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バルーンとして用いた場合に浮遊能力に優れ、耐久性に優れ、かつ停電防止性に優れたバルーン用バリア性積層体を提供することができる。さらに、このようなバリア性積層体を用いたバルーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のバルーン用バリア性積層体の一実施形態を示した概略断面図である。
図2】本発明のバルーンの一実施形態を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<バリア性積層体>
本発明により得られるバリア性積層体は、樹脂基材と、透明蒸着層と、バリアコート層と、シーラント層と、をこの順に備えるものであり、バルーンとして用いた場合に浮遊能力に優れ、耐久性に優れる。さらに、バリア性積層体は、導電性の高い金属層や金属蒸着層を備えていないため、仮に浮遊中に電線に接触しても停電せずに、停電防止性に優れている。
【0018】
バリア性積層体は、フィルムの厚みやバルーンサイズによるが、一般的なバルーンである12μmのAl蒸着ナイロン基材とした場合、ヘリウムガス透過度が、5.0×10−5g/m・24H・25℃・mbar以下であり、好ましくは4.0×10−5g/m・24H・25℃・mbar以下である。バリア性積層体のヘリウムガス透過度が上記数値範囲を満たせば、好適なヘリウムガスバリア性を有するため、バルーンとして用いた場合に、浮遊日数を延ばすことができる。なお、ヘリウムガス透過度は、Q−MassによるHe透過率測定機(VINCI社製:QHV−4 RAPID HELIUM PERMIATER)を用いて、真空下の差圧法により、温度25℃の環境下で、測定することができる。
【0019】
バルーン用バリア性積層体の層構成を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すバルーン用バリア性積層体10は、樹脂基材11と、透明蒸着層12と、バリアコート層13と、シーラント層14とをこの順に備える。
以下、本発明のバリア性積層体を構成する各層について説明する。
【0020】
(樹脂基材)
樹脂基材としては、下記の透明蒸着層を担持できるものであって、ポリアミド樹脂を含むものである。バルーン用バリア性積層体は、ポリアミド樹脂基材を備えることで、耐突き刺し、耐ピンホールの点から耐久性を向上させることができる。
【0021】
ポリアミド樹脂基材としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−9−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(M XD6)等のナイロン系フィルムを挙げることができる。また、ナイロン6とナイロン6,6 との共重合体であるナイロン6−6,6、ナイロン6とナイロン6−12との共重合体であるナイロン6−12等も用いることができる。
【0022】
樹脂基材の厚さは、耐久性、浮力と自身の重さの関係から、好ましくは4μm以上25μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは9μm以上15μm以下の厚さを有するものである。
【0023】
(透明蒸着層)
透明蒸着層は、無機酸化物の蒸着膜からなる層である。蒸着膜は、従来公知の方法により形成することができ、無機酸化物の組成および形成方法は特に限定されない。バリア性積層体が、透明蒸着層を備えることで、透明であるため内容物の透過性を保ちながら、ヘリウムガス等の透過を阻止するガスバリア性を付与ないし向上させることができる。また、バリア性積層体が導電性の高い金属層や金属蒸着層ではなく透明蒸着層を備えているため、仮に浮遊中に電線に接触しても停電せずに、停電防止性に優れている。なお、バリア性積層体は、透明蒸着層を2層以上備えてもよい。透明蒸着層を2層以上備える場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0024】
蒸着膜としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物の蒸着膜を使用することができる。特に、バルーン用としては、酸化アルミニウムの蒸着膜がより好ましい。
【0025】
無機酸化物の表記は、例えば、SiO、AlO等のようにMO(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1.5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜2、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。バルーン用材料には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0026】
無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する無機酸化物の種類や所望のバリア性能等によって異なるが、例えば、酸化アルミニウムの蒸着膜の場合、好ましくは1nm以上50nm以下、より好ましくは2nm以上20nm以下、さらに好ましくは5nm以上15nm以下の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
【0027】
蒸着膜は、基材層などに以下の形成方法を用いて形成することができる。蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ−ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0028】
(プラズマ前処理)
樹脂基材には、上記の透明蒸着層を形成する面に予めプラズマ前処理を施すことが好ましい。予めプラズマ前処理を施すことで、ヘリウムガスバリア性を向上させることができる。
【0029】
(バリアコート層)
バリアコート層は、ガスバリア性を有する層であり、塗布膜であることが好ましい。さらに、バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜であることが好ましい。バリアコート層は、例えば、下記のガスバリア性塗膜により形成することができる。該塗膜は、高温多湿環境下でのガスバリア性を保持する塗膜であり、一般式RM(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上の金属アルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜である。該組成物を上記蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜200℃、かつ上記の蒸着フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱乾燥処理して形成することができる。
【0030】
また、前記ガスバリア性組成物を上記樹脂基材上の透明蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜200℃、かつ、上記樹脂基材の融点以下の温度で10秒〜10分間加熱乾燥処理し、ガスバリア性塗膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
【0031】
上記金属アルコキシドは、上記一般式RM(OR中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層体の靭性、耐熱性等を向上させることができる。また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。
【0032】
本発明で使用する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
【0033】
ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。
【0034】
エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。
【0035】
また、本発明では、バリアコート層にシランカップリング材を添加してもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アセトキシ基、アミノ基、エポキシ基などの反応基を有するシランカップリング材が、使用できる。
【0036】
バリアコート層は、以下の方法で製造することができる。まず、上記金属アルコキシド、必要に応じてシランカップリング剤、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒等を混合し、ガスバリア性組成物(バリアコート液)を調製する。
【0037】
次いで、前記透明蒸着層の上に、上記のガスバリア性組成物を塗布する。
ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができる。
【0038】
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した蒸着フィルムを20℃〜200℃、かつ蒸着フィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜180℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱・乾燥する。これによって、重縮合が行われ、バリアコート層を形成することができる。
【0039】
以上により、前記透明蒸着層の上に、上記ガスバリア性組成物によるバリアコート層を1層ないし2層以上形成したバリアコート層を有するバリア性フィルムを製造することができる。
【0040】
(シーラント層)
シーラント層は、バルーン用の従来公知のシーラント層を用いることができ、熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。シーラント層は、バリア性積層体を用いたバルーンにおいて最内層(ヘリウムガス側)となる層である。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体またはアイオノマー等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂からなるシーラント層はバリア性積層体のヘリウムガス透過度を調節するために、単層構成としてもよいし、2種以上の熱可塑性樹脂からなる複層構成としてもよい。
【0042】
シーラント層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上300μm以下、より好ましくは8μm以上50μm以下、さらに好ましくは10μm以上20μm以下の厚さを有するものである。
【0043】
(印刷層)
バリア性積層体は、印刷層をさらに備えてもよい。印刷層は、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。
【0044】
印刷層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
【0045】
(接着層)
バリア性積層体は、バリアコート層とシーラント層の間に接着層をさらに備えてもよい。接着層としては、接着性樹脂層や接着剤層等が挙げられる。バリア性積層体は接着層を備えることにより、バリアコート層とシーラント層の界面のラミネート強度を向上させることができる。
【0046】
接着性樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。
【0047】
接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法でバリア性積層体を構成する層の塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m以上10g/m以下(乾燥状態)が好ましく、1g/m以上5g/m以下(乾燥状態)がより好ましい。
【0048】
<バルーン>
本発明のバルーンは、上記のバリア性積層体を備えるものであり、ヘリウムガスバリア性に優れ、特に、球状に膨らましても、ガスバリア性の劣化が少ないため、ヘリウム等の気体を注入後の空中浮遊を長時間可能とする。また、本発明のバルーンは、軽量であり、耐久性に優れるのに加えて、導電性の高い金属層や金属蒸着層を備えていないため、仮に浮遊中に電線に接触しても停電せずに、停電防止性に優れている。さらに、本発明のバルーンは、各種の所望の絵柄等の印刷を施し、玩具、公告、宣伝用等に好適に用いられる透明性を有する。
【0049】
バルーンの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記のバリア性積層体にヘリウムガスの注入口である逆流防止弁を取り付け、シーラント層同士を向かい合わせた状態で、バルーンの円周を溶断シールする。続いて、ガス注入口よりヘリウム等のガスを注入することで平面が球状のバルーンを製造することができる。例えば、図2で示すように球体バルーン20は、外面側から内面側に向かって、透明樹脂基材21、透明蒸着層22、バリアコート層23、ヒートシール層24を備えている。また、球体バルーン20は、ヘリウム等のガス注入口25を備えている。なお、バルーンの形態は球体に限定されず、例えば、三角体、四角体、五角体、および柱状等の他の任意の形態であってもよい。
【実施例】
【0050】
<バリア性積層体の製造>
[実施例1]
樹脂基材としてナイロンフィルム(厚さ12μm)を準備し、該ナイロンフィルムの蒸着層を形成する面に、プラズマ前処理装置を配置した前処理区画と成膜区画を隔離した連続蒸着膜成膜装置を用いて、前処理区画において下記プラズマ条件下でプラズマ供給ノズルからプラズマを導入し、搬送速度600m/minでプラズマ前処理を施し、その後、連続搬送した成膜区画内で、プラズマ処理面上に下記条件において真空蒸着法の加熱手段として反応性抵抗加熱方式により、厚さ8nmの酸化アルミニウム蒸着膜を形成した。
(プラズマ前処理条件)
・プラズマ強度:150W・sec/m
・プラズマ形成ガス:アルゴン1200(sccm)、酸素3000(sccm)
・磁気形成手段:1000ガウスの永久磁石
・前処理ドラム−プラズマ供給ノズル間印加電圧:340V
・前処理区画の真空度:3.8Pa
(酸化アルミニウム成膜条件)
・真空度:8.1×10−2Pa
・波長366nmの光線透過率:88%
【0051】
また、表1に示す組成に従って、調製した組成Aの混合液に、予め調製した組成Bの加水分解液を加えて攪拌し、無色透明のバリアコート液を得た。
【表1】
【0052】
次に、樹脂基材の酸化アルミニウム蒸着膜上に、上記で調製したバリアコート液をスピンコート法によりコーティングした。その後、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmのバリアコート層を形成した。
【0053】
続いて、バリアコート層上に低密度ポリエチレンを厚さ15μmで押し出し、シーラント層を形成した。また、樹脂基材の酸化アルミニウム蒸着膜と反対側の面に印刷を施して、バリア性積層体(層構成:印刷層/ナイロンフィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層/シーラント層)を得た。
【0054】
[実施例2]
樹脂基材としてナイロンフィルム(厚さ15μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてバリア性積層体(層構成:印刷層/ナイロンフィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層/シーラント層)を得た。
【0055】
[比較例1]
樹脂基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚さ9μm)を準備し、PETフィルム上に、プラズマ前処理を施さずに真空蒸着の加熱手段としてEB加熱方式により酸化アルミニウム蒸着膜(厚さ8nm)を直接形成した以外は実施例1と同様にしてバリア性積層体(層構成:印刷層/PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層/シーラント層)を得た。
【0056】
[比較例2]
ナイロン樹脂でエチレンビニルアルコール共重合体をサンドラミネートした構成のフィルムを共押出し法によって交互に形成した(総厚み13μm)。続いて、該共押しフィルム上に低密度ポリエチレンを厚さ15μmで押し出し、シーラント層を形成した。また、該ナイロンフィルムのシーラント層と反対側の面に印刷を施して、バリア性積層体(層構成:印刷層/ナイロン樹脂層/EVOH樹脂層/ナイロン樹脂層/シーラント層)を得た。
【0057】
[比較例3]
バリアコート層上にアルミニウム蒸着膜(厚さ30nm)を形成した後、アルミニウム蒸着膜上に低密度ポリエチレン(LDPE、厚さ 15μm)を押し出し、シーラント層を形成した以外は比較例1と同様にしてバリア性積層体(層構成:印刷層/ナイロンフィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層/アルミニウム蒸着膜/シーラント層)を得た。
【0058】
[比較例4]
樹脂基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚さ9μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてバリア性積層体(層構成:印刷層/PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/バリアコート層/シーラント層)を得た。
【0059】
<バリア性積層体およびバルーンの性能評価>
実施例および比較例で製造したバリア性積層体およびバルーンについて下記の測定を行った。
【0060】
(ヘリウムガス透過度の測定)
実施例および比較例で製造したバリア性積層体のヘリウムガス透過度を、Q−massによるHe透過率測定機(VINCI社製:VINCI社製:QHV−4 RAPID HELIUM PERMIATER)を用いて、真空下の差圧法により、温度25℃の環境下で測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0061】
(浮遊性の評価)
実施例および比較例で製造したバリア性積層体にヘリウムガスの封入口である逆流防止弁を取り付け、シーラント層同士を向かい合わせた状態で、バルーンの円周を溶断シールして直径18インチの球体のバルーンを製造した。続いて、ガス注入口よりヘリウムガスを充填圧16−18inchAqで注入し、浮遊日数を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0062】
(耐久性の評価)
上記で製造したバルーンを、ゲルボフレックステスターに10回かけ、フィルムをひねり負荷をかけた後、同様に浮遊日数の測定により耐久性を測定した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。
【0063】
(導電性の測定)
実施例および比較例で製造したバリア性積層体の導電性を 抵抗率測定機(三菱ケミカルアナリテック社製:ハイレスタ−UX MCP−HT800)を用いて評価した。その際、耐停電性の評価であることから、実環境を考慮しピン端子はフィルムを貫通するように設置した。測定結果は、下記の表2に示される通りであった。測定限界以下の場合、耐停電性は有しない。
【0064】
【表2】
【符号の説明】
【0065】
10 バルーン用バリア性積層体
11、21 樹脂基材
12、22 透明蒸着層
13、23 バリアコート層
14、24 シーラント層
20 バルーン
25 ガス注入口
図1
図2