特許第6960104号(P6960104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6960104-車両のミラーベースカバー構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960104
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車両のミラーベースカバー構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/06 20060101AFI20211025BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20211025BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B62D33/06 B
   B60R1/06 Z
   B62D25/08 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-201877(P2017-201877)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-73214(P2019-73214A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】三根 康平
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−010652(JP,U)
【文献】 実開昭63−139139(JP,U)
【文献】 実開平05−093993(JP,U)
【文献】 実開平06−072748(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08,33/06
B60R 1/06− 1/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの前面をキャブフロントカバーパネルが覆い、前記キャブの側方をドアが開閉可能に閉止する車両のミラーベースカバー構造であって、
前記キャブフロントカバーパネルの車幅方向外端上部よりも後方且つ車幅方向外側であって、前記ドアの外側面の前端よりも前方且つ車幅方向内側に配置されて車体側に固定され、ミラーステーの上下方向に延びる基軸を支持するミラーベース部と、
前記ミラーベース部を前方及び車幅方向外側から覆うミラーベースカバー縦面部を有し、前記キャブフロントカバーパネルと前記ドアとの間のキャブコーナ部に配置されて車体側に固定されるキャブサイドカバーパネルと、を備え、
前記ミラーベースカバー縦面部には、前記ミラーベース部から車幅方向内側斜め前方へ離間する前側領域と、前記前側領域から車幅方向外側後方へ湾曲状に傾斜して延びる後側領域とが設けられ
前記キャブサイドカバーパネルは、上方から下方へ並ぶサイドカバー上部とサイドカバー中間部とサイドカバー下部とを一体的に有し、前記サイドカバー上部が前記サイドカバー下部よりも前方へ突出するように前記サイドカバー中間部で曲折し、
前記ミラーベースカバー縦面部は、前記サイドカバー上部によって構成されている
ことを特徴とする車両のミラーベースカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のミラーベースカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アッパミラーステーとロアミラーステーとこれらを回転させるステー駆動用モータとを備え、ロアミラーステーの下端及びモータがカバーで被覆されたアウトサイドミラーの取付構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−72748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体側に固定されてミラーステーの上下方向に延びる基軸を支持するミラーベース部は高剛性で硬い部分であり、このようなミラーベース部が、特許文献1に記載された構造のようにキャブの前面から前方へ突出して設けられていると、車両の衝突時等において、歩行者がミラーベース部に向かって衝突して強い衝撃を受ける可能性がある。
【0005】
なお、ミラーベース部の最前端からカバーまでの前後方向の間隙を大きく設定することにより、歩行者が受ける衝撃を緩和することも可能である。しかし、この場合、キャブの前面からのミラーカバーの突出量が増大し、車両の全長も増大してしまうため、全長が制限された車両において歩行者の衝撃を緩和することは難しい。
【0006】
そこで、本発明は、車両全長の増大を抑制しつつ、歩行者と衝突した際に歩行者が受ける衝撃を低減することが可能なミラーベースカバー構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、キャブの前面をキャブフロントカバーパネルが覆い、キャブの側方をドアが開閉可能に閉止する車両のミラーベースカバー構造であって、ミラーベース部と、キャブサイドカバーパネルとを備える。
【0008】
ミラーベース部は、キャブフロントカバーパネルの車幅方向外端上部よりも後方且つ車幅方向外側であって、ドアの外側面の前端よりも前方且つ車幅方向内側に配置されて車体側に固定され、ミラーステーの上下方向に延びる基軸を支持する。キャブサイドカバーパネルは、ミラーベース部を前方及び車幅方向外側から覆うミラーベースカバー縦面部を有し、キャブフロントカバーパネルとドアとの間のキャブコーナ部に配置されて車体側に固定される。ミラーベースカバー縦面部には、ミラーベース部から車幅方向内側斜め前方へ離間する前側領域と、前側領域から車幅方向外側後方へ湾曲状に傾斜して延びる後側領域とが設けられている。キャブサイドカバーパネルは、上方から下方へ並ぶサイドカバー上部とサイドカバー中間部とサイドカバー下部とを一体的に有し、サイドカバー上部がサイドカバー下部よりも前方へ突出するようにサイドカバー中間部で曲折する。ミラーベースカバー縦面部は、サイドカバー上部によって構成されている。ミラーベースカバー縦面部の後側領域は、ドアの外側面の前端に連続してもよい。
【0009】
上記構成では、ミラーベースカバー縦面部の前側領域は、ミラーベース部から車幅方向内側斜め前方へ離間し、後側領域は、前側領域から車幅方向外側後方へ傾斜して延びる。
【0010】
このため、歩行者等がキャブサイドカバーパネルに前方から衝突した場合において、その衝突位置がミラーベースカバー縦面部の前側領域の場合には、係る前側領域とミラーベース部との間隙によって衝撃を吸収することができ、歩行者等が受ける衝撃を軽減することができる。一方、上記衝突位置がミラーベースカバー縦面部の後側領域の場合には、係る後側領域の傾斜に沿って歩行者等が車幅方向外側に誘導されるので、歩行者等とミラーベース部との衝突を回避又は低減することができる。
【0011】
また、ミラーベース部は、キャブフロントカバーパネルの車幅方向外端上部よりも後方で、且つドアの外側面の前端よりも車幅方向内側に配置されているので、車両の前後方向の長さ(車両全長)の増大及び車幅方向の長さ(車両全幅)の増大を抑制しつつ、歩行者等が受ける衝撃を軽減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両全長の増大を抑制しつつ、歩行者と衝突した際に歩行者が受ける衝撃をミラーベースカバー縦面部によって低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るミラーベースカバー構造を備えた車両の斜視図である。
図2図1のキャブの左前面の拡大斜視図である。
図3図2のIII−III矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るミラーベースカバーについて、図面を参照して説明する。なお、図中のFRは車両前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明における前後方向は車両1の前後方向であり、左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)の上方に位置するキャブオーバー型の車両であり、車幅方向両側に後方確認用の左右のミラー3がミラーステー4を介して取り付けられている。なお、左右のミラー3、ミラーステー4、後述するミラーベース部20及びサイドカバー10は、略同様に構成されているため、以下では左側について説明し、右側についての説明を省略する。
【0016】
ミラーステー4は、上下方向に延びる基軸5と、基軸5の上端から略水平方向に曲折して延びる横ステー6と、横ステー6の先端から曲折して上方へ延びる縦ステー7とを一体的に有し、縦ステー7の上端部にミラー3が支持されている。
【0017】
キャブ2の左右の側方は、左右のドア11によって開閉可能に閉止され、キャブ2のフロントガラス8の下方には、車幅方向中央のフロントカバー(キャブフロントカバーパネル)9と、フロントカバー9の車幅方向両側に配置された左右のサイドカバー(キャブサイドカバーパネル)10とが設けられている。フロントカバー9及びサイドカバー10は、樹脂製のパネル材であり、フロントカバー9は、車幅方向に起立してキャブ2の前面を覆う。左右のサイドカバー10は、フロントカバー9と左右のドア11との間のキャブ2の前側の左右のキャブコーナ部12に配置されて、キャブコーナ部12を覆うように湾曲する。サイドカバー10の外面の車幅方向内側はフロントカバー9の外面に連続し、サイドカバー10の外面の後側はドア11の外側面に連続する。
【0018】
図1及び図2に示すように、フロントカバー9は、フロントカバー上部9Aとフロントカバー下部9Bとフロントカバー中間部9Cとフロントカバー上面部9Dとを一体的に有し、フロントカバー上部9Aがフロントカバー下部9Bよりも前方へ突出するようにフロントカバー中間部9Cで曲折する。サイドカバー10も、フロントカバー9と同様に、サイドカバー上部10Aとサイドカバー下部10Bとサイドカバー中間部10Cとサイドカバー上面部10Dとを一体的に有し、サイドカバー上部10Aがサイドカバー下部10Bよりも前方へ突出するようにサイドカバー中間部10Cで曲折する。サイドカバー上部10Aは、後述するミラーベースカバー縦面部13を構成する。フロントカバー上面部9Dは、フロントカバー上部9Aの上端縁から後方へ曲折し、サイドカバー上面部10Dは、フロントカバー上面部9Dと連続するように、サイドカバー上部10Aの上端縁から後方(サイドカバー上部10Aの後側では車幅方向内側)へ曲折する。
【0019】
図2に示すように、ミラーステー4の基軸5は、サイドカバー上面部10Dに形成された軸挿通孔14を挿通し、サイドカバー上面部10Dには、軸挿通孔14を覆う軸カバー15が取付けられる。
【0020】
図3に示すように、キャブ2の前面部及び左右のキャブコーナ部12には、車体を構成する構造部材として金属製のフロント車体パネル21及びサイド車体部材22がそれぞれ設けられている。サイド車体部材22は、サイドアウタパネル23とサイドインナパネル24とから構成され、サイドアウタパネル23とサイドインナパネル24とは、左右に離間して対向した状態で接合されて閉断面を形成する。フロント車体パネル21の車幅方向外端縁部は、サイド車体部材22に接合される。フロントカバー9及びサイドカバー10は、フロント車体パネル21やサイド車体部材22などの車体側の部材に固定され支持される。
【0021】
ドア11は、ドアアウタパネル25とドアインナパネル26とから構成され、ドアアウタパネル25とドアインナパネル26とは、互いに離間して対向した状態で各々の周縁部同士が接合されて閉断面を形成する。ドア11の前端部は、ドアヒンジ27を介してサイド車体部材22に連結支持され、ドアヒンジ27を中心として傾動することによりキャブ2の側方を開閉自在に閉止する。
【0022】
図2及び図3に示すように、ミラーステー4の基軸5は、ミラーベース部20に支持されている。ミラーベース部20は、基軸5を固定的に支持する部材からなる高剛性の構造体、又は基軸5を回転自在に支持する軸受やモータ等からなる高剛性の構造体であり、フロントカバー上部9Aの車幅方向外端部(フロントカバー9の車幅方向外端上部)よりも後方且つ車幅方向外側であって、ドアアウタパネル25の前端(ドア11の外側面の前端)よりも前方且つ車幅方向内側に配置される。なお、基軸5を回転自在に支持する場合、ミラーベース部20はモータを備えていなくてもよい。
【0023】
図3に示すように、サイド車体部材22には、金属製のミラーベースブラケット28がボルト(図示省略)によって固定され、ミラーベース部20は、ミラーベースブラケット28にボルト(図示省略)によって固定されている。係る状態で、サイドカバー10のミラーベースカバー縦面部13は、ミラーベース部20を前方及び車幅方向外側から覆う。ミラーベースカバー縦面部13には、ミラーベース部20から車幅方向内側斜め前方へ離間する前側領域13Fと、前側領域13Fから車幅方向外側後方へ湾曲状に傾斜して延びてドア11の外側面の前端に連続する後側領域13Rとが設けられ、前側領域13Fとミラーベース部20との間には所望の大きさの空間29が形成される。なお、係る空間29に衝撃エネルギー吸収材(EA材)を配置してもよい。
【0024】
本実施形態によれば、図3に示すように、物体(歩行者の頭部など)31がサイドカバー10に前方から衝突した場合において、その衝突位置がミラーベースカバー縦面部13の前側領域13Fの場合には、係る前側領域13Fとミラーベース部20との間の空間29(係る空間29によって発生するミラーベースカバー縦面部13及びフロントカバー上部9Aの二点鎖線で示すような変形)によって衝撃を吸収することができ、歩行者等が受ける衝撃を軽減することができる。一方、上記衝突位置がミラーベースカバー縦面部13の後側領域13Rの場合には、係る後側領域13Rの傾斜に沿って歩行者等が車幅方向外側に誘導されるので、歩行者等とミラーベース部20との衝突を回避又は低減することができる。
【0025】
また、ミラーベース部20は、フロントカバー9の車幅方向外端上部よりも後方で、且つドア11の外側面の前端よりも車幅方向内側に配置されているので、車両1の前後方向の長さ(車両全長)の増大及び車幅方向の長さ(車両全幅)の増大を抑制しつつ、歩行者等が受ける衝撃を軽減することができる。
【0026】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ミラーベース部を覆うミラーベースカバー構造として様々な車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:車両
2:キャブ
3:ミラー
4:ミラーステー
5:基軸
6:横ステー
7:縦ステー
8:フロントガラス
9:フロントカバー(キャブフロントカバーパネル)
10:サイドカバー(キャブサイドカバーパネル)
11:ドア
12:キャブコーナ部
13:ミラーベースカバー縦面部
14:軸挿通孔
15:軸カバー
20:ミラーベース部
21:フロント車体パネル
22:サイド車体部材
23:サイドアウタパネル
24:サイドインナパネル
25:ドアアウタパネル
26:ドアインナパネル
27:ドアヒンジ
28:ミラーベースブラケット
29:空間
31:物体
図1
図2
図3