特許第6960118号(P6960118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6960118-ステッキカバー 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960118
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ステッキカバー
(51)【国際特許分類】
   A45B 9/02 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   A45B9/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-216059(P2017-216059)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-84170(P2019-84170A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】505297633
【氏名又は名称】株式会社コーポレーションパールスター
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】新宅 光男
(72)【発明者】
【氏名】奈部谷 紀穂
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−107168(JP,A)
【文献】 登録実用新案第049775(JP,Z1)
【文献】 特開2009−167565(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3127344(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3107892(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 9/02
A41B 11/00
D04B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地からなるステッキカバーをその被口から握部がT字形の杖に被着すると、前記編地の縫合部が前記握部の端縁に配設されるステッキカバーの製造方法であって、
先ず筒状編地の中央を縫合しその中央の縫合部から前記筒状編地の両端部の端縁が重なるように折り返して二重にし、そしてその二重の端縁を縫合して袋状編地を形成した後に、その袋状編地の前記端縁縫合側を切断し前記袋状編地の長手方向に長い楕円状の開口を設けて被口となすステッキカバーの製造方法
【請求項2】
筒状編地は、ポリウレタンゴム糸とポリエステルナノファイバーからなる糸とにより編成されてなる請求項1に記載のステッキカバーの製造方法。
【請求項3】
筒状編地の中央の縫合部は、被口の長円方向軸と直交する方向に配設されてなる請求項1又は2に記載のステッキカバーの製造方法
【請求項4】
両端部が末広がり状になった筒状編地が中央の縫合部から折り返されて形成されるラッパ状の二重編地の端縁が縫合されてなる袋状編地であって、その縫合された端縁の縫合部の側に前記袋状編地の長手方向に長い楕円状に開口した被口を有し、
前記筒状編地の中央の縫合部と端縁の縫合部が、握部がT字形の杖のその握部の端縁にそれぞれ配設されるように被着されるステッキカバー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、握部がT字形の杖に被着される編地からなるステッキカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
杖は、高齢者、障害者の歩行補助具あるいは理学療法において使用されており、杖を使用する者の転倒を防止するばかりでなく股関節にかかる負担を軽減する等の効果があるとされる。また、杖は屋外といわず室内においても使用され、いわば日常生活において使用されるものであるから、必要なときに直ちに使用することができるような簡単な保管方法が求められる。かかる杖として、一般的に広く使用されている握部がT字形の杖について、不使用時には棚に引掛け又壁に立てかけておくことができる杖が各種提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、杖のT字型持ち手部を被覆するための、着脱自在で柔軟性のある平面部材よりなり、該平面部材は杖の支柱が貫通し得る貫通孔を有し、同時に、その両端部に該両端部を互いに接合、剥離することが可能な接合部を有し、しかも滑り止め機能を有している杖用持ち手カバーが提案されている。この杖用持ち手カバーは、杖用持ち手カバーと壁面等との摩擦力により、杖が倒れることを防止する手段を採用しているので、T字型持ち手部を有する杖であれば、その素材、形を問わず如何なる杖にも、容易に杖の倒れ防止機能を付与できる利点があるとされる。
【0004】
特許文献2に、強度、ストレッチ性、接触摩擦力の大きい素材よりなる連結部と、連結部の両側にそれぞれ一体化された、主材が動物のバックスキンよりなる各筒部とよりなり、各筒部の適所に強度、ストレッチ性、接触摩擦力の大きい素材を配したステッキ頭部のカバーが提案されている。このカバーは、編物カバーとは異なり、ステッキ頭部とカバーとの間に全く滑りがないばかりでなくステッキ頭部を違和感なく握ることができる、理想的な滑り止め機能を発揮し、しかも、使用中に手の皮膚を痛めることもない。また、着脱が容易であり、装着中に外れることもないとされる。
【0005】
特許文献3に、T字状のハンドル本体が接続部を介して杖本体に連結されてなる杖であって、前記ハンドル部に巻き付けられたカバーを有し、このカバ−は、前記ハンドル本体に巻かれたカバー本体と、このカバー本体の長さ方向一端部の幅方向両側から延びる一対の固定片と、を備え、前記一対の固定片は、前記ハンドル部の前記接続部を挟んで位置し、前記カバー本体の長さ方向他端側に重なって、このカバー本体と分離可能に接続されている杖が提案されている。この杖は、異なる形状のハンドル部に十分対応できる汎用性を有し、取り外しが簡単であるとされる。
【0006】
また、特許文献4に、棒状のシャフト部と、当該シャフト部の上端部に取り付けられるグリップ部とを有するステッキであって、前記グリップ部が、グリップ部の右側端部及び左側端部も含め、表面全体にシリコンゴムを0.5mm以上の所望の厚さで巻き付けて被覆してなるステッキが提案されている。このステッキは、シリコンゴムでグリップ部全体がおおわれているため、摩擦力が大きく、机やいすに立てかけた際にも滑り落ちる心配がなく、杖だこの形成を防ぐことができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-237893号公報
【特許文献2】特開2001-37512号公報
【特許文献3】特開2013-126507号公報
【特許文献4】特開2014-83136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
杖は、筋力や耐力が十分でない老齢者等が日常的に使用するものであるから、特許文献1又は4に記載のカバー又は杖のように壁面、机やいすに立てかけた際にも滑り落ちる心配がなく、老齢者等の手に優しいものが求められる。例えば、特許文献2に記載のように、ステッキ頭部とカバーとの間に全く滑りがないばかりでなく、ステッキ頭部を違和感なく握ることができる理想的な滑り止め機能を発揮し、しかも、使用中に手の皮膚を痛めることもなく、着脱が容易であって装着中に外れることがないものが求められる。また、握部がT字形の杖といっても、その形状は様々であり、特許文献3に記載のカバーのように種々の形状の握部を有する杖に対応することができるものが求められる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点又は要請に鑑み、握部がT字形の杖に被着されるステッキカバーであって、滑り難くグリップ力に優れるとともに吸湿性に優れて老齢者等の手に優しく握りやすい、高い伸縮性を有し種々の形状の握部を有する杖に対応することができる編地からなるステッキカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るステッキカバーは、握部がT字形の杖に被着されるステッキカバーであって、両端部が末広がり状になった筒状編地を前記両端部の端縁が重なるように折り返して二重にし、その両端縁を縫合して袋状編地を形成するとともに、その袋状編地の前記端縁縫合側に前記袋状編地の長手方向に長い楕円状の開口を有する被口を設けてなる。
【0011】
上記発明において、筒状編地は、ポリウレタンゴム糸とポリエステルナノファイバーからなる糸とにより編成されてなるものとすることができる。
【0012】
また、筒状編地の折返部は、被口の長円方向軸と直交する方向に縫合されてなるものがよい。
【0013】
また、本発明に係るステッキカバーは、握部がT字形の杖に被着されるステッキカバーであって、二重構造の袋状編地に被口を有し、その袋状編地がポリウレタンゴム糸とポリエステルナノファイバーからなる糸とにより編成されてなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るステッキカバーは、編地からなり、滑り難くグリップ力に優れるとともに吸湿性に優れて老齢者等の手に優しく握りやすく、高い伸縮性を有し種々の形状の握部を有する杖に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るステッキカバーが杖の握部に被着された状態を示す模式図である。
図2】本発明に係るステッキカバーの成形工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係るステッキカバーを被着した杖の握部を示す図面である。本ステッキカバー10は、図1に示すように、その被口20を杖30の握部35に被せるようにして被着される。ステッキカバー10は、編地からなり、二重構造の袋状に形成されている。このため、ステッキカバー10の両端面には縫合線15、縫合線16が表れている。縫合線15は細い線状をしており、縫合線16は、太く突出した線状をしている。被口20は、ステッキカバー10の長手方向に長い楕円状に開口している。
【0017】
上記編地は、ポリウレタンゴム糸とポリエステルナノファイバーからなる糸とをゴム編みによって編成することができる。また、ポリウレタンゴム糸を芯部に配して、ポリエステルナノファイバーを鞘部に配した、芯鞘構造糸で編地を構成することもできる。ポリウレタンゴム糸とポリエステルナノファイバーからなる糸は、編地の摩擦力、グリップ性や伸縮性などを考慮して最適な割合に編成される。編地の伸縮性は、ステッキカバー10の長手方向が2〜3倍、横方向が3〜5倍の伸びを有するのがよい。これにより、ステッキカバー10は、握部35が種々の形状のT字状の杖に対応することができる。なお、編地の伸縮性は、JIS L1096(織物及び編み物の生地試験方法)に基づいている。
【0018】
ポリウレタンゴム糸は、一般に使用されるものを使用することができる。ポリエステルナノファイバーからなる糸は、これを形成するポリマーが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどであり、単繊維径(単繊維の直径)が200〜2,000nm、より好ましくは250〜800nmであるものがよい。このポリエステルナノファイバーからなる糸は、上記ポリエステルナノファイバーのフィラメント数が2,000〜60,000本、総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)が35〜500dtexであるものがよい。かかる糸からなる編地は、グリップ力が高くて人の手や杖の握部に密着して滑りにくく、ずれも生じ難い。また、ポリエステルナノファイバーからなる糸を含む編地は、多数の微細な空隙を含み、吸湿性が高いので人の手になじみやすい。また、水分や油脂を吸収又は付着させたポリエステルナノファイバーからなる糸は、洗濯により容易に元の状態を回復することができる。ステッキカバー10は、洗濯が可能で新鮮な状態で使用することができる。
【0019】
上記握部がT字形の杖に被着される二重構造の編地からなるステッキカバーは、以下の様に成形することができる。すなわち、図2(a)に示すように、先ず、両端部が末広がり状になった筒状編地11を編成する。編方はゴム編みがよい。筒状編地11の円筒状の本体部12は、握部の各種形状に適合するようにその長さ及び外径が決定される。握部は一般にT字部分が対称ではなく長頭部と短頭部から形成されているが、短頭部の先端部分が上記の末広がり状部に収容されるようになっている。このため、図2(a)に示す末広がり状部12a、12bのサイズ(径及び弧長)は、短頭部の各種形状を考慮して決定される。なお、図2において、図2(a)及び図2(b)は裏側(内側)を示し、図2(c)は表側(外側)を示す。
【0020】
次に、筒状編地11を両端部の端縁が重なるように折り返して二重にする。この場合、図2(a)に示すように、筒状編地11の中央部12cを縫合するのがよい。縫合線15を境に折り返すと、図2(b)に示すようにラッパ状の二重編地が形成されるから、その端縁を縫合すると袋状編地が形成される。この縫合部は編地が四重になった部分を縫合するので太く凸条の縫合線16が形成される。
【0021】
次に、袋状編地の縫合線16に近い側を袋状編地の長手方向に長い楕円状に切除して被口20を形成する。被口20を縫合線16に近い側に設けることにより、縫合線16が短頭部の端面中央部分にくるようにすることができる。上記の切除した端縁周囲は縁部を縫合して強化するのがよい。これにより、図2(c)に示すステッキカバー10が形成される。ステッキカバー10は、縫合線16に近い側にステッキカバー10(袋状編地)の長手方向に長い楕円状に開口する被口20を有し、その被口20は縁取りされた縁部22を有する。そして、ステッキカバー10の端面には、被口20の長円方向軸と直交する方向に細い縫合線15が存在し、ステッキカバー10の他の端面には、太い縫合線16が存在するようになる。
【0022】
ステッキカバー10は、握部35に被せて被口20から長頭部及び短頭部を入れ込むと、図1に示すように杖30の握部35に被着することができる。本ステッキカバー10は、ステッキカバー10が握部35に被着されると、細い縫合線15は長頭部の端面に表れ、太い縫合線16は短頭部の端面に表れるようになる。
【0023】
本ステッキカバーの編地のポリウレタンゴム糸とポリエステルナノファイバーからなる糸の構成比は、例えば、重量比でポリウレタンゴム糸が5〜40%、ポリエステルナノファイバーからなる糸が60〜95%とすることができる。特に、重量比でポリウレタンゴム糸が25〜40%、ポリエステルナノファイバーからなる糸が60〜75%が好ましい。かかる編地から形成されるステッキカバー10は、杖の握部35に密着して滑り難く、人の手に密着して滑り難い。また、本ステッキカバー10は、編地が二重構造になっており吸湿性に富むので、握部を把持したとき弾力感があって馴染みやすく握り易い。また、ステッキカバー10は、伸縮性に富むので容易に握部35に被着することができ、種々の形状のT字形の杖の握部に対応することができる。
【0024】
また、本ステッキカバー10は、握部35の長頭部端面の縫合線15は細いので、ステッキカバー10の長頭部を被う部分は、長頭部の外径に倣った形状をして突起部分がないので滑り難く、安定して静置することができる。このため、握部35を棚に引っ掛け、また壁に立てかけて杖30をその位置に一時的に保管することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 ステッキカバー
11 筒状編地
12 本体部
12a、12b 末広がり部
12c 中央部
15 縫合線
16 縫合線
20 被口
30 杖
35 握部
図1
図2