【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、情報通信分野における研究開発委託事業(戦略的情報通信研究開発推進事業)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0055】
<<第1実施形態>>
第1実施形態のレーダ装置は、アンテナが円錐面状に指向可能なリニアアレイアンテナであるレーダ装置である。
【0056】
<レーダ装置1>
図1は、本発明の第1実施形態におけるレーダ装置1を斜め上方からみたときの概略図である。以下、
図1を参照して本発明の第1実施形態におけるレーダ装置1の好ましい構成の一例を説明する。
【0057】
レーダ装置1は、コントローラ2と、送信機3と、1以上のリニアアレイアンテナ4(
図1における符号4a〜4c)と、を含んで構成される。1以上のリニアアレイアンテナ4のそれぞれは、アンテナ素子を直線状(linear、リニア)に整列させる(array、アレイ)よう配列したリニアアレイアンテナである。
【0058】
リニアアレイアンテナは、アンテナの長手方向を中心軸とする円錐面状の範囲に指向させて用いることができる。ここでいう「円錐面状の範囲」は、円錐の側面と該側面に隣接する範囲とを含み、該円錐の内部を含まない範囲である。アンテナを指向させることにより、アンテナを指向させた向きにおけるアンテナが放射する波の強度(「アンテナの利得」とも称される。以下、アンテナが放射する波の強度のことを単に「利得」とも称する。)を高められる。また、アンテナを指向させることにより、アンテナを指向させた向きから受信する反射波をデジタル信号に変換する効率を高められる。
【0059】
必須の態様ではないが、レーダ装置1は、1以上のリニアアレイアンテナ4を支持可能な支持構造5をさらに含むことが好ましい。支持構造5を含むことにより、1以上のリニアアレイアンテナ4のそれぞれが所定の位置関係を保つよう、これらを支持構造5によって支持できる。これにより、後述する観測対象の場所を推定する処理を容易に行える。
【0060】
〔コントローラ2〕
コントローラ2は、送信機3と、1以上のリニアアレイアンテナ4と、を制御する。また、コントローラ2は、1以上のリニアアレイアンテナ4が送信波を送信してから1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を用いて観測対象の場所を含む空間を特定する場所推定処理を実行する。コントローラ2が行う場所推定処理については、後に
図3を用いてより詳細に説明する。レーダ装置1がコントローラ2を含むため、場所推定処理を実行し、観測対象の場所を推定できる。
【0061】
コントローラ2は、特に限定されない。コントローラ2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備える従来技術のマイクロコンピュータでよい。
【0062】
コントローラ2は、1以上のリニアアレイアンテナ4が受信した反射波に関する反射波情報それぞれを取得可能に構成される。反射波情報それぞれは、リニアアレイアンテナ4が送信波を送信してから受信用リニアアレイアンテナ4が反射波を受信するまでの時間を測定可能な情報を含む。
【0063】
コントローラ2は、送信波及び反射波の位相を制御してリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更可能に構成される。これにより、送信波の向きをリニアアレイアンテナ4から観測対象に向かう向きに制御し、リニアアレイアンテナ4において観測対象からの反射波を電気信号に変換する効率を高め得る。
【0064】
コントローラ2は、場所推定処理によって推定した観測対象の場所を出力可能に構成されていることが好ましい。観測対象の場所を出力する手段は、特に限定されず、従来技術のレーダ装置で観測対象の場所を出力するために利用される各種の手段でよい。
【0065】
コントローラ2は、レーダ装置1を利用する利用者から各種の指令を受信可能であることが好ましい。各種の指令は、例えば、送信波の送信を開始する指令、送信波の送信を停止する指令、及び/又はリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する指令等が挙げられる。コントローラ2がレーダ装置1を利用する利用者から各種の指令を受信可能であることにより、利用者の指令に応じてレーダ装置1を制御し得る。
【0066】
〔送信機3〕
送信機3は、リニアアレイアンテナ4に送信波を送信させる送信信号を提供可能な送信機である。送信機3は、コントローラ2と1以上のリニアアレイアンテナ4と接続されている。送信機3は、コントローラ2による制御に応じて送信信号を1以上のリニアアレイアンテナ4に提供可能に構成される。送信機3は、特に限定されず、従来技術の送信機でよい。送信機3は、例えば、送信信号を発振する発振器及び送信信号を変調する変調器等を備えた送信機でよい。レーダ装置1が送信機3を備えることにより、送信信号を介して1以上のリニアアレイアンテナ4に送信波を送信させることができる。
【0067】
必須の態様ではないが、送信機3は、パルス波である送信波を送信させるパルス波送信信号を提供可能であることが好ましい。パルス波は、断続的に送信される送信波である。パルス波は、断続的に送信されるため、送信波と反射波との対応付けが容易である。これにより、パルス波を送信してから反射波を受信するまでの時間を用いて、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定し得る。
【0068】
必須の態様ではないが、送信機3は、チャープ波である送信波を送信させるチャープ波送信信号を提供可能であることが好ましい。チャープ波は、断続的に送信される送信波であり、かつ、時間と共に周波数が増加する送信波又は時間と共に周波数が減少する送信波である。チャープ波は、時間と共に周波数が増加又は減少するため、チャープ波が送信されてからの経過時間をチャープ波の周波数を用いて測定可能である。これにより、送信波を送信してから反射波をそれぞれ受信するまでの時間を、反射波の周波数を用いて測定することが可能となる。これにより、チャープ波をパルス波より長い時間送信しても、反射波を受信するまでの時間を正確に測定できる。したがって、より多くの送信波を観測対象に入射させ得る。そして、より多くの反射波を観測対象に生じさせ得る。したがって、リニアアレイアンテナ4は、送信波がパルス波である場合より、多くの反射波を受信し得る。これにより、観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0069】
周波数変調連続波(Frequency Modulated Continuous Wave。FM−CWとも称する。)は、周波数変調した連続波である。周波数変調連続波は、周波数変調されているため、周波数変調連続波が送信されてからの経過時間を周波数変調連続波の周波数を用いて測定可能である。
【0070】
必須の態様ではないが、送信機3は、リニアアレイアンテナ4に周波数変調連続波である送信波を送信させる周波数変調連続波送信信号を提供可能であることが好ましい。これにより、送信波を送信してから反射波をそれぞれ受信するまでの時間を、送信波の周波数と反射波の周波数との比較を用いて測定し得る。
【0071】
周波数変調連続波は、連続波である。したがって、送信波が周波数変調連続波である場合、送信波がパルス波及び/又はチャープ波である場合より多くの送信波を観測対象に入射させ得る。そして、より多くの反射波を観測対象に生じさせ得る。したがって、送信機3が周波数変調連続波送信信号を提供可能であることにより、リニアアレイアンテナ4は、送信波が断続的に送信されるパルス波及び/又はチャープ波である場合より、多くの反射波を受信し得る。これにより、観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0072】
必須の態様ではないが、送信機3は、リニアアレイアンテナ4に無線通信で用いられる送信波を送信させる無線通信信号を提供可能であることが好ましい。これにより、リニアアレイアンテナ4に無線通信で用いられる送信波を送信することができる。
【0073】
〔リニアアレイアンテナ4〕
リニアアレイアンテナ4は、送信機3から提供される送信信号に応じて送信波を送信可能であり、送信波が観測対象に入射することによって生じた反射波を受信可能であるリニアアレイアンテナである。1以上のリニアアレイアンテナ4のそれぞれは、リニアアレイアンテナ本体41と、分配器42と、複数の移相機43と、複数のアンテナ素子44と、コンバータ45と、を含んで構成される。リニアアレイアンテナ4が複数ある場合、複数のリニアアレイアンテナ4は、それぞれの長手方向が互いに略平行となるよう配置される。1以上のリニアアレイアンテナ4のそれぞれは、コントローラ2と送信機3と接続されている。1以上のリニアアレイアンテナ4のそれぞれは、コントローラ2によって制御可能に構成されている。
【0074】
レーダ装置1が1以上のリニアアレイアンテナ4を備えることにより、平面フェイズドアレイアンテナ等より広い範囲からの反射波を受信可能である。レーダ装置1が1以上のリニアアレイアンテナ4を備えることにより、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間と送信波の向きとを用いて観測対象の場所を推定する処理を実行できる。観測対象の場所を推定する処理については、後に
図7を用いてより詳細に説明する。
【0075】
必須の態様ではないが、リニアアレイアンテナ4の数が2以上であり、これら2以上のリニアアレイアンテナ4は、長手方向が互いに略平行に配置されていることが好ましい。これにより、観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理については、後に
図8を用いてより詳細に説明する。
【0076】
必須の態様ではないが、リニアアレイアンテナ4の数が3以上であり、これら3以上のリニアアレイアンテナ4は、長手方向が互いに略平行に配置されていることが好ましい。これにより、観測対象の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を特定する処理については、後に
図9を用いてより詳細に説明する。
図1には、長手方向が互いに略平行に配置された第1リニアアレイアンテナ4a、第2リニアアレイアンテナ4b、及び第3リニアアレイアンテナ4cが示されている。
【0077】
リニアアレイアンテナ4が平面フェイズドアレイアンテナ等より広い範囲からの反射波を受信可能であることについて説明する。一般に、平面フェイズドアレイアンテナは、平面フェイズドアレイアンテナを指向させた向きに沿った直線状の範囲からアンテナに向かう反射波を効率よく受信するよう制御される。これにより、平面フェイズドアレイアンテナは、指向させた向きにおける直線状の範囲からアンテナに向かう反射波を受信し得る。
【0078】
これに対し、リニアアレイアンテナ4は、リニアアレイアンテナ4の長手方向を中心軸とする円錐面状の範囲からアンテナに向かう反射波を効率よく受信する向きに制御することが可能である。これにより、リニアアレイアンテナ4は、指向させた向きにおける円錐面状の範囲からアンテナに向かう反射波を受信し得る。そして、円錐面状の範囲は、直線状の範囲より広い。したがって、レーダ装置1がリニアアレイアンテナ4を備えることにより、平面フェイズドアレイアンテナを用いる場合より広い範囲からの反射波を受信可能なフェイズドアレイアンテナを構成し得る。
【0079】
必須の態様ではないが、1以上のリニアアレイアンテナ4それぞれが含む移相機43の数は、アンテナ素子44の数より1少ない数、アンテナ素子44の数と同じ数、及びアンテナ素子44の数より大きい数のいずれかであることが好ましい。移相機43の数がこれらの数のいずれかであることにより、複数のアンテナ素子44それぞれが送信する送信波の位相を制御し得る。また、これにより、複数のアンテナ素子44それぞれが受信する反射波の位相を制御し得る。したがって、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを制御し得る。以下では、1以上のリニアアレイアンテナ4それぞれが含む移相機43の数とアンテナ素子44の数とは、いずれも所定の数「n
P」であるものとして説明する。
【0080】
[リニアアレイアンテナ本体41]
リニアアレイアンテナ本体41は、複数のアンテナ素子44等のリニアアレイアンテナ4が含む各種の構成要素を支持可能に構成される。これにより、リニアアレイアンテナを構成するように複数のアンテナ素子44それぞれを配置できる。
【0081】
[分配器42]
分配器42は、送信機3から提供される送信信号を分配し、複数の移相機43それぞれに提供する。また、分配器42は、複数の移相機43それぞれを介して提供された反射波それぞれを合成し、コンバータ45に提供する。
【0082】
分配器42により、送信機3が複数の送信信号を生成可能な送信機でない場合であっても、複数の移相機43それぞれに送信信号を提供できる。分配器42により、複数の移相機43それぞれを介して提供された反射波それぞれが微弱な場合であっても、これらの反射波を合成して得られたより強い反射波をアナログ信号の態様でコンバータ45に提供し得る。
【0083】
分配器42は、合成器として用いることも可能な分配器である。以下、合成器として用いることも可能な分配器を、その用途によらず単に「分配器」と称する。分配器42は、特に限定されず、例えば、抵抗分配器、ウィルキンソン分配器、及びハイブリッド分配器等によって例示される従来技術の分配器でよい。分配器42は、2以上の従来技術の分配器を組み合わせた分配器でもよい。
【0084】
分配器42は、なかでも、ラダー型分配器を含むことが好ましい。ラダー型分配器は、変成器と、第1分配器伝送経路と、pの第2分配器伝送経路と、を有する分配器である。ラダー型分配器の特性インピーダンスZ
P[Ω]は、特に限定されない。
【0085】
第1分配器伝送経路は、端部が変成器と接続された伝送経路である。第1分配器伝送経路のインピーダンスは、Z
P/p[Ω]である。
【0086】
pの第2分配器伝送経路は、互いに間隔d
P[m]を空けて第1分配器伝送経路と接続された伝送経路である。pの第2分配器伝送経路のそれぞれは、送信用移相機43に送信信号を提供可能に構成される。pの第2分配器伝送経路のそれぞれについて、そのインピーダンスは、Z
P[Ω]である。
【0087】
間隔d
P[m]は、特に限定されないが、送信信号の波長λ[m]と略同じであることが好ましい。間隔d
P[m]がλ[m]と略同じであることにより、分配器42を介して提供された送信信号の位相を送信用移相機43において略同じにし得る。
【0088】
第2伝送経路の数pは、特に限定されないが、p=n
P又はp=n
P/2を満たす数であることが好ましい。第2伝送経路の数pがp=n
Pを満たす数であることにより、ラダー型分配器によりn
Pの移相機43に送信信号を分配し得る。また、ラダー型分配器によりn
Pの移相機43が提供する反射波を合成し得る。第2伝送経路の数pがp=n
P/2を満たす数であることにより、ウィルキンソン分配器等によって例示される従来技術の送信信号を2つに分配可能な分配器とラダー型分配器とを組合せ、n
Pの移相機43に送信信号を分配し得る。また、ウィルキンソン分配器等によって例示される従来技術の2つの反射波を合成可能な分配器とラダー型分配器とを組合せ、n
Pの移相機43が提供する反射波を合成し得る。
【0089】
変成器は、電圧及び/又は電流を変化させることが可能な変成器であり、送信機3と接続される。変成器のインピーダンスは、Z
P[Ω]である。変成器は、第1分配器伝送経路と接続される分配器伝送経路接続部と、送信機3及びコンバータ45と接続される外部接続部と、分配器伝送経路接続部と外部接続部とを接続する分配器中間部とを有する。中間部の長さは、d
P/p[m]である。分配器伝送経路接続部のインピーダンスZ
P0[Ω]と分配器中間部のインピーダンスZ
P1[Ω]と外部接続部のインピーダンスZ
P2[Ω]とは、以下の(1)式を満たす。
【数1】
【0090】
分配器42がラダー型分配器を含むことにより、インピーダンス整合を保ちつつ任意の数の移相機43に送信信号を分配し得る。これにより、所定の数n
Pが大きい数である場合に、インピーダンス整合を保ちつつn
Pの移相機43に送信信号を分配し得る。
【0091】
分配器42がラダー型分配器を含むことにより、インピーダンス整合を保ちつつ任意の数の移相機43が提供する反射波を合成し得る。これにより、所定の数n
Pが大きい数である場合に、インピーダンス整合を保ちつつn
Pの移相機43が提供する反射波を合成し得る。
【0092】
[移相機43]
移相機43は、分配器42によって分配される送信信号の位相を制御し、アンテナ素子44に提供する移相機である。また、移相機43は、アンテナ素子44から提供された反射波の位相を制御する移相機でもある。移相機43は、コントローラ2によって制御可能に構成される。移相機43は、特に限定されず、従来技術の移相器でよい。移相機43により、アンテナ素子44に提供される送信信号の位相を制御して送信波が指向する向きを制御し得る。また、移相機43により、反射波の位相を制御してリニアアレイアンテナ4が指向する向きを制御し得る。
【0093】
図1には、リニアアレイアンテナ4が含む移相機43として、第1移相機43aと、第2移相機43bと、第3移相機43cと、が示されている。これらの移相機43それぞれは、分配器42と接続されている。
【0094】
[アンテナ素子44]
アンテナ素子44は、移相器43によって位相を制御された送信信号に基づいて送信波を送信するアンテナ素子である。また、アンテナ素子44は、送信波が観測対象に入射することによって生じた反射波を受信するアンテナ素子でもある。アンテナ素子44は、受信した反射波をアナログ信号の態様で移相器43に提供可能である。
【0095】
送信波は、観測対象に入射することによって反射波を生じる波であれば特に限定されない。反射波は、送信波が観測対象に入射することによって生じる波であれば特に限定されない。送信波及び反射波は、電波及び/又は音波を含むことが好ましい。送信波が電波及び/又は音波を含むことにより、可視光線を減衰させる大気、雲、及び霧等の影響を受けることなく、広い範囲に電波及び/又は音波を含む送信波を送信し得る。反射波が電波及び/又は音波を含むことにより、可視光線を減衰させる大気、雲、及び霧等の影響を受けることなく、広い範囲から電波及び/又は音波を含む反射波を受信し得る。したがって、よりいっそう広い範囲にある観測対象の場所を推定可能なレーダ装置1を提供できる。
【0096】
アンテナ素子44は、リニアアレイアンテナ4の長手方向に沿って、リニアアレイアンテナを構成するようリニアアレイアンテナ本体41に配置される。アンテナ素子44により、送信信号に基づいて送信波を送信できる。アンテナ素子44により、反射波を受信できる。
【0097】
アンテナ素子44は、特に限定されず、送信波を送信可能であり、かつ、反射波を受信可能である従来技術のアンテナを用いて構成されたアンテナ素子でよい。送信波及び反射波が電波を含む場合、アンテナ素子44は、電波を送信及び受信可能なアンテナを含んで構成されることが好ましい。これにより、アンテナ素子44を介して電波を含む送信波を送信できる。また、アンテナ素子44を用いて電波を含む反射波を受信できる。
【0098】
送信波及び反射波が音波を含む場合、アンテナ素子44は、音波を生成可能なスピーカーと音波を受信可能な音波センサとを含んで構成されることが好ましい。これにより、アンテナ素子44を介して音波を含む送信波を送信できる。また、アンテナ素子44を用いて音波を含む反射波を受信できる。スピーカーと音波センサとは、一体に構成されていてもよく、別体に構成されていてもよい。
【0099】
アンテナ素子44は、無線通信で用いられる送信波を送信及び受信可能であることが好ましい。これにより、レーダ装置1を用いて無線通信を行い得る。
【0100】
図2は、アンテナ素子44が送信する送信波T及びアンテナ素子44が受信する反射波Rを示す概念図である。アンテナ素子44は、すべての方位に送信波Tを送信可能であり、すべての方位から反射波Rを受信可能である全方位アンテナを用いて構成されることが好ましい。これにより、送信波の位相を制御して送信波Tの向きをすべての方位に向けることがよりいっそう容易になる。また、これにより、アンテナ素子44からみた観測対象の方位にかかわらず、反射波Rを受信できる。
【0101】
必須の態様ではないが、アンテナ素子44は、実質的に無指向性のアンテナ素子であることが好ましい。ここでいう「実質的に無指向性」は、
図2に示す利得Gがアンテナ素子からみた方位によらず略同じであることを示す。送信波Tが電波を含む場合、ここでいう利得Gは、アンテナ素子からみた方位におけるアンテナの電界強度を等方性アンテナの場合の電界強度で割った比のことである。実質的に無指向性のアンテナ素子における利得Gの上限は、1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。利得Gの上限を上述のとおり定めることにより、送信波Tの向きをすべての方位に向けることがよりいっそう容易になる。また、アンテナ素子44からみた観測対象の方位にかかわらず、反射波Rをよりいっそう確実に受信できる。
【0102】
必須の態様ではないが、複数のアンテナ素子44のそれぞれは、所定の配置間隔s
P[m]で配されていることが好ましい。これにより、隣接する2つのアンテナ素子44が送信する送信波T及び反射波Rの位相それぞれに所定の位相差α
Pを与えることで、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを制御し得る。
【0103】
[コンバータ45]
コンバータ45は、分配器42から提供されたアナログ信号の態様の反射波Rをデジタル信号に変換する。コンバータ45は、このデジタル信号の態様の反射波Rを、コントローラ2に提供する。これにより、コントローラ2において実行される場所推定処理に適したデジタル信号の態様で、反射波Rをコントローラ2に提供できる。コンバータ45は、特に限定されず、従来技術のアナログ信号をデジタル信号に変換可能なコンバータでよい。
【0104】
[増幅器]
必須の態様ではないが、リニアアレイアンテナ4は、1以上の増幅器(図示せず)を含むことが好ましい。増幅器は、送信信号及び/又は反射波Rを増幅する増幅器である。増幅器を含むことにより、より強い送信波Tを送信できる。一般に、増幅された反射波Rは、増幅されない反射波Rより解析が容易である。したがって、増幅器により、反射波Rの解析をより容易に行い得る。増幅器は、特に限定されず、従来技術の増幅器でよい。
【0105】
増幅器の雑音指数の上限は、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。増幅器の雑音指数の上限を上述のように定めることにより、よりノイズが少ない送信波Tを送信し得る。これにより、観測対象の場所を推定する処理におけるノイズの影響を軽減し得る。増幅器の雑音指数の上限を上述のように定めることにより、よりノイズが少ない増幅された反射波Rを得ることができる。これにより、観測対象の場所を推定する処理におけるノイズの影響を軽減し得る。
【0106】
増幅器は、分配器42が提供する送信信号を増幅可能であることが好ましい。これにより、分配器42における分配で送信信号の強度が低下した場合に、送信信号を増幅して移相器に提供し得る。そして、より強い送信波Tを送信できる。これにより、送信波Tが観測対象に入射したときに生じる反射波Rをより強くできる。したがって、反射波Rを受信することがより容易になる。
【0107】
増幅器が、分配器42が提供する送信信号を増幅可能である場合、1以上のリニアアレイアンテナ4それぞれが含む増幅器の数は、n
P以上であることが好ましい。これにより、分配器42が提供する送信信号それぞれを増幅し、n
Pの移相機43に提供し得る。
【0108】
増幅器は、アンテナ素子44が提供する反射波Rを増幅可能であることが好ましい。これにより、移相器43に増幅された反射波Rを提供し得る。増幅器が、アンテナ素子44が提供する反射波Rを増幅可能である場合、1以上のリニアアレイアンテナ4それぞれが含む増幅器の数は、n
P以上であることが好ましい。これにより、n
Pのアンテナ素子44が提供する反射波Rそれぞれを増幅し、n
Pの移相機43に提供し得る。
【0109】
[受信用周波数変換器]
必須の態様ではないが、リニアアレイアンテナ4は、1以上の周波数変換器(図示せず)を含むことが好ましい。周波数変換器は、アンテナ素子44に提供される送信信号の周波数を変換可能であり、アンテナ素子44から提供される反射波Rの周波数を変換可能である周波数変換器である。
【0110】
一般に、周波数がより高い電気信号を処理するほど、該信号を処理する部材の構成がより複雑になり、費用対効果等がより低下する。周波数変換器により、送信機3、分配器42、移相機43、及び/又は、増幅器等が処理する送信信号の周波数を送信波Tの周波数より低い周波数とし得る。また、周波数変換器により、増幅器、移相機43、分配器42、及び/又はコンバータ45等が処理する反射波Rの周波数を反射波Rの周波数より低い周波数とし得る。したがって、これらの構成要素の構成をより簡単にし、レーダ装置1の費用対効果等を改善し得る。
【0111】
周波数変換器の数は、n
P以上であることが好ましい。周波数変換器の数がn
P以上であることにより、分配器42によって分配された送信信号の周波数をそれぞれ変換し得る。これにより、送信機3と分配器42とを送信波Tの周波数より低い周波数を処理するよう構成し得る。また、周波数変換器の数がn
P以上であることにより、移相機43、及び/又は、増幅器を送信波Tの周波数より低い周波数を処理するよう構成し得る。周波数変換器の数がn
P以上であることにより、n
Pのアンテナ素子44が受信した反射波Rの周波数それぞれを変換し得る。これにより、分配器42とコンバータ45とを反射波Rの周波数より低い周波数を処理するよう構成し得る。また、増幅器及び/又は移相機43を反射波Rの周波数より低い周波数を処理するよう構成し得る。
【0112】
周波数変換器は、特に限定されず、従来技術の周波数変換器でよい。周波数変換器は、例えば、所定の周期的な信号LO
P(この信号は、通常LOと呼ばれる信号であるが、後に説明する第2実施形態における特定の周期的な信号と区別するために所定の周期的な信号LO
Pと記載する。)と送信波T及び/又は反射波Rとを合成することで送信波T及び/又は反射波Rの周波数を変換するミキサでよい。所定の周期的な信号LO
Pと送信信号とを合成することにより、送信信号の周波数を、所定の周期的な信号LO
Pの周波数と送信信号の周波数との和の周波数に変換できる。所定の周期的な信号LO
Pと反射波Rとを合成することにより、反射波Rの周波数を、所定の周期的な信号LO
Pの周波数と反射波Rの周波数との差の周波数に変換できる。
【0113】
〔支持構造5〕
支持構造5は、1以上のリニアアレイアンテナ4を支持可能である。支持構造5は、特に限定されず、従来技術の支持構造でよい。支持構造5は、1以上のリニアアレイアンテナ4それぞれの位置関係を所定の位置関係に保つよう支持可能であることが好ましい。これにより、後述する場所推定処理を、より容易に行い得る。
【0114】
〔フローチャート〕
図3は、コントローラ2で実行される場所推定処理の流れの一例を示すフローチャート図である。以下、
図3を用いてコントローラ2が行う場所推定処理の好ましい手順の一例を説明する。
【0115】
[ステップS1:リニアアレイアンテナが指向する向きを変更するか否かを判別]
コントローラ2は、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するか否かを判別する(ステップS1)。リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するならば、コントローラ2は、処理をステップS2に移す。リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更しないならば、コントローラ2は、処理をステップS3に移す。リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するか否かを判別することにより、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更すると判別する場合にリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理を実行できる。
【0116】
リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するか否かを判別する方法は、特に限定されない。リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するか否かを判別する方法は、例えば、リニアアレイアンテナ4から観測対象に向かう向きとリニアアレイアンテナ4が指向する向きとが異なる場合にリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更すると判別する方法を含むことが好ましい。これにより、リニアアレイアンテナ4から観測対象に向かう向きとリニアアレイアンテナ4が指向する向きとが異なる場合にリニアアレイアンテナ4が指向する向きをリニアアレイアンテナ4から観測対象への向きに制御できる。
【0117】
リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するか否かを判別する方法は、例えば、レーダ装置1を利用する利用者が指向する向きを変更する指令を行ったことに応じて、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更すると判別する方法を含むことが好ましい。これにより、レーダ装置1を利用する利用者の指令に応じてリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更できる。
【0118】
[ステップS2:リニアアレイアンテナが指向する向きを変更]
コントローラ2は、複数の移相機43を介して送信波T及び反射波Rの位相それぞれを制御し、1以上のリニアアレイアンテナ4が指向する向きそれぞれを変更する(ステップS2)。コントローラ2は、処理をステップS3に移す。
【0119】
複数の移相機43を介して送信波T及び反射波Rの位相それぞれを制御し、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理は、特に限定されない。リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理は、従来技術のフェイズドアレイアンテナにおけるアレイアンテナが指向する向きを変更する処理を含むことが好ましい。複数のアンテナ素子44のそれぞれが所定の配置間隔s
P[m]で配されている場合、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理は、例えば、隣接する2つのアンテナ素子44が送信する送信波Tの位相及び受信する反射波Rの位相それぞれに所定の位相差α
Pを与える処理でよい。これにより、リニアアレイアンテナ4が指向する向きをリニアアレイアンテナ4の長手方向を中心軸とする円錐面状の範囲に向かう向きに制御し得る。
【0120】
続いて、送信波Tを送信するときのアンテナが指向する向きについて説明する。レーダ装置では、送信用アンテナと受信用アンテナとを同じ向きに指向させることにより、反射波Rにおける利得をよりいっそう高め、探知可能距離をよりいっそう長くし得る。これにより、レーダ装置は、よりいっそう広い範囲にある観測対象の場所を推定し得る。
【0121】
送信波Tを送信する1以上のリニアアレイアンテナ4と、送信波Tを送信したリニアアレイアンテナ4と同じ及び/又は異なり、反射波Rを受信する1以上のリニアアレイアンテナ4とは、いずれもリニアアレイアンテナである。したがって、ステップS2で実行される処理により、送信波Tを送信するときのリニアアレイアンテナ4が指向する向きと反射波Rを受信するときのリニアアレイアンテナ4が指向する向きとを同じ円錐面状の向きにし得る。これにより、反射波Rに関する利得を高め、レーダ装置1の探知可能距離をよりいっそう長い距離にし得る。したがって、広い範囲にある観測対象の場所を推定し得る。
【0122】
リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理は、送信波T及び反射波Rの位相を制御してリニアアレイアンテナ4が指向する向きをリニアアレイアンテナ4から観測対象への向きに制御する処理を含むことが好ましい。リニアアレイアンテナ4が指向する向きをリニアアレイアンテナ4から観測対象への向きに制御するとは、リニアアレイアンテナ4を円錐面状に指向させ、観測対象が該円錐面の側面及び/又は該円錐面の側面近傍に含まれるようにすることである。
【0123】
これにより、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを、リニアアレイアンテナ4から観測対象への向きに制御して、観測対象に入射する送信波Tの利得をよりいっそう高め得る。また、反射波Rの利得をよりいっそう高め得る。観測対象に入射する送信波Tの利得と反射波Rの利得とをともに高め得るため、レーダ装置1の探知可能距離をよりいっそう長い距離にし得る。したがって、よりいっそう広い範囲にある観測対象の場所を推定し得る。
【0124】
リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するか否かを判別する方法がレーダ装置1を利用する利用者が指向する向きを変更する指令を行ったことに応じて、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更すると判別する方法を含む場合、リニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理は、利用者の指令に応じた向きにリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更する処理を含むことが好ましい。これにより、利用者の指令に応じてリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更し得る。
【0125】
[ステップS3:送信波を送信するか否かを判別]
コントローラ2は、送信波Tを送信するか否かを判別する(ステップS3)。送信波Tを送信するならば、コントローラ2は、処理をステップS4に移す。送信波Tを送信しないならば、コントローラ2は、処理をステップS1に移し、ステップS1からステップS8の処理を繰り返す。送信波Tを送信するか否かを判別することにより、送信波Tを送信すると判別する場合にのみ送信波Tを送信できる。送信波Tを送信するか否かを判別する処理は、特に限定されない。
【0126】
送信機3がリニアアレイアンテナ4にパルス波である送信波Tを送信させるパルス波送信信号を提供する場合、送信波Tを送信するか否かを判別する処理は、パルス波を送信する場合に送信波Tを送信すると判別し、パルス波を送信しない場合に送信波Tを送信しないと判別する処理を含むことが好ましい。これにより、断続的に送信されるパルス波を送信できる。
【0127】
送信機3がリニアアレイアンテナ4にチャープ波である送信波Tを送信させるチャープ波送信信号を提供する場合、送信波Tを送信するか否かを判別する処理は、チャープ波を送信する場合に送信波Tを送信すると判別し、チャープ波を送信しない場合に送信波Tを送信しないと判別する処理を含むことが好ましい。これにより、チャープ波送信信号に応じて断続的に送信されるチャープ波を送信できる。
【0128】
送信波Tを送信するか否かを判別する処理は、レーダ装置1を利用する利用者が送信波Tの送信開始を指令してから送信波Tの送信停止を指令するまでの間において送信波Tを送信すると判別する処理と、レーダ装置1を利用する利用者が送信波Tの送信停止を指令してから送信波Tの送信開始を指令するまでの間において送信波Tを送信しないと判別する処理と、を含むことが好ましい。これにより、レーダ装置1を利用する利用者の指令に応じて送信波Tを送信できる。
【0129】
[ステップS4:送信信号を提供するよう制御]
コントローラ2は、リニアアレイアンテナ4に送信波Tを送信させる送信信号を提供するよう送信機3を制御する(ステップS4)。コントローラ2は、処理をステップS5に移す。リニアアレイアンテナ4に送信波Tを送信させる送信信号を提供するよう送信機3を制御することにより、リニアアレイアンテナ4を介して送信波Tを送信できる。
【0130】
従来技術の直線状に送信される送信波Tと、本実施形態の円錐面状に指向する送信波Tとの違いについて説明する。
図4は、従来技術の送信用アンテナPから送信される送信波Tを示す概念図である。
図5は、リニアアレイアンテナ4から送信される、円錐面状に指向する送信波Tを示す概念図である。従来技術の送信用アンテナPから送信される送信波Tは、直線状の範囲に送信される(
図4)。しかし、本実施形態のリニアアレイアンテナ4から送信される送信波Tは、円錐面状の範囲に送信される(
図5)。ここでいう円錐面状の範囲は、円錐の側面に沿った範囲であり、円錐の内部を含まない。
【0131】
本実施形態のリニアアレイアンテナ4から送信される送信波Tは、円錐面状の範囲に送信されるため、直線状の範囲に送信される送信波Tより広い範囲に送信される。本実施形態のリニアアレイアンテナ4から送信される送信波Tは、円錐面状の範囲に送信されるため、円錐の側面と円錐の内部とを含む範囲(扇状の範囲とも称する。)に送信される送信波より狭い範囲に送信される。これにより、観測対象に入射する送信波Tの強度を扇状の範囲に送信される送信波より高くできる。
【0132】
送信信号は、特に限定されない。送信信号は、例えば、リニアアレイアンテナ4にパルス波である送信波Tを送信させるパルス波送信信号、リニアアレイアンテナ4にチャープ波である送信波Tを送信させるチャープ波送信信号、及び/又はリニアアレイアンテナ4に周波数変調連続波である送信波Tを送信させる周波数変調連続波送信信号を含む。
【0133】
送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を測定するためには、反射波Rを生じさせた送信波Tを識別する必要がある。しかし、周波数変調されない送信波Tを連続的に送信する場合、反射波Rを生じさせた送信波Tを識別することが難しい。したがって、周波数変調されない送信波Tを連続的に送信する場合、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を測定することに困難が生じ得る。
【0134】
送信信号がパルス波送信信号を含むことにより、リニアアレイアンテナ4は、パルス波を含む送信波Tを送信できる。これにより、反射波Rを生じさせた送信波Tを識別し、パルス波を含む送信波Tと反射波Rとを対応付け得る。したがって、パルス波を含む送信波Tが送信されてから反射波Rを受信するまでの時間を、周波数変調を行わない連続波を送信する場合より正確に測定できる。
【0135】
送信信号がチャープ波送信信号を含むことにより、リニアアレイアンテナ4がチャープ波を送信できる。これにより、チャープ波を含む送信波Tがパルス波より長い時間送信される場合であっても、チャープ波を含む送信波Tが送信されてから反射波Rが受信されるまでの時間を反射波Rの周波数を用いて測定できる。
【0136】
送信信号がパルス波送信信号及び/又はチャープ波送信信号を含むことにより、送信波Tを断続的に送信するため、反射波Rと該反射波Rを生じさせた送信波Tとを容易に対応付けし得る。これにより、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を容易に測定できる。
【0137】
また、これにより、リニアアレイアンテナ4が送信波Tを送信していないときに、このリニアアレイアンテナ4で反射波Rを受信し得る。したがって、反射波Rを送信する別のアンテナを有することなく反射波Rを受信できる。これにより、反射波Rを受信する別のアンテナを有するレーダ装置より簡易な構造を有するよう、レーダ装置1を構成し得る。したがって、レーダ装置1の対費用効果及び/又は保守性等を改善し得る。
【0138】
送信信号が周波数変調連続波送信信号を含むことにより、リニアアレイアンテナ4が周波数変調連続波を送信できる。これにより、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を送信波Tの周波数と反射波Rの周波数との比較を用いて測定し得る。したがって、送信波Tが断続的に送信される送信波Tでない場合であっても、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を測定し得る。また、送信信号が周波数変調連続波送信信号を含むことにより、より多くの送信波Tを観測対象に入射させ、より多くの反射波Rを生じさせ得る。
【0139】
送信信号が周波数変調連続波送信信号を含み、送信波Tを送信するリニアアレイアンテナ4と反射波Rを受信するリニアアレイアンテナ4とが互いに異なる場合、コントローラ2は、送信波Tを送信するリニアアレイアンテナ4と異なるリニアアレイアンテナ4について、反射波Rを受信するよう該リニアアレイアンテナ4を制御することが好ましい。これにより、反射波を受信する間であっても、送信波を送信できる。
【0140】
図3に戻る。送信信号がパルス波送信信号及び/又はチャープ波送信信号を含む場合、コントローラ2は、ステップS5に示す反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理を実行することが好ましい。
【0141】
[ステップS5:反射波を受信するようリニアアレイアンテナを制御]
コントローラ2は、反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する(ステップS5)。コントローラ2は、処理をステップS6に移す。これにより、反射波Rを受信できる。反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理は、特に限定されない。
【0142】
反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理は、ステップS4で送信波Tを送信するリニアアレイアンテナ4と同じリニアアレイアンテナ4について、反射波Rを受信するよう該リニアアレイアンテナ4を制御する処理を含むことが好ましい。これにより、送信波Tを送信したリニアアレイアンテナ4の場所で反射波Rを受信できる。これにより、送信波Tの向きと反射波Rの向きとが送信波Tを送信したリニアアレイアンテナ4と異なる場所で反射波Rを受信する場合より一致する。したがって、送信波Tを送信するときと反射波Rを受信するときとでリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更することなく、反射波Rに関する利得を高め得る。これにより、レーダ装置1の探知可能距離をよりいっそう長い距離にし得る。したがって、広い範囲にある観測対象の場所を推定し得る。
【0143】
また、反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理がステップS4で送信波Tを送信するリニアアレイアンテナ4と同じリニアアレイアンテナ4について、反射波Rを受信するよう該リニアアレイアンテナ4を制御する処理を含むことにより、送信波Tを送信する別のアンテナを有することなく送信波Tを送信できる。これにより、送信波Tを送信する別のアンテナを有するレーダ装置より簡易な構造を有するよう、レーダ装置1を構成し得る。したがって、レーダ装置1の対費用効果及び/又は保守性等を改善し得る。
【0144】
リニアアレイアンテナ4の数が2以上である場合、反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理は、ステップS4で送信波Tを送信するリニアアレイアンテナ4と異なるリニアアレイアンテナ4について、反射波Rを受信するよう該リニアアレイアンテナ4を制御する処理を含むことが好ましい。これにより、周波数変調した送信波Tを連続的に送信する場合であっても、送信波Tを送信したリニアアレイアンテナ4とは異なるリニアアレイアンテナ4で反射波Rを受信できる。これにより、より多くの送信波Tを観測対象に入射させ、より多くの反射波Rを生じさせ得る。
【0145】
リニアアレイアンテナ4の数が2以上である場合、反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理は、2以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するよう制御する処理を含むことが好ましい。これにより、観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理については、後に
図8を用いてより詳細に説明する。
【0146】
リニアアレイアンテナ4の数が3以上であり、少なくとも3以上のリニアアレイアンテナ4が非直線的に配置されている場合、反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理は、非直線的に配置された3以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するよう制御する処理を含むことが好ましい。これにより、観測対象の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を特定する処理については、後に
図9を用いてより詳細に説明する。
【0147】
[ステップS6:反射波を所定の時間受信]
コントローラ2は、1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波を所定の時間受信するよう制御する(ステップS6)。コントローラ2が反射波を所定の時間受信するよう制御することにより、受信した反射波を用いて送信波を送信してからリニアアレイアンテナ4が反射波を受信するまでの時間を測定し、観測対象の場所を推定する処理を実行できる。所定の時間は、特に限定されず、例えば、パルス波及び/又はチャープ波の送信周期に応じた時間、あるいは、周波数変調連続波が変調を繰り返す周期に応じた時間等でよい。
【0148】
[ステップS7:送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定]
コントローラ2は、反射波を生じた1以上の観測対象のそれぞれについて、送信波Tを送信してから1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するまでの時間それぞれを測定する(ステップS7)。コントローラ2は、処理をステップS8に移す。これにより、観測対象の場所を推定する処理において用いる送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を得られる。
【0149】
送信波Tを送信してから1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するまでの時間それぞれを測定する処理(以下、単に「反射波受信時間測定処理」とも称する。)は、特に限定されない。
【0150】
送信波Tがパルス波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、パルス波を送信した時間から1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rをそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理を含むことが好ましい。これにより、パルス波と反射波Rとを対応付けて、反射波Rを受信するまでの時間を、周波数変調を行わない連続波を送信する場合より正確に測定できる。
【0151】
送信波Tがチャープ波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、チャープ波と反射波Rとの位相差及び/又は周波数差を用いてチャープ波を送信した時間から1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rをそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理を含むことが好ましい。チャープ波と反射波Rとの位相差及び/又は周波数差を用いることで、パルス波より長い時間送信されるチャープ波であっても、反射波Rを受信するまでの時間を測定できる。したがって、より多くの送信波Tを観測対象に入射させ得る。そして、より多くの反射波Rを生じさせ得る。これにより、送信波Tがパルス波である場合より、多くの反射波Rを受信し得る。これにより、観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0152】
送信波Tが周波数変調連続波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、反射波Rから送信波Tを取り除く処理を含むことが好ましい。送信波Tを連続的に送信する場合、リニアアレイアンテナ4は、反射波Rを受信するときに送信波Tをも受信し得る。受信した送信波Tは、反射波Rを用いた処理においてノイズとなり得る。反射波受信時間測定処理が反射波Rから送信波Tを取り除く処理を含むことにより、反射波Rから送信波Tを取り除き、受信した送信波Tがノイズとなることを防ぎ得る。反射波Rから送信波Tを取り除く処理は、特に限定されず、従来技術の反射波Rから送信波Tを取り除く処理でよい。
【0153】
図6は、フィードバック信号Fを用いて反射波Rに干渉する送信波Tiを軽減することを示す概念図である。反射波Rから送信波Tを取り除く処理は、例えば、
図6に示す位相を反転させた送信波Tを用いて生成されたフィードバック信号Fを反射波Rに加え、反射波Rに干渉する送信波Tiを取り除く処理でよい。
【0154】
送信波Tが周波数変調連続波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、送信波Tの周波数と反射波Rの周波数との比較を用いて、送信波Tを送信してから1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rをそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理を含むことが好ましい。これにより、連続的に送信される周波数変調連続波であっても、反射波Rを受信するまでの時間を測定できる。したがって、より多くの送信波Tを観測対象に入射させ得る。これにより、そして、より多くの反射波Rを生じさせ得る。送信波Tが断続的に送信されるパルス波及び/又はチャープ波である場合より、多くの反射波Rを受信し得る。これにより、観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0155】
送信波Tが周波数変調連続波を含む場合に反射波受信時間測定処理が反射波Rから送信波Tを取り除く処理と送信波Tの周波数と反射波Rの周波数との比較を用いて送信波Tを送信してから1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rをそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理とを含むことにより、観測対象においてより多くの反射波Rを生じさせることと、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を測定することとを同時に達成し得る。これにより、より多くの反射波Rを受信して観測対象の場所をよりいっそう確実に推定し得る。
【0156】
[ステップS8:観測対象ごとに観測対象の場所を推定]
図3に戻る。コントローラ2は、反射波Rを生じた1以上の観測対象のそれぞれについて、送信波Tを送信してから1以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rをそれぞれ受信するまでの時間それぞれを用いて、観測対象の場所を推定する(ステップS8)。コントローラ2は、処理をステップS1に移し、ステップS1からステップS8の処理を繰り返す。これにより、反射波Rを生じた1以上の観測対象のそれぞれについて、観測対象の場所を推定きる。観測対象の場所を推定する処理は、特に限定されない。
【0157】
観測対象の場所を推定する処理は、観測対象の場所を含む略円形の空間を特定する処理を含むことが好ましい。
【0158】
リニアアレイアンテナ4から反射波Rを生じた観測対象の場所へ向かう向きは、送信波Tの向きと同じ向きである。ステップS4の処理では、円錐面状の向きに指向するリニアアレイアンテナ4を用いて送信波Tを送信する。したがって、観測対象の場所は、この円錐面及びその周囲に含まれる。送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間は、リニアアレイアンテナ4から観測対象までの距離に応じて異なる。したがって、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を用いてリニアアレイアンテナ4から観測対象までの距離を測定し得る。
【0159】
この円錐面の頂点の場所は、リニアアレイアンテナ4の場所と同じである。したがって、この円錐面及びその周囲に含まれ、かつ、リニアアレイアンテナ4からの距離が測定された距離を満たす空間は、略円形の空間となる。したがって、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間と送信波Tの向きとを用いて観測対象の場所を含む略円形の空間を特定できる。
【0160】
リニアアレイアンテナ4の数が2以上であり、ステップS5において反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理が2以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するよう制御する処理を含む場合、観測対象の場所を推定する処理は、観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理を含むことが好ましい。
【0161】
ステップS5において反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理が2以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するよう制御する処理を含むため、2以上のリニアアレイアンテナ4が受信した反射波Rそれぞれを用いて2以上の略円形の空間を特定できる。これら2以上の略円形の空間を用いて、2の交点を特定できる。したがって、観測対象の場所を推定する処理が2の場所を特定する処理を含むよう構成できる。
【0162】
リニアアレイアンテナ4の数が3以上であり、ステップS5において反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理が3以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するよう制御する処理を含む場合、観測対象の場所を推定する処理は、観測対象の場所を特定する処理を含むことが好ましい。
【0163】
ステップS5において反射波Rを受信するようリニアアレイアンテナ4を制御する処理が3以上のリニアアレイアンテナ4が反射波Rを受信するよう制御する処理を含むため、3以上のリニアアレイアンテナ4が受信した反射波Rそれぞれを用いて3以上の略円形の空間を特定できる。そして、これら3以上の略円形の空間の交点を用いて、観測対象の場所を特定できる。
【0164】
<使用例>
図7は、送信波Tの向きと第1リニアアレイアンテナ4aが第1反射波R1を受信するまでの時間とを用いて観測対象O1の場所を推定する処理を示す概念図である。
図8は、送信波Tの向きと第1リニアアレイアンテナ4a及び第2リニアアレイアンテナ4bが第1反射波R1をそれぞれ受信するまでの時間と到来角の検出とを用いて観測対象O1の場所を含む2の場所を特定する処理を示す概念図である。
図9は、送信波Tの向きと第1リニアアレイアンテナ4a、第2リニアアレイアンテナ4b、及び第3リニアアレイアンテナ4cが第1反射波R1をそれぞれ受信するまでの時間と到来角の検出とを用いて観測対象O1の場所を特定する処理を示す概念図である。以下、必要に応じて
図7から
図9を用いて、本実施形態におけるレーダ装置1の使用例を説明する。
【0165】
〔送信波の向きを変更〕
レーダ装置1を利用する利用者は、リニアアレイアンテナ4から観測対象に向かう向きにリニアアレイアンテナ4が指向する向きを変更するようコントローラ2に指令する。コントローラ2は、第1リニアアレイアンテナ4a、第2リニアアレイアンテナ4b、及び第3リニアアレイアンテナ4cを制御し、これらのリニアアレイアンテナ4から観測対象に向かう向きにこれらのリニアアレイアンテナ4が指向する向きを制御する。
【0166】
〔送信波を送信〕
レーダ装置1を利用する利用者は、送信波Tを送信するようコントローラ2に指令する。コントローラ2は、リニアアレイアンテナ4に送信波Tを送信させる送信信号を提供するよう送信機3を制御する。送信機3は、リニアアレイアンテナ4に送信信号を提供する。そして、リニアアレイアンテナ4から送信波Tが送信される。
【0167】
〔反射波を受信〕
コントローラ2は、送信波Tが第1観測対象O1に入射して生じた第1反射波R1を受信するよう、第1リニアアレイアンテナ4a、第2リニアアレイアンテナ4b、及び第3リニアアレイアンテナ4cのそれぞれを制御する。第1リニアアレイアンテナ4a、第2リニアアレイアンテナ4b、及び第3リニアアレイアンテナ4cは、第1反射波R1をそれぞれ受信する。
【0168】
〔反射波を受信するまでの時間を測定〕
コントローラ2は、送信波Tを送信してから、第1リニアアレイアンテナ4a、第2リニアアレイアンテナ4b、及び第3リニアアレイアンテナ4cのそれぞれが第1反射波R1を受信するまでの時間を測定する。
【0169】
〔観測対象の場所を推定〕
コントローラ2は、測定した第1反射波R1を受信するまでの時間を用いて、第1観測対象O1の場所を推定する。
【0170】
[略円形の空間を特定する処理]
図7を用いて、レーダ装置1が第1リニアアレイアンテナ4aのみを備える場合における第1観測対象O1の場所を含む略円形の空間を特定する処理について説明する。
【0171】
リニアアレイアンテナ4aが指向する円錐面状の向きに送信された送信波Tは、第1観測対象O1に入射する。そして、第1反射波R1を生じる。この第1反射波R1は、送信波Tと同じ向きでリニアアレイアンテナ4aに受信される。これにより、まず、リニアアレイアンテナ4aが指向する円錐面状の範囲に第1観測対象O1の場所が含まれることを推定できる。
【0172】
測定した第1反射波R1を受信するまでの時間は、第1リニアアレイアンテナ4aから第1観測対象O1までの第1距離D1に応じて定まる。したがって、測定した第1反射波R1を受信するまでの時間を用いて、第1リニアアレイアンテナ4aから第1観測対象O1までの第1距離D1を測定できる。
【0173】
リニアアレイアンテナ4aが指向する円錐面状の範囲に含まれ、かつ、第1リニアアレイアンテナ4aから第1観測対象O1までの距離が第1距離D1である空間は、
図7に示す略円形の第1空間A1である。したがって、送信波Tを送信してから第1反射波R1を受信するまでの時間と送信波Tの向きとを用いて第1観測対象O1の場所を含む略円形の第1空間A1を特定できる。これにより、第1観測対象O1の場所が第1空間A1に含まれることを推定できる。
【0174】
[2の場所を特定する処理]
図8を用いて、レーダ装置1が第1リニアアレイアンテナ4aと第2リニアアレイアンテナ4bとを備える場合における第1観測対象O1の場所を含む2の場所を特定する処理について説明する。
【0175】
レーダ装置1が第1リニアアレイアンテナ4aと第2リニアアレイアンテナ4bとを備える場合、第1リニアアレイアンテナ4aが受信した第1反射波R1を用いて、第1観測対象O1の場所を含む略円形の第1空間A1を特定できる。
【0176】
3次元空間において、異なる場所にある2点からの距離それぞれが既知である点の場所は、これら2点を通る直線上に中心を有し、該直線に垂直な平面に含まれる円形領域に含まれることが知られている。また、所定の場所からの距離と、所定の場所からの距離と所定の場所と異なる場所からの距離との差とが既知である点の場所は、これら2の場所を通る直線上に中心を有し、該直線に垂直な平面に含まれる円形領域に含まれることが知られている。
【0177】
したがって、送信波Tを送信してから第1リニアアレイアンテナ4aが第1反射波R1を受信するまでの時間と送信波Tを送信してから第2リニアアレイアンテナ4bが第1反射波R1を受信するまでの時間との差に関する情報(例えば、第1リニアアレイアンテナ4a及び第2リニアアレイアンテナ4bが受信した第1反射波R1それぞれの位相差及び/又は周波数差等)を用いて、第1観測対象O1の場所を含む略円形の第2空間A2を特定できる。したがって、平面上にある2つの円の交点を求める処理によって、第1観測対象O1の場所を含む2の場所(第1場所L1及び第2場所L2)を特定できる。したがって、第1観測対象O1の場所が含まれ得る2の場所(第1場所L1及び第2場所L2)を推定できる。レーダ装置1が地上に設置されている場合等の、第1観測対象O1がある場所がレーダ装置1を中心とする略半球状の範囲にあることが既知である場合、第1観測対象O1の場所が第1場所L1であることを推定できる。
【0178】
第2空間A2を特定する処理が第1リニアアレイアンテナ4a及び第2リニアアレイアンテナ4bのそれぞれが受信する第1反射波R1それぞれの位相差及び/又は周波数差を用いて第2空間A2を特定する処理を含む場合、第2空間A2を特定する処理は、例えば、以下に示す(2)式に関する計算を含むことが好ましい。アクサンシルコンフレックス(^、ハット記号とも称する。)を伴うrによって示される第1観測対象方向ベクトルは、第1リニアアレイアンテナ4aの場所等によって例示される所定の場所(所定の場所は、特に限定されない。以下、所定の場所は、第1リニアアレイアンテナ4aの場所であるものとして説明する。)から第1観測対象A1へ向かう向きと同じ向きを有する単位ベクトルである。iは、リニアアレイアンテナ4の数以下の自然数である。第iリニアアレイアンテナベクトルr
iは、所定の場所を基準とした場合の第iリニアアレイアンテナ(例えば、i=2の場合、第2リニアアレイアンテナ4b)の場所に関する位置ベクトルである。第iリニアアレイアンテナベクトルr
iは、x軸方向成分x
i、y軸方向成分y
i、及びz軸方向成分z
iを有する。第1角度θは、z軸方向とベクトルrとがなす角度である。第2角度φは、xy平面に第1観測対象ベクトルrを投影して得られるベクトルとx軸方向とがなす角度である。第1角度θと第2角度φとは、いずれも第1リニアアレイアンテナ4aが受信する第1反射波R1の向きに関する角度である。第1リニアアレイアンテナ4aが受信する第1反射波R1の向きに関する角度を到来角とも称する。
【数2】
【0179】
複数のリニアアレイアンテナ4が受信する反射波それぞれの位相差及び/又は周波数差は、基準となる所定の場所から観測対象へ向かう向きと所定の場所を基準とした場合の複数のリニアアレイアンテナ4それぞれの場所とに応じた差となることが知られている。例えば、第1リニアアレイアンテナ4a及び第2リニアアレイアンテナ4bのそれぞれが受信する第1反射波R1それぞれの位相差及び/又は周波数差は、第1リニアアレイアンテナ4aから第1観測対象A1へ向かう向きと第1リニアアレイアンテナ4aの場所を基準とした場合の第2リニアアレイアンテナ4bの場所とに応じた差となる。したがって、例えば、第1リニアアレイアンテナ4a及び第2リニアアレイアンテナ4bのそれぞれが受信する第1反射波R1それぞれの位相差及び/又は周波数差を用いて、第1リニアアレイアンテナ4aの場所を基準とし、i=2である場合の(2)式の左辺の値を特定し得る。(2)式の左辺の値を特定することにより、第1角度θ及び第2角度φに関する式を得ることができる。
【0180】
したがって、第2空間A2を特定する処理が(2)式に関する計算を含むことにより、第1角度θ及び第2角度φに関する式を得ることができる。すなわち、第1反射波R1の到来角に関する式を得ることができる。送信波Tを送信してから第1リニアアレイアンテナ4aが第1反射波R1を受信するまでの時間と第1角度θ及び第2角度φに関する式とを用いて、略円形の第2空間A2を特定し得る。そして、第1空間A1と第2空間A2とを用いて、第1観測対象O1の場所を含む2の場所(第1場所L1及び第2場所L2)を推定できる。
【0181】
[観測対象の場所を特定する処理]
図9を用いて、レーダ装置1が第1リニアアレイアンテナ4aと第2リニアアレイアンテナ4bと第3リニアアレイアンテナ4cとを備える場合における第1観測対象O1の場所を特定する処理について説明する。
【0182】
2の場所を特定する処理において説明したように、第1リニアアレイアンテナ4aと第2リニアアレイアンテナ4bとがそれぞれ第1反射波R1を受信した時間等を用いて、第1観測対象O1の場所が含まれ得る2の場所(第1場所L1及び第2場所L2)を推定できる。また、送信波Tを送信してから第1リニアアレイアンテナ4aが第1反射波R1を受信するまでの時間と送信波Tを送信してから第3リニアアレイアンテナ4cが第1反射波R1を受信するまでの時間との差を用いて、第1観測対象O1の場所を含む略円形の第3空間A3を特定できる。
【0183】
したがって、第1場所L1と第2場所L2とのうち、いずれの場所が第3空間A3に含まれるかを判別する処理によって、第1観測対象O1の場所(第1場所L1)を特定できる。
【0184】
〔飛行体への搭載〕
レーダ装置1は、ドローン等の無人航空機、ヘリコプター、マルチコプター、気球、飛行船、旅客機、及び貨物機等によって例示される飛行体に搭載するレーダ装置として利用可能である。
【0185】
直線状に指向させて用いる従来技術のレーダ装置を用いて広い方位範囲から反射波を受信する場合、該レーダ装置を回転させる回転機構が必要となり得る。あるいは、反射波を受信する方位ごとに複数のレーダ装置を備える必要があり得る。飛行体に回転機構及び/又は複数のレーダ装置を搭載することにより、飛行体の重量が増加し得る。飛行体の重量が増加すると、航行速度、航続距離、積載量、飛行時の安定性等によって例示される飛行体の性能が低下し得る。
【0186】
レーダ装置1は、広い範囲からの反射波を受信可能であるため、回転機構を必要とせず、複数のレーダ装置1を備える必要もない。これにより、飛行体の重量増加を防ぎ、飛行体の性能低下を防ぎ得る。
【0187】
〔車両への搭載〕
レーダ装置1は、乗用車、輸送車、及び作業用車両等によって例示される車両に搭載するレーダ装置として利用可能である。
【0188】
車両周辺にある観測対象(例えば、対向車、後続車、及び先行車等。)の場所を車両に搭載するレーダ装置を用いて推定することが行われている。車両周辺にある観測対象の場所を推定することにより、車両と観測対象とが衝突する事故等を防ぎ得る。
【0189】
ところで、車両周辺にある観測対象が走行中の車両である場合、レーダ装置から観測対象へ向かう向きが短時間で大きく変化し得る。直線状に指向させて用いる従来技術のレーダ装置と回転機構とを組み合わせた装置を用いてこのような観測対象の場所を推定する場合、回転機構によるレーダ装置の回転が向きの変化に追従できない場合があり得る。
【0190】
レーダ装置1は、送信波T及び反射波Rの位相それぞれを制御することによってリニアアレイアンテナ4が指向する向きを短時間で変更し得る。これにより、レーダ装置から観測対象へ向かう向きが短時間で大きく変化しても、リニアアレイアンテナ4が指向する向きをリニアアレイアンテナ4から観測対象へ向かう向きに制御し得る。これにより、観測対象が車両周辺にある走行中の車両であっても、観測対象の場所を推定し得る。
【0191】
〔人工衛星への搭載〕
レーダ装置1は、通信衛星、気象衛星、及び観測衛星等によって例示される人工衛星に搭載するレーダ装置として利用可能である。
【0192】
直線状に指向させて用いる従来技術のレーダ装置を用いて広い方位範囲から反射波を受信する場合、該レーダ装置を回転させる回転機構が必要となり得る。あるいは、反射波を受信する方位ごとに複数のレーダ装置を備える必要があり得る。人工衛星に機械的な回転機構を搭載する場合、回転部分に用いる潤滑油が真空によって蒸発する課題や回転に伴う反作用が人工衛星の姿勢制御に影響を及ぼす課題等が生じ得る。また、通常、ロケットを用いて打ち上げられる人工衛星は、その重量が厳しく制限されている。これにより、人工衛星にレーダ装置を搭載する場合、レーダ装置に関する重量の改善が求められ得る。
【0193】
レーダ装置1は、送信波T及び反射波Rの位相それぞれを制御することによって機械的な回転機構を用いずに、また、複数のレーダ装置1を備えることなしに、リニアアレイアンテナ4を任意の向きに指向させることができる。これにより、回転部分に用いる潤滑油が真空によって蒸発する課題や回転に伴う反作用が人工衛星の姿勢制御に影響を及ぼす課題等を解決し得る。また、人工衛星に搭載するレーダ装置の重量を改善し得る。
【0194】
〔地上レーダ基地としての利用〕
レーダ装置1は、地上に設置する地上レーダ基地として利用可能である。レーダ装置1は、送信波T及び反射波Rの位相それぞれを制御することによってリニアアレイアンテナ4が指向する向きを短時間で変更し得る。これにより、各種の高速飛行体の場所を推定する地上レーダ基地として利用可能である。
【0195】
<<第2実施形態>>
第2実施形態は、アンテナが全方位アンテナであるレーダ装置である。
【0196】
<レーダ装置101>
図10は、本発明の第2実施形態におけるレーダ装置101を斜め上方からみたときの概略図である。以下、
図10を参照して本発明の第2実施形態におけるレーダ装置101の好ましい構成の一例を説明する。
【0197】
レーダ装置101は、コントローラ102と、送信機103と、1以上の全方位アンテナ104(
図10の符号104a、104b、104c、及び104d)と、を含んで構成される。
【0198】
必須の態様ではないが、レーダ装置101は、1以上の全方位アンテナ104を支持可能な支持構造105をさらに含むことが好ましい。支持構造105を含むことにより、1以上の全方位アンテナ104のそれぞれが特定の位置関係を保つよう、これらを支持構造105によって支持できる。これにより、後述する観測対象の場所を推定する処理を容易に行える。
【0199】
〔コントローラ102〕
コントローラ102は、送信機103と、1以上の全方位アンテナ104と、を制御する。また、コントローラ102は、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を用いて観測対象の場所を推定する場所推定処理を実行する。レーダ装置101がコントローラ102を含むため、場所推定処理を実行して観測対象の場所を推定できる。
【0200】
コントローラ102は、特に限定されない。コントローラ102は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備える従来技術のマイクロコンピュータでよい。
【0201】
コントローラ102は、1以上の全方位アンテナ104が受信した反射波に関する反射波情報それぞれを取得可能に構成される。反射波情報それぞれは、送信波を送信してから全方位アンテナ104が反射波を受信するまでの時間を測定可能な情報を含む。
【0202】
コントローラ102は、場所推定処理によって推定した観測対象の場所を出力可能に構成されていることが好ましい。観測対象の場所を出力する手段は、特に限定されず、従来技術のレーダ装置で利用される観測対象の場所を出力する手段でよい。
【0203】
コントローラ102は、レーダ装置101を利用する利用者から各種の指令を受信可能であることが好ましい。各種の指令は、例えば、送信波の送信を開始する指令及び/又は送信波の送信を停止する指令等が挙げられる。コントローラ102がレーダ装置101を利用する利用者から各種の指令を受信可能であることにより、利用者の指令に応じてレーダ装置101を制御し得る。
【0204】
〔送信機103〕
送信機103は、第1実施形態の送信機3と同様である。送信機103は、全方位アンテナ104に送信波を送信させる送信信号を提供可能である。送信機103は、コントローラ102と全方位アンテナ104と接続されている。送信機103は、コントローラ102による制御に応じて送信信号を全方位アンテナ104に提供可能に構成される。レーダ装置101が送信機103を備えることにより、送信信号を介して全方位アンテナ104に送信波を送信させることができる。
【0205】
〔全方位アンテナ104〕
全方位アンテナ104は、送信機103から提供される送信信号に応じて送信波を送信可能であり、送信波が観測対象に入射することによって生じた反射波を受信可能である全方位アンテナ104である。1以上の全方位アンテナ104のそれぞれは、コントローラ102と送信機103と接続されている。1以上の全方位アンテナ104のそれぞれは、コントローラ102によって制御可能に構成されている。1以上の全方位アンテナ104それぞれは、全方位アンテナ素子141と、コンバータ142と、を含んで構成される。
【0206】
レーダ装置101が1以上の全方位アンテナ104を備えることにより、平面フェイズドアレイアンテナ等より広い範囲からの反射波を受信可能である。全方位アンテナ104は、平面フェイズドアレイアンテナを用いる場合より広い方位範囲に送信波を送信する。そして、異なる方位にある観測対象に送信波が入射し、反射波を生じる。この反射波を全方位アンテナ104が受信する。したがって、平面フェイズドアレイアンテナを用いる場合より広い方位範囲からの反射波を受信し得る。
【0207】
全方位アンテナ104の数は、特に限定されない。全方位アンテナ104の数は、2以上であることが好ましい。これにより、観測対象の場所を含む略円形の空間を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む略円形の空間を特定する処理については、後に
図15を用いて説明する。
【0208】
全方位アンテナ104の数は、3以上であり、3の全方位アンテナ104は、非直線的に配置されていることがより好ましい。これにより、観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理については、後に
図16を用いて説明する。
【0209】
全方位アンテナ104の数は、4以上であり、4以上の全方位アンテナ104は、少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置されることがさらに好ましい。これにより、観測対象の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を特定する処理については、後に
図17を用いて説明する。
【0210】
異なる2つの観測点からの距離を用いて観測点から観測対象へ向かう向きと観測点から観測対象までの距離とを求める場合、2つの観測点を結ぶ直線上及び該直線の周辺に観測対象がある場合、観測点から観測対象へ向かう向きを特定する精度が低下することが知られている。したがって、2の全方位アンテナ104を結ぶ直線と観測対象と全方位アンテナ104とを結ぶ直線とが平行である場合、全方位アンテナ104から観測対象への向きを特定する精度が低下し得る。例えば、2の全方位アンテナ104が垂直方向に沿って配列されている場合、全方位アンテナ104から、全方位アンテナ104の上方にある観測対象へ向かう向きを特定する精度が低下し得る。
【0211】
全方位アンテナ104の数は、4以上であり、4以上の全方位アンテナ104は、少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置される。これにより、4以上の全方位アンテナ104のうち少なくとも2の全方位アンテナ104を結ぶ直線の向きは、全方位アンテナ104から観測対象への向きと異なる。したがって、全方位アンテナ104から観測対象への向きを特定する精度の低下を防ぎ得る。
【0212】
[全方位アンテナ素子141]
全方位アンテナ素子141(
図10の符号141a、141b、141c、及び141d)は、送信機103から提供された送信信号に応じて送信波を送信し、送信波が観測対象に入射することによって生じた反射波を受信する全方位アンテナ素子である。全方位アンテナ素子141は、受信した反射波をアナログ信号の態様でコンバータ142に提供する。全方位アンテナ素子141により、送信信号に基づいて送信波を送信できる。全方位アンテナ素子141により、反射波を受信し、アナログ信号の態様でコンバータ142に提供できる。
【0213】
送信波は、観測対象に入射することによって反射波を生じる波であれば特に限定されない。反射波は、送信波が観測対象に入射することによって生じる波であれば特に限定されない。送信波及び反射波は、電波及び/又は音波を含むことが好ましい。送信波が電波及び/又は音波を含むことにより、可視光線を減衰させる大気、雲、及び霧等の影響を受けることなく、広い範囲に電波及び/又は音波を含む送信波を送信し得る。反射波が電波及び/又は音波を含むことにより、可視光線を減衰させる大気、雲、及び霧等の影響を受けることなく、広い範囲から電波及び/又は音波を含む反射波を受信し得る。したがって、よりいっそう広い範囲にある観測対象の場所を推定可能なレーダ装置101を提供できる。
【0214】
全方位アンテナ素子141は、特に限定されず、送信波を送信可能であり、かつ、反射波を受信可能である従来技術のアンテナを用いて構成された全方位アンテナ素子でよい。送信波及び反射波が電波を含む場合、全方位アンテナ素子141は、電波を送信及び受信可能なアンテナを含んで構成されることが好ましい。これにより、全方位アンテナ素子141を介して電波を含む送信波を送信できる。また、全方位アンテナ素子141を用いて電波を含む反射波を受信できる。
【0215】
送信波及び反射波が音波を含む場合、全方位アンテナ素子141は、音波を生成可能なスピーカーと音波を受信可能な音波センサとを含んで構成されることが好ましい。これにより、全方位アンテナ素子141を介して音波を含む送信波を送信できる。また、全方位アンテナ素子141を用いて音波を含む反射波を受信できる。スピーカーと音波センサとは、一体に構成されていてもよく、別体に構成されていてもよい。
【0216】
全方位アンテナ素子141は、実質的に無指向性のアンテナ素子であることが好ましい。送信波が電波を含む場合、実質的に無指向性のアンテナ素子における利得の上限は、1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。利得の上限を上述のとおり定めることにより、送信波をすべての方位に送信することがよりいっそう容易になる。また、全方位アンテナ素子141からみた観測対象の方位にかかわらず、反射波をよりいっそう確実に受信できる。
【0217】
全方位アンテナ素子141は、無線通信で用いられる送信波を送信及び受信可能であることが好ましい。これにより、レーダ装置101を用いて無線通信を行い得る。
【0218】
[コンバータ142]
コンバータ142(
図10の符号142a、142b、142c、及び142d。)は、全方位アンテナ素子141から提供されたアナログ信号の態様の反射波をデジタル信号に変換する。コンバータ142は、このデジタル信号の態様の反射波を、コントローラ102に提供する。コンバータ142により、コントローラ102において実行される場所推定処理に適したデジタル信号の態様で、反射波をコントローラ102に提供できる。これにより、コントローラ102は、反射波を変換して得られたデジタル信号を用いてアンテナが指向する向きを変更するデジタルビームフォーミングを行える。コンバータ142は、特に限定されず、従来技術のアナログ信号をデジタル信号に変換可能なコンバータでよい。
【0219】
[増幅器]
必須の態様ではないが、全方位アンテナ104は、1以上の増幅器(図示せず)を含むことが好ましい。増幅器は、送信信号及び/又は反射波Rを増幅する増幅器である。増幅器を含むことにより、より強い送信波Tを送信できる。一般に、増幅された反射波は、増幅されない反射波より解析が容易である。したがって、増幅器により、反射波の解析をより容易に行い得る。増幅器は、特に限定されず、従来技術の増幅器でよい。
【0220】
増幅器の雑音指数の上限は、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。増幅器の雑音指数の上限を上述のように定めることにより、よりノイズが少ない送信波を送信し得る。これにより、観測対象の場所を推定する処理におけるノイズの影響を軽減し得る。増幅器の雑音指数の上限を上述のように定めることにより、よりノイズが少ない増幅された反射波を得ることができる。これにより、観測対象の場所を推定する処理におけるノイズの影響を軽減し得る。
【0221】
増幅器は、送信機103が提供する送信信号を増幅可能であることが好ましい。これにより、送信信号を増幅して全方位アンテナ素子141に提供し得る。そして、より強い送信波を送信できる。これにより、送信波が観測対象に入射したときに生じる反射波をより強くできる。したがって、反射波を受信することがより容易になる。
【0222】
[周波数変換器]
必須の態様ではないが、全方位アンテナ104は、周波数変換器(図示せず)を含むことが好ましい。周波数変換器は、全方位アンテナ素子141に提供される送信信号の周波数を変換可能であり、全方位アンテナ素子141から提供される反射波の周波数を変換可能である周波数変換器である。
【0223】
一般に、より高い周波数の電気信号を処理するほど、該信号を処理する部材の構成がより複雑になり、費用対効果等がより低下する。周波数変換器により、送信機103及び/又は増幅器等が処理する送信信号の周波数を送信波の周波数より低い周波数とし得る。したがって、これらの構成要素の構成をより簡単にし得る。これにより、レーダ装置101の費用対効果等を改善し得る。周波数変換器により、増幅器及び/又はコンバータ142等が処理する反射波の周波数を反射波の周波数より低い周波数とし得る。したがって、これらの構成要素の構成をより簡単にし得る。これにより、レーダ装置101の費用対効果等を改善し得る。
【0224】
周波数変換器は、特に限定されず、従来技術の周波数変換器でよい。周波数変換器は、例えば、特定の周期的な信号LO
C(この信号は、通常LOと呼ばれる信号であるが、上述の第1実施形態における所定の周期的な信号と区別するために特定の周期的な信号LO
Cとして記載する。)と送信波及び/又は反射波とを合成することで送信波及び/又は反射波の周波数を変換するミキサでよい。特定の周期的な信号LO
Cと送信信号とを合成することにより、送信信号の周波数を、特定の周期的な信号LO
Cの周波数と送信信号の周波数との和の周波数に変換できる。特定の周期的な信号LO
Cと反射波Rとを合成することにより、反射波Rの周波数を、特定の周期的な信号LO
Cの周波数と反射波Rの周波数との差の周波数に変換できる。
【0225】
〔支持構造105〕
支持構造105は、1以上の全方位アンテナ104を支持可能である。支持構造105は、特に限定されず、従来技術の支持構造でよい。支持構造105は、1以上の全方位アンテナ104それぞれの位置関係を所定の位置関係に保つよう支持可能であることが好ましい。これにより、後述する場所推定処理を、より容易に行い得る。
【0226】
支持構造105は、1以上の全方位アンテナ支持構造151(
図10の符号151a、151b、151c、及び151d)と1以上の全方位アンテナ支持構造151を支持可能な土台構造152とを含んでもよい。全方位アンテナ支持構造151は、1以上の全方位アンテナ104を支持可能な支持構造である。これにより、複数の全方位アンテナそれぞれの位置関係を所定の位置関係に保つことがよりいっそう容易になる。
【0227】
〔フローチャート〕
図11は、コントローラ102で実行される場所推定処理の流れの一例を示すフローチャート図である。以下、
図11を用いてコントローラ102が行う場所推定処理の好ましい手順の一例を説明する。
【0228】
[ステップS11:送信波を送信するか否かを判別]
まず、コントローラ102は、送信波を送信するか否かを判別する(ステップS11)。送信波を送信するならば、コントローラ102は、処理をステップS12に移す。送信波を送信しないならば、コントローラ102は、処理をステップS11に移し、ステップS11からステップS17の処理を繰り返す。送信波を送信するか否かを判別することにより、送信波を送信する場合にのみ送信波を送信できる。送信波を送信するか否かを判別する処理は、特に限定されない。
【0229】
送信機103が全方位アンテナ104にパルス波である送信波を送信させるパルス波送信信号を提供する場合、送信波を送信するか否かを判別する処理は、パルス波を送信する場合に送信波を送信すると判別し、パルス波を送信しない場合に送信波を送信しないと判別する処理を含むことが好ましい。これにより、断続的に送信されるパルス波を送信できる。
【0230】
送信機103が全方位アンテナ104にチャープ波である送信波を送信させるチャープ波送信信号を提供する場合、送信波を送信するか否かを判別する処理は、チャープ波を送信する場合に送信波を送信すると判別し、チャープ波を送信しない場合に送信波を送信しないと判別する処理を含むことが好ましい。これにより、チャープ波送信信号に応じて断続的に送信されるチャープ波を送信できる。
【0231】
送信波を送信するか否かを判別する処理は、レーダ装置101を利用する利用者が送信波の送信開始を指令してから送信波の送信停止を指令するまでの間において送信波を送信すると判別する処理と、レーダ装置101を利用する利用者が送信波の送信停止を指令してから送信波の送信開始を指令するまでの間において送信波を送信しないと判別する処理と、を含むことが好ましい。これにより、レーダ装置101を利用する利用者の指令に応じて送信波を送信できる。
【0232】
[ステップS12:送信信号を提供するよう制御]
コントローラ102は、全方位アンテナ104に送信波を送信させる送信信号を提供するよう送信機103を制御する(ステップS12)。コントローラ102は、処理をステップS5に移す。全方位アンテナ104に送信波を送信させる送信信号を提供するよう送信機103を制御することにより、全方位アンテナ104を介して送信波を送信できる。
【0233】
送信信号は、特に限定されない。送信信号は、例えば、全方位アンテナ104にパルス波である送信波を送信させるパルス波送信信号、全方位アンテナ104にチャープ波である送信波を送信させるチャープ波送信信号、及び/又は全方位アンテナ104に周波数変調連続波である送信波を送信させる周波数変調連続波送信信号を含む。
【0234】
送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定するためには、反射波がいつ送信された送信波によって生じた反射波であるかを識別する必要がある。しかし、周波数変調されない送信波を連続的に送信する場合、反射波がいつ送信された送信波によって生じた反射波であるかを識別することが難しい。したがって、周波数変調されない送信波を連続的に送信する場合、送信波を送信してから反射波Rを受信するまでの時間を測定することに困難が生じ得る。
【0235】
送信信号がパルス波送信信号を含むことにより、全方位アンテナ104は、パルス波を含む送信波を送信できる。これにより、パルス波を含む送信波と反射波とを対応付けて、パルス波を含む送信波が送信されてから反射波を受信するまでの時間を、周波数変調を行わない連続波を送信する場合より正確に測定できる。
【0236】
送信信号がチャープ波送信信号を含むことにより、全方位アンテナ104がチャープ波を送信できる。これにより、チャープ波を含む送信波がパルス波より長い時間送信される場合であっても、チャープ波を含む送信波が送信されてから反射波が受信されるまでの時間を反射波の周波数を用いて測定できる。
【0237】
送信信号がパルス波送信信号及び/又はチャープ波送信信号を含むことにより、送信波を断続的に送信するため、反射波と該反射波を生じさせた送信波とを容易に対応付けし得る。これにより、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を容易に測定できる。
【0238】
また、これにより、全方位アンテナ104が送信波を送信していないときに、この全方位アンテナ104で反射波を受信し得る。したがって、反射波を送信する別のアンテナを有することなく反射波を受信できる。これにより、反射波を受信する別のアンテナを有するレーダ装置より簡易な構造を有するよう、レーダ装置101を構成し得る。したがって、レーダ装置101の対費用効果及び/又は保守性等を改善し得る。
【0239】
送信信号が周波数変調連続波送信信号を含むことにより、全方位アンテナ104が周波数変調連続波を送信できる。これにより、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を送信波の周波数と反射波の周波数との比較を用いて測定し得る。したがって、送信波が断続的に送信される送信波でない場合であっても、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定し得る。また、送信信号が周波数変調連続波送信信号を含むことにより、より多くの送信波を観測対象に入射させ、より多くの反射波を生じさせ得る。
【0240】
送信信号が周波数変調連続波送信信号を含み、送信波Tを送信する全方位アンテナ104と反射波Rを受信する全方位アンテナ104とが互いに異なる場合、コントローラ102は、送信波Tを送信する全方位アンテナ104と異なる全方位アンテナ104について、反射波Rを受信するよう該全方位アンテナ104を制御することが好ましい。これにより、反射波を受信する間であっても、送信波を送信できる。
【0241】
送信信号がパルス波送信信号及び/又はチャープ波送信信号を含む場合、コントローラ102は、ステップS13に示す反射波Rを受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理を実行することが好ましい。
【0242】
[ステップS13:反射波を受信するよう全方位アンテナを制御]
コントローラ102は、反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する(ステップS13)。コントローラ102は、処理をステップS14に移す。これにより、反射波を受信できる。反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理は、特に限定されない。
【0243】
反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理は、ステップS12で送信波を送信する全方位アンテナ104と同じ全方位アンテナ104について、反射波を受信するよう該全方位アンテナ104を制御する処理を含むことが好ましい。これにより、送信波を送信した全方位アンテナ104の場所で反射波を受信できる。したがって、送信波を送信した全方位アンテナ104から観測対象までの距離と、反射波を受信した全方位アンテナ104から観測対象までの距離との違いを考慮することなく、全方位アンテナ104から観測対象までの距離を特定し得る。これにより、全方位アンテナ104から観測対象までの距離をよりいっそう容易に特定し得る。
【0244】
全方位アンテナ104の数が2以上である場合、反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理は、ステップS12で送信波Tを送信する全方位アンテナ104と異なる全方位アンテナ104について、反射波を受信するよう該全方位アンテナ104を制御する処理を含むことが好ましい。これにより、周波数変調した送信波を連続的に送信する場合であっても、送信波を送信した全方位アンテナ104とは異なる全方位アンテナ104で反射波を受信できる。これにより、より多くの送信波を観測対象に入射させ、より多くの反射波を生じさせ得る。
【0245】
全方位アンテナ104の数が2以上である場合、反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理は、2以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含むことが好ましい。これにより、観測対象の場所を含む略球形の空間を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む略球形の空間を特定する処理については、後に
図15を用いてより詳細に説明する。
【0246】
全方位アンテナ104の数が3以上であり、3以上の全方位アンテナ104が非直線的に配置される場合、反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理は、非直線的に配置された3以上の全方位アンテナ104が反射波Rを受信するよう制御する処理を含むことが好ましい。これにより、観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理については、後に
図16を用いてより詳細に説明する。
【0247】
全方位アンテナ104の数が4以上であり、4以上の全方位アンテナ104のうち少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置される場合、反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理は、少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にない少なくとも4以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含むことが好ましい。これにより、観測対象の場所を含む略円形の空間を特定する処理を実行できる。観測対象の場所を含む略円形の空間を特定する処理については、後に
図15を用いてより詳細に説明する。
【0248】
[ステップS14:反射波を所定の時間受信]
コントローラ102は、1以上の全方位アンテナ104が反射波を所定の時間受信するよう制御する(ステップS14)。コントローラ102が反射波を所定の時間受信するよう制御することにより、受信した反射波を用いて送信波を送信してから全方位アンテナ104が反射波を受信するまでの時間を測定し、観測対象の場所を推定する処理を実行できる。所定の時間は、特に限定されず、例えば、パルス波及び/又はチャープ波の送信周期に応じた時間、あるいは、周波数変調連続波が変調を繰り返す周期に応じた時間等でよい。
【0249】
必須の態様ではないが、全方位アンテナ104の数が2以上である場合、コントローラ102は、ステップS15に示す観測対象への方位ごとに信号を選別する処理を実行することが好ましい。
【0250】
[ステップS15:観測対象への方位ごとに信号を選別]
コントローラ102は、観測対象への方位ごとに信号を選別する(ステップS15)。コントローラ102は、処理をステップS16に移す。
【0251】
全方位アンテナ104の数が2以上である場合、2以上の全方位アンテナ104を用いてアレイアンテナを構成できる。したがって、反射波を変換して得られたデジタル信号を用いて観測対象への方位ごとに信号を選別するデジタルビームフォーミングを行える。これにより、デジタルビームフォーミングによって信号を選別して、反射波に関する利得を高め得る。したがって、観測対象から全方位アンテナ104への向きの反射波をより確実に受信し得る。
【0252】
観測対象への方位ごとに信号を選別するデジタルビームフォーミングを用いるため、複数の観測対象が異なる方位にある場合であっても、観測対象への方位ごとに信号を選別して、反射波に関する利得を高め得る。したがって、異なる方位にある観測対象それぞれから全方位アンテナ104への向きの反射波それぞれをより確実に受信し得る。
【0253】
[ステップS16:送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定]
コントローラ102は、反射波を生じた1以上の観測対象のそれぞれについて、送信波を送信してから1以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するまでの時間それぞれを測定する(ステップS16)。コントローラ102は、処理をステップS17に移す。これにより、観測対象の場所を推定する処理において用いる送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を得られる。
【0254】
送信波を送信してから1以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するまでの時間それぞれを測定する処理(以下、単に「反射波受信時間測定処理」とも称する。)は、特に限定されない。
【0255】
送信波がパルス波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、パルス波を送信してから1以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理を含むことが好ましい。これにより、パルス波と反射波とを対応付けて、反射波を受信するまでの時間を、周波数変調を行わない連続波を送信する場合より正確に測定できる。
【0256】
送信波がチャープ波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、チャープ波と反射波との位相差及び/又は周波数差を用いてチャープ波を送信した時間から1以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理を含むことが好ましい。チャープ波と反射波Rとの位相差及び/又は周波数差を用いることで、パルス波より長い時間送信されるチャープ波であっても、反射波Rを受信するまでの時間を測定できる。したがって、より多くの送信波Tを観測対象に入射させ得る。そして、より多くの反射波を生じさせ得る。これにより、送信波がパルス波である場合より、多くの反射波を受信し得る。これにより、観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0257】
送信波が周波数変調連続波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、反射波から送信波を取り除く処理を含むことが好ましい。送信波を連続的に送信する場合、全方位アンテナ104は、反射波を受信するときに送信波をも受信し得る。受信した送信波は、反射波を用いた処理においてノイズとなり得る。反射波受信時間測定処理が反射波から送信波を取り除く処理を含むことにより、反射波から送信波を取り除き、受信した送信波がノイズとなることを防ぎ得る。反射波から送信波を取り除く処理は、特に限定されず、従来技術の反射波から送信波を取り除く処理でよい。反射波から送信波を取り除く処理は、例えば、位相を反転させた送信波を用いて生成されたフィードバック信号を反射波に加え、反射波に干渉する送信波を取り除く処理でよい。
【0258】
送信波が周波数変調連続波を含む場合、反射波受信時間測定処理は、送信波の周波数と反射波の周波数との比較を用いて送信波を送信してから1以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理を含むことが好ましい。これにより、連続的に送信される周波数変調連続波であっても、反射波を受信するまでの時間を測定できる。したがって、より多くの送信波を観測対象に入射させ得る。これにより、そして、より多くの反射波を生じさせ得る。送信波が断続的に送信されるパルス波及び/又はチャープ波である場合より、多くの反射波を受信し得る。これにより、観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0259】
送信波が周波数変調連続波を含む場合に反射波受信時間測定処理が反射波から送信波を取り除く処理と送信波の周波数と反射波の周波数との比較を用いて送信波を送信してから1以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を測定する処理とを含むことにより、観測対象においてより多くの反射波を生じさせることと、送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間を測定することとを同時に達成し得る。これにより、より多くの反射波を受信して観測対象の場所をより確実に推定し得る。
【0260】
[ステップS17:観測対象の場所を推定]
図3に戻る。コントローラ102は、反射波を生じた1以上の観測対象のそれぞれについて、送信波を送信してから1以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間それぞれを用いて、観測対象の場所を推定する(ステップS17)。コントローラ102は、処理をステップS11に移し、ステップS11からステップS17の処理を繰り返す。これにより、反射波を生じた1以上の観測対象のそれぞれについて、観測対象の場所を推定できる。観測対象の場所を推定する処理は、特に限定されない。
【0261】
送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間は、全方位アンテナ104から観測対象までの距離に応じて異なる。したがって、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間を用いて全方位アンテナ104から観測対象までの距離を測定し得る。
【0262】
全方位アンテナ104の数が2以上であり、ステップS13において反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理が2以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含む場合、観測対象の場所を推定する処理は、観測対象の場所を含む略円形の空間を特定する処理を含むことが好ましい。
【0263】
3次元空間において、異なる場所にある2点からの距離それぞれが既知である点の場所は、これら2点を通る直線上に中心を有し、該直線に垂直な平面に含まれる円形領域に含まれることが知られている。全方位アンテナ104の数が2以上であり、ステップS13において反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理が2以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含む場合、送信波を送信してから2以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を用いて、2以上の全方位アンテナ104それぞれから観測対象までの距離それぞれを特定し得る。したがって、2以上の全方位アンテナ104の位置関係と特定した2以上の距離とを用いて、観測対象の場所を含む略円形の空間を特定し得る。
【0264】
全方位アンテナ104の数が3以上であり、3以上の全方位アンテナ104が非直線的に配置され、ステップS13において反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理が非直線的に配置された3以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含む場合、観測対象の場所を推定する処理は、観測対象の場所を含む2の場所を特定する処理を含むことが好ましい。
【0265】
3次元空間において、異なる場所にある3点からの距離それぞれが既知である点の場所は、これら3点によって定められる平面に対して互いに対称な場所にある2点のいずれであることが知られている。全方位アンテナ104の数が3以上であり、3以上の全方位アンテナ104が非直線的に配置され、ステップS13において反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理が非直線的に配置された3以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含む場合、送信波を送信してから3以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を用いて、3以上の全方位アンテナ104それぞれから観測対象までの距離それぞれを特定し得る。したがって、3以上の全方位アンテナ104の位置関係と特定した3以上の距離とを用いて、観測対象の場所を含む2の場所を特定し得る。
【0266】
全方位アンテナ104の数が4以上であり、4以上の全方位アンテナ104は、少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置され、ステップS13において反射波を受信するよう全方位アンテナ104を制御する処理が少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置された4以上の全方位アンテナ104が反射波を受信するよう制御する処理を含む場合、観測対象の場所を推定する処理は、観測対象の場所を特定する処理を含むことが好ましい。
【0267】
この場合、少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置された4以上の全方位アンテナ104が反射波を受信する。これにより、送信波を送信してから同一平面上にある3以上の全方位アンテナ104が反射波をそれぞれ受信するまでの時間を用いて、観測対象の場所を含む2の場所を特定し得る。特定した2の場所は、これら3以上の全方位アンテナ104によって定められる平面に対して互いに対称な場所にある。同一平面上にない1つの全方位アンテナ104は、この平面上にない。したがって、同一平面上にない1つの全方位アンテナ104から特定した2の場所への距離それぞれが互いに等しくなることがない。したがって、送信波を送信してから同一平面上にない1つの全方位アンテナ104が反射波を受信するまでの時間を用いて、観測対象の場所が特定した2の場所のいずれであるかを特定し得る。
【0268】
<使用例>
図12は、従来技術のパラボラアンテナCから送信される第2送信波T2を示す概念図である。
図13は、レーダ装置101から送信される第4送信波T4及び第5送信波T5を示す概念図である。
図14は、第1反射波R1を受信するまでの時間を用いて観測対象O1までの距離を特定する処理を示す概念図である。
図15は、第1全方位アンテナ104a及び第2全方位アンテナ104bが第6反射波R6をそれぞれ受信するまでの時間を用いて観測対象O6の場所を含む略円形の領域を特定する処理を示す概念図である。
図16は、第1全方位アンテナ104a、第2全方位アンテナ104b、及び第3全方位アンテナ104cが第6反射波R6をそれぞれ受信するまでの時間と到来角の検出とを用いて観測対象O6の場所を含む2の場所を特定する処理を示す概念図である。
図17は、第1全方位アンテナ104a、第2全方位アンテナ104b、第3全方位アンテナ104c、及び第4全方位アンテナ104dが第6反射波R6をそれぞれ受信するまでの時間と到来角の検出とを用いて観測対象O6の場所を特定する処理を示す概念図である。以下、必要に応じて
図12から
図17を用いて、本実施形態におけるレーダ装置101の使用例を説明する。
【0269】
〔送信波を送信〕
レーダ装置101を利用する利用者は、送信波Tを送信するようコントローラ102に指令する。コントローラ102は、全方位アンテナ104に送信波Tを送信させる送信信号を提供するよう送信機103を制御する。送信機103は、送信用アンテナ104に送信信号を提供する。そして、全方位アンテナ104から送信波Tが送信される。
【0270】
図12と
図13とを用いて、従来技術のパラボラアンテナCが送信する第2送信波T2と、本実施形態のレーダ装置101から送信される第4送信波T4及び第5送信波T5との違いを説明する。
【0271】
図12に示すように、従来技術のパラボラアンテナCは、パラボラアンテナCを直線状の向きに指向させて用いる。したがって、従来技術のパラボラアンテナCが送信する第2送信波T2は、パラボラアンテナCから第2観測対象O2へ向かう向きに送信される。このとき、第2送信波T2は、パラボラアンテナCが指向する向きと異なる向きにある第3観測対象O3に入射しない。したがって、第3観測対象O3は、反射波を生じない。これにより、第3観測対象O3の場所を推定できない。
【0272】
本実施形態の本実施形態のレーダ装置101は、デジタルビームフォーミングによって互いに異なる複数の向きに送信波を送信できる。したがって、
図13に示すように、レーダ装置101から第4観測対象O4へ向かう向きに第4送信波T4を送信すると同時に、レーダ装置101から第5観測対象O5へ向かう向きに第5送信波T5を送信できる。したがって、第4観測対象O4及び第5観測対象O5の両方が反射波を生じ得る。これにより、第4観測対象O4の場所及び第5観測対象O5の場所をそれぞれ推定し得る。
【0273】
〔反射波を受信〕
コントローラ102は、送信波Tが第6観測対象O6に入射して生じた第6反射波R6を受信するよう、第1全方位アンテナ104a、第2全方位アンテナ104b、第3全方位アンテナ104c、及び第4全方位アンテナ104dのそれぞれを制御する。第1全方位アンテナ104a、第2全方位アンテナ104b、第3全方位アンテナ104c、及び第4全方位アンテナ104dは、第6反射波R6をそれぞれ受信する。
【0274】
〔反射波を受信するまでの時間を測定〕
コントローラ102は、送信波Tを送信してから、第1全方位アンテナ104a、第2全方位アンテナ104b、第3全方位アンテナ104c、及び第4全方位アンテナ104dのそれぞれが第6反射波R6を受信するまでの時間を測定する。
【0275】
〔観測対象の場所を推定〕
コントローラ102は、測定した第6反射波R6を受信するまでの時間を用いて、第6観測対象O6の場所を推定する。
【0276】
[全方位アンテナから観測対象までの距離を特定する処理]
図14を用いて、レーダ装置101が第1全方位アンテナ104aのみを備える場合における、全方位アンテナ104から第6観測対象O6までの距離を特定する処理について説明する。
【0277】
送信波Tは、第6観測対象O6に入射する。そして、第6反射波R6を生じる。この第6反射波R6は、送信波Tと同じ向きで全方位アンテナ104aに受信される。測定した第6反射波R6を受信するまでの時間は、第1全方位アンテナ104aから第6観測対象O6までの第1距離D1に応じて定まる。したがって、測定した第6反射波R6を受信するまでの時間を用いて、第1全方位アンテナ104aから第6観測対象O6までの第a距離Daを測定できる。
【0278】
[略円形の空間を特定する処理]
図15を用いて、レーダ装置101が第1全方位アンテナ104a及び第2全方位アンテナ104bを備える場合における第6観測対象O6の場所を含む略円形の第4空間A4を特定する処理について説明する。
【0279】
3次元空間において、異なる場所にある2点からの距離それぞれが既知である点の場所は、これら2点を通る直線上に中心を有し、該直線に垂直な平面に含まれる円形領域に含まれることが知られている。また、所定の場所からの距離と、所定の場所からの距離と所定の場所と異なる場所からの距離との差とが既知である点の場所は、これら2の場所を通る直線上に中心を有し、該直線に垂直な平面に含まれる円形領域に含まれることが知られている。
【0280】
送信波Tを送信してから第1全方位アンテナ104aが第6反射波R6を受信するまでの時間を用いて、第1全方位アンテナ104aから第6観測対象O6までの第a距離Daを測定できる。また、第1全方位アンテナ104aが第6反射波R6を受信するまでの時間と第2全方位アンテナ104bが第6反射波R6を受信するまでの時間との差に関する情報(例えば、第1全方位アンテナ104a及び第2全方位アンテナ104bが受信した第6反射波R6それぞれの位相差及び/又は周波数差等)を用いて、第2全方位アンテナ104bから第6観測対象O6までの第b距離Dbと第a距離Daとの距離差を測定できる。第1全方位アンテナ104a及び第2全方位アンテナ104bが特定の位置関係であるため、第1全方位アンテナ104aと第2全方位アンテナ104bとを結ぶ第1線分X1と第a距離Daと上述の距離差とを用いて、線分X1を延長した直線上に第1中心C1がある略円形の第4空間A4を特定できる。
【0281】
第4空間A4を特定する処理は、特に限定されず、例えば、第1全方位アンテナ104aにおける第6反射波R6の到来角を、第1全方位アンテナ104a及び第2全方位アンテナ104bが受信した第6反射波R6それぞれの位相差及び/又は周波数差と(2)式に関する計算とを用いて特定する処理を含む処理でよい。到来角を特定することにより、到来角と第a距離Daとを用いて第4空間A4を特定できる。
【0282】
[2の場所を特定する処理]
図16を用いて、レーダ装置101が第1全方位アンテナ104aと第2全方位アンテナ104bと第3全方位アンテナ104cとを備える場合における第6観測対象O6の場所を含む第3場所L3と第4場所L4を特定する処理について説明する。
【0283】
略円形の空間を特定する処理と同様に、第1全方位アンテナ104a及び第2全方位アンテナ104bのそれぞれが第6反射波R6を受信するまでの時間等を用いて、略円形の第4空間A4を特定できる。また、第2全方位アンテナ104b及び第3全方位アンテナ104cを用いて、略円形の第5空間A5を特定できる。このとき、第5空間A5は、第2全方位アンテナ104bと第3全方位アンテナ104cとを結ぶ第2線分X2を延長した直線上に第2中心C2を有する。また、第1全方位アンテナ104a及び第3全方位アンテナ104cのそれぞれが第6反射波R6を受信するまでの時間等を用いて、略円形の第6空間A6を特定できる。このとき、第6空間A6は、第1全方位アンテナ104aと第3全方位アンテナ104cとを結ぶ第3線分X3を延長した直線上に第3中心C3を有する。
【0284】
第4空間A4と第5空間A5と第6空間A6とは、2つの交点を有する。したがって、これらの交点を用いて、第6観測対象O6の場所を含む第3場所L3と第4場所L4を特定できる。レーダ装置101が地上に設置されている場合等の、第6観測対象O6がある場所がレーダ装置101を中心とする略半球状の範囲にあることが既知である場合、第6観測対象O6の場所が第3場所L3であることを特定できる。
【0285】
[観測対象の場所を特定する処理]
図17を用いて、レーダ装置101が第1全方位アンテナ104aと第2全方位アンテナ104bと第3全方位アンテナ104cと第4全方位アンテナ104dとを備える場合における第6観測対象O6の場所を特定する処理について説明する。
【0286】
2の場所を特定する処理において説明したように、レーダ装置101が第1全方位アンテナ104aと第2全方位アンテナ104bと第3全方位アンテナ104cとを備える場合、第6観測対象O6の場所を含む第3場所L3と第4場所L4を特定できる。第4全方位アンテナ104dが第6反射波R6を受信するまでの時間を用いて、第4全方位アンテナ104dから観測対象までの第d距離Ddを測定できる。
【0287】
第3場所L3と第4場所L4とは、第1全方位アンテナ104aと第2全方位アンテナ104bと第3全方位アンテナ104cとによって定められる平面に対して互いに対称な場所にある。第4全方位アンテナ104dは、この平面上にない。したがって、第4全方位アンテナ104dから第3場所L3までの第d距離Ddと第4全方位アンテナ104dから第4場所L4までの第e距離Deとは、互いに異なる。したがって、第4全方位アンテナ104dから観測対象までの第d距離Ddを用いて、第3場所L3と第4場所L4とのうち、第3場所L3が第6観測対象O6の場所であることを特定できる。
【0288】
〔飛行体への搭載〕
レーダ装置101は、ドローン等の無人航空機、ヘリコプター、マルチコプター、気球、飛行船、旅客機、及び貨物機等によって例示される飛行体に搭載するレーダ装置として利用可能である。
【0289】
直線状に指向させて用いる従来技術のレーダ装置を用いて広い方位範囲から反射波を受信する場合、該レーダ装置を回転させる回転機構が必要となり得る。あるいは、反射波を受信する方位ごとに複数のレーダ装置を備える必要があり得る。飛行体に回転機構及び/又は複数のレーダ装置を搭載することにより、飛行体の重量が増加し得る。飛行体の重量が増加すると、航行速度、航続距離、積載量、飛行時の安定性等によって例示される飛行体の性能が低下し得る。
【0290】
レーダ装置101は、広い方位範囲からの反射波を受信可能であるため、回転機構を必要とせず、複数のレーダ装置101を備える必要もない。これにより、飛行体の重量増加を防ぎ、飛行体の性能低下を防ぎ得る。
【0291】
〔車両への搭載〕
レーダ装置101は、乗用車、輸送車、及び作業用車両等によって例示される車両に搭載するレーダ装置として利用可能である。
【0292】
車両周辺にある観測対象(例えば、対向車、後続車、及び先行車等。)の場所を車両に搭載するレーダ装置を用いて推定することが行われている。車両周辺にある観測対象の場所を推定することにより、車両と観測対象とが衝突する事故等を防ぎ得る。
【0293】
ところで、車両周辺にある観測対象が走行中の車両である場合、レーダ装置から観測対象へ向かう向きが短時間で大きく変化し得る。直線状に指向させて用いる従来技術のレーダ装置と回転機構とを組み合わせた装置を用いてこのような観測対象の場所を推定する場合、回転機構によるレーダ装置の回転が向きの変化に追従できない場合があり得る。
【0294】
レーダ装置101は、デジタルビームフォーミングによって観測対象への方位ごとに信号を選別し得る。これにより、レーダ装置から観測対象へ向かう向きが短時間で大きく変化しても、反射波を識別し得る。これにより、観測対象が車両周辺にある走行中の車両であっても、観測対象の場所を推定し得る。
【0295】
〔人工衛星への搭載〕
レーダ装置101は、通信衛星、気象衛星、及び観測衛星等によって例示される人工衛星に搭載するレーダ装置として利用可能である。
【0296】
直線状に指向させて用いる従来技術のレーダ装置を用いて広い方位範囲から反射波を受信する場合、該レーダ装置を回転させる回転機構が必要となり得る。あるいは、反射波を受信する方位ごとに複数のレーダ装置を備える必要があり得る。人工衛星に機械的な回転機構を搭載する場合、回転部分に用いる潤滑油が真空によって蒸発する課題や回転に伴う反作用が人工衛星の姿勢制御に影響を及ぼす課題等が生じ得る。また、通常、ロケットを用いて打ち上げられる人工衛星は、その重量が厳しく制限されている。これにより、人工衛星にレーダ装置を搭載する場合、レーダ装置に関する重量の改善が求められ得る。
【0297】
レーダ装置101は、機械的な回転機構を用いずに、また、複数のレーダ装置101を備えることなしに、広い方位範囲からの反射波を受信することができる。これにより、回転部分に用いる潤滑油が真空によって蒸発する課題や回転に伴う反作用が人工衛星の姿勢制御に影響を及ぼす課題等を解決し得る。また、人工衛星に搭載するレーダ装置の重量を改善し得る。
【0298】
〔地上レーダ基地としての利用〕
レーダ装置101は、地上に設置する地上レーダ基地として利用可能である。レーダ装置101は、広い方位範囲からの反射波を受信し得る。これにより、広い方位範囲にある観測対象の場所を推定する地上レーダ基地として利用可能である。
【0299】
〔通信システム〕
図18は、レーダ装置101を用いた通信システムを示す概念図である。以下、
図18を用いて、本実施形態におけるレーダ装置101を通信システムにおいて利用する場合の使用例を説明する。
【0300】
第1人工衛星S1、第2人工衛星S2、無人航空機Aのそれぞれは、順に、レーダ装置101S1、101S2、101Aを備える。レーダ装置101bは、基地局として用いられる。レーダ装置101g1及び101g2は、地上局として用いられる。車両Vは、従来技術のパラボラアンテナCを備える。
【0301】
レーダ装置101は、デジタルビームフォーミングを用いて送信波を任意の向きに指向させることができる。したがって、軌道上を周回し、その位置が一定でない人工衛星S1であっても、基地局として用いられるレーダ装置101bは、レーダ装置101bから人工衛星S1の向きに送信波を指向させることができる。これにより、レーダ装置101bは、人工衛星S1が備えるレーダ装置101S1に送信波を送信できる。また、レーダ装置101は、デジタルビームフォーミングを用いて任意の向きからの送信波を受信できる。したがって、レーダ装置101は、デジタルビームフォーミングを用いてレーダ装置101S1からの送信波を受信できる。したがって、レーダ装置101bは、レーダ装置101S1との間に通信リンクWbs1を確立できる。
【0302】
アレイアンテナを複数の向きに指向させることが可能であるデジタルビームフォーミングを用いるため、レーダ装置101bは、レーダ装置101S1との間に通信リンクWbs1を確立しつつ、人工衛星S2が備えるレーダ装置101S2との間にも通信リンクWbs2を確立できる。したがって、レーダ装置101bは、複数の通信リンクを中継する中継局として機能し得る。
【0303】
人工衛星に機械的な回転機構を搭載する場合、回転部分に用いる潤滑油が真空によって蒸発する課題や回転に伴う反作用が人工衛星の姿勢制御に影響を及ぼす課題等が生じ得る。デジタルビームフォーミングは、機械的な回転機構を用いずに送信波を任意の向きに指向させることができる。少なくとも1つの全方位アンテナ104が同一平面上にないよう配置された4以上の全方位アンテナ104を備えるレーダ装置101は、任意の方向に全方位アンテナ104を指向させ得る。したがって、人工衛星S1が軌道上を周回することによってレーダ装置101bとの位置関係が変化しても、人工衛星S1が備えるレーダ装置101S1は、レーダ装置101b、101S2、及び101g1、並びにパラボラアンテナCとの間に通信リンクWbs1、Wss、及びWgs1、並びに通信リンクWcs1を確立し続けることができる。
【0304】
レーダ装置101は、通信リンクを確立しつつ、レーダ装置101として利用することもできる。人工衛星S2が備えるレーダ装置101S2は、レーダ装置101S1、101b、101A、及び101g2との間に通信リンクWss、Sbs2、Was1、及びWgs2を確立しつつ、デブリbに送信波Tを送信し、反射波Rを受信し得る。したがって、通信を行うための別のアンテナを用意することなく、レーダ装置101を用いて観測対象の場所の推定と通信リンクの確立とを同時に行い得る。これにより、人工衛星S2の構成を簡略化し得る。
【0305】
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は上述の各種実施形態に限るものではない。また、上述の各種実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、上述の各種実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、上述の各種実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態について、その構成の一部を他の実施の形態における構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態について、その構成に他の実施の形態における構成を加えることも可能である。
【解決手段】本発明のレーダ装置1は、1以上のリニアアレイアンテナ4と、コントローラ2と、を備え、コントローラ2は、少なくとも1以上のリニアアレイアンテナ4が送信波Tを送信する処理と、送信波Tが観測対象に入射することによって生じた反射波Rを、送信波Tを送信したリニアアレイアンテナ4と同じ及び/又は異なるリニアアレイアンテナ4であって、少なくとも1以上のリニアアレイアンテナ4が受信する処理と、送信波Tを送信してから反射波Rを受信するまでの時間と送信波Tの向きとを用いて、及び/又は前記送信波の周波数と前記反射波の周波数と前記送信波の向きとを用いて前記観測対象の場所を瞬時に推定する処理と、を実行可能である。