(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光を発生させる光源と、ホログラムデータを生成するホログラムデータ生成装置と、表示した前記ホログラムデータを前記レーザ光に反映させて物体光を発生させる空間光変調器とを備え、前記物体光と参照光との干渉縞をマスタホログラムに記録するホログラム記録装置であって、
前記ホログラムデータ生成装置は、
予め設定した初期位置に物体を配置したときの光波分布を表す複素振幅データを生成する複素振幅データ生成手段と、
前記初期位置から、第1のホログラム記録媒体の手前側で予め設定した離間距離の位置まで、前記物体が移動するように前記複素振幅データを補正する複素振幅データ補正手段と、
前記複素振幅データ補正手段が補正した複素振幅データから前記ホログラムデータを生成するホログラムデータ生成手段と、を備え、
前記空間光変調器は、前記ホログラムデータ生成装置が生成したホログラムデータを表示することを特徴とするホログラム記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、実施形態において、同一の手段及び同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0024】
(実施形態)
本実施形態では、最初に、マスタホログラム9
Mの記録を行うホログラム記録装置1を説明する。次に、マスタホログラム9
Mを複製するホログラム複製装置2を説明する。その後、マスタホログラムの複製手順を説明する。
【0025】
[ホログラム記録装置の構成]
図1を参照し、本発明の実施形態に係るホログラム記録装置1の構成について説明する。
ホログラム記録装置1は、物体光と参照光との干渉縞をマスタホログラム9
Mに記録するものである。つまり、ホログラム記録装置1は、物体光と参照光との干渉縞をホログラム記録媒体(第1のホログラム記録媒体)9に露光し、マスタホログラム9
Mとする。
【0026】
ホログラム記録媒体9は、物体光と参照光との干渉縞を記録する媒体である。例えば、ホログラム記録媒体9としては、ガラス又はプラスチックの基板にフォトポリマーと感光材とを積層させたものがあげられる。
【0027】
図1に示すように、ホログラム記録装置1は、レーザ(光源)10と、偏光板11と、1/2波長板12と、レンズ13,14と、偏光ビームスプリッタ15と、1/2波長板16と、偏光ビームスプリッタ17と、SLM(空間光変調器)18と、レンズ19と、HZP処理用マスク20と、レンズ21〜23と、ミラー24,25と、空間フィルタ26と、ステージ27と、ホログラムデータ生成装置30とを備える。
【0028】
レーザ10は、レーザ光を発生させるレーザ光源である。このレーザ10は、発生させるレーザ光の波長が特に制限されない。本実施形態では、レーザ10が、波長532nmの緑色レーザを発振する単色レーザ装置であることとする。
【0029】
偏光板11は、レーザ10が発生させたレーザ光の偏光方向を調整するものである。
1/2波長板12は、後記する偏光ビームスプリッタ15で分岐される物体光及び参照光のバランスを調整するために、偏光板11を通過したレーザ光の偏光方向を変えるものである。この1/2波長板12を通過したレーザ光は、レンズ13に出射される。
【0030】
レンズ13は、1/2波長板12からのレーザ光のビーム径を拡大する凸レンズである。このレンズ13は、その機能を満たすものであれば、単レンズ又は複合レンズであってもよい(後記するレンズ14,19,21〜23も同様)。
レンズ14は、レンズ13からのレーザ光を平行光に変換する凸レンズである。このレンズ14で平行光に変換されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ15に出射される。
【0031】
偏光ビームスプリッタ15は、レンズ14からのレーザ光を、物体光と参照光とに分岐するものである。つまり、偏光ビームスプリッタ15は、レンズ14からのレーザ光を、互いに直交するP偏光とS偏光とに分岐する。本実施形態では、偏光ビームスプリッタ15を透過したレーザ光を参照光とし、偏光ビームスプリッタ15で反射されたレーザ光を物体光とする。
【0032】
なお、
図1では、レーザ光の光軸中心を破線で図示し、レーザ光の両端を実線で図示した。
また、
図1では、参照光をブロック矢印Rで図示し、物体光をブロック矢印Oで図示した。
【0033】
1/2波長板16は、偏光ビームスプリッタ15で反射されたレーザ光の偏光方向をπ/2だけ回転させるものである。
偏光ビームスプリッタ17は、1/2波長板16からの物体光をSLM18に透過すると共に、SLM18からの物体光をレンズ19に向けて反射するものである。つまり、偏光ビームスプリッタ17は、SLM18で変調された物体光をレンズ19に向けて反射する。
【0034】
SLM18は、後記するホログラムデータ生成装置30が生成したホログラムデータを、偏光ビームスプリッタ17からのレーザ光(物体光)に反映させるものである。具体的には、SLM18は、ホログラムデータ生成装置30が生成したホログラムデータを表示し、偏光ビームスプリッタ17からの物体光をホログラムデータに従って変調し、ホログラムデータが反映された物体光を偏光ビームスプリッタ17に反射する。
このSLM18は、一般的なものであり、その変調方式として、例えば、SLM18の変調方式としては、振幅変調型、位相変調型、振幅・位相変調型をあげることができる。
【0035】
レンズ19は、偏光ビームスプリッタ17で反射された物体光をHZP処理用マスク20に集光する凸レンズである。このレンズ19を通過した光は、HZP処理用マスク20に出射される。
HZP処理用マスク20は、妨害光を除去するHZP処理を行うために、レンズ19からの物体光の半分を遮蔽するマスクである。
【0036】
レンズ21は、HZP処理用マスク20を通過した物体光を平行光に変換する凸レンズである。
レンズ22は、レンズ21からの物体光をレンズ23に集光する凸レンズである。
レンズ23は、レンズ22からの物体光をホログラム記録媒体9に出射する凸レンズである。
【0037】
ミラー24は、偏光ビームスプリッタ15を透過した参照光をミラー25に反射するものである。
ミラー25は、ミラー24からの参照光を空間フィルタ26に反射するものである。
空間フィルタ26は、偏光ビームスプリッタ15を透過した参照光の外周部を遮断するフィルタである。
【0038】
ステージ27は、ホログラム記録媒体9を搭載し、任意の位置に移動させるものである。例えば、ステージ27は、要素セル単位で記録する場合、搭載したホログラム記録媒体9を2軸方向に移動させてもよい。このとき、ステージ27は、要素セル同士が重ならないようにホログラム記録媒体9を移動させてもよく(タイリング)。また、ステージ27は、要素セル同士が重なるようにホログラム記録媒体9を移動させてもよい(オーバーラップ)。
【0039】
以上の構成により、レーザ10が出射したレーザ光は、1/2波長板12により偏光方向が調整される。そして、このレーザ光は、偏光ビームスプリッタ15により、物体光と参照光とに分岐される。
【0040】
物体光は、1/2波長板16を透過し、SLM18に入射する。そして、SLM18に入射した物体光は、SLM18に表示されたホログラムデータが反映され、HZP処理用マスク20に入射する。さらに、HZP処理用マスク20に入射した物体光は、妨害光が除去され、ホログラム記録媒体9に出射される。
【0041】
また、参照光は、ミラー24,25で反射され、空間フィルタ26によって物体光と同一ビーム径まで絞られる。そして、参照光は、ホログラム記録媒体9に出射される。このように、物体光及び参照光が共にホログラム記録媒体9に照射され、物体光及び参照光の干渉縞が記録される。このようにして、ホログラム記録装置1は、マスタホログラム9
Mを記録することができる。
【0042】
[ホログラムデータ生成装置の構成]
次に、ホログラムデータ生成装置30の構成について説明する。
ホログラムデータ生成装置30は、物体Tがホログラム記録媒体9の手前側に位置するようにホログラムデータを生成するものであり、複素振幅データ生成手段31と、複素振幅データ補正手段33と、ホログラムデータ生成手段35とを備える。
【0043】
複素振幅データ生成手段31は、予め設定した初期位置に物体を配置したときの光波分布を表す複素振幅データを生成するものである。
複素振幅データ補正手段33は、物体が初期位置から予め設定した離間距離の位置まで移動するように、複素振幅データ生成手段31が生成した複素振幅データを補正するものである。つまり、補正後の複素振幅データは、ホログラム記録媒体9から離間距離だけ物体を離したときの光波分布を表している。
なお、複素振幅データ生成手段31及び複素振幅データ補正手段33の詳細は、後記する。
【0044】
ホログラムデータ生成手段35は、複素振幅データ補正手段33が補正した複素振幅データからホログラムデータを生成するものである。つまり、ホログラムデータ生成手段35は、SLM18が表示できない複素振幅データを、SLM18が表示可能な干渉縞のデータに変換する。その後、ホログラムデータ生成手段35は、ホログラムデータをSLM18に出力する。
【0045】
例えば、ホログラムデータは、点光源からの計算やインテグラル立体映像(要素画像群)からの計算といった、一般的な計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)で求めることができる。点光源から計算する場合、物体を点光源の集合として扱い、個々の点光源で発生した光が伝搬してホログラム面での光波分布を個々に求め、求めた全ての光波分布を加算することで、複素振幅データを生成する。そして、計算機合成ホログラムでは、複素振幅データと参照光データとで干渉現象を計算した結果(干渉縞)を、ホログラムデータとして生成する。
【0046】
<ホログラムデータの生成:第1例>
図2を参照し、ホログラムデータの生成について、第1例及び第2例の手法を順に説明する(適宜
図1参照)。
【0047】
第1例の手法は、
図2(a)に示すように、初期位置D1に物体Tが配置された複素振幅データを生成した後、初期位置D1から離間距離D2の位置まで物体Tが移動するように複素振幅データを補正するものである。
ここで、「移動」とは、ホログラム記録媒体9の記録面(X−Y面)に垂直な奥行き方向(Z軸方向)で距離を変えることである。なお、図面右側を奥行き方向の奥側とし、図面左側を奥行き方向の手前側とする。
【0048】
まず、複素振幅データ生成手段31は、初期位置D1に物体Tを配置したときの複素振幅データを生成する。
この初期位置D1は、従来技術と同様、ホログラム記録媒体9の近傍に予め設定されている。例えば、初期位置D1は、ホログラム記録媒体9の手前側、5cmの位置である。
【0049】
前記したように、複素振幅データは、振幅及び位相の情報を有するため、所望の光波分布に加工可能である。そこで、複素振幅データ補正手段33は、複素振幅データ生成手段31が生成した複素振幅データを、物体Tが初期位置D1から離間距離D2の位置まで移動するように補正する。
この離間距離D2は、ホログラム記録媒体9の手前側、かつ、初期位置D1よりも遠くになるように予め設定されている。例えば、離間距離D2は、ホログラム記録媒体9の手前側、50cmである。
【0050】
続いて、ホログラムデータ生成手段35は、
図2(b)に示すように、離間距離D2の位置に物体Tがある状態の複素振幅データから、ホログラムデータを生成する。その後、ホログラム記録装置1は、このホログラムデータをSLM18に表示し、ホログラムデータが反映された物体光と参照光との干渉縞をマスタホログラム9
Mに記録する。このとき、マスタホログラム9
Mには、物体Tの干渉縞と共に格子状の縞も記録されることになる。
【0051】
このように、第1例の手法では、物体Tの初期位置D1がホログラム記録媒体9に近いので、複素振幅データを少ない計算量で生成することができる。そして、初期位置D1から離間距離D2の位置までの平行移動をフーリエ変換で行えるので、複素振幅データを少ない計算量で補正することができる。
【0052】
なお、第1例の手法は、
図2(c)に示すように、初期位置D1がホログラム記録媒体9の奥側の場合にも適用できる。この場合、複素振幅データ補正手段33は、複素振幅データを、物体Tが、ホログラム記録媒体9の奥側から手前側に移動するように補正すればよい。ここで、
図2(c)では、初期位置D1がホログラム記録媒体9の奥側であることを示すため、マイナスの符号を付した。
さらに、第1例の手法は、初期位置D1がホログラム記録媒体9の手間側及び奥側の両方となる場合(例えば、ホログラム記録媒体9の手前側と奥側にそれぞれ物体Tが位置する場合)にも適用できる。
【0053】
<ホログラムデータの生成:第2例>
第2例の手法は、
図2(d)に示すように、初期位置D1に物体Tを配置することなく、直接、離間距離D2の位置に物体Tが配置された複素振幅データを生成するものである。
【0054】
具体的には、複素振幅データ生成手段31は、離間距離D2の位置に物体Tを配置したときの複素振幅データを生成する。そして、ホログラムデータ生成手段35は、第1例と同様、ホログラムデータを生成する。
【0055】
この第2例の手法では、物体Tの離間位置D2がホログラム記録媒体9から遠いので、複素振幅データを生成する計算処理が複雑になり、計算量が多くなる。
なお、第1例又は第2例の何れの手法を用いるかは、予め設定しておく。また、この第2例の手法を用いる場合、複素振幅データ補正手段33を備えずともよい。
【0056】
[ホログラム複製装置の構成]
図3を参照し、ホログラム複製装置2の構成について説明する。
ホログラム複製装置2は、ホログラム記録装置1が記録したマスタホログラム9
Mを複製するものである。
図3に示すように、ホログラム複製装置2は、レーザ(第2の光源)100と、ハーフミラー(光分岐手段)110と、参照光照射手段120と、照明光照射手段130と、保持手段140とを備える。
なお、
図3では、レーザ光の両端を実線で図示した。
【0057】
レーザ100は、レーザ光を発生させるレーザ光源である。このレーザ100は、ホログラム記録装置1のレーザ10(
図1)と同様のものである。
ハーフミラー110は、レーザ10が発生させたレーザ光を、マスタホログラム9
Mとホログラム記録媒体9との側に分岐させるものである。
【0058】
ここで、マスタホログラム9
Mの側に分岐したレーザ光が照明光となる。また、ホログラム記録装置1の構造上、マスタホログラム9
Mが反射型になるので、この照明光を平行光とした。
また、ホログラム記録媒体(第2のホログラム記録媒体)9の側に分岐したレーザ光が参照光となる。この参照光は任意にできるので、点光源からの光とすることで、参照光の方向を自由に設定できる。
【0059】
参照光照射手段120は、ハーフミラー110で分岐した光をホログラム記録媒体9に出射するものであり、ミラー121と、レンズ123とを備える。
ミラー121は、ハーフミラー110からのレーザ光をレンズ123に反射するものである。
レンズ123は、ミラー121からのレーザ光のビーム径を拡大する凸レンズである。このレンズ123は、その機能を満たすものであれば、単レンズ又は複合レンズであってもよい(後記するレンズ131,105も同様)。
このようにして、ハーフミラー110で反射されたレーザ光が、参照光として、ホログラム記録媒体9に出射される。
【0060】
照明光照射手段130は、ハーフミラー110で分岐した光をマスタホログラム9
Mに出射するものであり、レンズ131,133と、ミラー135と、ハーフミラー137とを備える。
レンズ131は、ハーフミラー110を通過したレーザ光のビーム径を拡大する凸レンズである。このレンズ131で拡大されたレーザ光は、レンズ133に出射される。
レンズ133は、レンズ131からのレーザ光を平行光に変換する凸レンズである。このレンズ133で平行光に変換されたレーザ光は、ミラー135に出射される。
【0061】
ミラー135は、レンズ133からのレーザ光をハーフミラー137に反射するものである。
ハーフミラー137は、ミラー135からのレーザ光をマスタホログラム9
Mに反射するものである。このハーフミラー137で反射されたレーザ光は、照明光として、マスタホログラム9
Mに出射される。
【0062】
このようにして、ホログラム複製装置2は、ハーフミラー110を介して、マスタホログラム9
Mの干渉縞をホログラム記録媒体9に記録する。つまり、ホログラム複製装置2では、マスタホログラム9
Mがレーザ光を反射し、その反射光がハーフミラー110を通過してホログラム記録媒体9に到達するので、マスタホログラム9
Mの干渉縞をホログラム記録媒体9に記録できる。
【0063】
保持手段140は、マスタホログラム9
M及びホログラム記録媒体9を離間距離D2だけ離して保持するものである。この保持手段140は、マスタホログラム9
Mを搭載するステージ141
Mと、ホログラム記録媒体9を搭載するステージ141
Cを備える。
【0064】
ここで、ホログラム複製装置2では、ホログラム記録媒体9又はマスタホログラム9
Mの何れを移動させてもよい。例えば、ステージ141
Cが、ホログラム記録装置1から入力された離間距離D2に応じて奥行き方向に駆動し、ホログラム記録媒体9を移動させることとしてもよい。
なお、ステージ141
Mが奥行き方向に駆動し、マスタホログラム9
Mを移動させることとしてもよい。
【0065】
<マスタホログラムの複製>
図4を参照し、マスタホログラム9
Mの複製について説明する(適宜
図3参照)。
本実施形態では、マスタホログラム9
Mを製造する際、物体Tを手前側に移動させて、ホログラムデータを求めている。そこで、マスタホログラム9
Mを複製する際、その距離だけ、物体Tの位置を奥側に戻す必要がある。
【0066】
具体的には、ホログラム複製装置2では、
図4(a)に示すように、ホログラム記録媒体9をマスタホログラム9
Mの手前側で離間距離D2の位置に配置する。これにより、ホログラム記録媒体9から見て、物体Tの位置が奥側に戻っていることになる。
【0067】
そして、ホログラム複製装置2は、
図4(b)に示すように、マスタホログラム9
Mの干渉縞をホログラム記録媒体9に記録することで、複製ホログラム9
Cを製造する。従って、
図4(c)に示すように、複製ホログラム9
Cを再生したとき、縞αが物体Tから離れているので、観察者90には、縞αが見えにくくなる。つまり、物体Tを見ようとして、観察者90の目が物体Tにピントを合わせると、物体Tから離れている縞αにはピントが合わず、縞αが目立ちにくくなる。
なお、
図4では、複製ホログラム9
Cで形成された縞αを破線で図示した。
【0068】
[ホログラム製造手順]
図5を参照し、ホログラム製造手順について説明する(適宜
図1,
図3参照)。
図5に示すように、このホログラム製造手順は、ホログラム記録装置1がマスタホログラム9
Mを記録するホログラム記録工程S1、及び、ホログラム複製装置2がマスタホログラム9
Mを複製するホログラム複製工程S2で構成されている。
【0069】
ホログラム記録工程S1は、ステップS10〜S14の処理で構成されており、詳細に説明する。このホログラム記録工程S1では、前記した第1例の手法でホログラムデータを生成することとする。
【0070】
複素振幅データ生成手段31は、初期位置に物体を配置したときの光波分布を表す複素振幅データを生成する(ステップS10:初期位置複素振幅データ生成ステップ)。
複素振幅データ補正手段33は、物体が初期位置から離間距離の位置まで移動するように、ステップS10で生成した複素振幅データを補正する(ステップS11:複素振幅データ補正ステップ)。
このステップS10,S11の処理が、複素振幅データ生成ステップS3を構成する。
【0071】
ホログラムデータ生成手段35は、ステップS11で補正した複素振幅データからホログラムデータを生成する(ステップS12:ホログラムデータ生成ステップ)。
ホログラムデータ生成装置30は、ステップS12で生成したホログラムデータをSLM18に表示する(ステップS13:表示ステップ)。
ホログラム記録装置1は、ステップS13で表示したホログラムデータが反映された物体光と参照光との干渉縞をホログラム記録媒体9に記録することで、マスタホログラム9
Mを製造する(ステップS14:記録ステップ)。
【0072】
ホログラム複製工程S2は、ステップS20,S21の処理で構成されており、詳細に説明する。
ホログラム複製装置2は、ホログラム記録媒体9をマスタホログラム9
Mの手前側で離間距離の位置に配置する(ステップS20:配置ステップ)。
ホログラム複製装置2では、ステップS20で配置したホログラム記録媒体9にマスタホログラム9
Mの干渉縞を記録することで、マスタホログラム9
Mを複製する(ステップS21:複製ステップ)。
【0073】
以上のホログラム製造手順では、第1例の手法を用いることとしたが、第2例の手法を用いてもよい。この場合、複素振幅データ生成手段31は、離間距離D2の位置に物体Tを配置したときの複素振幅データを生成する(ステップS10A)。そして、ホログラム複製装置2は、ステップS11を行わずに、ステップS12以降の処理を行えばよい。
【0074】
[作用・効果]
以上のように、ホログラム記録装置1は、マスタホログラム9
Mを製造する際、物体Tを手前側に移動させて、ホログラムデータを求めている。そして、ホログラム複製装置2は、マスタホログラム9
Mを複製する際、その距離だけ、ホログラム記録媒体9をマスタホログラム9
Mの手前側に配置することで、物体Tの位置を奥側に戻している。これにより、ホログラムの再生時、縞を物体Tから離すことができるので、物体Tの近くに縞が見えてしまうことを抑制し、ホログラムの品質を向上させることができる。
さらに、ホログラム記録装置1は、第1例の手法を適用した場合、少ない計算量で複素振幅データを求められるので、高速化を図ることができる。
【0075】
例えば、人物の顔を物体Tとした場合を考える。この場合、ホログラム記録媒体9の手前側50cmに顔を表示するホログラムデータを生成し、マスタホログラム9
Mを記録する。そして、顔が奥側に50cm戻るようにホログラム記録媒体9を配置して、マスタホログラム9
Mを複製する。
【0076】
また、例えば、広い奥行き範囲に複数の物体Tを配置する場合を考える。この場合、ホログラム記録媒体9の手前側50cmに物体Tを表示するホログラムデータを生成し、マスタホログラム9
Mを記録する。そして、物体Tが奥側に50cm戻るようにホログラム記録媒体9を配置して、マスタホログラム9
Mを複製する。
【0077】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0078】
(変形例:仮想レンズの利用)
図6を参照し、本発明の変形例に係るホログラム記録装置1B及びホログラム複製装置2Bについて、実施形態と異なる点を説明する(適宜
図1,
図7参照)。
【0079】
ホログラム記録装置1が、仮想レンズ37を用いたフーリエ変換型ホログラムとして、複素振幅データを求める点が実施形態と異なる。さらに、ホログラム複製装置2Bが、マスタホログラム9
Mとホログラム記録媒体9との間にレンズ150を備える点が実施形態と異なる。
【0080】
[ホログラム記録装置の構成]
図1を参照し、ホログラム記録装置1Bの構成について説明する。
図1に示すように、ホログラム記録装置1Bは、レーザ10と、偏光板11と、1/2波長板12と、レンズ13,14と、偏光ビームスプリッタ15と、1/2波長板16と、偏光ビームスプリッタ17と、SLM18と、レンズ19と、HZP処理用マスク20と、レンズ21〜23と、ミラー24,25と、空間フィルタ26と、ステージ27と、ホログラムデータ生成装置30Bとを備える。
【0081】
ホログラムデータ生成装置30Bは、ホログラムデータを生成するものであり、複素振幅データ生成手段31Bと、複素振幅データ補正手段33と、ホログラムデータ生成手段35とを備える。
なお、複素振幅データ生成手段31B以外の各手段は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0082】
図6(a)に示すように、複素振幅データ生成手段31Bは、物体Tとホログラム記録媒体9との間に仮想レンズ37を配置したフーリエ変換型ホログラムとして、複素振幅データを生成する。すなわち、複素振幅データ生成手段31Bは、物体Tからの光波分布を、仮想レンズ37でのフーリエ変換により求める。ここで、仮想レンズ37のパラメータ(例えば、直径、焦点距離)は、予め設定しておく。
【0083】
[ホログラム複製装置の構成]
図7を参照し、ホログラム複製装置2Bの構成について説明する。
図7に示すように、ホログラム複製装置2Bは、レーザ(第2の光源)100と、ハーフミラー(光分岐手段)110と、参照光照射手段120と、照明光照射手段130と、保持手段140と、レンズ150とを備える。
【0084】
レンズ150は、
図6(b)に示すように、仮想レンズ37に対応するレンズである。例えば、レンズ150は、仮想レンズ37と同一パラメータのレンズである。
なお、レンズ150以外の各手段は、ホログラム記録媒体9とマスタホログラム9
Mとを離間距離D2だけ離す点も含め、実施形態と同様のため、説明を省略する。
また、ホログラム製造手順も実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0085】
以上のように、ホログラム複製装置2Bでは、マスタホログラム9
Mとホログラム記録媒体9との間にレンズ150を配置したので、
図6(b)のように、枠が無限遠に形成される。これにより、複製ホログラム9
Cを再生したとき、観察者90には縞が殆ど見えず、ホログラムの品質をより高くすることができる。
【0086】
(その他変形例)
前記した実施形態では、単色レーザを用いることとして説明したが、本発明では、赤色、緑色、青色のカラーレーザを用いることもできる。
前記した実施形態では、ホログラム記録装置及びホログラム複製装置における光学系の構成例を説明したが、本発明は、その構成例に限定されない。
前記した実施形態では、ホログラム記録装置及びホログラム複製装置を独立した装置として説明したが、本発明は、ホログラム記録装置にホログラム複製装置を組み込んで一体型としてもよい。