特許第6960151号(P6960151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960151
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】足裏観察装置および足裏観察方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20211025BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61B5/11 210
   A61B5/107 800
   A61B5/11ZDM
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-129291(P2017-129291)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-10394(P2019-10394A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲陽
(72)【発明者】
【氏名】正源寺 美穂
(72)【発明者】
【氏名】金 英傑
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−219404(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0088248(KR,A)
【文献】 特開2004−038706(JP,A)
【文献】 特開2007−175279(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0238271(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3063816(JP,U)
【文献】 特開2015−202141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00 − 23/30
A43C 1/00 − 19/00
A43D 1/00 −999/00
A61B 5/06 − 5/22
B29D 35/00 − 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観察者の足裏を接触させる透明の中底部と、
前記中底部を挟んで前記足裏の反対側に配置された反射板と、
前記反射板に映る足裏像を撮影する撮像部と、
前記足裏と前記中底部とを接触させる足固定部と、
前記中底部と、前記反射板と、前記撮像部と、前記足固定部とを支持する靴底部と、を備える足裏観察装置。
【請求項2】
前記中底部および前記反射板は、前記中底部において前記足裏を接触させる接触面の反対側の面である観察面が、前記反射板において前記足裏像を映す反射面と対向するように配置される、
請求項1に記載の足裏観察装置。
【請求項3】
前記中底部および前記反射板は、前記足裏のかかとからつま先に向かう歩行方向の後方から、前記歩行方向の前方に向かうに従って、両者間の距離が長くなるように支持されている、
請求項1または請求項2に記載の足裏観察装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記歩行方向の前方側から前記反射板に映る前記足裏像を撮影する、
請求項3に記載の足裏観察装置。
【請求項5】
前記中底部は、第一透明板と第二透明板とを有し、
前記反射板は、第一反射板と第二反射板とを有し、
前記靴底部は、第一靴底部と第二靴底部とを有し、
前記第一靴底部は、前記第一透明板および前記第一反射板を支持し、
前記第二靴底部は、前記第二透明板および前記第二反射板を支持し、
前記第二靴底部は、前記第一靴底部に対して回動自在に連結されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の足裏観察装置。
【請求項6】
前記第二靴底部は、前記第一靴底部と、前記足裏のかかとからつま先に向かう方向と垂直な回転軸で連結されており、
前記回転軸は、前記足固定部に固定された前記被観察者の足の中足趾節間関節付近に設けられている、
請求項5に記載の足裏観察装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記靴底部に対して回動自在に連結されている、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の足裏観察装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の足裏観察装置により、前記足裏の画像を取得する足裏画像取得工程と、
取得された前記画像から、前記足裏が前記中底部に接触する接触領域を認定する足裏接触領域認定工程と、
前記接触領域の時間的変化から、前記接触領域の画素数の上位二つのピークを算出し、前記上位二つのピークの差分を算出するピーク差分算出工程と、を備える、
足裏観察方法。
【請求項9】
前記足裏接触領域認定工程において、前記画像において画素の色が白色に近い色の範囲である領域を、前記接触領域認定する、
請求項8に記載の足裏観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行中の被観察者の足裏を観察する足裏観察装置および足裏観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の転倒(つまずきを含む)は、要介護認定の主な原因の一つとされており、高齢者の転倒防止対策が看護や医療の分野において重要な課題となっている。転倒防止対策として、足にかかる荷重分布や重心位置を観測することや足指を観察することで、転倒リスクを測定することが効果的であるとされている。
【0003】
足にかかる荷重分布や重心位置の観測は、足裏を観測することで行うことができる。足裏の観測には、圧力センサやIMU(Inertial Measurement Unit)センサなどが用いられる。しかしながら、これらのセンサから得られる足裏に関する情報は限定されている。例えば、足裏の正確な接地領域や足裏の皮膚の状況等は、これらのセンサから取得することは難しい。
【0004】
より詳細な足裏の情報を取得するため、カメラにより撮像された画像が用いられている。特許文献1には、ガラス板上の足裏の接地部分の画像から重心位置を解析する重心位置解析方法が記載されている。特許文献1に記載の重心位置解析方法は、ガラスに映し出された足の底圧に相関する輝度に基づいた足裏接地部画像データを簡易に算出でき、被測定者の重心位置を高精度に解析できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5417654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の重心位置解析方法は、ガラス板上に直立した被測定者の足裏を観察するものであり、歩行中の被測定者の足裏を観察するものではない。
歩行中の被測定者の足裏を観察することができれば、足指の使い方等の詳細情報を取得することができ、転倒リスクをより高精度に測定することが可能となる。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は歩行中の被測定者の足裏を容易に観察することができる足裏観察装置および足裏観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の足裏観察装置は、被観察者の足裏を接触させる透明の中底部と、前記中底部を挟んで前記足裏の反対側に配置された反射板と、前記反射板に映る足裏像を撮影する撮像部と、前記足裏と前記中底部とを接触させる足固定部と、前記中底部と、前記反射板と、前記撮像部と、前記足固定部とを支持する靴底部と、を備える。
【0009】
本発明の足裏観察方法は、上記の足裏観察装置により、前記足裏の画像を取得する足裏画像取得工程と、取得された前記画像から、前記足裏が前記中底部に接触する接触領域を認定する足裏接触領域認定工程と、前記接触領域の時間的変化から、前記接触領域の画素数の上位二つのピークを算出し、前記上位二つのピークの差分を算出するピーク差分算出工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の足裏観察装置によれば、歩行中の被観察者の足裏を容易に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置の一部を取り除いた構成の分解図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置の全体構成を示す側面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置が屈曲状態である場合の全体構成を示す側面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置の平面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置の中底部と反射板の断面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置が屈曲状態である場合の中底部と反射板の断面図である。
図7】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置の靴底部の側面図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置の撮像部と第一靴底部の側面図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置のカメラの撮像視野を示す図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る足裏観察方法の足裏接触領域認定工程における接触領域に含まれる画素数の時間的変化を示すグラフである。
図11】本発明の第二実施形態に係る足裏観察方法の足裏接触領域認定工程における接触領域に含まれる画素数の時間的変化を示すグラフである。
図12】本発明の第二実施形態に係る足裏観察方法のつまずきのリスク予測に用いる正規化されたピーク差分を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る足裏観察装置100について、図1から図9を参照して説明する。なお、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率は適宜調整されている。
【0013】
図1は、足裏観察装置100の一部を取り除いた構成の分解図である。図2は、足裏観察装置100の全体構成を示す側面図である。図3は、屈曲している足裏観察装置100の全体構成を示す側面図である。図4は、足裏観察装置100の平面図である。
足裏観察装置100は、図1から図3に示すように、中底部1と、反射板4と、靴底部5と、撮像部6と、足固定部7と、を備える。図2および図3に示すように、足裏観察装置100は、被観察者が履く(装着する)ことができる靴のように構成されている。
【0014】
中底部1は、図1に示すように、透明板2と、緩衝部材3と、を有している。図2に示すように、足裏観察装置100を装着した被観察者の足裏Pは、中底部1に接触する。
【0015】
透明板2は、透明の板状部材である。本実施形態においては、透明板2と被観察者の足裏Pの間に、柔軟性を有する透明の緩衝部材3が設けられており、被観察者が歩行した際の接地による衝撃を吸収することができる。緩衝部材3は、例えば、シリコンで薄板状に形成されている。ここで、緩衝部材3は必須ではなく、設けられていなくてもよい。
【0016】
透明板2は、被観察者の足裏P全体を、緩衝部材3を介して接触させることができる接触面2aを有している。接触面2aは板厚方向に垂直な面に形成されている。本実施形態において、透明板の接触面2aは平面状であるが、被観察者の歩行のしやすさ等を考慮して、接触面2aを曲面状に形成してもよい。
【0017】
透明板2は、接触面2aの法線方向から見て、略長円形状に形成されている。透明板2は、靴の中敷のように、接触面2aが被観察者の足裏Pを置くことができる面積を有しいれば十分であり、その面積を大幅に上回る面積を有することは、歩行のしやすさの観点から望ましくない。
【0018】
透明板2は、透明な部材であり、例えば、アクリルで形成されたアクリル板である。図1に示すように、中底部1に接触させた足裏Pを、透明板2の接触面2aの反対側の面である観察面2bから、観察することができる。
透明板2は、全体が透明に形成されているため、後述する反射板4が反射する光を十分に靴底部5の内部に取り組むことができる。
【0019】
透明板2は、図1に示すように、板厚方向の厚さがいずれの場所においても同じになっている。透明板2は、強度等を考慮して、板厚方向の厚さが異なる部分があってもよい。
【0020】
透明板2は、図3に示すように、歩行中の被観察者の足根中足関節または中足趾節間関節(MP関節)が屈曲した場合であっても、足裏P全体と中底部1との接触を維持するために、第一透明板21と第二透明板22とに分割されている。透明板2は、図4に示すように、接触面2aの法線方向から見て、かかとからつま先に向かう方向(以降「歩行方向W」と称す)に対して垂直な分割線Dで分割されている。
第一透明板21は、中足趾節間関節付近からつま先までの足裏部分を置く板状部材である。
第二透明板22は、中足趾節間関節付近からかかとまでの足裏部分を置く板状部材である。
【0021】
緩衝部材3は柔軟性を有する素材で形成されているため、透明板2のように分割されている必要はない。被観察者の足根中足関節または中足趾節間関節(MP関節)の屈曲に合わせて、緩衝部材3も屈曲する。
【0022】
反射板4は、図1に示すように、光を反射する反射面4aを有する板状部材であり、例えば、鏡である。
反射板の反射面4aは、足裏の像(足裏像)を鮮明に映すために使用するため、反射面4aの光の反射率は高いことが好ましい。また、反射面4aは、映された足裏の像が湾曲しないように、平面状に形成されている。反射板4は、反射面4aの法線方向から見て、略長円形状に形成されている。
【0023】
図5は、足裏観察装置100の中底部1と反射板4の断面図である。図6は、屈曲している足裏観察装置100の中底部1と反射板4の断面図である。
反射板4は、図5に示すように、透明板2の観察面2b側に、反射面4aが透明板2の観察面2bと対向するように配置される。反射板4の反射面4aは、透明板2を挟んで反対側にある足裏Pの像(足裏像)Qを映す。
【0024】
反射板4は、図1に示すように、透明板2同様、第一反射板41と第二反射板42とに分割されている。反射板4は、図1に示すように、透明板2の接触面2aの法線方向から見て、分割線Dで分割されている。
図6に示すように、歩行中の被観察者の足が足根中足関節または中足趾節間関節(MP関節)付近で屈曲した場合も、その屈曲角度に合わせて、第二反射板42は第一反射板41に対して相対移動することができる。
【0025】
第一反射板41は、図5に示すように、透明板2の接触面2aの法線方向から見て、第一透明板21と重なる位置に配置される。
第二反射板42は、図5に示すように、透明板2の接触面2aの法線方向から見て、第二透明板22と重なる位置に配置される。
【0026】
靴底部5は、透明板2と、反射板4と、後述する撮像部6と、後述する足固定部7と、を支持する支持部材である。靴底部5は、図1に示すように、地面と接地する底部5aと、底部の周辺に立設する側部5bと、を有する。
【0027】
底部5aは、図1に示すように、地面と接地する接地面5cを有しており、接地面5cは平面状に形成されている。底部5aは、接地面5cの法線方向から見て、略長円形状に形成されている。
側部5bは、図1に示すように、底部5aにおける歩行方向Wの前方部分を除く周辺から、接地面5cの法線方向と反対方向に立設されている。
【0028】
側部5bは、透明板2の周辺を支持する。そのため、靴底部5と、周辺を靴底部5に支持された透明板2とは、被観察者が足裏観察装置100を履いた際に、被観察者を支えることができる程度の剛性を有する。
【0029】
側部5bは、透明板2と底部5aとの間に、反射板4を支持する。透明板2と反射板4は、図5に示すように、歩行方向Wの後方から、歩行方向Wの前方に向かうに従って、両者間の距離が長くなるように支持されている。透明板2と反射板4とのなす角度は、例えば5度程度である。本実施形態においては、透明板2と反射板4とは、歩行方向Wの後方端部において接触している。
【0030】
靴底部5は、図1に示すように、透明板2同様、第一靴底部51と第二靴底部52とに分割されている。靴底部5は、図1に示すように、透明板2の接触面2aの法線方向から見て、分割線Dで分割されている。
すなわち、透明板2と反射板4と靴底部5とは、いずれも、透明板2の接触面2aの法線方向から見て、分割線Dで分割されている。
【0031】
第一靴底部51は、第一透明板21および第一反射板41を支持している。一方、第二靴底部52は、第二透明板22および第二反射板42を支持している。
【0032】
図7は、靴底部5の側面図である。
第一靴底部51と第二靴底部52とは、図7に示すように、第一回転軸53を中心に回動自在に連結されている。
第二靴底部52は、図7に示すように、第一透明板21の接触面21aの法線と、第二透明板22の接触面22aの法線とが、略平行となる位置(以降「初期位置S1」と称する)から、第一透明板21の接触面21aの法線と、第二透明板22の接触面22aの法線とがなす角度が大きくなる方向(以降「回転方向R1」と称する)に回転することができる。第二靴底部52は、第一靴底部51に対して相対的に40度程度まで回転することができる。一方、第二靴底部52は、初期位置S1から、回転方向R1の反対方向には回転できない。
【0033】
第一回転軸53は、被観察者の中足趾節間関節付近に、歩行方向Wに対して垂直に設けられている。そのため、図3に示すように、歩行中の被観察者の中足趾節間関節が屈曲した場合、第二靴底部52は、後述する足固定部7によって被観察者の足がある方向に引き上げられる。その結果、第二靴底部52は第一回転軸53を中心に第一靴底部51に対して相対的に回転方向R1に回転する。
【0034】
第一靴底部51と第二靴底部52とは、弾性部材54で連結されている。初期位置S1にある第二靴底部52が、第一靴底部51に対して回転方向R1に相対回転した際に、弾性部材54は、第二靴底部52が初期位置S1に戻るように弾性力を加える。
【0035】
第一靴底部51と第二靴底部52とは、被観察者の中足趾節間関節付近で回動自在に連結されている。そのため、歩行中の被観察者の足が中足趾節間関節付近で屈曲した場合も、その屈曲角度に合わせて、第二靴底部52は第一靴底部51に対して相対回転することができる。
一方、屈曲した被観察者の足が屈曲しない状態に戻る際は、弾性部材54の弾性力によって、スムーズに第二靴底部52は初期位置に戻ることができる。
このように構成された靴底部5は、被観察者が足裏観察装置100を装着して歩行する際、足裏Pを中底部1に接触させつつ、スムーズに屈曲動作を行うことができる。
【0036】
第二靴底部52が第一靴底部51に対して相対回転した場合であっても、図6に示すように、第一透明板21と第一反射板41とのなす角度は、第二靴底部52が初期状態にあるときと同じである。
また、同様に、第二靴底部52が第一靴底部51に対して相対回転した場合であっても、第二透明板22と第二反射板42とのなす角度は、第二靴底部52が初期状態にあるときと同じである。
【0037】
撮像部6は、図1に示すように、カメラ61と、アーム62と、を備えている。撮像部6は、第一靴底部51に回動自在に取り付けられ、反射板4に映る足裏Pの像(足裏像)Qを撮影する。
【0038】
図8は、撮像部6と第一靴底部51の側面図である。
アーム62は、図8が示すように、第一靴底部51と、第二回転軸63を中心に回動自在に連結されている。
アーム62は、図8に示すように、第一靴底部51の底部51aの接地面51cとアーム62の長手軸方向とがなす角度がα度となる位置(以降「初期位置S2」と称する)から、接地面51cとアーム62の長手軸方向とがなす角度が大きくなる方向(以降「回転方向R2」と称する)に回転することができる。アーム62は、図8に示すように、第一靴底部51に対して相対的にβ度程度まで回転することができる。一方、アーム62は、初期位置S2から、回転方向R2の反対方向には回転できない。
【0039】
第二回転軸63は、歩行方向Wに対して垂直に設けられている。そのため、図3に示すように、足裏観察装置100を装着した被観察者が歩行する際に、第一靴底部51が歩行方向Wに対して傾き、底部51aの接地面51cが地面から離れ、アーム62が地面に接触した場合、アーム62は第二回転軸63を中心に第一靴底部51に対して相対的に回転方向R2に回転する。
【0040】
アーム62と第一靴底部51とは、弾性部材64で連結されている。初期位置S2にあるアーム62が、第一靴底部51に対して回転方向R2に相対回転した際に、弾性部材64は、アーム62が初期位置S2に戻るように弾性力を加える。
【0041】
カメラ61は、アーム62の先端に、撮像視野を調整可能に支持されている。カメラ61は公知の小型カメラから適宜選択して使用することができる。カメラ61は、例えば、解像度が640X480のカラー動画像や静止画像を撮影できる。ここで、より詳細に足裏Pを観察するため、カメラ61の撮影解像度はより高いものが望ましい。
【0042】
図9は、カメラ61の撮像視野を示す図である。
カメラ61は、図9に示すように、撮像方向が、靴底部5の歩行方向Wの前方側の開口5dに向けて設置されている。
【0043】
カメラ61は、アーム62に対して水平方向に相対回転させることができる。また、カメラ61は、アーム62に対して垂直方向に相対回転させることができる。カメラ61をアーム62に対して相対回転させることで、カメラ61の向きを調整することができる。
カメラ61のアーム62に対する相対回転角度は、開口5dが、撮像視野に含まれるように調整されている。また、カメラ61自体の視野調整機能を使って、開口5dが、撮像視野に含まれるように調整してもよい。
【0044】
図4および図9に示すように、カメラ61の水平方向の撮像視野角γは、被観察者の足が含まれるように調整されている。被観察者の足の大きさに合わせて撮像視野角γを調整することが好ましい。
【0045】
アーム62が初期位置S2にある場合、図5に示すように、カメラ61は、反射板4に映った、透明板2を挟んで反対側にある足裏Pの像(足裏像)Qを映す。カメラ61の位置、カメラ61の撮像視野角、および反射板4の透明板2に対する角度は、カメラ61が足裏像Qを撮像できように調整されている。カメラ61の位置等が足裏像Qの全体を撮像できように調整されていることが好ましい。
足裏像Qの全体を撮像できように調整することが難しい場合は、転倒リスクの測定等に対する情報をより多く取得できるつま先付近が含まれるように調整を行う。
【0046】
図6に示すように、アーム62が初期位置S2から第一靴底部51に対して回転方向R2に相対回転した場合であっても、反射板4に映った、透明板2を挟んで反対側にある足裏Pの像(足裏像)Qを映すことができるように、カメラ61の位置、カメラ61の撮像視野角、および反射板4の透明板2に対する角度が調整されている。
【0047】
アーム62と、第一靴底部51とは、第二回転軸63を中心に回動自在に連結されている。足裏観察装置100を装着した被観察者が歩行する際に、第一靴底部51が歩行方向Wに対して傾き、底部51aの接地面51cが地面から離れ、アーム62が地面に接触した場合、アーム62は第二回転軸63を中心に第一靴底部51に対して相対的に回転方向R2に回転する。この場合においても、カメラ61は反射板4に映った足裏Pの像(足裏像)Qを映すことができる。
一方、第一靴底部51の底部51aの接地面51cが、再び地面に接地された場合、弾性部材64の弾性力によって、アーム62は初期位置S2に戻る。この場合においても、カメラ61は反射板4に映った足裏Pの像(足裏像)Qを映すことができる。
このように構成された撮像部6は、歩行中の被観察者の足裏Pを常に観察することができる。
【0048】
カメラ61により撮影された画像は、有線もしくは無線による通信によって、画像を表示する機器や画像を解析する手段を有する機器、例えばコンピュータに転送される。
【0049】
足固定部7は、図2および図3に示すように、靴のアッパー部に相当する部分であり、足の甲を覆う部材である。足固定部7は、柔軟性を有する材料、例えば布などで形成されている。
【0050】
足固定部7は、靴底部5に取り付けられている。足固定部7は、図2および図3が示すように、一対の第一接続部71および一対の第二接続部72により、靴底部5に取り付けられている。一対の第一接続部71が第一靴底部51に取り付けられており、一対の第二接続部72が第二靴底部52に取り付けられている。
【0051】
一対の第一接続部71は、第一靴底部51の側部51bのうち、歩行方向Wに垂直な方向に対向する箇所に設けられている。
【0052】
一対の第一接続部71は、第一靴底部51において、被観察者の趾節間関節(IP関節)に近い箇所に設けられていることが望ましい。図3に示すように、歩行中の被観察者の中足趾節間関節(MP関節)が屈曲した場合、第一靴底部51が支持する第一透明板21のうち、被観察者の趾節間関節(IP関節)に近い箇所にある足裏部分が第一透明板21から離れやすいためである。一対の第一接続部71が、第一靴底部51において、被観察者の趾節間関節(IP関節)に近い箇所に設けられていれば、歩行中において、足裏Pが第一透明板21から離れにくい。
【0053】
また、一対の第一接続部71は、第一靴底部51に対して、回動自在に取り付けられていてもよい。一対の第一接続部71が第一靴底部51に対して、回動不能に取り付けられていると、歩行中の被観察者の中足趾節間関節(MP関節)が屈曲した場合、中足趾節間関節(MP関節)の屈曲に合わせて足固定部7が第一靴底部51に対して相対回転できない。そのため、被観察者が、中足趾節間関節(MP関節)付近に柔軟性がなく、不快に感じる場合があるからである。
【0054】
一対の第二接続部72は、第二靴底部52の側部52bのうち、歩行方向Wに垂直な方向に対向する箇所に設けられている。
【0055】
足固定部7は、被観察者の足裏Pを、歩行中においても、中底部1に接触させる機能を担っている。歩行中の被観察者の中足趾節間関節(MP関節)が屈曲した場合、足固定部7は第二靴底部52を地面から引き上げる。その結果、第二靴底部52は第一回転軸53を中心に第一靴底部51に対して相対的に回転方向R1に回転する。
【0056】
足固定部7は、被観察者の足裏Pを、歩行中においても、中底部1に密着させる観点から、被観察者の足裏Pと中底部1との間に隙間を生じさせないように、被観察者の足裏Pが中底部1を押さえつける形状を有することが好ましい。足固定部7が柔軟性および弾力性がある素材で形成され、足を密着させて収容できる形状であることが好ましい。
【0057】
また、被観察者の足裏Pを、歩行中においても、中底部1に接触させる観点から、足固定部7のかかと部分を、被観察者のかかとに密着させることが重要である。足固定部7のかかと部分が被観察者のかかとが密着している方が、歩行中の被観察者の中足趾節間関節(MP関節)が屈曲した場合に、足固定部7が第二靴底部52を引き上げやすい。例えば、足固定部7のかかと部分を、長さの調整可能なストラップ等で構成してもよい。
【0058】
次に、足裏観察装置100の動作について説明する。
はじめに、被観察者に足裏観察装置100を装着させる。足固定部7がストラップ等の調整機構を有する場合は、足固定部7を中底部1に密着させるように、ストラップ等を調整する。
【0059】
次に、カメラ61の位置を調整する。被観察者の足の大きさに合わせて、カメラ61の向き、撮像視野を調整する。
【0060】
次に、カメラ61の撮影を開始し、被観察者の足裏Pの観察を開始する。足裏観察装置100を装着した被観察者を直立させた後、被観察者に歩行を開始させる。歩行中の被観察者の足裏Pをカメラ61により撮像し、撮像した画像は、画像を表示する機器や画像を解析する手段を有する機器、例えばコンピュータに転送される。
【0061】
(第一実施形態の効果)
歩行中の被観察者の足裏Pをカメラにより観察する場合、カメラを靴に装備する方法が考えられる。しかしながら、足裏Pを直接観察できるようにカメラを靴に設置することは、設置場所やカメラ視野を確保する観点から難しい。
本実施形態の足裏観察装置100は、中底部1を透明な部材で形成し、反射板4に映った足裏Pの像Qをカメラ61により撮影する。このような構成を有する足裏観察装置100は、設置場所やカメラ視野を十分に確保でき、また、歩行中であっても容易に被観察者の足裏Pを観察できる。
【0062】
本実施形態の足裏観察装置100によれば、歩行中の被観察者の足が中足趾節間関節(MP関節)付近で屈曲した場合も、その屈曲に合わせて、被観察者の足裏Pを中底部1に接触させた状態を維持することができる。
また、第一靴底部51が歩行方向Wに対して傾き、底部51aの接地面51cが地面から離れ、アーム62が地面に接触した場合、アーム62は第二回転軸63を中心に第一靴底部51に対して相対的に回転方向R2に回転する。この場合においても、カメラ61は反射板4に映った足裏Pの像(足裏像)Qを映すことができる。
【0063】
本実施形態の足裏観察装置100によれば、圧力センサやIMU(Inertial Measurement Unit)センサなど比較して、足裏の正確な接地領域や足裏の皮膚の状況等の、詳細な情報を取得することができる。例えば、足裏の皮膚の状況を正確に観察することで、足裏の異常を早期発見することができ、足病変の予防に有益である。足病変の早期発見は難しいとされており、足裏の皮膚の状況、特に足裏の血流や皮膚の状況を観察することが早期発見に効果的であるといわれている。本実施形態の足裏観察装置100は、被観察者の足裏の血流や皮膚の状況を容易に観察でき、足病変の早期発見にも活用することができる。
【0064】
(変形例)
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の第一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0065】
例えば、かかと部分を観察する必要がない場合、第二透明板は透明でなくともよく、また、第二反射板42は反射面4aを有さなくてもよい。転倒リスクの測定等に対する情報をより多く取得できるつま先付近のみを観察できるようにして、足裏観察装置100の製造コストを削減してもよい。
また、上記つま先付近の内、足の親指部分だけを観察できるように、アーム62とカメラ位置調整機能を省略してもよい。転倒リスクの測定等に対する情報をより多く取得できる足の親指部分のみを観察できるようにして、足裏観察装置100の製造コストを削減してもよい。
【0066】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について、図10から図12を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
本実施形態に係る足裏観察方法は、足裏観察装置100を用いて足裏Pを観察する方法である。本実施形態に係る足裏観察方法は、足裏観察装置100により観察した歩行中の被観察者の足裏Pの画像から、転倒リスクを予測する方法である。
【0067】
足裏観察装置100は、歩行中の被観察者の足裏Pの動画像を取得する(足裏画像取得工程)。ここで取得した動画像は、例えばRGBフォーマットの画像データである。
【0068】
次に、取得した動画像の各フレームから、被観察者のつま先部分が撮影されている領域(以降「つま先領域」という)を抜き出す。つま先領域の画像データが観察対象のデータとなる。ここで、被観察者の足裏Pが中底部1に接触している領域(以降「接触領域」という)は、毛細血管内の血流が遮断されるため、白色に近づくように変化している。
【0069】
次に、つま先領域の画像をHSVフォーマットに変換し、各画素ごとに、HSVデータが所定の範囲(例えば、白色に近い色の範囲)に含まれる画素を、接触領域に含まれる画素と認定する。つま先領域の画像データは、接触領域と、接触していない領域と、の二つ領域のいずれかを示す二値データとして保存される(足裏接触領域認定工程)。
【0070】
次に、二値化されたつま先領域のデータから、接触領域に含まれる画素をカウントする。図10および図11は、歩行中の足が1ストロークする間の、接触領域に含まれる画素数の時間的変化を示すグラフである。図10はつまずき経験がある被観察者のグループ(以降「Aグループ」という)から取得した画像から取得したグラフである。図11はつまずき経験がない被観察者のグループ(以降「Bグループ」という)から取得した画像から取得したグラフである。
【0071】
接触領域の画素数の時間的変化において、図10図11に示すように、歩行中の足が1ストロークする間に、二つのピークがある。歩行動作における、中足趾節間関節(MP関節)付近で屈曲する「Push−off」フェーズにおいて、接触領域の画素数は最も多くなる(Apeak1)。また、靴底部5が接地する直前の「Foot Strike」フェーズにおいて、接触領域の画素数は二番目に多くなる(Apeak2)。
この二つのピークの差分を、DPCA(Difference of two Peak Contact Areas)と称す。DPCAは、Apeak1からApeak2を減算することで求めることができる(ピーク差分算出工程)。
【0072】
AグループとBグループとの結果を比べるために、以下の示すように正規化したDPCA(NDPCA)を算出する。ここで、Aminは、接触領域の最小画素数を示している。
【数1】
【0073】
図12は、AグループとBグループのNDPCAの示すグラフである。図12が示すように、AグループのNDPCAの方が、BグループのNDPCAより大きい。
図12に示すように、Aグループの結果とBグループの結果とから算出した統計的な有意差検定結果Pは0.05以下(Aグループの結果とBグループの結果における分布の重なりの確率が5%以下)となり、Aグループの結果とBグループの結果とは別分布であることが示される。
すなわち、NDPCAの結果から、被観察者がAグループもしくはBグループのいずれに属するかを予測することができる可能性が高いと考察される。
【0074】
足裏観察装置100を用いて取得した歩行中の足裏Pから、接触領域が画素数の二つのピークの差分を算出する。ピーク差分が小さい場合、つま先の活動は活発ではないため、つまずきのリスクが大きくなると考えられる。そのため、ピーク差分が大きい場合、つまずきのリスクは小さいと予測することができ、またピーク差分が小さい場合、つまずきのリスクは大きいと予測することができる。
【0075】
上記の工程は、画像を解析する手段を有する機器、例えばコンピュータにおいて、実行可能なソフトウェアによって実行されるように構成してもよい。
【0076】
(第二実施形態の効果)
本実施形態の足裏観察方法によれば、歩行中の被観察者の足裏Pの画像を取得し、足裏Pと中底部1が接触している接触領域を認定し、その接触領域の時間的変化から、被観察者のつま先の活動傾向を把握することができる。つま先の活動傾向からつまずきのリスクを予測することができる。
【0077】
本実施形態の足裏観察方法においては、つま先の活動傾向をつまずきのリスクの予測に用いたが、つま先の活動傾向は他の用途にも使用することができる。例えば、スポーツ時の身体状況の把握にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、足裏を観察する必要がある医療や介護分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100 足裏観察装置
1 中底部
2 透明板
2a 接触面
2b 観察面
21 第一透明板
21a 接触面
22 第二透明板
22a 接触面
3 緩衝部材
4 反射板
4a 反射面
41 第一反射板
42 第二反射板
5 靴底部
5a 底部
5b 側部
5c 接地面
5d 開口
51 第一靴底部
51a 底部
51b 側部
51c 接地面
52 第二靴底部
52b 側部
53 第一回転軸
54 弾性部材
6 撮像部
61 カメラ
62 アーム
63 第二回転軸
64 弾性部材
7 足固定部
71 第一接続部
72 第二接続部
P 足裏
D 分割線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12