【文献】
三木健嗣ほか,Efficient detection and purification of cells by synthetic microRNA switches,再生医療 日本再生医療学会雑誌,2015年02月01日,Vol.14 Suppl,p.188,ISSN 1347-7919
【文献】
LAHMY R, et al.,miRNA-375 promotes beta pancreatic differentiation in human induced pluripotent stem (hiPS) cells,Molecular Biology Reports,2014年,Vol.41,p.2055-2066,ISSN 0301-4851
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を、実施態様を示して詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0011】
miRNA応答性mRNA
本発明において、miRNA応答性mRNAは、単にmiRNAスイッチとも言うが、以下の(i)および(ii)の核酸配列を含むmRNAを意味する:
(i) miRNAによって特異的に認識される核酸配列、および(ii) 第一のマーカー遺伝子のコード領域に対応する核酸配列。当該(i)miRNAによって特異的に認識される核酸配列と(ii) 第一のマーカー遺伝子のコード領域に対応する核酸配列は、機能的に連結されている。
【0012】
本発明における「miRNA」とは、mRNAからタンパク質への翻訳の阻害やmRNAの分解を通して、遺伝子の発現調節に関与する、細胞内に存在する短鎖(20-25塩基)のノンコーディングRNAである。このmiRNAは、miRNAとその相補鎖を含むヘアピンループ構造を取ることが可能な一本差のpri-miRNAとして転写され、核内にあるDroshaと呼ばれる酵素により一部が切断されpre-miRNAとなって核外に輸送された後、さらにDicerによって切断されて機能する。
【0013】
(i)のmiRNAとは、選別すべき所望の細胞に特異的に発現しているmiRNAを適宜選択することができる。所望の細胞とは、後述する内皮細胞、肝細胞またはインスリン産生細胞などが例示される。特異的に発現しているmiRNAとは、他の細胞と比較して所望の細胞において、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上あるいはそれ以上の割合で高く発現しているmiRNAが例示される。このようなmiRNAは、データベースの情報(例えば、http://www.mirbase.org/又はhttp://www.microrna.org/)に登録されたmiRNA、及び/または当該データベースに記載されている文献情報に記載されたmiRNAより適宜選択することができる。例えば、表1に記載されたmiRNAが挙げられるが、これらには限定されない。
【0014】
表1. miRNAおよびその配列
【表1】
【0015】
本発明において、miRNAによって特異的に認識される核酸配列は、例えば、当該miRNAに完全に相補的な配列であることが好ましい。あるいは、当該miRNAにおいて認識され得る限り、完全に相補的な配列との不一致(ミスマッチ)を有していても良い。当該miRNAに完全に相補的な配列からの不一致は、所望の細胞において、通常にmiRNAが認識し得る不一致であれば良く、生体内における細胞内の本来の機能では、40〜50% 程度の不一致があっても良い。このような不一致は、特に限定されないが、1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、若しくは10塩基又は全認識配列の1%、5%、10%、20%、30%、若しくは40%の不一致が例示される。また、特には、細胞が備えているmRNA 上のmiRNA標的配列のように、特に、シード領域以外の部分に、すなわち miRNA の 3’ 側 16 塩基程度に対応する、標的配列内の 5’ 側の領域に、多数の不一致を含んでもよく、シード領域の部分は、不一致を含まないか、1塩基、2塩基、若しくは3塩基の不一致を含んでもよい。このような配列は、RISCが特異的に結合する塩基数を含む塩基長であればよく、長さは別段限定されないが、好ましくは、18塩基以上、24塩基未満の配列、より好ましくは、20塩基以上、22塩基未満の配列である。本発明において、miRNAによって特異的に認識される核酸配列は、所望の細胞および他の細胞へ当該配列を有するmiRNA応答性mRNAを導入し、所望の細胞においてのみ対応するマーカー遺伝子の発現が抑制されることを確認することによって、適宜決定して用いることができる。例えば、miR-126-3P、miR-126-5P、miR-122-5PおよびmiR-375によって特異的に認識される核酸配列は、表2に記載された標的配列が挙げられるが、これらには限定されない。
【0016】
表2. miRNAおよびその標的配列
【表2】
【0017】
本発明において使用される前記(ii)の「マーカー遺伝子」とは、細胞内で翻訳されて、マーカーとして機能し、細胞の選別を可能にする任意のタンパク質をコードする遺伝子である。細胞内で翻訳されてマーカーとして機能しうるタンパク質としては、一例としては、蛍光、発光、呈色、若しくは蛍光、蛍光タンパク質などの蛍光、発光又は呈色を補助することなどにより、視覚化し、定量化することができるタンパク質をコードする遺伝子、膜タンパク質、または、アポトーシス誘導遺伝子、自殺遺伝子などの、発現することで細胞を死滅させるタンパク質をコードする遺伝子を含むが、これらに限定されない。アポトーシス誘導遺伝子と組み合わせて、アポトーシス抑制遺伝子をマーカー遺伝子として用いることもできる。本明細書において、当該マーカー遺伝子のコード領域に対応する核酸を含むmRNAより翻訳されたタンパク質を、マーカータンパク質と指称する。本発明において、「第一の」とは、2種類のマーカー遺伝子を用いる場合において、区別させるための用語であり、特段にマーカー遺伝子を限定するものではない。
【0018】
本発明において、蛍光タンパク質としては、Sirius、BFP、EBFPなどの青色蛍光タンパク質;mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFPなどのシアン蛍光タンパク質;TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green (例えば、hmAG1)、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPerなどの緑色蛍光タンパク質;TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBananaなどの黄色蛍光タンパク質;KusabiraOrange (例えば、hmKO2)、mOrangeなどの橙色蛍光タンパク質;TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberryなどの赤色蛍光タンパク質;TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、HcRed、KeimaRed(例えば、hdKeimaRed)、mRasberry、mPlumなどの近赤外蛍光タンパク質が挙げられるが、これらには限定されない。
【0019】
本発明において、発光タンパク質としては、イクオリンを例示することができるが、これに限定されない。また、蛍光、発光又は呈色を補助するタンパク質として、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、βラクタマーゼなどの蛍光、発光又は呈色前駆物質を分解する酵素を例示することができるが、これらには限定されない。ここで本発明において、蛍光、発光又は呈色を補助する物質をマーカー遺伝子として使用する場合、目的とする細胞の選別において、対応する前駆物質と細胞群を接触させること、又は細胞群内に対応する前駆物質を導入することによって行われ得る。
【0020】
本発明において、アポトーシス誘導遺伝子とは、細胞に対してアポトーシス誘導活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、IκB、Smac/DIABLO、ICE、HtrA2/OMI、AIF、endonuclease G、Bax、Bak、Noxa、Hrk (harakiri)、Mtd、Bim、Bad、Bid、PUMA、activated caspase-3、Fas、Tk等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、好ましくは、Bimがアポトーシス誘導遺伝子として用いられる。
【0021】
本発明において自殺遺伝子とは、細胞におけるその発現がその細胞にとって致死的である遺伝子を意味する。本発明において、自殺遺伝子は、それ自体で細胞死をもたらすもの(例えば、ジフテリアA毒素)であってもよく、またはこの遺伝子の発現が、特定の薬物に対して細胞を感受性にするもの(例えば、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子の発現により、抗ウィルス化合物に対して細胞を感受性にする)であってもよい。自殺遺伝子として、例えば、ジフテリアA毒素、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)、カルボキシルエステラーゼ(CA)、シトシンデアミナーゼ(CD)、チトクロームP450(cyt-450)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、ニトロレダクターゼ(NR)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、チミジンホスホリラーゼ(TP)、水痘帯状疱疹ウィルスチミジンキナーゼ(VZV-TK)、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)をコードする遺伝子等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、好ましくは、HSV-TKが自殺遺伝子として用いられる。
【0022】
本発明において、上記マーカー遺伝子は、局在化シグナルをコードする遺伝子を備えていてもよい。局在化シグナルとしては、核局在化シグナル、細胞膜局在化シグナル、ミトコンドリア局在化シグナル、タンパク質分泌シグナル等を挙げることができ、具体的には、古典的核移行配列(NLS)、M9配列、ミトコンドリア標的配列(MTS)、小胞体移行配列を挙げることができるが、これらには限定されない。このような局在化シグナルは、後述するイメージングサイトメトリー等で、目的の細胞を選別する工程を画像上で行うときに特に有利である。
【0023】
本発明において、miRNAによって特異的に認識される核酸配列と第一のマーカー遺伝子のコード領域に対応する核酸配列が機能的に連結されるとは、マーカー遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ただし、開始コドンを含む。)の5’UTR内、3’UTR内、及び/または当該オープンリーディングフレーム内に、少なくとも1つのmiRNAの標的配列を備えることを意味する。miRNA応答性mRNAは、好ましくは、5’末端から、5’から3’の向きに、Cap構造(7メチルグアノシン5’リン酸)、マーカー遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム並びに、ポリAテイルを備え、5’UTR内、3’UTR内、及び/またはオープンリーディングフレーム内に少なくとも1つのmiRNAの標的配列を備える。mRNAにおけるmiRNAの標的配列の位置は、5’UTRであっても、3’UTRであってもよく、オープンリーディングフレーム内(開始コドンの3’側)であってもよく、これらのすべてにmiRNAの標的配列を備えていてもよい。したがって、miRNA標的配列の数は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つあるいはそれ以上であっても良い。
【0024】
好ましくは、miRNA応答性mRNAは、(i)および(ii)の核酸配列が、5'から3'の方向にこの順序で連結されている。このとき、cap構造とmiRNAの標的配列との間の塩基数及び塩基の種類は、ステム構造や立体構造を構成しない限り、任意であってよい。例えば、cap構造とmiRNA標的配列との間の塩基数は、0〜50塩基、好ましくは、10〜30塩基となるように設計することができる。また、miRNA標的配列と開始コドンとの間の塩基数及び塩基の種類は、ステム構造や立体構造を構成しない限り、任意であってよく、miRNA標的配列と開始コドンと間の塩基数は、0〜50塩基、好ましくは、10〜30塩基となるような配置にて設計することができる。
【0025】
本発明において、miRNA応答性mRNA 中のmiRNA標的配列内には、開始コドンとなるAUGが存在しないことが好ましい。例えば、miRNAの標的配列が5’UTRに存在し、かつ、当該標的配列内にAUGを含む場合には、3'側に連結されるマーカー遺伝子との関係上でインフレームとなるように設計されることが好ましい。あるいは、標的配列内にAUGを含む場合、標的配列内のAUGをGUGに変換して使用することも可能である。また、標的配列内のAUGの影響を最小限に留めるために、5’UTR内における標的配列の配置場所を適宜変更することができる。例えば、cap構造と標的配列内のAUG配列との間の塩基数が、0〜60塩基、例えば、0〜15塩基、10〜20塩基、20〜30塩基、30〜40塩基、40〜50塩基、50〜60塩基となるような配置にて設計され得る。
【0026】
本発明において、miRNAの標的配列が5’UTRに存在する場合、例えば、下記のような配列が採用され得る。
表3. miRNAおよびそれに対応するmiRNA応答性mRNA中の5’UTRの配列
【表3】
【0027】
本発明において、miRNAの標的配列が5’UTRに存在する場合、それに続くマーカー遺伝子の下流(すなわち、3’UTR)は、例えば、下記の配列が採用され得る。この時、5’UTRと3’UTRの間に挟まれて配置されるマーカー遺伝子は、上記したような任意の遺伝子が使用され得る。
【0029】
本発明において、マーカー遺伝子として例えばBFPをコードする遺伝子が使用される場合、本発明におけるmiRNA応答性mRNAの全長は、例えば、下記の配列が採用され得る。
表5. miRNAおよびそれに対応するmiRNA応答性mRNAの全長
【表5-1】
【表5-2】
【0030】
miRNA応答性mRNAの導入
本発明において、miRNA応答性mRNAを細胞に導入する方法として、DNAの形態またはmRNAの形態で導入することができる。
【0031】
miRNA応答性mRNAをDNAの形態で導入する場合、例えば、ウィルス、プラスミド、人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウィルスベクターとしては、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウィルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウィルスベクター、センダイウィルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、miRNA応答性mRNAが発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。
【0032】
miRNA応答性mRNAがRNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell.7:618-630)。修飾塩基の位置は、ウリジン、シチジンいずれの場合も、独立に、全てあるいは一部とすることができ、一部である場合には、任意の割合でランダムな位置とすることができる。
【0033】
異なる2種以上のmiRNA応答性mRNAを導入する場合、あるいはmiRNA応答性mRNAと、後述するコントロールとなるmRNA(以下、コントロールmRNAとも指称する)とを用いる場合には、複数のmRNAを細胞群に共導入することが好ましい。共導入した2種以上のmRNAの細胞内での割合は個々の細胞で維持されるため、これらのmRNAから発現するタンパク質の活性比は、細胞集団内において一定となるためである。この時の導入量は、導入される細胞群、導入するmRNA、導入方法および導入試薬の種類により異なり、所望の翻訳量を得るために当業者は適宜これらを選択することができる。
【0034】
本発明において、コントロールmRNAとは、マーカー遺伝子のコード領域に対応する核酸を含む配列または薬剤耐性遺伝子のコード領域に対応する核酸を含む配列からなるmRNAであって、miRNAの標的部位を有さないmRNAが例示される。コントロールmRNAは、好ましい態様においては、miRNA応答性mRNAとともに細胞群に導入されて、miRNA応答性mRNAが導入された細胞を確認し、識別するためのコントロールとして機能し得る。また、miRNA応答性mRNAからの蛍光や発光などの信号強度の定量化の際のコントロールとして機能し得る。コントロールmRNAの導入量もまた、所望の翻訳量を得るために当業者は適宜これらを選択することができる。
【0035】
本発明において使用される「薬剤耐性遺伝子」は、対応する薬剤に対して抵抗性を有するタンパク質を発現する遺伝子であれば何でもよい。例えば、抗生物質耐性遺伝子を含むが、これらに限定されない。抗生物質耐性遺伝子としては、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が挙げられる。本発明において、好ましくは、ピューロマイシン耐性遺伝子またはブラストサイジン耐性遺伝子が抗生物質耐性遺伝子として用いられる。
【0036】
本発明の一実施態様による選別方法において、より好ましくは、miRNA応答性mRNAとコントロールmRNAを同時に、標的細胞を含む細胞群へ導入する工程を含む。かかる工程は、好ましくは、miRNA応答性mRNAとコントロールmRNAとの共導入により実施することができる。コントロールmRNAを用いることで、miRNA応答性mRNAの細胞への導入効率が低い場合においても、miRNA応答性mRNAから翻訳されるマーカータンパク質が低いまたは翻訳されない細胞を目的の細胞として選別することが可能となる。
【0037】
本発明において、コントロールmRNAを用いる場合、当該コントロールmRNAに含まれるマーカー遺伝子は、miRNA応答性mRNAに含まれるマーカー遺伝子と異なることが好ましい。例えば、miRNA応答性mRNAに含まれるマーカー遺伝子がアポトーシス誘導遺伝子または自殺遺伝子である場合、コントロールmRNAに含まれるマーカー遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子であり得る。この場合、蛍光が確認される細胞を、例えばFACSを用いてソートすることにより、選択的に分離した後、アポトーシス誘導遺伝子または自殺遺伝子の発現が抑制された細胞を標的細胞として選別することにより、選別の精度向上を図ることができる。
【0038】
また、薬剤耐性遺伝子のコード領域に対応する核酸を含む配列からなるコントロールmRNAは、任意のマーカー遺伝子のコード領域に対応する核酸を含む配列からなるmiRNA応答性mRNAとともに用いることができる。この場合、マーカー遺伝子の種類に関わらず、miRNA応答性mRNAが導入された細胞が選択的に薬剤耐性を有することになり、選別の精度向上を図ることができる。
【0039】
一方、miRNA応答性mRNAに含まれるマーカー遺伝子およびコントロールmRNAに含まれるマーカー遺伝子は、その両者に同種の遺伝子が用いられることもあり得る。例えば、miRNA応答性mRNAに含まれるマーカー遺伝子とコントロールmRNAに含まれるマーカー遺伝子の両者に蛍光タンパク質をコードする遺伝子が用いられることがあり得て、この場合には、両蛍光タンパク質の蛍光波長が異なることが望ましい。
【0040】
なお、蛍光タンパク質をコードする遺伝子に替えて、発光タンパク質あるいは、蛍光、発光又は呈色を補助するタンパク質をコードする遺伝子を同様の組み合わせで用いることも可能である。
【0041】
本発明におけるコントロールmRNAは、別段限定されることはないが、例えば、下記に示すmRNAなどが使用され得る。
【0042】
表6.コントロールmRNA
【表6-1】
【表6-2】
【0043】
本発明の一実施態様による選別方法によれば、miRNA応答性mRNAと、任意選択的にコントロールmRNAとを、細胞群に導入する工程を実施することで、標的細胞を含有しうる細胞群から標的細胞を選別可能な状態にすることができる。すなわち、標的細胞を含有しうる2種以上の細胞を含む細胞群の中から、所望の細胞について、他の細胞種と異なる検出可能な信号情報を提示した状態とすることができる。後述する製造方法によって、選別工程をさらに実施することで、標的細胞を選択的に分離することができるようになる。
【0044】
内皮細胞の選別方法
本発明において、内皮細胞とは、血管の内表面を構成する扁平で薄い細胞であるが、本発明では内皮前駆細胞と区別されない。本発明における内皮細胞は、培養を継続することで管構造を形成することができる細胞であってもよく、さらに好ましくは、アセチル化低密度リポタンパク質(ac−LDL)を取り込む能力がある細胞をいう。内皮細胞は、例えば、特に限定されないが、CD31のようなマーカーが発現していることによって特徴づけられる。
【0045】
本発明において、内皮細胞を選別するために用いるmiRNA応答性mRNAに含まれるmiRNAによって特異的に認識される核酸配列は、miR-126-3PまたはmiR-126-5Pによって特異的に認識される核酸配列であることが好ましい。
【0046】
選別の対象となる細胞群は、内皮細胞を含有しうる任意の細胞であれば良い。例えば、多能性幹細胞から分化誘導させた細胞群であってもよく、生体内から取り出した細胞の集団であってもよいが、これらには限定されない。したがって、内皮細胞を含有するか否かが不明な細胞群にmiRNA応答性mRNAを導入することもあり得る。好ましい実施態様において、細胞群は、多能性幹細胞から分化誘導された細胞群であり得る。このような分化誘導は、内皮細胞へ特異的な誘導に限定されず、他の細胞種、例えば、心筋細胞を取得することを目的とした分化誘導も含有される。
【0047】
多能性幹細胞から内皮細胞を製造する方法として、例えば、Li et al., J. Cell Biochem., 106:194-199, 2009など既知の方法を適宜用いて行い得る。
【0048】
肝細胞の選別方法
本発明において、肝細胞とは、アルブミンのmRNAまたはHNF4Aを発現している細胞として定義される。本発明の別の態様においては、肝細胞はグリコーゲンの蓄積、低比重リポタンパク質(LDL)の取り込み、アルブミンの分泌、アンモニア代謝と尿素合成、シトクロムP450活性、脂質代謝、薬物代謝などの肝細胞の機能として公知の機能のいずれかひとつ、あるいは複数の組み合わせによって特徴づけられる細胞と定義してもよい。
【0049】
本発明において、肝細胞を選別するために用いるmiRNA応答性mRNAに含まれるmiRNAによって特異的に認識される核酸配列は、miR-122-5Pによって特異的に認識される核酸配列であることが好ましい。
【0050】
選別の対象となる細胞群は、肝細胞を含有しうる任意の細胞であれば良い。例えば、多能性幹細胞から分化誘導させた細胞群であってもよく、生体内から取り出した細胞の集団であってもよいが、これらには限定されない。したがって、肝細胞を含有するか否かが不明な細胞群にmiRNA応答性mRNAを導入することもあり得る。好ましい実施態様において、細胞群は、多能性幹細胞から分化誘導された細胞群であり得る。このような分化誘導は、肝細胞へ特異的な誘導に限定されない。
【0051】
多能性幹細胞から肝細胞を製造する方法として、例えば、WO2001/081549、Takayama K, et al, Stem Cell Reports. 1:322-335, 2013、Kajiwara M, et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 109: 12538-12543, 2012、Hay DC, et al, Stem Cells. 26: 894-902, 2008など既知の方法を適宜用いて行い得る。
【0052】
インスリン産生細胞の選別方法
本発明において、インスリン産生細胞とは、インスリンのmRNAを発現している細胞と定義される。
【0053】
本発明において、インスリン産生細胞細胞を選別するために用いるmiRNA応答性mRNAに含まれるmiRNAによって特異的に認識される核酸配列は、miR-375によって特異的に認識される核酸配列であることが好ましい。
【0054】
選別の対象となる細胞群は、インスリン産生細胞を含有しうる任意の細胞であれば良い。例えば、多能性幹細胞から分化誘導させた細胞群であってもよく、生体内から取り出した細胞の集団であってもよいが、これらには限定されない。したがって、インスリン産生細胞を含有するか否かが不明な細胞群にmiRNA応答性mRNAを導入することもあり得る。好ましい実施態様において、細胞群は、多能性幹細胞から分化誘導された細胞群であり得る。このような分化誘導は、インスリン産生細胞へ特異的な誘導に限定されない。
【0055】
多能性幹細胞からインスリン産生を誘導させる方法として、例えば、アクチビン(Activin)やレチノイン酸(RA)を用いて分化誘導する方法などが例示される(特開2009-225661号公報、E.Kroon et al.,Nature Biotechnology(2008)Vol.26,No.4:443-452、K.A.D’Amour et al.,Nature Biotechnology(2006)Vol.24,No.11:1392-1401、W.Jiang,Cell Research(2007)17:333-344、J.H.Shim et al.,Diabetologia(2007)50:1228-1238、R.Maehra et al.,PNAS(2009),vol.106,No.37:15768-15773)。さらに、多能性幹細胞へPDX1を導入して培養する方法(米国特許7534608号公報および特開2006-075022号公報)、低分子化合物を適宜組み合わせて多能性幹細胞に作用させてインスリン産生細胞を製造する方法(WO2011/081222およびKunisada Y et al.,Stem Cell Res.(2012) vol.8,No.2:274-284.)も例示される。
【0056】
多能性幹細胞
本発明において多能性幹細胞とは、生体に存在する多くの細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、本発明で使用される肝細胞に誘導される任意の細胞が包含される。多能性幹細胞には、特に限定されないが、例えば、胚性幹(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線維芽細胞や骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、製造工程において胚、卵子等の破壊をしないで入手可能であるという観点から、iPS細胞であり、より好ましくはヒトiPS細胞である。
【0057】
(A) 胚性幹細胞
胚性幹細胞(ES細胞)は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
【0058】
ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された(J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson etal. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。
【0059】
ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用いて行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848;Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932;M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559;H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。
【0060】
ES細胞作製のための培養液として、例えば0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20% KSRおよび4ng/ml bFGFを補充したDMEM/F-12培養液を使用し、37℃、5% CO
2、湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl
2および20% KSRを含有するPBS中の0.25% トリプシンおよび0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができる。
【0061】
ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、Nanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-Time PCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT-3/4、NANOG、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。
【0062】
ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES-1、KhES-2およびKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。
【0063】
(B) 精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウスを作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,羊土社(東京、日本))。
【0064】
(C) 胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。
【0065】
(D) 人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNA、RNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
【0066】
上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool(登録商標)(Millipore)、HuSH 29mershRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LT、UTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。
【0067】
初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。
【0068】
一方、DNAの形態の場合、例えば、ウィルス、プラスミド、人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウィルスベクターとしては、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウィルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウィルスベクター、センダイウィルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。
【0069】
また、RNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。
【0070】
iPS細胞誘導のための培養液としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液[例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプロセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社、Essential 8、Life Technologies社、StemFit、Ajinomoto社)]などが含まれる。
【0071】
培養法の例としては、たとえば、37℃、5%CO
2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
【0072】
あるいは、37℃、5% CO
2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)、マトリゲル(BD社)およびiMatrix511 (Nippi社) )を用いる方法が例示される。
【0073】
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
【0074】
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm
2あたり、約5×10
3〜約5×10
6細胞の範囲である。
【0075】
iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。このほかにも、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、 SSEA-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-2-54、TRA-1-60およびTRA-1-80)を指標として選択することができる。
【0076】
本明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子、卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞、腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。
【0077】
また、iPS細胞を移植用細胞の材料として用いる場合、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のHLA遺伝子型が同一もしくは実質的に同一である体細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する体細胞である。
【0078】
(E) 核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
核移植により得られたクローン胚由来のES細胞(nt ES細胞)は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がnt ES(nuclear transfer ES)細胞である。nt ES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B. Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術との組み合わせが利用される (若山清香ら (2008), 実験医学, 26巻, 5号 (増刊), 47〜52頁) 。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。
【0079】
(F) Multilineage-differentiating Stress Enduring cells
Multilineage-differentiating Stress Enduring cells (Muse細胞)は、WO2011/007900に記載された方法にて製造された多能性幹細胞であり、詳細には、線維芽細胞または骨髄間質細胞を長時間トリプシン処理、好ましくは8時間または16時間トリプシン処理した後、浮遊培養することで得られる多能性を有した細胞であり、SSEA-3およびCD105が陽性である。
【0080】
本発明よって選別された細胞は、医療用に投与することができる。従って、本発明の方法によって選別された細胞を含む治療剤を提供する。選別された細胞が、内皮細胞である場合、冠動脈疾患や下肢虚血疾患(バージャー病や閉塞性動脈硬化症など)を含む重症虚血性疾患患者の治療のために投与することができる。したがって、本発明では、上記の方法で選別された内皮細胞を含む血管再生剤を提供する。選別された細胞が、肝細胞である場合、肝硬変などの慢性肝不全、急性肝不全など肝不全の治療のために投与することができる。したがって、本発明では、上述した方法により得られた肝細胞を含む肝疾患治療剤を提供する。選別された細胞が、インスリン産生細胞である場合、糖尿病、特に1型糖尿病の治療のために投与することができる。したがって、本発明では、上述した方法により得られたインスリン産生細胞を含む糖尿病治療剤を提供する。投与される細胞数は治療において効果を発揮するような量であれば特に限定されるものではなく、患部の大きさや体躯の大きさに合わせて適宜増減して調製されてもよい。
【実施例1】
【0081】
miRNAスイッチの作製
<PCR用プライマー>
表7に以下に用いるPCR用プライマーを示す。
【表7】
【0082】
<鋳型プラスミドDNA>
(a)pTAP-tagBFP
pTagBFP-Tubulin (evrogen) を鋳型にして、プライマーとして、TagBFP_TfwdおよびTagBFP_Trevを用いて、PCR 法により断片を増幅した。得られた断片を、自作のクローニングベクターであるpGEM-TAP に挿入した。pGEM-TAPは、pGEM-Teasy (Promega) を鋳型にして、プライマーとして、pGEMTAP_MCS_RevおよびpGEMTAP_MCS_Fwdを用いて、PCR mutagenesisにより作製した。
【0083】
(b)pCTp-EGFP
pEGFP-N1 (Clontech) を鋳型にして、プライマーとして、YF128_EXFP_TfwdおよびYF129_EXFP_Trevを用いて、PCR 法により断片を増幅した。得られた断片を、自作のクローニングベクターであるpCM-TAPに挿入した。pCM-TAPは、上記pGEM-TAPのDraI 断片と pLysSRARE2 (Novagen) のNheI, AgeI 平滑末端化断片をライゲーションすることにより作製した。
【0084】
<蛍光タンパク質をコードする遺伝子に対応する核酸を含む配列の構築>
(a)tagBFP
KOD-Plus-Neo(KOD-401,TOYOBO)を用いて、製造者の指示に従って、表8の溶液を調整し、上記のpTAP-tagBFPを鋳型として、tagBFP fwdおよびTAP_IVTrevをプライマーとして用いてPCRによって増幅した。
【0085】
【表8】
【0086】
増幅されたPCR産物をDpn I(TOYOBO)を用いて37°Cで30分処理した後、MiniElute PCR purification Kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製を行った(tagBFP PCR産物と言う)。
【0087】
(b)EGFP
上記(a)と同様に、上記のpCTp-EGFPを鋳型として、TAPEGFP_IVTfwdおよびTAP_IVTrevをプライマーとして用いてPCRによって増幅した。より、PCR増幅を行い、PCR産物を精製した(EGFP PCR産物と言う)。
【0088】
<5’UTRおよび3’UTR配列の構築>
(a)5’UTR
KOD-Plus-Neo(KOD-401,TOYOBO)を用いて、製造者の指示に従って、表9の溶液を調整し、表10に示すIVT_5prime_UTRを鋳型として、TAP_T7_G3C fwd primerおよびRev5UTR primerをプライマーとして用いてPCRによって増幅した。
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
増幅されたPCR産物を、MiniElute PCR purification Kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製を行った(5'UTR PCR産物と言う)。
【0092】
(b)3’UTR
上記(a)と同様に、表10に示すIVT_3prime_UTRを鋳型として、Fwd3UTR primerおよびRev3UTR2T20をプライマーとして用いてPCRによって増幅し、精製を行った(3'UTR PCR産物と言う)。
【0093】
<IVT_EGFPテンプレートの構築>
KOD-Plus-Neo(KOD-401,TOYOBO)を用いて、製造者の指示に従って、表11の溶液を調整し、上記のEGFP PCR産物、5'UTR PCR産物および3'UTR PCR産物を鋳型として、TAP_T7_G3C fwd primerおよび3UTR120A rev primerをプライマーとして用いてPCRによって増幅した。
【表11】
【0094】
増幅されたPCR産物をDpn I(TOYOBO)を用いて37°Cで30分処理した後、MiniElute PCR purification Kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製を行った。
【0095】
<miRNA応答性mRNAのIVT(in vitro transcription)テンプレートの構築>
miRNAスイッチのIVTテンプレートは、KOD-Plus-Neo(KOD-401,TOYOBO)を用いて、製造者の指示に従って、表12に記載の溶液を調整し、上記のtagBFP PCR産物、各miRNA標的5'UTR oligo-DNAおよび上記の3'UTR PCR産物を鋳型として、T7FwdB primerおよび3UTR120A rev primerをプライマーとして用いてPCRによって増幅した。各miRNA標的5'UTR oligo-DNAは、表13に示す。
【0096】
【表12】
【0097】
【表13】
【0098】
増幅されたPCR産物をDpn I(TOYOBO)を用いて37°Cで30分処理した後、MiniElute PCR purification Kit (QIAGEN)を用いて、製造者の指示に従って精製を行った。
【0099】
<mRNAの合成及び生成>
Warren L, et al., Cell Stem Cell. 7(5):618-30 (2010) に記載のプロトコールを用いて、MEGAscript T7 kit (Ambion)により、上述した各IVTテンプレートを用いてmRNAを作製した。この反応において、ウリジン三リン酸及びシチジン三リン酸に替えて、シュードウリジン−5’−三リン酸及びメチルシチジン−5’−三リン酸(TriLink BioTechnologies)をそれぞれ用いた。IVT(mRNA合成)反応の前に、グアニジン−5’−三リン酸は、Anti Reverse cap Analog (New England Biolabs)で5倍希釈した。反応混合液を37°Cで5時間インキュベートして、TURBO DNase (Amibion)を加えた後、37°Cでさらに30分インキュベートした。得られたmRNAは、FavorPrep Blood / Cultured Cells total RNA extraction column (Favorgen Biotech)で精製し、Antarctic phosphatase (New England Biolabs)を用いて37C°で30分インキュベートした。その後、RNeasy Mini Elute Cleanup Kit (QIAGEN)により、さらに精製した。
【実施例2】
【0100】
内皮細胞の分離
<HUVECsの培養>
ヒト臍帯血内皮細胞(HUVECs)は、ロンザ社から購入し(C2517A)、EGM-2 Endothelial Cell Growth Medium-2 BulletKit (Lonza)を用いて培養した。
【0101】
<マイクロアレイ解析>
miRNAの発現プロファイルは、 製造者プロトコールに従って、Agilent Technologies Human miRNA Microarray Release 19.0を用いて行った。データは、 GeneSpring GX 12.6 software (Agilent Technologies)を用いて解析した。
【0102】
<内皮細胞を含む心筋細胞の誘導法>
ヒトiPS細胞は、Takahashi K, et al. Cell. 131: 861-72, 2007に記載の201B7株、409B2(理研バイオリソースセンターより入手可能)または、Okita K, et al, Stem Cells 31, 458-66, 2012に記載の606A1を用いた。ヒトES細胞は、KhES1を京都大学より入手し用いた。ヒトiPS細胞またはES細胞をCTK solution(ReproCELL)で2分処理後、溶液を除去し、続いてAccumax(Innovative Cell Technologies)で5分処理後、ピペッティングによりシングルセルへと解離した。遠心分離により細胞を回収し、低接着6 wellディッシュ(Corning)へ移し、2mM L-Glutamine、150μg/mL Transferrin、50μg/mL Ascorbic Acid(sigma)、4×10
-4M monothioglycerol (MTG)、0.5% penicillin/streptomycin (Invitrogen)、10 μM ROCK inhibitor (Y-27632)および2ng/mL BMP4(R&D)を添加した1.5 ml/well STEMPRO 34(Invitrogen)中、37℃、5%酸素条件下にて培養して、EBを形成させた(day0)。翌日(day1)、2mM L-Glutamine、150μg/mL Transferrin、50μg/mL Ascorbic Acid、4×10
-4M MTG、0.5% penicillin/streptomycin、18ng/mL BMP4(最終濃度として10 ng/ml)、10ng/mL bFGF(最終濃度として5ng/ml)および12ng/mL Activin A(最終濃度として6 ng/ml)を添加したSTEMPRO34を等量、EBの培養を行っている6 wellプレート中に加え、37℃、5%酸素条件にて3日間培養した。誘導4日目に(day4)、得られたEBをIMDM(Invitrogen)にて洗浄し、2 mM L-glutamine、150μg/mL Transferrin、50μg/mL Ascorbic Acid、4×10
-4M MTG、10ng/mL VEGFおよび1μM IWP-3(Stemgent)を添加したSTEMPRO 34をディッシュに加えて、37℃、5%酸素条件下で、4日間培養した。誘導8日目に(day8)、培地を、2 mM L-glutamine、150μg/mL Transferrin、50μg/mL Ascorbic Acid、4×10
-4M MTG、0.5% penicillin/streptomycin、10ng/mL VEGFおよび5ng/mL bFGFを添加したSTEMPRO 34に交換し、4日間、37℃、5%酸素条件下で培養した。この時、2 日に1度同じ条件の培地に交換した。誘導12日目に(day12)、通常の酸素濃度のインキュベーターに移し、8日間培養した。この時、2 日に1度同じ条件の培地に交換した。
【0103】
<チューブ形成試験>
分離した内皮細胞は、2x10
5 cells/wellでMatrigel (BD)をコートした24-well plateに播種し、EGM-2 BulletKit medium中で培養した。翌日、Biorevo BZ-9000 microscopeを用いて観察をした。
【0104】
<結果>
内皮細胞を分離するため、ヒト臍帯血内皮細胞(HUVECs)を用いてマイクロアレイ解析を行い、内皮細胞で特異的に発現する上位5つのmiRNA(hsa-miR-10b-5p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-196b-5pおよびhsa-miR-216a-5p)を見出した(
図1A)。これらのmiRNAに特異的に認識される配列とBFPを有するmiRNAスイッチ(以下、miR-** miRNAスイッチと言う。)を実施例1に記載の方法で作製し、対照となるEGFP mRNAとともにHUVECsへ導入したところ、miR-126-3p miRNAスイッチおよびmiR-126-5p miRNAスイッチによりHUVECsを分離することに成功した(
図1B)。このときコントロールとして、BFP mRNAおよびEGFP mRNAをHUVECsへ導入した結果と比較し、分離できることを確認した。さらに、当該miRNAスイッチにより内皮細胞が分離できるかを確認するため、上述の方法で心筋細胞へ誘導し、誘導後の細胞に含有する内皮細胞が分離可能かについて検討を行った。その結果、心筋細胞誘導後の細胞群に、miR-126-3p miRNAスイッチおよびmiR-126-5p miRNAスイッチにより分離できる細胞が、5-10%程度含まれており、当該細胞は内皮細胞マーカーであるCD31が陽性であることが示された(
図2Aおよび
図2B)。一方、miR-208a miRNAスイッチではCD31陽性細胞の分離はできなかった。従って、miR-126-3p miRNAスイッチおよびmiR-126-5p miRNAスイッチによって、不均一な細胞群から内皮細胞を分離するために有用であることが示唆された。さらに、miR-126-5p miRNAスイッチで分離された細胞を、チューブ形成試験を行ったところ、血管新生能を有していることが確認された(
図2C)。
【0105】
続いて、心筋細胞および内皮細胞へ特異的な2つのmiRNAに特異的に認識される配列を有するmiRNAスイッチを用いて、心筋細胞および内皮細胞を同時に分離できるかを検討した。すなわち、
図3Aに記載のmiR-208aおよびmiR-126-3pまたはmiR-126-5pを有する4つの組み合わせのmiRNAスイッチを作製し、iPS細胞から心筋細胞を誘導した細胞群へ対照となるEGFP mRNAとともに導入し、BFPの蛍光強度CD31陽性細胞の含有率とcTnT陽性細胞の含有率を測定したところ、各マーカー陽性細胞を分離できることが示された(
図3Bおよび
図3C)。また、このとき、miR-126-5p+miR-208aの組み合わせを用いた場合、比較的BFPの蛍光強度の低下が強くみられることが確認された。
【実施例3】
【0106】
肝細胞の分離
<肝細胞の培養>
ヒト初代肝細胞は、BioreclamationIVTより購入し、Torpedo Antibiotic Mix (BioreclamationIVT)を添加したInVitroGRO CP Medium (BioreclamationIVT)中で培養した。
【0107】
<肝細胞誘導法>
ヒトiPS細胞は、Takahashi K, et al. Cell. 131: 861-72, 2007に記載の201B6株を用いた。ヒトiPS細胞から肝細胞への誘導は、Kajiwara M, et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 109:12538-12543, 2012に記載の方法を修正して行った。すなわち、ヒトiPS細胞をマトリゲルをコートしたプレートへ播種し、1× B27 supplement、100 ng/ml activin A、10 μM Y-27632および1 μM CHIR99021を添加したRPMI 1640 mediumを加えた。翌日(1日目)、先の培地からY-27632を除き、0.5 mM NaBを加えた培養液に交換した。5日目、培地を20% knockout serum replacement (KSR)、1 mM L-glutamine、1% nonessential amino acids、0.1 mM 2-mercaptoethanol、1% DMSO、10 ng/ml FGFおよび20 ng/ml BMP4を添加したknockout DMEMに交換し、6日間培養した。11日目、培地を20 ng/ml hepatocyte growth factor (HGF)および20 ng/ml oncostatin M (OSM)を添加したhepatocyte culture medium (Lonza)へ交換し、さらに7日間培養し、肝細胞を得た。
【0108】
<結果>
肝細胞を分離するため、初代肝細胞を用いてマイクロアレイ解析を行い、肝細胞で特異的に発現する上位5つのmiRNA(hsa-miR-122-3p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-194-5pおよびhsa-miR-215)を見出した(
図4A)。これらのmiRNAスイッチを実施例1の方法で作製し、対照となるEGFP mRNAとともにヒトiPS細胞から分化誘導した肝細胞へ導入したところ、miR-122-5p miRNAスイッチにより細胞を分離することに成功した(
図4B)。当該分離された細胞について、ALBUMINおよびHNF4Aの発現を調べたところ、いずれも陽性である細胞が分離できることが示された(
図5Aおよび
図5B)。さらに、miR-122-5pを指標として分離した細胞は、免疫染色によりALBUMIN陽性細胞であることが確認された(
図5C)。
【実施例4】
【0109】
インスリン産生細胞の分離
<インスリン産生細胞誘導法>
ヒトiPS細胞は、Okita K, et al, Stem Cells 31, 458-66, 2012に記載の585A1株を用いた。ヒトiPS細胞からインスリン産生細胞への誘導は、Kunisada Y, et al, Stem Cell Res. 8:274-284, 2012およびNakagawa, M, et al, Sci Rep 4, 3594, 2014に記載の方法で行った。すなわち、1× B27 supplement, 10 μM Y-27632 and 3 μM CHIR99021を添加したRPMI 1640 medium中で1日培養した。翌日(1日目)、1× B27 supplement, 100 ng/ml activin A and 1 μM CHIR99021を含有するRPMI 1640 mediumへ培地交換し、3日間培養した。続いて、細胞を0.5× B27 supplement、1 μM dorsomorphin、2 μM retinoic acidおよび10 μM SB431542を添加したImproved MEM Zinc Option mediumへ培地を交換し、6日間培養した。さらに、0.5× B27 supplement、10 μM forskolin、10 μM dexamethasone、5 μM Alk5 inhibitor IIおよび10 mM nicotinamideを添加したImproved MEM Zinc Option mediumへ培地を交換し、8日間培養した。
【0110】
<結果>
インスリン産生細胞において、特異的に発現するmiRNAは、過去の報告(Francis, N., et al., Microrna 3, 54-63, 2014、Lahmy, R., et al, Mol Biol Rep 41, 2055-2066, 2014およびOzcan, S. Mol Endocrinol 28, 1922-1933, 2014)に従ってhas-miR-375を用いた。上記の方法で miR-375 miRNAスイッチを作製し、対照となるEGFP mRNAとともにヒトiPS細胞から分化誘導したインスリン産生細胞へ導入したところ、当該miRNAスイッチにより細胞を分離することに成功した(
図6Aおよび
図6B)。当該分離された細胞について、免疫染色によりINSULIN陽性細胞であることが確認された(
図6C)。