【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業、研究題目「スーパーバイオイメージャーの設計・試作・評価」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記緩和層を構成する材料のヤング率が、前記芯材を構成する材料のヤング率より高く、前記導電層を構成する材料のヤング率より低い、請求項1に記載の電子機能部材。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本実施形態はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
(電子機能部材)
図1は、本実施形態にかかる電子機能部材の平面模式図である。
図1に示す電子機能部材100は、繊維網10と、繊維網10を支持する基材20と、を有する。繊維網10は、基材20の開口部20aに懸架されている。「開口部に懸架された」状態を実現するため、繊維網10は基材20の開口部20aを跨いで基材20の一方の表面に固定されている。電子機能部材は、例えば、生体に接触させることで生体からの情報を受信する部材(センサー)、電気的信号を生体に与える部材、電極等として用いることができる。
【0022】
「繊維網」
繊維網10は、繊維の集合体である。
図1では、理解を容易にするために、繊維網10を構成する繊維を線として図示している。繊維網10を構成する繊維は、開口部20aの間を直線状に繋いでも、曲線状に繋いでもよい。また繊維は、外枠により開口部20a上に張力によって張られた状態で懸架されていてもよく、たわんだ状態で懸架されていてもよい。例えば、繊維網10は綿状に形成されていてもよい。
【0023】
繊維網10全体の厚みは、200nm以上100μm以下であることが好ましく、500nm以上80μm以下であることがより好ましい。ここで、繊維網10全体の厚みとは、繊維網の一面からもう一方の面までの厚さを意味する。繊維網10全体の厚みは、例えば平板で挟み込んだ時の間隙寸法として計測できる。なお、非常に疎な繊維密度の場合は測定および定義が困難であるが、繊維密度が非常に疎な場合は、導電性を十分確保することができないため、考慮する必要はない。繊維網10全体の厚みが200nm以上であれば、繊維網10が十分な強度を有する。一方で、繊維網10全体の厚みが100μm以下であれば、被測定面との間の抵抗を十分無視できる。
【0024】
繊維網10は、電極部12と配線部14と支持部16とを有する。電極部12と配線部14と支持部16とは、いずれも繊維の集合体であり、繊維とこれらの間の空隙とからなる。電極部12と配線部14と支持部16とは、構成する繊維の構造が異なっている。
【0025】
電極部12及び配線部14の形状は特に問わず、必要に応じて変更することができる。例えば、生体の情報を得る場合は、生体の部位に合せて電極部12をパターニングすることができる。パターニングされた電極部12を生体の部位に接触させることで、各接触部からの電気信号を得ることができる。
【0026】
<電極部>
図2は、第1実施形態にかかる電極部12を構成する繊維の断面を模式的に示した図である。
図2に示すように電極部12を構成する繊維は、芯材12Aと緩和層12Bと導電層12Cとを備える。
【0027】
芯材12Aは、電極部12を構成する繊維の核となる部分である。芯材12Aを構成する材料のヤング率は、1GPa未満であることが好ましく、100MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることが好ましい。芯材12Aが非常に柔らかく伸縮可能であることで、柔らかくかつ動作する測定対象の動きを制限することなく、測定対象に追従する。
【0028】
ここで「芯材12Aを構成する材料のヤング率」とは、芯材12Aを構成する繊維のヤング率ではなく、芯材12Aを構成する材料を用いてJIS 7161に準拠した方法で測定した材料のヤング率を意味する。
【0029】
芯材12Aを構成する材料は、例えば、フッ素系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム等の一般に使用されているエラストマー、アクリル、ナイロン、ポリエステル等のエラストマー以外の高分子材料、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリデン(PVP)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。ウレタン系ゴムの一種であるポリウレタン及びシリコン系ゴムの一種であるシリコンゴムは、伸縮性に優れ、例えば心筋細胞のように、非常に柔らかい材料(ヤング率が数kPa)で、かつ、動作する対象物の動きにも追従できる。また対象物の動きを制限することも避けられる。
【0030】
芯材12Aの直径は、200nm以上2000nm以下であることが好ましく、300nm以上1500nm以下であることがより好ましく、500nm以上1000nm以下であることがさらに好ましく、700nm以下800nm以下であることが特に好ましい。芯材12Aの直径が上記範囲内であれば、芯材12Aの伸縮性、柔軟性を確保できる。芯材12Aの直径は、任意の10点の樹脂組成物の断面を走査型電子顕微鏡で測定し、それらの直径の平均値として求めることができる。
【0031】
図3は、第1実施形態にかかる電極部12を構成する繊維の交点の断面を模式的に示した図である。
図3に示す交点は、図示左から右に向かって伸びる芯材12Aと、紙面手前から奥に向かって伸びる芯材12Aとの交点である。交点において芯材12A同士は、互いに一部で結着していることが好ましい。芯材12A同士が互いに結着していると、繊維網の強度を高めることができる。
【0032】
緩和層12Bは、芯材12Aの少なくとも一部を被覆する。緩和層12Bは、芯材12Aを構成する材料よりヤング率が高い材料を含む。緩和層12Bを構成する材料のヤング率は、芯材12Aを構成する材料のヤング率より高く、導電層12Cを構成する材料のヤング率より低い。ここで「緩和層12Bを構成する材料のヤング率」とは、緩和層12Bを構成する繊維のヤング率ではなく、緩和層12Bを構成する材料を用いてJIS 7161に準拠した方法で測定した材料のヤング率を意味する。
【0033】
緩和層12Bは、芯材12Aと後述する導電層12Cとの伸縮性、柔軟性の違いにより導電層12Cに加わる応力を緩和し、導電層12Cの破断を抑制する。緩和層12Bが導電層12Cの破断を防ぐことで、より柔らかい対象物の測定に電子機能部材100を用いることができる。柔らかい対象物を測定するのに対して、芯材12Aと導電層12Cとの間に芯材12Aより硬い緩和層12Bを設けた方が導電層12Cの破損を防ぐことができるということは、驚くべきことである。
【0034】
緩和層12Bを構成する材料のヤング率、500MPa以上であることが好ましく、1GPa以上であることがより好ましい。また緩和層12Bを構成する材料のヤング率は、50GPa以下であることが好ましく、10GPa以下であることがより好ましい。緩和層12Bのヤング率が上記範囲内であることで、芯材12Aと導電層12Cとの伸縮性、柔軟性の違いにより導電層12Cに加わる応力をより緩和できる。
【0035】
緩和層12Bを構成する材料は、例えば、パリレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エポキシ樹脂(例えば、感光性レジスト(SU8):日本化薬株式会社製)等を用いることができる。パリレンは、薄膜コートすることが可能であり、かつ、生体適合性にも優れる。
【0036】
緩和層12Bの厚みは、芯材12Aの直径の1/8以上1/2以下であることが好ましく、直径の1/6以上1/3以下であることがより好ましく、直径の1/4であることがさらに好ましい。具体的には、50nm以上500nm以下であることが好ましく、800nm以上400nm以下であることがより好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下250nm以下であることが特に好ましい。緩和層12Bの厚みは、任意の10点の樹脂組成物の断面を走査型電子顕微鏡で測定し、それらの直径の平均値として求めることができる。
【0037】
また緩和層12Bは、芯材12Aに対するステップカバレッジ性に優れ、芯材12Aを
支持する役割も担う。芯材12Aは単体では非常に柔らく、形状を維持することが難しい。緩和層12Bが、柔らかい芯材12Aを一部で支持しつつ、導電層12Cとの応力差を緩和することで、動作する対象物の動作を妨げずに追従することが可能となる。このような構成は、芯材12Aが溶解性(生体溶解性)を有さない場合において特に有用である。
【0038】
また緩和層12Bはステップカバレッジ性に優れるため、
図3に示すように芯材12Aの交点を覆う。緩和層12Bが芯材12Aを覆うことで、その一面に形成される導電層12Cの連続性が高まる。また緩和層12Bが芯材12Aを支えることで、動きのある対象物を測定時における導電層12Cの断線を抑制する。
図4は、緩和層が形成されていない芯材32Aの交点の一面に導電層32Cが被覆された例を模式的に示した図である。
図4に示すように、緩和層がない場合は、芯材32Aの影となる部分に導電層32Cが形成されず、導電層32Cの連続性が低下する。
【0039】
図2に示すように、導電層12Cは緩和層12Bの芯材12Aと反対側の面を被覆する。導電層12Cは、導電性を有する材料からなる。例えば、銅、金、アルミニウム、銀、亜鉛等の金属やPEDOT/PSSに代表される有機導電材料を用いることができる。導電性の観点からは、中でも銅や銀が好ましい。また生体等に用いる場合は、不要な反応を抑制するために、安定的な金または白金を用いることが好ましい。
【0040】
導電層12Cの厚みは20nm〜2000nmであることが好ましく、20〜1000nmであることがより好ましく、50nm〜100nmであることがさらに好ましい。当該範囲であれば、十分な導電性と柔軟性が得られる。導電層12Cの厚みは、繊維網の芯材12Aの直径と同様の方法で測定できる。
【0041】
<配線部>
配線部14は、電極部12から延在する。繊維網10の配線部14は、基材20の配線部24につながる。繊維網10の配線部14と基材20の配線部24とは、一度にパターニングされており、連続的につながっている。
【0042】
図5は、第1実施形態にかかる配線部14を構成する繊維の断面を模式的に示した図である。
図5に示すように配線部14を構成する繊維は、芯材14Aと緩和層14Bと導電層14Cと被覆層14Dとを備える。芯材14A、緩和層14B及び導電層14Cは、電極部12における芯材12A、緩和層12B及び導電層12Cと同一である。
【0043】
被覆層14Dは、導電層14Cの緩和層14Bと反対側の面を被覆する。被覆層14Dは、導電層14Cと測定対象物との短絡を防ぐ。また配線部14は被覆層14Dを有する構成とし、電極部12は被覆層14Dを有さない構成とすることで、電位測定箇所の特定が容易になる。例えば、細胞等を測定する場合、どの部分を計測しているかを明確化することが求められる。電位測定箇所を明確化することで、細胞等のどの部分を計測しているかまで明確化できる。
【0044】
被覆層14Dは、緩和層14Bと同じ材料を用いることができる。被覆層14Dの厚みは、50nm以上500nm以下であることが好ましく、800nm以上400nm以下であることがより好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下250nm以下であることが特に好ましい。被覆層14Dの厚みは、任意の10点の樹脂組成物の断面を走査型電子顕微鏡で測定し、それらの直径の平均値として求めることができる。
【0045】
<支持部>
支持部16は、繊維網10において電極部12及び配線部14を除く部分である。
図6は、第1実施形態にかかる支持部16を構成する繊維の断面を模式的に示した図である。
図6に示すように支持部16を構成する繊維は、芯材16Aからなる。芯材16Aは、電極部12における芯材12Aと同一である。支持部16は導電層を有さないため、導電層の破断を考慮しなくてよい。支持部16が芯材16Aにより構成されることで、電子機能部材100の柔軟性がより高まる。
【0046】
「基材」
基材20は、繊維網10の支持体として機能すれば特に制限はされない。基材20は、フレキシブル性を有していることが好ましい。ここで、支持とは、繊維網10の一部を基材20の一方の表面に固定することを意味する。またその一例として、繊維網10が開口部20aを跨いで存在することで、基材20によって保持される場合がある。
【0047】
基材20には、一般に使用されるフィルム等を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を、基材20として用いることができる。また、フッ素系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコン系ゴム等の伸縮性を有する材料を基材20として用いることができる。基材20が柔軟性を有すると、電子機能部材100全体としてのフレキシブル性が高まり、より表面追従性が高まる。
【0048】
基材20の厚さは、その種類によっても異なるが、1μm以上1000μm以下であることが好ましい。基材20の厚さが1μm以上であれば、繊維網10を懸架する支持体として十分な強度を得ることができる。基材20の厚さが1000μm以下であれば、高いフレキシブル性を得ることができる。
【0049】
基材20は、開口部20aを有する。開口部20aは、基材20のいずれかの部分に形成されていればよく、その場所は特に問わない。開口部20aの大きさは、10μm角以上10cm角以下であることが好ましい。開口部20aの大きさが小さすぎると、より微細な加工が必要となるため、繊維網10上に電極部12及び配線部14を形成することが難しくなる。開口部20aが大きすぎると、繊維網10を基材20で支持することが難しくなる。開口部20aの形状は、四角形である必要はなく、円形等でもよい。円形の場合は、その直径が10μm以上10cm以下であることが好ましい。
【0050】
開口部20aの開口率は、10%〜99%であることが好ましい。繊維網10は、繊維が形成されている部分と空隙からなる部分とを有する。そのため、「開口部20aの開口率」とは、平面視した際に空隙が形成されている部分の比率を意味する。この被覆率は、繊維網の表面を1mm×1mmの大きさで任意の10点撮影した後、各写真における繊維が形成されている部分の面積を求め、それらの平均値として求める。
【0051】
上述のように本実施形態にかかる電子機能部材100は、測定対象と接触する電極部12及び測定情報を伝達する配線部14が繊維網10により構成されている。測定対象が動作した場合でも、繊維網10の粗密が変化し、かつ、繊維網10を構成する繊維自体が伸縮することで、測定対象の動作に追従できる。そのため、本実施形態にかかる電子機能部材100は、例えば心筋細胞のように、非常に柔らかく(ヤング率が数kPa)かつ動作する対象物の計測に用いることができる。
【0052】
また本実施形態にかかる電子機能部材100は、電極部12及び配線部14を構成する繊維が、芯材12A、14Aと導電層12C、14Cとの間に、緩和層12B、14Bを有する。緩和層12B、14Bが、芯材12A、14Aと導電層12C、14Cとの間の伸縮性、柔軟性の違いに伴い生じる応力を緩和し、導電層12C、14Cの破断を抑制する。
【0053】
また本実施形態にかかる電子機能部材100は、電極部12、配線部14及び支持部16を構成する繊維が、異なる構成である。各部分に求められる目的に応じて繊維の積層構造を変えることで、電子機能部材100の伸縮性、柔軟性をより高めることができ、より柔らかい材料の計測にも対応できる。
【0054】
(電子機能部材の製造方法)
図7は、本実施形態にかかる電子機能部材の製造方法を模式的に示した図である。本実施形態にかかる電子機能部材100の製造方法は、基材20に開口部20aを形成する工程と、樹脂組成物からなる第1繊維網40を作製する工程と、第1繊維網40を基材20の開口部20aに移送する工程と、第1繊維網40の所定の位置に緩和層、導電層、被覆層を順に積層し、第2繊維網41を作製する工程と、第2繊維網41の一部をエッチングし、繊維網10を作製する工程と、を有する。
【0055】
まず基材20に開口部20aを形成する(
図7(a))。基材20に開口部20aを形成する方法は特に問わない。例えばカッター等で切断してもよい。心筋細胞等のように非常に柔らかく(ヤング率が数kPa)、かつ、動作する対象物を測定する場合、開口部20aを取り囲む枠が剛直だと測定対象物の動作を阻害する場合がある。このような場合は、開口部20aを取り囲む枠の一部に切り込みを入れ、切り離してもよい。また開口部20aを取り囲む枠が測定対象物と接触しないようにしてもよい。
【0056】
基材20に開口部20aを作製する際、基板20の裏面には支持体Sを設けることが好ましい。支持体Sを設けることで開口部20aの形成が容易となる。また後述する繊維網を形成する工程において、基材20を支持することができる。支持体Sとしては、ガラス、樹脂フィルム等を用いることができる。
【0057】
支持体Sを用いる場合は、支持体Sに形成する開口部Saは、基材20に設けられた開口部20aを内包するように外側に形成する。後述の工程で繊維網を移送する過程で繊維が基材に開けられた窓から基材20上に懸架されるようにするためである。開口部20aの内側に支持体Sが露出していると、支持体S上に繊維網が付着し、支持体Sから基材20を剥離する過程で繊維網が破断する不具合を生じることになる。また、開口部20aと支持体Sに開けられた開口部Saの縁を完全に一致させてもよい。
【0058】
またエレクトロスピニングデポジション法で樹脂組成物を噴射して、樹脂組成物からなる第1繊維網40を作製する(
図7(b))。エレクトロスピニングデポジション法は、シリンジのニードルと導電シートの間に高電圧を印加しながら、シリンジ中の溶液を押し出す。このときニードルと導電シートの電位差によって、溶液がシリンジから急激に引き出され、導電シートに向かってスプレーされる。スプレーされた溶剤は樹脂組成物となり、第1繊維網40を構成する。第1繊維網40は、樹脂組成物により構成され、上述の芯材により構成されている。溶媒はニードルと非形成面との間でほとんど蒸発する。第1繊維網40を形成する下地(仮基板)は、第1繊維網40を構成する樹脂組成物との密着性が低い材料により構成されていることが好ましい。作製後の第1繊維網40の剥離が容易になる。
【0059】
次いで、作製した第1繊維網40を基材20の開口部20aに移送する(
図7(c))。例えば、上述のように第1繊維網40を剥離容易な仮基板上に作製した場合は、仮基板から第1繊維網40を剥離し、基板20の開口部20aに移送する。基板20の縁部に第1繊維網40を押し当てるだけで、第1繊維網40と基板20とは密着する。また移送工程は上記方法に限られず、以下の方法でもよい。大きなリング状の導電部材に対してエレクトロスピニング法でリングを懸架するように第1繊維網40を形成する。このリングの一方から他方に向かって、開口部20aを有する基材20を通過させると、基材20は形成された第1繊維網40が絡まった状態となる。これにより、開口部20aに形成された第1繊維網40が転写され、開口部20aに第1繊維網40が形成される。
【0060】
なお、第1繊維網40を作製する方法は、エレクトロスピニング法に限定されない。細い繊維からなるシートを作製し、裁断後に基材20上に開口部20aを覆うようにして積層してもよい。このとき、細い繊維からなるシートは隙間を有する不織布とする。また、繊維の材質は熱可塑性ポリマーとすると、熱圧着で容易に積層することができる。
【0061】
次いで、第1繊維網40の所定の位置に緩和層、導電層、被覆層を順に積層し、第2繊維網41を作製する。
図8は、本実施形態にかかる電子機能部材の繊維網を構成する各繊維の製造過程における状態を模式的に示した図である。
【0062】
第1繊維網40は繊維の集合体である。第1繊維網40を構成する繊維は、作製後の支持部16となる位置では芯材16Aであり(
図8(a))、作製後の電極部12となる位置では芯材12Aであり(
図8(b))、作製後の配線部14となる位置では芯材14Aである(
図8(c))。
【0063】
まず第1繊維網40の全体に緩和層を積層する。その結果、作製後の支持部16となる位置では芯材16Aが緩和層16Bで被覆され(
図8(a))、作製後の電極部12となる位置では芯材12Aが緩和層12Bで被覆され(
図8(b))、作製後の配線部14となる位置では芯材14Aが緩和層14Bで被覆される(
図8(c))。積層方法は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法等を用いることができる。緩和層の被覆性を高まるためには、カバレッジ性能に優れるCVD法を用いることが好ましい。
【0064】
次いで、第1繊維網40の電極部12及び配線部14となる位置に導電層を積層する。導電層の形状は、パターニングを行うことで任意に変更することができる。パターニングの方法としては、マスクを介して成膜することが最も簡便で好ましい。パターニングにより作製後の支持部16となる位置には導電層が積層されない(
図8(a))。これに対し、作製後の電極部12となる位置では芯材12A、緩和層12B、導電層12Cが順に積層され(
図8(b))、作製後の配線部14となる位置では芯材14A、緩和層14B、導電層14Cが順に積層される(
図8(c))。
【0065】
さらに、第1繊維網40の全体に被覆層を積層し、第2繊維網41を作製する(
図7(d))。その結果、作製後の支持部16となる位置では芯材16A、緩和層16B、被覆層16Dが順に積層され(
図8(a))、作製後の電極部12となる位置では芯材12A、緩和層12B、導電層12C、被覆層12Dが順に積層され(
図8(b))、作製後の配線部14となる位置では芯材14A、緩和層14B、導電層14C、被覆層14Dが順に積層される(
図8(c))。
【0066】
最後に、作製された第2繊維網41の一部をエッチングし、繊維網10を作製する(
図7(e))。まず第2繊維網41の配線部14となる位置の一面をマスクし、エッチング処理を行う。エッチングはドライエッチングを用いることが好ましい。ドライエッチングの場合、一面をエッチングした後に、反対側の面をエッチングする。
【0067】
作製後の支持部16となる位置では緩和層16B及び被覆層16Dがエッチングされ、芯材16Aのみが残る(
図8(a))。作製後の電極部12となる位置では、一面側の被覆層12Dと他面側の被覆層12D及び緩和層12Bがエッチングされる(
図8(b))。すなわち、導電層12Cが露出し、電極部12が電極として機能する(
図7(e))。作製後の配線部14となる位置では、一面側はマスクされているためエッチングされず、他面側は被覆層14D及び緩和層14Bがエッチングされる(
図8(c))。
【0068】
上述の手順により電極部12、配線部14及び支持部16を構成する繊維の構造が異なる繊維網10を作製することができる。支持体Sは、繊維網10を構成後に取り外すことが可能である。また配線部14の電極部12が設けられた第1端部と反対側の第2端部に、複数の電極を備える外部端子42を接続することで外部との接続が可能となる。外部端子42の複数の電極は、複数の配線部14のそれぞれの第2端部において露出させた導電層14Cのそれぞれと接続される。
【0069】
(電子部品)
第2実施形態にかかる電子部品は、上述の電子機能部材の配線部に接続された電子回路要素を有する。
【0070】
図9は、本実施形態に係る電子部品を模式的に示した図である。本実施形態にかかる電子部品200は、電子機能部材100と、電子機能部材100の配線部14、24によって接合された集積回路50と、電子機能部材100及び集積回路50を覆うように形成された被覆膜60とを備える。
【0071】
電子機能部材100は、被測定面の情報を電子機能部材100の電極部12で計測する。計測された情報は、配線部14、24を介して集積回路50へ伝えられる。集積回路50は、得られた情報を無線等によって受信機(図視略)に送信する。このような手順で、情報が外部に出力される。
【0072】
図9に示す電子部品200は、電子機能部材100及び集積回路50を覆う被覆膜60を備える。被覆膜60により測定対象との密着性を高めることができる。使用態様に応じては、被覆膜60を設けなくてもよい。
【0073】
集積回路50は特に限定されない。外部に情報を伝達することができれば、一般に使用されているものを用いることができる。被覆膜60も一般に絆創膏等に用いられているものを使用することができる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
基材として、パリレンからなるフィルムを用い、1cm×2cmの開口部を形成した。このときパリレンの裏面には同じサイズの開口部が形成されたポリイミドフィルムを支持体として用いた。
【0075】
他方、エレクトロスピニング法を用いてポリウレタンからなる第1樹脂網を仮基板上に作製した。第1樹脂網を構成する繊維(ポリウレタン)の直径は、700nm〜800nmであり、多少のばらつきを有していた。仮基板上に作製した第1樹脂網は、仮基板から剥離し、基材の開口部を覆うように移送した。
【0076】
次いで、緩和層としてパリレンを200nm被覆した。さらに、マスクを介した蒸着で導電層としてAuを形成し、被覆層としてパリレンを再度200nm積層し、第2繊維網を作製した。
【0077】
最後にドライエッチング法を用いて、不要な被覆層及び緩和層を除去して、繊維網を作製した。繊維網を構成する繊維の構成は、電極部、配線部及び支持部において
図8の構成とした。
【0078】
実施例1で作製した繊維網を一方向に引張り、12%伸ばした。実施例1で作製した繊維網の伸縮を500回繰り返し、繊維網の電極部と配線部の端部(電極部と反対側の端部)との間の抵抗を測定した。その結果、作製直後に測定した抵抗値と、伸縮処理後に測定した抵抗値と、で抵抗値変化はなかった。
【0079】
つまり実施例1で作製した繊維網は、電極部及び配線部において緩和層が形成されていることで導電層の破断が抑制された。
【0080】
実施例1で作製した繊維網は、形状が30%変化する伸張・伸縮に耐えることができた。そのため、例えば心筋細胞等のように非常に柔らかく(ヤング率が数kPa)、かつ、動作する対象物の計測に用いることができる。実際に実施例1で作製した繊維網を用いて、心筋細胞の動きを阻害することなく、電位計測を行うことができた。