(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)において、Rが、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、または、ジグリセリンから全ての水酸基を除いた残基である、請求項1に記載のブリーディング抑制剤。
前記式(1)において、mは25〜80の範囲の整数であって、且つm×nが75〜240の範囲にある整数である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブリーディング抑制剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、骨材事情の悪化から、ブリーディングは、増加する傾向にある。具体的には、従来、骨材には良質な川砂・山砂、川砂利・山砂利等が使用されてきたが、最近では、良質な骨材は採れ難く、骨材として砕石や砕砂を用いる必要がある。この場合、従来の骨材を使用した場合と同じワーカビリティーを得るためには単位水量を増やす必要があるが、単位水量を増やすことでブリーディングが増加する傾向にある。そして、特許文献1に記載のようなポリエチレングリコールでは十分にブリーディングを抑制し低減することが難しい状況であった。そこで、水硬性組成物における他の性質に影響しにくく、十分にブリーディングを抑制することができるブリーディング抑制剤が求められている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ブリーディングが抑制された水硬性組成物を得ることができるブリーディング抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の化合物をブリーディング抑制剤に使用することによって上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ブリーディング抑制剤が提供される。
【0010】
[1] セメントを含有した水硬性結合材と水を含有する水硬性組成物に使用するブリーディング抑制剤であって、
下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物からなるブリーディング抑制剤。
R−[O−(AO)
m−X]
n (1)
R:3〜5価のアルコール化合物から全ての水酸基を除いた残基
X:水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基
m:20〜100の整数
n:3〜5の整数
m,n:m×n=60〜300を満足する整数
【0011】
[2] 前記式(1)において、Rが、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、または、ジグリセリンから全ての水酸基を除いた残基である、前記[1]に記載のブリーディング抑制剤。
【0012】
[3] 前記式(1)において、Xが水素原子である、前記[1]又は[2]に記載のブリーディング抑制剤。
【0013】
[4]前記式(1)において、AOのオキシアルキレン基中の全体の90モル%以上がオキシエチレン基である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のブリーディング抑制剤。
【0014】
[5] 前記式(1)において、mは25〜80の範囲の整数であって、且つm×nが75〜240の範囲にある整数である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のブリーディング抑制剤。
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【発明の効果】
【0017】
本発明のブリーディング抑制剤は、ブリーディングが抑制された水硬性組成物を得ることができるという効果を奏するものである。
【0018】
(削除)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]ブリーディング抑制剤:
本発明は、セメントを含有した水硬性結合材と水を含有する水硬性組成物に使用するブリーディング抑制剤であって、下記の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物を含む、ブリーディング抑制剤である。
R−[O−(AO)
m−X]
n (1)
R:3〜5価のアルコール化合物から全ての水酸基を除いた残基
X:水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基
m:20〜100の整数
n:3〜5の整数
m,n:m×n=60〜300を満足する整数
【0021】
[1−1]式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物:
本発明のブリーディング抑制剤において式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物におけるRは、3価のアルコール化合物、4価のアルコール化合物、または、5価のアルコール化合物から全ての水酸基を除いた残基である。なお、これらのアルコール化合物は、炭素数が1〜6であることがよい。
【0022】
具体的には、3価のアルコール化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリメチロールアルカン、1,3,5−ペンタトリオールなどが挙げられる。
【0023】
4価のアルコール化合物としては、例えば、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどが挙げられる。
【0024】
5価のアルコール化合物としては、例えば、リビトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、グルコース、フルクトース、マンノース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシコース、アルトロースなどが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、3価のアルコール化合物または4価のアルコール化合物から全ての水酸基を除いた残基が好ましく、より具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、または、ジグリセリンから全ての水酸基を除いた残基であることが更に好ましい。このような残基であると、良好なブリーディング抑制効果が発揮される。
【0026】
式(1)におけるXとしては、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基である。炭素数1〜22のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、2−メチル−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、2−プロピル−ヘプチル基、2−ブチル−オクチル基、2−ペンチル−ノニル基、2−ヘキシル−デシル基、2−ヘプチル−ウンデシル基、2−オクチル−ドデシル基、2−ノニル−トリデシル基、2−デシル−テトラデシル基、2−ウンデシル−ペンタデシル基、2−ドデシル−ヘキサデシル基等が挙げられる。なかでもXとしては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0027】
ここで、Xが水素原子であると、該化合物の合成の容易さ、原料入手、経済性の面から好ましい。
【0028】
式(1)においてAOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。AOが複数存在する場合には、2種類以上のオキシアルキレン基を使用してもよい。AOとしては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が含まれることが好ましく、より好ましくは、AOのオキシアルキレン基の全体のうち、オキシエチレン基を50モル%以上含有し、更に好ましくは、AOのオキシアルキレン基の全体のうち、オキシエチレン基を90モル%以上含有するものである。なお、2種類以上のオキシアルキレン基が付加した場合、結合の順には特に制限はなく、ランダム結合でも良いし、ブロック結合でも良い。
【0029】
式(1)において、mは、ポリオキシアルキレン基の付加モル数を示す。mは20〜100の整数であり、nは3〜5の整数である。これらのmとnは、m×n=60〜300を満足する整数である。そして、mは25〜80の範囲であり且つm×nが75〜240の範囲であることが好ましい。mが20より小さいと、ブリーディング低減効果が発揮されず、mが100より大きいと、コンクリートの粘性が上がり、ワーカビリティーが低下する。更に、m×nの値が60より小さいと、ブリーディング低減効果が発揮しない。m×nの値が300より大きいと、コンクリートの粘性が上がり、ワーカビリティーが低下する。
【0030】
例えば、式(1)におけるXが水素原子であるポリオキシアルキレン化合物の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法で製造することができる。
【0031】
具体的には、Rにフェノール性の2つの水酸基を有する化合物にアルキレンオキシドを付加することで得られる。アルキレンオキシドを付加する際には、触媒を用いることができる。アルキレンオキシドを付加重合する際の触媒としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属やそれらの水酸化物、アルコラート等のアルカリ触媒やルイス酸触媒、複合金属触媒を用いることができ、好ましくはアルカリ触媒である。
【0032】
アルカリ触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム、ナトリウムカリウムアマルガム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムハイドライド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド等を挙げることができる。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムブトキシドである。
【0033】
ルイス酸触媒としては、例えば、四塩化錫、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体等の三フッ化ホウ素化合物などが挙げられる。
【0034】
本発明のブリーディング抑制剤は、溶液に限定されず固体であってもよい。
【0035】
なお、本発明のブリーディング抑制剤は、従来公知の水硬性組成物用添加剤と併用してもよいし、混合してもよい。
【0036】
[2]水硬性組成物:
本
実施形態の水硬性組成物は、セメントを含有した水硬性結合材及び水を含有する水硬性組成物であって、水硬性結合材100質量部当たり本発明のブリーディング抑制剤を0.001〜1.0質量部の割合で含有するものである。
【0037】
このような水硬性組成物は、本発明のブリーディング抑制剤を含有するため、ブリーディングが抑制され、ブリーディングの量が少ないものになる。
【0038】
水硬性結合材としては、セメントを含有するものである。このセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント等の各種ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。
【0039】
また、本
実施形態の水硬性組成物は、更に分散剤を含有するものでもよい。この分散剤は、それぞれ従来公知のものを適宜採用することができる。
【0040】
なお、本
実施形態の水硬性組成物は、セメントを含有した水硬性結合材、水、分散剤以外に、骨材、収縮低減剤、空気連行剤などを含有していても良い。
【0041】
本
実施形態の水硬性組成物は、水硬性結合材100質量部当たり本発明のブリーディング抑制剤を0.01〜0.5質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような含有割合とすると、ブリーディングが更に抑制され、ブリーディングの量がより少ないものになる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また、%は質量%、ppmは質量ppmを意味する。
【0043】
実施例1
・ブリーディング抑制剤(EX−1)の製造
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、グリセリン26.1gおよび水酸化カリウム2.3gを仕込んだ。脱水を行った後に、反応系を130±5℃に維持しながらエチレンオキシド(表1中、「EO」と記す)1124gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和し、ろ過を行い、ブリーディング抑制剤(EX−1)を得た。
【0044】
実施例2〜4、7、比較例1〜4
実施例1で用いたグリセリンに代えてトリメチロールプロパンまたはジエチレングリコールを用い、更にエチレンオキシドの量を表1に示すように変え、適切な反応時間となるよう、水酸化カリウムの量を変化させて、各ブリーディング抑制剤(EX−2)、(EX−3)、(EX−4)、(EX−7)、(RE−1)、(RE−2)、(RE−3)、(RE−4)を得た。
【0045】
実施例5
・ブリーディング抑制剤(EX−5)の製造
攪拌機、圧力計、および温度計を備えた圧力容器中に、トリメチロールプロパン33.1gおよび水酸化カリウム2.3gを仕込んだ。次いで、反応系を減圧にて脱水を1時間行った。その後、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド1076gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持した後、更に同温度にてプロピレンオキシド(表1中、「PO」と記す)を42.5g添加し、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、回収した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和し、ろ過を行ない、ブリーディング抑制剤(EX−5)を得た。
【0046】
実施例6
・ブリーディング抑制剤(EX−6)の製造
ブリーディング抑制剤(EX−6)は、表1に示すように、エチレンオキシド(表1中、「EO」と記す)及びプロピレンオキシド(表1中、「PO」と記す)の量を変化させたこと以外は、実施例5と同様にして製造した。
【0047】
【表1】
※1 表1中、式(1)中の「R」は、この欄に記載された化合物から全ての水酸基を除いた残基である。
【0048】
(実施例8〜15、比較例5〜9)
表1で示したブリーディング抑制剤(水硬性組成物用ブリーディング抑制剤)をコンクリートに用いて評価を行った。
【0049】
具体的には、表2に示した配合条件で、20℃の試験室内で50Lの強制二軸ミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm
3)からなる水硬性結合材と、骨材として陸砂(大井川水系、密度=2.58g/cm
3)及び砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm
3)と、を添加し、更に、AE減水剤として「チューポールEX60(竹本油脂社製)」、表1に示す各ブリーディング抑制剤、及び、空気連行剤AE−300(竹本油脂社製)のそれぞれ所定量(表3参照)と、消泡剤である「AFK−2(竹本油脂社製)」とを、上記普通ポルトランドセメントに対して0.005%として練り混ぜ水(水道水)と共に、上記ミキサーに投入して90秒間練混ぜた。スランプが18±1cm、連行空気量が4.5±0.5%の範囲となるよう、AE減水剤、空気連行剤の量を調整し、コンクリート組成物(水硬性組成物)を調製した。
【0050】
調製したコンクリート組成物について、スランプ、連行空気量、ブリーディング量を求め、結果を表3にまとめて示した。
【0051】
・連行空気量(容量%):
練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
【0052】
・スランプ(cm):
連行空気量の測定と同時にJIS−A1101に準拠して測定した。
【0053】
・ブリーディング量:
練り混ぜ直後のコンクリート組成物について、連行空気量及びスランプを測定後、JIS−A1123に準拠して測定した。
【0054】
【表2】
【0055】
表2中、「セメント」は、上述した普通ポルトランドセメントを示す。「細骨材」は、上述した陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm
3)を示し、「粗骨材」は、砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm
3)を示す。また、「細骨材率(%)」は、式:細骨材/粗骨材×100により算出した値を示す。また、「水/セメントの割合(%)」は、式:水/セメント×100により算出した値を示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の記載について以下に説明する。
添加量:セメント質量に対する添加量(%)
「セメントに対する%」は、セメント(水硬性結合材)100質量部に対する質量部を意味する。
【0058】
以上に示すように、本発明のブリーディング抑制剤は、得られる水硬性組成物のブリーディングの量を少なくすることができることが分かった。即ち、本
実施形態の水硬性組成物は、ブリーディングが抑制されているものであることが分かる。