【課題を解決するための手段】
【0005】
もっとも一般的には、本発明は、たとえば、臨床医が出血を制御できるように、血管を収縮させるために、(i)表面凝固のためのプラズマ発生モード、(ii)たとえばマイクロウェーブエネルギを使用しての、より深い部分の凝固のための非イオン化放射モード、及び、(iii)液体を処置部位に搬送するための液体投与モードのいずれかで選択的な動作が可能である電気外科器具を提供する。これら作動モードは、たとえば、出血を抑えるためのタンポン法として、組織の管に圧力を適用するのに適切であるように物理的に構成された電気外科器具に提供され得る。
【0006】
本発明の電気外科器具は、任意のタイプの手術、たとえば、(肝臓の切除などの)切開手術、腹腔鏡手術などにおける使用に適切である場合がある。たとえば、本器具は、たとえば内視鏡、腹腔鏡などの、外科検査デバイスの器具チャネル内にフィットするような寸法である場合がある。
【0007】
このことは、第1の電極と第2の電極とを有することによって概して達成される。これら第1の電極と第2の電極とは、ガス流が存在し、液体チャネルがプローブ先端と流体連通する中で、第1の電極と第2の電極との間にプラズマを発生させる電界を維持することができる。より具体的には、上述の3つの作動モードを提供するために、本発明の第1の態様により、細長いプローブを有する電気外科器具であって、無線周波数(RF)及び/またはマイクロウェーブ電磁(EM)放射を搬送するための同軸伝達線と、RF及び/またはマイクロウェーブエネルギを受信するための同軸伝達線の遠位端におけるプローブ先端と、プローブ先端に液体を搬送するための液体チャネルと、プローブ先端にガスを搬送するためのガスチャネルと、を備え、同軸伝達線が、内側導電体、外側導電体、及び、内側導電体を外側導電体から分離する第1の誘電材料を含み、プローブ先端が、内部を通るプローブ先端チャネルを有する第2の誘電材料を備え、プローブ先端チャネルが液体チャネルと流体連通し、その遠位端においてアパーチャで終端しており、プローブ先端が、同軸伝達線の内側導電体に接続された第1の電極と、同軸伝達線の外側導電体に接続された第2の電極とを含み、第1の電極及び第2の電極が、プラズマ発生モードまたは非イオン化放射モードで選択的に作動可能であり、プラズマ発生モードにおいて、第1の電極及び第2の電極が、ガスチャネルからのガスの流路周りに配置され、それにより、同軸伝達線からのRF及び/またはマイクロウェーブEMエネルギが、熱的または非熱的なプラズマを、流路に沿って搬送されたガス内で当てるとともに維持するように搬送可能であり、非イオン化放射モードにおいて、第1の電極と第2の電極との少なくとも一方が、プローブ先端から外側に、マイクロウェーブEM場を放射するために、放射アンテナ構造として構成されている、電気外科器具が提供される。
【0008】
使用時には、本器具は、上述の3つの作動モードのいずれかで使用することができる。プラズマ発生モードでは、ガスがガスチャネルを通って搬送され、RF及び/またはマイクロウェーブエネルギが、ガス内でプラズマを当てるとともに維持するために使用される。RFエネルギは、プラズマを当てるための最初のパルスとして搬送され得、一方、マイクロウェーブエネルギは、最初のパルスの後に、プラズマを維持するために搬送され得る。非イオン化放射モードでは、マイクロウェーブエネルギは、ガスが無い中でプローブ先端に搬送され得る。このモードでは、放射アンテナ構造により、マイクロウェーブのEM場が放射される。液体投与モードでは、液体が液体チャネルに沿って、アパーチャを通して処置部位に搬送される。このことは、ガス及びRF/マイクロウェーブエネルギがない中で行われるのが好ましい。
【0009】
本器具は、RFエネルギが第1の電極と第2の電極との間の、デバイスの外で結合される、RF搬送モードで選択的に作動可能である場合がある。RFエネルギは、たとえばデバイスが非イオン化放射モードにある際に、マイクロウェーブEMエネルギとは分けて、またはマイクロウェーブEMエネルギと同時に搬送され得る。
【0010】
第1の電極と第2の電極とは、プラズマ発生モードと非イオン化放射モードとにそれぞれ関する異なる構成を取るために、互いに対して移動可能である場合がある。たとえば、第1の電極は、非イオン化モードで作動する際に、細長いプローブの長手軸に沿って、第2の電極の遠位端を越えて突出するように、移動可能である場合がある。各電極の相対移動は、ユーザによって所与の作動モードが選択されると、自動的に生じる場合がある。
【0011】
好ましくは、ガスチャネル及び液体チャネルは、分離した通路である。すなわち、器具の遠位端に達する前は、互いに流体連通していない。液体チャネルとガスチャネルとの一方または両方は、同軸伝達線の内側に位置している場合がある。すなわち、外側導電体の外径の内側にある通路として位置している場合がある。たとえば、液体チャネル及び/またはガスチャネルは、第1の誘電体を通る長手方向の通路によって形成され得る。別の実施例では、内側導電体は、中空である場合がある。すなわち、内部を通る1つまたは複数の長手方向の通路を有する場合がある。このため、液体チャネル及び/またはガスチャネルは、同軸伝達線の内側導電体の内側に位置している場合がある。この構成により、よりコンパクトなデバイスが可能になり得る。
【0012】
本明細書では、「マイクロウェーブ」は、400MHzから100GHzの周波数レンジを示すために概して使用され得るが、1GHzから60GHzのレンジが好ましい。検討した特定の周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzである。対照的に、本明細書では、大きさが少なくとも3桁少ない周波数レンジ、たとえば、300MHz以下、好ましくは、10kHzから1MHzの周波数レンジを示すために、「無線周波数」または「RF」を使用する。
【0013】
絶縁破壊を生じることなくRFエネルギを搬送するために、同軸伝達線の内側導電体と外側導電体とを分ける誘電材料は、マイクロウェーブエネルギのみが同軸伝達線に沿って搬送される場合、必要より高い絶縁耐力(すなわち、より高い絶縁破壊電界強度)を有し得る。このことは、RFエネルギとマイクロウェーブエネルギとの両方で使用するのに適切である絶縁耐力の単一層の誘電材料、たとえば、ポリイミド(たとえばKapton(登録商標))、または、1MHzで3.0を超える誘電率を有する適切なセラミックを使用することによって成される場合がある。別の実施形態では、第1の誘電材料は、第1の絶縁耐力を有する誘電材料で形成された第1の層と、第2の絶縁耐力を有する誘電材料で形成された第2の層とを含み、第2の絶縁耐力が第1の絶縁耐力より低い、複数層の誘電構造を備える場合がある。第2の層の誘電材料は、マイクロウェーブエネルギに関する損失が低いように、すなわち、マイクロウェーブEMエネルギの周波数において、2.1未満の誘電率と、0.0003未満(好ましくは、0.0001以下)の損失正接とを有するように選択され得る。第1の層は、第2の層よりも薄い場合がある。第1の層は、RFエネルギを搬送する際に、絶縁破壊に対して保護するように機能する場合がある。第1の層の厚さは、好ましくは、誘電損失の増大が無視できることを確実にするように選択される。複数層の構造は、第3の絶縁耐力を有する誘電材料で形成された第3の層を備えている場合がある。第3の絶縁耐力は、第2の絶縁耐力よりも高く、また、第1の絶縁耐力と同じである場合がある。第3の層は、第2の層の、第1の層から反対側に位置している場合がある。一実施例では、複数層の構造は、拡張されたPTFEの層を挟み込んだ一対のKapton(登録商標)層を備える場合がある。別の実施例では、複数層の構造は、ポリエチレン発泡材料(たとえば、eccostock(登録商標)PP)の層を挟み込んだ一対のフッ化エチレンプロピレン(FEP)層を備える場合がある。
【0014】
同軸伝達線は、10mm以下の外径、より好ましくは、5mm以下の外径を有する場合がある。もっとも好ましくは、同軸伝達線は、細長いプローブを内視鏡のチャネル内に置くことができるように、2.5mm以下の外径を有する場合がある。内側導電体を外側導電体から分離する誘電材料は、厚さが1mm以下である場合があり、より好ましくは、0.5mm以下の厚さである。誘電材料の誘電率は、5以下である場合があり、より好ましくは3以下、もっとも好ましくは2.5以下である。誘電材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である場合がある。内側導電体または外側導電体の少なくとも一方は、銀で形成され得る。内側導電体と外側導電体との厚さは、50ミクロン以下である場合があり、好ましくは25ミクロン以下、もっとも好ましくは10ミクロン以下である。これら厚さは、RFエネルギ及びマイクロウェーブEMエネルギを同軸伝達線に沿って搬送するのに十分であるが、内側導電体が、内部を通して形成された1つまたは複数の通路を有することを可能にするのに十分な小ささである。
【0015】
プローブ先端は、処置の間に出血部位に圧力を適用するのに適切であるように物理的に構成されている場合がある。たとえば、プローブ先端は、同軸伝達線の遠位端に接続された近位端と、圧力スポットをターゲットエリアに適用するのに適切であるように、輪郭が平滑な方式の形状の、近位端とは反対側の遠位端とを有している場合がある。プローブ先端チャネルは、近位端と遠位端とを結合している。アパーチャは、プローブ先端チャネルの遠位端に位置している。
【0016】
プローブ先端は、任意の適切な方式、たとえば、クリンプ加工、はんだ付け、接着剤などで同軸伝達線に接続され得る。
【0017】
放射アンテナ構造は、第1の電極で形成された単極構造である場合があるか、第1の電極と第2の電極との両方で形成された双極子アンテナである場合がある。放射アンテナ構造は、第1の電極、第2の電極、または、第1の電極と第2の電極との両方の組合せのいずれかで形成された電気的導電構造を備えている場合がある。導電構造は、プローブ先端の表面上に位置する場合があり、やはり、少なくとも部分的に材料内に埋め込まれている場合がある。
【0018】
筒状の等方性のマイクロウェーブの場を放射することを可能にするために、導電構造及び/またはプローブ先端全体は、筒状に対称的である場合がある(本明細書では、別様に述べられていない限り、「対称軸」は筒状対称の軸に言及している)。これにより、プローブの使用時に、マイクロウェーブの場の向きが、対称軸周りのプローブ先端の回転とは無関係であることが確実になっている。プローブ先端チャネルの長手軸(すなわち、同軸伝達線の軸と整列した軸)は、好ましくは、プローブ先端自体の対称軸に平行である。より好ましくは、プローブ先端の対称軸は、プローブ先端チャネルの長手軸と同じであり、それにより、プローブ先端の対称軸に沿って見た際に、プローブ先端チャネルがプローブ先端の中心に位置するようになっている。プローブ先端は、ドーム状、円錐状、切頭円錐状、またはボール形状である場合がある。代替的には、プローブ先端は、半球形の遠位端セクションと一体に形成された筒状セクションを含み得る。プローブ先端が同軸伝達線に接続されている場合、(少なくとも遠位端に近い領域における)同軸伝達線と、プローブ先端チャネルとは、ほぼ同じ長手軸を有する場合がある。
【0019】
第2の誘電材料は、好ましくは損失が少ない、機械的に強力な材料である。ここで、「損失が少ない」は、材料の内部を通るマイクロウェーブが、その材料内へのエネルギの実質的損失なしで通り得る材料に言及している。第2の誘電材料は、好ましくは、プローブ先端の実質的な変形を生じることなく、器具を使用して、機械的圧力が出血場所に加えられるように、十分な剛性を有している。第2の誘電材料は、PEEKまたは適切なセラミック、たとえば、Macor(登録商標)である場合がある。第2の誘電材料は、第1の誘電材料と連続している場合がある。
【0020】
プラズマ発生モードで作動するために、プラズマを当てるための高い電界が、プローブ先端におけるRFエネルギまたはマイクロウェーブEMエネルギのいずれかに関する、高いインピーダンス条件を形成することによって発生し得る。このことは、第1の電極及び第2の電極に関する適切な幾何学形状の選択を通して達成することができる。たとえば、石英または他の同様に損失の低い材料などの、絶縁誘電材料のピースは、第1の電極と第2の電極との間に位置し得る。絶縁誘電材料は、プローブ先端を形成する第2の誘電材料と同じである場合があり、やはり、第2の誘電材料と連続している場合がある。
【0021】
プラズマ発生モードでは、プローブ先端によって受領されるRFエネルギは、プラズマを当てるためのものでよく、高電圧パルスとして受領され得る。高電圧パルスは、所定の期間のCW RFエネルギである場合がある。すなわち、たとえば、100kHzの周波数の正弦波の1msのバーストなどの、一連の(すなわち、複数の)RFサイクルを含んでいる場合がある。マイクロウェーブエネルギは、プラズマを維持するために使用することができる。すなわち、イオン化状態を維持するために、プラズマに出力を送る。この出力は、やはりパルスとして受信される場合がある。プラズマは、準連続的なプラズマのビームを生成する方式で連続して当てられる場合がある。RFエネルギのみを使用する、デバイスにわたるこの構成の利点は、プラズマが、容量性の負荷、または、乾燥した環境から湿潤した環境への変化に起因して崩壊しないことである。プラズマ発生モード(及び維持モード)から、電気外科器具は、やはり、より深い部分の凝固に適切である、マイクロウェーブ放射モードに切り替えることが可能である。このモードでは、第1の電極及び/または第2の電極で形成された導電構造が、上述のマイクロウェーブを放射するアンテナ構造として作用することが可能である。
【0022】
加熱(好ましくは、内部加熱)、そしてひいては、凝固が、プローブ先端の遠位端と、やはりプローブ先端の側部の周りとの両方において生じることが望ましい。加熱は、プローブ先端の遠位端においてもっとも強いものとされるが、この理由は、もっとも強い加熱が近位端にある場合、遠位端に向かって加熱が弱まることにより、プローブ先端の長さに沿って加熱が一様ではなくなる結果となる場合があるためである。プローブ先端の遠位端においてもっとも強い加熱を得るために、マイクロウェーブ/RFエネルギは、好ましくは、プローブ先端の遠位端かその近位に位置する(第1の電極と第2の電極との一方または両方によって形成される)導電構造の一部に、伝達線構造を介して供給されることが好ましい。近位端における接続が可能であるが、使用時に、近位端と遠位端との間で出力がいくらか低下する場合があることから、好ましくはない。この近位端と遠位端との間での出力の低下は、構造に接触する生体組織によるマイクロウェーブ/RFエネルギの吸収が原因である。
【0023】
一実施形態では、プローブ先端は、らせん状の電気的導電構造を含む場合がある。このらせん状の電気的導電構造は、プローブ先端の近位端またはその近位に位置する供給ポイントにおいて同軸伝達線に接続された、第1の外側らせん状電極と、この第1の外側らせん状電極と同じピッチを有する内側らせん状電極とを含み得る。第1の外側らせん状電極は、プローブ先端の外側表面に配置されており、内側らせん状電極は、第1の外側らせん状電極の径方向内側に配置されており、また、少なくとも部分的に外側表面の下において、プローブ先端の誘電材料内に埋め込まれている場合がある。
【0024】
導波路または伝達線構造は、内側らせん状電極と第1の外側らせん状電極との間に形成される。したがって、第1の外側らせん状電極と内側らせん状電極とは、導電材料のストリップで形成される場合があり、内側らせん状電極は、第1の外側らせん状電極よりも小である直径を有するとともに、第1の外側らせん状電極とほぼ平行な経路をたどって、第1の外側らせん状電極と内側らせん状電極との対面している(内側)表面間での著しいオーバーラップを確実にし、それらの間でのRFまたはマイクロウェーブEMエネルギを搬送する。ともに、内側らせん状電極と第1の外側らせん状電極とは、プローブ先端の近位端における供給ポイントからプローブ先端の遠位端にエネルギを搬送するように構成された、らせん状マイクロストリップの伝達線を形成し得る。
【0025】
代替的構成では、らせん状の電気的導電構造は、プローブ先端の外側表面上に、軸方向にオフセットした関係で形成された第1のらせん状電極と第2のらせん状電極とを備えている。第1のらせん状電極と第2のらせん状電極とは、互いから電気的に絶縁されて、同一平面にある伝達線を形成する。
【0026】
マイクロストリップ内の2つのらせん状の電極、または、上述の同一平面にある構成によって形成される、らせん状の電気的導電構造のインピーダンスは、同軸伝達線にマッチしている場合がある。このことは、マッチングトランスを使用して、または、構造の特性インピーダンスが約50Ωであるように、構造の幾何学形状を選択することによって成される場合がある。
【0027】
EMエネルギをプローブ先端の遠位端に供給するためのマイクロストリップ伝達線に加え、第1の外側らせん状電極に対して正反対の第2の外側らせん状電極が、プローブ先端の外側表面上に配置されている場合がある。外観では、正反対の第2の外側らせん状電極が、軸方向の決まったオフセットで第1の外側らせん状電極に対して平行に通っており、それにより、第1の外側らせん状電極のコイルと第2の外側らせん状電極のコイルとが互い違いになっている。第2の外側らせん状電極は、第1の外側らせん状電極と同一であるか、実質的に同一である場合がある。その遠位端において、第2の外側らせん状電極は、内側らせん状電極に接続されている場合があり、それにより、マイクロウェーブまたはRFエネルギが、らせん状マイクロストリップ伝達線によってプローブ先端の遠位端に伝達される際に、対応するマイクロウェーブまたはRF信号が第1の外側らせん状電極と第2の外側らせん状電極との間に励起され得るようになっている。このエネルギは、次いで、第1の外側らせん状電極と第2の外側らせん状電極との間のらせん状の空間に沿って、プローブ先端の近位端に向かって戻る。内側らせん状電極の遠位端と第2の外側らせん状電極との間の接続は、プローブ先端のアパーチャをカバーせず、それにより、アパーチャが閉塞されないようになっている。この場合、内側らせん状電極は内側導電体に接続されており、第1の外側らせん状電極は、プローブ先端の遠位端に位置する供給ポイントにおいて、外側導電体に接続されている。第2の外側らせん状電極の近位端は、電極の短絡を避けるために、開かれている。
【0028】
アルゴンプラズマ凝固法(APC)などのプロセスを実施することを可能にするために、ガスチャネルの出力が、その位置により、高エネルギの電界が形成され得る、第1の電極と第2の電極との間の領域にわたって、ガスチャネルを出るガスが通る、ある位置に位置していることが必要である。このため、高エネルギの電界が第1の電極と第2の電極との間に発生すると、前述の電界を通るガスがイオン化されて、プラズマを発生させることになる。第1の電極と第2の電極との分離により、電界の大きさが判定される。上述のらせん状の構造では、らせん状の電極の分離は、プラズマの発生が生じる場所を制御するために、すなわち、選択的イオン化の場所を形成することにより、らせんに沿って変化する場合がある。
【0029】
環状の断面を有するガスチャネルは、同軸伝達線の外側表面の外側に位置する外側ジャケットによって規定され得る。この場合、ガスチャネルは、ジャケットの内側表面と、同軸伝達線の外側表面との間の空間によって規定される。スペーサが、十分な量のガスが邪魔されずに通ることができることを確実にするように、ジャケットと同軸伝達線との間に十分な空間があることを確実にするために、採用され得る。代替的には、ジャケットの内側表面は、同軸伝達線の外側表面と接触している場合があり、また、ガスチャネルは、ジャケット自体の壁に沿って通るボアとして形成され得る。
【0030】
流入ポートは、加圧ガスキャニスタなどのガス供給源に接続するために、ガスチャネルの近位端に位置している場合がある。ガス供給源は、アルゴンまたは任意の他のガス、たとえば、二酸化炭素、ヘリウム、窒素、空気と任意のこれらガスとの混合物、すなわち、10%の空気/90%のヘリウムの供給源である場合がある。ガスチャネルの遠位端においては、チャネルの近位端において流入ポートに供給されるガスは、第1の外側らせん状電極と第2の外側らせん状電極との表面にわたって外に供給され、それにより、プラズマが、電極間の高電界に当たることができるようになっている。
【0031】
別の実施形態(本明細書では、「リング構成」と呼ばれる)では、第1の電極は、内側導電体の長手方向の延長として形成される場合がある、プローブ先端チャネルの内側表面上の導電シェルの形態である場合がある。第2の電極は、プローブ先端の第2の誘電材料の外側表面上の導電リングの形態である場合がある。導電リングは、外側導電体に、好ましくは第2の誘電材料の外側表面上に位置する導電材料のストリップによって、電気的に接続されている。第1の電極と第2の電極とは、好ましくは、それらの間の回路の短絡を避けるために、互いから電気的に絶縁されている。
【0032】
リング構成では、第1の電極と第2の電極との間に発生する高電界がプラズマにぶつかるために、ガスチャネルは、たとえば上述の外側ジャケットの構成を使用するか別の方法により、その遠位端を、第1の電極と第2の電極との間の領域か、この領域の近位に有していなければならない。液体を生体組織のターゲットエリアに投与するために、液体チャネルは、やはり、プローブ先端チャネルと流体連通していなければならない。
【0033】
したがって、代替的実施形態では、ガスチャネルを液体チャネルから分離するために、多腔構造は、同軸伝達線の内側導電体によって形成された中空チャネルの内側に位置している場合がある。多腔構造の一実施形態では、中心の液体チャネルが規定され得、この中心の液体チャネルは、1つまたは複数の仕切り壁によって液体チャネルから分離された、1つまたは複数の周囲のガスチャネルによって囲まれている。多腔構造の遠位端は、液体放出アパーチャと、少なくとも1つのガス放出アパーチャとを有しており、液体チャネルと、少なくとも1つのガスチャネルとがそれぞれ終端している。多腔構造の外径は、同軸伝達線の内側導電体によって規定された中空チャネルの直径以下である。別の実施形態では、保護コーティングが、同軸伝達線の内側導電体の内側表面上に位置している場合がある。この場合、多腔構造は、内側コーティングの内側表面によって形成された中空チャネルの内側に位置している。多腔構造は、この多腔構造が位置するチャネルから除去可能である場合があり、それにより、異なる手順に、この手順の要請に応じて、異なる構造が使用され得るようになっている。多腔構造の遠位端表面は、同軸伝達線の遠位端に位置している場合がある。この場合、ガスがガスチャネルを出て、第1の電極と第2の電極との間に位置する領域に入るために、ガス放出チャネルは、ガスチャネル間に設けられ得、外側導電体の外側表面、または、プローブ先端の外側表面のガス放出アパーチャで終端する。ガス放出チャネルは、好ましくは、ガスチャネルに対して傾斜した向きになっている。ガス放出チャネルは、内側導電体、外側導電体、第1の誘電材料、及び第2の誘電材料の1つまたは複数を通り得る。複数のガス放出チャネルが存在し得る。
【0034】
ガスが器具に搬送される方法に応じて、ガスは、ガスが有効であるために、適切な流れに導かれる必要がある場合がある。このことは、ガス放出アパーチャ(複数可)の周囲のガスチャネルを、ガスを所望の位置、たとえば、2つの電極が密に近接している領域(すなわち、上述の選択的にイオン化している領域)に向けるように成形することによって達成することができる。ガスの流量は、やはり、ガスチャネルの断面積(各ガスチャネルの断面積は、その長さのほとんどに沿って一定であることが好ましい)、ガス放出アパーチャの断面積、そして特に、ガスチャネル(複数可)の断面積に対するガス放出アパーチャの断面積のサイズを調整することによって変更することができる。たとえば、ガス放出アパーチャにおける流量を増大させるために、ガス放出アパーチャの断面積は、ガス放出アパーチャが終端するガスチャネルの断面積より小である場合がある。
【0035】
別の実施形態では、第1の電極と第2の電極とは、プローブ先端の外側表面の第1の導電ストリップと第2の導電ストリップとの形態である場合がある。第1の導電ストリップと第2の導電ストリップとは、好ましくは、アパーチャの両側に位置している。各ストリップは、プローブ先端チャネルの長手軸を見下ろした際に、2つのストリップがほぼ直線、及び/またはほぼ平行に見えるように、配置され得る。第1の導電ストリップは内側導電体に接続されており、第2の導電ストリップは外側導電体に接続されている。第1の導電ストリップと第2の導電ストリップとは、好ましくは、それらの間に回路の短絡が生じることを避けるために、互いから電気的に絶縁されている。この構成では、ガスチャネルは、上述の多腔構造の一部として、または、外側ジャケットが外側導電体から離間した結果としての、いずれかで提供され得る。導電ストリップ間の距離は、遠位の先端において選択的にイオン化させるために、それら導電ストリップがデバイスの遠位端に近付くにつれて減少する場合がある。
【0036】
別の実施形態では、第1の電極は、第2の誘電材料の外側表面上の第1の導電ストリップの形態である場合があり、第1の導電ストリップは、第2の誘電材料の外側表面の両側に配置され、プローブ先端の遠位端において交わる、第1のリムと第2のリムとを備えている。第1の導電ストリップは、導電材料のストリップをプローブ先端の周りに巻くことによって形成され得る。第1の導電ストリップは、好ましくは、プローブ先端の遠位端において、同軸伝達線の内側導電体に接続されている。したがって、この実施形態では、同軸伝達線の内側導電体、より好ましくは、同軸伝達線の全体が、プローブ先端の遠位端まで全体に延びることが好ましい。導電性の接続構造は、内側導電体を第1の導電ストリップと接続するために、プローブ先端の遠位端に位置する場合がある。この実施形態では、第2の電極は、第2の誘電材料の外側表面上に位置する第2の導電ストリップの形態である場合がある。第2の導電ストリップは、好ましくは、プローブ先端の外側表面上の、第1の導電ストリップの第1のリムと第2のリムとの間の約半分の位置に位置している。より好ましくは、第2の導電ストリップは、第1の導電ストリップの第1のリムと第2のリムとの各々から90度離れている。第2の電極は、第2の導電ストリップに対して反対側の位置におけるプローブ先端の外側表面に位置している第3の導電ストリップをも含む場合がある。好ましくは、第3の導電ストリップは、第2の導電ストリップとは反対側の、第1の導電ストリップの第1のリムと第2のリムとの間の約半分の位置に位置している。第2の導電ストリップと同様に、第3の導電ストリップは、好ましくは、第1の導電ストリップの第1のリムと第2のリムとの各々から90度だけ離れている。第2の導電ストリップと第3の導電ストリップとは、好ましくは、それらの近位端において、同軸伝達線の外側導電体に接続されている。好ましくは、同軸伝達線の外側導電体は、プローブ先端の近位端またはその近位において、互いに対して正反対に位置している第1の導電突起と第2の導電突起とを有している。第2の導電ストリップと第3の導電ストリップとの各々の近位端は、このため、第1の導電突起の外側端部と第2の導電突起の外側端部とを同軸伝達線の外側導電体に電気的に接続するために、第1の導電突起の外側端部と第2の導電突起の外側端部とに接続されている。上述の実施形態では、プローブ先端の外側表面は、4つのほぼ等しい領域に分割されており、これら領域の各々は、第1の導電ストリップ、第2の導電ストリップ、及び第3の導電ストリップの内の2つによって境界が定められている。このため、使用時には、導電ストリップの隣接する各対間に電界が生じる場合があり、プラズマ発生モードにおいて、プローブ先端の外側表面の周りの全体にプラズマを形成することを可能にする。代替的実施形態では、液体チャネルとガスチャネルとは、同じチャネルである場合がある。
【0037】
液体は、プローブ先端から、第1の端部と第2の端部とを有する、中空ニードル、たとえば皮下注射用ニードルによって搬送され得る。このニードルは、プローブ先端チャネルの遠位端においてアパーチャを通っている。ニードルの第1の端部は、液体チャネルと流体連通している場合があり、そうして、液体チャネル内の液体がニードルに入ることができ、ニードルの第2の端部は、液体を、プローブ先端チャネルの外側に位置しているターゲットエリアに搬送するように構成され得る。ニードルの使用により、制御され、安定した液体の流れをターゲットエリアに適用することが可能になる。ニードルは、液体チャネルの長さ全体に関して延びる場合がある。
【0038】
さらに、ニードルは、後退位置と露出位置との間で調整可能である場合があり、ニードルが露出位置にある場合には、ニードルの第2の端部がプローブ先端の外に位置している、すなわち、ターゲットエリアに接触しているか密に近接しており、ニードルが後退位置にある場合には、ニードルの第2の端部はプローブ先端の内部にあるままである。代替的には、ニードルが後退位置にある場合には、ニードルの第2の端部は、全体が同軸伝達線内、または、プローブ先端が接続された液体チャネル内に後退している場合がある。露出位置と後退位置との間でのニードルの調整を有効にするために、電気外科器具には、ニードル調整手段が設けられている場合がある。たとえば、ガイドワイヤがニードルの第1の端部またはその近位に取り付けられている場合があり、このガイドワイヤが液体チャネルに沿って通っており、それにより、ニードルの調整が液体チャネルの近位端から制御できるようになっている。これにより、デバイスの使用中におけるニードルの調整が可能である。ニードル供給チューブは、やはり、ニードルの第1の端部に取り付けられて、ターゲットエリアに投与する液体をニードルに供給する場合がある。この方法で、液体の搬送は、より注意深く制御することができ、液体を投与するために、チャネル全体に液体を流すことは不要である。このことは、液体をより経済的に使用する結果になり得る。
【0039】
ニードルの少なくとも一部は、プローブ先端チャネル内に位置し得、また、より安定させるために、プローブ先端チャネルの壁に添付されている場合がある。ニードルは、露出位置と後退位置との間での調整の間に、ニードルの長手軸が、プローブ先端チャネルの長手軸に対するその向きを変更しないことを確実にするために、プローブ先端チャネルの壁のニードルガイド構造内に位置している場合がある。これにより、ニードルの調整の間により大きく制御することが可能になり、また、たとえば、器具が使用されている際の調整の間に、ニードルが生体組織を越えて左右にこすられないことを確実にし得る。プローブ先端チャネルの内側表面が導電材料を含む場合、ニードルは好ましくは、たとえば、導電シェルの内側表面全体をカバーするか、代替的には、ニードルが前述の内側表面に接触する部分のみをカバーする場合がある絶縁材料(たとえば、Kapton(登録商標)またはPFTE)の層により、前述の導電材料から絶縁されている。第1の電極と第2の電極とが同軸のプラズマ発生構成にある場合では、プローブ先端チャネルの内側表面よりむしろ、第2の電極の内側表面が、このパラグラフの目的について関連する表面である。
【0040】
ニードルの最大の直径は、アパーチャまたはプローブ先端チャネルの最小の直径より小である場合がある。この場合、プラグが、ニードルとプローブ先端チャネルの壁との間に液密シールを形成するように設けられ得る。そのようなシールは、液体が露出位置にある場合に、ニードルからターゲットエリアへの液体の注入を可能にするが、ニードルが後退位置にある場合、血液及び他の体液のプローブ先端内への逆流を防止している場合がある。すなわち、シールが逆止弁を備え得る。プラグは、アパーチャに詰められる、非剛性であるか、弾性的に変形可能な材料で形成されている場合があり、それにより、ニードルが露出位置にある場合に、プラグがニードルの外側表面に内向きの圧力を加えて液密シールを形成し、ニードルが後退位置にある場合に、プラグの弾性的に変形可能である性質により、プラグを貫通する穴が存在しないことが確実であるようになっている。すなわち、ニードルが通ることができる穴を閉じてシールしている。プラグのもっとも外側の端部は、プローブ先端の表面と同一面に置かれている場合があり、また、連続した表面を形成するような形状である場合がある。代替的には、プラグは、プローブ先端チャネルの内側に位置している場合があり、そのもっとも外側の端部は、アパーチャから離間している。プラグは、任意の適切に耐久性のある材料、たとえば、シリコン、PEEK、またはPTFEとすることができる。
【0041】
器具の寸法の選択においては、同軸伝達線を形成する層の厚さと、内側導電体の内側表面によって規定される中空部の直径とを両立させる。このことは、ガスと液体との搬送のための適切な流量を提供する一方、システムのエネルギの損失を最小にすることを目的としている。
【0042】
同軸伝達線は、10mm以下の外径、より好ましくは、5mm以下の外径を有する場合がある。もっとも好ましくは、同軸伝達線は、2.5mm以下の外径を有する場合がある。このため、細長いプローブは、たとえば内視鏡、腹腔鏡などの、外科検査デバイスの器具チャネル内にフィットするようなサイズである場合がある。内側導電体を外側導電体から分離する第1の誘電材料は、厚さが1mm以下である場合があり、より好ましくは、0.5mm以下の厚さである。第1の誘電材料の誘電率は、5以下である場合があり、より好ましくは3以下、もっとも好ましくは2.5以下である。第1の誘電材料は、拡張されているか低密度のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、すなわち、Plastolon(登録商標)などの、エアポケットを包含するPTFEマトリクスを有する材料である場合がある。ナイロンまたはポリウレタンなどの、他の材料も、使用され得る。
【0043】
第1の誘電材料の厚さ及び誘電率などの特性は、第1の誘電材料が、少なくとも400V、好ましくは800VのRFピーク電圧に耐えることができるように選択され得る。絶縁破壊の保護のこのレベルは、第1の誘電材料のみによって提供され得る。しかし、いくつかの実施例では、より高い絶縁耐力の材料(たとえば、Kapton(登録商標))のさらなる層が提供され得る。
【0044】
プローブ先端は、同軸伝達線の外径以下の最大直径を有する場合がある。器具を容易に移動させることを可能にするために、特に、外科検査デバイスの器具チャネルを通して器具が挿入されている実施例において、プローブ先端の軸方向の長さは、10mm以下であることが好ましい。
【0045】
放射アンテナ構造を形成する電気的導電構造は、可撓性である場合がある。すなわち、器具が定位置に移動する際に曲がることが可能である。この構造が可撓性である場合、その構成の制約はより少ない。電気的導電構造は、半波長共鳴器または4分の1波長共鳴器として構成され得る。
【0046】
内側導電体または外側導電体の少なくとも一方は、銀で形成され得る。内側導電体と外側導電体との厚さは、50ミクロン以下である場合があり、好ましくは25ミクロン以下、もっとも好ましくは10ミクロン以下である。これら厚さは、マイクロウェーブエネルギを同軸伝達線に沿って搬送するのに十分であるが、中空の内側導電体の内側表面によって規定される中空部のサイズを最大にするために、可能な限り小さくなっている。
【0047】
ニードルは、液体チャネルを通ってフィットするために、かつ、やはりニードルに必要とされる空間の量を最小にするために、好ましくは、1mm以下の直径を有し、より好ましくは、0.5mm以下である。いくつかの実施形態では、液体チャネルの直径は、液体チャネルとニードルとの間のタイトフィットを達成するために、ニードルの直径とほぼ同じである場合がある。液体チャネル及びニードルの主要な目的が、液体を処置部位に搬送することであるが、たとえば、ニードルを洗浄するために、液体チャネルを通してガスを搬送することが可能である場合がある。いくつかの状況においては、ガスは、マイクロウェーブエネルギを適用するのと同時に、ニードルを通して搬送される場合がある。この状況では、マイクロウェーブエネルギがガスからのプラズマに当たることが可能である場合がある。この実施例は、上述のプラズマ発生モードにおいて使用されるプラズマ発生源よりも集中したさらなるプラズマ発生源を提供する場合がある。
【0048】
より概略的には、電気外科器具は、以下の3つの主要な作動モードを有している。
(i)液体チャネルからの液体が、プローブ先端のアパーチャを介してターゲットエリアに投与される、液体投与モード。
【0049】
(ii)第1の電極と第2の電極とによって形成された導電構造が、放射アンテナ構造として作用して、RF及び/またはマイクロウェーブEMエネルギを周囲の生体組織内に放出する、非イオン化放射モード。
【0050】
(iii)RFエネルギが、第1の電極と第2の電極との上、及び/または間を通るガス内でプラズマを当てる、第1の電極と第2の電極との間の電界を生成するために使用され、マイクロウェーブエネルギがプラズマを維持するために供給される、プラズマ発生モード。
【0051】
本発明の第2の態様は、凝固を実施するための電気外科装置であって、マイクロウェーブEMエネルギを発生させるためのマイクロウェーブ信号発生器と、マイクロウェーブEM周波数より少ない周波数を有する無線周波数(RF)EMエネルギを発生させるためのRF信号発生器と、マイクロウェーブ/RF EMエネルギを受信するように接続された上述の電気外科器具と、マイクロウェーブ/RF EMエネルギをプローブに搬送するための供給構造であって、供給構造が、同軸伝達線をマイクロウェーブ信号発生器に接続するためのマイクロウェーブチャネル、同軸伝達線をRF信号発生器に接続するためのRFチャネル、電気外科器具にガスを供給するように接続されたガス供給部、及び、電気外科器具に液体を供給するように接続された液体供給部を有する、供給構造と、を備え、装置が、表面凝固のためのプラズマ発生モードであって、それにより、プローブ先端に搬送されるマイクロウェーブEMエネルギ及びRFエネルギが、第1の電極と第2の電極との間にガスプラズマを当てるとともに維持するように構成されている、プラズマ発生モードと、非イオン化放射モードであって、それにより、プローブ先端に搬送されたマイクロウェーブEMエネルギが、組織の凝固のために、非イオン化EM場をプローブ先端から外に向けて放射するように構成されている、非イオン化放射モードと、液体投与モードであって、それにより、液体が、液体供給部、液体チャネル、及びプローブ先端チャネルの遠位端におけるアパーチャを介してターゲットエリアに供給される、液体投与モードとで、作動可能である、電気外科装置を提供する。
【0052】
好ましい実施形態では、上述の3つの作動モードの内の1つのみが、任意の所与の時間において作動していることを確実にするために定位置にある機構が存在する。さらに、3つの作動モードすべてが容易に利用可能であり、それにより、それら作動モード間の切替えを迅速に達成できるようになっていることが好ましい。ニードルが液体を投与する必要がない場合にニードルが後退位置に位置することができるように、調整可能であるニードルを有することにより、器具がマイクロウェーブ放射モードまたはプラズマ発生モードにある際に、ニードルが露出していないことを確実にすることができる。好ましくは、この器具は、ニードルが露出位置にある間、マイクロウェーブ放射モードまたはプラズマ発生モードの使用を物理的に抑制するためのロック機構を含んでいる。このロック機構は、マイクロウェーブ放射またはプラズマ発生に必要である電気的接続が、ニードルが後退位置にある場合のみ形成されるように構成された、切替え機構を含んでいる場合がある。好ましくは、ニードルが露出位置にある間、電力がプローブ先端に搬送されていない。
【0053】
たとえば、一実施形態では、ニードルが露出位置にある場合にマイクロウェーブの場の放射を防止するために、同軸伝達線の内側導電体は、軸方向の隙間を有する場合があり、ニードルまたはニードル調整手段は、ニードルが後退位置にある場合に内側導電体の軸方向の隙間に橋を架けるように構成された導電リングを含む場合がある。ニードルが露出位置に移動する場合、導電リングも移動し、それにより、もはや内側導電体の隙間に橋を架けないようになっており、電気的接続を切断している。また、こうして、電力はプローブ先端に搬送されず、マイクロウェーブの場の放射を防止している。
【0054】
この装置は、RFエネルギが第1の電極と第2の電極との間に適用されて、組織を凝固させる、RF凝固モードでも作動する場合がある。RF凝固モードは、非イオン化放射モードの前、すなわち、組織のインピーダンスが依然として比較的低いレベルにある間に使用される場合がある。
【0055】
非イオン化放射モードにおいて、RFエネルギは、凝固作用を増大させるために、マイクロウェーブエネルギとともに供給される場合がある。たとえば6.5秒を超える間、RF搬送を維持することにより、器具の先端においてインピーダンスが大きく増大することに繋がることがわかった。このため、電気外科器具は、焼けた火かき棒のように機能し、所望の深さというよりはむしろ、先端にすぐ近くの組織のみにエネルギを搬送する。この課題に対応するために、非イオン化放射モードで作動する場合、本明細書に記載の器具は、先端のインピーダンスが、200Ωなどの所定の閾値に達すると、RFからマイクロウェーブエネルギ搬送へと切り替わるように動作し得る。
【0056】
以下のような、非イオン化放射モードに関する複数の選択可能な作動スキームが存在し得る。
【0057】
1)浅い部分の凝固のために、RFエネルギのみが、1秒から2秒の間、搬送され得る。このことは、下方の消化器の手術において有用である場合がある。
【0058】
2)中間の深さの部分の凝固のために、マイクロウェーブエネルギのみが、たとえば10Wで、2秒から6秒の間、搬送され得る。
【0059】
3)より深い部分の凝固のために、上述のシークエンス1とそれに続くシークエンス2のスキームが使用され得る。より深い部分の凝固は、マイクロウェーブの影響が、先端のすぐ近くの組織における吸収が少ない場合に増大することから、この方法で可能である。シークエンス1からシークエンス2への変更は、先端においてインピーダンスの閾値が検出された際にも促され得る。代替的には、この変更は、たとえばRF出力が10W未満に下がった場合など、RFエネルギよりも大である出力がマイクロウェーブエネルギを使用して搬送される場合が検出されることによって促され得る。このシークエンスは、上方の消化器の出血に関して有用である場合がある。
【0060】
別の、たとえば以下のような、より複雑な処置のシークエンスが採用され得る。
タイムスロット1:100%のRFエネルギ
タイムスロット2:20%のマイクロウェーブエネルギと、80%のRFエネルギ
タイムスロット3:40%のマイクロウェーブエネルギと、60%のRFエネルギ
タイムスロット4:80%のマイクロウェーブエネルギと、20%のRFエネルギ
タイムスロット5:100%マイクロウェーブエネルギ
さらに、RFをマイクロウェーブエネルギと合わせるか、マイクロウェーブとRFエネルギとを分散配置することは、腫瘍の切除などの他の手術に有益である場合がある。
【0061】
電気外科装置は、最適な電力の搬送を確実にするように、同軸伝達線と供給構造との間のインピーダンスのマッチを確実にするために、インピーダンストランス構造を含む場合がある。
【0062】
インピーダンストランス構造は、RF/マイクロウェーブ信号発生器から信号を受信するための信号発生器入力供給部と、電気外科器具の同軸伝達線に信号を搬送するように構成されたトランス出力と、信号発生器入力供給部とトランス出力との間に位置し、入力ポートと出力ポートとの間のインピーダンスをマッチさせるように選択されたインピーダンス及び寸法を有する、インピーダンス・マッチ・セクションと、を含み得る。インピーダンス・マッチ・セクションのインピーダンスは、好ましくは、信号発生器入力供給部のインピーダンスと、電気外科器具の同軸伝達線のインピーダンスとの、幾何学的手段を計算することによって選択され、また、好ましくは、信号発生器入力供給部において受信されるマイクロウェーブエネルギの4分の1波長の奇数倍(たとえば、1、3、または5倍)に等しい長さを有している(本明細書では、「波長」は、文脈によって別様に明確に示されていない限り、信号発生器によって提供される波長に言及するために使用される)。
【0063】
好ましくは、インピーダンストランス構造は、一方の端部に液体/ガス流入ポートを有し、他方の端部でインピーダンス・マッチ・セクションに交わる、中空チャネルを含み、中空チャネルが、液体及びガスを、本発明の電気外科器具の液体チャネル及びガスチャネルにインピーダンス・マッチ・セクションを介して搬送するように構成されている。インピーダンス・マッチ・セクションは、好ましくは、インピーダンスがマッチする同軸伝達線の形態である。
【0064】
中空チャネル、インピーダンス・マッチ・セクション、及び信号発生器入力供給部は、すべて、交差部で交わる場合があり、その場合は、交差部とトランス出力との間の距離が、好ましくは、4分の1波長(またはその奇数倍)である。
【0065】
チョーク構造は、マイクロウェーブエネルギが中空チャネルに沿って通らないことを確実にするため、及び、より詳細には、インピーダンストランス構造に入るマイクロウェーブエネルギが、インピーダンスマッチ構造に沿って伝播することのみが可能であることを確実にするために、中空チャネル上に位置する場合がある。チョーク構造は、開回路を強いるように配置された、中空チャネル周り全体の円形の空隙を含み得る。円形の空隙の平面は、好ましくは、空隙のポイントにおいて、中空チャネルの長手軸に対して垂直であるが、器具の直径の増大を最小にするように、ステップ状であるかずれて配置された縁部を有する場合がある。空隙は、4分の1波長の奇数倍に等しい長さを有する場合がある。チョーク構造は、交差部から半波長の距離に位置していることが好ましい。より好ましくは、中空チャネルは、交差部に対して反対方向の、第1の空隙から半波長の位置の第2の円形の空隙を含んでいる。
【0066】
チョーク構造により、器具が、近位端において開回路として構成されることを可能にし、これにより、RFエネルギが搬送されることを可能にする。
【0067】
電気外科器具は、ハンドピースを介して、供給構造、ガス供給部及び液体供給部に接続されている場合がある。ハンドピースは、電気外科装置のユーザによるマニュアル操作が可能である。上述のインピーダンストランスは、必要である場合、ハンドピースの一部である場合がある。しかし、供給ケーブルが発生源と同じ特性インピーダンス(たとえば、50Ω)を有する場合、トランスは必要ない。
【0068】
本装置は、RF EMエネルギのパルス(または複数のパルス)をプローブ先端に搬送させて、プラズマを当てるために、ガス流路にわたり、第1の電極と第2の電極との間に高い電界を生成するように構成されたストライク信号発生回路を備えている場合があり、ストライク信号発生回路は、RF EM放射のパルスの発生を引き起こすように、マイクロウェーブチャネルのマイクロウェーブEM放射のパルスの検出可能な特性を使用するように構成された制御回路を含んでいる。RF EM放射は、こうして、プラズマを当てるように使用され、一方、マイクロウェーブEM放射は、プラズマを維持するのに使用される。RFストライクパルスの搬送と、上述のマイクロウェーブEMのパルスの放射とを同時に行うことにより、本装置は、より高い確実性で、プラズマを当てることが可能である。
【0069】
本器具が、熱的プラズマを生じるように構成され得るが、殺菌のために、非熱的プラズマを生じるように構成することもできる。上述の同軸のプラズマ発生構成では、同軸構成内にある第1の電極の内径が、3mmから5mmの間の直径を有し、石英チューブが、0.25mmから1mmの間の壁の厚さを有して内部にタイトにフィットし、また、第2の電極の外径が0.75mmから4mmの間である(内側導電体と、石英チューブの内壁との間の領域にガスが流れる空間が許容される)場合、消毒または殺菌に適切である非熱的プラズマが、40%未満、すなわち28%の負荷サイクルのパルス状のモードで発生器を操作することによって生成され得る。一実施形態では、単一のマイクロウェーブパルス内のrms出力は、50Wであり、パルスがONになっている時間は、140msの全体の期間の中で、40msである。すなわち、プラズマに搬送される平均出力は、2.45GHzで14.28Wである。RFストライクパルスがこの構成で使用される場合、RFストライクパルスの持続時間は、約1msであり、シヌソイド振動の振動数は、100kHzであった。振幅は、ピークが約1kV(707Vrms)であった。RF出力は、マイクロウェーブ出力の10%未満であった。RFパルスは、マイクロウェーブのバーストまたはパルスとシンクロし、また、マイクロウェーブのバーストまたはパルスの立上りで引き起こされた。
【0070】
熱的プラズマを生じるために、負荷サイクルは、増大され得る、すなわち、50%とされ得るか、持続波(CW)及び/またはrms出力レベルが増大され得る、すなわち、この特定のアプリケータの幾何学形状に関し、75Wまたは100Wになり得る(幾何学形状が減少するか増大する場合、マイクロウェーブ出力及びRFストライクパルスの振幅は、それに応じて調整される)。RFのマイクロウェーブ出力に対する比は、非熱的及び熱的プラズマに関し、好ましくは、一定、すなわち、10%未満のままであり、場合によっては、1%以下である。
【0071】
器具の遠位端における殺菌を実施する能力を有することは、スコープの器具チャネルの消毒の目的のために、特に有利である場合がある。換言すると、非熱的プラズマは、器具がスコープ(たとえば、内視鏡など)から引き抜かれるのに応じて放出されて、器具の内側表面を処理する。非熱的プラズマがこの目的のために好ましいが、非イオン化マイクロウェーブまたはRF放射のみを搬送すること、すなわち、ガスがない状態で、殺菌を達成することが可能である場合もある。
【0072】
非熱的プラズマの殺菌作用は、処置の前か後に体管を殺菌するのにも使用され得る。デバイスが器具、たとえば内視鏡または胃鏡を洗浄または殺菌するために使用される場合、デバイスは、非熱的プラズマと非イオン化マイクロウェーブ放射との組合せを提供するように構成されている場合がある。本デバイスは、デバイスがNOTES手術で使用されるか、デバイスが表面凝固、体組織の殺菌、及び、大きい管または血友病者の、より深い部分の凝固を実施することが可能であることが有利である場合、非熱的プラズマ、熱的プラズマ、及び、非イオン化マイクロウェーブ放射を生成するようにも構成され得る。
【0073】
本発明の実施形態を、ここで、添付図面を参照して記載する。