特許第6960188号(P6960188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6960188巻き径が一定でありピッチに疎密を有し容器内を自由に移動可能なコイルばねを用いる泡立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6960188
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】巻き径が一定でありピッチに疎密を有し容器内を自由に移動可能なコイルばねを用いる泡立て方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/04 20060101AFI20211025BHJP
   A47J 43/10 20060101ALI20211025BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20211025BHJP
   B01F 11/00 20060101ALI20211025BHJP
   A47K 5/14 20060101ALI20211025BHJP
   B65D 25/04 20060101ALN20211025BHJP
   B65D 25/02 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   A47J43/04
   A47J43/10
   B01F3/04 E
   B01F11/00 B
   A47K5/14
   !B65D25/04 Z
   !B65D25/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-209891(P2020-209891)
(22)【出願日】2020年12月18日
(62)【分割の表示】特願2020-83280(P2020-83280)の分割
【原出願日】2020年5月11日
【審査請求日】2020年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518041940
【氏名又は名称】ミツエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】増本 幹成
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−209107(JP,A)
【文献】 特開2019−135029(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0299175(US,A1)
【文献】 米国特許第03136532(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00−44/02
A47K 5/14
A47L 13/16
B01F 1/00− 5/26
B01F 9/00−13/10
B65D 25/04
B65D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散させる物と液体とが混合された状態の液状体及びそれを泡立てた泡を収納し、直径が50ミリメートルから70ミリメートル、高さが150ミリメートルから170ミリメートルの円柱形状を有する上下に延びる収納部と、
前記液状体を出し入れすべく、前記収納部の上部に設けられた上部開閉部と、
前記収納部の内部に収納され、巻き径が一定であって上端及び下端のピッチがそれぞれ密であり中央部が疎であり、材質をステンレスとし、前記収納部の内部において自由に移動可能なコイルばねと、
を有する泡立て器を用いて台所洗剤を泡立てて用いる泡立て方法であって、
前記泡立て器の前記収納部に前記台所洗剤と前記コイルばねとを収納し、前記上部開閉部を閉じる台所洗剤収納ステップと、
前記泡立て器を使用者が手でり、前記コイルばねを振動及び揺動を含む運動をさせることにより前記台所洗剤を泡立てる泡立てステップと、
前記泡立てステップでできた泡を前記泡立て器とは別の密閉容器に保存する泡保存ステップと、
前記泡保存ステップにて保存された泡を前記密閉容器から取り出す泡取出しステップと、
前記泡取出しステップにて取り出した泡を用いて汚れ落としをする汚れ落としステップと
を有する泡立て方法。
【請求項2】
前記汚れ落としステップにおいて、使用の都度、洗って乾かしたスポンジを用いることを特徴とする請求項1に記載する泡立て方法。
【請求項3】
分散させる物と液体とが混合された状態の液状体及びそれを泡立てた泡を収納し、直径が50ミリメートルから70ミリメートル、高さが150ミリメートルから170ミリメートルの円柱形状を有する上下に延びる収納部と、
前記液状体を出し入れすべく、前記収納部の上部に設けられた上部開閉部と、
前記収納部の内部に収納され、巻き径が一定であって上端及び下端のピッチがそれぞれ密であり中央部が疎であり、線径を1.4ミリメートルから1.5ミリメートルとし、材質をステンレスとし、前記収納部の内部において自由に移動可能なコイルばねと、
を有する泡立て器を用いて台所洗剤を泡立てて用いる泡立て方法であって、
前記泡立て器の前記収納部に前記台所洗剤と前記コイルばねとを収納し、前記上部開閉部を閉じる台所洗剤収納ステップと、
前記泡立て器を使用者が手でり、前記コイルばねを振動及び揺動を含む運動をさせることにより前記台所洗剤を泡立てる泡立てステップと、
前記泡立てステップでできた泡を前記泡立て器とは別の密閉容器に保存する泡保存ステップと、
前記泡保存ステップにて保存された泡を前記密閉容器から取り出す泡取出しステップと、
前記泡取出しステップにて取り出した泡を用いて汚れ落としをする汚れ落としステップと
を有する泡立て方法。
【請求項4】
前記汚れ落としステップにおいて、使用の都度、洗って乾かしたスポンジを用いることを特徴とする請求項3に記載する泡立て方法。
【請求項5】
分散させる物と液体とが混合された状態の液状体及びそれを泡立てた泡を収納し、直径が50ミリメートルから70ミリメートル、高さが150ミリメートルから170ミリメートルの円柱形状を有する上下に延びる収納部と、
前記液状体を出し入れすべく、前記収納部の上部に設けられた上部開閉部と、
前記収納部の内部に収納され、巻き径が一定であって前記収納部の直径の57〜80%であり、長さが前記収納部の内側の高さの50〜70%であり、上端及び下端のピッチがそれぞれ密であり中央部が疎であり、線径を1.4ミリメートルから1.5ミリメートルとし、材質をステンレスとし、前記収納部の内部において自由に移動可能なコイルばねと、
を有する泡立て器を用いて台所洗剤を泡立てて用いる泡立て方法であって、
前記泡立て器の前記収納部に前記台所洗剤と前記コイルばねとを収納し、前記上部開閉部を閉じる台所洗剤収納ステップと、
前記泡立て器を使用者が手でり、前記コイルばねを振動及び揺動を含む運動をさせることにより前記台所洗剤を泡立てる泡立てステップと、
前記泡立てステップでできた泡を前記泡立て器とは別の密閉容器に保存する泡保存ステップと、
前記泡保存ステップにて保存された泡を前記密閉容器から取り出す泡取出しステップと、
前記泡取出しステップにて取り出した泡を用いて汚れ落としをする汚れ落としステップと
を有する泡立て方法。
【請求項6】
前記汚れ落としステップにおいて、使用の都度、洗って乾かしたスポンジを用いることを特徴とする請求項5に記載する泡立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立て方法に関する。とりわけ、液体(油相)と液体(水相)、気体と液体、液体と固体を撹拌し泡立てる泡立て方法に関し、巻き径が一定でありピッチに疎密を有し容器内を自由に移動可能なコイルばねを用いる泡立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食材撹拌装置が提案されている。食酢と米飯とをドラムに入れて撹拌し、酢飯とする装置を提供するものである。
特許文献2には、薄力粉を含む生地の混練を、オゾンの存在下で行うことが提案されている。
特許文献3には、容器詰め液状調味料であって、食肉をジューシーでソフトな食感・繊維感・食味が得られるものにするものが提案されている。
特許文献4には、容器入り大根おろし含有液状調味料であって、フライ食品と和えるのに適したものが提案されている。
特許文献5には、容器入り分離液状調味料が開示されている。軽く振って油相を水相に分散させ、生野菜等の食材にかけて喫食した際に、水相に粉砕物として配合された野菜類そのものの風味がはっきりと認識でき、しかも、粉砕物が容器底部に沈殿しがたく、外観にすぐれたものが提案されている。
特許文献6には、液状調味料容器が開示されている。内容物が粘度の高い液状調味料であっても、ボトルがしなやかに変形することで排出しやすく、かつ内容物が少なくなっても容器本来の美観を損ないにくいものが提案されている。
特許文献7には、包装容器入り食用油脂類分離型ごま粒子含有液状調味料が開示されている。ゴマ粒子を含有し、食用油脂類、分散剤を含有するものであって、手に持って軽く振るだけで、ゴマ粒子が容易に分散するものである。
特許文献8には、ヒートポンプシステムにおける撹拌装置(液化促進装置)が開示されている。二つの鏡板に閉塞された円筒状の筐体の内部に螺旋バネ(スプリング)を上下動可能に設けたものである。
特許文献9には、サラダドレッシングなどを混合する撹拌組立体について記載されている。容器内部に螺旋形上のテザーと撹拌装置を有し、テザーと撹拌装置とは結合していること、テザーは容器の撹拌又は振とうの間に伸張及び収縮すること、テザーの保持の手段として保持リングを有していること、容器の環状溝に保持リングが嵌合することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−212889号公報
【特許文献2】特許第4724175号公報
【特許文献3】特開2014−124123号公報
【特許文献4】特開2013−111064号公報
【特許文献5】特開2011−109973号公報
【特許文献6】特開2017−019562号公報
【特許文献7】特開2002−369665号公報
【特許文献8】特開2015−212601号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2015/0290605号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食材を撹拌することが、食感や食味の提供のためになされている(特許文献1)。撹拌がどれだけ細かく、あるいは均一化されてなされるかが、食感や食味に影響すると考えられる。そして、その撹拌の度合いを高めるために、薄力粉を含む生地の混練をオゾンの存在下で行うことが提案されている(特許文献2)。
液状調味料には、食肉をジューシーでソフトなものにするためのもの(特許文献3)、フライ食品と和えるのに適したもの(特許文献4)、水相と油相からなるものであって容器を振ることで油相を水相に分散させるもの(特許文献5)、ゴマ粒子を含有するものであって、軽く振ることでゴマ粒子が分散するもの(特許文献7)が提案されている。
一方、液状調味料容器としては、しなやかに変形することで排出しやすいものが提案されている(特許文献6)。
また、ヒートポンプシステムにおける撹拌装置であって、円筒状の容器内部に、螺旋バネが設けられた構造を有する撹拌装置が提案されている(特許文献8)。
さらに、サラダドレッシングを混合する撹拌組立体が提案されている(特許文献9)。
【0005】
液状調味料容器は、排出しやすい材質、形状、構造などが、提案されている(特許文献6)。しかし、分離している成分を分散させ、かつ泡立てるための構造を有する容器については、見当たらない。
その理由としては、液状調味料には、分散剤を用いている(特許文献8など)からであると考えられる。
【0006】
一般家庭において、ドレッシングなどの調味料を自家製で作る場合には、分散剤を使わない場合があると考えられる。その場合でも、使用者が手で振ることにより、液状体の撹拌機能をもつ容器を提供できる可能性があるのではないか、と本発明の発明者は考えた。
また、そのような撹拌効果を有する構造をもつ液状調味料の容器を、量産タイプの調味料にもちいると、液状調味料の設計の際に分散剤を使わないという選択が可能になり、液状調味料の設計の自由度が増す。
さらにまた、そのような液状調味料の容器は、さまざまな液状体の撹拌をするための調理用の泡立て器として機能し得る。たとえば、薄力粉を水に溶くときに、細かく均一化して泡立てることにより、お好み焼きなどのこな物の食感や、食味を独自のものにすることが可能になる。
食材を泡立てるだけでなく、飲料、たとえばミルク、青汁、スムージー、ジュース、などを泡立てることもできる。
洗顔料(洗顔液、クレンジングオイル)、ボディーソープ、整髪料(整髪用のリキッドなど)を泡立てることもできる。
洗剤(台所用洗剤、洗濯用洗剤)を泡立てることもできる。
また、建築材料などで、水に溶いて用いるものを撹拌して泡立てることにこの泡立て器を用いることが役立つ。さらに、産業機械油類の撹拌にも役立つ。
【0007】
本発明の発明者は、この種の撹拌装置の内部構造について、改良を加えることにより、さらなる効果を挙げることができる可能性があると日夜、考えをめぐらし、実験をくり返した。そして、ついに有用な構造、すなわち巻き径が一定でありピッチに疎密を有し容器内を自由に移動可能な弦巻ばねを有する泡立て器、それを用いた泡立て方法を見出した。
本発明の目的は、使用者が手で振ることにより、液状体を撹拌し、泡立てる機能をもつ泡立て器を用いる泡立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、液状体とは、液体(たとえば、水)とそれに分散させる物(たとえば、油、粉、粒など)とが、混合された状態のものをいう。ここで、混合は、均一に混合してる状態である必要はなく、分離して存在していてもよいし、沈殿していてもよいものとする。
本発明に係る泡立て方法は、分散させる物と液体とが混合された状態の液状体及びそれを泡立てた泡を収納する上下に延びる収納部と、前記液状体を出し入れすべく、前記収納部の上部に設けられた上部開閉部と、前記収納部の内部に収納され、巻き径が一定であって前記収納部の直径の57〜80%であり、長さが前記収納部の内側の高さの50〜70%であり、上端及び下端のピッチがそれぞれ密であり中央部が疎であり、線径を1.4ミリメートルから1.5ミリメートルとし、材質をステンレスとし、前記収納部の内部において自由に移動可能なコイルばねと、を有する泡立て器を用いて台所洗剤を泡立てて用いる泡立て方法であって、前記泡立て器の前記収納部に前記台所洗剤と前記コイルばねとを収納し、前記上部開閉部を閉じる台所洗剤収納ステップと、前記泡立て器を振ることにより前記台所洗剤を泡立てる泡立てステップと、前記泡立てステップでできた泡を前記泡立て器とは別の密閉容器に保存する泡保存ステップと、前記泡保存ステップにて保存された泡を前記密閉容器から取り出す泡取出しステップと、前記泡取出しステップにて取り出した泡を用いて汚れ落としをする汚れ落としステップとを有する。
これにより、使用者は、液状体をこの泡立て器に入れて手で振ることにより、コイルばねを振動及び揺動を含む運動をさせることで、分散させる物を液体に分散させ、さらにそれを泡立てることができ、その直後に開閉部から取り出して用いることができる。コイルばねのピッチに疎密を設けたことにより、コイルばねの部分をおもりとして、振動及び揺動を持続させやすい。そして、さらにそのコイルばねのピッチが密の部分が液状体を掻き回し、剪断効果をもたらす。
【0009】
前記汚れ落としステップにおいて、使用の都度、洗って乾かしたスポンジを用いる。
これにより、カビの発生と無縁の汚れ落としが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る泡立て方法は、使用者が液状体をこの泡立て器に入れて手で振ることにより、コイルばねを振動及び揺動を含む運動をさせることで、分散させる物を液体に分散させ、泡立てて、その直後に開閉部から取り出して用いることができるのみならず、別の密閉容器に保存して使用したい時に使用して汚れ落としできるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】泡立て器の構成を示す図である。
図2】泡立て器を構成する各部品を示す図である。
図3】コイルバネの疎密について説明する図である。
図4】洗顔剤を泡立てた5分後、15分後、30分後の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図中の符号が同一のものは、同様の構成、機能を有する。
【0013】
<実施形態>
<構成>
図1は、本発明に係る泡立て器の構成を示す図である。収納部10は、液状体を収納することができる容器である。望ましくは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの透明又は半透明の素材からなり、内容物の分離、沈殿、分散などの状況が視覚にて確認できるようになっている。また、望ましくは、収納部10は、自立可能な形状であり、たとえば冷蔵庫内に立てて置くことができるようになっている。
図1に描いた収納部の大きさは、例えば、高さが150ミリメートル、直径が60ミリメートルのものとすることができる。
直径50ミリメートルから70ミリメートル、高さ150ミリメートルから170ミリメートル、容量が280ミリリットルから400ミリリットル程度が、人が持って振るのに適切である。
図1に描いた収納部10の形状は、円柱に近いものを描いたが、他の形状であってもよい。泡を収納する容量を増やすために、中央部をやや広くする。泡立て器を振る際に手から滑り落ちるのを防止するために、中央部を握りやすい形状、たとえば指をあててグリップしやすい形状にする。などが考えられる。
【0014】
収納部10の上部には、上部開閉部11が設けられ、収納部10に液状体を出し入れ可能となっている。ここでは、ネジ式のキャップにて上部開閉部11を構成している。そして、上部開閉部11には、泡を取り出す管がついており、その管の先端にさらにキャップを設けて、そのキャップの開け閉めで泡を出し入れできる。上部開閉部11を収納部10に締めた状態、そして、手で振っても、内容物がこぼれないような密閉性を保持することができるものであることが望ましい。締めた状態における密閉性を保持できれば、ネジ式にかぎらず、嵌め込み式などの他の開閉部を用いることもできる。
図1では、下部開閉部12が設けられる例を描いている。下部開閉部12を設けない構成も可能であり、その場合は、収納部10は、底を有する形状となる。下部開閉部12を設けることで、収納部10の使用後、使用前の洗浄が容易になる。また、後述する衝撃吸収材を取り付けたり、交換したりという作業も楽にできるという利点がある。
上部開閉部11、下部開閉部12ともに、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂により成型することができる。なお、上部開閉部に設ける泡の取り出し口は、丸い孔以外に、星の形など、好みの形にすることができる。
【0015】
コイルばね20は、収納部10の内部に置かれるものであるので、図1では破線で描いている。コイルばね20の設計(ピッチの疎密、コイルばねを構成する線径)については図3を参照しつつ後述する。コイルばね20は、収納部10の内部を自由に移動可能となるように、どこにも固定されない状態で置かれる。すなわち、自由に振動及び揺動を含む運動が可能となっている。コイルばね20の材質は、たとえば、鉄(鋼)、ステンレス、チタン、チタン合金、アルミニウム、プラスチックなどを用いることができる。コイルばね20を構成する線は、その表面がさまざまな面を有して凹凸を持つようにしてもよい。コイルばね20を構成する線の両端は、収納部10の内側を傷つけないように、丸める加工をすることが望ましい。例えば酸洗いすることが考えられる。
【0016】
コイルばね20は、巻き径が一定のコイルばねである。その巻き径は、図1に示すように、収納部10の内側の水平方向の大きさよりも小さい大きさであって、泡立て器を使用者が手に持って振るときに、コイルばね20が、振動及び揺動を含む運動が可能な空間的な余地があるようになっている。ここで、振動は、コイルばね20の伸び縮みの方向に動くことをいい、揺動は、伸び縮みの方向とは垂直の方向に揺れる動きをいうものとする。
コイルばね20の長さは、収納部20の内側の高さの50パーセントから70パーセントが望ましい。短すぎると、液状体全体の撹拌効率が小さくなる。長すぎると、振動及び揺動を含む運動の自由度が狭くなる。
コイルばね20が、揺動及び振動し、液状体に対する剪断効果を奏する。また、コイルばね20の表面がさまざまな面を有して、凹凸をもつようにする場合は、コイルばね20の表面形状によっても液状体に対する剪断効果を奏する。この結果、液状体が微細化、均一化され、分散を促進する。
【0017】
衝撃吸収材31,32,33は、収納部10の内部、上部開閉部11の内部、下部開閉部12の内部をコイルばね20の激しい動きによって傷つけるのを防止し、ぶつかる際の騒音を小さくする目的で設けられる。上部開閉部11の側に設けられる衝撃吸収材31は、ドーナツ形状をしている。管を通じて泡を出すために中央に穴が必要だからである。
衝撃吸収材31,32,33は、パッキンの役目を兼用することができる。すなわち上部開閉部11、下部開閉部12をそれぞれ締めた際に、液体を含む内容物が外に漏れ出ることがないように働く。
上部開閉部11の側には、衝撃吸収材31を一枚設けて、下部開閉部12の側には、衝撃吸収材を二枚設けている。コイルばね20を振る際の衝撃は、重力を加味しただけの力が下部開閉部12にはかかるからである。
【0018】
図2は、本発明の泡立て器を構成する部品を示す図である。収納部10の上部、及び下部には、ネジきりがなされて、上部開閉部11、下部開閉部12が、それぞれネジの切られたキャップとして構成されている。そして、上部開閉部11の内側には、衝撃吸収材31が設けられ、下部開閉部12の内側には衝撃吸収材32,33が設けられる。
コイルばね20は、図2に見られるように、巻き径が一定であり、そのピッチに疎密を有するコイルばねである。コイルばねの上部及び下部が密のピッチであり、中央部が疎のピッチである。このことについては、図3を参照しつつ、詳述する。
【0019】
図3は、コイルばねのピッチの疎密、コイルばねを構成する線径について、詳しく述べる図である。ここでは、材質をステンレスSUS304を用いている。
図3(a)に示すコイルばねは、バネを構成する線径が1.8ミリメートルであり、外形(巻き径)が40ミリメートル。ばねの自然長(横に置いた時の長さ)が92.6ミリメートル。両端の空き無しで密巻きにした部分の長さは10.ミリメートル。中央部の部分(ピッチが疎の部分)は、71.0ミリメートルの長さであり、27巻き×1.8ミリメートル+アキ28カ所×0.8ミリメートル=48.6ミリメートル+22.4ミリメートルである。
図3(b)に示すコイルばねは、バネを構成する線径が1.6ミリメートルであり、外形(巻き径)が40ミリメートル。ばねの自然長(横に置いた時の長さ)が88.0ミリメートル。両端の空き無しで密巻きにした部分の長さは11.2ミリメートル。中央部の部分(ピッチが疎の部分)は、65.6ミリメートルの長さであり、27巻き×1.6ミリメートル+アキ28カ所×0.8ミリメートル=43.2ミリメートル+22.4ミリメートルである。
図3(c)に示すコイルばねは、バネを構成する線径が1.5ミリメートルであり、外形(巻き径)が40ミリメートル。ばねの自然長(横に置いた時の長さ)が86.2ミリメートル。両端の空き無しで密巻きにした部分の長さは10.5ミリメートル。中央部の部分(ピッチが疎の部分)は、65.2ミリメートルの長さであり、28巻き×1.5ミリメートル+アキ29カ所×0.8ミリメートル=42.0ミリメートル+23.2ミリメートルである。
図3(d)に示すコイルばねは、バネを構成する線径が1.4ミリメートルであり、外形(巻き径)が40ミリメートル。ばねの自然長(横に置いた時の長さ)が84.8ミリメートル。両端の空き無しで密巻きにした部分の長さは11.2ミリメートル。中央部の部分(ピッチが疎の部分)は、62.4ミリメートルの長さであり、28巻き×1.4ミリメートル+アキ29カ所×0.8ミリメートル=39.2ミリメートル+23.2ミリメートルである。
【0020】
バネの線径は、1.0ミリメートルから1.8ミリメートルを用いることができる。ハンドソープ、洗顔料、台所洗剤などの洗浄剤を泡立てるには、バネの線径が1.4ミリメートルから1.5ミリメートルのものが適している。
大根おろし、玉ねぎのみじん切り、ドレッシング、すりごま、などの食品に用いるには、ばねの線径が1.6ミリメートルから1.8ミリメートルのものが適している。
ばねの自然長は、80ミリメートルから95ミリメートルのものが適しており、収納部10の長さに対する比率でいうと、50%から70%に該当する。
ばねのピッチは、両端部が密巻き(間を開けない巻き方)で6巻きから8巻き、中央部は、ばね線間のアキが0.8ミリメートルから1.0ミリメートルが好ましい。
両端部が密巻きであって、中央部が疎であることにより、コイルばねの振動及び揺動が長く持続しやすい。収納部を上下に振る際に、バネは収納部内で上下運動(振動)する。この時、バネ両端の密巻きは上下運動の重りになり上部開閉部、下部開閉部のそれぞれの内側にぶつかる際に、ばね中央部のピッチの大きいばね部分が伸縮する。それによりコイルばねの運動に弾みがつき、使用者が泡立て器を振る動作をしやすくなる。
【0021】
<作用・機序>
本発明に係る泡立て器の作用・機序は、二つの観点から説明できる。
第一に、コイルばねが振動・揺動することで、液状体をかき回すことである。これにより、油のかたまり、粒のかたまり、沈殿物のかたまりなどをせん断して小さくし、液状体に分散させる。
第二に、音の倍音共鳴(スケーリング共鳴)による作用・機序が考えられる。
本発明に係る泡立て器に、液状体を収納し、開閉部を締めて、使用者が手に持って振ると、コイルばねに衝撃が加わる。そして、その衝撃により、コイルばねが振動及び揺動する。その振動及び揺動が伝わっていくことで、音(可聴域のものに限らず、それよりも低い音、あるいはそれよりも高い音の可能性を含む)が生じる。使用者が複数回にわたって泡立て器を振ると、この音も持続的に生じ続ける。
一方、液状体に混在している油のかたまり、粒のかたまり、沈殿物のかたまりなどは、分子のクラスタとして存在していると考えられる。そして、それらがぶつかり合う際にも、音が生じる。
コイルばねの振動及び揺動により生じる音と、液状体に混在している分子のクラスタ同士がぶつかる際に生じる音とは、倍音(高調波)の関係になり得る。バネの振動、揺動により発生する音の倍音(高調波)が、液状体に混在している分子のクラスタのぶつかり合いに倍音共鳴(スケーリング共鳴)を起こすことがなされる。それにより液状体の混合撹拌、ひいては油、粒、沈殿物などの分散が促進される。
ここで、スケーリング共鳴は、数十オクターブ上の高調波(倍音)において、共鳴をする現象である。「タンパク質の音楽」(深川洋一著 ちくまプリマーブックス)に用いられている概念である。
共振と共鳴とは、似た概念であるが、本明細書においては、切り分けて考えることにする。たとえば、同じ金属枠(固体)に固定された二つの弦が、片方を振動させたときに、他方も振動する。この場合は、振動が木の金属枠という固体を通じて伝わるので、共振である。他方で、水や空気など(流体)をつたって音がつたわってその結果振動するのは、共鳴である。
本発明に係る泡立て器の場合、コイルばねから、油、粒、沈殿物などの分子に振動がつたわるのは、流体(液状体)を介してなされる。したがって、共鳴というべきである。そこで、音の倍音共鳴又はスケーリング共鳴が機能していると考えられる。
本発明に係る泡立て器において、液状体のマクロの挙動に着目すると、液状体は、使用者が振ることによって、動いて、コイルばねに衝撃を与えて、コイルばねを振動・揺動させる働きをする。一方、液状体のミクロの挙動に着目すると、液状体に含まれる油、粒、沈殿物などのクラスタ(分子がいくつかくっついたかたまり)が、倍音共鳴又はスケーリング共鳴により、そのクラスタの大きさを小さくするように力を受ける。これによりせん断効果を受けて、油、粒、沈殿物などがそのクラスタを小さくして、均一混合をする。
【0022】
≪建築材料、洗剤、整髪料、洗顔液への応用≫
液状体は、食材にかぎらない。たとえば、建築材料で水に分散させて(溶いて)用いるものにも用いることができる。また、洗剤(液体洗剤、粉洗剤を水に溶いたもの)、整髪料(整髪用のリキッドなど)、洗顔液(クレンジングオイルなど)にも応用できる。
【0023】
さらに、産業機械油類にも適用できる。この泡立て器を使用して均一化した産業機械油類を機械に使用することで、機械の効率的な運用を図ることができる。ここで、産業は、化学工業、建設業、食品加工業など、さまざまな産業を含む。そして、産業機械は、産業車両など自走式の機械と、固定式の機械の双方を含む。具体的には、油圧ポンプ、ボイラ、原動機などを含む。機械油は、油圧ポンプにおける作動油、他の機械における潤滑油を含む。
特に、建設業の現場において用いる油圧ポンプ、油圧装置においては、現場において機械油を補充する必要が生じる。その場合に、補充に必要な油を均一化させて充填するのに、本発明に係る泡立て器が役立つ。
【0024】
≪調理用泡立て器、液状体の容器、調味料容器への適用≫
本発明の泡立て器は、調理用泡立て器、液状体の容器、調味料容器への適用が可能である。
【0025】
図4は、市販されている洗顔剤を泡立てた5分後、15分後、30分後の泡の様子を示す図である。水道水を10ミリリットル、この泡立て器に入れ、洗顔剤をチューブから1センチメートルほどのながさ取り出してコイルばねにつけて、ばねを収納部のなかに落とし、上部開閉部を閉じる。その後、使用者が泡立て器を手にもって、上下に50回振る。その後、できた泡を取り出して、5分経った状態を示すのが、図4(a)。15分経った状態を示すのが図4(b)。30分経った状態を示すのが図4(c)である。30分経過しても、粘性の高い泡の状態を保っていることがわかる。
【0026】
≪台所洗剤を泡立てて用いる≫
この泡立て器でつくった泡を、他の密閉容器に保存しておいて、あとで用いることも可能である。たとえば、台所洗剤をこの泡立て器で泡立てたものを密閉容器に保存しておいて使うようにすると、鍋や食器の油汚れを落としやすい。
従来だと、スポンジで泡立てて台所洗剤を用いることがあったが、洗剤を含むスポンジをそのままにしておくと、カビが発生する可能性があった。スポンジは、使用の都度、洗って乾かさないとカビの発生を防止できない。それに比べて本発明の泡立て器により作った泡は、カビとは無縁の泡であり、台所の油落としに大いに役立つものとなる。
【0027】
≪洗顔剤を泡立てる≫
チューブに入って販売されている市販の洗顔剤は、通常、手のひらにとってから伸ばして顔に塗り、そのあと水で流して用いる。その場合、一回の使用量がチューブから出した長さで2センチメートルほどである。
それに対し、本発明の泡立て器を用いる場合には、洗顔剤をチューブから1センチメートルほど出して、水10ミリリットルをもちいて、泡立てた泡を用いれば、十分に洗顔が可能である。すなわち、洗顔剤を半分の量だけ用いて洗顔できるので、節約にもなる。また、泡立て器で細かに剪断されているので、皮膚の奥にある汚れを落とす効果も期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
油相を水相に分散させて用いるドレッシングタイプの調味料の泡立て器又は容器として利用可能である。また、薄力粉などの粉を水に分散させる(溶かす)際に用いる泡立て器又は容器として利用可能である。牛乳を泡立てる泡立て器として利用可能である。さらにまた、食材に限らず、建設用資材、洗剤、整髪料、洗顔液、洗顔料、ボディソープなど、粉又は油を水に分散させて用いる際の泡立て器又は容器として利用可能である。さらに、産業機械油類の撹拌にも応用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 収納部
11 上部開閉部
12 下部開閉部
20 コイルばね
31,32,33 衝撃吸収材
【要約】
【課題】台所洗剤を泡立てて用いる。
【解決手段】液状体及びそれを泡立てた泡を収納する上下に延びる収納部と、液状体を出し入れすべく、収納部の上部に設けられた開閉部と、収納部の内部に収納され、巻き径が一定でありピッチに疎密を有し、収納部の内部において自由に移動可能なコイルばねと、を有する。収納部は、泡立てた泡を収納する。コイルばねのピッチは、上端及び下端がそれぞれ密であり、中央部が疎である。収納部内の上部および下部に、衝撃吸収材を設ける。下部開閉部をさらに設ける。コイルバネを構成する線径は、1,4ミリメートルから1,5ミリメートルのものは、洗浄剤に適する。できた泡を泡立て器とは別の密閉容器に保存する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4