(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記運転状況検出装置は、前記デッキクレーンに予め設定した動作を実行させ、予め設定した動作を実行した場合の前記デッキクレーンの前記運転情報を取得し、取得した前記運転情報を解析して前記デッキクレーンの状態を特定する自己診断ユニットをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のデッキクレーンシステム。
前記処理装置は、前記デッキクレーンに故障が生じた場合、前記運転情報に基づいて、前記デッキクレーンの状態を判定し、故障の原因を特定する遠隔監視部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のデッキクレーンシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デッキクレーンは、船舶とともに移動するため、メンテナンスを行える機会が限定される。デッキクレーンは、メンテナンス時に各部の消耗等を確認し部品を交換するが、メンテナンス時の点検だけではデッキクレーンの状態の把握に限界がある。
【0006】
ここで、メンテナンスのたびに予防で部品を交換するとメンテナンスに時間がかかり、交換部品が多く必要になるという問題がある。また、部品を交換せずに意図しない場所で故障が生じてしまうと、デッキクレーンが使用できなくなったり、メンテナンス設備がない場所で修理をすることになったりし、利用効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、デッキクレーンの状態を的確に把握することができるデッキクレーンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、油圧ポンプを含む油圧回路、前記油圧ポンプを駆動する主電動機、各部を操作する操作部及び運転を制御する制御装置を備えるデッキクレーンと、前記制御装置から運転情報を取得する運転状況検出装置と、前記運転状況検出装置で検出したデータを記憶する記憶装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記運転情報は、前記主電動機の電流値、前記主電動機の稼動状況、前記警報ブザーの動作、前記操作部への入力操作、前記油圧回路を流れる作動油の温度、潤滑油の温度、デッキクレーンの転動モーメント、荷役の荷重の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0010】
また、運転状況検出装置は、取得した前記運転情報である第1データを作成する第1データ作成部と、前記第1データを加工してデータ量を低減させた第2データ作成部と、を有し、前記記憶装置は、前記第1データを記憶する第1データ記憶部と、前記第2データを記憶する第2データ記憶部と、を有することが好ましい。
【0011】
また、他のユニットと通信でデータを送受信する通信部と、データを記録媒体に記録する記録媒体処理部と、を有し、運転状況検出装置は、前記第1データを前記記録媒体処理部に記録し、前記第2データを前記通信部から出力することが好ましい。
【0012】
また、前記運転状況検出装置は、前記デッキクレーンに予め設定した動作を実行させ、予め設定した動作を実行した場合の前記デッキクレーンの運転情報を取得し、取得した運転情報を解析して前記デッキクレーンの状態を特定する自己診断ユニットをさらに有することが好ましい。
【0013】
また、前記運転状況検出装置で検出した運転情報を取得する処理装置をさらに有することが好ましい。
【0014】
また、前記運転情報に基づいて、前記デッキクレーンの寿命を診断する寿命診断部を有することが好ましい。
【0015】
また、前記処理装置は、前記デッキクレーンに故障が生じた場合、前記運転情報に基づいて、前記デッキクレーンの状態を判定し、故障の原因を特定する遠隔監視部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制御装置から運転情報を取得することで、デッキクレーンの各種データを取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、デッキクレーンとは、貨物船の甲板上に設置され、海上輸送貨物の積み込み及び陸場作業に使用される荷役機械である。
【0019】
図1は、本実施形態に係るデッキクレーンシステムを搭載した船舶及び処理装置の全体図である。デッキクレーンシステム100は、デッキクレーン1と処理装置106とを有する。デッキクレーン1は、船舶102の甲板104に搭載されて、船舶102から荷役対象Cを下ろしたり、船舶102に荷役対象Cを積み込んだりする際に用いられる。実施形態1において、船舶102は、貨物船であり、4機のデッキクレーン1を有する。船舶102が有するデッキクレーン1の数は、4機に限定されるものではない。処理装置106が、船舶102とは異なる場所に配置されている。デッキクレーンシステム100は、少なくとも1つのデッキクレーン1を備えていればよいが、複数のデッキクレーン1を備えていてもよい。また、デッキクレーンシステム100は、複数の船舶102に搭載されているデッキクレーン1と、1つの処理装置106としてもよい。
【0020】
図2は、本実施形態に係るデッキクレーンの構成を示す全体構成図である。
図3は、本実施形態に係るデッキクレーンの制御に関連する構成を示すブロックである。デッキクレーン1は、旋回体2と、巻上装置3と、俯仰装置4と、旋回装置5と、ジブ6と、主電動機20と、油圧回路22と、操作部28と、警報ブザー30と、コントロールパネル31と、を含む。実施形態1において、巻上装置3と、俯仰装置4とは一体で構成されている。旋回体2は、巻上装置3と、俯仰装置4と、旋回装置5と、ジブ6とを備える。旋回体2は、船舶102に設けられた架台14上に据え付けられる。旋回体2は、架台14の支持面14Pと直交する軸Zrを中心として回転できるようになっている。旋回体2は、各部が設置される本体2aと作業時に運転者が操作を行う運転室2bとを有する。
【0021】
ジブ6は、棒状の部材であり、先端6Ttに滑車8を有している。ジブ6の先端6Ttとは反対側の端部は、取付端6Tlである。ジブ6は、取付端6Tlが旋回体2に取り付けられている。そして、ジブ6は、取付端6Tlの取付部を中心に揺動できるようになっている。ジブ6の揺動方向は、
図2の矢印Uで示す方向である。滑車8には、荷役対象を吊るためのワイヤロープ9が通されている。ワイヤロープ9の一端部には、荷役対象を掛ける荷掛フック11が取り付けられる。ワイヤロープ9の他端は、巻上装置3の巻上用ドラム3Dに連結され、これに巻き付けられている。
【0022】
巻上装置3は、動力発生源によって巻上用ドラム3Dを回転させ、ワイヤロープ9を巻き取る。また、巻上装置3は、巻き取ったワイヤロープ9を繰り出す。巻上装置3は、巻上用ドラム3Dを油圧モータで駆動する。巻上装置3の巻上用ドラム3Dにワイヤロープ9を巻き取る運動を巻上げといい、繰り出す運動を巻下げという。本実施形態においては、両方の運動を総称して巻上げという。巻上装置3がワイヤロープ9を巻上げすることにより、荷掛フック11は、鉛直方向と平行な方向に移動する。
【0023】
俯仰装置4は、ジブ6を俯仰させる装置である。俯仰装置4は、俯仰用ワイヤロープ10が巻き付けられた俯仰用ドラム4Dを有している。俯仰装置4は、俯仰用ドラム4Dを油圧モータで駆動する。俯仰用ワイヤロープ10は、ジブ6の先端6Ttと取付端6Tlとの間に連結されている。ジブ6は、俯仰装置4が俯仰用ワイヤロープ10を巻き取ることにより上(鉛直方向とは反対側)を向き、俯仰用ワイヤロープ10を繰り出すことにより下(鉛直方向側)を向く。
【0024】
旋回装置5は、架台14の支持面14Pと直交する軸Zrを中心として、旋回体2を旋回させる装置である。旋回体2が旋回する方向は、
図2の矢印Rで示す方向である。実施形態1において、旋回装置5は、旋回体2に取り付けられている。そして、例えば、架台14には内歯歯車を設けておき、旋回装置5が前記内歯歯車とかみ合う歯車5Gを回転させるようにする。このような構造により、旋回装置5が歯車5Gを回転させると、旋回体2が軸Zrを中心として旋回する。なお、旋回装置5は、架台14に設けられていてもよい。
【0025】
巻上装置3、俯仰装置4及び旋回装置5は、それぞれ動力発生源として油圧モータを備えている。主電動機20及び油圧回路22は、油圧モータに加圧された作動油を供給する。油圧回路22は、油圧ポンプ22aと、循環配管22bと、オイルクーラ22cと、オイルタンク22dとを有する。主電動機20は、油圧回路22の油圧ポンプ22aを駆動させる駆動源である。主電動機20は、船舶102の電源から電力が供給されてもよい。油圧ポンプ22aは、主電動機20で駆動され、作動油を加圧し、送る。循環配管22bは、巻上装置3、俯仰装置4及び旋回装置5の油圧モータ、油圧ポンプ22a、オイルクーラ22c及びオイルタンク22dに接続されており、各部に作動油を循環させる。オイルクーラ22cは、循環する作動油を冷却する。オイルタンク22dは、循環する作動油の量を調整しつつ、加圧された作動油を貯留することで、蓄圧する。
【0026】
操作部28は、運転室2bに配置されている。操作部28は、運転者が操作を入力する各種機器がある。操作部28は、ボタン、レバー、スイッチ、ハンドル、キーの少なくとも1つを含む。
【0027】
警報ブザー30は、デッキクレーン1の運転条件が予め設定されている許容範囲外となった場合に運転者にその状態を通知する通知部である。警報ブザー30は、コントロールパネル31によって動作が制御される。警報ブザー30は、例えばジブ6の角度が許容範囲となった場合に警報音を出力し、運転者に通知する。デッキクレーン1は、警報ブザー30に代えてまたは加えて、光や表示で警報を通知する機器を用いてもよい。
【0028】
コントロールパネル31は、デッキクレーン1の制御機能を実現する機器が配置されている。コントロールパネル31は、制御装置42と、運転状況検出装置44と、記憶装置46と、通信部48と、記録媒体処理部50と、を有する。なお、運転状況検出装置44と、記憶装置46と、通信部48と、記録媒体処理部50とは、デッキクレーン1のコントロールパネル31に設置されているが、デッキクレーン1に含めなくてもよい。運転状況検出装置44と、記憶装置46と、通信部48と、記録媒体処理部50とは、デッキクレーン1の運転情報の履歴を記憶するログ装置となる。
【0029】
制御装置42は、操作部28からの入力や、センサで検出された情報に基づいて、主電動機20を含む各部の動作を制御する。制御装置42は、回路で実現してもよいが、PLC(programmable logic controller)で実現してもよい。
図3の制御装置42は、操作部28、警報ブザー30及び主電動機20に接続されている状態を示しているが、各種油圧モータや、油圧ポンプ22a、作動油を制御するバルブ等の制御も行う。また、制御装置42は、デッキクレーン1の運転条件が予め設定されている許容範囲外となった場合、警報ブザー30から警報を出力させる。制御装置42は、安全スイッチや、サーモスイッチ、フロートスイッチを各部に配置して、スイッチの情報に基づいて、警報を出力するかを切り換えることができる。
【0030】
運転状況検出装置44は、制御装置42に接続され、各部で検出したデッキクレーン1の運転情報を検出する。運転情報としては、主電動機20の起動状態、操作部に入力される操作、切換スイッチ操作状態等、ボタン操作の有無等、操作部28に入力される情報がある。また、運転情報としては、サーモスイッチ、フロートスイッチ、各種安全装置(リミットスイッチ)等の警報ブザー30を作動させるために取得している情報がある。また、警報ブザー30の状態、各部の回転速度(回転数、速度)、油圧の圧力、主電動機20の電流値、作動油の温度等、センサで検出する情報も含まれる。運転状況検出装置44は、検出した情報を記憶装置46に記憶させる。また、運転状況検出装置44は、記憶したデータを通信部48や記録媒体処理部50から外部に出力させる。運転状況検出装置44は、例えばPLC(programmable logic controller)である。制御装置42がPLCの場合、制御装置42と運転状況検出装置44とは、1つのPLCで制御装置42と運転状況検出装置44の機能を実現してもよし、別々のPLCを設けてもよい。
【0031】
運転状況検出装置44は、第1データ生成部60と、第2データ生成部62と、自己診断処理部64と、を有する。第1データ生成部60は、取得した運転情報の情報を記録のために必要な加工以外は行っていないデータである第1データを作成する。つまり、第1データ生成部60は、取得した運転情報の値、時間の分解能を維持したデータを作成する。第2データ生成部62は、第1データを加工し、データ量を減少させたデータである第2データを作成する。第2データは、例えば、第1データの平均値のデータである。
【0032】
自己診断処理部64は、デッキクレーン1の状態を自己診断するための処理を実行させる。自己診断処理部64は、デッキクレーン1に予め設定した診断用の動作を実行させ、診断用の動作の実行時の運転情報と予め設定された判定基準とに基づいて、デッキクレーン1の状態を診断する。ここで、デッキクレーンシステム100は、自己診断処理部64を処理装置106に設けてもよい。
【0033】
記憶装置46は、運転状況検出装置44で作成した各種データを記憶する。記憶装置46は、第1データ70と第2データ72とを記憶する。
【0034】
通信部48は、無線通信で他の機器と通信を行い、データの送受信を行う。通信部48は、運転状況検出装置44で作成された第2データ72を他の機器に出力する。記録媒体処理部50は、データを記録可能な記録媒体へのデータの書き込みを実行する。記録媒体処理部50は、運転状況検出装置44で作成された第1データ70を記録媒体に書き込む。記録媒体処理部50は、記録媒体からのデータの読み取りができてもよい。
【0035】
また、デッキクレーン1には、各部の状態を検出するセンサとして、潤滑油温度検出部32aと、作動油温度検出部32b(油温検出部32)と、モータ検出部33と、荷重検出部34と、巻き上げ圧力検出部35と、巻き上げ回転数検出部36と、姿勢検出部37と、俯仰旋回圧力検出部38と、俯仰回転数検出部39と、旋回回転数検出部40と、を有する。各部は検出した結果を制御装置42に送る。制御装置42は検出した結果を運転情報検出装置44に送る。各センサは、検出結果を直接運転状況検出装置44に送ってもよい。
【0036】
潤滑油温検出部32aは、各部の軸受等に供給する潤滑油の温度を検出する。作動油油温検出部32bは、油圧回路22を流れる作動油の温度を検出する。モータ検出部33は、主電動機20の状態を検出する。具体的には、モータ検出部33は、主電動機20の電流値、電圧値等を検出する。荷重検出部34は、デッキクレーン1で釣り上げる荷役の重量を検出する。荷重検出部34は、例えばロードセルであり、ワイヤロープ9に対して設置されている。巻き上げ圧力検出部35は、巻上装置3の油圧モータの圧力を検出する。巻き上げ回転数検出部36は、巻上装置3の回転数を検出する。姿勢検出部37は、デッキクレーン1の転動モーメント、例えば、架台14に対する旋回体2のモーメントを検出する。姿勢検出部37は、例えばひずみセンサである。俯仰旋回圧力検出部38は、一体となっている俯仰装置4と旋回装置5の油圧モータの圧力を検出する。俯仰回転数検出部39は、俯仰装置4の回転数、具体的にはドラムの回転数を検出する。旋回回転数検出部40は、旋回装置5の回転数、具体的にはピニオンギヤの回転数を検出する。
【0037】
次に、
図4を用いて、処理装置106について説明する。
図4は、処理装置の概略構成を示すブロック図である。処理装置106は、
図4に示すように、通信部120と、記録媒体処理部122と、寿命診断部124と、遠隔監視部126と、を有する。通信部120は、デッキクレーン1に設置された通信部48と通信を行いデータの送受信を行う。通信部120は、取得したデータを寿命診断部124、遠隔監視部126に送る。記録媒体処理部122は、記録媒体からのデータの読み取りを行う。記録媒体処理部122は、データを記録可能な記録媒体へのデータの書き込みを実行できてもよい。記録媒体処理部122は、読み取ったデータを寿命診断部124、遠隔監視部126に送る。
【0038】
寿命診断部124は、通信部120及び記録媒体処理部122を介して取得した運転状況検出装置44で検出したデッキクレーン1の運転情報に基づいて、デッキクレーン1の各部の寿命を診断する。具体的には、寿命診断部124は、診断対象の毎に、必要な運転情報のパラメータを特定し、特定したパラメータの運転情報を抽出し、抽出した運転情報と予め設定されている条件に基づいて、診断対象の状態を推定する。寿命診断部124は、推定した診断対象の結果を出力してもよいが、さらに、推定した診断対象の結果とメンテナンス計画の情報に基づいて、診断対象の部品の交換が必要か、メンテナスが必要かを診断し、出力してもよい。例えば、寿命診断部124は、巻き上げ圧力検出部34、俯仰旋回圧力検出部38で検出した作動油の圧力の波形を検出して積分し、圧力と時間に基づいて、油圧ポンプ22aや各部のモータの寿命を評価する。寿命診断部124は、姿勢検出部37で検出した転倒モーメントと、旋回回転数検出部40の結果や、操作部28で取得した操作量に基づいて算出した旋回量に基づいて、TTB寿命を算出する。寿命診断部124は、俯仰回転数検出部39で検出した回転量を荷重検出部34で検出した荷重に基づいてワイヤロープ9の寿命を計算する。また、寿命診断部124は、油温、圧力、稼働時間から作動油劣化状況の推定を行う。
【0039】
遠隔監視部126は、通信部120及び記録媒体処理部122を介して取得した運転状況検出装置44で検出したデッキクレーン1の運転情報と故障が発生した情報とに基づいて、デッキクレーン1の各部の故障原因を診断する。具体的には、遠隔監視部126は、故障情報に基づいて必要な運転情報のパラメータを特定し、特定したパラメータの運転情報を抽出し、抽出した通常運転時の運転情報と故障時の運転情報と予め設定されている条件に基づいて、故障原因を推定する。遠隔監視部126は、故障原因を出力してもよいが、故障原因に加え、修理方法や故障した状態で実行可能な作業の情報をさらに出力してもよい。遠隔監視部126は、操作方向、巻上駆動圧、俯仰・旋回駆動圧の状況から油圧ポンプ性能低下状況を監視することができる。また、遠隔監視部126は、各動作の操作方向、駆動圧、速度からモータの性能低下やリリーフ弁の設定値不良か否かを監視することができる。また、遠隔監視部126は、油温、俯仰・旋回駆動圧から油温低用サーモコントローラの状態を監視することができる。
【0040】
デッキクレーンシステム100は、運転状況検出装置44が、運転情報として制御装置42の情報を取得することで、新たなセンサを設けることなく、デッキクレーン1の運転状況をより正確に把握することができる情報を取得することができる。また、デッキクレーンシステム100は、運転状況検出装置44で、検出部で検出した情報を運転情報として取得することで、デッキクレーン1の運転状況をより正確に把握することができる情報を取得することができる。
【0041】
特に、デッキクレーンシステム100は、主電動機の電流値を取得することで、電動機が過負荷状態であるか否かを検出することができる主電動機の稼動状況を取得することで、トラブルシューティングの起点(電動機自体が故障していないか)を検出することができる。警報ブザーの動作を取得することで、遠隔監視でのトラブル状況の確認ができる。操作部への入力操作を検出することで荷役サイクルの把握することができる。油圧回路を流れる作動油の温度を検出することで、油温関連の安全装置故障状況を把握することができる。
【0042】
次に、
図5から
図8を用いて、デッキクレーンシステムの動作について説明する。
図5は、デッキクレーンシステムの制御の一例を示すフローチャートである。
図5は、運転状況検出装置44で検出した運転情報の記録の処理の一例を示している。運転状況検出装置44は、
図5に示す処理を繰り返し実行する。
【0043】
運転状況検出装置44は、運転状況データ(各種運転情報)を取得する(ステップS12)。運転状況検出装置44は、運転状況データを第1データとして記憶装置46に記憶させる(ステップS14)。運転状況検出装置44は、第1データを記憶したら、第1データのデータ量が閾値以上であるかを判定する(ステップS16)。ここで、判定の対象のデータ量は、前回第2データを作成してから蓄積したデータの量である。本実施形態ではデータ量としたが、時間に基づいて判定しても、よい。運転状況検出装置44は、第1データのデータ量が閾値以上ではない(ステップS16でNo)と判定した場合、ステップS20に進む。運転状況検出装置44は、第1データのデータ量が閾値以上である(ステップS16でYes)と判定した場合、運転状況データを処理し、第2データを作成し、記憶装置に記憶させ(ステップS18)、ステップS20に進む。
【0044】
次に、運転状況検出装置44は、データを出力するかを判定する(ステップS20)。運転状況検出装置44は、例えばデータの出力指示を検出した場合、また予め設定された条件(データの蓄積量が閾値を超えた場合、データを作成する毎)を満たす場合、データを出力すると判定する。運転状況検出装置44は、データを出力しない(ステップS20でNo)と判定した場合、本処理を終了する。
【0045】
運転状況検出装置44は、データを出力する(ステップS20でYes)と判定した場合、記憶装置46から第1データを読み出し、記録媒体処理部の記録媒体に書き込み(ステップS22)、記憶装置46から第2データを読み出し、通信部で出力する(ステップS24)。なお、運転状況検出装置44は、ステップS22とステップS24のそれぞれを実行するかを判定して、判定結果に基づいて一方の処理のみを行うようにしてもよい。
【0046】
デッキクレーンシステム100は、
図5に示すように、第1データと第2データを作成し、情報量の多い第1データを記録媒体に記録し、情報量の少ない第2データを通信部から出力することで、通信の負荷が増大することを抑制しつつ、処理装置106に情報を送信しつつ、精度の高い解析が実行できる情報も蓄積することができる。
【0047】
図6は、デッキクレーンシステムの制御の一例を示すフローチャートである。
図6は、運転状況検出装置44の自己診断処理部64で実行する処理を示している。自己診断処理部64は、自己診断モードの指示があるかを判定する(ステップS30)。自己診断モードの指示は操作部から入力されても、予め設定された条件に基づいて制御装置42から出力されても運転状況検出装置44の他の部分から出力されてもよい。
【0048】
自己診断処理部64は、自己診断モードの指示がない(ステップS30でNo)と判定した場合、ステップS30に戻る。自己診断処理部64は、自己診断モードの指示がある(ステップS30でYes)と判定した場合、自己診断モードに基づいて実行する処理の通知を行う(ステップS32)。運転者は、通知された情報に基づいて操作部28を操作しデッキクレーン1を運転する。自己診断処理部64は、運転者によって実行されるデッキクレーン1の自己診断モードでの動作(運転情報)を検出する(ステップS34)。
【0049】
次に、自己診断処理部64は、自己診断モードの動作が終了かを判定する(ステップS36)。自己診断処理部64は、自己診断モードの動作が終了ではない(ステップS36でNo)と判定した場合、ステップS32に戻り、ステップS32、ステップS34の処理を実行する。つまり、自己診断モードの動作を通知し、実行された動作が実行されることで検出される運転情報を取得する処理を繰り返す。自己診断処理部64は、自己診断モードの動作が終了である(ステップS36でYes)と判定した場合、検出結果に基づいて状態を判定する(ステップS38)。つまり、自己診断処理部64は、設定された動作を実行させ、設定された動作を実行している間に検出される運転情報を取得する。設定された動作に対応する運転情報と、あらかじめ設定されている基準の運転情報(設定された動作を実行したときの運転情報の許容範囲、劣化状態が対応付けられた情報)とを比較することで、デッキクレーン1の状態を判定する。
【0050】
デッキクレーンシステム100は、設定された動作を実行させ、設定された動作を実行している間に検出される運転情報を取得し、評価を行う自己診断部を備えることで、基準の動きに対する運転情報を取得することができ、デッキクレーン1の状況をより正確に把握することができる。これにより、メンテナンス時期、部品の交換時期等を正確に把握することができる。
【0051】
なお、
図6に示す処理では、自己診断モードの動作を通知し、運転者が操作を実行する場合として説明したが、自己診断モードが起動した場合、設定された操作を自動で実行してもよい。
【0052】
図7は、デッキクレーンシステムの制御の一例を示すフローチャートである。
図7は、処理装置106の寿命診断部124の処理の一例を示している。
【0053】
寿命診断部124は、運転状況データを取得する(ステップS42)。寿命診断部124は、運転状況データから解析対象のデータを抽出する(ステップS44)。寿命診断部124は、デッキクレーン1の診断する対象の部位ごとに使用する運転情報の種類及び運転情報の期間等が設定されている。寿命診断部124は、設定に基づいて、運転状況データから解析対象のデータを抽出する。寿命診断部124は、データを抽出したら、抽出したデータに基づいて、寿命判定を実行する(ステップS46)。寿命診断部124は、抽出した運転情報の状態と基準の情報とを比較して、各部の劣化状態を評価し、対象部分の寿命(例えば、交換が必要となるまでの期間)を判定する。例えば、寿命診断部124は、巻き上げ圧力検出部34、俯仰旋回圧力検出部38で検出した作動油の圧力の波形を検出して積分し、圧力と時間に基づいて、油圧ポンプ22aや各部のモータの寿命を評価する。寿命診断部124は、姿勢検出部37で検出した転倒モーメントと、旋回回転数検出部40の結果や、操作部28で取得した操作量に基づいて算出した旋回量に基づいて、TTB寿命を算出する。寿命診断部124は、俯仰回転数検出部39で検出した回転量を荷重検出部34で検出した荷重に基づいてワイヤロープ9の寿命を計算する。また、寿命診断部124は、油温、圧力、稼働時間から作動油劣化状況の推定を行う。
【0054】
寿命診断部124は、寿命判定を行ったら、交換が必要な部品があるかを判定する(ステップS48)。寿命診断部124は、交換が必要な部品がない(ステップS48でNo)と判定した場合、本処理を終了する。寿命診断部124は、交換が必要な部品がある(ステップS48でYes)と判定した場合、部品の交換が必要であることを通知する(ステップS50)。寿命診断部124は、通信部を介してデッキクレーン1の運転者に通知を行ってもよいし、処理装置106の操作者や、船舶102の制御室に対して通知を行ってもよい。
【0055】
デッキクレーンシステム100は、運転状況検出装置44で検出した情報に基づいて、寿命を判定することで、より高い精度で寿命を判定することができる。
【0056】
図8は、デッキクレーンシステムの制御の一例を示すフローチャートである。
図8は、処理装置106の遠隔監視部126の処理の一例を示している。
【0057】
遠隔監視部126は、運転状況データを取得する(ステップS62)。遠隔監視部126は、運転状況データから解析対象のデータを抽出する(ステップS64)。遠隔監視部126は、デッキクレーン1の故障情報に対応して使用する運転情報の種類が設定されている。遠隔監視部126は、設定に基づいて、運転状況データから解析対象のデータを抽出する。遠隔監視部126は、操作方向、巻上駆動圧、俯仰・旋回駆動圧の状況から油圧ポンプ性能低下状況を監視することができる。また、遠隔監視部126は、各動作の操作方向、駆動圧、速度からモータの性能低下やリリーフ弁の設定値不良か否かを監視することができる。また、遠隔監視部126は、油温、俯仰・旋回駆動圧から油温低用サーモコントローラの状態を監視することができる。遠隔監視部126は、データを抽出したら、抽出したデータに基づいて、通常時のデータと故障時のデータとを比較する(ステップS66)。遠隔監視部126は、比較結果に基づいて、故障部位を推定する(ステップS68)。遠隔監視部126は、故障部位を推定したら、推定結果を通知する(ステップS70)。遠隔監視部126は、通信部を介してデッキクレーン1の運転者に通知を行ってもよいし、処理装置106の操作者に対して通知を行ってもよい。
【0058】
デッキクレーンシステム100は、運転状況検出装置44で検出した情報に基づいて、故障部位を推定することで、より高い精度で故障の原因を判定することができる。