(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960235
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】飲料、容器詰め飲料、容器詰め飲料の流通方法、飲料の製造方法および飲料の嗜好性向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/44 20060101AFI20211025BHJP
A23L 2/68 20060101ALI20211025BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20211025BHJP
【FI】
A23L2/44
A23L2/68
A23L2/38 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-67341(P2017-67341)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-99106(P2018-99106A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-247638(P2016-247638)
(32)【優先日】2016年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−178397(JP,A)
【文献】
特開2017−209090(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0041911(US,A1)
【文献】
特表2013−510593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を含み、
成分(A)の含有量が435ppm以上であり、
成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下である、飲料(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)。
【請求項2】
成分(B)の含有量(ppm)が、0.5以上35以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
成分(B)がマグネシウムイオンおよびカルシウムイオンのいずれか一方または両方である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
成分(B)の含有量(ppm)が、1.5以上15以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を含み、
成分(B)がマグネシウムイオンであり、かつ成分(B)の含有量(ppm)が、2以上15以下であり、
成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下である、飲料(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)。
【請求項6】
波長650nmにおける吸光度が0.06以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の飲料が容器に充填されている容器詰め飲料。
【請求項8】
前記容器が透明である、請求項7に記載の容器詰め飲料。
【請求項9】
請求項7または8に記載の容器詰め飲料を常温で流通させる、流通方法。
【請求項10】
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量が435ppm以上であり、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製する、飲料の製造方法(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)。
【請求項11】
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量が435ppm以上であり、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製する、飲料の嗜好性向上方法(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、容器詰め飲料、容器詰め飲料の流通方法、飲料の製造方法および飲料の嗜好性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器詰めされた飲料は、その流通過程などにおいて微生物が繁殖するのを防ぐため、乳化剤などの静菌剤が用いられることが多かった。
一方、近年、消費者の嗜好性の向上、飲料の多様化などに伴い、ニアウォーターなどと呼ばれる透明飲料の開発が盛んに行われている。しかしながら、このような透明飲料においては、乳化剤の使用により飲料が白濁してしまうといった問題があった。そのため透明飲料の透明性を維持したまま微生物の繁殖を制御するためには、乳酸などの有機酸を用いることが有効であることが知られていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、カルシウム、亜鉛およびマグネシウムといったミネラルと、リン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、タンニン酸等の可食性の酸とを組み合わせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−164440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微生物の繁殖を抑制するために用いられる乳酸を飲料に含ませると、飲料の後味がすっきりしないといった問題があった。
また、特許文献1に記載された技術は、透明飲料をミネラル強化する観点から、カルシウム、亜鉛およびマグネシウムに、乳酸などの可食性の酸を組み合わせるものであり、乳酸による後味に着目したものではなく、また、後味の不快感を解消するものでもなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、乳酸による後味を改善するために鋭意検討を行った結果、乳酸に特定のイオンを組み合わせることが有効であるといった知見を初めて見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を含み、
成分(A)の含有量が435ppm以上であり、
成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下である、飲料
(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)が提供される。
また、本発明によれば、
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を含み、
成分(B)がマグネシウムイオンであり、かつ成分(B)の含有量(ppm)が、2以上15以下であり、
成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下である、飲料
(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記飲料が容器に充填されている容器詰め飲料が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、容器詰め飲料を常温で流通させる、流通方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量が435ppm以上であり、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製する、飲料の製造方法
(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(A)の含有量が435ppm以上であり、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製する、飲料の嗜好性向上方法
(ただし、非重合体カテキン類を含む飲料を除く)が提供される。
【発明の効果】
【0012】
乳酸による後味が改善された飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<飲料>
本実施形態における飲料は、透明である。
本実施形態における飲料は、(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を含み、
成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下である。
【0014】
成分(A)の乳酸とは、ヒドロキシ酸の1種であり、酸味料及び静菌作用を有するものとして機能する。
【0015】
成分(B)は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンであり、2種以上のイオンを混合したものであってもよい。
【0016】
ナトリウムイオンは、飲料に適用できる公知のナトリウム塩を用いることができる。ナトリウム塩としては、例えば、塩化ナトリウム、および硫酸ナトリウム等の無機のナトリウム塩、ならびに、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、および乳酸ナトリウム等の有機のナトリウム塩が挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
カリウムイオンは、飲料に適用できる公知のカリウム塩を用いることができる。カリウム塩としては、例えば、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カリウム等の無機のカリウム塩、ならびに、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、乳酸カリウム等の有機のカリウム塩が挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
カルシウムイオンは、飲料に適用できる公知のカルシウム塩を用いることができる。カルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸カルシウム等の無機のカルシウム塩、ならびに、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム等の有機のカルシウム塩が挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
マグネシウムイオンは、飲料に適用できる公知のマグネシウム塩を用いることができる。マグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、および炭酸マグネシウム等の無機のマグネシウム塩、ならびに、リンゴ酸マグネシウム等の有機のマグネシウム塩が挙げられる。これらは、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
成分(B)は、乳酸による後味のすっきり感を効果的に得る観点から、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンであることが好ましく、カルシウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンであることがより好ましく、マグネシウムイオンであることが最も好ましい。
【0021】
成分(B)の含有量(ppm)は、本発明の飲料全体に対して、0.5以上25以下であることが好ましく、1以上15以下であることがより好ましく、1.5以上8以下であることがさらに好ましく、2以上7以下が特に好ましい。下限値以上とすることで、乳酸による後味をすっきりさせることができ、上限値以下とすることで、後味のすっきり感と飲料としての味のバランスを良好にできる。
また、成分(B)の含有量(ppm)は、本発明の飲料全体に対して、0.5以上35以下であることが好ましく、1.5以上15以下であることがより好ましい。当該範囲内とすることで、乳酸による後味をすっきりさせつつ、飲料としての味のバランスを良好にし、おいしいと感じさせることができる。
【0022】
本発明の飲料において、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下であり、好ましくは25以上370以下であり、より好ましくは50以上350以下であり、さらに好ましくは60以上200以下であり、特に好ましくは80以上140以下であり、最も好ましくは85以上120以下である。下限値以上とすることで、乳酸による後味をすっきりさせることができ、上限値以下とすることで、後味のすっきり感と飲料としての味のバランスを良好にできる。
【0023】
本発明の飲料のpHは、pH2.5〜5.5であることが好ましく、pH3.0〜4.0であることがより好ましい。下限値以上とすることにより、酸味による刺激を軽減でき、上限値以下とすることにより、適度な酸味を付与しつつ、微生物危害に対する保存安定性を得ることができる。
【0024】
本発明の飲料のブリックス値は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、2.5質量%以上8質量%以下である。
なお、「ブリックス値」は、例えば、糖用屈折計示度「RX−5000α」株式会社アタゴ製を用い、液温20℃で測定することができる。
【0025】
本発明の飲料の甘味度は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、1以上15以下であり、さらに好ましくは3以上10以下である。
なお、「甘味度」とは、甘味のショ糖濃度換算濃度であり、ショ糖を100としたときの値である。
【0026】
本発明の飲料の酸度は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.05質量%以上0.4質量%以下であり、より好ましくは、0.1質量%以上0.3質量%以下である。
なお、「酸度」とは、本発明の飲料に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(質量%)として表した数値を指す。
【0027】
本発明の飲料は、茶系飲料、野菜飲料、果汁飲料、ミネラル水飲料、各種の機能性飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター、乳酸飲料などとしてもよく、これらの炭酸飲料または非炭酸飲料としてもよい。後味の良さを効果的に付与できる観点から、ニアウォーターであることが好ましい。
【0028】
また本発明の飲料は、透明であることが好ましい。透明とは、白濁や果汁による混濁といった濁りが低減され、外観が透き通っていることをいう。具体的には、本発明の飲料は、波長650nmにおける吸光度が0.06以下であることが好ましい。なお、止渇飲料の1種として市場に流通している従来のスポーツドリンクの波長650nmにおける吸光度は、通常、0.2程度である。
近年、さまざまな形態の飲料が開発される中、透明な飲料に対して、視覚的にすっきり感、爽快感等が得られることから、味としても、すっきりしたいという期待が高まっている。そのため、本発明の飲料を透明にすることにより、消費者の高度な期待に一致し、後味のすっきり感をより効果的に付与できる。
【0029】
波長650nmにおける吸光度は、例えば、紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製))を用いて測定することができる。
【0030】
また、本発明の飲料の色は、無色透明である場合に限られず、有色であってもよい。
【0031】
本発明の飲料は、上記成分(A)、(B)に加え、通常の飲料に用いられる甘味料、酸味料、香料(フレーバー)、果汁、酸化防止剤、塩類などのミネラル、香料、苦味料、栄養強化剤、pH調整剤などを含んでもよい。
【0032】
甘味料は、甘みを付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、砂糖(ショ糖やグラニュー糖を含む)、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
これら甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0033】
酸味料は、酸味を付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
酸味料としては、上記成分(A)の乳酸に加えて、例えば、アジピン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、DL−酒石酸、L−酒石酸、氷酢酸、フマル酸、DL−リンゴ酸、リン酸、フィチン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0034】
香料は、嗜好性を高めるために用いられる。
香料としては、天然香料または合成香料であって、例えば、フルーツフレーバー、植物フレーバー、またはこれらの混合物である。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」としては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚およびライム等の柑橘類、苺、桃、葡萄、林檎、パイナップル、マンゴー、メロン、およびバナナ等が挙げられる。なかでも、後味のすっきり感の観点から、柑橘類のフレーバーが好ましい。
【0035】
<容器詰め飲料>
本発明の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰飲料としてもよい。容器としては、例えば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。本発明の飲料を外観から観察し、透明性、色などを確認できる観点から、透明な容器であることが好ましく、具体的には透明性に優れたペットボトルが挙げられる。また、取扱性、流通性、携帯性等の観点から、ペットボトルであることが好ましい。
【0036】
加熱殺菌の手法は、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、95℃で瞬間殺菌してもよい。
【0037】
<容器詰め飲料の流通方法>
本発明の容器詰め飲料の流通方法は、上記容器詰め飲料を常温で流通させるものである。
すなわち、本発明の容器詰め飲料は、乳酸を含むため静菌効果を有し、冷蔵を必須とするものではなく、常温下におくことができる。これにより、冷蔵での流通に比べて、品質管理が容易になるとともに、消費電力を大幅に削減し、製品コストを安価にできる。
なお、常温とは、冷蔵よりも高い温度であって、通常の流通過程において容器詰め飲料がおかれるうる温度を意図するものである。例えば、10〜50℃、好ましくは15〜35℃である。
また、流通とは、容器詰め飲料を製造後、倉庫に保管すること、水陸空を利用して輸送すること、店頭での陳列等を含むものである。
【0038】
<飲料の製造方法>
本発明の飲料の製造方法は、(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、前記飲料を調製する工程において、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製するものである。また、上記の飲料を調製する工程の後、さらに、上記の飲料を容器詰めする工程を有してもよい。
【0039】
本発明の飲料の製造方法によれば、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製することにより、乳酸による後味がすっきりした飲料を得ることができる。
また、上記混合する方法は、公知の方法を用いることができ、混合の順序、温度、時間などは特に限定されない。
【0040】
<飲料の嗜好性向上方法>
本発明の飲料の嗜好性向上方法は、(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、前記飲料を調製する工程において、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製するものである。また、上記の飲料を調製する工程の後、さらに、上記の飲料を容器詰めする工程と、上記の容器詰めされた飲料を常温下で保管する工程と、を有してもよい。
【0041】
本発明の飲料の嗜好性向上方法は、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製することにより、飲料の乳酸による後味がすっきりするため、飲料の嗜好性を向上させることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を含み、
成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)が、15以上400以下である、飲料。
<2>
成分(B)の含有量(ppm)が、0.5以上35以下である、<1>に記載の飲料。
<3>
成分(B)がマグネシウムイオンおよびカルシウムイオンのいずれか一方または両方である、<1>または<2>に記載の飲料。
<4>
波長650nmにおける吸光度が0.06以下である、<1>乃至<3>のいずれか一つに記載の飲料。
<5>
成分(B)の含有量(ppm)が、1.5以上15以下である、<1>乃至<4>のいずれか一つに記載の飲料。
<6>
<1>乃至<5>のいずれか一つに記載の飲料が容器に充填されている容器詰め飲料。
<7>
前記容器が透明である、<6>に記載の容器詰め飲料。
<8>
<6>または<7>に記載の容器詰め飲料を常温で流通させる、流通方法。
<9>
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製する、飲料の製造方法。
<10>
(A)乳酸と、(B)ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンと、を混合し、飲料を調製する工程を含み、
前記飲料を調製する工程において、成分(B)の含有量(ppm)に対する成分(A)の含有量(ppm)(A/B)を、15以上400以下に調製する、飲料の嗜好性向上方法。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
<実施例および比較例、対照例>
表1〜3に示す組成(g/L)、pH、酸度(質量%)となるように、公知の方法で、飲料を作製した。得られた飲料を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器詰め飲料を得た。
次に、得られた容器詰め飲料について以下の評価を行い、結果を表1〜3に示した。
【0045】
<評価>
・ブリックス値:糖用屈折計示度「RX−5000α」株式会社アタゴ製を用いてブリックス値を測定した。飲料の液温は20℃とした。
【0046】
・波長650nmにおける吸光度:紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製))を用いて、各容器詰め飲料の波長650nmにおける吸光度を測定した。なお、吸光度測定は、20℃の温度条件下、石英セルを用いて実施した。
【0047】
・官能評価:
得られた容器詰め飲料について、飲料を摂取したときの「後味の良さ」、「おいしさ」について、熟練した5人のパネリストにより評価した。分量評定法を用い、対照例を評点4とし、評点1〜7の7段階で評価した。なお、数値が大きいほど、嗜好性が高いことを表す。評点の平均値をとり、結果を表1〜3に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】