【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1−1. (公開の事実) ▲1▼ 配布日 平成29年5月16日、17日 ▲2▼ 展示会名 マテリアル&プロダクト展2017 開催場所 ベルサール新宿グランド(東京都新宿区西新宿8−17−3 住友不動産新宿グランドタワー1F) ▲3▼ 配布物 山下亮太、黒瀬哲男および増成泰宏が発明した生分解性粘着フィルムおよび上記生分解性粘着フィルムの説明書 ▲4▼ 公開者 アキレス株式会社
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、本発明の生分解性粘着フィルムに関し、フィルムとは、その形状を何ら限定するものではなく、たとえば所定面積を有するシート状物、一方方向に長いテープ状物、ロール状にまかれた物、または枚葉状のシート物等を含む。シート状物等は、使用時に使用者が適宜の寸法または形状に切って使用することもできる。また本発明に関し補修とは、破損した箇所に粘着フィルムを貼り付けることで破損個所を修繕する場合に限定されず、破損防止または補強等のために、未破損の箇所に粘着フィルムを貼り付ける場合を包含する。以下の説明において、粘着フィルムが貼りつけられる対象物を、被着物という場合がある。
尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲に関し上限と下限を示す場合がある。この場合に、数値範囲の好ましい範囲は、示される上限および下限の全ての組み合わせから決定することができる。
【0012】
本発明の生分解性粘着フィルム(以下、単に粘着フィルムともいう)は、生分解性の基材と、上記基材の少なくとも片面に設けられた粘着層を備える。上記粘着層は、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンと、生分解性の粘着付与性樹脂とを含む。本発明の粘着フィルムは、上記天然ゴムまたは合成ポリイソプレン100質量部に対し、上記生分解性の粘着付与性樹脂が10質量部以上200質量部以下の範囲で配合されている。尚、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンは、いずれか一方で用いられてもよいし、両者が混合されて用いられてもよく、混合で用いられる場合には、混合物100質量部に対し、上記範囲で粘着付与性樹脂が配合される。
かかる構成の本発明の粘着フィルムは、粘着層が、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンに対し適量な範囲で配合された粘着付与性樹脂を含むことで、良好な生分解性を維持しつつ、適度な粘着力を発揮する。以下に、本発明の詳細について説明する。
【0013】
[粘着層]
本発明における粘着層は、天然ゴムまたは合成ポリイソプレン(以下、天然ゴム等ともいう)、および生分解性の粘着付与性樹脂を含み、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の成分を適宜含有していてもよい。上記粘着層は、所定の材料を含む粘着剤を用いて構成される。上記粘着剤は、溶剤型接着剤、またはラテックス型接着剤のいずれであってもよい。ここでラテックス型接着剤とは、天然ゴム等および上記粘着付与性樹脂を含む接着剤構成材料が分散剤の作用で水に分散されてなる接着剤とのことをいう。また溶剤型接着剤とは、天然ゴム等および上記粘着付与性樹脂を含む接着剤構成材料に溶剤が配合された接着剤のことをいう。
【0014】
(天然ゴムまたは合成ポリイソプレン)
本発明における天然ゴムまたは合成ポリイソプレンは、いずれも生分解性である。天然ゴムは、自然界にて産出された材料、またはこれを精製してなる材料であり、たとえばポリイソプレン等を主成分として含有する材料である。
一方、合成ポリイソプレンは、人工的に合成された材料である。
中でも、ゲル分が高く、高温化での浮き剥がれ(凝集破壊)が起こりにくく、初期のタック性が低く貼り直しやすいことから、天然ゴムが好ましい。
【0015】
本発明において、天然ゴム等の配合範囲は、粘着層100質量%において、30質量%以上90質量%以下である。かかる範囲を外れた場合には、他の配合成分との配合比率が不適となり、良好な接着性を発揮し難い。
【0016】
(生分解性の粘着付与性樹脂)
本発明における粘着付与性樹脂は、上述する天然ゴム等と混合されて混合物を構成することで、当該混合物に粘着性を付与可能な生分解性の材料である。上記粘着付与性樹脂は、天然ゴム等100質量部に対し、10質量部以上200質量部以下の範囲で配合される。
粘着付与性樹脂の上記配合の範囲が10質量部未満であると、粘着フィルムの粘着力が充分でない。粘着フィルムの粘着力を充分に大きくするという観点からは、粘着付与性樹脂の上記配合の範囲は、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましい。
また粘着付与性樹脂の上記配合の範囲が200質量部を上回ると、粘着フィルムの粘着力が大きくなり過ぎ、被着物に対し貼り直しが出来なくなる等、取り扱い性が低下する。かかる観点からは、粘着付与性樹脂の上記配合の範囲は、150質量部以下であることが好ましく、120質量部以下であることがより好ましい。
【0017】
上記粘着付与性樹脂としては、たとえば、ロジン、テルペン、またはポリカプロラクトン等の生分解性樹脂のいずれか1種または組合せが例示される。上記ロジンは、アビチエン酸、パラストリン酸、またはイソピマール酸等のロジン酸を1種または2種以上含む樹脂であり、天然ロジン、精製ロジン、または水素化ロジンを含む。ロジンは、マツ科の植物の樹液から精製される。上記テルペンは、イソプレンを構成単位とする炭化水素の総称である。テルペンは一般的には植物の精油成分から得られるが、昆虫や菌類の生体物質からも精製される。上記ポリカプロラクトンは、カプロラクトンを開環重合させることにより得られる。
中でも、天然ゴムとの混合による粘着付与性が特に良好であるという観点から、粘着付与性樹脂としてロジンが好ましい。
【0018】
(ロジンエステル)
粘着層の粘着力をより向上させるとうい観点からは、粘着層にロジンエステルが含有されることが好ましい。ただしロジンエステル自体は生分解性ではないため、粘着層に多量のロジンエステルを配合した場合には、粘着フィルムの生分解性を実質的に阻害し、または生分解の期間を長期化させる虞がある。そこで、本発明者らは鋭意検討し、粘着層において、天然ゴム等100質量部に対し、生分解性の粘着付与性樹脂を10質量部以上200質量部以下の範囲で配合させるとともに、さらにロジンエステルを少量配合させることで、実質的に生分解性を維持しつつ、良好な粘着力を発揮可能であることを見出した。
【0019】
粘着層に対するロジンエステルの配合量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、粘着フィルムの用途なども勘案しつつ決定してよいが、天然ゴム等100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下の範囲で配合させることで、良好な生分解性を維持しつつ、粘着性を充分に高めることができる。
ロジンエステルの上記配合の範囲が、1質量部未満であると、ロジンエステルを配合したことによる粘着性向上効果が顕著に示されない場合がある。ロジンエステルの配合による粘着力向上効果を有意に発揮させるという観点からは、上記配合の範囲は、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。
また、ロジンエステルの上記配合の範囲が、10質量部を上回ると、粘着フィルムの生分解性が不充分であるか、進行が遅くなる場合がある。そのためロジンエステルの上記配合の範囲は、10質量部未満であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましく、6質量部以下であることが特に好ましい。
【0020】
好ましい配合の範囲で、粘着層にロジンエステルが配合された粘着フィルムは、生分解性を実質的に阻害されることなく、屋外等の厳しい使用環境においても、数週間から数か月といった長期間、充分な粘着力を発揮し得る。
【0021】
ロジンエステルは、前述する粘着付与性樹脂であるロジンとの相溶性が良好であり、粘着力が効率良く引き出せるため、天然ゴム等に対するロジンの添加量を抑えることができる。したがって、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンに対し、ロジンおよびロジンエステルが上述する所定の範囲で配合されてなる粘着層を備える粘着フィルムは、本発明においてより好ましい態様である。
【0022】
上記ロジンエステルは、ロジンに含まれるアビチエン酸等のロジン酸をエステル化した樹脂であり、ロジンから誘導されるエステル樹脂(ロジン誘導体)である。上記ロジンエステルとしては、たとえば重合ロジンエステル、ロジンフェノール系樹脂、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、または水添ロジンエステル等が挙げられ、これらを1種または2種以上の組合せで用いられる。ロジンエステルの市販品としては、たとえば、荒川化学工業社製のエステルガムAA−G、ペンセルD160、KE−100等が例示されるが、これに限定されない。
【0023】
以上に説明する粘着層は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、天然ゴムまたは合成ポリイソプレン、粘着付与性樹脂、および任意で配合されるロジンエステル以外の添加剤を適宜含有してもよい。たとえば、上記添加剤として酸化防止剤、紫外線吸収剤、または着色剤等の1種または2種以上が挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
上記酸化防止剤または紫外線吸収剤は、粘着層の保存安定性や劣化防止に寄与する。特に、本発明の粘着フィルムが屋外で長期間使用されることが予定される場合には、当該粘着フィルムが日光に晒された場合の粘着層の劣化を勘案することが好ましい。そのため、酸化防止剤または紫外線吸収剤の少なくとも一方が粘着層に配合されることが好ましい。粘着層における酸化防止剤または紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、粘着フィルムの生分解性および粘着性が損なわれることなく、粘着層の劣化を防止するという観点からは、天然ゴム等100質量部に対し、酸化防止剤が0.5質量部以上2質量部以下の範囲で配合されることが好ましく、また紫外線吸収剤が0.5質量部以上2質量部以下の範囲で配合されることが好ましい。
【0025】
本発明における粘着層は、後述する基材に対し公知の方法により形成することができる。上記公知の方法は特に限定されないが、たとえば、基材の少なくとも片面に対し所定の材料が含まれる粘着剤をコンマコーター法等の塗布方法により塗布して粘着層を形成することができる。
【0026】
本発明において、粘着層の厚みや単位面積当たりの質量は、特に限定されない。たとえば、基材の片面に対し、粘着層の目付の下限は、乾燥質量において15g/m
2以上であることが好ましく、30g/m
2以上であることがより好ましい。また、同様に粘着層の目付の上限は、乾燥質量において75g/m
2以下であることが好ましく、60g/m
2以下であることがより好ましい。
【0027】
[基材]
次に本発明の粘着フィルムの基材について説明する。本発明の基材は生分解性である。本発明の粘着性フィルムは、かかる生分解性の基材に、上述する生分解性の粘着層が設けられることで、生分解性の粘着フィルムとして構成されている。たとえば、任意の生分解性シートの補修に本発明の粘着性フィルムが用いられることで、生分解性シートだけでなく、補修に用いられた粘着性フィルムも生分解させることができる。そのため、従来のように、補修に用いられたフィルムが土壌等に残ってしまうといった問題が解消される。
【0028】
本発明において、基材の厚みは、特に限定されるものではない。用途や、基材の構成材料の種類などを勘案して適宜決定してよい。たとえば上記基材の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上150μm以下であることがより好ましい。基材の厚みは、10μm未満であると粘着性フィルムの強度が充分に得られない虞があり、200μmを超えると生分解される速度が遅くなる傾向にある。
【0029】
本発明における基材は、生分解性の材料を適宜選択して構成することができる。上記生分解性の材料は、特に限定されず、生分解性を示し、かつ基材を構成可能な材料であればよい。たとえば、上記生分解性の材料として、脂肪族芳香族ポリエステル、または脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステルが含有されることが好ましく、これに加えてさらに異なる生分解性の材料を配合させてもよい。
【0030】
脂肪族芳香族ポリエステル:
上記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分と脂肪族ジオールとからなるジオール成分との重合縮合物である脂肪族芳香族ポリエステルが好ましい。例えば、アジピン酸およびテレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールからなるジオール成分との重縮合物を、多官能性イソシアネートで高分子化した脂肪族芳香族ポリエステルが好ましい。
その他のジカルボン酸成分としては、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、無水コハク酸、または無水アジピン酸などを挙げることができる。尚、これらのジカルボン酸は1種または2種以上の組合せで含まれてよい。
またその他のジオール成分としては、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、またはジエチレングリコール等を挙げることができる。上記ジオール成分は、1種または2種以上の組合せで含まれてよい。
【0031】
脂肪族芳香族ポリエステルとして、より具体的には、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、またはポリテトラメチレンアジペートテレフタレート等が挙げられ、なかでもポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が好適に選択される。これらの生分解性材料が基材に配合されることで、当該基材の延伸性および引き裂き強さが良好となり、裂け難くなるため好ましい。
【0032】
脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステル:
上記脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステル樹脂としては、コハク酸からなるジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールからなるジオール成分との重縮合物を、多官能性イソシアネート化合物で高分子化した脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。その他のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、その他のジオール成分としては、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等をあげることができる。
脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステルとして、より具体的には、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネートアジペート(PESA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)またはポリヒドロキシ酪酸などが挙げられる。また脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルは、脂肪族芳香族ポリエステルと比較して、生分解されるまでの時間が一般的に短い。そのため、脂肪族芳香族ポリエステルに、脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステル樹脂を配合することで、生分解性の期間を適宜短縮する方向に調整することができる。
【0033】
脂肪族ポリエステルの組合せ:
基材の構成材料として、以上に述べる脂肪族ポリエステルをいずれか1種選択してもよいが、2種以上を組合せて用いてもよい。
たとえば、基材の延伸性、引き裂き強度、および生分解されるまでの期間のバランスを図るという観点からは、基材は、脂肪族芳香族ポリエステルと、脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルと、を含むことが好ましい。かかる組み合わせにおいて、生分解性に要する期間を短縮化するという観点からは、脂肪族芳香族ポリエステルに対し、脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリエチレンサクシネート(PES)の少なくとも一方が含まれることが好ましい。中でも、脂肪族芳香族ポリエステルとしてポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が含まれるとともに、脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリエチレンサクシネート(PES)の少なくとも一方が含まれることが好ましい。
【0034】
上述する脂肪族ポリエステルの組合せにおける配合割合は特に限定されないが、たとえば、基材構成材料100質量%において、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が75質量%以上95質量%以下の範囲で含まれ、かつポリブチレンサクシネート(PBS)または/およびポリエチレンサクシネート(PES)が5質量%以上25質量%以下の範囲で配合されることが好ましい。かかる配合割合であれば、得られる基材の延伸性、引き裂き強度、および生分解されるまでの期間のバランスを良好に図り得る。
【0035】
また本発明に用いられる基材の加工特性をより良好なものにするという観点からは、基材において、上述にて説明する脂肪族ポリエステルに加えて、さらに長鎖分岐を有する生分解性の脂肪族ポリエステルが配合されることが好ましい。
上記長鎖分岐を有する脂肪族ポリエステルは、融点が70℃以上190℃以下であって、主に脂肪族グリコール(シクロ環を含む)および脂肪族ジカルボン酸(またはその無水物)を主体として得られた数平均分子量(Mn)5000以上、好ましくは10000以上のポリエステルプレポリマーに、適当な多官能カップリング剤を用いて縮合することにより合成された長鎖分岐を有する脂肪族ポリエステルである。より具体的な例としては、上記長鎖分岐を有する脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸またはカプロラクトン等が好ましい例として挙げられる。
【0036】
上記グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、または1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。エチレンオキサイドを用いることもできる。これらのグリコール類は2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、上記脂肪族ジカルボン酸(またはその無水物)としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、無水コハク酸、または無水アジピン酸などが挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸(またはその無水物)は2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記多官能カップリング剤としては、多官能イソシアネート、オキサゾリン、ジエポキシ化合物、または酸無水物などを挙げることができる。多官能カップリング剤として多官能イソシアネートを用いた場合には、ポリエステルプレポリマーはウレタン結合を介して長鎖構造を形成するポリエステルとなる。また、多官能カップリング剤としてオキサゾリン、ジエポキシ化合物、あるいは酸無水物を用いた場合、ポリエステルプレポリマーはエステル結合を介して連鎖構造を形成するポリエステルとなる。
【0039】
上記多官能イソシアネートとしては、トリメチロールプロパン・ヘキサメチレンジイソシアナート・アダクト、ヘキサメチレンジイソシアナート環状トリマーまたはヘキサメチレンジイソシアナート・水・アダクトを挙げることができる。
【0040】
上記ポリエステルプレポリマーの調製においては、第三成分としての3官能または4官能の多価アルコールあるいは、3官能または4官能のオキシカルボン酸および/または3官能または4官能の多価カルボン酸を添加することができる。そのような3官能または4官能の多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリンおよびペンタエリトリット等をあげることができる。また、3官能または4官能のオキシカルボン酸および/または3官能または4官能の多価カルボン酸としては、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテロラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸または酒石酸等をあげることができる。
【0041】
上記長鎖分岐を有する脂肪族ポリエステルを基材に配合させる場合、好ましい組み合わせと配合比率の例は以下のとおりである。即ち、基材構成材料100質量%において、脂肪族芳香族ポリエステル(特にポリブチレンアジペートテレフタレート)を75質量%以上95質量%未満、ポリブチレンサクシネートおよび/またはポリエチレンサクシネートを5質量%以上25質量%未満、並びに長鎖分岐を有する脂肪族ポリエステルを0質量%を超えて7質量%以下の割合で配合することが好ましい。これにより成形性が良好であり、かつ生分解性および粘着性に優れた粘着フィルムを得ることができる。
【0042】
ところでポリ乳酸は、ガラス転移点が室温より高い。そのため、基材を構成する材料として、ガラス転移点が室温より低い脂肪族ポリエステル(たとえば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリエチレンサクシネート(PES)等)に対し、少量のポリ乳酸が添加されることで、基材は、コシが強くなり、粘着層を支持する支持体として強度を良好に発揮し得る。かかる観点から、基材構成材料100質量%において、ガラス転移点が室温より低い脂肪族ポリエステルとともに、ポリ乳酸が0質量%を超えて7質量%以下の範囲で含有されていることが好ましい。即ち、コシの強い粘着フィルムが所望される場合には、基材構成材料100質量%において、脂肪族芳香族ポリエステル(特にポリブチレンアジペートテレフタレート)を75質量%以上95質量%未満、ポリブチレンサクシネートおよび/またはポリエチレンサクシネートを5質量%以上25質量%未満、並びにポリ乳酸を0質量%を超えて7質量%以下の割合で配合することが好ましい。一方、柔軟性に優れた粘着フィルムが所望される場合には、ポリ乳酸の添加を控えるとよい。
【0043】
粘着フィルムのガスバリヤ性:
本発明の粘着フィルムは、基材を構成する材料が適宜選択されることで、良好なガスバリヤ性を発揮し得る。より具体的には、粘着フィルムのメチルイソチオシアネートガス(以下、MITCガスともいう)の透過度を0.8以下に調整することが可能である。これにより、本発明の粘着フィルムを同様のガスバリヤ性を示す生分解性シートの補修フィルムとして用いた場合に、粘着フィルムが貼りつけられた箇所においても同様のガスバリヤ性が示されるとともに、使用後は、粘着フィルムを回収し廃棄することなく、生分解性シートとともに生分解させることができる。
【0044】
即ち、上述するMITCガス透過度が0.8以下である本発明の粘着フィルムは、MITCガスの透過度が0.8以下である生分解性シートの補修用の粘着フィルムとして好適である。MITCガス透過度が0.8以下である本発明の粘着フィルムを、MITCガスの透過度が0.8以下である生分解性シートの補修用の粘着フィルムの任意の箇所に貼り付けることによって、補修箇所でも生分解性シートと同様のガスバリヤ性を保つことができる。上記生分解性シートは、MITCガス透過度が0.8以下である本発明の粘着フィルムに用いられる基材と同様に作製することができる。特に、生分解性シートおよび粘着フィルムが生分解される時期を同程度にできるという観点からは、生分解性シートと粘着フィルムの基材とは、同様の組成であることが好ましく、また同様の組成であって各組成の配合割合も同じであることがより好ましい。
【0045】
上記MITCガスの透過度は、以下のとおり測定される。即ち、一側面に通気穴を設けた箱型の容器2個(ガス投入槽およびガス透過槽)を準備する。そして、それぞれの容器に設けられた穴同士を対向させ、穴と穴との間に粘着フィルムを挟んだ状態で2個の容器を連結する。一方の容器(ガス投入槽)にMITCガスを投入し、その状態で24時間放置した後、両方の容器(ガス投入槽およびガス透過槽)の内部のMITCガス濃度をGC−FIDで測定し、上記粘着フィルムにおけるMITCガスの透過度を下式より求めることができる。
【数1】
【0046】
ガスバリヤ性の高い粘着フィルムを得るために、たとえば、上述する脂肪族芳香族ポリエステルと、脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステルとを、適宜に組み合わせることが好ましい。中でも、脂肪族芳香族ポリエステルに対し、脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリエチレンサクシネート(PES)の少なくとも一方が配合されることが好ましく、上記脂肪族芳香族ポリエステルとしてポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が選択されることがより好ましい。
【0047】
上述のとおり選択された基材構成材料の配合割合は、基材構成材料100質量%において、脂肪族芳香族ポリエステル(特にはポリブチレンアジペートテレフタレート)が75質量%以上95質量%以下、ポリブチレンサクシネート(PBS)および/またはポリエチレンサクシネート(PES)が5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。基材において、脂肪族芳香族ポリエステルが75質量%未満であると粘着フィルムの引裂強さが不充分になる虞があり、一方、ポリブチレンサクシネート(PBS)および/またはポリエチレンサクシネート(PES)が5質量%未満であると生分解速度が遅くなる傾向にある。
【0048】
その他の添加剤:
また粘着フィルムにおける基材を構成する材料としては、上述する脂肪族ポリエステル以外にも、必要に応じて適宜、他の添加剤を用い、これを基材に含有させることができる。添加剤の例としては、例えば、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、または可塑剤などを1種または2種以上添加することができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜決定することができる。
【0049】
(製造方法について)
本発明の粘着性フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、上記基材を構成する材料を用いて、インフレーション法、T−ダイ押出法、カレンダー法、またはキャスティング法などの従来公知の方法により基材を成形し、当該基材上に、任意の塗布方法などを適宜選択して、上述する接着剤を用い粘着層を形成するとよい。
【実施例】
【0050】
以下に本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1
〜6、参考例7、8、実施例9〜12、比較例1、2)
以下のとおり各実施例および比較例を作製した。
表1に示す配合にて基材の構成材料を調製し、当該基材の構成材料を用いインフレーション成形機により、厚み0.1mmを有する基材を作製した。
また表1に示す粘着層の構成材料とトルエンとを混合させて混合物を調製し、上述のとおり作製した基材の片面にコンマコーター法にて上記混合物を塗布した。混合物の塗布量は、基材に対する目付けが乾燥状態にて45g/m
2となるよう調整した。これによって、各実施例および比較例である粘着フィルムを得た。
【0052】
表1に示す材料の詳細は、以下のとおりである。
PBAT:ポリブチレンアジペートテレフタレート;エコフレックス、BASF社製
PBS:ポリブチレンサクシネート;BioPBS、三菱ケミカル株式会社製
PLA:ポリ乳酸;レヴォダ101B、浙江海正生物材料股有限公司製
天然ゴム
粘着付与性樹脂1:ロジン;精製ロジン、荒川化学工業株式会社製
粘着付与性樹脂2:テルペン;YSレジンPX1250、ヤスハラケミカル株式会社製
ロジンエステル:エステルガム;AA−G、荒川化学工業株式会社製
酸化防止剤:アデカスタブAO−40、株式会社ADEKA製
紫外線吸収剤:アデカスタブLA−36、株式会社ADEKA製
尚、表1に示す配合量は基材層に関しては、基材層構成材料100質量%における配合量(質量%)を示し、粘着層に関しては、天然ゴム100質量部に対する配合量(質量部)を示している。
【0053】
上述のとおり得た各実施例
、参考例および比較例について、以下のとおり評価した。評価結果は、表1に示す。
【0054】
[生分解性評価]
各実施例および比較例の粘着フィルムを5×5cmに裁断して試験片を作成し、生分解性燻蒸用フィルム(アキレス株式会社製、ビオフレックス)に貼り付けて試験体を作成した。上記試験体を屋外に放置し、6ヶ月間経過後に試験体の状態を確認し、以下の基準で評価した。
○・・・試験体の形状が保たれておらず、ボロボロに破断していた。
△・・・試験体の形状は保たれているが、引っ張ると上記試験体に貼りつけられた試験片が容易に破断した。
×・・・試験体の形状は保たれており、引っ張っても上記試験体に貼りつけられた試験片が破断しなかった。
【0055】
[粘着性評価]
JIS Z 0237(2009)に記載される方法に準じて以下のとおり、各実施例および比較例の粘着フィルムの粘着性を測定し評価した。即ち、各実施例および比較例の粘着フィルムを幅20mm、長さ250mmに裁断して試験片を作成した。そして1.1mm厚のSUS304鋼板を両面テープで貼り付けて裏打ちした生分解性燻蒸用フィルム(アキレス株式会社製、ビオフレックス)に、上記試験片を貼り付けて、2kgローラーを1往復させて圧着し、40℃の環境で3日間保管した。その後、引張速度300mm/分で、180度折り返し方向に試験片を引き剥がし、これに要した力を測定した。測定値を以下の基準で評価し、粘着性評価とした。
◎・・・1.8N/cm以上
○・・・1.0N/cm以上1.8N/cm未満
×・・・1.0N/cm未満
【0056】
[ガスバリヤ性評価]
一側面に通気穴を設けた箱型の容器2個(ガス投入槽およびガス透過槽)を準備した。それぞれの容器に設けられた穴同士を対向させ、穴と穴との間に粘着フィルムを挟んだ状態で2個の容器を連結した。一方の容器(ガス投入槽)にMITCガスを投入し、その状態で24時間放置した後、両方の容器(ガス投入槽およびガス透過槽)の内部のMITCガス濃度をGC−FIDで測定し、上記粘着フィルムにおけるMITCガスの透過度を下式より求めた。
【数2】
【0057】
表1に示すとおり、実施例はいずれも、生分解性、粘着性、およびガスバリヤ性において良好であることが確認された。
生分解性に関し、天然ゴム100質量部に対しロジンエステルが10質量部を超えて配合された粘着層を備える実施例7は、他の実施例より評価がやや低かった。
粘着性に関し、天然ゴム、粘着付与性樹脂1(精製ロジン)およびロジンエステルが配合された粘着層を備える実施例1〜7、10〜12において、特に優れた評価が示された。
ガスバリヤ性に関し、基材層が脂肪族芳香族ポリエステル(PBAT)と、脂肪族芳香族ポリエステル以外の脂肪族ポリエステル(PBS)とから構成された実施例1〜9、12において高い評価が示された。
また各実施例について手で触感を確認したところ、ポリ乳酸が配合された実施例12はコシがあり、相対的に他の実施例は柔らかかった。
一方、粘着付与性樹脂が配合されなかった比較例1は、粘着性評価が不良であった。また粘着付与性樹脂が配合されず、ロジンエステルが多量に配合された比較例2は、粘着性評価は高かったものの、生分解性評価が不良であった。
【0058】
【表1】
【0059】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)生分解性の基材と、
前記基材の少なくとも片面に設けられた粘着層と、を備え、
前記粘着層が、天然ゴムまたは合成ポリイソプレンと、生分解性の粘着付与性樹脂とを含み、
前記天然ゴムまたは合成ポリイソプレン100質量部に対し、前記生分解性の粘着付与性樹脂が10質量部以上200質量部以下の範囲で配合されていることを特徴とする生分解性粘着フィルム。
(2)前記天然ゴムまたは合成ポリイソプレン100質量部に対し、ロジンエステルが1質量部以上10質量部以下の範囲で含まれている上記(1)に記載の生分解性粘着フィルム。
(3)前記粘着付与性樹脂が、ロジンである上記(1)または(2)に記載の生分解性粘着フィルム。
(4)前記基材が、脂肪族芳香族ポリエステルと、前記脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルと、を含む上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の生分解性粘着フィルム。
(5)前記脂肪族芳香族ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含み、
前記脂肪族芳香族以外の脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリエチレンサクシネート(PES)を含む上記(4)に記載の生分解性粘着フィルム。
(6)メチルイソチオシアネートガスの透過度が0.8以下である上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の生分解性粘着フィルム。
(7)メチルイソチオシアネートガスの透過度が0.8以下である生分解性シートの補修用である上記(6)に記載の生分解性粘着フィルム。