特許第6960250号(P6960250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6960250-建設現場用動作補助装置 図000002
  • 特許6960250-建設現場用動作補助装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960250
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】建設現場用動作補助装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20211025BHJP
   A62B 35/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   E04G21/32 D
   A62B35/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-109009(P2017-109009)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-204244(P2018-204244A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩章
(72)【発明者】
【氏名】石井 喬之
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−148488(JP,A)
【文献】 特開2004−057233(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/093038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員に装着される装着部と、
前記装着部に固定された屈曲可能なフレームと、
屈曲した前記フレームに伸張力を付与する動作補助手段と、
前記装着部に一端が固定された命綱と、
前記命綱の他端に固定されたフックと、を備える建設現場用動作補助装置であって、
前記フレームが、上フレームと、前記上フレームに対して傾斜可能な下フレームと、を備えており、
前記動作補助手段は、前記上フレームと前記下フレームとに跨って配設されていることを特徴とする、建設現場用動作補助装置。
【請求項2】
前記フレームが、前記作業員の背中または腰に添設され
前記下フレームが、前記作業員の腿に添設されることを特徴とする、請求項1に記載の建設現場用動作補助装置。
【請求項3】
前記フレームが、前記装着部から脱着可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の建設現場用動作補助装置。
【請求項4】
前記フレームに回数計が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の建設現場用動作補助装置。
【請求項5】
前記装着部が、前記作業員の腰に装着される胴ベルトを有しており、
前記命綱の一端は、前記胴ベルトに固定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の建設現場用動作補助装置。
【請求項6】
前記装着部が、前記作業員の肩に装着される肩掛けベルトを有しており、
前記命綱の一端は、前記作業員の背面において、前記肩掛けベルトに固定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の建設現場用動作補助装置。
【請求項7】
前記上フレームは、前記肩掛けベルトに固定されていることを特徴とする、請求項6に記載の建設現場用動作補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場用動作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、建設機械の改良やロボットの開発等に伴い、各種機械を利用した機械施工が増加しつつあるものの、依然として人力による作業が多数含まれている。人力による作業では、作業員に肉体的な負担がかかるとともに、高所作業を伴う場合がある。作業時の肉体的な負担は、動作補助装置(例えば、特許文献1参照)を使用することで、軽減することができる。また、工事現場において高所作業を行う場合には、安全帯(例えば、特許文献2参照)の着用が義務付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−055793号公報
【特許文献2】特開2004−057233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動作補助装置と安全帯とを同時に装着すると、重装感があり作業員を圧迫する。また、複数の装備(動作補助装置、安全帯、工具ベルト等)を装着するには手間がかかるとともに、一部の装備を装着し忘れるミスなどが生じるおそれがある。
このような観点から、本発明は、作業員の肉体的な負担を軽減し、かつ、高所作業時の安全性を確保することを可能とした建設現場用動作補助装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の建設現場用動作補助装置は、作業員に装着される装着部と、前記装着部に固定された屈曲可能なフレームと、屈曲した前記フレームに伸張力を付与する動作補助手段と、前記装着部に一端が固定された命綱と、前記命綱の他端に固定されたフックとを備えるものであって、前記フレームが、上フレームと、前記上フレームに対して傾斜可能な下フレームとを備えており、前記動作補助手段は、前記上フレームと前記下フレームとに跨って配設されていることを特徴とする。
かかる建設現場用動作補助装置によれば、動作補助手段が設けられたフレームが動作補助装置として機能するため、これを装着した作業員の建設作業中の肉体的な負担を軽減することができる。また、当該建設現場用動作補助装置は、命綱を有しているため、高所作業時の安全帯としても機能する。すなわち、本実施形態の建設現場用動作補助装置を装着することで、安全帯と動作補助装置とが同時に装着される。そのため、作業員に対する重装感を軽減することができるとともに、装着時の手間を軽減することができる。なお、動作補助手段としては、例えば、人工筋肉、電動モータ、ばね等がある。また、命綱には、ロープやストラップ等が使用可能である。
【0006】
前記フレームが、前記作業員の背中または腰に添設され、前記下フレームが、前記作業員の腿に添設されていれば、腰等の屈伸運動が補助される。その結果、重量物の持ち運び時等の負担を軽減することができる。
また、前記フレームが、前記装着部から脱着可能であれば、現場内の見回り等、動作補助装置が不要な際の軽量化が可能である。
また、前記フレームに回数計が設けられていれば、作業員の補助の回数を把握することができ、作業員の労務管理に利用することができる。
【0007】
なお、前記装着部が、前記作業員の腰に装着される胴ベルトを有している場合には、前記命綱の一端は前記胴ベルトに固定すればよい。また、前記装着部が、前記作業員の肩に装着される肩掛けベルト(いわゆるハーネス型)を有している場合には、前記命綱の一端は前記作業員の背面において前記肩掛けベルトに固定すればよい。また、ハーネス型の装着部を使用すれば、万が一作業員が落下した場合であっても、衝撃が分散緩和されるため、作業員の負担を軽減することができる。さらに、前記装着部が、前記作業員の肩に装着される肩掛けベルトを有している場合には、前記上フレームを前記肩掛けベルトに固定してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設現場用動作補助装置によれば、作業員の肉体的な負担を軽減し、かつ、高所作業時の安全性の確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る建設現場用動作補助装置の概要を示す斜視図である。
図2図1の建設現場容易動作補助装置の動作を模式的に示す側面図であって、(a)は通常時、(b)は屈曲時である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、建設現場における作業員の肉体的な負担を軽減するための建設現場用動作補助装置1について説明する。本実施形態の建設現場用動作補助装置1は、図1に示すように、装着部2と、フレーム3と、動作補助手段4(図2参照)と、命綱5と、フック6とを備えている。
装着部2は、作業員の腰付近に装着される胴ベルト21と、作業員の肩に装着される肩掛けベルト22と、作業員の腿に装着される腿ベルト23とを備えている。胴ベルト21、肩掛けベルト22および腿ベルト23は、互いに連結されている。なお、装着部2は、胴ベルト21、肩掛けベルト22および腿ベルト23の全てを備えている必要はない。例えば、胴ベルト21のみであってもよいし、肩掛けベルト22と腿ベルト23のみを備えてものであってもよい。また、腿ベルト23は省略してもよい。
【0011】
本実施形態では、作業員の背面において、肩掛けベルト22に命綱5の一端が固定されている。この命綱5の他端には、フック6が固定されている。すなわち、本実施形態の装着部2、命綱5およびフック6は、いわゆるハーネス型の安全帯を構成している。
なお、命綱5の固定個所は限定されるものではなく、例えば、胴ベルト21に固定してもよい。命綱5を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、ロープやストラップを使用すればよい。また、命綱5は、伸縮可能な材質であってもよいし、巻き取り式であってもよい。さらに、建設現場用動作補助装置1には、複数本(例えば2本)の命綱5が固定されていてもよい(いわゆるダブルランヤード式安全帯)。
また、フック6には、外れ止め装置を備えたものを使用する。
【0012】
胴ベルト21の左右から延びる肩掛けベルト22は、作業員の背中部分において交差し、作業員の肩にかけまわされて、作業員の前面において胴ベルト21に至る。肩掛けベルト22の交差部分には、命綱5を固定するための治具(例えばD環等)が固定されている。命綱5の一端は、当該治具に取り付けられている。なお、肩掛けベルト22の構成(形状等)は限定されるものではなく、必ずしも交差している必要はない。
本実施形態の腿ベルト23は、肩掛けベルト22の延長線上に形成されていて、作業員の内股部に掛けまわされる輪を形成している。すなわち、本実施形態の肩掛けベルト22および腿ベルト23は、1本のベルト(ストラップ)により形成されている。なお、腿ベルト23の構成(形状等)は限定されるものではない。また、肩掛けベルト22および腿ベルト23は、必ずしも1本のベルトにより形成する必要はない。
【0013】
フレーム3は、装着部2に固定されており、上フレーム31と一対の下フレーム32とを備えていている。
本実施形態の上フレーム31は、作業員の腰に添設される。上フレーム31は、胴ベルト21に固定されている。なお、上フレーム31の形状は限定されるものではない。
下フレーム32は、それぞれ作業員の腿に添設される。下フレーム32の上端部は、上フレーム31の下端部に回動可能に連結されている。すなわち、下フレーム32は、上フレーム31に対して傾斜可能である。また、本実施形態の下フレーム32の下端部(上フレーム31との連結部と反対側の端部)には、腿当て33が形成されている。腿当て33は、作業員の腿の前部分に添設される板材であって、腿に係止が可能となるように湾曲している。なお、腿当て33は必要に応じて形成すればよく、例えば、下フレーム32をベルト等により作業員の腿や膝に固定する場合には、省略してもよい。
【0014】
動作補助手段4は、上フレーム31と下フレーム32とに跨って配設されていて、屈曲したフレーム3に伸張力を付与する(図2(a)および(b)参照)。本実施形態の動作補助手段4は、いわゆる人工筋肉であって、フレーム3に内装されている。なお、動作補助手段4は、ばねや電動モータであってもよい。また、動作補助手段4は、圧縮空気や油圧等の力によって、フレーム3に伸張力を付与するものであってもよい。
【0015】
本実施形態では、上フレーム31と下フレーム32との接合部に回数計(カウンター)7が設けられている。回数計7は、フレーム3が屈曲した回数を計測する。なお、回数計7は必要に応じて設置すればよい。回数計7が、通信機能を有していれば、作業員の労務管理をリアルタイムで実施することができる。さらに、建設現場用動作補助装置1が、通話手段、位置検知手段を備えていれば、事務所において、作業員の労務管理をより効果的に行うことができる。
【0016】
以上、本実施形態の建設現場用動作補助装置1によれば、動作補助手段4が設けられたフレーム3が動作補助装置として機能するため、これを装着した作業員の建設作業中の肉体的な負担を軽減することができる。すなわち、フレーム3および動作補助手段4によって、作業員が荷物を持ち上げる際に上半身を引き上げる力を補助したり、荷物などを持つ作業員の腰部分を支持される。本実施形態のフレーム3は、作業員が荷物を持ち上げる際などにおいて、前にかがむことで、フレーム3が屈曲する(図2(b)参照)。フレーム3が屈曲すると、動作補助手段4によってフレーム3に伸張力が付与される。フレーム3に伸張力が付与されると、下フレーム32の腿当て33から反力をとって、上フレーム31を引き上げる力が作用する。上フレーム31を引き上げる力が作用すると、胴ベルト21を介して作業員の上半身を引き上げる力が作用するため(図2(b)および(a)参照)、作業員は、少ない力で身体を持ち上げることが可能となる。また、作業員がしゃがむことでフレーム3が屈曲すると、動作補助手段4によってフレーム3に伸張力が付与される(図2(b)参照)。フレーム3に伸張力が付与されると、胴ベルト21を介して作業員の腰に固定された上フレーム31から反力を取って、下フレーム32を介して作業員の腿が押される(図2(b)および(a)参照)。そのため、作業員は、少ない力で立ち上がることができる。
【0017】
また、建設現場用動作補助装置1は、フック6が固定された命綱5を有しているため、高所作業時の安全帯としても機能する。また、装着部2は、ハーネス状に形成されているため、作業員が足場等から落下した場合であっても、吊り下げられた際に生じる衝撃が分散緩和されるため、作業員の負担が軽減される。また、命綱5が装着部2に固定されているため、落下時に動作補助装置(フレーム3および動作補助手段4)に負担がかかることがなく、フレーム3および動作補助手段4が破損する可能性も低い。
【0018】
フレーム3は、装着部2に固定されているため、装着部2を装着するのみで、従来の安全帯と動作補助装置とが同時に装着された状態となる。そのため、安全帯と動作補助装置とを個別に装着する場合に比べて、装着に要する手間を軽減することができ、また、作業員に対する重装感を軽減することができる。
建設現場用動作補助装置1が、回数計7、通話手段および位置検知手段を有していれば、作業員の労務管理を簡易に行うことができ、ひいては、作業員の健康状態の管理に役立てることもできる。すなわち、回数計7による計測値が一定の数値に達したら、作業員に休憩を取らせる指示を送ることが可能である。また、各作業員の位置情報を把握することで、作業員の負担が大きい工区と、負担の少ない工区を把握することができ、適正適所に人員を配置することが可能となる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
なお、フレーム3は、例えばワンタッチバックル等によって、装着部2(胴ベルト21等)に着脱可能に取り付けられていてもよい。フレーム3が装着部2に対して着脱可能であれば、現場パトロール等、作業を伴わない場合において、フレーム3を取り外すことで、装着部2を軽量な安全帯として使用することができる。
前記実施形態では、前記実施形態では、上フレーム31が作業員の腰に添設される場合について説明したが、上フレーム31は作業員の背中に添設されていてもよい。この場合には、上フレーム31を肩掛けベルト22に固定するのが望ましい。
また、前記実施形態では、フレーム3によって作業員の腰部分の屈伸運動を補助する場合について説明したが、フレーム3の構成はこれに限定されるものではない。例えば、フレーム3によって作業員の膝や膝の屈伸運動を補助する機能を備えていてもよい。
前記実施形態では、装着部2がハーネス型の場合について説明したが、装着部2は胴ベルト21のみで構成されていてもよい。この場合には、命綱5は胴ベルト21に固定する。
【符号の説明】
【0020】
1 建設現場用動作補助装置
2 装着部
21 胴ベルト
22 肩ベルト
23 腿ベルト
3 フレーム
31 上フレーム
32 下フレーム
33 腿当て
4 動作補助手段
5 命綱
6 フック
7 回数計
図1
図2