(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960254
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】小型非接触ICカード
(51)【国際特許分類】
B42D 25/25 20140101AFI20211025BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20211025BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B42D25/25
B42D25/305 100
G06K19/077 228
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-122194(P2017-122194)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-5957(P2019-5957A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 圭太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知哉
【審査官】
金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−357368(JP,A)
【文献】
特開2012−247844(JP,A)
【文献】
特開2001−319204(JP,A)
【文献】
特開平10−228525(JP,A)
【文献】
実開昭62−003766(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02
25/00−25/485
G06K 19/00−19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとアンテナコイルが長方形をなす絶縁基板に内蔵され、券売機で取り扱い可能な切符サイズの小型非接触ICカードであって、
前記アンテナコイルは、前記絶縁基板の外縁部に沿ってループ状に設けられ、
前記絶縁基板の前記アンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの角部に偏った位置に、円形でない形状の開口穴が形成され、
前記開口穴の縁部の少なくとも一部には、一方の面から開口穴内側へ向かって下り傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする小型非接触ICカード。
【請求項2】
ICチップとアンテナコイルが長方形をなす絶縁基板に内蔵され、券売機で取り扱い可能な切符サイズの小型非接触ICカードであって、
前記アンテナコイルは、前記絶縁基板の外縁部に沿ってループ状に設けられ、
前記絶縁基板の前記アンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの短辺側に偏った位置に、内部を横断するいずれの直線に対しても非対称な形状の開口穴が形成され、
前記開口穴の縁部の少なくとも一部には、一方の面から開口穴内側へ向かって下り傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする小型非接触ICカード。
【請求項3】
ICチップとアンテナコイルが長方形をなす絶縁基板に内蔵され、券売機で取り扱い可能な切符サイズの小型非接触ICカードであって、
前記アンテナコイルは、前記絶縁基板の外縁部に沿ってループ状に設けられ、
前記絶縁基板の前記アンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの角部または短辺側に偏った位置に、内部を横断するいずれかの1本の直線に対して対称な形状の開口穴が、対称中心の前記直線が前記絶縁基板の長手方向中心線の方向と一致しないようにして形成され、
前記開口穴の縁部の少なくとも一部には、一方の面から開口穴内側へ向かって下り傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする小型非接触ICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぼ切符サイズ(A型もしくはB型切符)の外形寸法を有する小型非接触ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道やバスなどの交通機関においては、改札業務を省力化するため、非接触ICカードの情報を読み取る通信機能を設けた自動改札機(改札ゲート)が普及している。従来の通信機能を有する自動改札機による改札に使用されている非接触ICカード(改札ゲート用カード)は、ISO/JIS規格で定められたクレジットカード等のICカードと同じ外形寸法(約54mm×85.6mm)を有している。
【0003】
ISO/JIS規格に準拠した外形寸法を有する上記従来の改札ゲート用非接触ICカードは、サイズが大きいため持ち歩きや取り扱いが面倒であり、利用者の多くは専用のカード入れや財布等に収納し、カード入れや財布等を自動改札機にかざすことで改札を行なっている。
【0004】
非接触ICカードを用いた自動改札機の利便性向上には、カードの小型が有効である。しかしながら、単純に非接触ICカードを小型化するだけでは、アンテナコイルの径が小さくなり充分な通信強度が得られなくなるとともに、カードの表面にサーマルプリンタによる印字処理を行いたい場合に、既存のサーマルプリンタを使用することができない。
従来提案されているICカードの小型化に関する発明としては、例えば、特許文献1や2に記載されているものがある。
【0005】
このうち、特許文献1に記載されている発明は、小型ICカードと該ICカードよりも大きなサイズを有しアンテナコイルが形成されたカード状のアダプタとを用意し、小型ICカードをアダプタに装着することで、カードリーダと非接触でデータのやり取りを行えるようにするというものである。
【0006】
また、特許文献2に記載されている発明は、ISO/JIS規格に準拠した外形寸法を有するカード本体の一部に切り取り可能な分割片を設けるとともに、該分割片にICカードの機能を設けることで、既存のプリンタを使用して印字を行えるようにするというものである。なお、特許文献2には、分割片としての小型ICカードに紐やチェーンを通すことができる円形の穴を設けることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−342732号公報
【特許文献2】特開2004−152207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在普及している改札ゲート用の非接触ICカードは、プリペード方式であり、券売機において入金(チャージ)を行えるようにするため、券売機に挿入する際に方向を合わせる必要がある。また、改札ゲート用の非接触ICカードには、例えば定期券としての用途もあり、その場合にはカードの表面に印字を行うため、表裏を区別する必要がある。しかるに、非接触ICカードを小型化した場合、表面に印字を行うスペースを設けると方向性を示す矢印等の記号を記載することが困難になる。
【0009】
また、券売機の側にカードの向きや表裏を区別する機能を設けることも考えられるが、その場合、既設の券売機の改造が必要となり、コストアップを招くという課題がある。
さらに、改札ゲート用の非接触ICカードにおいては、カードが自動改札機のカード情報読み取り部の表面から規格で定められた距離まで離れていても情報を読み取ることができる性能を有する必要がある。しかも、改札ゲート用の非接触ICカードに関しては、カードを小型化しても既設の自動改札機のカードリーダを取り替えたり改造したりすることなく、情報を読み取ることができるようにしたいという要求がある。
【0010】
特許文献2に記載されている小型ICカードにおいては、カードに紐やチェーンを通すことができる穴が設けられているため、利用者はこの穴を目安にして容易に方向性を識別することができる。しかし、特許文献2の小型ICカードは穴の形状が円形でありしかもカードの中心線上に形成されているため、カードの表裏が無地の場合には、利用者は表裏を区別して識別することができないとともに、穴を利用してリストバンド等に結合してウェアラブルなデバイスとして使用する場合に、カードが回転し易いという問題点がある。そもそも特許文献2には、上述したような改札ゲート用の非接触ICカードに要求される課題について記載も示唆もされていない。
【0011】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、形成する穴の形状や位置を工夫することで、カードの方向性および表裏の識別を容易に行なえる小型非接触ICカードを提供することにある。
本発明の他の目的は、形成するアンテナコイルおよび穴の位置を工夫することで、必要な非接触通信性能を確保しかつ回転を防止しつつ、リストバンド等に結合してウェアラブルなデバイスとして使用することができる小型非接触ICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、この発明は、
ICチップとアンテナコイルが例えば厚さ0.84mm以下の長方形をなす絶縁基板に内蔵され、券売機で取り扱い可能な切符サイズの小型非接触ICカードにおいて、
前記アンテナコイルは、前記絶縁基板の外縁部に沿ってループ状に設けられ、
前記絶縁基板の前記アンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの角部に偏った位置に、円形でない形状の開口穴が形成されているように構成したものである。
【0013】
上記のような構成を有する小型非接触ICカードによれば、絶縁基板のアンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの角部に偏った位置に開口穴が形成されているので、所望の通信距離を確保しつつカードの方向性および表裏の識別を容易に行なえるとともに、開口穴を利用してリストバンドやストラップを付けることができ、利用者がICカード携帯して持ち運びし易くすることができる。また、カードの中心からいずれかの角部に偏った位置に円形でない開口穴が形成されているので、カードをリストバンド等に装着した際に、回転するのを防止することができ、カードが回転することで活動の邪魔になったり外れ易くなったりするのを回避することができる。さらに、カードの厚みが0.84mm以下であるため、矩形板状のホルダもしくはアダプタに収納することで、既設の券売機で情報の読み出し書き込みやカード表面への印字を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、ICチップとアンテナコイルが例えば厚さ0.84mm以下の長方形をなす絶縁基板に内蔵され、券売機で取り扱い可能な切符サイズの小型非接触ICカードにおいて、
前記アンテナコイルは、前記絶縁基板の外縁部に沿ってループ状に設けられ、
前記絶縁基板の前記アンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの短辺側に偏った位置に、内部を横断するいずれの直線に対しても非対称な形状の開口穴が形成さているように構成しても良い。
【0015】
あるいは、ICチップとアンテナコイルが例えば厚さ0.84mm以下の長方形をなす絶縁基板に内蔵され、券売機で取り扱い可能な切符サイズの小型非接触ICカードにおいて、
前記アンテナコイルは、前記絶縁基板の外縁部に沿ってループ状に設けられ、
前記絶縁基板の前記アンテナコイルのループ内側であって、カードの中心からいずれかの角部または短辺側に偏った位置に、内部を横断するいずれかの1本の直線に対して対称な形状の開口穴が、対称中心の前記直線が前記絶縁基板の長手方向中心線の方向と一致しないように形成されていても良い。
【0016】
上記のような構成を有する小型非接触ICカードによれば、所望の通信距離を確保しつつカードの方向性および表裏の識別を容易に行なえるとともに、利用者がICカードを携帯して持ち歩きし易くすることができる。また、ICカードをリストバンド等に装着した際に、回転するのを防止することができ、カードが回転することで活動の邪魔になったり外れ易くなったりするのを回避することができる。さらに、既設の券売機で情報の読み出し書き込みやカード表面への印字を行うことができる。
【0017】
また、望ましくは、前記開口穴の縁部の少なくとも一部には、一方の面から開口穴内側へ向かって下り傾斜する傾斜面が形成されているように構成する。
かかる構成によれば、リストバンド等にカードの開口穴と対応する形状の係合凸部を設けてリストバンド等に装着できるようにした際に、装着したカードが外れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の小型非接触ICカードによれば、内部を横断するいずれかの1本の直線に対して対称あるいはいずれの直線に対しても非対称な形状の開口穴が形成されているので、開口穴の形状によってカードの方向性および表裏の識別を容易に行なうことができる。また、アンテナコイルのループ内側に、内部を横断するいずれかの1本の直線に対して対称あるいはいずれの直線に対しても非対称な形状の開口穴が形成されているので、必要な非接触通信性能を確保しかつ回転を防止しつつ、リストバンド等に結合してウェアラブルなデバイスとして使用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)は本発明の一実施形態に係る小型非接触ICカードの平面図、(B)はその小型非接触ICカードの内部構成を示す説明図である。
【
図2】実施形態の小型非接触ICカードの一利用形態を示すもので、(A)はリストバンドの例を示す斜視図、(B)はリストバンドに小型非接触ICカードを装着した状態を示す斜視図、(C)は開口穴の断面形状の一例を示す断面側面図である。
【
図3】実施形態の小型非接触ICカードの第3の利用形態を示すもので、(A)はホルダ(アダプタ)の一例を示す斜視図、(B)はホルダに実施形態の小型非接触ICカードを収納した状態を示すB−B線断面側面図である。
【
図4】実施形態の小型非接触ICカードの第1の変形例を示す平面図である。
【
図5】実施形態の小型非接触ICカードの第2の変形例を示す平面図である。
【
図6】実施形態の小型非接触ICカードの第3の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る小型非接触ICカードの実施形態について詳細に説明する。
図1(A)は本発明の一実施形態に係る小型非接触ICカードの平面図、
図1(B)はその小型非接触ICカード(以下、単にICカードと称する)の内部構成を示す説明図である。
【0021】
図1(A)に示すように、本発明の一実施形態のICカード10は、カード本体11の全体形状が、切符サイズ(A型切符)の外形寸法である長辺30mm、短辺57.5mmの長方形より若干小さな長方形をなし、厚み0.8mmを有している。カード本体11のサイズは、B型切符の外形寸法である長辺25mm、短辺57.5mmの長方形より若干小さな長方形であっても良い。カード本体11の基材としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)やポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン等の合成樹脂またはこれらの積層体などが用いられる。
【0022】
また、本実施形態のICカード10のカード本体11には、4隅のうちの一つ(図では右上)の角部に、三角形状の開口穴12が形成されている。三角形は、2等辺三角形でも良いし、上記開口穴12の内部を横断するいずれかの直線に対しても非対称な三角形であっても良い。また、本実施形態では、上記開口穴12はカード本体11の一つの角部に近い部位に形成されているが、2等辺三角形の場合には中心からいずれかの角部(短辺側)に偏った位置であればよく、非対称な三角形の場合にはアンテナコイルの内側であれば、どこであってもよい。
【0023】
さらに、一実施形態のICカード10は、
図1(B)に示すように、無線通信用のアンテナコイル13がカード本体11の周縁部に沿ってループ状に形成されているとともに、開口穴12が形成されている辺と反対側の短辺に近い部位にICチップ14が設けられ、該チップに上記アンテナコイル13が接続される。このような構造のICカード10は、例えば薄板状の樹脂基材にラミネートした金属箔をフォトエッチングやレジスト印刷後のエッチングによりコイルのパターンを形成し、ICチップ14を実装した後、保護用の被覆層を設けることにより形成することができる。
【0024】
上記アンテナコイル13を構成する導電体パターンは、例えばカード本体11の外縁から2mm内側に、約2mmの幅を有して形成されている。そして、上記ループ状のアンテナコイル13の内側に、上記開口穴12が形成されている。なお、アンテナコイル13およびICチップ14は、例えばカードリーダから送信される13.56MHzのような周波数の搬送波の電磁誘導により電力供給及びデータ伝送が行えるように構成される。
上記のように、カード本体11の外縁に沿ってアンテナコイル13を設けることによって、カードの大きさが切符サイズであっても、規格で定められた距離までICカード10内のICチップ14へ電力を供給して記憶されている情報を読み取るとともに、ICチップ14に情報を記録できることをカードの試作によって確認した。
【0025】
本実施形態のICカード10は、例えば券売機に設けられているカードリーダとの関係で、ICチップ14が設けられている辺と反対側が挿入方向となる。つまり、開口穴12が形成されている側が挿入方向となる。また、本実施形態のICカード10は、上記のように挿入方向が特定されているとともにカード本体11の角部に三角形状の開口穴12が形成されているため、穴の位置からカードの表裏を識別できることとなる。
【0026】
次に、本実施形態のICカード10の利用形態について説明する。
第1の利用形態は、カード本体11の開口穴12にストラップの紐を通して利用者が携帯して持ち歩き易くするというものである。ストラップを使用した利用形態は一般的であるので、図示は省略する。
【0027】
第2の利用形態は、
図2(A)に示すように、リング状のリストバンド20の表面の一部に平坦部21を設けるとともに、平坦部21の一部にカード本体11の開口穴12に対応する形状を有する係合凸部22を形成し、この係合凸部22に開口穴12を係合させることで、
図2(B)に示すように、リストバンド20の表面にICカード10を装着して携帯し易くするというものである。
【0028】
リストバンド20は非磁性体であるシリコン樹脂等で形成し、係合凸部22はゴム(例えばシリコンコゴム)のような弾性材料で形成すると良い。
第2の利用形態によれば、手の甲を改札機のカード読み取り部に向けるだけで、カードデータの読み取りによる改札が行える。また、リストバンド20の表面にICカード10を装着する際に、開口穴12および係合凸部22の形状が三角形であるため、カードが回転するのを防止することができる。さらに、係合凸部22が弾性材料で形成されているため、開口穴12の外形よりも若干大きな形状とすることで、係合凸部22に開口穴12を係合させた際に変形し、リストバンド20表面からのカードが脱落しにくくすることができる。
【0029】
なお、
図2(C)に示すように、リストバンド20の係合凸部22の周面に、表面から基部に行くほど凸部中心側へ向かって反り傾斜する傾斜面を形成するとともに、この傾斜面に対応して、ICカード10の開口穴12の端面に、表面から開口内側へ向かって下り傾斜する傾斜面を形成するようにしてもよい。これにより、係合凸部22と開口穴12との係合が確実となり、リストバンド20表面からのカードの脱落を防止することができる。傾斜面は、開口穴12の全周でなく一箇所または数箇所に形成されていてもよい。
【0030】
第3の利用形態は、
図3(A)に示すように、ICカード10の外形と同様な形状を有する凹部31が形成された板状のホルダ(アダプタ)30を用意し、凹部31内にICカード10を収納して、券売機等で取り扱えるようにするというものである。ホルダ30は、現在主流である、ISO/JIS規格で定められたカードの外形寸法(約54mm×85.6mm)を有するスイカカードやパスモカードのような改札ゲート用カードと同じサイズであり、厚さは改札ゲート用カードと同じ厚さ(0.84mm)とする。凹部31の深さは、ICカード10の厚み0.8mm以下とする。これにより、凹部31の底壁の厚みとして0.04mmが確保される。
【0031】
また、ホルダ30の凹部31の底壁には、ICカード10の開口穴12と同一形状を有する係合凸部32が開口穴12と対応する位置に形成されており、この係合凸部32に開口穴12を係合させることで、
図3(B)に示すように、凹部31内にICカード10を収納してホルダ30と一体化することができるように構成されている。ホルダ30の基材には、カード本体11の基材と同じ材料を使用することができる。
【0032】
さらに、上記凹部31の外周縁の一部(図では右側の辺)には、凹部31内に収納されたICカード10を容易に取り外せるようにするための切欠き31aが形成されている。また、係合凸部32は、ゴム(例えばシリコンコゴム)のような弾性材料で形成すると良い。係合凸部32を、開口穴12の外形よりも若干大きな形状とすることで、ホルダ30からのカードの脱落を防止することができる。
【0033】
なお、
図2(C)と同様に、ホルダ30の凹部31内の係合凸部22の周面と開口穴12の端面に、それぞれ対応する傾斜面を形成するようにしてもよい。
上記のようなホルダ30を使用することで、券売機に投入してチャージを行なったり、定期券の場合には券売機内の既設のプリンタでカード表面に印字を行なったりすることができる。また、ホルダ30を定期入れの代替物として用いて、ICカードをホルダに収納した状態で持ち歩くことも可能である。
【0034】
次に、上記実施形態のICカード10の変形例について
図4〜
図5を用いて説明する。
図4に示す変形例は、ICカード10のカード本体11の角部に形成されている非対称の三角形状の開口穴12の代わりに、線対称の三角形や三日月形、長方形、線対称の台形、非対称の台形、かまぼこ形等の形状(円形を除く)の開口穴12を形成したものである。
図4に示すように、開口穴12がカード本体11の角部に1つだけ形成されていれば、穴の形状がどのような形状であってもカードの方向性および表裏を識別することができる。円形を除くのは、
図2に示すようなリストバンドに装着した際にカードが回転してしまうのを防止するためである。
【0035】
図5に示す変形例は、ICカード10のカード本体11の短辺に近い側であって中心線上に、非対称の形状の開口穴12を形成したものである。線対称の三角形や三日月形、長方形、台形、かまぼこ形等であっても、
図6に示すように、線対称形の開口穴12の対称中心線がカードの長手方向中心線と一致しないように形成すればよい。
開口穴12の形状が
図5や
図6に示すような形状であれば、カードの方向性および表裏を識別することができる。また、開口穴12の形成位置が
図5や
図6に示すような位置であれば、ストラップの紐を通すことができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、カード本体11の角部または短辺に近い部位に開口穴12を形成したものを示したが、開口穴12の形状が
図5に示すような、開口穴12の内部を通るいずれの直線に対しても非対称の形状であれば、カードのどの位置(カードの縁から離れた位置)に形成したとしても、ストラップの紐を通すために利用するのは難しいものの、カードの方向性および表裏は識別することができる。
【0037】
また、ICカードの開口穴12が係合するリストバンドやホルダの係合凸部(22,32)は、開口穴12と同一の形状に限定されず、開口穴12の端面の複数の箇所に接する複数の微小突起であっても良い。
さらに、上記実施形態では、本発明を、切符サイズの小型非接触ICカードに適用した場合について説明したが、本発明は小型非接触ICカードに限定されず、通常サイズの非接触ICカードはもちろんのこと、接触式のICカードや、ICチップを内蔵しない磁気カードなどにも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 小型非接触ICカード
11 カード本体
12 開口穴
13 アンテナコイル
14 ICチップ
20 リストバンド
22 係合凸部
30 ホルダ
31 凹部
32 係合凸部