(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱交換コイルは、前記給気路において前記デシカントロータの上流側及び下流側の双方に設けられ、それぞれ個別に制御されている、請求項1に記載のデシカント空調装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(デシカント空調機)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るデシカント空調機10は、屋外から取り入れた外気OAを屋内Rへ給気SAとして供給する給気路12と、屋内Rから引き込んだ還気RAを屋外へ排気EAとして排出する排気路14と、給気路12と排気路14に接続されたデシカントロータ20と、給気路12と排気路14に接続された全熱交換器30と、給気路12又は排気路14を流れる空気と冷媒とを熱交換させるヒートポンプ40と、を備えている。なお、本発明における「排気」とは、排気路14を流れる空気を指す。
【0022】
給気路12内においては給気ファン12Fによって空気が屋外側から屋内R側へ送られ、排気路14内においては排気ファン14Fによって空気が屋内R側から屋外側へ送られる。また、給気路12及び排気路14の最も上流側にはフィルタ16が設けられており、空気に含まれる粉塵等が除去される。
【0023】
ヒートポンプ40は、排気路14においてデシカントロータ20の上流側に設けられた再生コイル42と、給気路12に設けられた熱交換コイル44とを備えている。また、熱交換コイル44はデシカントロータ20の上流側に設けられたプレコイル44Aと、デシカントロータ20の下流側に設けられたアフターコイル44Bと、備えている。また、デシカントロータ20とアフターコイル44Bとの間には、加湿器12Hが設けられている。
【0024】
再生コイル42、熱交換コイル44(プレコイル44A、アフターコイル44B)の内部には冷媒管50が通されており、冷媒管50を流れる冷媒と、給気路12又は排気路14を流れる空気とが熱交換する。そして、この冷媒の流れを制御することで、デシカント空調機10の運転状態(大別すると、冷房運転状態と暖房運転状態)が切替えられる。ヒートポンプ40の詳細構成については後述する。
【0025】
(デシカントロータ)
デシカントロータ20は、内部に水蒸気を吸着及び放出する吸着材を備えた除湿装置であり、吸着材は給気路12と排気路14との間を移動可能に配置されている。デシカントロータ20の吸着材は、給気路12を流れる空気を除湿する場合(除湿運転時)は、給気路12を流れる空気から湿気を吸着し、給気路12から排気路14へ移動して、吸着した湿気を排気路14を流れる空気へ放出する。これにより吸着材が再生される。
【0026】
またデシカントロータ20の吸着材は、給気路12を流れる空気を加湿する場合(加湿運転時)は、排気路14を流れる空気から湿気を吸着し、排気路14から給気路12へ移動し、吸着した湿気を、給気路12を流れる空気へ放出する。これにより吸着材が再生される。
【0027】
なお、デシカントロータの吸着材としては、ゼオライト、塩化リチウム、シリカゲルなどの乾燥材や高分子吸着材を用いることができるが、本実施形態では、高温空気(100℃程度)だけでなく低温空気(40℃〜80℃程度)でも湿気を脱着できる高分子吸着材が用いられている。
【0028】
(全熱交換器)
全熱交換器30は、給気路12においてフィルタ16を通過した空気と、排気路14においてデシカントロータ20を通過した空気との間で熱(顕熱)と水分(潜熱)を交換するものである。全熱交換器30は回転型、静止型の何れの形態であってもよいが、本実施形態においては静止型とされている。
【0029】
(ヒートポンプ)
図2に示すように、ヒートポンプ40は、内部ユニット40Aと、外部ユニット40Bと、内部ユニット40Aと外部ユニット40Bとを連結する冷媒管50と、を備えている。
【0030】
内部ユニット40Aは、給気路12又は排気路14(
図1参照)の内部に設置された部分であり、再生コイル42と熱交換コイル44(プレコイル44A、アフターコイル44B)とを備えている。また、外部ユニット40Bは、建物の屋外に設置された部分であり、室外機46と圧縮機48とを備えている。
【0031】
(冷媒管)
冷媒管50は、各機器(室外機46、再生コイル42、プレコイル44A及びアフターコイル44B)と圧縮機48とを分岐接続する高圧ガス管52と、再生コイル42以外の各機器(室外機46、プレコイル44A及びアフターコイル44B)と圧縮機48とを分岐接続する低圧ガス管54と、圧縮機48以外の各機器(室外機46、再生コイル42、プレコイル44A及びアフターコイル44B)を相互に接続する液管56と、を備えている。
【0032】
換言すると、再生コイル42には高圧ガス管52及び液管56が接続され、プレコイル44Aには高圧ガス管52、低圧ガス管54及び液管56が接続され、アフターコイル44Bには高圧ガス管52、低圧ガス管54及び液管56が接続され、室外機46には高圧ガス管52、低圧ガス管54及び液管56が接続され、圧縮機48には高圧ガス管52及び低圧ガス管54が接続されている。
【0033】
(切替弁)
プレコイル44A、アフターコイル44B及び室外機46の内部には、高圧ガス管52から各機器(プレコイル44A、アフターコイル44B及び室外機46のそれぞれ)への冷媒流入量を切替え可能な切替弁62A、62B及び62Dが設けられている。
【0034】
また、プレコイル44A、アフターコイル44B及び室外機46の内部には、各機器(プレコイル44A、アフターコイル44B及び室外機46のそれぞれ)から低圧ガス管54への冷媒流出量を切替え可能な切替弁64A、64B及び64Dが設けられている。
【0035】
(膨張弁)
プレコイル44A、アフターコイル44B、再生コイル42及び室外機46の内部には、液管56から各機器(プレコイル44A、アフターコイル44B、再生コイル42及び室外機46のそれぞれ)へ流入する冷媒又は各機器から液管56へ流出する冷媒を減圧可能な膨張弁70A、70B、70C、70Dが設けられている。
【0036】
(冷房運転状態)
ヒートポンプ40は、切替弁64A、64B、64D、膨張弁70A、70B、70C、70Dを制御することで、様々な運転状態に切り替えることができるが、大別すると夏期(例えば東京における8月)又は中間期(例えば東京における5月)の冷房運転状態、冬期(例えば東京における1月)又は中間期の暖房運転状態に分けられる。
【0037】
図2、
図3に示す冷房運転状態においては、プレコイル44A及びアフターコイル44Bで構成される熱交換コイル44を蒸発器として機能させ、再生コイル42を凝縮器として機能させる。
【0038】
熱交換コイル44(プレコイル44A、アフターコイル44B)における熱の吸収量が再生コイル42における熱の放出量よりも少ない(吸熱量<放熱量)場合、ヒートポンプ40における熱収支のバランスをとる(吸熱量=放熱量とする)ために、室外機46を蒸発器として機能させ、熱の吸収量を多くする(
図2参照、以下「第1冷房運転状態」と称す)。
【0039】
逆にプレコイル44A、アフターコイル44Bにおける熱の吸収量が再生コイル42における熱の放出量よりも多い(吸熱量>放熱量)場合は、室外機46を凝縮器として機能させ、熱の放出量を多くする(
図3参照、以下「第2冷房運転状態」と称す)。
【0040】
まず、
図2、
図3に示す第1、第2冷房運転状態における「空気の温度変化」について説明する。第1、第2冷房運転状態では、液管56からプレコイル44A、アフターコイル44Bへ液体の冷媒を流入させ(矢印C2)、この冷媒を熱交換部74A、74Bにおいて蒸発させる。このとき冷媒が、給気路12(
図1参照)を流れる空気から蒸発熱を吸収することにより(空気と熱交換することにより)、空気が冷却される。
【0041】
また、高圧ガス管52から再生コイル42へ気体の冷媒を流入させ(矢印C1)、この冷媒を熱交換部72において凝縮させる。このとき、冷媒が排気路14(
図1参照)を流れる空気へ凝縮熱を放出することにより(空気と熱交換することにより)、空気が加熱される。
【0042】
このように第1、第2冷房運転状態において、空気はプレコイル44A、アフターコイル44Bで冷却され、再生コイル42で加熱される。
【0043】
次に、第1冷房運転状態におけるヒートポンプ40の「冷媒の流れ」について説明する。
図2に示すように、プレコイル44A、アフターコイル44B、室外機46を蒸発器として機能させ、再生コイル42を凝縮器として機能させる場合、切替弁62A、62B、62Dを閉じる。これにより圧縮機48で圧縮され高温高圧の気体になった冷媒は、高圧ガス管52を通って(矢印C0)、再生コイル42へ流入する(矢印C1)。
【0044】
再生コイル42へ流入した冷媒は、熱交換部72で凝縮して排気路14(
図1参照)を流れる空気と熱交換し、高温高圧の液体となって液管56を流れ、プレコイル44A、アフターコイル44B、室外機46へ分岐して流入する(それぞれ矢印C2)。このとき、再生コイル42の膨張弁70Cを全開させて、冷媒の圧力損失を低減する。
【0045】
プレコイル44A、アフターコイル44B、室外機46へ流入した冷媒は、まず膨張弁70A、70B、70Dにより減圧され低温低圧の液体になる。次に熱交換部74A、74B、76で蒸発して給気路12(
図1参照)を流れる空気及び屋外の空気と熱交換し、低温低圧の気体になる。そして切替弁64A、64B、64Dが開放された状態の低圧ガス管54を流れ(それぞれ矢印C3)、圧縮機48へ流入する(矢印C4)。
【0046】
なお、
図2において高温高圧の液体状態の冷媒を実線の矢印で示し、低温低圧の液体状態の冷媒を点線の矢印で示し、高温高圧の気体状態の冷媒を一点鎖線の矢印で示し、低温低圧の気体状態の冷媒を二点鎖線の矢印で示している。他図についても同様である。
【0047】
次に、第2冷房運転状態におけるヒートポンプ40の「冷媒の流れ」について説明する。
図3に示すように、プレコイル44A、アフターコイル44Bを蒸発器として機能させ、再生コイル42、室外機46を凝縮器として機能させる場合、切替弁62A、62B、64Dを閉じる。これにより圧縮機48で圧縮され高温高圧の気体になった冷媒は、高圧ガス管52を通って(矢印C0)、分岐して再生コイル42、室外機46へ流入する(それぞれ矢印C1)。
【0048】
再生コイル42、室外機46へ流入した冷媒は、熱交換部72、76で凝縮して排気路14(
図1参照)を流れる空気及び屋外の空気と熱交換し、高温高圧の液体となって液管56を流れ、プレコイル44A、アフターコイル44Bへ流入する(それぞれ矢印C2)。このとき、再生コイル42の膨張弁70C及び室外機46の膨張弁70Dを全開させて、冷媒の圧力損失を低減する。
【0049】
プレコイル44A、アフターコイル44Bへ流入した冷媒は、まず膨張弁70A、70Bにより減圧され低温低圧の液体になる。次に熱交換部74A、74Bで蒸発して給気路12(
図1参照)を流れる空気と熱交換し、低温低圧の気体になる。そして切替弁64A、64Bが開放された状態の低圧ガス管54を流れ(それぞれ矢印C3)、圧縮機48へ流入する(矢印C4)。
【0050】
なお、冷房運転状態としては、プレコイル44A、アフターコイル44Bの双方を蒸発器として機能させる第1冷房運転状態、第2冷房運転状態について説明したが、この他、
図4に示すように、プレコイル44Aを蒸発器として機能させ、アフターコイル44Bを凝縮器として機能させることもできる(第3冷房運転状態)。
【0051】
この場合、給気路12(
図1参照)を流れる空気をプレコイル44Aで過冷却(屋内Rへ供給する目標温度よりも低く冷却)し、空気の温度だけでなく湿度も下げる。これによりデシカントロータ20の除湿機能を補助することができる。
【0052】
このように、本発明における「熱交換コイルを蒸発器として機能させる冷房運転状態」においては、必ずしもプレコイル44A、アフターコイル44Bの双方を蒸発器として機能させる必要はなく、プレコイル44Aを蒸発器として機能させ、アフターコイル44Bを凝縮器として機能させてもよい。
【0053】
この場合、プレコイル44Aにおける吸熱量が、アフターコイル44Bにおける放熱量よりも多ければよい。すなわち、熱交換コイル44におけるプレコイル44A、アフターコイル44Bが、全体として蒸発器として機能すればよい。
【0054】
(暖房運転状態)
図5に示す暖房運転状態(第1暖房運転状態)においては、プレコイル44Aを凝縮器として機能させ、アフターコイル44B及び室外機46を蒸発器として機能させる。また、再生コイル42は運転を停止する。
【0055】
まず、第1暖房運転状態における「空気の温度変化」について説明する。第1暖房運転状態では、高圧ガス管52からプレコイル44Aへ気体の冷媒を流入させ(矢印C1)、この冷媒を熱交換部74Aにおいて凝縮させる。このとき、冷媒が給気路12(
図1参照)を流れる空気へ凝縮熱を放出することにより(空気と熱交換することにより)、空気が暖められる。
【0056】
また、液管56からアフターコイル44B、室外機46へ液体の冷媒を流入させ(矢印C2)、この冷媒を熱交換部74B、76において蒸発させる。このとき冷媒が排気路14(
図1参照)を流れる空気及び屋外の空気から蒸発熱を吸収することにより(空気と熱交換することにより)、空気が冷却される。
【0057】
このように第1暖房運転状態においては、給気路12を流れる空気は、プレコイル44Aで加熱された後、アフターコイル44Bで冷却される。これは、プレコイル44Aで十分に加熱することにより空気の飽和水蒸気圧を上げ、デシカントロータ20で吸湿しやすくするためである。
【0058】
次に、第1暖房運転状態におけるヒートポンプ40における「冷媒の流れ」について説明する。
図5に示すように、プレコイル44Aを凝縮器として機能させ、アフターコイル44B、室外機46を蒸発器として機能させ、再生コイル42の運転を停止する場合、切替弁64A、62B、62Dを閉じる。これにより圧縮機48で圧縮され高温高圧の気体になった冷媒は、高圧ガス管52を通って(矢印C0)、プレコイル44Aへ流入する(矢印C1)。
【0059】
プレコイル44Aへ流入した冷媒は、熱交換部74Aで凝縮して給気路12(
図1参照)を流れる空気と熱交換し、高温高圧の液体となって液管56を流れ、アフターコイル44B、室外機46へ分岐して流入する(それぞれ矢印C2)。このとき、プレコイル44Aの膨張弁70Aを全開させて、冷媒の圧力損失を低減する。
【0060】
アフターコイル44B、室外機46へ流入した冷媒は、まず膨張弁70B、70Dにより減圧され低温低圧の液体になる。次に、熱交換部74B、76で蒸発して給気路12(
図1参照)を流れる空気及び屋外の空気と熱交換し、低温低圧の気体になる。そして切替弁64B、64Dが開放された状態の低圧ガス管54を流れ(それぞれ矢印C3)、圧縮機48へ流入する(矢印C4)。
【0061】
なお、暖房運転状態としては、プレコイル44Aを凝縮器として機能させ、アフターコイル44Bを蒸発器として機能させる運転状態(第1暖房運転状態)について説明したが、この他、
図6に示すように、プレコイル44A、アフターコイル44Bの双方を凝縮器として機能させることもできる(第2暖房運転状態)。
【0062】
このように、本発明における「熱交換コイルを凝縮器として機能させる暖房運転状態」においては、熱交換コイル44におけるプレコイル44A、アフターコイル44Bが、全体として凝縮器として機能すればよい。
【0063】
[作用・効果]
本発明の実施形態に係るデシカント空調機10による空気の状態変化について、
図1、
図7〜
図12を参照しながら説明する。
【0064】
(夏期冷房除湿運転)
図7の点A1には、夏期の外気OAの状態(乾球温度(℃、以下単に「温度」と称す)、絶対湿度(kg/kgDA)、相対湿度(%)、比エンタルピー(kJ/kgDA))が示されている。また、点A2〜点A3には次の各場所における空気の状態が示されている。
点A2:全熱交換器30の出口
点A3:給気ファン12Fの出口
点A4:プレコイル44Aの出口
点A5:デシカントロータ20の出口(給気路12内)
点A6:アフターコイル44Bの出口(給気SAの吹出口)
点A7:還気RAの吸込口
点A8:再生コイル42の出口
点A9:デシカントロータ20の出口(排気路14内)
【0065】
デシカント空調機10は、ヒートポンプ40を
図3に示す第2冷房運転状態とすることで、外気OAを冷却除湿し、屋内Rへ取り込む。
【0066】
点A1〜点A2に示すように、給気路12(
図1参照)へ取り込まれた外気OAは、全熱交換器30を通過することで排気路14内の空気と熱交換し、温度及び絶対湿度が低くなる。
【0067】
点A2〜点A3に示すように、給気路12内の空気(以下、単に「空気」と称す)は給気ファン12Fを通過することで給気ファン12Fの排熱により暖められ、温度が高くなる。
【0068】
点A3〜点A4に示すように、空気はプレコイル44Aを通過することで冷媒と熱交換し、温度及び絶対湿度が低くなる。
【0069】
点A4〜点A5に示すように、空気はデシカントロータ20を通過することで除湿され絶対湿度が下がると共に、吸着熱により温度が上昇する。
【0070】
点A5〜点A6に示すように、空気はアフターコイル44Bを通過することで冷却され、温度が低くなる。このようにして冷却除湿された空気が、給気SAとして屋内Rへ供給される。
【0071】
点A6〜点A7に示すように、屋内Rへ給気された空気は、加熱加湿されて還気RAとして排気路14へ引き込まれる。
【0072】
点A7〜点A8に示すように、排気路14内の空気は再生コイル42で加熱されて温度が高くなる。
【0073】
点A8〜点A9に示すように、空気はデシカントロータ20を通過することで加湿され絶対湿度が上がると共に、蒸発熱により温度が下がる。
【0074】
点A9〜点A2に示すように、空気は全熱交換器30を通過することで給気路12へ取り込まれた外気OAと熱交換し、温度及び絶対湿度が高くなった後、排気EAとして屋外へ排出される。
【0075】
このように、本実施形態に係るデシカント空調機10では、第2冷房運転状態(
図3参照)において、プレコイル44Aによりデシカントロータ20へ供給する空気を冷却する(点A3〜点A4)ことで、空気の飽和水蒸気圧を低くして、デシカントロータ20で除湿(点A4〜点A5)しやすくすることができる。なお、第1冷房運転状態(
図2参照)においても同様の効果が得られる。
【0076】
なお、プレコイル44Aでは、空気は過冷却(屋内Rへ供給する目標温度よりも低く冷却)され、同時に除湿されている。
図7においては、説明を簡略化するため、点A3〜点A4にかけて温度及び絶対湿度の変化を直線状に描いているが、より詳細に説明すると、
図8に示すように、空気を冷却するとまず温度が下がり、相対湿度が飽和水蒸気圧に近くなると水蒸気が凝縮し始める。これにより徐々に除湿が進行する。
【0077】
また、本実施形態に係るデシカント空調機10では、第2冷房運転状態において、アフターコイル44Bによりデシカントロータ20で暖められた空気を再度冷却する(点A5〜点A6)ことができる。これにより、プレコイル44Aのみの場合と比較して、空気の冷却力を高くすることができる。なお、第1冷房運転状態(
図2参照)においても同様の効果が得られる。
【0078】
なお、本実施形態においては熱交換コイル44として、プレコイル44A及びアフターコイル44Bの双方を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らず、何れかのみを用いる構成としてもよい。プレコイル44A及びアフターコイル44Bの何れを用いた場合も空気を冷却できるが、デシカントロータ20の除湿効率を高めるためには、デシカントロータ20を通過する前の空気の温度を下げるプレコイル44Aを用いることが好適である。
【0079】
さらに、本実施形態に係るデシカント空調機10では、第2冷房運転状態において、再生コイル42で排気路14へ引き込まれた空気を加熱する(点A7〜点A8)ことで空気の飽和水蒸気圧を高くして、デシカントロータ20が水蒸気を放出しやすくできる。すなわち、デシカントロータの吸着材を再生しやすくできる。なお、第1冷房運転状態(
図2参照)においても同様の効果が得られる。
【0080】
また、全熱交換器30によって給気路12へ取り込まれた高温多湿な外気OAと、外気OAと比較して低温低湿な排気路14内の空気とを熱交換(顕熱と潜熱を交換)する(点A9〜点A2)ことで、デシカント空調機10の運転効率を高めることができる。なお、全熱交換器30は適宜省略できる。
【0081】
(中間期冷房除湿運転)
図9の点A1には、中間期の外気OAの状態が示されている。中間期の外気OAは、
図7に示した夏期の外気OAと比較して低温低湿である。また、点A2〜点A3には次の各場所における空気の状態が示されている。
点A2:全熱交換器30の出口
点A3:給気ファン12Fの出口
点A4:プレコイル44Aの出口
点A5:デシカントロータ20の出口(給気路12内)
点A6:アフターコイル44Bの出口(給気SAの吹出口)
点A7:還気RAの吸込口
点A8:再生コイル42の出口
点A9:デシカントロータ20の出口(排気路14内)
【0082】
この外気OAを、給気SAの吹き出し口で点A6に示される所定の温度、湿度にするために、まず点A1〜点A2において、給気路12に取り入れた外気OAを全熱交換器30を通過させて排気路14内の空気と熱交換させ、温度及び絶対湿度を上げる。そして点A2〜A3において給気ファン12Fの排熱により暖められた空気を、点A3〜A4においてプレコイル44Aを用いて冷却、除湿する。さらに点A4〜A5においてデシカントロータ20で除湿して、吸着熱により温度が上昇された空気を点A5〜点A6においてアフターコイル44Bで冷却する。このようにして冷却除湿された空気が、給気SAとして屋内Rへ供給される。
【0083】
このように、中間期における冷房運転状態においても、プレコイル44Aにより空気を冷却することで、デシカントロータ20で除湿しやすくすることができる。また、アフターコイル44Bによりデシカントロータ20で暖められた空気を再度冷却することができる。そして、再生コイル42で排気路14へ引き込まれた空気を加熱することで、デシカントロータの吸着材を再生しやすくできる。
【0084】
(暖房運転状態)
また、本実施形態に係るデシカント空調機10では、
図5に示す第1暖房運転状態において、プレコイル44Aにより、屋内Rへ供給する空気を暖めることができる。さらに、プレコイル44Aは給気路12においてデシカントロータ20の上流側に設けられているため、デシカントロータ20へ供給する空気の飽和水蒸気圧が高くなり、デシカントロータ20が吸着している水蒸気を空気へ放出しやすくできる。なお、第2暖房運転状態(
図6参照)においても同様の効果が得られる。
【0085】
また、実施形態に係るデシカント空調機10では、第1暖房運転状態において、アフターコイル44Bによりデシカントロータ20を通過した空気を冷却している。つまり、デシカントロータ20へ供給される前の空気をプレコイル44Aで過加熱(屋内Rへ供給する目標温度よりも高く加熱)し、デシカントロータ20へ供給された後の空気をアフターコイル44Bで冷却して温度調節している。これにより空気を過加熱しない場合と比較して、デシカントロータ20は水蒸気を放出しやすい。
【0086】
さらに、本実施形態に係るデシカント空調機10では、第1暖房運転状態において、再生コイル42の運転を停止している。これにより再生コイル42は排気路14を流れる空気の温度を高くしないため、空気の飽和水蒸気量が多くなりにくく、デシカントロータ20が排気路14を流れる空気の水蒸気を吸着しやすい。したがって、デシカントロータ20の運転効率が高くなる。
【0087】
なお、本実施形態においては再生コイル42に低圧ガス管54が接続されていないため再生コイル42を蒸発器として機能させることができないが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば再生コイル42に低圧ガス管54を接続することで、蒸発器として機能させてもよい。この場合、例えば第1暖房運転状態において、再生コイル42によって排気路14を流れる空気の温度を低くすることにより空気の飽和水蒸気量を少なくして、デシカントロータ20が排気路14を流れる空気の水蒸気を吸着しやすくできる。
【0088】
なお、上記の説明においては、熱交換コイル44を蒸発器とし、再生コイル42を凝縮器として機能させる冷房運転状態、熱交換コイル44を凝縮器とし、室外機46を蒸発器とし、再生コイル42の運転を停止する暖房運転状態、について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らず、他の運転状態とすることができる。
【0089】
例えば熱交換コイル44を蒸発器とし、室外機46を凝縮器とし、再生コイル42の運転を停止する特別運転状態としてもよい。
【0090】
特別運転状態では、例えば
図10に示すように、切替弁64A、62B、64D、膨張弁70Cを閉じ、熱交換コイル44のうちプレコイル44Aを凝縮器として機能させ、アフターコイル44Bを蒸発器として機能させる。また、アフターコイル44Bによる熱の吸収量(空気の冷却量)をプレコイル44Aによる熱の放出量(空気の加熱量)より多くする。
【0091】
特別運転状態は、例えば冬期や中間期に冷房しながら加湿する場合に用いられる。冬期に冷房加湿する場合とは、オフィス機器などの排熱や人体の熱量により屋内Rの温度が所定温度以上となった場合に、この所定温度より低い温度に調節された空気を給気SAとして供給する場合である。
【0092】
図11の点A1には、冬期の外気OAの状態が示されている。また、点A2〜点A3には次の各場所における空気の状態が示されている。
点A2:全熱交換器30の出口
点A3:給気ファン12Fの出口
点A4:プレコイル44Aの出口
点A5:デシカントロータ20の出口(給気路12内)
点A6:加湿器12Hの出口
点A7:アフターコイル44Bの出口(給気SAの吹出口)
点A8:還気RAの吸込口
点A9:デシカントロータ20の出口(排気路14内)
【0093】
外気OAは、まず点A1〜A2において全熱交換器30で加熱加湿される。そして点A2〜A3で給気ファン12Fの排熱で加熱されたあと、点A3〜A4においてプレコイル44Aで加熱され飽和水蒸気圧が高くなり、点A4〜A5においてデシカントロータ20で加湿される。また、点A5〜A6において加湿器12Hで加湿される。そして、点A6〜A7においてアフターコイル44Bで冷却され、所定の温度及び湿度の給気SAが得られる。
【0094】
さらに、屋内Rから回収された還気RAは、点A8〜点A9においてデシカントロータ20で除湿され、A9〜A2において外気OAと熱交換して冷却除湿される。
【0095】
図12の点A1には、中間期の外気OAの状態が示されている。また、点A2〜点A3には次の各場所における空気の状態が示されている。
点A2:全熱交換器30の出口
点A3:給気ファン12Fの出口
点A4:プレコイル44Aの出口
点A5:デシカントロータ20の出口(給気路12内)
点A6:アフターコイル44Bの出口(給気SAの吹出口)
点A7:還気RAの吸込口
点A8:デシカントロータ20の出口(排気路14内)
【0096】
外気OAは、まず点A1〜A2において全熱交換器30で加熱される。そして点A2〜A3で給気ファン12Fの排熱で加熱されたあと、点A3〜A4においてプレコイル44Aで加熱され飽和水蒸気圧が高くなり、点A4〜A5においてデシカントロータ20で加湿される。そして、点A5〜A6においてアフターコイル44Bで冷却され、所定の温度及び湿度の給気SAが得られる。
【0097】
さらに、屋内Rから回収された還気RAは、点A7〜点A8においてデシカントロータ20で除湿され、A8〜A2において外気OAと熱交換して冷却される。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係るデシカント空調機10のヒートポンプ40においては、切替弁62A、62B、62D、64A、64B、64Dにより冷媒の流れを切替えて、再生コイル42、プレコイル44A、アフターコイル44Bをそれぞれ個別に制御できる。
【0099】
すなわち、再生コイル42、プレコイル44A、アフターコイル44Bは、必要に応じて、凝縮器、蒸発器のどちらの機能を発揮させてもよいし、運転を停止することもできる。また、凝縮器として機能させる場合の空気の加熱量、蒸発器として作用させる場合の空気の冷却量も自由に設定できる。
【0100】
これにより、給気路12を流れる空気、排気路14を流れる空気を、自由に加熱、冷却することができる。これにより、デシカントロータ20における吸着材の吸湿効率、再生効率を高めることができる。
【0101】
なお、本実施形態のデシカント空調機10においては、給気路12と排気路14との間で空気は流れないものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図13に示すように、排気路14を流れる空気を給気路12へ流すバイパスBP1、BP2、BP3の何れかを設けてもよい。バイパスBP1、BP2、BP3には、それぞれ空気の流量を調整する調整弁BB1、BB2、BB3が設けられる。
【0102】
バイパスBP1は、排気路14における再生コイル42の上流側から給気路12におけるアフターコイル44Bの下流側へ空気を流す経路である。バイパスBP1へ空気を流すことで、例えば冬期において、外気より高温高湿な還気RAを再利用して、給気SAとすることができる。また、再利用する際に再加熱しないので省エネ効果が高い。
【0103】
バイパスBP2は、排気路14における全熱交換器30の上流側から給気路12における全熱交換器30の下流側へ空気を流す経路である。バイパスBP2へ空気を流すことで、全熱交換器30を稼動させずに、排気路14から給気路12へ熱(顕熱及び潜熱)を移動させることができる。
【0104】
バイパスBP3は、排気路14における全熱交換器30の下流側から給気路12における全熱交換器30の上流側へ空気を流す経路である。バイパスBP3へ空気を流すことで、全熱交換器30で交換しきれなかった熱を、排気路14から給気路12へ移動させることができる。
【0105】
バイパスBP1、BP2、BP3を流れる空気は屋内Rを還流した空気であるため、外気OAと比較して二酸化炭素含有量が多い。このため、バイパスBP1、BP2、BP3を設ける場合は、屋内Rの二酸化炭素濃度に応じて調整弁BB1、BB2、BB3を制御して、バイパスBP1、BP2、BP3への空気の導入量を調整することが好ましい。
【0106】
このためデシカント空調機10には、給気SAが供給され還気RAを排出する屋内Rに設置して二酸化炭素量を検出する検出器と、検出器によって検出された二酸化炭素量に応じて調整弁BB1、BB2、BB3を制御してバイパスBP1、BP2、BP3への空気の導入量を調整する制御装置と、を設けることが好ましい。
【0107】
検出器と制御装置とを設けた場合、屋内Rの二酸化炭素量が所定の値より多い場合は、バイパスBP1、BP2、BP3への空気の導入量を減らし又は無くし、外気OAの導入量を増やす。また、屋内Rの二酸化炭素量が所定の値より少ない場合は、バイパスBP1、BP2、BP3への空気の導入量を増やし、外気OAの導入量を減らす。
【0108】
これにより、屋内Rの二酸化炭素濃度を適切な値に維持しながら、空調効率を高めることができる。なお、検出器で検出する対象としては二酸化炭素量に限らず、一酸化炭素量、VOC(揮発性有機化合物)量、浮遊粉塵量など各種の指標を用いることができる。