特許第6960290号(P6960290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6960290
(24)【登録日】2021年10月13日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】生分解性樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20211025BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211025BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   B32B27/36
   C08L67/02ZBP
   C08K3/22
   C08K5/20
   C08K3/04
   B32B27/18 J
   B32B27/18 Z
   !C08L101/16
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-179530(P2017-179530)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-55485(P2019-55485A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 周平
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健志
【審査官】 櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−237225(JP,A)
【文献】 特開2002−360081(JP,A)
【文献】 特開2017−147972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A01G 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射層と着色層を備える生分解性樹脂フィルムであって、
前記反射層は、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂及び酸化チタンを含む樹脂組成物からなり、かつ前記樹脂組成物中の樹脂成分を100重量%としたとき、前記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の含有量は90重量%以上とし、さらに前記樹脂組成物を100重量%としたとき、前記酸化チタンの含有量は20〜50重量%とし、
前記着色層は、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂及びカーボンブラックを含む樹脂組成物からなり、
前記反射層及び前記着色層は、脂肪酸モノアミドを含み、かつ含有量は各層で樹脂組成物100重量%としたとき、0.5〜0.95重量%であり、
前記反射層側から照射したときの日射反射率が45%以上であることを特徴とする生分解性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記反射層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分が生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂からなり、かつ前記樹脂組成物を100重量%としたときの前記酸化チタンの含有量は30〜50重量%とし、
反射層側から照射したときの日射反射率が50%以上であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生分解性樹脂フィルムからなる農業用マルチフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、生分解性樹脂からなるフィルムに関し、特に農業用マルチフィルムに好適なフィルムである。
【背景技術】
【0002】
農業用マルチフィルム(以下、マルチフィルムともいう)は、作物を育てるうねなどを被覆するフィルムであり、保温性、雑草抑制、土壌水分の蒸発抑制など作物の安定した生長を促す目的で用いられている。例えば、透明や黒色などに着色された単層構造、さらに反射層(白層)を備えた積層構造のマルチフィルムが知られている。
特に、反射層を備えたマルチフィルム、いわゆる白黒マルチフィルムは、黒色フィルムの表面に白層を設けることで、太陽光の日射(波長300〜2500nmの放射)を反射して夏場の過度な地温上昇を抑制しつつ、雑草抑制などのマルチフィルムの特性を備えたものである。
【0003】
近年、農業用マルチフィルムとして、生分解性樹脂を用いたものが開発されている。生分解性樹脂とは、土中に存在する微生物の働きにより樹脂成分が水と二酸化炭素に分解される樹脂である。従来のオレフィン系樹脂や塩化ビニル系樹脂を用いたマルチフィルムでは、使用後は回収してリサイクルや焼却などの廃棄処分をする必要があったが、生分解性樹脂フィルムを用いれば、使用後に土といっしょにすき込むだけで、樹脂成分が土中で分解されるため、前記回収・廃棄作業を省略でき、農作業の負担を大きく減らすことができる。
【0004】
生分解性樹脂としては、様々な種類が知られている。例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブシレンサクシネートアジペート(PBSA)などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、及びデンプン、セルロースなどの天然高分子が知られている。
一般的に、生分解性樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂フィルムやオレフィン系樹脂フィルムと比較して、引裂強度や引張強度など物性面で劣るものである。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、このような生分解性樹脂を用いた白黒マルチフィルムに関し、生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル系樹脂と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を特定の質量比で併用することで、フィルムの引裂強度や引張強度を改善できることが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のように、脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が多い場合、白層に添加される酸化チタンの含有量が多すぎると、フィルムにしたときの引張強度が不十分となる。その結果、当該フィルムをマルチフィルムとしてうねなどに展張する際に、破れやすく取扱いが困難となる問題があった。一方で、酸化チタンの含有量が少なすぎると日射を反射できず、地温上昇の抑制効果が期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−191418号公報
【特許文献2】特開2009−072113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明は、酸化チタンの含有量が多く、十分な日射反射率を有しながら、引張強度に優れる生分解性樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を主成分とすることで、当該課題を解決できることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本願発明は、反射層と着色層を備える生分解性樹脂フィルムであって、前記反射層は、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂及び酸化チタンを含む樹脂組成物からなり、かつ前記樹脂組成物中の樹脂成分を100重量%としたとき、前記脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の含有量は90重量%以上とし、さらに前記樹脂組成物を100重量%としたとき、前記酸化チタンの含有量は20〜50重量%とし、前記着色層は、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂及びカーボンブラックを含む樹脂組成物からなり、前記反射層側から照射したときの日射反射率が45%以上であることを特徴とする。
【0011】
本願発明によれば、反射層を構成する樹脂組成物のうち、樹脂成分を100重量%としたとき、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の含有量が90重量%以上であるため、酸化チタンの含有量を多くしても、引張強度に優れる生分解性樹脂フィルムが得られる。
【0012】
また、本願発明の反射層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分が生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂からなり、かつ前記樹脂組成物を100重量%としたときの前記酸化チタンの含有量は30〜50重量%とし、当該反射層側から照射したときの日射反射率が50%以上であることが好ましい。
【0013】
本願発明の反射層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分に脂肪族ポリエステル系樹脂を含まず、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂からなるものであれば、より多くの酸化チタンを含有しても引張強度に優れ、かつ日射反射率も50%以上とすることができる。
【0014】
さらに、本願発明は、当該反射層及び/又は当該着色層に、脂肪酸モノアミドを含んでもよい。
【0015】
脂肪酸モノアミドを含有すると、フィルムの保湿性を向上させることができる。
【0016】
本願発明の生分解性樹脂フィルムであれば、酸化チタンの含有量を多くしても引張強度に優れ、かつ日射反射率を40%以上、好ましくは50%以上にすることができ、夏場の過度な地温上昇を抑えることができるため、農業用マルチフィルムに好適である。
また、脂肪酸モノアミドを含有すればフィルムの保湿性が向上するため、土壌の過度な乾燥を防ぐことができ、マルチフィルムとしてより好ましいものである。
【発明の効果】
【0017】
本願発明は、酸化チタンの含有量を多くしても引張強度に優れるものであり、また日射反射率にも優れる生分解性樹脂フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明は、反射層と着色層を備える生分解性樹脂フィルムである。
【0019】
本願発明の反射層は、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂及び酸化チタンを含む樹脂組成物からなる。
ここで、本願発明でいう樹脂組成物とは、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂などの樹脂成分、酸化チタン、及びその他の添加剤の混合物であって、当該樹脂組成物をフィルムに成形して反射層を形成するものである。
【0020】
本願発明の反射層では、樹脂成分として、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を含み、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が使用できる。
【0021】
また、樹脂成分として、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂以外の樹脂を含有してもよく、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヒドロキシアジペート、ポリシクロヘキシレンジメチルアジペート(脂環式ポリエステル)などの生分解性の脂肪族ポリエステル系樹脂、及びそれらの誘導体が挙げられ、1種或いは2種以上混合してもよい。
【0022】
本願発明において、反射層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分を100重量%としたとき、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の含有量は90重量%以上である。
当該含有量が90重量%未満の場合、他の生分解性樹脂と併用することとなるが、その他の生分解性樹脂として、脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量が多いと、フィルムとしたときの引張強度が劣るものとなる。特に、後述する酸化チタンを樹脂組成物中に多量に含む場合には、その傾向が強く現れる。
【0023】
また、反射層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分が脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂であって、脂肪族ポリエステル系樹脂を含まないものが好ましい。脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂単独であると、酸化チタンの含有量を多くした場合でも、引張強度に優れたフィルムを成形することができる。これは、脂肪族芳香族ポリエステルが特有の柔軟性を有しているが、脂肪族ポリエステル系樹脂を含有するとその柔軟性を損なわせるためだと考えられる。
【0024】
本願発明の反射層を構成する樹脂組成物には、酸化チタンを含む。酸化チタンは、一般に顔料で用いられているものが使用でき、好ましくは平均粒子径200〜1000nmのものが使用できる。平均粒子径が200nm未満であると、日射反射効果がほとんど得られず、平均粒子径が1000nmを超えるとフィルムへの加工がし難くなる。
【0025】
酸化チタンの含有量は、反射層を構成する樹脂組成物を100重量%としたとき、20〜50重量%である。20重量%未満だと、フィルムとしたときの日射反射率45%以上を達成できない。また、50重量%を超えると、日射反射率は優れるものの、引張強度が低下してしまう。
ここで、日射反射率とは、太陽から放射されたエネルギーのうち、波長300〜2500nmの放射である日射をどれくらい反射するかを示す値であり、JIS A 5759に準拠して求めることができる。
本願発明では、日射反射率を地温上昇の指標として使用している。本出願人によれば、反射層側から照射したときの日射反射率が45%以上であれば、ポリエチレン樹脂製の黒色マルチフィルム(日射反射率4.5%)と比較して、地温上昇が3〜8℃程度抑えられることがわかっている。
【0026】
さらに、酸化チタンの含有量が反射層を構成する樹脂組成物を100重量%としたとき、30〜50重量%であることが好ましい。酸化チタンが多いほど日射反射率に優れるが、30重量%以上であると反射層側から照射したときの日射反射率が50%以上を達成しやすくなり、より地温上昇抑制効果に優れるフィルムとなる。この場合、ポリエチレン樹脂製の黒色マルチフィルム(日射反射率4.5%)と比較して、地温上昇は5〜8℃程度に抑えることができる。
なお、酸化チタンを30重量%以上添加する場合には、反射層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分が脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂であって、脂肪族ポリエステル系樹脂を含まないものが好ましい。30重量%以上の酸化チタンを添加した場合に、脂肪族ポリエステル系樹脂を含むとフィルムにしたときの引張強度に劣る傾向にある。
【0027】
本願発明の着色層は、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂及びカーボンブラックを含む樹脂組成物からなる。当該樹脂組成物をフィルムに成形して着色層を形成するものである。
【0028】
本願発明の着色層では、反射層と同様、樹脂成分として、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を含み、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が使用できる。また、PBAT以外の生分解性樹脂を含有してもよく、反射層で挙げられたものが使用できる。
なお、着色層を構成する樹脂成分は、反射層と同一の樹脂成分であってもよく、或いは異なる樹脂成分であってもよい。また、反射層と同様、着色層を構成する樹脂組成物中の樹脂成分を100重量%としたとき、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の含有量を90重量%以上であってもよい。
【0029】
カーボンブラックの含有量としては、雑草抑制効果が発揮できればよく、着色層を構成する樹脂組成物を100重量%としたとき、20重量%未満が好ましく、さらに1.5〜15重量%がより好ましい。含有量が1.5重量%未満であると、可視光線透過率が高くなり、雑草抑制効果が得られ難い。また、20重量%以上であると、フィルムへの加工性に劣る傾向にある。また、含有量が1.5〜15重量%であれば、より雑草抑制効果に優れるため好ましい。なお、雑草抑制効果を発揮するには、可視光線透過率が1%以下であればよく、好ましくは、0.7%以下である。
【0030】
本願発明において、反射層及び/又は着色層にさらに脂肪酸モノアミドを含有してもよい。脂肪酸モノアミドは、一般的に滑剤として使用されているが、本願発明ではフィルムの保湿性を向上させる目的で添加している。
【0031】
脂肪酸モノアミドとしては、例えばラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミドや、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド等が挙げられる。特に、ステアリン酸アミドがコストや性能の点で好適に用いることができる。
【0032】
脂肪酸モノアミドの含有量は、各層を構成する樹脂組成物を100重量%としたとき、0.5〜0.95重量%である。0.5重量%未満であれば、保湿性が得られず、0.95重量%を超えると、ブリードアウトしてしまい、取扱いが困難となる。
また、反射層、着色層両方に脂肪酸モノアミドを含有することが好ましく、この場合の含有量は、各層で樹脂組成物を100重量%としたとき、0.5〜0.95重量%であればよい。
【0033】
本願発明の生分解性樹脂フィルムの保湿性は、JIS Z 0208(A法)に準拠して求めた透湿度より評価される。本願発明では、透湿度が180g/m・24h以下であることが好ましく、より好ましくは150g/m・24h以下である。透湿度を前記範囲とすることで、土壌の保湿性を維持することができる。
【0034】
尚、本願発明の生分解性フィルムを構成する樹脂組成物には、本願発明の効果を損なわない程度であれば、必要に応じて、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、滑剤、光分解促進剤、生分解促進剤、生分解抑制剤、充填剤、顔料などが挙げられる。
【0035】
本願発明は、反射層と着色層からなるフィルムであって、厚みは10〜30μm程度である。反射層及び着色層の層比としては、日射反射率が45%以上、好ましくは50%以上となるよう適宜調整すればよいが、反射層の厚みが全厚みの10%〜90%であることが好ましい。反射層の厚みが90%を超えると、押出機の吐出バランスが合わずフィルムの作製が困難となる。
例えば、酸化チタンの含有量が反射層を構成する樹脂組成物を100重量%としたとき、30重量%である場合、反射層の厚みを全厚みの60%〜90%とすると、日射反射率が45%以上となり、さらに厚みを66%以上とすると、日射反射率が50%以上となる。
【0036】
本願発明の生分解性フィルムとしては、一般に行われている樹脂フィルムの製造方法を採用することができる。例えば、T−ダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形などが挙げられる。また、無延伸でも、一軸もしくは二軸延伸を施すこともできる。
【0037】
本願発明は引張強度に優れるフィルムであり、その評価については、JIS K 6732に準拠して測定した引張試験において、引張速度500mm/minとしたときの伸び(%)(引張伸度と示す)の値を用いる。本願発明では、当該引張伸度が400%以上であればよく、マルチフィルムとしてうねなどに展張する際に、破れ等が発生しないフィルムとなる。
【0038】
本願発明は生分解性を有する。温度や湿度など天候にもよるが、本願発明では、畑に形成されたうねに本願発明の生分解性樹脂フィルムを被覆したのち、3週間程度から徐々に分解が始まり、3ヶ月以上経過すると、ぼろぼろの状態まで分解が進む。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づき本願発明を説明する。ただし、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
〔樹脂成分〕
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂;PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート、BASF社製、商品名「エコフレックス」)
脂肪族ポリエステル系樹脂;PBS(ポリブチレンサクシネート、PTTMCCバイオケム社製、商品名「BioPBS FZ91」)
〔顔料〕
酸化チタン (東京インキ社製、商品名「TEP−BP−WHITE1」、ベース樹脂がPBATの含有量60質量%のマスターバッチ)
カーボンブラック (東京インキ社製、商品名「TEP−BP−BLACK1」、ベース樹脂がPBATの含有量35質量%のマスターバッチ)
なお、表1,2の配合量は、顔料のみの値に変換しており、ベース樹脂分は樹脂成分の配合量に加えている。
〔添加剤〕
脂肪酸モノアミド;
・ステアリン酸アミド(日本化成社製、商品名「アマイドAP−1」)
【0041】
実施例1〜4、7、8、10〜12、比較例1〜4、参考例、参考例5、6、9
表1、2に示す通り、反射層、及び着色層を構成する各樹脂組成物を溶融混合してペレット化した後、インフレーション成形によって2層構造の厚み0.02mmのフィルムを成形した。
反射層及び着色層の樹脂成分として、実施例10は、各層の樹脂成分を100重量%としたとき、両層ともPBAT90重量%、PBS10重量%を含有し、比較例2は、両層ともPBAT85重量%、PBS15重量%を含有したものであり、それ以外は、PBAT100重量%とした。
また、参考例とは、着色層のみからなるフィルムである。
なお、表1,2に示す樹脂組成物の配合比は、反射層及び着色層の各層の樹脂組成物を100重量%としたときの重量%である。
【0042】
実施例、及び比較例で得られたフィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0043】
・日射反射率
太陽から放射されたエネルギーのうち、波長300〜2500nmの放射である日射をどれくらい反射するかを示す値である。JIS A 5759に準拠し、分光光度計(島津製製作所社製、商品名「UV−3600」)を用いて、反射層側から照射したときの300〜2500nmの各波長の分光反射率(%)を測定し、日射反射率(%)を求めた。
【0044】
・引張伸度
JIS K 6732に準拠して測定した引張試験において、引張速度500mm/minとしたときの引張伸度(%)を求めた。
【0045】
・透湿度
JIS Z 0208(A法)に準拠し、高温高湿装置の温室度条件を温度25±0.5℃、相対湿度90±2%とし、吸湿剤を入れたカップに試験片をかぶせた状態で当該高温高湿装置中に入れ、適当な時間間隔でカップを取り出して秤量する操作を72時間繰り返し、その際の吸湿剤の質量増加から透湿度を求めた。
【0046】
・ブリード性
室温にて1週間放置後のフィルム表面を目視にて観察し、以下の基準で評価した。

○ 変化なし
× 粉が表面に吹き出している
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1〜4、7、8、10〜12によれば、日射反射率が45%以上であり、かつ引張伸度が400%以上のフィルムが得られた。
特に、実施例10及び比較例2は、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂であるPBATと脂肪族ポリエステル系樹脂であるPBSを併用したものであるが、PBATが90重量%以上であると、酸化チタンの含有量が多くても、引張強度に優れるフィルムが得られることを示している。
【0050】
実施例1〜4、7、8、10〜12から、ステアリン酸アミドを添加すると、透湿度が180g/m・24h以下となり、保湿性が向上することが示され、また、ステアリン酸アミドの含有量が樹脂組成物中0.5〜0.95重量%であれば、保湿性及びブリード性にも優れ、より好ましい結果となった。
【0051】
このように、本願発明の生分解性樹脂フィルムは、日射反射率が高く、かつ引張強度に優れるため、夏場の過度な地温上昇を抑えることができ、農業用マルチフィルムに好適である。また、ステアリン酸アミドを含有することで、保湿性にも優れ、土壌の過度な乾燥を防ぐことができ、マルチフィルムとしてより好ましいものである。